2018/02/24

アカタテハ:初夏の避暑行動?



2016年6月上旬・午後12:18〜12:20

低山の峠道を歩いていると、アカタテハVanessa indica)が山腹の草むらに飛び込み、おそらくヌルデの幼木と思われる植物の葉裏に下向きで止まりました。
翅を開閉しながら休んでいます。
この日は朝から快晴なのに、葉表で翅を広げて日光浴していません。
むしろ、正午過ぎの強い日差しを避けるために葉陰に隠れた印象を受けました。
少なくとも蝶の胴体は完全に日陰に入っています。
アカタテハ幼虫の食草はイラクサ科植物なので、アカタテハ♀による産卵行動も除外できます。
天敵から必死に逃げてきて茂みに身を隠した(緊急避難)という可能性も考えられます。
しかし、それなら暢気に翅を開閉しているのも変ですし、辺りにそれらしき捕食者(野鳥など)の姿はありませんでした。
もうひとつ別の可能性を無理やり絞り出すと、蛹から羽化直後の個体が伸びたばかりの翅を乾かしているところだったりして…?

どうしても先を急ぐ用事があった私は、この個体が飛び立つまでじっくり待てませんでした。
アカタテハのこのような避暑行動?を見るのは初めてです。
とは言え、慌てたあまりに肝心の気温を測り忘れたのは痛恨のミスでした。
個人的に気になる観察事例なので、今後のためにも忘れないようにブログに記録しておきます。

福田晴夫、高橋真弓『蝶の生態と観察』によると、

 昆虫が正常な活動をする気温は、種類や分布域に関係なしに一般に15〜30℃、(中略)であるといわれる。一方、昆虫の体温は、太陽の輻射熱をうけて飛びまわる状況下で、気温よりも10℃あるいはそれ以上高くなる。蝶の成虫がよく活動するのが体温30〜37℃のときであるとすれば、気温が30℃を超えることが多い日本の夏は、体温調節機能が弱い変温動物である蝶にとって、飛ぶ場所や時刻を変えるなどの対応をし、それも限界を超えると、もはや活動を停止せざるをえないことになる。 (p184より引用)
しかしこの後で、盛夏時の没姿現象や夏眠する蝶として列挙された中に、アカタテハは含まれていませんでした。
つまり、アカタテハが何か特別な避暑行動をするという記述は見つかりませんでした。





▼関連記事(3年後に撮影) 
ハツユキソウの葉裏に移動して日差しを避けるヒメアカタテハ


アカタテハ@ヌルデ幼木葉裏+避暑
アカタテハ@ヌルデ幼木葉裏+避暑
アカタテハ@ヌルデ幼木葉裏+避暑・全景

2018/02/23

枯木に作られたコガタスズメバチの巣を見つけた!



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#1


2016年7月上旬

枝打ちした枯れ枝を建物の軒下の外壁に何本か無造作に立てかけてあり、一本の先端にコガタスズメバチVespa analis insularis)が営巣しているのを見つけました。
外皮の形状が徳利型ではなくて球形なので、もう初期巣ではなく既にワーカー♀が何匹も羽化済みのようです。
コガタスズメバチの巣口が球状の外皮の横に開いているのは初見で、珍しく思いました。
(普通は下向きに巣口が作られているはずです。)
もしかすると、蜂にとっては重力の向きが基準なのではなく、巣の土台となる枯れ木に対しては下向きに開口しているという認識なのかな?

巣口の奥の育房には白い繭が見え、内役のワーカー♀(または創設女王)が巣内で活動しています。

外役から続々と帰巣するワーカー♀の一匹の胸背が花の花粉で黄色く染まっていました。
獲物や巣材を搬入したのか空荷だったのか、背側から撮るアングルではよく見えませんでした。

しばらくすると大顎に黒っぽい巣材(樹皮を小さな団子状に噛みほぐしたパルプ)を咥えたワーカー♀(胸背はきれい)が巣内から外皮に出てきました。
外被を歩いて回り、増設箇所を検討しています。
後半は撮影アングルを変更して、巣を横から撮ってみました。
最後に、胸背が黄色い花粉で汚れた例の個体が巣外に飛び出して行きました。

今回の映像には巣口を中から守る門衛が写っていませんね。

つづく→#2:巣からゴミ捨てに出るコガタスズメバチ♀



ナガボノシロワレモコウの花で食事するコアオハナムグリ



2017年8月下旬

農業用水路沿いに咲いたナガボノシロワレモコウの群落でコアオハナムグリGametis jucunda)が訪花していました。
花穂の先端部で雄しべの花粉や花蜜を食べているようです。
後半は花穂の根元(蕾の部分)に移動して休息。
飛び立つかと思いきや、再び先端に降りて食事を再開。

※ 背景をぼかしていても絶え間なく動く激しい流水のため、いつものように動画編集時に手ぶれ補正処理すると副作用が酷いことになりました。
仕方なく、今回はそのままお届けします。



2018/02/22

恋矢を自ら引き抜くヒダリマキマイマイ



2016年10月上旬

夜、いつものように飼育容器内に霧吹きしていると、一匹のヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)が恋矢れんしを排出していることに気づきました。
最近もう一匹と交尾したはずですが、私は見逃したようです。

恋矢(交尾矢love dart)はカルシウムを含み,交尾前に恋矢嚢が裏返しとなることによって射出され,相手の個体の皮膚に機械的刺激を与え,交尾が終ると捨てられる.刀身状のものが多いが,紡錘形・剣菱形・三角形・山形・円形など種類によってさまざまで,分類上の重要な標徴となる. (『岩波生物学辞典第4版』より引用)


透明なプラスチック容器越しに腹面から接写すると、水滴で濡れた壁面を舐める歯舌の動きよく分かります。
体の左側面から白く長い恋矢が伸びています。
魚の小骨のように湾曲し、一端は鋭く尖っています。
交尾の際にパートナーから刺された恋矢を傷口から排出しているのでしょう。
体内にしばらく残された恋矢は痛むのでしょうか?
やがて水滴を舐めるついでに、体を左によじって恋矢にキスを始め、体に刺さっていた恋矢を口で引き抜きました。
しばらく抜けた恋矢の根元を舐めています。
もしかすると、自分の体液(血液?)やパートナー由来の粘液が恋矢に付着していて、それを栄養源として摂取しているのかな?と想像しました。

後半は微速度撮影に切り替えて記録したので、10倍速の早回し映像でご覧ください(@4:01〜)。
蛇行しながら飼育容器の壁面を登って行きます。
波打つ腹足の蠕動がよく分かります。
ヒダリマキマイマイが這った後は、透明な粘液で泡立っています。



恋矢の排出シーンを観察したのはこれが初めてです。
今回の恋矢について改めて考えると、おかしなことに気づきました。
もし体内に刺さった恋矢を引き抜いたのなら、尖った先が内側(傷口)を向いているはずです。
しかし映像を見直すと、恋矢の尖った先が外側を向いています。
これは何を意味しているのでしょう?
交尾に使われなかった自分の恋矢を体内から排出(排泄)したのでしょうか?

そんな必要性があるのか疑問です。
次回の交尾に使えば良いのでは?
あるいは、交尾で相手を刺したのに恋矢が折れなくて、排出に手間取ったのかもしれません。(恋矢は交尾の度に使い捨て?)
交尾相手から刺された恋矢が体を完全に貫いて折れ、そのまま排出したのですかね?
それとも、捨てられた古い恋矢が容器の壁面に付着していて、徘徊中の個体がそれをゆっくり乗り越えるシーンをたまたま見ただけかな?
どのシナリオが正しいのか知るためには、交尾直後から連続録画でひたすら愚直に監視するしかなさそうです。


飼育容器内に脱落した恋矢を見つける度に記念として採集してきたのですが、なぜか今回の恋矢はどこに紛れてしまったのか、採集した記憶がありません…。


▼関連記事 (背側からの観察例)
交尾後に恋矢を排出するヒダリマキマイマイ

花壇で獲物を吸汁するアオメアブ



2017年8月下旬

センニチコウ(千日紅)の花が咲き乱れる花壇でムシヒキアブの一種を発見。
他の虫を撮っていた私が知らずに近づいたせいで、ムシヒキアブが少し飛んで花壇の端に生えたイネ科の雑草の葉に避難したのです。
どうやら食事中を邪魔してしまったようです。
正面から顔を見ると、複眼がメタリックな緑色の構造色で美しいですね。

更に少し飛んで移動し、今度はセンニチコウの茎に止まり直しました。
今度は背側を向いて止まってくれました。

複眼の形状から♀と判明。
抱えている獲物には体が黒く透明な翅がありますが、正体不明です。
訪花昆虫を襲って狩り、体液を吸汁するのでしょう。

どうやらアオメアブCophinopoda chinensis)のようです。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


▼関連記事(2年後の撮影)マメコガネを吸汁するアオメアブの飛び立ち【HD動画&ハイスピード動画】



2018/02/21

菊の花蜜を吸うキタキチョウ



2016年11月中旬

田んぼの畦道でなぜか園芸品種と思われる菊の花が咲いていました。
キタキチョウEurema mandarina)が訪花していました。
いつものように翅をしっかり閉じて吸蜜しています。
触角だけでなく、伸ばした口吻も動いているのが見えます。



八重咲き?の花弁は薄い赤紫で、白く縁取られている品種でした。
背丈が低いように見えるのは、台風のせいなのか茎が倒伏しているからです。
私は園芸植物にはまるで疎いので、この菊の名前をご存知の方はぜひ教えてください。

山形県で盛んに栽培されている食用菊の花(もってのほか)とちょっと似ているかもしれません。


ウドの花蜜を吸うオオハラナガツチバチ♀



2017年8月下旬

道端に植栽されたウド(独活)の灌木でオオハラナガツチバチ♀(Megacampsomeris grossa matsumurai)と思われる蜂が訪花していました。
途中でコガタスズメバチVespa analis insularis)のワーカー♀とニアミスしても互いに無関心で吸蜜を続けています。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2018/02/20

羽化に失敗したクロマダラエダシャク ?(蛾)



2016年5月中旬・午後17:56

里山の山腹の草地を歩いていたら、カナムグラの茂みの中でシャクガ科エダシャク亜科Abraxasの蛾を見つけました。
前翅前縁中央にある灰色の斑紋の中に黒い輪っか状の紋があるので、ユウマダラエダシャクは除外できます。
採集した標本の交尾器を調べないとこれ以上は絞り込めないそうです。が、例えばクロマダラエダシャク(Abraxas fulvobasalis)かもしれません。

よく見ると、左の翅がクシャクシャになっている個体でした。
焦げ茶色の蛹から左翅が上手く抜け出れず、引っかかったまま羽化後の翅伸展が正常に進まなかったようです。
薄暗いので、後半はハンディカムの補助照明を点灯してみました。
指で蛾に触れてみて、この状態で少しでも飛べるかどうか確かめてみればよかったですね。
左翅に挟まっている羽化殻を採集するつもりだったのに、直後に他の被写体に気を取られてしまった私はすっかり忘れてしまいました…。

カナムグラはキタテハの食草として有名ですけど、Abraxas属の蛾の幼虫の食草ではありません(少なくとも公式の記録では記載なし)。
終齢幼虫になると食餌植物を離れて草むらに隠れ粗い繭を紡ぐのかな?
あるいは成虫が羽化殻から抜け出ようと暴れながら、蛹を引きずってここまで辿り着いたのかもしれません。


川底の泥を採食するアメリカザリガニ



2017年8月下旬

日本庭園の池に注ぐ浅い水路を徘徊しているアメリカザリガニProcambarus clarkii)を発見。
そのうちの一匹βが小川の底に溜まった泥(デトリタス?)を採食していました。
未だハサミが小さな個体で、特に左のハサミが欠損しているようです(再生肢)。
少しずつ移動しながら採食を続け、最後は石橋の下に隠れてしまいました。

※ 濁った川底での採餌行動を明瞭に記録するため、動画編集時に自動色調補正を施しています。
そのために、アメリカザリガニ本体の赤味がやや不自然にどぎつく強調されてしまっています。

つづく→抜け殻を味見するアメリカザリガニ




【追記】
岩波科学ライブラリー『ザリガニ:ニホン・アメリカ・ウチダ』によると、
ザリガニは一般的に雑食性で、水草や動物の死がいなど、何でも食べてしまいます。アメリカザリガニは動物性の餌を好み、スルメなどで釣れることがよく知られています。 (p18より引用)

濁った川底で泥を採食するアメリカザリガニ
濁った川底で泥を採食するアメリカザリガニ
自動色調補正後
自動色調補正後



2018/02/19

チャイロヒダリマキマイマイの起き上がり運動



クロマルハナバチの巣:定点観察#13
▼前回の記事
クロマルハナバチの古巣に侵入を繰り返し獲物を探すクモバチ♀

2016年8月下旬

丁度1ヶ月ぶりにクロマルハナバチBombus ignitus)営巣地の様子を見に行くと、一度は草刈りされていた側溝の雑草が再び生い茂り、巣穴を覆い隠していました。
山腹に車道を通した法面をコンクリートで補強していて、その壁面に開けられた排水口の一つに営巣していたのです。
コロニーの活動は終了(逃去?)していて、出入りする蜂の姿はありません。

巣口の奥を覗き込むと、珍客が侵入していました。
穴に詰まっている苔混じりの土塊と一緒に取り出してみると、なんとチャイロヒダリマキマイマイEuhadra quaesita montium)でした。

真夏に乾燥したコンクリート壁面を徘徊していて、湿り気が多少ある穴の中に避難していたのでしょう。
あるいは産卵場所を探索していたのかもしれません。
採集シーンをハンディカムで撮っていたのに、肝心の動画ファイルが失われていました。
ハンディカム本体の不調なのかSDカードの異常なのか不明ですが、この日にハンディカムで撮った映像がすべて失われました…。



チャイロヒダリマキマイマイ@採集直後@クロマルハナバチ古巣
チャイロヒダリマキマイマイ+scale
チャイロヒダリマキマイマイ裏面+scale

焦げ茶色の殻の個体でした。(※追記参照)
殻を逆さまにして路上に置いてしばらくすると、警戒を解いて起き上がり、徘徊を始めます。
軟体の左側面に見える黒くて細長い物は、チャイロヒダリマキマイマイが排泄した糞だと思うのですが、飼育下での観察と逆側なので自信がありません。
力強く起き上がる動きが面白くて、初めは微速度撮影で記録しました。
10倍速の早回し映像でご覧ください。
意外に早く起き上がることが分かったので、リアルタイムのHD動画に切り替えてから、チャイロヒダリマキマイマイを再びひっくり返してみました。
また、採寸代わりに一円玉(直径2cm)を並べて置きました。

持ち帰って飼育しようか迷ったものの、元の穴に戻して帰りました。
今思うと、カタツムリがクロマルハナバチの古巣を食害する可能性もあるので、別の穴に入れるべきだったかもしれません。

クロマルハナバチの巣穴を発掘調査するための道具をネット通販で注文しているのですけど、最安値の店を選んだばかりに、商品がなかなか届きません。
古巣の採集は次回に持ち越します。
クロマルハナバチの古巣にカビが生えたり虫などに食害されるのではないかと心配で、気が気でありません。
しかし、巣口の奥は土砂がびっしり詰まっていて、古巣は埋もれているようなので、半ば諦めています。

つづく→#14



【追記】
私が当初この個体をヒダリマキマイマイと記述していたところ、YouTubeのコメント欄にて、MEGUMI ch KOTAさんからチャイロヒダリマキマイマイではないか?という御指摘を頂きました。
これだけ、濃い個体ならば、チャイロヒダリマキマイマイだと思います。ヒダリマキマイマイとチャイロヒダリマキマイマイ、両方飼育したことありますが…チャイロヒダリマキマイマイの方が、より標高が高い所に生息しているようです。チャイロは、静岡県、山梨県、神奈川県では、私自身でも確認できました。この殻の具合も、軟体部分の模様も、山梨県で採集されて、我が家にやって来て、通算7回も産卵したチャイロヒダリマキマイマイにそっくりです。
チャイロヒダリマキマイマイとは、
ヒダリマキマイマイの亜種。殻幅50mm前後。殻の色が暗褐色で火炎彩をもつ。関東地方と中部地方の山地に分布する。(wikipediaより引用)
私も平地(標高266m地点)で交尾していたヒダリマキマイマイを採集・飼育していて、確かにそれよりも今回の個体は殻の色が濃いなと思いました。
素人ながら私が気になるのは、チャイロヒダリマキマイマイの生息地が「関東地方と中部地方の山地に分布する」と限定されていることです。
一方、今回の撮影地は山形県南部(内陸部)の低山で、標高645m地点です。
歩みの鈍いカタツムリの国内分布の定説を覆すのはとても恐れ多いのですけど、チャイロヒダリマキマイマイで間違いないということなので、訂正しておきます。
実は東北地方のカタツムリはあまりよく調べられていないのかもしれません。

今回の個体は殻口(最終層の螺管)が広がっているので、ムツヒダリマキマイマイ類ではありません。

チャイロヒダリマキマイマイとヒダリマキマイマイは亜種の関係ですから交雑可能のはずです。
試しに同居させて交尾行動を観察してみれば良かったと今になってちょっぴり後悔…。
当時は他にもあれこれと色んなことに手を広げすぎて、一杯いっぱいだったので、採集せずに帰りました。


【追記2】
野島智司『カタツムリの謎:日本になんと800種! コンクリートをかじって栄養補給!?』という本を読むと、山地性のカタツムリが黒っぽいのは一般的な傾向のようで、保護色で説明されています。
野鳥が繁殖期になると卵殻の形成に必要なカルシウムを補給するためにカタツムリをよく殻ごと捕食するという話に続いて、次のように書かれていました。

 カタツムリの殻は、海にすむ巻き貝の殻と比べて茶色っぽい地味な模様をしています。これは保護色といって、周囲の色に紛れて発見されにくいためです。実際、暗い山奥にいるカタツムリの殻は黒っぽく、明るい平地にいるカタツムリの殻は白っぽい傾向があります。
明るいところでは白っぽいほうが、空からエサを探す鳥に見つかりにくいと考えられます。同様に、高い木の上で生息する種類も、殻が白っぽくなる傾向があります。(p72-73より引用)


チャイロヒダリマキマイマイを採集後のクロマルハナバチ古巣(中には土砂が詰まっている)
その全景(側溝から生い茂る雑草をかき分けて巣口を露出している)




2016年9月上旬

クロマルハナバチの古巣の発掘

別の記事にするまでもないので、残念な結果をここに報告しておきます。(動画も無し)
8日ぶりに現場を再訪すると、側溝の雑草がより一層生い茂り、巣穴を覆い隠していました。
気になるこの植物はミズヒキですかね?
花が咲かないと私には名前が分かりません。
葉の中央部が「斑入り」のように色が変わっています。



ファイバースコープがあれば穴に差し込んで、活動中のコロニーの様子を直接観察できたかもしれません。
予算がない私は仕方なく、古巣を発掘するために長くて頑丈なピンセット(27cm)を購入しました。
普通のスコップ(移植ゴテ)では直径7cmの狭い排水口に差し込めないのです。



しかしコロニーが逃去(全滅? 解散?)してから発掘に着手するのがあまりにも遅過ぎました。
台風や大雨のせいで、巣穴(法面補強するコンクリート壁の排水口)には小石混じりの土砂がみっちり詰まっていました。
苺パック容器に一杯分の土を掘り出しても、マルハナバチの巣の痕跡は皆無でした。
古巣の育房の破片ぐらいは見つかるかと期待していたのですが、全くの空振りでした。(掘る穴を間違えたかと思ったぐらいです)
ロングピンセットでも届かないもっと奥に営巣していたのでしょうか?
奥は硬い岩(コンクリートかも?)で塞がれているような手応えで、突き当たりになっていました。

生物の痕跡としては唯一、キセルガイの稚貝を一つ発見しました。
(落胆のあまり、泥まみれになったゴム手袋を外すのも億劫で、写真も撮っていません。)
ちなみに、巣口のすぐ下のコンクリート壁面にはキセルガイの成貝が3匹居ました。


▼関連記事
キセルガイの徘徊と交尾行動?【10倍速映像】
側溝の縁を移動するキセルガイ【10倍速映像】

クロマルハナバチの古巣はカタツムリ(チャイロヒダリマキマイマイ)やキセルガイなどの陸貝、または土壌生物などに食害されたり、カビが生えてあっという間に分解されてしまった可能性も考えられます。
陸貝は排水口にたまたま迷い込んだだけかもしれませんが、分解者である蝸牛やキセルガイが栄養価の高いマルハナバチの古巣に誘引されたのだとすれば、とても面白いなと思いました。

シリーズ完。





水路を往復し、抜け殻を味見するアメリカザリガニ



2017年8月下旬


▼前回の記事
川底の泥を採食するアメリカザリガニ

日本庭園の睡蓮池から、そこに流れ込む細い水路を上流に向かって真っ赤なアメリカザリガニProcambarus clarkii)αが遡上を始めました。
浅い水路を前進だけでなく後退もできるようです。(@0:40)

流れる水面をすいすい泳ぐアメンボがいます。
しばらく歩くと、もう一匹の個体βと出会いました。(@1:14)
体格差はさほどありません。
上流を向いて静止していた2匹目の個体βは、体色の赤色が薄く、ハサミは右しか無くて小ぶりです(左のハサミは更に小さな再生肢)。
αは右の触角でβの存在に気づくと、攻撃したりせずに迂回しました。
同時にβも上流へ移動し始めました。(前回の記事の採食行動に続く)

水路内をどんどん上流へ移動するαを追いかけると、3匹目の小型個体γと出会いました。(@1:53)
とても小さなγは体色も未だ赤味が無くて土色です。
若い個体で脱皮直後なのかな?
(私は水性動物にまるで疎いので、もしかしてアメリカザリガニではない在来種のザリガニとか川エビだったりしたら恥ずかしい…)
体格で圧倒的に勝るαがγを襲って捕食(共食い)するかと思いきや、αは岸沿いに残されていた脱皮殻を見つけました。
おそらくこれはγの抜け殻なのでしょう。
αをこの抜け殻ハサミで引き寄せると、食べ始めました。
もしかすると、αはこの匂いに誘引されて水路をはるばる遡上してきたのか?と想像したりしました。
なぜか獲物を抱えたままどんどん後ずさりを始めました。(獲物を独り占めするため?)
このとき大きなハサミを獲物の保持には使わず左右に大きく広げているのは威嚇でしょうか?
どこかでゆっくり食べるのかと思いきや、味見をしただけで、なぜか途中で抜け殻を捨ててしまいました。(@2:17)
死骸だと思ったのに、食べる身が残っていない抜け殻だと気づいたようです。
今思えば、捨てられた抜け殻を記念に採集すればよかったですね。

後退を続けるαが急に後ろへ跳んで逃げ、川底の泥が舞い上がりました。(@2:20)
体の向きを変えて石橋をくぐり、下流に向かって前進します。
ここで採食中のβと再会しました。(@2:33)
βは川底の泥を掘って口にせっせと運んでいます。
今回もαはβに遠慮するかのように迂回して、下流への移動を続けます。
最後は睡蓮池への流れ込みを乗り越え、池の水中に戻りました。
乗り越える際に体が自ら少し出ても平気なようです。

※ α、β、γとは、3匹を区別するため登場順に付けた名前で、必ずしも集団の順位制(強い者順)を表すものではありません。

※ やや濁った川底での行動を明瞭に記録するため、動画編集時に自動色調補正を施しています。
そのために、アメリカザリガニ本体の赤味がやや不自然にどぎつく強調されてしまっています。

以下の写真も自動色調補正済み。



アメリカザリガニα@水路徘徊
アメリカザリガニαvsβ@水路
アメリカザリガニαvsβ@水路
アメリカザリガニαvsγ@水路
アメリカザリガニα@水路+脱皮殻捕食

【追記】
岩波科学ライブラリー『ザリガニ:ニホン・アメリカ・ウチダ』によると、
脱皮の時間は短く、わずか数分間です。これには理由があります。脱皮直後の身体はブヨブヨなので、このときに敵や他の個体に襲われたら大変だからです。 エビカニの仲間は通常、夜間に活動します。昼間に脱皮すると、他の個体が休んでいる最中なので仲間に襲われる可能性が低くなるのだと思われます。ところがアメリカザリガニの成体は、昼間に脱皮します。ただし、小さな個体は脱皮してから比較的短い時間で通常の動きができるようになるためか、夜間に脱皮する例も多く見られます。 (p62より引用) 

脱皮が終わった個体は、しばらくすると脱いだ殻を自ら食べ始めます。カルシウムは殻を硬くする作用がありますが、淡水中では不足気味です。もしかしたら、古い脱皮殻には新しくて柔らかい殻を硬くするのに必要なカルシウム成分が、たっぷりと含まれているのでしょうか。脱皮殻を繰り返し取り上げてしまうと、その個体は死亡しやすくなるという実験結果もあります。 (p63より引用)
ということは、今回の映像で抜け殻をαに横取りされた個体γはカルシウム成分を補給できずに困ったことになりましたね。
αが脱皮直後のγを襲って捕食しなかったのは、さほど飢えていなかったからかな?
それなら、抜け殻を独り占めしようとしたのは気まぐれなのか? と堂々巡りになります
いつか私もアメリカザリガニを自分で飼育して、脱皮の一部始終を観察してみたいものです。


【追記2】
小田英智、大塚高雄『ザリガニ観察ブック』によれば、
 小さなザリガニの子どもは、脱皮したあとで脱皮殻をたべます。殻にのこったカルシウムや養分を再利用しているのです。(p29より引用)
どうやら大きなザリガニは抜け殻を食べなくなるようです。

ミゾソバの葉で求愛するイチモンジセセリ♀♂



2017年8月下旬・午後15:43

用水路沿いの草むらでイチモンジセセリ♀♂(Parnara guttata)が求愛していました。
ミゾソバの葉で翅を閉じて(立てて)止まっている♀の斜め背後に♂が来ています。
イチモンジセセリ♂は頻繁に飛び立って♀の目の前を少し飛び、すぐに葉上に戻る、という行動を繰り返していました。
イチモンジセセリ♀が一瞬だけ翅を少し開いたのは、交尾拒否の合図なのかな?
何度かアタックした後で脈なしと悟った♂は諦めて飛び去りました。
求愛が成就して交尾に至る例を早く観察してみたいものです。
(♀は翅を広げて♂を受け入れるのではないかと予想しています。)

▼関連記事(2013年の撮影)
イチモンジセセリ♂♀の求愛と交尾拒否@ススキ葉【ハイスピード動画&HD動画】
イチモンジセセリの求愛と交尾拒否@アカツメクサ花【ハイスピード動画&HD動画】




2018/02/18

ブルーサルビアの花蜜を吸うクマバチ♂



2017年8月下旬

道端の花壇に咲いたブルーサルビア?の群落でキムネクマバチ♂(Xylocopa appendiculata circumvolans)が訪花していました。
複眼が大きく発達していて頭楯が白いので、雄蜂と分かります。
雄蜂は吸蜜するだけで集粉しないので、後脚には花粉籠はありません。

隣に咲いた赤いサルビア(スカーレットセージ)の花やセンニチコウ(千日紅)の花には見向きもしない点が興味深く思いました。
もしかすると、クマバチは花弁の青い花が蜜源植物として好みなのかもしれません。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



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