タケカレハ幼虫の飼育記録
タケカレハ(Euthrix albomaculata directa)幼虫の飼育は2006年に続いて二回目です。
前回は5月下旬に木の枝に繭を紡ぎました。
今回は繭を紡ぐ過程の一部始終を微速度撮影(5秒間隔のインターバル撮影)で記録することができました。
大量の糞と水分を排泄した翌朝、終齢幼虫aは食餌も摂らずに容器内を活発に徘徊し始めました。
いよいよこれは繭を作るぞ!と確信しました。
足場として入れていた割り箸は気に入らなかったらしく、やがて頭部を8の字に動かしながら容器の壁面に口から絹糸を吐き始めました。
ところがツルツルしたプラスチックにはうまく付着せず、貴重な絹糸が無駄になるばかりです。
急遽幼虫を外に出し、ペットボトルに水差しにしたクマザサの葉に移してやりました。
ようやく落ち着いて葉表に繭を紡ぎ始めました。
(映像はここから。)
2012年3月上旬・室温20℃→17℃
5秒間隔で7時間14分間に撮影した計4,748枚の連続写真から150倍速の動画にしました。
完成した繭をノギスで採寸すると、長径53mmでした。
以前観察したヤママユガ科やクワコの繭作りとは違い、葉柄に丈夫な命綱(繭柄;けんぺい)を作ったりしませんでした。
常緑の笹は落葉する心配が無いと知っているからだろうか?
タケカレハの繭は表面にあるゴマ粒のような黒い斑点が特徴の一つです。
この黒点が作られる過程に興味を持って映像や写真を見直してみたのですが、結局よく分かりません。
予想ではてっきり、幼虫が繭内で激しく動き回るうちに黒い毛束が抜けて自然に繭の繊維に絡まるのかと思っていました。
しかしどうも違う気がします。
糞ではありません。
映像ではあるとき突然に複数の黒点が現れるのです。
口から何かを分泌し、絹糸と化学反応して黒点が出来るのだろうか。
『繭ハンドブック』p38によると、タケカレハの
繭層の表面には黒い点がある。これは、幼虫時代の毒針毛をそのまま束にして埋め込んだものである。
この個体aは11月下旬に雪山で採集してきて以来、室内飼育で計4回脱皮しました。
2月中旬の最終脱皮から18日後に繭を紡ぎました。
こうした発育スケジュールは6年前の個体♀と比べて大幅に早いです。
個体差かもしれませんが、主に室温の違いによるものと思います。
できれば繭から成虫が羽化してくる様子も観察してみたいものです。
タケカレハの成虫出現期は5~6月および9~10月の二化らしい。
【追記】
4週間後に無事に成虫♀が羽化しました→つづく。
2012年1月上旬
里山で落葉樹の枝にシジュウカラ♂を二羽見つけました。
小枝に残った枯葉を嘴で突ついては食べられる虫が隠れていないか探しているようです。
遠くでカケスがギャーギャー鳴いています。
2012年3月上旬・室温18℃
タケカレハ幼虫の飼育記録
前日から絶食しているタケカレハ(Euthrix albomaculata directa)終齢幼虫a(体長74mm)が固形の糞を出し尽した後に、無色透明な液体をポタポタと排泄しました。
飼育容器の底に水たまりが出来るほどの量です。
初めて見るとびっくりしますが、この排尿は繭を紡ぎ蛹となるための準備です。
以前飼っていたクワコ終齢幼虫は営繭の最中に同様の排尿行動が見られましたが、今回のタケカレハ幼虫は営繭の前日でした。
本当は尿ではなく下痢便(水様便)と記すのが正しいのかもしれません。
これほど大量の水分を摂取していたとは驚きです。
食草が萎れないようにときどき霧吹きしていました。
通常の排便の際は尾端を左右に曲げたりしないのですが、このときは自らの体を排泄物で汚さないように注意しているのかもしれません(カマキリもこれをやります)。
翌朝からいよいよ繭を紡ぎ始めました→つづく。
2012年3月上旬・室温18~19℃
タケカレハ幼虫の飼育記録
タケカレハ(Euthrix albomaculata directa)幼虫の摂食シーンに続いて、念願だった排泄シーンをようやくマクロ動画に記録することができました♪
食欲旺盛な終齢幼虫は快食快便の日々です。
糞は緑色で、食草として与えたクマザサの葉緑素が残っています。
以前観察した違う種の芋虫・毛虫の糞は腸の断面を反映してロゼッタ状でしたが、タケカレハ幼虫の糞塊はロゼッタ形状は不鮮明でした。
見るからに糞の繊維分が多いせいでしょうか。
ちなみに草食性幼虫の糞には不快な悪臭は全くありません。
むしろ植物の良い芳香がします。
撮り損ねることが多いのですが、肛門がヒクヒクしていたので排便の前兆だと気づきました。
やがて立派な糞がモリっと排泄され容器の底にコトリと落ちます。
アングルを変えつつ三連発お届けします。
ごく一部のマニアには堪らない映像かもしれません。
撮影したのは2匹飼っている幼虫のうち大柄な個体aで、体長74mm。
みんなで作る日本産蛾類図鑑サイトを参照するとタケカレハ終齢幼虫の体長は60mmと記載されています。
私の飼育個体aは、かなり発育の良い大型な幼虫のようです。
(「タケカレハ終齢幼虫のおしっこ排泄編」につづく)
2012年2月下旬
室内でふと天井を見上げると中型の白い蛾が止まっていました。
真っ白な翅にかすかな黒点が散りばめられています。
翅は三角屋根の状態で静止。
どうやらアメリカシロヒトリ(Hyphantria cunea)のようで、前脚の付け根が黄色に色付いています。
逆さまにぶら下がった状態で少し前に歩きました。
昨秋に近所で大量発生したアメリカシロヒトリの毛虫が窓から侵入して室内を徘徊したり洗濯物やカーテンに付いて営繭・蛹化したりと大騒動になったのでした。
暖かい室内のどこかで隠れて越冬し、季節外れに羽化したのでしょう。
ちなみに野外の自然状態における成虫出現時期は5月および7~8月とのこと。
後で採寸しようと思っていたら、目を離した隙にどこかへ居なくなってしまいました。
冬に生きて動く蛾の成虫を撮れたのは久々だったので、少し嬉しい出会いでした。
『繭ハンドブック』p49によると、自然界でアメリカシロヒトリの「越冬は前蛹幼虫で行われる」とのこと。
2012年1月下旬
野生ニホンザル(Macaca fuscata fuscata)の群れを探して集落の裏山に登ると、林が伐採された台地に着きました。
山の天気は変わりやすく、雪が激しく降ってきて視界も悪くなってきました。
一頭の猿が雪原の斜面をトラバースして登っています。
遠くからかすかに鳴き声も聞こえます。
右奥の雑木林に姿を消しました。
斜面左手の樹上に別な猿を発見。
独り枝に腰掛けてこちらを向き、じっとしています。
群れの見張り役なのだろうか。
後で写真を見直すと、小さな黒い箱のような発信器付きの首輪を装着した個体のようです。
ほとんど動きは無いものの、「厳冬期に吹雪を耐え忍ぶ孤高の猿」と題したくなるような、ちょっと絵になる光景でした。
この首輪猿がおもむろに木から下りると、先程の仲間を同様に林縁の斜面を横切り始めました。
後からもう一頭が合流しました。
しばらく前後して歩いていたが、後続の個体が針葉樹の幼木に登って休息。
樹上で脇腹を手で掻いたりしています。
しばらくして遊動再開するも、休み休み進みます。
今度は別の立木(落葉樹)に登って休憩。
ニホンザルも悪天候の日には遊動せず群れで身を寄せ合って寒さを凌ぐと聞いていましたけど、これぐらいの吹雪では平気で活動するようです。
野生のニホンザルを一冬観察してみると、動物園や餌付けされた猿山で見られるような「ボス猿に統率された群れ」というイメージは全く当てはまらないことがよく分かりました。
2012年2月中旬
タヌキが登ったばかりの雪山の斜面を、ラッセル跡を辿って追跡開始。
動画を撮りながらスノーシューで斜面左手から登ります。
少し進むと足跡の下の雪面から枝が伸びていて、樹皮が齧られた跡(食痕)が残っていました。
ホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)が道中に齧ったのだろうか?
枝の上部は折れていて樹種は不明です。
息を切らして更に急斜面を登ると、今度は雪に埋もれかけたクズ?(フジ?)の蔓に食痕を発見。
蔓の表面を齧り取った痕跡があるものの、新鮮な食痕ではないような気もします。
実際にタヌキが齧っている様子を見た訳ではないので、もしかしたら別な動物の食痕を見つけて気になったタヌキが寄ってみただけかもしれません。
自分で登ってみると、トラバースしたおかげで斜面の勾配はそれほど大したことありませんでした。
しかし積雪が深いのでラッセルしつつ登るのは重労働。
大木への最後のアプローチは短いジグザグのつづれ折れになっていました。
ようやくタヌキが目指していた大木に到着(樹種不明)。
大木の根元にある雪の窪みを覗いてみるも、長居した形跡や溜め糞もありませんでした。
てっきり塒(ねぐら)や巣として使っているのかと思ったので予想が外れました。
冬ごもりの巣穴だったら監視カメラを仕掛けようかとワクワクしながら登ってきたのに…。
まさに撮らぬ狸の皮算用。
この先でタヌキの梅花状の足跡を見失ってしまいました。
てっきり穴の奥に隠れてしまったのかと思い、諦めて引き返しました。
帰ってから前の動画を見直すと、タヌキはこの大木を素通りし尾根を目指して斜面を登り切ったようです。
タヌキが厳冬期に何を食べているのか食性(メニュー)に興味がありますが、なんとか元気に厳しい冬を乗り切って欲しいものです。