今季定点観察してきたコアシナガバチ(Polistes snelleni)の巣bをコロニー解散後に軒下から採集しました。
巣盤が拡張するにつれて大きく反り返った舟形になるのが本種の特徴です。
屋根や垂木など障害物の入り組んだ狭い空間での拡張を余儀なくされたので、全体が歪な形状になっています。
最終的な育房数は141室、不完全な空室が51室ありました。
(ピンクの油性ペンで印を付けながら数えました。)
100円ショップで購入したフィギュアケースに入れて密閉保管することにしました。
2011年2月下旬
採集から3ヶ月経った夕刻、容器内で飛び回っている一頭のミクロ蛾に気づきました。
ケースの隙間はテープで密閉されているので、外からの混入は有り得ません。
ちょっとした密室ミステリです。
コアシナガバチの巣を採集した時点では寄生を疑わせるような不規則網や虫食い跡は無かったので、全く予想外の展開でした。
本来ならば越冬してから成虫が羽化するはずですが、野外より暖かい室内(暖房なし)で季節外れに羽化してしまったのでしょう。
横着してナフタリンなどの防虫剤を容器に同梱してなかったのが幸いしました。
すっかり馴染みになったカザリバガ科マダラトガリホソガの一種(Anatrachyntis sp.)と思われます。
昨年2個採集したキアシナガバチの巣から同様に得られた寄生蛾と素人目には同種に見えます。
(関連記事はこちら→幼虫編、成虫編)
解剖して交尾器を調べてみないといけないらしいのですが、もし同種だとすると、この蛾はキアシナガバチおよびコアシナガバチの巣を寄主とすることが判明しました※。
※以前、虫我像掲示板にて質問した際の回答を引用します。
『誘蛾燈』198号(2009)で記録されたマダラトガリホソガに近縁な未同定種と同種と思われます。
記録のほうもコロニー解散後の蜂の巣を採集して、春に羽化させたものです。蜂の種は少し違い、セグロアシナガバチ、コアシナガバチ、コガタスズメバチの巣とありました。
このあたりの仲間は現在研究者不在なので、当面のあいだは名前が決まることはないでしょうね。
私が採集した二種の巣は直線距離で約5km離れており、それぞれ山地(里山の麓)および平地の軒下にありました。
当地では普通種の蛾なのかもしれません。
ちなみに、昨年同じ地域から2個採集したムモンホソアシナガバチの巣からは今のところ寄生蛾は羽化してきていません。
同じアシナガバチでもコアシナガバチやキアシナガバチとは属が違うので(Polistes, Parapolybia)、もしかしたら寄主選択性があるのかもしれません。
しかし未だ調べた例数が少ないので、個人的な想像に過ぎません。
【追記】
3月上旬、二頭目が羽化しました。
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