2017/12/02

ニホンイタチの死骸



2017年7月上旬・早朝

ノスリ(野鳥)の捕食シーンを撮影した後に同じ道を更に数百メートル進むと、道端に野生動物(哺乳類)の死骸が転がっていました。
夜に車に轢かれたのでしょう。(ロードキル
あるいは先ほど見たように、ノスリなど猛禽類の食べ残しなのかな?
新鮮な死骸ではなく、腹部が死肉食の動物(鳥類?)に食い荒らされていました。
頭部が無傷なら死骸を採集して頭骨の標本を作ってみたかったのですが、損傷が激しかったため、写真で記録するだけに留めました。


採寸する定規を持参しておらず、仕方なく自分の靴と比べてみたところ、頭胴長は約30cmでした。
現場は平地の田園地帯を横切る車道で、溜池の裏手でした。
ホンドテンと迷ったのですけど、これはニホンイタチMustela itatsi)ですかね?
もし間違っていたら、ご指摘願います。

動物の死骸を見つける度に、屍肉食の昆虫を定点観察したり生物分解の過程を記録したいのですけど、この時期は忙しくてとても余力がありませんでした。
どうせカラス(やトビ)にすぐ持ち去られたり食い荒らされてしまうでしょう。(…と自分に言い聞かせて、その場を離れました)
それでも、この辺りにイタチが生息しているという証拠は、私にとって貴重な情報です。




【追記】
川口敏『哺乳類のかたち ~種を識別する掟と鍵~』を読むと、詳しい解説がありました。
・テンとイタチを見分けるポイントは足だ。足の裏を見てもいいし、毛の色でもいい。テンの足は黒いがイタチは黄褐色から茶褐色で黒ではない。 (p26より引用)
・テンとイタチでは、足の裏の肉球の数や配列の違いで識別できる。  (p30)

しかし写真を見返しても、残念ながら足の裏を撮っていませんでした。
イタチの体色はテンと比べるとかなり地味だが、暗いチョコレート色から明るい山吹色までの変異がある。この変異は、体の大きさがある程度相関している。結論を先に言うと、体の大きなイタチの毛色は明るく、小さなイタチは暗い。(中略)このほか、毛色は季節によっても変化する。夏毛と冬毛を比べると、夏毛は暗く、冬毛は明るい。(中略)野外では性別や年齢はわからないので、毛色を頼りにこの2種を識別するのはやはり無理であろう。 (p32)
・近縁な種が同じところで生活することを「同所的分布」と言い、このような地域では体サイズの違いは顕著に表れるので、体の大きさを測定すれば、種を容易に識別できる。したがって、イイズナ、オコジョ、ニホンイタチ、テンの4種は性別と外部計測値だけで識別できる。最低、頭胴長(鼻の先から肛門までの長さ)、尾長(肛門から尾の先端までの長さ、ただし毛の長さは含まない)、後足長(かかとから指の先端までの長さ、ただし爪の長さは含まない)は計測する。値は3ケタあれば十分。  (p28-29)
今後の教訓として、同定するにはやはり現物を採集してしっかり調べないと駄目ですね。

・イタチも♂が極端に大きなグループで、(中略)♂の体長は♀の2〜3倍にもなる。しかし、イタチはハーレムを形成するわけではない。発情期になると、♂はテリトリーを拡大する(このとき交通事故による死亡数も増加する)。 (p38



関連記事(5年後に新鮮なロードキルを発見)▶ 車に轢かれたニホンイタチの死骸に群がるハエ他

高圧線鉄塔に運んだ獲物をついばむノスリ(野鳥)



2017年7月上旬・午前4:28〜4:40 (日の出時刻は午前4:22)

早朝の田園地帯で、1羽の大型の猛禽類αが奇妙な飛び方をして(ヒラヒラとチョウゲンボウみたいな飛び方)道端の電柱(いわゆる普通の高さの電柱)に止まりました。
(映像はここから)
私を警戒してそこから更に飛び立ち、近くの高圧線鉄塔#23に向かいました。
このとき、力強く飛び去る猛禽類が足の鉤爪で何か獲物を掴んで運んでいることに気づきました。
空輸する獲物が重くて、いつものように上手く飛べないのでしょう。
映像冒頭は1/4倍速のスローモーションで始まります。
獲物は自分で狩りをして仕留めた小動物(哺乳類)なのか、それとも夜に車がはねた死骸(ロードキル)を見つけただけなのか、正体不明です。
死肉食ならノスリよりもトビMilvus migrans)の可能性が高まります。

私も急いで追いかけると、おそらくノスリButeo japonicus)と思われる猛禽類が高圧線鉄塔#23の鉄骨中段に止まり、足元の獲物を食い千切って捕食していました。
獲物が重くてこれ以上高く運び上げられなかったのかな?
この時点でカメラを上にパンしても、この鉄塔に他の野鳥は止まっていませんでした。
(鉄塔の最上部まで確認していないのが痛恨のミス)
ノスリ?αはキョロキョロと辺りを警戒してから朝食を摂り始めました。
獲物を足で押さえつけながら鋭い嘴で細かく引きちぎり飲み込んでいます。
やがて、どこからともなくピーエ♪という甲高い鳴き声が繰り返し聞こえるようになりました。
食事中のノスリ?αはこの鳴き声を聞いてもあまり気にせずに、獲物を食べ続けます。

鳴き声の主を探して私がカメラを上にパンすると、鉄塔の天辺にもう1羽のノスリβを発見。
私が知らぬ間に飛来したようです。
実はここはノスリのお気に入りの止まり場所なので、通りがかる度に気にして見るようにしています。(ノスリの定点観察)

▼関連記事
高圧線の鉄塔で羽繕いするノスリ(野鳥)
高圧線の鉄塔から見張るノスリ(野鳥)
高圧線の鉄塔で鳴いて♀を呼び寄せるノスリ♂(野鳥)

ピーエ、ピーエ♪という甲高い鳴き声と嘴の動きが一致したので(リップシンクロ)、鳴いていたのはこの個体βで間違いありません。
早朝から縄張り宣言の囀り♪(モーニングコール)でしょうか。
餌乞いの際は違う鳴き方をするような気がします。
鳴いているノスリβはときどき下を見ているのに、獲物をねだったり奪いに行かないのが不思議でなりません。
鉄塔は末広がりの構造なので、天辺から見下ろせば確実に食事中のノスリαの存在に気づくはずです。
この2羽はつがいの関係なのか、それとも親子なのかな?
その間、鉄骨中段でノスリ?αは黙って小動物を食べ続けています。

ここで私が欲を出して、真横からのアングルを確保しようと少し動いたら、警戒したノスリαに飛んで逃げられてしまいました。(痛恨のミス)
慌てて飛び去る姿をスローモーションで見直すと、今度は足の鉤爪に何も運んでいませんでした。
獲物はもう食べ尽くしてから飛び去ったのでしょう。
実は捕食シーンを撮影した個体αもノスリだと思っているのですが、識別点である翼の下面の模様を確認できていませんし、特徴的な鳴き声も発しませんでした。(例えば、実はトビだったのかもしれません。)

一方、鉄塔の天辺には相変わらずノスリβが残って鳴き続けています。
αが飛び去った方角をちょっと振り返って見ただけです。

私が更にもう少し横にずれると、ノスリβが再び鳴き始めました。
ピーエ、ピーエ♪と寂しげな鳴き声を何度も繰り返しています。


ノスリの捕食シーンを観察したのは、これが二回目です。

次は獲物を狩る瞬間を撮影してみたいものです。
▼関連記事
ノスリの狩り・捕食と飛翔(冬の野鳥)


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。(実際はもう少し薄暗いです。)



【追記】
宮崎学 『野生動物の首をしめるゴミ (かわりゆく環境 日本生き物レポート)』という本(写真集)を読んでいたら、ノスリも動物の死がいを食べることがあると知りました。
ネコの死がいを食べるノスリの生態写真が掲載されていて、
 ふだんはノウサギをはじめ、イタチ、リス、野ネズミ、ヘビ、カエルなどを狩って生きている。そのノスリが死んだネコを食べているということは、気位の高いタカとしては不似合いにうつる。 しかし、冬の時期はノスリといえども獲物をとりにくいから、たとえ死んだイヌでもネコでもシカでも、そこにありさえすればごちそうなのである。 (p108より引用)





獣糞を食べるオオヒラタシデムシ



2016年10月中旬

郊外の道端に落ちていた獣糞にオオヒラタシデムシNecrophila japonica)が来ていました。
採寸代わりに一円玉を並べて置きます。

飼い犬の糞かもしれませんが、この辺りだと野生動物の糞でもおかしくありません。
糞に獣毛が混じっているのは、自分で毛繕いした際に飲み込んでしまったのか、それとも肉食獣が食べた獲物の体毛かもしれません。

オオヒラタシデムシは、黒っぽい糞に胸部も頭も突っ込んで夢中で食糞しています。
触角だけが動いています。

小枝を使ってオオヒラタシデムシを裏返そうとしたら、慌てて逃げ出しました。
急いで仰向けに裏返すと、この個体の腹面にダニは寄生していませんでした。

▼関連記事
オオヒラタシデムシに便乗するダニ
すぐに横に寝返りを打って自力で起き上がると、道端の草むらに逃走。
とても元気な(健康な)個体でした。



2017/12/01

早朝の巣で親鳥の帰りを待つツバメの雛鳥(野鳥)



2017年6月中旬・午前4:24〜4:34 (日の出時刻は午前4:15)


▼前回の記事
泥巣の中で羽繕いするツバメの雛(野鳥)

6日ぶりの定点観察です。
店先の軒下の天井に設置された細長い蛍光灯のカバーの端に営巣しています。
夜明け直後の早朝に、望遠レンズで監視してみました。

映像の冒頭で、巣の右端の縁に止まっていた親鳥が鳴きながら♪出巣しました。
在巣の雛は前回見たときは3羽でしたが、今回は4羽になっていました。
前回は隠れて見えなかった個体がいたのでしょう。

丸々と太った雛が狭い泥巣で押しくら饅頭しています。
隣の個体を嘴で突いたことをきっかけに、少し身動きしました。
兄弟喧嘩にはなりませんでした。
親鳥に餌乞いするときなど、こんな狭い巣でどうやって方向転換するのか、気になります。
やがて左端の個体が羽繕いを始めました。(@6:50)
10分強も粘って長撮りしてみても、親鳥は給餌に戻って来ませんでした。
やはり私が巣の近くで撮影していると親鳥に警戒されてしまうのかもしれません。
じっくり監視するには、やはり三脚が必要ですね。



※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。(実際はもっと薄暗いです)

つづく→ツバメの巣立ち雛が羽ばたき練習(野鳥)



ヤブガラシの花蜜を舐めるキボシアシナガバチ♀



2017年8月上旬

池の畔に蔓延るヤブガラシの群落でキボシアシナガバチPolistes nipponensis)のワーカー♀が訪花していました。
意外にもこの組み合わせは初見です。
花から花へ歩き回りながら吸蜜すると、最後はどこかへ飛び去りました。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2017/11/30

完成したイラガ(蛾)繭のお披露目



イラガ(蛾)の飼育記録#2016-13



▼前回の記事
営繭中に排便するイラガ(蛾)終齢幼虫


2016年9月中旬

営繭開始から2日後のイラガMonema flavescens)の繭です。
完成した回転楕円体の繭cをゆっくり回して全体をお見せします。
繭の両端もお見せします。
繭を爪で弾くと、カチカチ♪といういかにも硬そうな音が鳴ります。

ツルンとした繭が小枝に付着している部分を固定する絹糸の網目をこれまで意識したことがなくて、ちょっと興味深く思いました。

作り方を考えれば当たり前なんですけど。
野外で見つけるイラガの繭は、この糸が(風化して?)無くなっていることが多い気がします。

繭の縞模様のパターン形成過程が面白いのに、微速度撮影で記録した面とは逆側の方が繭の縞模様がきれいに出来ていたのは残念でした。
2匹目の営繭に期待しましょう。

イラガ繭の模様についてインターネット検索で調べ物をしていたら、興味深い研究結果を知りました。


古川真莉子ら 「イラガ科2種の繭生態」
日本生態学会第60回全国大会・一般講演:ポスター発表 (2013年3月) 講演要旨より引用

イラガの斑紋と死亡要因との関係を調べたところ,斑紋が明瞭な繭は鳥類による捕食が少なく寄生蜂による捕食が多かった.これらのことから,ヒロヘリアオイラガは隠蔽度が高いにも関わらず,鳥類に選択的に捕食され,同所的に生息するイラガの捕食率が低下していたと示唆された.また,イラガの繭の明瞭な斑紋は鳥類に対して捕食者回避に正の効果があることが示唆された.
イラガの硬い繭を壊して、中で越冬している前蛹を捕食する野鳥を、私も何例か観察しています。

▼関連記事
アカゲラ♀がイラガ(蛾)の繭を砕いて採食【冬の野鳥】
イラガの繭を割って食べるアカゲラ【冬の野鳥】
シジュウカラ♂の採食行動(イラガの繭は割れず)【冬の野鳥】
イラガの繭を突付くシジュウカラ♂【冬の野鳥】

この繭を紡いだ終齢幼虫cの左側面後部にヤドリバエの卵殻らしき白い異物が付着しているのが気になっていました。
体内寄生されている可能性を疑い、繭を密閉容器に隔離して飼育を続けました。
繭を外気に晒して越冬させた(冬の低温をしっかり経験させた)ものの、翌年になってもなぜかイラガ成虫やヤドリバエは羽化してこなくて残念でした。


▼関連記事
イラガに寄生するヤドリバエ(イラムシヤドリバエ?)

つづく→#14:プラスチックの壁面で繭を作り損じたイラガ(蛾)終齢幼虫b【100倍速映像】


蛾を捕らえたスズメ親鳥が幼鳥に巣外給餌(野鳥)



2017年8月上旬

池の畔を私が歩いていたら、地上に居た一羽のスズメPasser montanus)成鳥が少し飛んで逃げました。(映像はここから)

蛾(種名不詳)を捕らえた直後だったらしく、嘴に咥えた獲物が未だ暴れています。
それをスズメは路肩に叩きつけて(擦り付けて)殺しました。
死んだ蛾の翅を毟り取ると、その場で食べるのかと思いきや、獲物を咥えて飛び立ちました。
私が慌てて振り返ると、背後の民家の板塀の上端にスズメは着陸しました。
そこには巣立ったばかりの嘴の黄色い幼鳥2羽が待ち構えていて、餌を運んできた親鳥を走って追いかけます。
幼鳥1羽は板塀から脱落(落下)してしまいました。
親鳥が餌を咥えたまま少し逃げると、追いすがる幼鳥は広げた翼を小刻みに震わせて餌乞いします。
親鳥が幼鳥に口移して蛾を巣外給餌したその瞬間、残念なことにカメラのAFピントがずれてしまいました。
餌をもらった幼鳥は板塀から飛び降りると、下の車道で蛾を食べ始めました。
そこへ車が走って来たので、スズメ幼鳥は再び民家の庭の方へ飛んで逃げました。
板塀に残っていた親鳥も庭に飛び降りました。

スズメの日常生活はなかなか慌ただしいですね。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


この記事の本題とは少し外れますが、スズメの歩き方に注目してみましょう。
藤田祐樹 『ハトはなぜ首を振って歩くのか(岩波科学ライブラリー)』によると、

・二足による移動の中で、鳥だけが行い、私たちヒトは行わない動きが、ホッピングだ。  (p33より引用)
・ホッピングは先述のように両足をほぼそろえてジャンプする運動だ。身近な鳥では、スズメやメジロなどの小鳥類がホッピングを行うし、カラスも急ぐときにはホッピングをする。スズメは両足をそろえてジャンプしているが、両足を少しずらしてホッピングする種もいる。 (p33〜34より)





2017/11/29

営繭中に排便するイラガ(蛾)終齢幼虫



イラガ(蛾)の飼育記録#2016-12

▼前回の記事
イラガ(蛾)終齢幼虫の繭作り【100倍速映像】

2016年9月中旬

イラガMonema flavescens)終齢幼虫cが繭を紡ぎ始めて間もない頃の10倍速映像を見直していたら、脱糞していました。
スローモーションに加工して、リアルタイム映像に戻しました。(オリジナルが微速度撮影なので、動きがややカクカクしているのは仕方がありません)

絹糸を紡ぎながら、白っぽい液便を噴射しました。
イモムシが繭を作る直前によく下痢便を排泄しますが、白いのはシュウ酸カルシウムが含まれているからでしょうか?
こんな排泄シーンは見たことがありません。

つづく→#13:完成したイラガ(蛾)繭のお披露目


スギの枝で仲間と鳴き交わす♪ハシブトガラス(野鳥)



2017年8月上旬

神社の鎮守の森でハシブトガラスCorvus macrorhynchos)がスギの横枝に止まり、辺りの様子をうかがっています。
やがてカーカー♪と澄んだ声で鳴き始めました。
近くにいる別個体と鳴き交わしています。
最後はどこかへ飛び去りました。



2017/11/28

イラガ(蛾)終齢幼虫の繭作り【100倍速映像】




イラガ(蛾)の飼育記録#2016-11


2016年9月中旬・午前8:04〜午後22:14

▼前回の記事
繭を紡ぎ始めたイラガ(蛾)終齢幼虫

イラガMonema flavescens)終齢幼虫cが小枝(メタセコイア)に営繭する一部始終を微速度撮影してみました。
100倍速の早回し映像をお楽しみ下さい。
これは長年自分で撮ってみたかったテーマなので、ようやくものにできて感無量です。
何度も飼育に失敗していたのです。(原因不明)

▼関連記事(2012年) 
イラガ(蛾)幼虫の営繭異常【早回し映像】


斜めに立てた小枝の下面に足場糸を敷き詰めてから、自分の体の周囲に絹糸を張り巡らし始めました。
白い糸を紡ぎながら繭内でグルグルと激しく動き回る幼虫の腹面が赤っぽいことから、なぜか木星の大赤斑を連想しました。
こんなに繭内で擦られても、ヤドリバエの卵の殻らしき白い異物が幼虫の体表(左側面後部)から剥がれ落ちないことが意外でした。

網目の粗い繭の表面に突然、白い縞模様が左端から見え始めました。(@3:50)
イラガ幼虫のマルピーギ管で大量に作られた白いシュウ酸カルシウムは肛門から脱糞したのか口から吐き出したのか、気になるところですが早回し映像ではよく分かりませんでした。
繭内部の繊維全体に白い液体を染み込ませています。
次に硬化剤のタンパク質を含む褐色の液体を分泌しました。(これもどこから出たのか映像では不明。)
自らの全身を完全密閉して封じ込めてしまう繭の中でイラガ幼虫がどうして窒息しないで激しく動き回れるのか、不思議でなりません。
閉所恐怖症のヒトには想像するだけで悪夢でしょう。
もう一つの疑問は、成虫の羽脱に備えて硬い繭の内部に予め丸く切れ込みを作るのですが、その方法が映像では全く分かりませんでした。(※追記参照)

名著『イラガのマユのなぞ』でも未解決の難問です。
蛹化する前に幼虫が繭の内側に口器で齧りながら回転して丸い切れ込みを入れるのか、それとも微量の酸などを分泌して化学的に溶かすのでしょうか?
硬い繭をX線(レントゲン)で透視しながら微速度撮影すれば何か分かるかもしれません。


15:08 pm
18:38 pm

最後は幼虫の動きが止まりました。
回転楕円体の小さな繭が完成し、硬化・黒化が進行します。

名著『イラガのマユのなぞ』で探求されているように、イラガの繭に現れる白い縞模様のパターン形成はとても興味深いテーマです。
この個体では残念ながらカメラに向いた面にはあまり白い縞模様が形成されませんでした。
おそらく偶然だと思いますが、撮影用の眩しい明かりを照射し続けた影響があったのかもしれません。
飼育中のもう一匹の幼虫が新たに営繭しそうなので、次に期待しましょう。


『繭ハンドブック』によると、イラガの繭は

白地に濃褐色の不規則な縞模様がある楕円形、硬い。繭は糸で作られるが、幼虫はお尻からシュウ酸カルシウムの白い液を、口からはタンパク質を含む褐色の液を出し繭層に塗りつけ、これが繭の模様となる。
表面の模様は様々で個体差が大きい。(p82より引用)



つづく→#12:営繭中に排便するイラガ(蛾)終齢幼虫




※【追記】
鈴木知之『さなぎ(見ながら学習・調べてなっとく)』によると、
イラガ科の繭は、蛹の頭部側の内壁だけが薄く、ここが羽化に際して出口となります。羽化が近づくと、蛹は破繭器はけんきを使って脱出孔を開け、半身を繭外にせり出して羽化します。破繭器は、繭内で体を回転させて缶切りのように使ったり、てこのように押し上げて使うようです。  (p77より引用)



22:28 pm(裏側にはきれいな縞模様)
22:28 pm
22:29 pm
22:30 pm

【おまけの映像】
同じ素材で再生速度を落とした60倍速およびオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。
営繭の過程をもう少しじっくり観察したい方は、こちらをご覧ください。








岩場で甲羅干しするクサガメ♀♂



2017年8月上旬

蓮池の岸に近い岩場で3匹のクサガメMauremys reevesii)が並んで甲羅干ししていました。
人馴れしているのか、横の岸をヒトが通っても逃げずにいます。
亀は動きに乏しいのですが、ときどき首を伸ばして眠そうに瞬きしたり、脚や尻尾を甲羅に出し入れしたりしています。
三脚を立てて長時間の微速度撮影すればスローライフの実態を記録できたかもしれません。
例えば、甲羅干しするお気に入りの岩場を巡って占有行動があるのか等、興味があります。

『カラー自然シリーズ29:カメ』を紐解くと、クサガメの雌雄判別法が書いてありました。

カメの♂と♀は、尾にある肛門の位置で見分けます。肛門が甲羅の縁より内側にあれば♀、甲羅の縁より外側にあれば♂です。でも、クサガメの親の雌雄は、頭の色で見分けられます。黒いのが♂。黄色い紋様があるのが♀です。
(p8より引用)



それを踏まえて動画を見直すと、私にも性別が見分けられました。
♀♂♀が↓↓↑の向きに並んでいます。
右の個体R♀が最大です。
クサガメの配偶行動について何も知らないのですが、一夫多妻のハーレムで日光浴しているのでしょうか?

もう一匹の♂がやって来たら激しい争いになるのかな?
岩場の周囲の水中ではオレンジ色の錦鯉や黒色の鯉が泳ぎ回っていました。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。




【追記】
『トカゲ・ヘビ・カメ大図鑑』によれば、
クサガメの♂は成熟すると全身が黒くなり、顔の模様も見えなくなる。若いときは顔の模様がよく目立つ。 (p49より引用



2017/11/27

繭を紡ぎ始めたイラガ(蛾)終齢幼虫

イラガ(蛾)の飼育記録#2016-10


2016年9月中旬

▼前回の記事
小枝をかじり脱糞するイラガ(蛾)幼虫

今季はどうしてもイラガMonema flavescens)の繭作り(営繭えいけん)を観察したいので、変化を見逃さないように卓上でイラガ幼虫を複数飼育しています。
水を入れたペットボトルにカキノキやミズナラなどの枝葉を挿して、そこで幼虫を放し飼いしています。
私が外出するときや就寝時には、脱走防止のために全体に大きなビニール袋を被せて覆っています。(脱走防止の袋掛け)
ただ飼うだけなら適当な(市販の)飼育ケースに幼虫を放り込んでおけば勝手に繭を紡いでくれるはずです。
しかし私の場合はあくまでも動画撮影が目的なので、なるべく撮影しやすい状態で繭を作って欲しくて、あれやこれやと手を出したり気を揉んだりしている訳です。

実は前夜に、その袋に登ってきた一匹の幼虫を何気なく指で弾き落としてしまいました。
(普段はそんな手荒なことはしないで、ピンセットでつまんで食樹植物に戻してやります。)
翌朝に見ると、幼虫の腹面が赤っぽく変色していて驚きました。
まるで内出血したように痛々しい色合いです。
てっきり、私が指で弾いた後遺症だと思い込んでしまいました。
しかし昆虫はそんなにヤワではなく、営繭の準備が出来たことによる自然な変色だと後に分かりました。
繭の原料の色素が透けて見えているのかもしれません。
インターネット検索すると、先人の飼育例でも同様の記述があって一安心。

【参考サイト】晶子のお庭は虫づくし:イラガの観察日記6

繭作りが始まりました。茶色かった部分が紫色に変わってきています。(引用)



イラガMonema flavescens)終齢幼虫cの食欲が完全に無くなり、営繭場所を探し求めてワンダリング(徘徊)を始めました。
適当な小枝(メタセコイア)を差し出してやると、素直に乗り移ってくれました。
一度は小枝から滑落したものの、再び乗せてやると、今度は小枝の下面に落ち着きました。
繭を作りやすいようにとせっかく二又部分の小枝を選んで採取してきたのに、そこには興味を示しませんでした。
イモムシが繭を紡ぎ始める直前にはよく下痢便を排泄するのですが、今回は見ていません。


左側面後部に目立つ白点はヤドリバエの卵が孵化した跡なのだろうか?(左右非対称)



斜めに立てた小枝の下面に、営繭のための足場糸を敷き詰め始めました。
後退運動や方向転換を見ることができます。
体の下面や頭部のフードなどが赤紫色(褐色)に変色しています。

つづく→#11:営繭の微速度撮影



川沿いの路上で拾い食いするハシボソガラス(野鳥)



2017年5月下旬

川沿いの道を一羽のハシボソガラスCorvus corone)が向こうから歩いて来ました。
路上で何かを咥え上げると私に気づき、横のガードレールに跳び乗りました。
最後は飛んで下の川に降りました。
安全な物陰でゆっくり食べるのでしょう。
採食メニューは不明です。(白っぽくて細長く、あまり食べ物には見えませんでした。)

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2017/11/26

ブッドレアの白い花で吸蜜するクロホウジャク(蛾)のホバリング【HD動画&ハイスピード動画】



2016年10月中旬

某所の駐車場の隅に庭木として植栽されたブッドレアに白色の花穂が咲いていました。
夕刻に通りかかると、スズメガの仲間がホバリング(停空飛翔)しながら長い口吻を個々の小さな花に器用に差し込んで吸蜜していました。
吸蜜ホバリングの妙技を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:13〜)

同定するためにストロボを焚いて高速の羽ばたきを止めた写真を撮ろうとしたのですが、シャッタースピードの設定に失敗。
その間に逃げられてしまったと思いきや、同一個体が近くに咲いた紫の花のブッドレアの株に移動し、同様に吸蜜ホバリングを始めました。
そちらでは写真撮影に成功し、スズメガの正体はクロホウジャクMacroglossum saga)と判明しました。


▼前回の記事
ブッドレアの紫の花で吸蜜するクロホウジャク(蛾)の停空飛翔【HD動画&ハイスピード動画】


シャッタースピードの設定を間違えて上手く撮れず。
こちらは動画から切り出したスナップショット

蓮葉の水たまりに閉じ込められた淡水魚の脱出劇 【名前を教えて!】



2017年8月上旬

蓮池の水面に開いたハス(蓮)の葉の中央の凹みに雨水が溜まっていて、そこに小魚が閉じ込められていました。
天敵に追われて池の水中からジャンプしたらこの水溜りにうっかり飛び込んでしまったのか、それとも大きなハスの葉に幾つか開いた小さな穴(破れ目)から侵入したのですかね?
水たまりから脱出しようと自力で飛び出して葉の上でピチピチと暴れても池には辿り着けず、水たまりに戻りました。
何度も必死に脱出を試みる姿を見ている方も、もどかしくなります。(手前に飛び出せば葉の切れ目から池に脱出できそうなのに!)

感動的なハリウッド映画とは違い、残念ながらこの脱出劇の動画にハッピーエンドはありません。
このファイトテルマ(複数形はファイトテルマータ:植物上に保持される小さな水たまり)で小さな生態系が完結していれば良いのですが、真夏ですから溜まり水は容赦なく干上がっていきます。
水温が上がると共に水中の溶存酸素量(DO)が減り、魚が酸欠になるのも時間の問題でしょう。
この魚にハスの葉を食い破ることは無理でしょう。
恵みの大雨(夕立ち)が降るのを待つしかありません。
しかしその前に、野鳥に見つかり捕食されそうな気がします。


長々と撮っているとこの不屈の小魚に情が湧いて哀れに思い、助けてやりたくなります。
長い長い釣り竿のような棒があれば救出できそうですけど、持っていた三脚を岸から伸ばしても届かない距離なので、断念しました。
さすがに、蓮池の泥水に浸かってまで魚を助けに行くヒーローにはなれませんでした。
見殺しにしてスマン!
極楽浄土のように蓮の花が咲き乱れる蓮池が舞台ということもあり、なんだか仏教説話に登場しそうな出来事でした。

どなたか魚の名前が分かる方がいらっしゃいましたら教えて下さい。
側面に黒い線が走り、それより下面が銀色です。
釣りもやらない私は魚類について全くの無知で、魚の図鑑も持っていないのです。

【追記】 当てずっぽうですが、モツゴPseudorasbora parva)ですかね?

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



ランダムに記事を読む

  • リンゴの果実を食害するモンスズメバチ♀と待ち伏せるニホンアマガエル26/04/2018 - 0 Comments
  • 雪山で猛禽に捕食されたヤマドリの最期(冬の野鳥)09/05/2021 - 0 Comments
  • コウゾリナの花を食すアシグロツユムシ幼虫24/09/2013 - 0 Comments
  • ツチガエルの狩りは待ち伏せ型:虫の捕食13/08/2021 - 0 Comments
  • イチモンジセセリがオトコエシを訪花する羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】08/12/2018 - 0 Comments