2015年7月上旬
キボシアシナガバチ巣の定点観察@柳#1
水辺に近い堤防に生えた柳(樹種不詳)の枝先にキボシアシナガバチ(Polistes nipponensis)の初期巣を見つけました。
未だワーカーは羽化していないものの、中央部の育房には黄色い繭キャップが作られています。
巣盤周縁部の浅い育房では幼虫が育っています。
創設女王は巣盤にぶら下がったまま急に短く羽ばたきました。
扇風行動にしては短いですし、それほど暑くありませんでした(気温を測り忘れた)。
軽い威嚇行動なのでしょうか?
やがて女王は幼虫に肉団子を給餌し始めた…と現場では思ったのですが、映像を見直すと違ったようです。
女王が口元に咥えていた白っぽいペレットは肉団子ではなく巣材(パルプ)でした。
帰巣後にかなり長時間噛みほぐしていました。
この巣材を幼虫が入っている育房の壁に薄く伸ばしながら追加して、育房の高さを増しています。
下から巣盤を見上げるアングルで撮ると、育房数は計30室でした。
繭13、幼虫4、卵13と全ステージが揃っています。
造巣を終えた女王は育房を点検して回ります。
つづく→#2:初ワーカーと女王の夜
2015年7月上旬・正午頃
巣立ったばかりのスズメ(Passer montanus)の幼鳥が民家の板塀の天辺に座り込んでいます。
親鳥が給餌しにやって来るのを待っている間、眠そうに目を瞑ってうたた寝する様子が可愛らしい。
最後は目覚めて飛び去りました。
ノシメマダラメイガの飼育記録#23
▼前回の記事
ノシメマダラメイガ(蛾)の繭を乗っ取る幼虫【微速度撮影】
2015年7月中旬
兄弟喧嘩で繭から追い出されたノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)の蛹を採取し、隔離して飼育することにしました。
多数の幼虫がウロウロしている過密環境では落ち着いて羽化できないだろうと思ったからです。
共食いされる心配も少しありました。
3日後、蛹の表面をよく見ると光沢が失われ、細かな皺のようなものができつつあります。
蛹のクチクラ層の下に空気が入ったのでしょうか。
いよいよ羽化が近い予感がしました。
ノシメマダラメイガ関連の文献※によると、羽化直前に蛹は灰色になるらしい。
※桑原保正. "メイガ科昆虫の性フェロモンに関する研究." (1971).
微速度撮影で蛹を監視することにしました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
蛹はときどき腹部にかすかな蠕動が見られます。
遂に羽化が始まりました。(@8:08)
蛹の前方が割れて成虫が脱出しています。
ところが繭内で固定されていないため、容器内で蛹が激しく動き回ってしまいました。
そのためにスムーズに抜け出せないで、新成虫は羽化殻を引き摺って歩いています。
こんなことなら、瞬間接着剤で蛹を固定しておけば良かったかもしれません。
羽化殻だけでもコレクションしたかったのですが、行方不明になり残念。
成虫が暴れたせいで、下に敷いたティッシュペーパーに鱗粉が付着しています。
逃げられたために性別も分からなくなってしまいました。
ノシメマダラメイガは普通、夜に羽化するらしいのですけど、今回の羽化は真昼でした。
撮影用に照明を常時点灯していたせいで、日周リズムが狂ったのでしょう。
羽化直後の室温は31℃、湿度47%でした。
次に機会があれば、繭からの正常な羽化を観察するつもりです。
これでノシメマダラメイガの生活史を大体ひと通り観察出来ました。
つづく→#24:ニンニクは貯穀害虫ノシメマダラメイガ(蛾)を誘引する?
2015年7月中旬
郊外を流れる川のコンクリート護岸にハグロトンボ(Calopteryx atrata)が集まっていました。
必ず顔を川に向け、水際でほぼ一列に止まっています。
ときどき飛び立って水面の上を飛び、すぐに舞い戻る、という謎の行動を繰り返しているのが気になりました。
幸いハグロトンボの性別を見分けるのは簡単で、♀は胴体が黒く、♂の腹部は金属光沢のある緑色です。
♀も♂も両方混在しているのに、なぜか求愛や交尾行動は見られません。
ハグロトンボは「ほかのカワトンボ類のような儀式ばった配偶行動はない。」(ヤマケイポケットガイド18『水辺の昆虫』p48より)
wikipediaによれば、ハグロトンボの
羽化後の若い個体は薄暗いところを好み、水域から離れて林の中で生活するが、成熟すると再び水域に戻り、明るい水辺の石や植物などに止まり縄張りを張る。
地上で止まっている時に黒い翅を勢い良く開閉して誇示しているのは以前も見たことがあります。
▼関連記事
・ハグロトンボ♀の翅紋誇示
・ハグロトンボ♂が翅を開閉
『昆虫の研究:トンボの楽園』p8によると、
ハグロトンボは、ふだん羽をとじてとまる。羽を開くのは、近づくなという縄張り争いの信号だ。
もし単純な縄張り争いだとしたら、領空侵犯されても迎撃して追い払わないのは解せません。
隣接個体とのパーソナルスペースを守るためだけに飛び上がっては止まり直し、川岸での居場所を変えているのでしょうか?
京都鴨川の名物となっている堤防に等間隔で座るヒトのカップル※のように、ハグロトンボも川岸で自然に等間隔で並ぶようになるのかな?
※ 興味のある方のためへのリンク集
回転寿司のように水面を流れてくる餌を待って捕食しているのでしょうか?
群れの様子を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみたら(@1:41〜)、飛び上がる謎が解けました。
飛びながら巧みに身を翻して小さな昆虫を空中で狩り、捕食していたのです。
皆が川の方を向いて止まっていた理由もこれで分かりました。
♀♂が集まっていたのに交尾しなかったのは、色気よりも食い気だったようです。
脚で捕らえた獲物を口元に持って行ってから着陸しました。
飛んでる獲物が小さ過ぎて見えないのが残念です。
ただし目の前の水面をアメンボが横切ってもハグロトンボは無反応です。
アメンボは肉食性の水生昆虫だから捕食の対象にはならないのでしょう。
着陸地点は元の位置とは限らず、右に左に移動します。
つづく→引きの絵で撮影
ノシメマダラメイガの飼育記録#22
2015年7月上旬
飼育容器の底に作られたノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)の薄い繭の中で蛹の黒化が進んでいます。
この蛹は頭部を上に向けており、体の前半部は黒色になり、腹部は褐色のままです。
24時間以内に羽化しそうです。
羽化する瞬間を記録するつもりで10倍速の微速度撮影で監視・録画していたら、全く予想外の展開になりました。
個体密度などは考慮せずに適当に飼っているため、他の幼虫が絶え間なく徘徊して来て繭内の蛹も落ち着かなそうです。
餌の穀類の下に潜った幼虫がときどき激しい地殻変動を起こしています。
繭の入り口から幼虫が侵入してきて触れたため、蛹が少し回転しました。
このとき蛹が蠕動して威嚇(抗議)したようです。
繭の隙間に幼虫が居座り、上半身だけ外に出して食事しています。
ようやく居候が出て行ってくれたと思いきや、また戻って来ました。(別個体?)
繭の作りが甘くて侵入し放題です。
頭部を幼虫につつかれた蛹は、尾を振って(身を攀じって)必死に抵抗しています。
図らずも蛹の運動能力を見ることが出来ました。
侵入者の幼虫は蛹室を乗っ取ろうとしているのでしょうか?(労働寄生)
本種の幼虫が集めたゴミを糸で綴って念入りに繭を作るのは、共食い防止のためのような気がしてきました。
幼虫が蛹を完全に繭の左端から追いやってしまいました。
繭を乗っ取った幼虫は押麦をかじったり繭内で方向転換したりしています。
まさか蛹と幼虫の仁義なき兄弟喧嘩が見れるとは予想外でした。
散々、狼藉を働いた後に幼虫は、意外にも繭から出て行きました。
したがって幼虫には何も悪気はなく(繭を乗っ取るとか労働寄生する意図は無く)、無邪気に勝手気ままに徘徊・摂食していただけのようです。
苦心して作った繭から後輩(弟/妹)に追い出された蛹は無防備な剥き出し状態になってしまいました。
もちろん自力では繭に戻れません。
※ プラスチック容器越しに撮ったやや不鮮明な映像に対して動画編集時に自動色調補正を施してあります。
つづく→#23:成虫の羽化【微速度撮影】
【追記】
小島渉『わたしのカブトムシ研究』に似たような話が書いてありました。
(カブトムシの)幼虫は先にできた蛹室の近くにやってきて、そこで自らも蛹室を作る。このとき、やってきた幼虫は先にできた蛹室と必ず一定の距離を保っており、それを壊してしまうようなことはほとんど起こらないようなのだ。(中略)カブトムシの蛹室の壁は物理的にそれほど頑丈ではないので、ほかの幼虫が土を掘って蛹室を作るときに壊してしまうことが起こるはずである。(p67-68より引用)
幼虫がまさに蛹室の壁に到達しようかというとき、蛹が蛹室の中でぐるぐると服節をまわし回転運動をおこなうのが見えた。幼虫は動くのをやめ、しばらくすると蛹室のそばから少しずつ離れていった。(p68より)
幼虫は決して蛹を食べてしまうようなことはなかった。ただ単に、土の中を動き回って蛹室の近くに来たときに知らず知らずのうちに蛹室を壊してしまうのだと考えられる。(p69より)
腐葉土の中で育つカブトムシの幼虫は、天敵(捕食者)であるモグラの振動を察知するとしばらく動きを止めてやり過ごすらしい。
カブトムシの蛹はモグラの振動を行動擬態することで、同種の幼虫に蛹室を壊されないようにしている、という興味深いストーリーでした。
ノシメマダラメイガの蛹も同様の防衛戦略を発達させていても不思議ではありません。(実際に繭が壊され侵入されそうになったときに、蛹が繭の中で激しく暴れました)
今回はあまりにも高密度で飼い過ぎたせいで、繭内の蛹が繭内で動いてもその音がかき消されてしまったのかもしれません。
2015年7月上旬
湿地帯に生えた柳の群落で葉を舐めているのは蜂(モンスズメバチ♀、スズバチ、クロマルハナバチ♀)だけではありませんでした。
柳(樹種不詳)の高木に3羽のハシボソガラス(Corvus corone)が集まっていました。
梢の細い枝に止まって何をしているのかと思いきや、柳の葉を嘴でパクパク摘んでいます。
葉に付いたアブラムシの甘露や、あるいは柳の花外蜜腺を舐めてるのでしょうか?
舌の動きが見えないのですけど、決して葉を千切って食べている(葉を飲み込む)のではありません。
それともアブラムシなどの虫を捕食しているのかな?
三羽烏のうち、左の枝に止まった個体が頻りにカーカー♪(正確にはガーガー♪掠れ声で)鳴いてます。
口の中が黒いので成鳥ですね。
注目していたら気不味く感じたのか、鳴きながら飛び去りました。
ちなみに、柳の葉を舐める野鳥を見たのはこれが二度目です。
▼関連記事
柳の花外蜜腺を舐めるヒヨドリ
柳の葉はよほど甘いのでしょうか?
今度私も舐めてみようかな…。
ノシメマダラメイガの飼育記録#21
2015年6月下旬
ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)成虫が1頭、飼育容器の壁面にへばり付いて死んでいます。
その死骸の傍らに居る幼虫が気になりました。
分散移動の途中にたまたま死骸に遭遇して立ち往生しているのではなく、やけに死骸へ執着しています。
気になって観察していると、死骸を掴んで(噛んで?)保持しながら後退して引き寄せました。
翅を根本から食いちぎろうとしているようです。
もちろん幼虫が生きた成虫を捕食したのではなく、成虫は寿命で死んだのでしょう。
死骸なので共食いや親殺しではありません。
幼虫の餌として与えた穀物やチョコレートだけでは物足りず、屍肉を食べてタンパク質を補給しているのでしょうか?(scavenger)
※ プラスチック容器越しに撮った前半のみ自動色調補正を施してあります。
容器越しの撮影ではまどろっこしいので、容器の蓋を開けて直接接写することにしました。
辺りは死骸の鱗粉が散乱していました。
斜めに見下ろすアングルのため、肝心の幼虫の口元が残念ながらよく見えません。
先日、終齢幼虫が営繭する初めの段階で周囲から様々なゴミを集めては糸で綴って繭を強化する様子を観察しました。
その際に近くにあった成虫の死骸を引き寄せて解体していました。
親のバラバラ死体を巣材に再利用するという猟奇的な習性に震撼しました。
▼関連記事
ゴミを綴り繭を紡ぐノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫【微速度撮影】
今回も似たような行動なのだろうと予測がつきました。
案の定、後日この場所で(おそらく同一個体が)繭を紡ぎました。
幼虫がゴミ資源(死骸)のすぐ近くを選んで営繭することが興味深く思いました。
この繭は中の蛹が透けて見えるので、成虫が羽化するまで観察を続けることにしました。
つづく→#22:蛹と幼虫の兄弟喧嘩
2015年7月上旬
堤防の草むらに咲いたクサフジの群落でクロマルハナバチ(Bombus ignitus)のワーカー♀が訪花していました。
吸蜜している蜂の後脚を見ると、花粉籠に白い小さな花粉団子を付けています。
同一個体を撮影。