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2025/09/15

池で単独連続打水産卵するオオシオカラトンボ♀と警護飛翔する♂【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年7月上旬・午前11:40頃・晴れ 

里山にあるモリアオガエルに繁殖池に来てみると、最近雨が降ってくれたおかげで池の水量が増していました。 
対岸付近の水面で打水産卵するトンボ♀を見つけました。 
体色が性的二型のトンボで、黄色の♀が単独で打水産卵する間に、水色の♂が近くをホバリング(停空飛翔)しながら♀を警護していました。 

同定用の写真を撮るよりも産卵行動を記録する動画を優先したのですが、動きが速くてしっかり合焦できませんでした。 
シオカラトンボ、シオヤトンボなどと迷ったのですが、打水産卵する♀の透明な翅の根元が黒かったので、オオシオカラトンボOrthetrum triangulare melania)の♀♂ペアと確定しました。 警護する♂は撮影アングルの問題で翅の根元が見えませんでした。
(シオヤトンボは成虫の出現時期と、腹部の色の違いから却下。) 

(オオシオカラトンボの)♀は単独で浅い水面を打水し、腹端ですくい上げた水と卵とを前方に飛ばす。♂は付近を飛んで警護することが多い。(ネイチャーガイド『日本のトンボ』p483より引用) 

関連記事(12年前の撮影)▶ オオシオカラトンボ♀ 


生物関連の本の中でも、たとえありふれた普通種でも一種類の生き物に絞って生活史や行動生態を徹底的に調べて渾身の一冊にまとめた本を私は好みます。 
そんな本の一つ『シオカラトンボ (カラーサイエンス 12)』によると、
・交尾のあとすぐに、めすは、水のなかに産卵します。このとき、おすはめすのまわりととんで見はります。 
・水草のはえた池や沼では、めすが卵を水てきといっしょに水草にむかって、腹のさきでとばして、産卵します。 (p30〜31より引用)
1985年に発行された40年前の古本ですが、交尾の連続写真(当時は高速連写できないので苦労して撮り貯めたカラー写真を再構成した組写真)なども掲載されていて、充実した内容です。 
最近はこうしたじっくり腰を据えた本を作る余裕がなくなっているのが残念です。 


動画の冒頭では、池の水面の上を水色のトンボと黄色のトンボが高速で飛び回っています。 
異種間の縄張り争いかと思って慌てて撮り始めたので、ズームインし過ぎてしまい、すぐに見失ってしまいました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、産卵地点を探して飛び回るオオシオカラトンボ♀の後を同種の♂が追尾していました。 

黄色いトンボ♀が水面の上でホバリングしながら腹端を水面に叩きつける度に、水滴が斜め前方に飛んでいきます。 
単独で打水産卵に励む♀の近くを水色のトンボ♂が単独でホバリングしながら警護しています。 
オオシオカラトンボは、連結状態(尾繋がり)では産卵しないのです。

オオシオカラトンボ♀の連続打水産卵を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:58〜) 
♂の警護飛翔は写っていません。 

※ 晴れていてもスギ林に囲まれた池で遠くからズームインして撮影するとかなり暗い映像になったので、動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→産卵中のオオシオカラトンボ♀が捕食者に襲われると♂は守ってくれるのか? 


【考察】 
いつものようにPerplexity AIと問答を繰り返して、産卵行動についてブレインストーミングしました。 
トンボの種類をオオシオカラトンボと絞り込む手助けもしてくれました。 

オオシオカラトンボ♀の卵は、打水の度に前方に飛んでいく水滴の中に含まれているのか、それとも打水した瞬間に水中に沈むのか、どちらなのでしょうか?

打水産卵時の卵の挙動
オオシオカラトンボの打水産卵(飛水産卵)では、腹端を水面に打ち付けると同時に卵と水滴を一緒に前方へ飛ばす行動がみられます。

このとき腹端で水面をすくい上げた小さな水滴の中に卵が含まれていて、その水滴ごと水面の前方(浅瀬や水草の周辺)に飛ばされる、というのが標準的な解釈です。

連続して打水するので、水面には多数の小さな水滴が弧を描きながら飛び、卵もこれに含まれて飛ばされます。

詳細と補足
水滴は水面に再び落ちる際、その中に入った卵も一緒に着水し、そのまま水中に沈みます。

写真や動画の高精度な観察でも、「水滴の中に卵が混じって飛んでいる」様子が確認されており、水滴の色が微妙に濁る・色づく場合は卵塊が含まれているためとされています。

水滴の一部が透明、他がうっすら褐色の場合、褐色の水滴の方に卵や卵塊が多く含まれる状況が観察されています。

まとめ
オオシオカラトンボ♀の打水産卵では、卵は打水によってできた小さな水滴に包まれて飛び、水滴ごと前方へ飛ばされた後、水面に落ちてそのまま水中に沈みます。打水と同時に水中に直接沈むのではなく、「水滴の中に入って飛ぶ→水面に再落下して水中へ沈む」が基本の流れです。

この産卵様式は、卵をなるべく広範囲にばらまき、外敵からの(食卵)リスクを減らすためのものと考えられています。

今回私が観察した事例では、オオシオカラトンボ♀は池の浅いところから岸に向かって水滴を繰り返し飛ばしていました。
この時期は雨量が少なく池は干上がりつつあったので、卵の生存率を上げるには岸(陸上)ではなく池の中央に向かって水中に産むべきではないでしょうか?

オオシオカラトンボ♀が池の浅瀬から岸に向かって水滴を飛ばす産卵行動は、たしかにご指摘のように「池の干上がりが進む時期、水面から離れた場所では卵が孵化や発生に適さなくなる恐れ」があります。実際、トンボの打水産卵は卵を水滴と一緒に前方へ飛ばし、より広範囲かつ適した場所に分散する意味があると考えられていますが、どの程度「着水するか」は水位や池の地形、個体の打水角度など自然条件によって変動します。

トンボの産卵行動の研究では、

普段は卵を確実に水面に落下させることが繁殖戦略ですが、池が干上がりつつあるなどの極端な状況では、必ずしも全ての卵が生き残るわけではなく、生存率の低下は避けられません。

メスは本能的には「水面やその近く」で産卵しますが、水位が低くなっている場合、結果的に一部の卵が水際から外れるリスクも発生します(環境把握能力には限界があります)。

しかし、トンボは基本的に当日の池の状態(少なくとも「目で見て水がある範囲」)を選ぶ能力が備わっていると考えられており、一定の確率で着水しない場所にも卵が飛ぶことも想定内です。干上がりの進行など短期間の変動には柔軟に対応しきれないため、「池の縁」に産み落とされた卵は水位低下で生存率が下がる可能性が高いですが、これは自然環境下でトンボが常に抱えるリスクでもあります。

まとめると、「池の水位が極端に下がると卵の生存率が低下しうる」ことはその通りですが、オオシオカラトンボの産卵行動はあくまで通常状態の水辺環境を前提に進化しており、池が干上がる非常時に完全対応するものではありません。生存率の確保には、産卵タイミング・場所選択・環境変動すべてが影響します。

産卵時の水位が高ければほとんどが水面に着地し高い生存率となりますが、干上がりが進めば一部は陸地に落下し孵化できず死亡します。

トンボは水面に産みつけようとしますが、環境条件が変動する以上「最大多数を水辺に着地させる」戦略しかとれません。

したがって、今回ご覧になったような状況は、生態的にはごく普通に見られる現象であり、トンボの本能的な産卵行動が必ずしもその年の最適条件に対応できないという自然界の一断面ともいえます。

それなら、オオシオカラトンボの卵や幼虫(ヤゴ)は乾燥に対して強い(耐性がある)のでしょうか?
卵の乾燥耐性
トンボ類の卵は一般に産卵直後は乾燥に弱いですが、発生が進み眼点(発生初期の目のような構造)が現れるまではやや耐乾性が低い一方、発生が進むと乾燥耐性がかなり強くなります。

水田や池が一時的に干上がっても、多くの種で卵は土や泥の中でかなりの乾燥や低温に耐えて春になり、水が張られると孵化することが可能です。

オオシオカラトンボの卵もこの耐乾性を持ち、通常の内陸のため池などで冬期に水が抜かれて乾燥状態が続いても、生き残れるケースがあり、これは稲作地帯のシオカラトンボなどとほぼ同等の能力とみなされます。

ヤゴ(幼虫)の乾燥耐性
幼虫(ヤゴ)は卵ほどの乾燥耐性はありませんが、冬季の低温下では、ある程度の乾燥や池干しにも耐えられることが知られています。

泥の中に深く潜ったり、落ち葉の下に隠れるなどして、一時的な湿泥状態なら生存できる場合もあります。

ただし高温期(春~夏~初秋)に完全な乾燥に晒されると生き残れないことがほとんどで、特に羽化直前の終齢幼虫などは乾燥に極めて弱いです。冬季など休眠に近い低代謝の状態だとやや耐えやすいですが、卵期ほどの耐性はありません。

まとめ
卵期の乾燥耐性は高く、池や水田の“冬期干上げ”程度には十分に耐える能力がある。

ヤゴは卵ほど乾燥に強くないが、泥の中など湿り気がごくわずかに残る状況では冬季~早春に一時的な乾燥に耐えられる場合もある。

一方、完全な乾燥(土がカチカチに乾く状態)が長期間続くと、幼虫はほとんど死滅してしまう。

多くの日本のトンボ同様、オオシオカラトンボも水辺の環境変動にある程度耐える進化をしていますが、耐性の「強さ」は卵>幼虫の順です。

トンボの♂が産卵しているパートナー♀をライバル♂から守るためには、交尾後も尾繋がりの状態を保ってペアで産卵するのが最善であるはずです。
なぜオオシオカラトンボ♂は連結を解除した状態で♀の警護飛翔をするのでしょうか?
「尾繋がりの状態で連結打水産卵するのでは産卵しにくくて仕方がない」とオオシオカラトンボ♀がたとえ感じたとしても、首根っこを掴まれた♀は自分の意志では連結を解除することが出来ません。
つまり産卵中に連結するかしないかは、♂が選択した結果なのです。
むしろ、オオシオカラトンボ♂が連結しないのは♂が浮気性だからと考えられます。
たとえ警護飛翔中でも、産卵池に別個体の同種♀が飛来したら、♂はただちに新しい♀を捕獲して交尾を試みることが(私は未見ですが)報告されているそうです。
以下はPerplexityによる回答です。
オオシオカラトンボの単独産卵と♂の警護飛翔の進化・行動の実態については、実際の現場行動と繁殖戦略の両面からもっと複雑な説明が必要です。

連結解除の主導は♂
トンボ類の多くでは交尾後、♂が自発的に連結を解除して♀を離す行動が観察されています。

これは交尾後に♀が産卵に移る時点で、連結保持による直接監督より、効率的な交尾回数増加や他の♀探索への戦略を取るためです。

つまり、単独打水産卵への切り替えは、進化的には♂側の交尾戦略(浮気的=複数の♀との交尾へ)や他の♀に対する即応性の高さの副産物です。

警護飛翔中の♂の行動
産卵警護中でも、池に新たな♀が現れると、警護していた♂は即座に警護中の♀を見捨て、新到着♀にアタックし連結しようとする行動が頻繁に報告されています。

トンボ♂は「警護」と「新たな交尾相手獲得」を状況ごとにスイッチしやすく、どちらかといえば「新たな♀優先」になる傾向が強いです。

進化的意義
単独産卵を可能にしたのは**♀の進化的自由ではなく、♂の浮気行動(頻繁な交尾機会探索)や多数交尾戦略に由来**します。

産卵警護は「自分の精子で産ませたい」気持ちの表れですが、より生殖成功率を高めるためには、他の♀の出現時に即座に乗り換える「浮気性」が同じくらい重要です。

観察・実験例
産卵池では、同時に複数ペアが産卵行動をとり、♂が急に警護♀から新たな♀に乗り換える現象が容易に再現・観察できます。

男女双方の利害一致ではなく、主に♂の多回交尾・浮気性・交尾機会争取戦略によって形づくられていると考えられます。

要するに、オオシオカラトンボの警護産卵と連結解除の主因は「♂の浮気性や交尾回数の最大化欲求」と見る方が、生態的現象の実態により近いです。ご指摘の通り、産卵警護中でも♂は新規到着の♀に即反応して乗り換えるため、「本当に守っている」のは縄張りと交尾機会だけであり、♀自身や受精卵に対する献身的防衛ではありません。

トンボは種類によって産卵行動が多様です(打空産卵、打水産卵、連結産卵、単独産卵など)。 
比較行動学と分子系統分類学を組み合わせると、トンボの産卵行動がどのような順序で進化してきたか推測できるだろうか?  
それとも、産卵行動はトンボの系統とはあまり関係なくて、収斂進化の結果だろうか?

比較行動学と分子系統分類学を組み合わせることで、トンボの産卵行動の進化順序を「かなりの程度」推測することは可能ですが、産卵行動の多様性は必ずしも系統樹のパターンにきれいに一致せず、**収斂進化(独立進化)も非常に多い**ことが明らかになっています。[1][2][3]

### 行動形態と系統の対応

- トンボの産卵行動には「静止接触産卵」「静止非接触産卵」「飛翔接触産卵」「飛翔非接触産卵」など複数の基本タイプがあり、各グループごとに特徴的な行動パターンを示します。[1]
- たとえば、イトトンボ科やアオイトトンボ科は連結潜水産卵や組織内産卵が典型で、ヤンマ類やアカトンボ類は空中からの打空産卵・連結打水産卵、トンボ科は♀単独の打水産卵が多いなど、類縁ごとの偏りがあります。[2][3]

### 分子系統分類学との比較

- 最新の分子系統樹による分析では、こうした産卵行動パターンが「一度だけ進化し、系統的に保存されている」場合と、「複数回、異なる系統で独立進化した(収斂進化)」場合の両方が認められています。[1]
- 一部の行動(例:組織内産卵や連結打水産卵)は比較的原始的な形質とされ、複数の系統にわたって保存されている傾向がありますが、**打水産卵や打空産卵など「目立った派生行動」は、異なるグループ間で独立に進化したと推測されるものが多い**です。[3][1]

### 収斂進化の具体例

- たとえば「打空産卵」はアカトンボ類だけでなく他の科にも現れ、「単独打水産卵」も様々な系統で発達しており、同じ行動が系統的に遠いグループでも発現します。[2][1]
- これは生息環境や繁殖戦略、生存率向上など外部要因による適応が大きく関わっているためと考えられています。

### 結論

- 比較行動学と分子系統分類学を合わせれば「祖先形質」「系統保存された行動」「収斂的な適応」の判別が可能ですが、**産卵行動の多くは複数回・多系統で独立進化した例が多く、単純な祖先―派生の直線的な進化とは限りません**。[3][2][1]
- したがって、「産卵行動の進化順序は系統ごとに異なる分岐と収斂の複合」と解釈するのが現在の理解です。

 


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2025/09/13

ナンテンの花粉を集めて回るクマバチ♀の羽ばたき【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年7月上旬・午後14:40頃・晴れ 

田園地帯の農道と民家の庭との境界に植栽されたナンテンキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が訪花していました。 
耳を澄ますと、重低音の羽音がかすかに聞こえます。 

関連記事(2年前の撮影)▶ ナンテンの花で採餌するクマバチ♀


蜂の動きがあまりにも忙しないので、240-fpsのハイスピード動画に切り替えました。(@0:23〜) 
訪花中の蜂が触れると、ナンテンの白い花弁が次々と散ってしまいます。 
吸蜜するクマバチ♀をよく見ると、後脚の花粉籠に薄っすらと黄色い花粉団子を付けていました。 
飛びながら空中で後脚を互いに擦り合わせています。 
体毛に付着した花粉をまとめて、花粉籠に移しているのです。 
後脚の花粉籠に黄色い花粉団子がうっすらと付着しています。 
花粉籠があることと、顔の頭楯が黒いことからも、♀と分かります。

ところで、ナンテンの若葉や茎は夏でも赤いのですね。

2025/09/09

ハラビロトンボ未成熟♂の飛び立ち【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年7月上旬・午前10:50頃・晴れ 

里山で山道を登っていると、見慣れない黒いトンボを見つけました。 
後でトンボの図鑑を調べてみると、ハラビロトンボLyriothemis pachygastra)の未成熟♂と判明。 

ススキの葉に留まり、翅を深く下げて休んでいます。 
巨大な複眼で覆われた頭部をグリグリ動かして、周囲を油断なく見張っています。 
口器をもぐもぐ動かすこともありました。 

顔面の額上部に青色の金属光沢がありました。 
腹部に副性器が見えたので、♂でした。 

飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。(@0:25〜) 
帽子を投げつけると、真上に飛び立ち、同じ葉には戻って来ませんでした。 

逃げたハラビロトンボ♂は、近くのヨモギの葉に留まり直していました。 
水平の止まり場で翅を深く下げて休んでいます。 
もう一度帽子を振って、飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画で撮りました。(@1:07〜) 
今度は左上へ飛び去りました。 


2025/09/07

ムラサキツメクサの花蜜を吸い飛び回る春型のキアゲハ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年6月中旬・午後15:00頃・晴れ 

湿地帯の端に咲いたムラサキツメクサ(=アカツメクサ)の群落で春型のキアゲハ♀(Papilio machaon hippocrates)が訪花していました。 
口吻を差し込んで吸蜜している間もキアゲハ♀は小刻みに羽ばたき続けてバランスを取っています。 
風が吹いてムラサキツメクサの頭花が揺れても、しっかりしがみついて吸蜜を続けます。 
風が止んで落ち着くと、羽ばたきを止めて吸蜜することもありました。

キアゲハ♀がムラサキツメクサの花から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:37〜) 



吸蜜の合間に、近くに自生するヨモギ(キク科)の葉にキアゲハ♀が一瞬だけ着地するのを目撃しました。(映像なし) 
産卵に適したセリ科の食草かどうか、触れて確認したようです。


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2025/09/03

向かい合ってペアで並ぶフタツメオオシロヒメシャク(蛾)の謎【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2025年6月中旬・午前10:00頃・晴れ 

里山(低山)の雑木林を抜ける細い山道で白い蛾がイタヤカエデ幼木の葉に止まっていました。 
結構レアな蛾なのに、同種と思われる大小2頭の個体が向かい合って同じ葉に静止しているのが不思議でした。 
前翅の前縁だけを互いに接しています。 
♀♂ペアが求愛行動の最中なのかと思いきや(まさに「お見合い」?)、全く動かず、交尾には至りませんでした。 
フタツメオオシロヒメシャクは触角の形状で雌雄を見分けられるらしいのですが、今回の静止状態ではともに前翅の下に触角を隠しているので、性別は不明です。 
触角も脚も見えません。 
大きさに性的二型があるのかな? 
なんとなく、左の大きな個体Lが♀で、右の小さな個体Rが♂ではないかと勝手に推測したのですが、定かではありません。 
後述するように、今回成虫が留まっていたイタヤカエデはフタツメオオシロヒメシャク幼虫の食餌植物ではありません。

求愛行動ではなく集団ねぐらだとしたら、ちょっと面白い話です。
白い翅の蛾は森の中でよく目立つので、寝るときに群れを形成すれば、捕食者に襲われる確率を少しでも減らせるはずです。
2頭が向かい合って並ぶことで、前翅にある眼状紋の威嚇効果を高めているのでしょうか。

動きが乏しいと動画ブログのネタになりませんから、飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:21〜) 
まずは物を投げつけてみました。 
イタヤカエデの幼木に物がぶつかって葉が揺れても、蛾の反応は鈍く、葉に止まったままで逃げようとしませんでした。(映像は割愛。) 
仕方がないので、次は蛾に直接触れてみることにしました。 
右手の中指で右の個体R♂?の左後翅にそっと触れると、準備運動無しですぐに飛び立ちました。 
もう1頭もつられて(連鎖反応で)飛び立つかと予想したのですが、意外にもイタヤカエデの葉の上に居残っていました。 
続けて左の個体L♀?の右前翅に触れると、すぐに飛び去りました。 

力強く羽ばたいて慌てて逃げる様子をスーパースローで見ても、残念ながら触角の形状は分かりませんでした。 
性別を知るには、一時的にでも捕獲・採集しないといけないようです。 


今回、蛾の同定には『くらべてわかる蛾 1704種』という図鑑のp62を参考にしました。 
「小型で後翅の紋が薄め」というキャプションも考慮してフタツメオオシロヒメシャクProblepsis albidior matsumurai)が一番似ていたのですが、「暖地性」という記述が気になりました。 
Perplexity AIに相談してみると、
フタツメオオシロヒメシャクは本来南方系の蛾で、暖地性とされており、従来は九州以南でよく見られ、本州の温暖な地域にも分布しています。しかし、最近の温暖化の影響で、九州以北の地域にも生息域を拡げているという記録があります。 山形県などの北国でも、近年の気候変動による温暖化で成虫が見られる可能性が高まっていると言えます。6月中旬の山形県の里山での観察も、温暖化の影響が関わっている可能性があるため、暖地性でありながら見られることは十分にありえる状況です。 まとめると、山形県には以前は分布していなかった種かもしれませんが、近年の温暖化に伴い北上し、見られるようになったと考えるのが妥当です.
フタツメオオシロヒメシャクの食餌植物はモクセイ科らしいのですが、私のフィールドで自生するモクセイ科の樹木はマルバアオダモぐらいしか思いつきません。 
里の人家近くの環境ではトウネズミモチやキンモクセイなどが植栽されているので、それらを利用しながら分布を広げている(北上中)のかもしれません。 

それとも、フタツメオオシロヒメシャクと同定した私の判断が間違いですかね? 


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2025/08/31

電線で交尾するスズメ♀♂【野鳥:ハイスピード動画】

 

2025年8月上旬・午前9:45頃・晴れ 

郊外の住宅地で電線に留まったスズメPasser montanus)の♀♂つがいが交尾をしていました。 
一方の個体だけが相手の横で翼を小刻みに震わせ続けていました。 
初め私は、てっきりスズメの幼鳥が親鳥に餌乞いしているのかと思ったのですが、交尾を始めたのです。 
後で動画をじっくり確認すると、2羽とも成鳥でした。 

慌てた私がカメラ操作を誤り、ハイスピード動画で撮り始めてしまいました。 
青空を背景に逆光気味だったのでカメラのバックモニターが見えづらく、ほとんど勘で撮ったので、最後まで私は自分のミスに気づきませんでした。 
(こういうときは、カメラの液晶画面を見るのではなくファインダーを覗きながら撮影すべきでした。)
スズメが交尾時に特有の鳴き声を発していたのに、ハイスピード動画では録音されない仕様なので残念無念。 
♀♂どちらの個体が鳴いていたのか不明です。(鳴くのは多くの場合♂らしい。) 
しかし今回はスズメの短い交尾行動をスーパースローで記録できたので、それはそれで満足です。 
交尾を記録したハイスピード動画が細切れで終了したのは、いつものように高画質のFHD動画で撮っていると勘違いしたままの私が良きところでスナップショット(静止画)を何枚も撮ってるつもりだからです。 

関連記事(4、5年前の撮影)▶  


2羽のスズメのうち、♂だけが終始、全身の羽毛を逆立てていました。
一方、♀の羽毛は普通でした。
よく晴れていて無風の条件だったので、風で♂の羽毛がなびいたり乱れたりしたのではありません。 
♂が性的に興奮したり緊張したりしている証かもしれません。
全身を大きく見せて♀にアピールする効果もありそうです。 

♂が♀の背から降りる度に、♀は電線を伝って右へ右へと移動します。 
♂は小刻みに羽ばたきながら♀を追いかけ、再び♀の背に飛び乗って交尾を挑みます。 

哺乳類の交尾と違って、鳥の♂は♀に背後からマウントしながら♀の首筋を咥えて保定する(バランスを取る)ことはありません。 
今回のスズメ♂が羽ばたき続けているのは、♀の背中という不安定な足場でバランスを取りながら交尾するためでしょう。
ただし、比較的安定した電線に降りたときにも♂は羽ばたきを続けていました。 (求愛誇示?)

交尾という熟語を構成する字の通り、確かに♀と♂の尾羽根が互いに交差しています。 
鳥の♂は陰茎を持たないので、交尾するときは総排泄孔をお互いに触れ合って精子を♀に渡すことになっています。 
電線の下から見上げるように撮影したので、スズメの総排泄孔を♀♂ともにしっかり観察できたのですが、尾羽根を何度も交差したのに総排泄孔は触れ合っていません。 
したがって、交尾試行を繰り返したものの、厳密に言うと交尾は失敗したようです。 
♂が♀にマウントし尾羽根を交差しているときに、♀が体を横に少しひねって(あるいは尾羽根のひねり・持ち上げ)協力しない限り、総排泄孔が触れ合って精子を受け渡すことは無理です。 
今回のスズメ♂は、♀の尾羽根の根元の背側に総排泄孔を擦りつけていましたが、そこに付着した♂の精子が自力で蠕動運動して♀の総排泄孔まで辿り着くのは不可能です。
つまり♀が協力姿勢を取らない限り、いくら尾羽根を交差した時間や回数が多くても、交尾は成功しません。

鳴き声が録音されていない無音のスーパースロー動画を見る限り、スズメ♀は♂を誘っているようには全く見えません。
今回♀は電線に身を伏せて♂のマウントを受容しているだけでした。 
♂との交尾を激しく拒否したという程ではありませんが、交尾に非協力的でした。 
私が電線の下でカメラを構えていたので、スズメ♀は落ち着けず(真下のヒトを警戒して)、♂との交尾を拒否したのかもしれません。 

交尾を終えたスズメの♀♂ペアは互いに離れて電線に留まり、各自で羽繕いしたり体を足で掻いたりしています。 
左の♂個体は「翼震わせ」を止めたものの、依然として羽根を逆立てたままで、まだ性的興奮の余韻が残っているのかもしれません。

今回は通りすがりにたまたま撮影できたので、その後のスズメ♀♂ペアの動向は不明です。 
したがって、繁殖の進行を示す行動(スズメ♀が巣材を運んだり、♂から給餌を受けたり、雛の声がしたり、など)は確認できませんでした。


【考察】 
この記事を書くために、ChatGPTと問答を繰り返し、有益なブレインストーミングができました。 
(一方でPerplexity AIは、スズメ♂が交尾時に羽根を逆立てることをなぜか知りませんでした。)

8月上旬にスズメが交尾したのは時期的に遅くないだろうか? 
ChatGPTに問い合わせると、
スズメは1年に 2〜3回、多い場合は4回ほど繁殖 することがあります。北日本の郊外では:

第1回繁殖:4月〜5月

第2回繁殖:6月〜7月

第3回繁殖:7月下旬〜8月上旬

気温や餌の量が減り、換羽期に入ると繁殖活動は終了します。北日本では 8月中旬以降はほぼ交尾は観察されない と考えてよいです。
スズメは基本的に一夫一妻性とみなされていますが、♂がパートナーの♀の浮気(婚外交尾)を防ぐために、交尾の直前に総排泄孔から精子を掻き出すことは解剖学的に不可能です。
スズメの♂は♀をライバル♂からひたすらガードして頻繁に交尾するしか、卵や雛の父性を保証する術はありません。 

今回スズメ♀の行動は(消極的な)交尾拒否と思われます。
交尾相手の♂を選り好みしたのでしょうか?
 「交尾を試みたけど♀に拒否されて失敗した(受精できない)」ということをスズメ♂は自覚しているはずです。
交尾(試行)後の羽繕いでも♂が羽根を逆立てたままなのは、欲求不満かもしれません。 
♀がパートナー♂との交尾を拒むと、その後に♂からの給餌や縄張り防衛などを協力してもらえなくなるかもしれません。
つまり、pair-bonding(つがいの絆を保つ)の手段として交尾を形式的にでも受け入れることが必要なのでしょう。 

今回のように下から見上げる形で観察・撮影していた場合、♀にとっては「近くに潜在的な脅威あり」と感じ、自然に交尾を拒否する行動が強まった可能性が高いです。

つまり、交尾未遂は**♀の心理的・環境的要因による一時的な拒否**の結果である可能性があります。

これは♀の繁殖戦略や精子選択の意思とは直接関係せず、安全確保のための行動として理解できます。

この場合、オスの欲求不満や羽毛逆立ちも、♀の拒否に起因して生じた「未遂反応」と考えるのが自然です。

2025/08/26

シロツメクサの花で採餌するオオマルハナバチ創設女王【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月下旬・午後16:20頃・晴れ 

田園地帯の農道に咲いたシロツメクサの群落でオオマルハナバチ♀(Bombus hypocrita)が訪花していました。 
口吻を差し込んで吸蜜し、ついでに花粉を集めているようです。 
後脚の花粉籠に橙色の花粉団子を付けています。 

やや小型の個体でしたが、この時期に活動しているのはワーカー♀ではなく、創設女王と思われます。 
しかし複数個体を見かけたので、暖冬の後の今季はワーカー♀が例年よりも早く羽化して活動しているのかな? 

平地性のクロマルハナバチと山地性のオオマルハナバチは、標高によって大まかに棲み分けていると言われています。 
現場は山麓に近い里なので、オオマルハナバチの活動分布域の境界(標高の下限)かもしれません。 

シロツメクサの花から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:56〜) 


2025/08/24

山道から飛び立つミヤマセセリ♂【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月上旬・午前11:30頃・くもり 

里山を登る山道で、ミヤマセセリ♂(Erynnis montanus)が翅を全開にして地面に止まっていました。 
枯れ葉(落葉)の上で静止していると、広げた翅の斑紋が目立たない保護色になっています。 
そのため、ちょっと目を離しただけで、見失いそうになります。 

曇天なので、日光浴ではなさそうです。 
晴れていても曇っていても、いつも翅を広げて止まるミヤマセセリの場合、日光浴しているかどうか翅形では判断できません。 
近年の分子系統解析によると、セセリチョウ科はタテハチョウ科やアゲハチョウ科よりもやや早い段階で分岐したグループで、やや原始的な特徴を持つのだそうです。 
翅の開閉で体温を調節する行動がセセリチョウ科では発達しなかったのだろうか。 

関連記事(16年前の撮影)▶ ミヤマセセリの日光浴

口元に注目すると、ゼンマイ状の口吻を少しだけ伸縮させたものの、地面や落ち葉を舐めてミネラル摂取をしている訳ではありませんでした。 

飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:00〜) 
すばやく羽ばたいて飛び去りました。 
しかし少し飛んだだけで、同じ山道に着陸します。 
♂は山道に沿って縄張りを占有し、交尾相手の♀が来るのを待ち伏せしているのかもしれません。 


2025/08/19

休耕地で採食するキジ♂が合間に母衣打ち♪【野鳥:FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月下旬・午前10:05頃・晴れ 

休耕地らしき原っぱの端っこでキジ♂(Phasianus versicolor)が歩きながら地面をあちこち啄んで食事をしています。 
原っぱの奥にある雑草の茂みや雑木林にいつでも逃げ込めるように、林縁から離れずに採食しています。 
しかし草丈の高い茂みの中ではなく、もっと開けた見晴らしの良い原っぱで採食するのがキジ本来の好みのようです。 

私の背後の車道をトラックや普通車両が次々と騒々しく走行しても、だいぶ距離が離れているので、キジは気にしません。 

母衣ほろ打ちが撮れるまで、じっくり長撮りしてみました。 
採食の合間にときどき立ち止まってやや背伸びをしても、キジ♂はなかなか鳴いてくれません。 
全身の羽毛を逆立てて身震いすることもありました。 

ようやく、縄張り宣言の母衣打ち♪を披露してくれました。(@5:44〜) 
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると(@6:17〜)、ケンケーンと大声で絶叫する前後で素早く3+9回羽ばたいていました。 
この力強い羽ばたきによって、ドドドド…♪という重低音のビートが鳴き声の伴奏になります。 
母衣打ちの際に瞬膜が一瞬閉じています。 

胸元の羽毛を嘴で整えてから(羽繕い)、採食を再開。 

繁殖期のキジ♂は定期的に鳴くので、次は240-fpsのハイスピード動画でも母衣ほろ打ちを録画しようと、同一個体を辛抱強く撮り続けました(@6:32〜)。 
やはりこの個体は、3+9回羽ばたいて母衣打ちしていました。


2025/08/18

セラスチウム(シロミミナグサ)の花蜜を吸うベニシジミ夏型【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月上旬・午前10:05頃・くもり 

民家の花壇に咲いた見慣れない園芸植物の群落で夏型のベニシジミLycaena phlaeas daimio)が訪花していました。 
私は園芸植物に疎いので、Googleレンズで画像検索したところ、白い花の名前がセラスチウム(別名シロミミナグサ、ナツユキソウ)と判明。 

曇天のため、少しでも日光を浴びようとベニシジミは翅を半開きのまま吸蜜しています。 
少し飛んで別の花に止まり直し、次々に吸蜜しています。 

ベニシジミが花から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:38〜)

2025/08/08

ノダイコンの花蜜を吸うナミアゲハ♂の羽ばたき【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月中旬・午前11:05頃・晴れ 

小川の土手に咲いたノダイコン(大根の内陸性自生種)の群落でナミアゲハ♂(Papilio xuthus)が忙しなく訪花していました。 
吸蜜中もバランスを保つために、かなり忙しなく羽ばたき続けています。 
この組み合わせは初見です。 

腹端の形状から♂と判明。 
この♂個体は、左後翅の尾状突起が欠損しています。 

花から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:57〜) 
スローモーションでじっくり観察すると、ゼンマイ状の長い口吻の根元付近に薄い黄色の花粉が大量に付着していることに気づきました。 
つまり、ナミアゲハ♂はノダイコンの花に口吻を差し込む度に授粉を助けている送粉者ということになります。 
狙った訳ではないのですけど、背後を流れる小川の水面の煌めきが美しく撮れていました。 

実はキアゲハもノダイコンの同じ群落に飛来したのですが、撮り損ねました。 
2種のアゲハチョウは互いに無関心で、誤認求愛や蜜源の占有行動も起こりませんでした。

2025/07/29

砂利道で休み、準備運動後に飛び立つクジャクチョウ【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年6月下旬・午後13:55頃・くもり 

里山の砂利が敷かれた林道で、美しいクジャクチョウInachis io geisha)と出会いました。 
翅を全開に広げて砂利道に静止していますが、曇天で日差しがないので、体温を上げるための日光浴ではなさそうです。 

翅に破損がない、きれいな個体でした。 
さすがに越冬明けの個体ではなく、羽化直後の個体と思われます。 
寒冷地では年一化なのだそうです。 

腹部をかすかに上下動させています。 
途中から翅をピクピクと動かし始めたのは、飛び立つ前の準備運動なのでしょうか? 
やがてクジャクチョウは翅を閉じて、小刻みに翅を震わせています。 
赤く美しい翅表が見えなくなり、黒い地味な翅裏を見せてくれました。 
タテハチョウ科なので、昆虫なのに脚は4本しか見えません。(前脚が退化している) 

準備運動で体温が十分に上がったのか、素早く飛び去りました。 
温度計を持ってこなかったので、このときの気温は不明です。 
私の体感では、別に肌寒い日ではありませんでした。 
大型の蛾ならともかく、気温の高い初夏に飛翔前の準備運動が必要とは知りませんでした。 
クジャクチョウは北方系の蝶なので、気温の低い山地でも活動できるように適応しているのでしょう。 

クジャクチョウは飛び立っても、砂利道の林道を少し往復しただけで、ほぼ同じ地点に着陸する印象でした。 
縄張りを張っているのでしょうか?(占有行動)
クジャクチョウの成虫は外見に性差が乏しく、フィールドで単独個体の性別を見分けるのは至難の技なのだそうです。

少し飛んだだけで、砂利道の少し離れた地点に留まり直しました。 
今度は斜め前方から撮れたのですが、クジャクチョウはゼンマイ状の口吻を縮めたままでした。 
小石を舐めてミネラル摂取している訳ではありません。 

クジャクチョウが飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:02〜) 
閉じた翅を小刻みに震わせていたのですが(準備運動?)、警戒を解いたのか、翅を全開に戻しました。 
急に力強く羽ばたいて、飛び立ちました。 


※ 説明のために、撮れた映像素材の順番を入れ替えました。 
本来なら、冒頭のただ翅を広げて静止しているだけの退屈なシーンは編集でコンパクトにカットすべきなのは分かっています。 
久しぶりに出会えた憧れのクジャクチョウが息を呑むほど美しく、見とれてしまったので、あえてノーカットでお届けします。 

もう細かいことは覚えていないのですが、「林道を下山中に複数個体を撮影」と野帳には書き残してあります。



2025/07/27

早春の雪国で活躍する家庭用の小型除雪機【FHD動画&ハイスピード動画】

 

(北半球の)みなさまに暑中見舞い申し上げます。 
あまりにも暑いので、いつもと趣向を変えて、少しでも涼し気な動画をお届けします。 


2023年3月中旬・午後17:05頃・晴れ 

山麓の農村部で小型のロータリー式除雪機で道端の雪を片付けていました。 
側面にYANMARのロゴが見えます。 
家屋の周囲に積み上げられた雪の山を切り崩しながら遠くに吹き飛ばしているようです。 
おそらく冬に屋根からの雪下ろしで積み上がった雪山を、春になって片付けているのでしょう。 
おまけに車道から大型除雪車が車道から道端に飛ばした雪も一緒に積み上がっているので、暖冬でも巨大な雪山が形成されます。 
昨今では各家庭で小型の除雪機を所有していることが多いです。

240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:23〜) 
砕いた雪を連続で吹き飛ばしていて、見応えがあるスーパースロー動画になりました。 
最後に小さな雪塊が1個だけ排出され、放物線を描いて飛んで行く様が、いとおかし。 


2025/07/21

ノアザミの花から花へ飛び回り吸蜜するミヤマカラスアゲハ春型♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年6月上旬・午前11:20頃・晴れ 

山麓を流れる用水路沿いに咲いたノアザミの群落で春型のミヤマカラスアゲハ♀(Papilio maackii)が訪花していました。 
広げた翅を小刻みに開閉しながら、口吻を伸ばして吸蜜しています。 

カラスアゲハと違って後翅の翅裏に明瞭な白帯があるのが、ミヤマカラスアゲハの特徴です。 
前翅表に黒いビロード状の性斑(性標)がないので♀と分かります。 
腹部が太く、腹端の形状(尖っていない)からも♀と確認できます。 

ノアザミの花から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:10〜) 
訪花中はバランスを取るために軽く羽ばたいています。 
スーパースローで見ると、後翅を広げっぱなしで、前翅のみを羽ばたかせていることが分かりました。 
Perplexity AIとの問答で教えてもらったのですが、
アゲハチョウ科(Papilionidae)では、前翅と後翅は基本的に連結していません。 鱗翅目(チョウ目)の中でも、アゲハチョウ科を含む多くの「チョウ類」では、ガ類に見られる「フレネュラムとレティナクル(frenulum and retinaculum)」による前翅と後翅の連結機構が退化または消失しています。そのため、アゲハチョウ科の蝶は前翅と後翅が独立して動きます。
撮影後にノアザミの総苞片が粘ることを確認しました。 


関連記事(7、18年前の撮影)▶  

2025/07/11

ナワシロイチゴの花から花へ飛び回り採餌するクマバチ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年6月上旬・午前11:25頃・くもり 

山麓の道端に咲いたナワシロイチゴの群落でキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が訪花していました。 
口吻を伸ばして吸蜜しているクマバチ♀をよく見ると、後脚の花粉籠は空荷でした。 

ナワシロイチゴの花に離着陸する瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:25〜) 


関連記事(10、11年前の撮影)▶  

2025/06/17

ヤマキヒゲナガ♂の群飛とレック形成【蛾:FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月下旬・午後13:20頃・くもり 

里山の急斜面をつづら折れの山道で登っていると、草むらの上を多数の小蛾がチラチラと飛び回っていました。 
この季節だと、てっきりオドリバエの群飛かと思いきや、下草に着陸した虫をよく見たらヤマキヒゲナガ♂(Nemophora japonica)でした。 
飛び疲れた個体なのか、近くのシダの葉や灌木の若葉に2頭ずつ並んで留まっていました。 
お気に入りの場所で交尾相手の♀を待ち伏せする作戦なのかもしれませんが、♂同士で止まり木を巡る争いにはなりませんでした。
(縄張り争いや占有行動はなし。)

飛翔シーンを高画質のFHD動画で撮影しても、体が小さい上にちらちらと羽ばたく動きが素早すぎてよく見えません。 
ヤマキヒゲナガ♂の群飛を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:51〜) 
少なくとも4頭以上の個体が激しく飛び回っています。 
最後まで飛んでいた個体が、シダの葉に着陸しました。 

同じレック型求愛でも、ユスリカの群飛(蚊柱)とは様子がまるで違いますね。 

関連記事(1、10年前の撮影)▶  


実は、今回撮影した動画素材の順番を入れ替えています。 
ハイスピード動画を一番初めに撮影していて、私が近づいたせいなのか群飛が次第に解消しました。 




【考察】 
ヒゲナガガ科の仲間は、♂が求愛のために群飛をすることで有名です。 
私が山道を通りかかったせいで、ヤマキヒゲナガ♂の群れが警戒して下草から飛び立った訳ではありません。 
群飛を見つけた私がそっと近づいて、動画で撮影したのです。 

くらべてわかる蛾1704種』という図鑑にヤマキヒゲナガは非掲載でしたが、ヒゲナガガ科についての解説を読むと、
小型。♂の触角は前翅長の3倍以上と非常に長い。♀の触角は♂の半分以下と短く、基半部に黒い毛が生え太く見える種が多い。♂は昼間長い触角をたなびかせて競い合うように群飛する。 (p15より引用)
日本動物大百科9昆虫II』によれば、
ヒゲナガガ科には群飛する種と群飛しない種がいる。(中略)クロハネシロヒゲナガは、日中、草地を低くとびかうのが見られ、多数の♂が同じ場所で白い触角を目立たせて飛翔することもあるが、これらの♂は互いにまったく無関心で干渉がないように見える。 群飛をするホソオビヒゲナガでは、♂がからみあって上下するような飛翔をする。樹上のかなり高い位置で群飛することもあり、カ類の群飛と見まちがえることもある。(p71より引用)
ヒゲナガガ類の♂では極端に長くなっていて、前翅長の2〜3倍の長さがある。これは群飛のときバランスをとるのに役立つのかもしれない。(p25より引用)
ヒゲナガガ科の♂は多数が集まって求愛のためのレックを形成し、群飛で♀を誘引して飛びながら交尾するのだそうです。
資源とは特に関係の無い場所に集まった雄が、そこで小さな縄張りを作り、求愛のディスプレイを行う。 このような行動をする雄たちをレック (lek) という。レックが求愛のディスプレイで自分をアピールし、雌を呼び寄せて交尾をするというのがレック型一夫多妻である。
ヤマキヒゲナガ幼虫の食草が何なのか、解明されていないそうです。 
産卵に来る♀を待ち伏せするために、食草の付近で♂がレックを形成している可能性もあります。 
今回ヤマキヒゲナガ♂が留まっていた植物(シダ植物や灌木)の種類をまじめに同定すべきでしたね。 
また、羽化した直後の♀と交尾する可能性もありますが、どこで羽化するかも分かっていないらしい。 

ヤマキヒゲナガの群飛(求愛レック)で性フェロモンを放出している個体は♀♂どちらなのか、という点がとても大切な問題になります。 
そして、性的二型の触角の機能とも関連してきます。 
ヤマキヒゲナガの性フェロモン分子の実態はまだ化学的に同定されていません。 
他の多くの蛾の仲間と同様に、♀が性フェロモンを放出していると仮定した上で、♂の長い触角は空気中の微量な性フェロモンを検知しやすくするための進化適応だというのが、ネット上に流布する定説になっているようです。 
しかし、この定説を誰が言い出したのか、一次ソース(出典)や科学的根拠を見つけられませんでした。 

私はこの定説にどうしても納得できません。 
ヒゲナガガ触角の性的二型が長短の違いだけなら、私も定説に文句をつけたりしないのですが、そうではありません。
ヒゲナガガ♂の触角はただただ異様に長いだけで、単純な形状(糸状)だからです。 
一方、♀の触角は♂よりも短いものの、基部に黒い短毛が密生していて、太くなっています。 
つまり触角の表面積は♀の方が圧倒的に大きくて、微量な性フェロモンを検知しやすくなっています。 
性フェロモン受容体の分布を直接調べることが出来たら、解決するはずです。 
ヤマキヒゲナガ♂は群飛しながら性フェロモンを放出し、♀が視覚的および化学的(嗅覚的)シグナルで誘引されて群飛に飛び込み、1頭の♂と交尾する、というのが私の仮説です。

また、ヤマキヒゲナガの♂は何を頼りにして求愛レックを形成するのでしょうか? 
♀が来そうだと思う場所(目立つ茂みの近くなど)を個々の♂が判断し、結果として複数の♂が集まってくるだけかもしれませんが、いかにも効率が悪そうです。 
遠くまで聞こえる鳴き声(聴覚的なシグナル) を発している訳でもありません。
白くて長い触角や翅の金属光沢など視覚的なシグナルを頼りにして、♂たちが集まってくると考えられているそうです。 
集合フェロモンを放出しているかもしれない、と私は思いつきました。(嗅覚的、化学的なシグナル) 
♂が放出する(と個人的に仮定している)性フェロモンと集合フェロモンは別個の分子かもしれませんし、同じ分子が受け手の性別によって異なる効果をもたらすのかもしれません。 

ヒゲナガガの群飛はなかなか面白そうな研究テーマですが、配偶行動の観察だけでなく、食草や飼育法を確立するところから始める必要がありそうです。 
長い触角を実験的に切除すると、飛翔や配偶行動のどの過程に支障を来すでしょうか?

木の葉の表面に居座って周囲を360°見回していた♂個体は、これからまさに他の♂と合流してレックを形成し始めるところだったのかもしれません。 


今回もPerplexity AIを相談相手に調べ物をしたり、観察結果の解釈についてしつこく問答を繰り返しました。
ブレインストーミングの結果を以下のレポートに要約してもらいました。 (文言の一部を手直し済み)
もっともらしい専門用語を駆使して、かなり背伸びをした「それっぽいこと」を生成AIが言ってるだけなので、ご注意ください。
AI自身が私の動画を視聴した上でヤマキヒゲナガ♂の行動を独自に解釈している訳でもありません。
今後の展望についても、素人には手に余ることばかりです。
いずれ誰かが解明してくれることを期待します。


ヤマキヒゲナガ♂の群飛行動と配偶システムに関する考察

Ⅰ. 観察概要

  • 日時・場所:2024年5月下旬・山形県の里山(草木に覆われた山腹の急斜面)

  • 気象条件:曇天・無風状態

  • 行動特徴

    • 少なくとも4頭の♂が同一空間で緩やかな群飛

    • 飛翔個体に加え、シダ植物と広葉樹幼木(推定:ニワトコ・オシダ?)に静止する♂が混在

    • オス同士の闘争行動は確認されず

    • メスおよび交尾行動は未観察

Ⅱ. 行動生態学的解釈

1. 群飛の機能仮説

  • レック型配偶システム

    • オスが特定の微気象条件(風速・日照)下で集団飛翔し、メスの訪問を待機1

    • ヒロオビヒゲナガ(N. raddei)の日没前スウォーム行動との類似性

  • 待機戦略の多様性

    • 飛翔個体:視覚的アピールによるメス誘引

    • 静止個体:エネルギー節約型の待機戦略

2. 触角の形態と機能

  • オス触角の特徴

    • 体長の3倍に達する糸状触角(全長約15mm)

    • 表面積は♀触角(毛密生)の1/5以下

  • 機能仮説

    • フェロモン検知:未検証(従来説の再考必要)

    • 飛翔安定装置:長い触角が「生物学的スタビライザー」として機能6

    • 視覚シグナル:光反射による個体間通信

3. フェロモンシステムの特殊性

  • 従来説との矛盾

    • ヒゲナガガ科では♀発信型フェロモンが主流とされる

    • 本種では♂がフェロモンを放出している可能性

  • 二重機能仮説

    • オスフェロモンが同性を集合させ(集合フェロモン)、同時に♀を誘引

Ⅲ. 未解決問題と研究課題

1. 行動メカニズム

  • 群飛形成の誘引要因(化学的/視覚的/地形的)

  • 静止個体と飛翔個体の役割分業

  • メスの出現パターンと時間帯依存性

2. 生理学的課題

  • 触角切除実験による飛翔安定性の定量評価

  • 分泌物質のGC-MS分析によるフェロモン同定

  • 触角感覚器の走査型電子顕微鏡観察

3. 進化的意義

  • 小型化(体長5-7mm)と触角長大化の相関

  • レイノルズ数(慣性力と粘性力の比)低下環境(体長比Re≈100)での飛翔制御適応

  • 種特異的フェロモンシステムの分子基盤

Ⅳ. 今後の観察指針

  1. 時間帯別行動記録:日出~日没まで1時間毎の個体数変動

  2. 環境要因記録

    • 気温・湿度・風速の連続測定

    • 植物フェノロジー(開花・新芽展開)との関連

  3. 標識再捕法

    • 蛍光粉末による個体追跡

    • 行動圏と移動距離の推定


総括

本観察はヒゲナガガ科の配偶システム解明において以下を示唆:

  • 従来の「♀発信型フェロモン」モデルに当てはまらない可能性

  • 触角の多機能性(感覚・飛翔制御・視覚信号)の共存

  • レック行動の多様性(闘争なき集団形成)

今後の詳細な行動観察と化学分析が、昆虫の微小環境適応戦略解明に貢献すると期待されます。216

  1. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9939265/
  2. https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenmin/ao-kendo/files/H24dmns-1.pdf
  3. https://www.city.hiroshima.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/855/45554.pdf
  4. https://hs-gakko.org/wp-content/uploads/2024/03/ikimono.pdf
  5. http://www.esj.ne.jp/meeting/51/pdf/book/jes51p2.pdf
  6. interests.insect_physiology
  7. http://www.jpmoth.org/Adelidae/Adelinae/Nemophora_japonica.html
  8. https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/document1408/kanagawa/_pdf/eis2_kanagawah14.pdf
  9. https://www.city.minokamo.lg.jp/uploaded/attachment/2441.pdf
  10. https://www.city.nobeoka.miyazaki.jp/uploaded/attachment/8659.pdf
  11. https://www.ars.usda.gov/ARSUserFiles/20200500/Pubs%202020/HullFonagy%202019.pdf

【アフィリエイト】 

2025/06/11

ヤマキヒゲナガ♂(蛾)の身繕いと飛び立ち【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月中旬・午前11:50頃・晴れ 

山道の横で広葉樹幼木の若葉にヤマキヒゲナガ♂(Nemophora japonica)が留まっていました。 
翅の金色模様が美しく輝き、非常に細長い触角が春風になびいています。 
小さな蛾ですけど、蛾の苦手な方にぜひ一度見て欲しい美麗種の一つです。 

日の当たる木の葉(樹種不明)の上で方向転換し、少し歩きました。 
なぜかその場で360°ぐるっと向きを変えました。 
飛び立つ前に風向きを調べているのかと思ったのですが、飛び立ちません。 
日光浴しているのでしょうか? 

やがて、その場で身繕いを始めました。 
自慢の長い触角を前脚で拭って、きれいに掃除しています。 

葉の上からヤマキヒゲナガ♂が飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:17〜) 
ところが、待てど暮せど飛んでくれません。 
近くで帽子を振り回しても、枝葉を揺らしても、まったく飛び立たないのです。 
痺れを切らした私が右手中差し指をゆっくり近づけ、翅の後端にそっと触れると、ようやく慌てて飛び立ちました。 
大型の蛾と異なり、小型の蛾は準備運動なしでも飛び立てるのが普通です。 

関連記事(12年前の撮影:220fps)▶ ヤマキヒゲナガ♂?(蛾)の飛び立ちハイスピード動画 


飛行中は長い触角の空気抵抗が明らかに大きくて、速く飛ぶのは無理そうです。 
鳥などの捕食者に襲われた時に明らかに不利だと思うのですが、このような形質がなぜ進化してきたのでしょう? 
♂だけが特に長い触角を持つのらしいので、性淘汰のハンディキャップ説ランナウェイ説で説明することができそうです。 
日本動物大百科9昆虫II』によると、
ヒゲナガガ類の♂では極端に長くなっていて、前翅長の2〜3倍の長さがある。これは群飛のときバランスをとるのに役立つのかもしれない。(p25より引用)
とのことですが、私はヒゲナガガ類の群飛をまだ一度も見たことがありません。 


木の葉の上で留まり、ぐるっと方向転換したり、飛びたがらなかったりしたことに何か意味があるのでしょうか? 
ただの日光浴だったのか、それとも交尾相手の♀を待ち伏せ、縄張りを張っていたのかな? 
本種の食草は解明されていないらしく、今回の止まり木の樹種をしっかり調べるべきだったかもしれません。 
(ヤマザクラ? キブシ?)
よくあるシナリオとしては、♀が産卵する樹種で♂が待ち伏せして交尾を挑むのかもしれません。

2025/05/30

止まり木で離着陸を繰り返し獲物を狩って捕食するムカシヤンマ♂【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月中旬・午後14:05頃・晴れ 

里山の入山口から少し登った地点で、林道横の枯木の幹に見慣れないヤンマが止まっていました。 
翅を広げたまま幹にぺたりと止まっています。 
顔の額が白いです。
撮れた写真からGoogleレンズ(画像検索)で調べてみると、ムカシヤンマ♂Tanypteryx pryeri)という珍しいトンボでした。 

ときどき止まり木から飛び立っても、同じ止まり木(または隣接する別の止まり木)にすぐ戻ってきます。 
口元をよく見ると何か獲物を咀嚼していたので、縄張りを張って(※ 追記参照)獲物を捕食しているのだと分かりました。 

関連記事(14年前の撮影)▶ ムカシヤンマ♂の食事 

ムカシヤンマ♂は次々に虫を捕食していたのですが、獲物の全身を私が確認する前にどんどん食べてしまうので、その正体を同定できませんでした。 
もし映像から獲物の種類を大まかにでも見分けられる方がいらっしゃいましたら、教えていただけると助かります。 
根元から食べられている獲物の黒くて細長い脚を見ると、なんとなくトンボのような気がしました。 
獲物の脚の次は、真っ黒で細長い腹部を前方からムシャムシャと食べ進みます。(@0:54〜4:50) 
そこだけ見ると、ツチバチを連想しました。
しかしツチバチなら大抵の種類は腹部に横縞模様があるはずですし、私は5月中旬にツチバチの成虫を見たことがほとんどありません。 

獲物の腹部の内部から白い泡状?の物質が出てきました。 
どうやらその白い泡はムカシヤンマにとって不味いらしく、獲物の腹部をほとんど食べ残して口から捨ててしまいました。
その食べ残しは止まり木の幹に付着したのですが、ムカシヤンマ♂が飛び立つ拍子に落下しました。 

次にムカシヤンマ♂が狩ってきた獲物も有翅の小さな昆虫でした。 
トンボを背側から撮ると、肝心の口元がよく見えません。 
獲物の正体を調べるには、横から狙って撮影する必要があります。 

ムカシヤンマ♂が止まり木から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@5:12〜5:50) 
すぐに舞い戻ってきて同じ止まり木に着陸するシーンも撮れていました。 
このときは狩りに失敗したようで、獲物を脚で抱えてもいなければ口に咥えてもいませんでした。 

最後にムカシヤンマ♂はお気に入りの枯木を離れて、少し離れたスギの幹に止まり直しました。(@5:50〜) 
止まり木で捕食中に左からクロアリ(種名不詳)が近寄ってきたものの、巨大なヤンマを襲って獲物を強奪することはありませんでした。 


※ 状況を分かりやすく伝えるために、動画素材の順番を少し入れ替えて編集しました。 


※【追記】 
トンボが特定の止まり木を中心として飛びながら空中で狩りを行い、元の止まり木に戻ってくる行動を繰り返していたとしても、他の侵入個体を追い払うなどの防衛行動(占有行動)を見ない限り、そのトンボが縄張りを張っていると厳密には言えないのだそうです。 
つまり、どうしても観察時間の長さやトンボの個体密度によって解釈が左右されてしまいます。 
止まり木のトンボ個体に食欲や性欲があるかどうか(未成熟かどうか)でも行動は変わってくるでしょう。


2025/05/28

ホウチャクソウの花で採餌するヒゲナガハナバチの一種♀?【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月上旬・午後12:40頃・くもり 

里山の中腹にある樹林帯をトラバースする林道に沿って咲いたホウチャクソウの群落で訪花するハナバチ♀を見つけました。 
後脚の花粉籠に橙色の花粉を付けて運んでいます。 
したがって、ハキリバチ科ではなくミツバチ科の♀です。 
 過去の観察例ではトラマルハナバチ♀がホウチャクソウに訪花していたのですが、今回のハチはマルハナバチほど毛深くありません。 

関連記事(6,8,16年前の撮影)▶  


ホウチャクソウに忙しなく正当訪花を繰り返し、花蜜を吸っています。 
隣に咲いたカキドオシの花には見向きもしません。 
採餌の合間にホウチャクソウの白い花筒の開口部にぶら下がったまま身繕いし、体に付着した花粉をまとめて後脚の花粉籠に移しました。 
化粧が済むと、再び正当訪花でホウチャクソウの花の奥に潜り込みました。 

訪花シーンを240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:44〜)
暗くなりますが、固定焦点のスローモーションでじっくり観察できます。

薄暗い林床なのでカメラのAFがなかなか被写体に合焦してくれず、焦りました。 

さて、この謎のハナバチの名前は何でしょう?
素人目にはスジボソフトハナバチ♀と似てるかな?とも思ったのですが、スジボソフトハナバチの出現時期は5月下旬からとされています。
2024年の冬は異常な暖冬少雪で、春の訪れも例年より早かったのですが、それにしても山形県の雪国で5月上旬にスジボソフトハナバチを見るのはかなり異例です。
また、スジボソフトハナバチなら胸背の毛色がもっと明るい茶色のはずです。
今回の個体の胸背はもっと暗くて白味がかった黄土色でした。
ツルンとした黒い腹部には白い横縞が3本あります。(腹部上部の4本目は中央で途切れている)

今回は動画撮影を優先したので、蜂の採集も出来ず、鮮明なストロボ写真も撮れませんでした。
動画だけから蜂を同定するのは難しいです。 
私としては、シロスジヒゲナガハナバチ♀(Eucera spurcatipes)やニッポンヒゲナガハナバチ♀(Eucera nipponensis)など、ヒゲナガハナバチ属の一種Eucera sp.)ではないかと推測しています。 
もし間違っていたら、ご指摘願います。

謎のハナバチを同定するためにGoogleレンズ(画像検索)やPerplexity AIを使って問い合わせてみたのですが、マイナーな種類のハナバチではAIが学習するデータがまだ充分に揃っていないという印象です。
その場合はAIの性能の向上を待っていても仕方なくて、日本全国の研究者やナチュラリストが寄って集って粛々と蜂の記録をインターネット上に蓄積するしかありません。


2025/05/26

ハラビロトンボ♀の飛び立ち【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月中旬・午後12:50頃・晴れ 

里山で下山していると、寸詰まりで黄色っぽい見慣れないトンボが山道の横のタニウツギ灌木に止まっていました。 
画像検索(Googleレンズ)で調べてみると、ハラビロトンボ♀(Lyriothemis pachygastra)と判明。 

翅を斜めに深く下ろした姿勢で休みながらも、周囲を油断なく見張っています。 
大きな複眼のある頭部がグリグリと動き、獲物が飛来するのを待ち伏せしているようです。 
飛び立っても大体同じ場所に舞い戻ってくるということは、縄張りがあるのでしょうか。 
止まり木に戻ってきた時にハラビロトンボ♀の口元を見ても、獲物を捕食してはいませんでした。 
どうやら狩りは失敗だったようです。 

飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:27、1:48〜) 
最後は物を投げつけて強制的に飛び立たせました。



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