2021/06/12

川の岸辺を遡上しながら採食するオオバン(冬の野鳥)

 

2021年3月下旬・午前7:00頃・くもり 

川の対岸に沿って朝から真っ黒な水鳥がなぜか雪解け水の流れに逆らって上流に向かっていました。 
頭部に白いワンポイントが目立ちます。 
気になる鳥の正体はオオバンFulica atra)でした。 

オオバンは、枯れたヨシに覆われた対岸付近を上流に向かって移動しながら、たまに川岸を嘴で啄んで植物質の餌を採食しています。 
水面に嘴を軽く浸すこともありました。 
浅瀬でも雪解け水の流れは速く、その流れに逆らって必死に遡上しています。 
オオバンの脚には弁足と呼ばれる水かきがあるので泳ぎは上手いとされていますが、今回は遊泳ではなく浅瀬を歩いているのかもしれません。
川を遡りながら採食だけでなく羽繕いもしました。 

最後は手前の岸に生えた柳灌木の死角になって、オオバンを見失ってしまいました。 
次は川の流れに乗って下流へ移動するかと期待したものの、なぜか二度と現れず残念でした。 

実は撮影を始める前に、コハクチョウの鳴き声に混じって、キャンキャン♪という小型犬のような奇妙な鳴き声が聞こえていました。(鳴き声の主の姿は見えず) 
帰宅してから図鑑などでオオバンの鳴き声を調べると、キョンキョン♪というような独特の鳴き方でした。 
しかし残念ながら動画撮影中には鳴いてくれず、鳴き声の証拠映像は記録できませんでした。 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

繁殖池の底で♀に殺到するヤマアカガエル♂の群れ(蛙合戦)

前回の記事:▶ 繁殖池の岸に上陸して産卵場所を探し回るヤマアカガエル♀♂の抱接ペア(その2)ライバル♂を撃退

2021年3月中旬・午後13:30および15:20・晴れ 

雪山の繁殖池Hでヤマアカガエル♀♂(Rana ornativentris)の観察を続けていると、雪解け水が貯まった池の底で新たな動きがありました。 
水中で大きな♀にしがみついて抱接を挑んでいる小さな♂を見つけました。 
♀は力なく水中で漂っているのが気になります。
(これが正常なのか、それともまさか♀の死体に♂が死姦?) 



しばらくすると、池の底に潜んでいた♀♂ペアの周囲に多数の♂が団子状に群がっていました。 
水中で息を止めたまま必死で割り込んで♀にしがみつき、ライバル♂を蹴り合う蛙合戦が繰り広げられています。 
♀の獲得を諦めて蛙合戦から離脱する♂個体もいます。 
離脱した♂同士が♀と誤認して反射的に抱きつくこともありますが、すぐに離しました。 
団子の中心に居る♀が長時間♂達にもみくちゃにされて溺死しないか心配になります。 
1匹だけ白い腹を向けて仰向けに静止している個体が♀ではないかと思います。 
捕獲しない限り仰向け姿勢を見る機会は無いのですが、顎の下面に斑紋があることがヤマアカガエルの識別点のひとつなのだそうです。 
しかしその点はよく見えませんでした。 


以下の写真は自動色調補正したものです。

後半はカメラを左にパンすると、別の♀♂抱接ペアが少し離れた水底に潜んでいました。(@2:10〜) 
抱接ペアが決まると他のライバル♂を振り切って逃げてカップル水入らずになるのか、それとも独身♂たちが諦めて離れて行くのでしょうか? 
抱接ペアは、他のあぶれ♂に気づかれないように池の底でじっとしているのかな?
ペア決定の前だけ♀が性フェロモンを放出するのでしょうか?
おそらく冬眠明けに池の底で蛙合戦によって♀♂抱接ペアが決まり、その後に岸辺に上陸して産卵するのでしょう。 
だとすれば、水中の蛙合戦に参加せずに岸辺で待機している多数の独身♂は全く別の繁殖戦略(いわゆるスニーカー戦略、サテライト戦略)を持っていそうです。 

水面からの余計な反射光を除去するために、カメラのレンズに円偏光(CPL)フィルターを装着してみました。 
しかし風が吹くと水面が波立ち、水底の映像がグニャグニャに歪んでしまいます。 
次に機会があれば、完全防水のカメラで水中撮影してみたいものです。 
高価な防水カメラが無くても、透明な水槽などを水面から少し沈め、水中メガネ(ハウジング)のように使えばカメラを濡らさずに水中の様子を撮れるらしいので、その技を試してみればよかったですね。 

軽井沢の自然の四季を調べたピッキオ『森の「いろいろ事情がありまして」 』という本の第2話「スケートリンクのカエル合戦」は、雪国におけるヤマアカガエルの繁殖行動を調べた結果をまとめています。
 雨がしとしと降る3月下旬の生暖かい夜、ようやく氷が解けたスケートリンクがにわかに騒がしくなります。たくさんのヤマアカガエルが冬眠場所から一斉にはい出し、繁殖のために集まってくるのです。(中略) あっ、今、1匹の♀がやってきました。  近くの♂が真っ先に飛びつきます。♀は黙ったまま、どうやら産卵前のようです。しかし次の瞬間、わずかに出遅れた他の♂たちが次々と覆いかぶさり、あっという間に団子になってしまいました。♂たちは「グッグッ」と鳴きながら、お互いを押しのけようと後ろ足で蹴り合い、最後まで♀に抱きついていた♂が、この♀が産む卵の父親になれるのです。(p12〜14より引用)
また、そのページに掲載された写真のキャプションには次のように書いてありました。
♂たちが♀に飛びつき、団子状になる。いわゆるカエル合戦。 池へ向かう途中で♂につかまり、その♂を背負って歩く♀。
この下線部はヒキガエルの繁殖行動と共通しているのですが、今回私は一度も見ていません。
▼関連記事(9年前の撮影) 
排水溝でアズマヒキガエルが蛙合戦
変温動物のヤマアカガエルが冬眠場所から雪山を踏破して繁殖池までやって来るとは考えにくいです。 
たとえ低温に強くても昼間にそんな移動をしたら雪面で目立ってしまい、鳥にすぐ捕食されてしまうはずです。 
(ただし暗い夜に移動する可能性は残されています。) 
それよりも私が今のところ考えているのは、池Hの底で冬眠したヤマアカガエル♀♂の群れが早春になって目覚め、そのまま繁殖活動を始めたというシナリオです。 
池Hの底よりも岸辺の方が多くの独身♂が待機しているのに、岸辺で♀を巡る激しい蛙合戦が起きていないのも不思議です。 
私が今回見ているのはヤマアカガエルの繁殖行動の第一陣なのかもしれません。 
季節がもう少し進んで池Hの周囲の残雪が完全に溶けると、文献の記述通りの繁殖行動(第二陣)が繰り広げられるのかな? 
ヤマアカガエルに関する過去の文献は雪の降らない(少ない)暖かい地方で調査された結果が多いので、ここ雪国の個体群にどこまであてはまるのか、雪国に特有の繁殖行動が進化しているのか、自分で調べてみないと分かりません。 



2021/06/11

繁殖池の岸に上陸して産卵場所を探し回るヤマアカガエル♀♂の抱接ペア(その2)ライバル♂を撃退

前回の記事:▶ ヤマアカガエルは繁殖池の底でも♀に飢えた♂同士で互いに追い回す
2021年3月中旬・午後14:55頃・晴れ 

繁殖池の岸辺にヤマアカガエル♀♂(Rana ornativentris)の抱接ペアが再び上陸してきました。 
もしかすると約1時間前に見た抱接ペアと同じカップルなのかもしれませんが、個体識別できていないので分かりません。 
ヤマアカガエルの体色は太陽光の明るさや見る角度によっても印象が変わり、初心者の私にとって当てになりません。 

日当たり良好の浅瀬で♀の背にしがみついた♂は喉をヒクヒクさせています。 
小声で♀に囁きかけているのかな? 
今回のペアの♂は、♀が産卵地探索のために岸辺を移動してもその度に鳴くことはなく、黙っています。 
♂は前腕を♀の脇の下から回して強く抱きしめていますが、後脚は♀が移動する邪魔(水の抵抗)にならないよう自分の体側に引き付けています。 

ときどきグッグッグッグッ♪と小声の低音で鳴く声がかすかに聞こえるのですが、撮影している個体の鳴き声かどうか不明です。 
少なくとも抱接♂の頬は膨らんでいません。 
※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

やがて抱接ペアの左側から独身♂が泳いで近寄ってきました。(@1:04) 
ペアの背後に回り込んで♀にしがみつこうとしたものの、抱接♂が後脚で蹴りつけて、ライバル♂を文字通り一蹴しました。 (配偶者ガード)
闘争中も小声で鳴く声が聞こえたものの、どの個体が鳴いたのか不明です。 
♀の繁殖戦略としては、あえて♂同士を戦わせておいて強い♂を選ぶことも考えられます。
しかし抱接♀は騒ぎを嫌い、パートナー♂を背負ったまま、池の水中に潜って逃げて行きました。 
負けたライバル♂があっさり諦めて、必死で♀を追いかけないのが意外でした。 
敗者は紳士的に負けを認め、すごすごと引き下がりました。 
ヤマアカガエルの「蛙合戦」はヒキガエルに比べて淡白ですね。 
♂同士でもっと熾烈な格闘になり、♀を力づくで強奪しようとするのかと思っていました。 

抱接ペアは少し泳ぐと、他の個体からかなり離れた静かな岸辺に再上陸しました。 
正確には水中を平泳ぎのように進むと言うよりも、♀は浅瀬の底を後脚で歩くように移動しました。 
浅瀬で待機する抱接ペアを横から見ると、♀の膨らんだ腹面に赤い斑紋があり、アカハライモリのお腹を連想しました。(この斑紋で個体識別が可能か?) 
抱接♂は相変わらず喉をヒクヒクさせています。 
ライバル♂が邪魔しに(♀を奪いに)来る度に産卵地探索を中断するのだとしたら、抱接ペアはいつまで経っても産卵を始められない気がします。 
産卵は暗くなってから行うのでしょうか? 

この繁殖池では深刻な嫁不足らしく(独身♂過多)、ペア形成の過程をなかなか観察できません。 
抱接ペアを見つけたら捕獲して♀♂を引き剥がし、♀をマーキング(個体標識)してから池に戻してやれば、新しい♂と改めてペア形成(抱接)する様子を観察できるかもしれません。
今季の私はなるべくヤマアカガエルの邪魔をしないで、とにかく撮影に専念しましたが、来季以降は試す価値がありそうです。 
ただしタモ(手網)を持参したところで、警戒心のきわめて強くて素早く逃げる抱接ペアを果たして捕獲できるかどうか、自信がありません。

つづく→

2021/06/10

早春の雪山を徘徊するコモリグモの一種(蜘蛛)

 

2021年3月中旬・午前11:45頃・くもり 

早春の里山でヤマアカガエルの繁殖池の横の雪面を元気に動く虫がいます。 
カメラでズームインしてみると、コモリグモの一種でした。
残雪(ザラメ雪)の表面は黒っぽく汚れています。(黄砂?) 

池の水温を測るための新兵器として、この日は非接触式の赤外線温度計を持参しました。 
試しに雪面の温度を測ってみると、なぜか-2.7℃と異常な数値になりました。 
理屈は分からないのですが、測定対象に得手不得手があるようです。
普通の温度計で雪面の気温を測定し直すべきだったのに、カエルの撮影が忙しくなって忘れてしまいました。

ヤマアカガエルは繁殖池の底でも♀に飢えた♂同士で互いに追い回す

 

2021年3月中旬・午後12:30頃・晴れ 

♀を待つヤマアカガエル♂(Rana ornativentris)同士による蛙合戦の前哨戦は岸辺だけでなく、繁殖池の底(水中)でも繰り広げられています。 
例えば水中から浮上して岸辺に一度現れた独身♂が何かに驚いて(撮影している私を警戒?)再び水中に潜ると、水底に待機していた多数の♂が素早く集まってきます。 
相手に触れるとすぐに誤認(♀ではない)だと悟るようで、本格的な抱接には至らずにすぐ別れます。 
逆に池の底に潜んでいた♂が岸辺を目指して急に泳ぎ始めた時も、その動きに反応して近くの♂が素早く泳ぎ寄ってきます。 
水底に潜んでいる♂個体の密度が高ければ、ちょっとしたきっかけで連鎖反応のように小競り合いが繰り広げられるのです。 
ただし、岸辺とは異なり水中には各♂の縄張りというものは存在しないようで、互いに位置が自由に変わりますし、近くのライバル♂を攻撃して追い払う行動は見られません。 
つまり、水中の小競り合いは縄張り争いではありません。 


2021/06/09

巣材を運ぶ途中で交尾するハシブトガラス♀♂のつがい(野鳥)

 

2021年3月下旬・午前10:30頃・晴れ 

郊外の刈田の端にあるブロック塀の上でハシブトガラス♀♂(Corvus macrorhynchos)が交尾していました。 
♀の背に乗った♂が激しく羽ばたいて器用にバランスを取りながら交尾しています。 
カラスの交尾シーンを見れたのは初めてで嬉しかったのですが、私が慌ててカメラを向けた途端に交尾が終わってしまいました。 

そもそも私は普段、カラスの性別を外見で見分けられません。
今回は交尾直後のペアを見比べることで、体格に明らかな性差があることが分かりました。 
左の個体が♂、右が♀で、体格は♀R<♂Lでした。 

♀Rは嘴に何か巣材を咥えていますね。 
巣の外側を作る小枝ではなく、柔らかい材質(フワフワと毛羽立っている)なので、産座として巣内に敷き詰めるものと思われます。 

交尾直後の♀Rは体勢を低くしたまま(前傾姿勢)尾羽を細かく上下に震わせており、素人目にはなんとなく♂にもう一度交尾してもらいたいような性的に興奮した仕草に見えました。 
私もハシブトガラスが交尾を繰り返してくれることを期待したのですが、どうも私に見られていることを警戒した♀♂つがいは交尾する気が失せたようです。 
やがて♀Rがブロック塀を横歩きで♂Lから離れてしまいました。 
最後は♂L、♀Rの順でブロック塀から飛び立ち、同じ方向へ飛び去りました。 
ハシブトガラス♀は巣材を運んで営巣地に向かったはずですが、残念ながら私は見失ってしまい、巣の場所を突き止められませんでした。 
冒頭の交尾シーンおよび最後の飛び立つシーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

カラス♀♂が巣材集めの途中で交尾するとは知りませんでした。 
今までカラスの交尾シーンを見たことがなかったということは、今後は午前中の観察を増やすべきかもしれません。

繁殖池の岸に上陸して産卵場所を探し回るヤマアカガエル♀♂の抱接ペア(その1)

前回の記事:▶ バックハグでまったり過ごすヤマアカガエル♂のBLペア(誤認抱接)
2021年3月中旬・午後13:53〜14:01頃・晴れ 

雪山の池Hで観察を続けると、水中でようやく待望のヤマアカガエル♀♂(Rana ornativentris)の抱接ペアを発見。 
残念ながら♀♂ペア形成の過程は見逃してしまいました。 
水中を勢いよく泳いで来た抱接♀♂ペアが水底でしばらく静止してから、此岸に向かって移動を開始。 
ヤマアカガエルの体格には性的二型があり、明らかに♀>♂でした。 
産卵準備のできた♀は腹部が膨らんでいます。 
♀♂ペアの抱接体勢は、それまで散々見てきた♂同士の誤認抱接とはまるで違いました。 
♀の背後からマウントした♂が♀の脇の下に前腕を回してきつく抱き締めています。 
♂は後脚を畳んで♀の背に乗っていました。
(♂同士の誤認抱接の際は前腕の抱き締めも緩く、後脚を広げていました) 
大型の♀が自分の意志で移動しており、小型の♂は♀の背に乗って完全に身を委ねています。 

浅瀬に上陸した♀♂ペアは初め警戒してじっと辺りの様子をうかがっていました。 
♂の喉がヒクヒク動いています。 

やがて♀が♂を背負ったまま浅瀬をあちこち徘徊し始めました。 
静止状態から♀がノソノソと歩き出す度に必ず♂が小声で「クヮックヮッ♪」と短く2回鳴きました。(@2:10、2:20、2:31、3:16、4:18、5:15、5:20、6:08、6:11、6:15、6:33、6:50、6:57、7:02、7:06) 
一方、大胆になった♀が大きく跳ぶときには♂は「クヮックヮックヮッ♪(またはケケケ♪)」と短い鳴き声を3回続けて発しました。 
♂が鳴く際には求愛歌のときと同様に、両頬が大きく膨らみます。
▼関連記事(同日に池Lで撮影) 
早春の池で♀を呼ぶヤマアカガエル♂の鳴き声♪(求愛歌)
♀を励ましているのか、それとも♀の産卵気分を高めているのでしょうか? 
あるいは周囲の安全状況を♂が♀に知らせているのかな? 
もしかすると抱接♂の鳴き声に特別な意味などは無くて、おんぶした♀が不意に動き出す度に揺れて乗客の♂が「おっと!」という感じに声が漏れてしまうだけかもしれません。 
せっかく抱接ペアを形成したのに産卵地探索中に鳴いたりしたら、他のあぶれ♂が集まってきて♀の奪い合いになりそうな気がするのですけど、今回はそんな事態になりませんでした。(独身♂は岸辺で各自の縄張りを離れないようです) 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

遂にこの抱接♀♂ペアは、私が岸辺に立てた三脚の真下まで来てくれました。 
おそろしく警戒心の強いヤマアカガエルがこんなに間近まで来るとは思わなかったので、興奮を隠し切れない私も息を潜め気配を消して静かに撮影します。 
浅瀬から完全に上陸すると、小石の多い陸地を右往左往しています。 

ここで産卵を始めてくれ!という私の願いも虚しく、♀♂抱接ペアは再び池Hに戻って入水してしまいました。 
私の存在に気づいて警戒したのか、あるいは産卵地の諸条件を吟味した結果気に入らなかったようです。 
息を吐きながら潜水し、再び池の底で静止しました。
この池Hでは私が近くで監視しているせいで、独身♂たちが求愛歌を鳴き交わすほどリラックスしていませんでした。
予め録音しておいたヤマアカガエル♂の求愛歌を抱接♀♂に聞かせたら、安心して産卵を始めてくれるかな?(プレイバック実験)

ヤマアカガエルの繁殖行動を初めて観察する私は、このとき重大な疑問を抱いていました。 
抱接ペア♀♂が池の岸をウロウロするばかりで産卵してくれないので、この♀は既に産卵済みなのではないか?という疑いです。 
つまり、産卵を済ませた♀が再び冬眠するために池から出て山への帰り道を探し回っているだけかもしれません。 
だとすると、愚かな♂は♀の気持ちも知らずに必死にしがみついている(抱接)だけということになります。 
独身♀はどこから現れるのか?という疑問とも関連しています。 
繁殖池の岸辺に並んで♀を待ち構えている独身♂たちが必ず池の外を向いて待機しているのも、独身♀が産卵のために外から繁殖池を目指してやって来ることを示唆しています。 
これはヒキガエルの繁殖行動で見られるパターンです(完全に雪が溶けた約1ヶ月半後)。
しかし、この現場は雪山で、池の周囲は未だ深い雪で覆われています。 
早春とは言え、変温動物のヤマアカガエルが雪山を長距離踏破して繁殖池と山中の冬眠場所を行き来するとは信じ難い話です。(スクープ映像が撮れたら嬉しいですけど) 
もし池のヤマアカガエルを一時捕獲して、池から少し離れた雪面に解放したら、池を目指して移動するでしょうか?

雪国のヤマアカガエルは池の底で冬眠することが知られています。 
冬眠明けの♀♂がその池で繁殖を始め、産卵後の♀は再び同じ池の底に潜って冬眠し直すのだとすれば、納得できます。 
ピッキオ『森のいろいろ事情がありまして』という名著によると、
 カエルは地中で冬眠するものと思われがちですが、軽井沢のような寒冷地では、多くのカエル(ヤマアカガエル:しぐま註)が水中で冬を越すようです。深い池の底や、流れがあって凍らないところでは、水の温度が0度を下回らず、水の外よりも温度が安定しているはずです。また、気温はマイナス15度にも下がりますから、ちょっとぐらい土に潜っても、体が凍り付いてしまうでしょう。また、0度近い低温では、代謝が下がっていますので、呼吸もあまり必要でなくなります。わずかな皮膚呼吸だけでまかなえるのでしょう。彼らは水中から出てこなくてもひと冬を越せるのです。  しかし、11〜3月に池を網ですくって数百匹のカエルを捕らえても、それは大人ばかりで、若い小さなカエルたちがどこで冬眠しているのかはわかっていません。また、春になると歩いて池に集まってくるカエルもいますので、すべてが水中越冬ではないかもしれません。(p123〜124より引用)

ヤマアカガエル♀♂抱接ペアの行動をもう少し観察してみましょう。 

2021/06/08

ニホンザルの糞に集まるキンバエ類♂♀

 

2020年7月下旬・午後15:10頃・くもり 

峠道の路上に新鮮な獣糞が落ちていました。 
大きさと形状からおそらくニホンザルMacaca fuscata fuscata)が残した糞だと思います。 
キンバエの仲間が2匹、獣糞に集まって舐めていました。 
1匹目は体色がメタリックグリーンで、左右の複眼が中央で接した♂。 
2匹目は体色が金色に輝き、左右の複眼が離れた♀でした。 
獣糞上で出会っても2匹は互いに無関心で求愛交尾行動を起こさないということは、おそらく別種なのでしょう。 
♀は獣糞に産卵しているのかもしれませんが、腹端の様子が見えませんでした。 
撮影アングルのために私が下手に動くとハエは逃げてしまうのです。

 

バックハグでまったり過ごすヤマアカガエル♂のBLペア(誤認抱接)

 

2021年3月中旬・午前後12:25頃・晴れ
前回の記事:▶ 繁殖池の岸辺でヤマアカガエル♂同士の誤認抱接と縄張り争い
山中の雪解け水が貯まった池Hでカエル合戦を繰り広げているヤマアカガエル♂(Rana ornativentris)たちの中にも例外はいました。 
岸辺で♀を待ち構えている♂の背後から隣の別個体の♂が反射的に跳びついて誤認抱接したようですが、飛びつく瞬間を見逃してしまいました。 
マウントした方が相手を背後からグイグイ押す闘争行動をやらずに、離れもせずに、軽くバックハグ(おんぶ)した状態のまま、岸辺でただじっとしています。 
ときどき眼球を引っ込めて瞬きしているだけです。 
絶え間なく繰り返されるご近所トラブル(誤認抱接と縄張り争い)に疲れて休んでいるのかな? 
♂同士で同性愛的な抱接行動を始めるのなら、それはそれで動物行動学的に面白いことです。 
しかし、じきに私は他個体の行動に目移りしてしまい、この♂♂ペアがどうなったか見届けることができませんでした。(自然に別れたのだと思います。) 

ヤマアカガエルの繁殖行動についてあまり予習せずに撮影に挑んだ私は、このペアが♀♂なのかと思って、本格的な抱接や産卵行動に移行するのを待って撮り続けました。 
しかし♂♂ペアでした。

 世にカエルの本は数あれど、ヤマアカガエルの繁殖行動を扱った専門書や写真集が見当たりません。 
勉強する本が無いのなら自分でヤマアカガエルの本を書くしかない!ぐらいの意気込みで、自力でフィールド調査するしかありません。 
その後も色々と探し回り、ピッキオ『森の「いろいろ事情がありまして」』という名著の中に春と冬のヤマアカガエルを扱った章が含まれているのをようやく見つけました。
「第2話:スケートリンクのカエル合戦」 「第38話:ふたつの池のカエル集団」
観察フィールドが長野県軽井沢という同じ雪国での記録をまとめた本なので、参考になりました。 

2021/06/07

早春にさえずり♪始めたヒバリ♂(野鳥)

 

2021年3月下旬・午後17:05頃・晴れ 

夕方の川沿いの上空でヒバリ♂(雲雀;Alauda arvensis japonica)が賑やかに囀りさえずりながら飛び回っていました。 
夏鳥のヒバリをこんな早い時期から見かけたのは初めてかもしれません。(気づいてなかっただけ?)
▼関連記事(2〜7年前の撮影:4〜6月) 
ヒバリ♂のさえずり♪と縄張り争い(野鳥) 
地上でさえずる♪ヒバリ♂(野鳥) 
河川敷の草地を歩き回り採食するヒバリ♂(野鳥)♪ 
休耕田で採食しながら鳴く♪ヒバリ♂(野鳥) 
天高くさえずるヒバリ♂が河川敷に離着陸(野鳥) 
ヒバリ♂(野鳥)の囀りを声紋解析してみる
ヒバリ♂は西日を浴びながら縄張りの上空をぐるぐると旋回するだけでなく、激しく羽ばたいてほぼホバリング状態(停空飛行)で鳴いていました。 
停飛状態を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:52〜) 
残念ながら私の背後を流れる川の音でヒバリ♂の美声がかき消されてしまいます。 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


現場は川沿いの原っぱがニセアカシアの灌木林に遷移中で、ヒバリやホオジロ、カラスなどの野鳥をよく見かけるフィールドでした。 
ところがその後、外来樹のニセアカシアが突如一斉に伐採されてしまいました。 
長期的に考えると外来植物の駆除に私は反対しませんが、繁殖期の野鳥にとって営巣地付近の植生が激変すると相当な苦労を強いられそうです。

繁殖池の岸辺でヤマアカガエル♂同士の誤認抱接と縄張り争い

 

2021年3月中旬・午後12:22〜15:50・晴れ
前回の記事:▶ 池の底から岸辺に続々と上がってくるヤマアカガエル♂の群れ

雪山の池Hで冬眠明けのヤマアカガエル♂(Rana ornativentris)が岸辺にずらっと並んで混み合ってくると、隣同士で小競り合いが勃発するようになりました。 
新たに♂が池の底から岸辺に上がってくる度に、既に岸辺で待機していた近くの先住♂が新顔に飛びつきます。 

♀と抱接できる♂は早い者勝ちのようで、誤認でも良いからとにかくいち早く相手に飛びかかって捕捉する必要があるのでしょう。 
動く物なら本当に何でも反射的に跳びついてしまうのか、実験してみたら楽しそうです。 
例えば、魚釣りのルアーとして売られているゴム製のリアルなヤマアカガエルの模型が実験に使えそうです。 
 

しかし、ライバル♂の背後から抱きついた♂はすぐに♀ではないと誤認に気づくようです。 
体表の感触やフェロモンの匂いなどで、ヤマアカガエルは抱きついた相手の性別を知るのかな? 
本当の(異性間の)抱接なら♂は前肢で♀をきつく抱きしめるはずですし、後脚を畳んで♀の背に座ります。 
一方、誤認抱接した♂は前肢の抱きしめも緩く、後脚は大きく広げたままです。 

本気の抱接ではないのに、ライバル♂にマウントした♂は背後から自分の体を何度も相手に打ち付ける(背後から体当たりのように相手を押す)動きを繰り返しました。 
おそらく、この動きで彼我の体格差や体重差を比べているのでしょう。 
♂の体格には個体差があります。 
次に攻守を交代して再びバックハグの小競り合い(力比べ)が起こることもあります。 
勝負がつくと(体格で?)負けた個体は水底へ逃げ帰ったり、相手から少し離れた岸辺に泳いで移動したりします。 
逃げた先の岸辺にも別の先住者♂がいる場合、連鎖反応のようにそこでも小競り合いが勃発します。 
ヤマアカガエルには鋭い角や牙、爪などの武器が何もありませんから、♂同士の「縄張り争い」もなんとも穏やかな(相手を傷つけない)闘争に見えます。 

動物の縄張り争いでよくあるのは、既に縄張りを張っている者が挑戦者に勝つことが多いという「先住者効果」です。
岸辺で隣り合うヤマアカガエル♂同士で珍しくマウントされた♂が逃げ出さず、マウントを仕掛けた方が相手を蹴りながら離れて待機場所を明け渡したことがありました。 
ライバル♂を背後からグイグイ押してもびくともしなかったので、体重で負けたと悟り退散したようです。 

過去に観察したヒキガエルなら、誤認抱接された♂はリリースコール♪を発していました。(俺は♂だ、離せ!)
▼関連記事(9年前の撮影) 
排水溝でアズマヒキガエルが蛙合戦 
アズマヒキガエルの抱接と蛙合戦@沼
ところがヤマアカガエル♂の場合は、誤認抱接でバックハグされても無抵抗で(なされるがまま)、滅多に鳴きませんでした。 
たまに小声で短く鳴いているのがおそらくリリースコール♪なのだと思います。(求愛歌の鳴き声とは明らかに違います)
しかし頬の鳴嚢が膨らんでいないので、どの個体が鳴いているのかはっきりしません。 

▼関連記事

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


♂同士で文字通りマウントの取り合いと陣取り合戦が繰り広げられ、互いに牽制し合う結果、繁殖池の岸辺に独身♂がほぼ等間隔で並び、しかも池の外側を向いて♀を待ち構えるようになります。 
この過程を引きの絵で微速度撮影したら面白そうです。 

♀が一番やって来そうな産卵適地の岸辺を本当に一番強い♂が占有しているのかどうか、個体識別して確かめる必要がありますね。 
例えば日陰だったり水温が低い雪解け水が流れ込む岸辺にわざわざ産卵する♀はいないはずです。
そんな悪条件の場所に追いやられた♂は弱い個体(小型の若い♂?)と予想されます。 
どの個体を撮るべきか目移りしてしまうのですが、ただ漠然と眺めているだけでは、どうも♂は行き当りばったりで待機場所を決めているような印象も受けました。 
小競り合いで負けた♂個体が(一見条件の良さそうな)日当たりの良い岸辺に逃げ込むこともあり、一体何を巡って争っているのか素人目にはますます混乱してきます。 
ヤマアカガエルは体が小さいので、広い池の全体を俯瞰で評価して最適な待機場所を選択するのは難しい気がします。

※ 観察歴の浅い私は未だ外見からヤマアカガエルの性別を見分けるのに自信がありません。 
(♀を強く抱接するために♂の前肢は筋肉が太く発達し、表面がタコのように肥厚しているのだそうです。) 

(カエルは)一般的に♀の体の方が♂よりも大きく、♂には婚姻りゅう(抱きダコ)があります。鳴嚢めいのうがあるのも♂だけなので、鳴くのは基本的に♂だけです。♂の前肢の指にある婚姻瘤は、繁殖で♀に抱接するときに滑り止めの役割をします。(『日本のカエル48 偏愛図鑑: 東大生・さこの君のフィールドノート』p19より引用)

今回の動画に登場する個体は、行動から全て♂だろうと判断しました。 
♀が単独で登場したら周りの♂が放っておくはずがない、と思うのです。 
(もし今回の動画に♀が混じっていたら、ご指摘願います。) 
気になるのは、やや大型の個体が水中を泳いで来て、岸辺で待機している小型♂の真下をわざわざくぐり抜けるように泳ぎ去ったケースです。 
小型の待機♂が慌てて抱接を試みるも間に合わずに捕まえ損ねて、大型個体はスルリと逃げてしまいました。 
この大型の個体が♀なのだとしたら、♂が気づいて抱接してくれる反射神経を試す行動かもしれず、面白いと思いました。 
(一般にヤマアカガエルの体格は♀>♂です。) 
それとも♂同士の挑発行動なのかな? 

♂同士の小競り合いは、いわゆる「蛙合戦」の前哨戦だったようです。
今回観察した♂同士の行動を私は「縄張り争い」と解釈したのですが、専門家の見解は違うようです。 
雪国ならではの生態なのかもしれません。  
平凡社『日本動物大百科(5)両生類・爬虫類・軟骨魚類』でヤマアカガエルの生態について調べると、
同じアカガエルの仲間でも、トノサマガエルやダルマガエルとは異なり、なわばり行動は示さない。卵をもった♀が現れると、♂はわれ先にと♀に抱きつきペアを形成する。(p36より引用)
早春の池で出会った♀♂が抱接を始める過程を私は未だ観察できていないので、そこが今後の課題です。 
♀はいつになったら、そしてどこから現れるのでしょうか? 




【追記】
動物たちの気になる行動(2)恋愛・コミュニケーション篇』という本(総説集)に収められていた福山欣司『田んぼに響く求愛コール:カエルの婚姻行動』を読み返しました。
筆者はアオガエル科の研究者なのですが、冒頭でカエルの婚姻システムについて概説していました。
少し長くなるのですが、どうして繁殖期のヤマアカガエル♂は縄張りを張らないと考えられているのか、引用させてもらいます。
 一般にカエル類の婚姻システムは、繁殖期間の長さが1日から2週間程度しかない短期繁殖型と、1ヶ月以上続く長期繁殖型に大別されます。日本では、ニホンアカガエルのような早春に産卵するカエルのほとんどは短期繁殖型です。こうした種ではたくさんの♂と♀がほぼ同時期に出現していっせいに産卵が行われるのが一般的です。♂たちは、小さな鳴き声を発しながら泳ぎ回り、出会う相手に手当たり次第に抱きつきます。間違えて♂に抱きつくこともありますが、抱きつかれた♂がリリーシングコールと呼ばれる鳴き声を出すので、すぐに離れます。こうした婚姻行動は昔からかえる合戦」としてよく知られています。
 一方、田植えが近づくころに繁殖を始めるカエルのほとんどは長期繁殖型に分類できます。長期繁殖型では、一度にたくさんの個体が集中することはほとんどありません。先に繁殖場所に現れて鳴き出し、そこへ準備のできた♀から順に現れて産卵するというのが一般的です。♀はいつ現れるかわかりません。しかも一度にたくさんやってきませんので、♂たちは自分のなわばりをつくり、大きな鳴き声や美しい鳴き声を出して、♀を惹きつけようとします。もちろん、なわばり争いなど♂たちの競争も激しくなります。日本の長期繁殖型の代表としては、トノサマガエルやカジカガエルなどがあげられるでしょう。(p131〜132より引用)

専門家の理屈は分かりましたけど、今回の私の動画はどうしてもヤマアカガエル♂同士の縄張り争いに見えてしまいます。 

雪山の池という特殊な環境の個体群では繁殖行動が変わってくるのでしょうか?



誤認に気づくと抱きしめた前足をすぐに離す

2021/06/06

クロバナエンジュの花で身繕いするヤマトツヤハナバチ♀【ハイスピード動画】

 

2020年6月上旬・午後13:30頃・晴れ(木陰) 

里山を抜ける峠道の沿道に自生するイタチハギ(別名クロバナエンジュ)の灌木でヤマトツヤハナバチ♀b(Ceratina japonica)が訪花していました。 
後脚の花粉籠に橙色の花粉団子を満載しています。 
採餌の合間に身繕いする様子を240-fpsのハイスピード動画で撮影してみました。
全身に付着した橙色の花粉を足で丁寧に拭い取り、花粉籠にまとめています。 
吸蜜の合間の化粧中にも長い口吻を伸縮させています。 
マクロレンズで接写したので、顔の頭楯の黄斑がばっちり見えました。 

池の底から岸辺に続々と上がってくるヤマアカガエル♂の群れ

前回の記事:▶ 早春の池で水面に浮かぶヤマアカガエル♂
2021年3月中旬・午後12:10〜15:27・晴れ・気温15℃@午後13:10 

雪山の池Hで冬眠していたヤマアカガエルの繁殖期が始まり、卵塊が岸辺だけでなく水底にも既に多数産み付けられていました。(3日前に来たときは卵塊なし) 
前日はくもりで、前々日は終日雨が降りました。
雨の日にこそ頑張って見に来るべきだったかもしれません。 
平凡社『日本動物大百科(5)両生類・爬虫類・軟骨魚類』によると、
2〜4月ごろの降雨のあった日に活動を開始し、水田・湿地・池・道端の水たまりなどの止水に集まり繁殖する。ただし、完全な止水域とはいえないような河川の比較的流れのゆるい浅いよどみなどにも産卵することもある。(p36より引用)


この繁殖池を前年に見つけた3月中旬には既に幼生が孵化していました。

▼関連記事(1年前の撮影)
ヤマアカガエルの卵塊とオタマジャクシ

しかし2020年は暖冬だったので、雪が多い年にはいつ繁殖を始めるのか、手探り状態で調査を始めました。

「両生類保全資料研究室」サイトが毎年まとめているアカガエル産卵前線を見ると、確かに2021年度の産卵前線は3月中旬に山形県を通過したようです。

早春の池に集まるヤマアカガエルRana ornativentris)は非常に警戒心が強く、池の周囲の雪面を私が歩き回るとすぐに潜水して池の底に隠れてしまいます。 
古池や蛙飛び込む水の音 松尾芭蕉
つまり繁殖活動を撮影したくても、カエルに悟られないよう池に忍び寄ることは不可能です。 
まるで鳴き砂や鶯張りの廊下のように、池の周囲の残雪が天敵(捕食者)の接近を知らせる警報装置になっているのです。
(新雪だと捕食者の足音が消えますが、そんな寒い時期の池は未だ凍結していて、ヤマアカガエルは冬眠中でしょう。)
ヤマアカガエルが警戒心を解いてくれるまで、池Hの傍らで長時間じっと待つしかありません。
辛抱強く待つと、少しずつ♂が岸辺に戻ってきました。 
そこで各々が縄張りを持ち、♀が来るまで待ち構えるのです。 
しかし何かに驚くとすぐにまた水底に潜ってしまいます。 
逆光になることに気づいた私は途中で撮影場所を少し移動したのですが、そこでまた一からやり直しです。 

よく見るとヤマアカガエル♂の体格は大小さまざまで、背中の体色や斑紋にも個体差がありそうです。 
♂の体格差は、おそらく年齢を反映しているのでしょう。
(ヤマアカガエル成体が)性成熟して繁殖を開始するまでには約2年を要する[13]。天敵が多く、成体の寿命は4 - 5年程度と考えられている[13]。(wikipediaより引用)
繁殖行動を詳しく調べる上で池のヤマアカガエルを個体識別できるようになりたいのですけど、ヤマアカガエルの観察を始めたばかりで1年目の私は未だ修行が必要です。 
最近の研究者は、マイクロチップをカエルの体内に埋め込んでおいて、読み取り装置で厳密に個体識別するのだそうです。
参考サイト:あなたは誰? ヤマアカガエルの個体識別
卵塊が集中的に産み付けられてある東端の岸辺が♀に最も人気がある産卵場所だと思うのですが、不思議なことに独身♂は必ずしも既存の卵塊の近くには集まりません。 
ヤマアカガエル♂は体が小さいので、池全体を俯瞰で見渡して状況判断することができないのかもしれません。
日当たり状況も♂の待機場所とあまり関係ないようで、日向の岸辺だけでなく日陰にも♂が待機しています。 
岸の残雪が溶けて滴り落ちる真下にも独身♂が居たのには驚きました。 
日陰ですし、水温が冷たくないのでしょうか? 
池Hの水温を測定すべきでしたが、私が余計な動きをするとカエルがまた水中に逃げてしまうので、今回を撮影を優先しました。 
♂同士で陣取り合戦があり、弱い♂(繁殖経験が浅くて若い小型♂?)が条件の悪い場所に追いやられてしまっているのかもしれません。(映像公開予定) 

※ 私は未だ外見からヤマアカガエルの性別を見分けるのに自信がありません。
今回の動画に登場する個体は、行動から全て♂だろうと判断しました。
♀が単独で登場したら周りの♂が放っておくはずがない、と思うのです。
(もし今回の動画に♀が混じっていたら、ご指摘願います。)

独身♂が岸辺にずらっと並んで混み合ってくると、隣同士で小競り合いが勃発します。 


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