2019/06/15

池の小魚を捕食するササゴイ(野鳥)



2019年4月下旬


▼前回の記事
池の止まり木から一斉に飛んで逃げるゴイサギ幼鳥とササゴイ成鳥(野鳥)

長い動画なので、本編の前にハイライトのシーンを1/5倍速のスローモーションでお見せします。

池の畔に来たササゴイButorides striatus amurensis)は水中に魚影を認めたようで、ゆっくり忍び足で石垣を下りて水際まで来ました。
岸辺に置かれた大きな岩に乗って水面を見つめ、獲物を待ち伏せしています。

やがて嘴を素早く一閃し、水中の獲物を捕らえました。(@2:15)
獲物は小魚というよりも水生昆虫のような気もしますが、遠くてよく見えません。

しばらくすると、漁場を変えました。
水際の石垣をへつり、少し移動します。
そして再び嘴を水中に突っ込み、小魚を見事に捕食しました。(@3:39)
黒っぽい小魚が嘴に挟まれてピチピチと暴れています。
ササゴイはそのまま獲物を丸呑みしました。

その後は池の背後の崖を登り始めました。
どこに行くのかと思いきや、灌木を回り込んで少し離れた石垣から再び水際に下りました。
漁場を変えて改めて次の魚を狙います。

目の前の水面から鯉が浮かび上がっても、ササゴイは無反応でした。(@)
辛抱強く待ち伏せした後で、頭から勢い良く池の中に突っ込んで小魚を見事に捕食しました。(@6:55)
銀色に光る小魚が嘴に挟まれて暴れています。
すぐに獲物を飲み込みました。
カワセミのように、暴れる魚を食べる前に叩きつけて殺したりしませんでした。
急に胸部と冠羽を同時に膨らませたのは、どんな意味があるのでしょう。(@7:14)
最後は引きの絵にすると、満開に咲いた桜の花が池の水面に映っていて、のどかな春の美しい風景が拡がっています。

ササゴイの漁を初めて観察しました。
3回とも食後に嘴を水でゆすがない点が興味深く(アオサギやダイサギとの違いで珍しく)思いました。
ササゴイと言えば、熊本県水前寺成趣園周辺の個体群が、水面に生き餌の虫や疑似餌の物体(木の枝や木の実など)を落として、近づいてきた魚を捕食することが知られています。
この有名な「道具を使った狩り※」を是非とも自分の目で観察してみたいのですが、今回の個体は単純な漁しかやりませんでした。

当地のササゴイ個体群には高度な漁の仕方は伝来していないようです。
経験豊富なごく一部の成鳥しかマスターしていないのかもしれません。
(※ ヒト以外の動物では知能の高いチンパンジーやカラスぐらいしか報告されていません。)


明るい日向で見ると、ササゴイ成鳥の虹彩はオレンジ色でした。
後頭部の長い冠羽はしっかり生えています。
wikipediaによるとササゴイは
「繁殖期には眼先が青くなり、後肢の色彩が赤みを帯びる」らしいので、この成鳥は未だ繁殖期に入ってはいない(性成熟していない)ことが分かります。


つづく→池の畔から飛び去るササゴイ成鳥(野鳥)


ササゴイ(野鳥)@池畔+魚捕食
ササゴイ(野鳥)@池畔+魚捕食
ササゴイ(野鳥)@池畔+魚捕食
ササゴイ(野鳥)@池畔+魚捕食
ササゴイ(野鳥)@池畔+魚捕食

大きな栗の木の下で、作りかけのハシボソガラスの巣を見上げると…(野鳥)



2019年4月下旬

路地裏に聳え立つクリ(栗)の大木をふと見上げると、ハシボソガラスCorvus corone)の巣を見つけました。
組み合わせた小枝が未だ少なくて網目が粗く、作りかけのようです。
クリの枝には若葉がようやく芽吹き始めた状態で、未だ昨年のイガや枯れ葉が残っている枝もありました。

親鳥が1羽、造巣中の巣に乗っています。
「大きなクリの木の下で♪」
営巣木の真下から見上げている私に気づくと警戒し、少し飛んで隣の建物の屋上に移動しました。
親鳥のつがい♀♂が屋上の縁に並び、心配そうに路地を見下ろしています。
このハシボソガラスは造巣中も温厚で、私に対して怒って威嚇したり鳴き騒いだりすることはありませんでした。
定点観察に通ってみましょう。

つづく→


ハシボソガラス(野鳥)巣(作りかけ):クリ樹上・全景
ハシボソガラス(野鳥)巣(作りかけ):クリ樹上・全景
ハシボソガラス(野鳥)@巣(作りかけ):クリ樹上
栗のイガと枯葉が枝に残っている。
ハシボソガラス(野鳥)巣(作りかけ):クリ樹上・真下から見上げる
ハシボソガラス(野鳥)巣(作りかけ):クリ樹上・真下から見上げる
ハシボソガラス(野鳥)@巣(作りかけ):クリ樹上

春の土手で草の実を食べるカシラダカ(野鳥)



2019年4月下旬

河原の草に覆われた土手をカシラダカEmberiza rustica)が歩き回っていました。
地面から草の種子(緑色)を啄みました。(@0:29)
多くの穂が生えているイネ科植物が気になったので、『イネ科ハンドブック』で調べてみると、ハルガヤですかね?
(ただし、今回カシラダカがハルガヤの実を食べたとは限りません。)




カシラダカ(野鳥)@土手:草地

2019/06/14

背中が痒い?ヒグラシ♂



2018年7月中旬

里山の林道を登っていると、道端の木の葉を巻いた揺籃(蛾の幼虫の巣?)にヒグラシ♂(Tanna japonensis)がしがみついていました。
回り込んで腹面を撮ると腹弁が見えたので♂です。

左前脚で頻りに胸背を掻いています。

後脚で腹部下面も掻きました。
背中が痒いのかな?
白い綿埃のような付着物は、もしかしてセミヤドリガEpipomponia nawai)という寄生蛾の若齢幼虫ですかね?
セミヤドリガは分布の北限が福島県のはずですが、温暖化で山形県まで北上してきたのでしょうか?

鳥の糞の白い飛沫が付着しただけのようにも見えます。
今思えば、ヒグラシ♂ごと採集してきちんと調べるべきでした。



夕方(日暮れ)なので、別個体のヒグラシ♂がカナカナカナ…♪と鳴く声が周囲の山林に響き渡ります。

最後は枝を引き寄せて、ヒグラシ♂が飛び立つ瞬間を動画に記録しました。
飛ぶ際におしっこは排泄しませんでした。

ところで、この木の葉の樹種を調べるのを忘れました。
映像で見分けられる方はぜひ教えて下さい。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



【追記】
YouTubeのコメント欄にて、tead deatさんより以下のような貴重なコメントを頂きました。
背中、というか複眼掃除ですね。終齢幼虫羽化前も似たような仕草します(その時はどちらかというと触覚やってるような?) (原文ママ)
セミヤドリガの幼虫はあのサイズだとそれほど蝋状物質出してないのでまだ赤茶色だと思います。先端で掃除してると思われたのですね、前脚の細い部分と太い部分の間で擦って掃除するので自分にはいつもの複眼掃除に見えるかなあと。 
複眼掃除という発想は私には無かったです。
しかしこの撮影アングルでは、前脚が複眼に触れてる(擦っている)ようにはあまり見えませんね…。
それに、主に左側ばかり掻いています。


昔に読んだきり忘れていた本、大串 龍一『日本の昆虫7:セミヤドリガ』を読み返して、セミヤドリガの幼虫の特徴を復習してみました。
1令:体は細長い円筒型で、体長0.8〜1.0mm、幅は0.2mm前後のごく小さい虫である。(中略)体色は薄い黒灰色だが、前胸背に目立った黒褐色の部分があり、また各節側面の毛の生えているあたりには褐色の点が並ぶ。2〜4令:この間は体が少しずつ大きくなっていくだけで、基本的には同じ形をしている。体は前後が狭まり、その端が尖った太短いウジ虫型で、頭部はごく小さく腹部が目立って大きくなる。(中略)体色は初め淡黄色で後に赤みが増し、白っぽい表皮をすかして紅色の内部が見える。5令:体長5mmくらいから成長して9〜10mm、体幅4〜5mmになる。(中略)体形は4令とよく似るが、体表面に白い粉をふいたように蠟物質が分泌されはじめる。この蠟物質は次第に厚くなり、体をほとんど覆い、腹面の内側を除いて全体が真っ白になる。蠟物質の分泌はいっそう盛んになり、粉状から綿毛状になる。(p35〜38より引用)



ヒグラシ♂:側面@?葉
ヒグラシ♂:腹面@?葉

春の水路で遊泳・採食するコガモ♂♀の群れ(野鳥)



2019年4月下旬

水路が川に合流する地点の手前で見慣れない鴨の群れが居ました。
調べてみると、冬鳥のコガモ♀♂(Anas crecca)でした。
冬鳥なのに、春になって桜が咲き終わっても北に渡去しないのが不思議でした。
コガモは「中部地方以北の高原や北海道の湿原では、ごく少数が繁殖している。カモ類の中では冬の渡りが早く、また春の渡りが遅めである(wikipediaより引用)」とのことでした。
夏も当地に残って繁殖するのか、注目です。

初めは私を警戒して水面をさり気なく遠ざかって行きました。
私がじっとしていると、コガモの群れがゆっくり戻ってきてくれました。

♂の頭部には緑の帽子を被っているような模様があり、可愛らしい鴨ですね。
♀の羽根は地味な褐色(迷彩色)ですが、風切羽の緑色がオシャレなワンポイントのアクセントになっています。

コガモは水面に浮かんでいる餌を嘴ですくって食べています。
水中に頭部を突っ込むこともありました。
高木清和『フィールドのための野鳥図鑑:水辺の鳥』でコガモの餌について調べると、

行動: 数羽、時に数百羽の群れで生活する。(中略)岩についた水草や藻類を食べる。
食性: 落穂、草の種子、水草類、藻類。(p33より引用)


ところで、いつ来てもこの水路は水面が泡立っていて、水質がいまいち汚い印象です。
洗剤のような匂いが辺りに薄っすらと漂っているので心配になります。
生活排水や工場排水が垂れ流しにされている疑いがあります。
当局に通報するべきでしょうか。
コガモの群れが川の本流ではなく、汚染された水路にわざわざ集まって採食するのは一体なぜでしょう?
富栄養化した水路の方が逆に藻や水草がよく生育するのかな?


コガモ♀♂(野鳥)群れ@水路+遊泳
コガモ♀♂(野鳥)群れ@水路+遊泳
コガモ♀♂(野鳥)群れ@水路+遊泳
コガモ♀♂(野鳥)群れ@水路+遊泳
コガモ♂(野鳥)群れ@水路+遊泳
コガモ♂(野鳥)群れ@水路+遊泳
コガモ♂(野鳥)群れ@水路+遊泳
コガモ♂(野鳥)群れ@水路+遊泳+採食

2019/06/13

池の止まり木から一斉に飛んで逃げるゴイサギ幼鳥とササゴイ成鳥(野鳥)



2019年4月下旬

桜の枝が折れて池に突き刺さったままの落枝に2種の水鳥が止まっていました。
左の個体がゴイサギNycticorax nycticorax)の幼鳥で、右の個体がササゴイButorides striatus amurensis)の成鳥です。
昨年この落枝でよく見かけたように、ゴイサギの親子なのかと一瞬思ったら、今回は別種の2羽でした。
ササゴイに出会えたのは実に7年ぶりです。

▼関連記事
ササゴイにモビングするハシボソガラス【野鳥:烏鷺の争い】

ササゴイは夏鳥で、桜前線とともに日本に渡って来るのだそうです。

見た目の体格はゴイサギ幼鳥>ササゴイ成鳥ですけど、単に遠近法による違いなのかな?
のんびり羽繕いをしていたゴイサギ幼鳥が対岸の私に気づいたのか、急に飛び立ちました。
続いてササゴイ成鳥も飛び立ちました。
連鎖反応で、鳥の急な動きに驚いた鯉が池の中で跳ねました。

2羽の鳥は別々の方向に飛んで逃げて行きます。
池の畔は桜の花が満開です。
ササゴイ成鳥を咄嗟に流し撮りすると、左に少し飛んでから、岸辺の石垣に着陸しました。
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。

つづく→ササゴイの漁


ゴイサギ幼鳥+ササゴイ成鳥(野鳥)@池:落枝

電線で羽繕いするコムクドリ♂(野鳥)



2019年4月下旬
▼前回の記事
鳥媒花:ボケの花蜜を舐めるコムクドリ♀♂(野鳥)

近くの電柱に避難したコムクドリ♂(Sturnus philippensis)は、天辺からキョロキョロと辺りを見回しています。
♀も近くに居るはずですけど、どこかに隠れていて見当たりません。
♂は電線に跳び移り、嘴を足元のケーブルに擦り付けて拭いました。
つづいて頭を足で掻き、羽繕いしました。

よく見ると、嘴の根元や顎が黄色く汚れています。
これは先程ボケ(木瓜)の花に次々と頭を突っ込んで吸蜜した際に花粉が付着しているのでしょう。
これはつまり、コムクドリがボケの授粉を助ける送粉者であることを物語っています。

周囲の路地に危険がないことを確認すると、コムクドリの♀♂番は再びボケの花に戻って吸蜜を再開しました。


コムクドリ♂(野鳥)@電線+羽繕い
コムクドリ♂(野鳥)@電線
コムクドリ♂(野鳥)@電線
コムクドリ♂(野鳥)@電線

2019/06/12

カキノキの落枝を拾って巣材にするハシボソガラス(野鳥)



2019年4月中旬

春が来てカラスの巣作りがいよいよ始まったようです。(造巣活動)
庭に1羽のハシボソガラスCorvus corone)が忍び込み、カキノキの下を徘徊・探索していました。
地面に落ちた小枝を何度も持ち替え吟味してから拾い上げました。
小枝の曲がり具合や強度、長さなど、巣材に適しているかどうか念入りに検討中なのでしょう。

しばらくすると、落枝を嘴に咥えたカラスが近くの電線に止まっていました。
私がカメラを向けると、カラスは巣材を咥えたまま電線から左に飛び立ちました。
ところがすぐに旋回して、右手にある民家の屋根に着陸しました。
おそらく巣の位置を私に悟られたくないカラスが、フェイントを仕掛けたのでしょう。

ソーラーパネルが置かれたトタン屋根の上端角に止まったハシボソガラスは、持ってきた小枝を屋根に置き、足で押さえつけました。
小枝をわざと不安定な屋根の角に置き直したのは、どういうつもりなのでしょうか?(遊び心?)
小枝はやじろべえのように絶妙なバランスを保っているものの、風が吹くとグラグラ揺れて今にも落ちそうです。
カラスも内心は気が気ではない様子。
素知らぬ顔で辺りを警戒しています。
私は別に、巣材集めの現行犯でカラスを咎めているつもりはありません。
ところが私に見られている(撮られている)ことに気付いたハシボソガラスは挙動不審になり、「え? 何も盗ってませんけど? ほら、何も咥えてませんし」と精一杯トボケているように見えて可笑しくなりました。
やがてカラスは、せっかく拾ってきた小枝を屋根に残したまま飛び上がりました。
すぐに忘れ物に気づいて屋根に舞い戻り、小枝を運んでどこかに飛び去りました。


関連記事(4年後の撮影)▶ カキノキの枝を折り取って巣材用に加工するハシボソガラス(野鳥)

ハシボソガラス(野鳥)@屋根+巣材運搬

この親鳥がどこに営巣しているのか、このときは分かりませんでした。
数日後、近所に聳え立つメタセコイアのてっぺんに小枝を組み合わせて作った巣を見つけ、その中でハシボソガラスが抱卵している姿を目撃しました。
まさに灯台下暗し。
ところがこのとき私はカメラを持っていなかったので、証拠写真を撮れませんでした。
その後はなぜか親鳥が巣を放棄してしまった上に、メタセコイアの葉が茂って巣が隠れてしまいました。


ハシボソガラス(野鳥)巣@メタセコイア樹冠
ハシボソガラス(野鳥)巣@メタセコイア樹冠・全景


桜:ソメイヨシノの開花運動【5400倍速映像】



2019年4月中旬

桜前線がようやく到来し、近所でも前日ぐらいからソメイヨシノの蕾がちらほらとほころび始めました。
蕾の付いた小枝を採取してきて水切りし、ペットボトルの花瓶に生けました。
室内で開花する様子を30秒間隔で丸々48時間インターバル撮影し、計5762枚の連続写真を素材に動画制作しました。
5400倍速の早回し映像をご覧下さい。

白い花弁が開く前に、蕾の柄がゆっくりと立ち上がっています。
撮影中は全く気づかなかったのですけど、微小のアブラムシ?が何匹も桜の枝を徘徊していました。

桜の花が散るまで微速度撮影を続けるつもりだったのですが、おそらく花瓶の中が汚れていて水にカビが発生し、桜の花はすぐに汚らしく枯れてしまいました…。


【おまけの動画】
早回し速度を落とした動画をブログ限定で公開します。



↑2700倍速映像



↑900倍速映像




桜:ソメイヨシノ@つぼみ
桜:ソメイヨシノ@蕾
桜:ソメイヨシノ@開花後
桜:ソメイヨシノ@開花後

2019/06/11

春になり戻ってきたハクセキレイが再びシラカシ街路樹に塒入り(野鳥)



2019年4月上旬・午後18:18〜18:28(日の入り時刻は午後18:07)
▼前回の記事(2018年11月下旬に撮影)
初冬に塒の街路樹を変更したハクセキレイの群れ(後編)常緑樹シラカシに塒入り【冬の野鳥】

雪が降る冬の間、定点観察していた集団塒の街路樹にハクセキレイMotacilla alba lugens)が来なくなってしまいました。
厳冬期に一体どこで過ごしているのか、謎です。
雪国のハクセキレイは留鳥ではなく、実は漂鳥なのではないかと疑うようになりました。
春になると再びハクセキレイが戻ってきてくれました。
しかし夏季に集団塒として利用されるイチョウ並木は未だ落葉したままで丸裸です。
昨年11月下旬に最後に見た時と同じく、隣の常緑樹シラカシに塒入りするのでしょうか?

前回の反省を活かし、今回は初めから落日に対して順光のアングルで狙います。
映像としてはほぼ前回と同じ行動の繰り返し(就塒前集合からの集団就塒)なのですけど、前回(11月下旬)に塒入りしたシラカシから10mぐらい離れた別のシラカシ街路樹に塒入りした点が異なります。
歩道沿いのシラカシ街路樹ではなく、駐車場の隅に植栽され最も大きく育った常緑樹シラカシに塒入りしました。
それに合わせるように、就塒前集合の場所も、大通りに面した某施設の屋上から近所の喫茶店の屋上や周囲の電柱・電線に移ってきていました。
撮影の合間に気温を測ると、午後18:26に12.6℃、湿度44%。

似たような季節消長のパターンは別な場所の集団塒でも以前観察しています。
春に戻ってきたハクセキレイの群れが電柱に塒入りし、近くのケヤキ並木の葉が茂る時期になるとそちらに塒を移動していました。
初冬に集団塒のケヤキが落葉すると、いつの間にかハクセキレイはその塒から姿を消しました。

どうやらハクセキレイの群れは毎晩の塒をある程度は臨機応変に選んでいるようです。
塒をどういう基準でどうやって選んでいるのか(合議制? リーダーの存在?)、というのも興味深い問題です。

※ 実際はもっとどんよりと薄暗く青空ではないのですが、ハクセキレイの性別を見わけるため編集時に彩度を少し上げています。


鳥媒花:ボケの花蜜を舐めるコムクドリ♀♂(野鳥)



2019年4月下旬

街中の民家の庭に植栽されたボケ(木瓜)の花が満開に咲き乱れていました。
そこへコムクドリSturnus philippensis)の♀♂つがいが飛来して、花蜜を舐め始めました。

初めは警戒心が強くて辺りの様子を伺ったり枝葉の茂みに隠れたりしていました。
私が路地のブロック塀の陰からこっそり隠し撮りしたら、特に♂が少しずつ大胆になり、通りに面した枝で吸蜜してくれるようになりました。
その一方で♀の方は最後まで用心深く、吸蜜シーンをしっかり見せてくれませんでした。

白い花にも赤い花にも分け隔てなく訪れて吸蜜しています。
ボケの花は浅いので、コムクドリの嘴が容易に蜜腺に届きます。
盗蜜行動をする必要はなく、正当訪花で吸蜜しています。

最後にコムクドリの♀♂つがいがボケの木から飛び去る瞬間を1/5倍速のスローモーションでご覧下さい。(@2:34〜)
右に居た♂が先に飛び立ち、左の♀が後に続いて飛び去りました。

つづく→電線で羽繕いするコムクドリ♂(野鳥)



この春、私が個人的に最も心躍り、嬉しかった出会いでした。
コムクドリが来るのなら、甘党で花蜜を好むヒヨドリやメジロも木瓜に訪花しそうだと予想できます。

後日に現場を再訪し、ボケの花を嗅いでも無臭であることを確認しました。
これは鳥媒花の特徴の一つです。
ミツバチなどの訪花昆虫は来ていませんでした。

このような植物の花は、赤いものが約80パーセントを占める。花には模様が無いものが多く、鳥が止まりやすいよう、花器は固くなっている。 虫媒花の植物に比べ花期が長く、匂いがほとんど無い。これは鳥の嗅覚が鈍いためである。 蜜は大量に出し、味は割合薄くなっている。 また、ほとんどが昼に花を咲かす。(wikipedia:鳥媒花より引用)
これらの特徴は、ボケの花に尽く当てはまります。
ウメと同じくボケの花は未だ気温が低い早春に咲くので、蜂など昆虫による送粉活動はあまり期待できません。
ちなみに梅も鳥媒花です。

▼関連記事
白梅の花蜜を舐めるヒヨドリ(野鳥)
秋にボケの実がなったら写真を撮って掲載する予定です。
ボケの果実酒やジャムでも作るのか、果実が全て収穫されてしまい、残念ながら実の写真を撮れませんでした…。(他人様の庭木なので文句は言えません。)

同じ庭で木瓜の左横で満開に咲いている黄色い花はレンギョウです。
今回コムクドリ♀♂は、レンギョウの花には全く興味を示さず、ボケの花に夢中でした。
レンギョウの花は虫媒花だと思いますが、昆虫が訪花している証拠映像は未だ撮れていません。



【追記】

田中肇『花と昆虫、不思議なだましあい発見記』によると、
ザクロやボケの花は鳥媒花。ともに花粉の媒介を鳥に依存している花だが、蜜を入れた筒の部分が厚く堅い。(盗蜜対策)このように厚い壁を作るにはそれなりの資源が必要だが、ザクロやボケの場合は、花の咲き終わった後も実を守る壁になるので、資源の無駄遣いにはならない。  (p139より引用)




【追記2】
吉川徹朗『揺れうごく鳥と樹々のつながり (フィールドの生物学 25)』によると、
鳥媒花は複数の植物系統で独立に、ハチ媒花から進化したものと考えられている。 (p135より引用)

同書では更に、ツグミやムクドリの仲間など、液果をよく食べるにもかかわらず、花蜜をほとんど利用しない鳥がいるのはなぜか?という疑問に対して、海外の研究論文を引用して説明しています。
鳥の消化生理メカニズムは系統によって大きく異なり、ショ糖(スクロース)を分解するための酵素(スクラーゼ)の有無や働きに大きなちがいがみられるという。ショ糖は糖分の一種で、花蜜の主成分だが、果実の多くには含まれていない。そしてツグミ科とムクドリ科、ヒタキ科、(中略)の消化器には、このスクラーゼが欠落している。(中略)これらの鳥はショ糖を分解できず、それを摂るとお腹をこわすという報告もある。 (p163より引用) 

したがって、ムクドリ科のコムクドリがボケの花蜜を吸うという私の観察結果は、定説から外れていることになります。
日本産のコムクドリでスクラーゼの有無を調べてみる価値はありそうです。



【追記3】
翌年の春も同じボケの木を見に行ったところ、なんと蜂が訪花していました。
鳥媒・虫媒の問題はそれほど単純に割り切れないのかもしれません。

▼関連記事
ボケ(木瓜)に訪花するクマバチ♀


【追記4】
石井博『花と昆虫のしたたかで素敵な関係 受粉にまつわる生態学』を読むと、詳しい解説が書いてありました。
 日本では、鳥媒の花の多くは、昆虫がまだ多くない冬から早春にかけて咲きます。これは、花蜜食に特化しているわけではない(細長い嘴をもたない)鳥でも採餌出来る形態の花が春から秋にかけて咲けば、昆虫に花蜜を盗られてしまうからかもしれません。(p82より引用)

 鳥媒の植物は、熱帯を中心とした温暖な地域に多く見られ、寒冷な地域ではまれです。この原因のひとつは、花蜜を主食にする鳥は年間を通じて花蜜を必要とするため、年間を通じて花が咲く地域でないと定住できないためです。(p83より引用)

 鳥媒が 熱帯に多いのは、鳥は昆虫たちに比べて体が大きいため、多量の花蜜を必要とするからでもあります。一般に暖かいほうが植物の光合成速度は早くなります。(p83より)


鳥媒花の多くは鮮やかな赤色をしていますが、これはまさに、鳥には目立ち、昆虫には目立たない色が、ヒトの目で見た「赤」であるからと考えられています。(中略)多くの昆虫は、ヒトが鮮やかな赤として認識している物体を、その物体が紫外線を反射していない限り、明度の低い、暗い色の物体としてしか認知できません。(p84より引用)

 



コムクドリ♂(野鳥)@ボケ訪花吸蜜
コムクドリ♂(野鳥)@ボケ訪花吸蜜
コムクドリ♂(野鳥)@ボケ訪花吸蜜
コムクドリ♂(野鳥)@ボケ訪花




ボケ花(赤+白)
ボケ花(赤+白)+左にレンギョウ花

2019/06/10

柳の葉の甘露を舐めるキイロスズメバチ♀



2018年10月上旬

湿地帯の端に生えた柳の灌木でキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)のワーカー♀が葉をペロペロと頻りに舐めていました。
この行動はいつ見ても不思議です。

▼関連記事(3年前にほぼ同じ場所で撮影。柳の種類が違う)
柳の葉を舐めるキイロスズメバチ♀

今回の柳の樹種は、なんとなくタチヤナギですかね? 
蜂が舐めていた葉の表面にはシロップをかけたようにテラテラとした光沢があり、いかにも甘そうです。
アブラムシ類などが排泄した甘露が付着しているのでしょうか?
柳に花外蜜腺の有無を知りたいのですけど、素人には適切な資料が見つけられないでいます。
どなたかご存知の方は教えて下さい。
ヤナギの花の器官に「腺体」という用語を見つけたのですが、花外蜜腺とは無関係なようです。

花は花被をもたず腺体があって,みつが分泌され,虫媒花である。(ヤナギ@『世界大百科事典 第2版』より引用)
春に咲いた柳の花が葉に滴り落ちるほど多量の蜜を分泌して、それが秋まで残っているとは思えません。
樹液が葉に滴り落ちたのかな?
「(タチヤナギの葉の)縁には先端が腺になる細かいきょ歯(鋸歯)がある。」という記述は、花外蜜腺を意味しているのでしょうか?


植物学に疎い一素人の愚痴を言わせてもらうと、どうして植物学では「腺」とか「腺体」という曖昧な用語を使うのでしょう?
植物ではこれは全て「蜜腺」と解釈して良いのかな?
動物学なら汗腺、乳腺、涙腺、唾液腺、眼下腺など使い分けています。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


キイロスズメバチ♀@柳葉+甘露舐め
キイロスズメバチ♀@柳葉+甘露舐め
キイロスズメバチ♀@柳葉+甘露舐め

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