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2025/10/05

ニホンミツバチ♀の分蜂群を誘引する不思議な蘭植物キンリョウヘン

 

2024年5月下旬・午後12:45頃・晴れ? 

山麓にある古い木造家屋の床下に昔から何年間もニホンミツバチApis cerana japonica)が自然営巣しています。 
久々に定点観察に来てみると、この日も多数のワーカー♀が活発に飛び回り、床下にある巣に出入りしていました。 

家屋の手前に養蜂用の空の巣箱が2つ置かれていました。 
ちょうどニホンミツバチが分蜂する時期なので、巣箱に引っ越してくる分蜂群を捕獲したい養蜂家がいるのでしょう。 
分蜂群を効果的に誘引するために、それぞれの巣箱の近くにキンリョウヘンという蘭の鉢植えが計3つ置かれていました。 
キンリョウヘンの花は、なぜかニホンミツバチの集合フェロモンを分泌しているのだそうです。 
ただし、我々ヒトの鼻には無臭です。
キンリョウヘンの花は、ニホンミツバチの「集合フェロモン」と非常によく似た化学物質(3-ヒドロキシオクタン酸:3-HOAA と 10-ヒドロキシデセン酸:10-HDA)を分泌します。
これは一種の化学擬態であり、フェロモンで誘引したミツバチによって授粉してもらおうというのが、キンリョウヘンの送粉戦略です。 
本やテレビなどで知っていましたが、実際に見学するのは初めてです。 
確かにニホンミツバチのワーカー♀が多数集まっていました。 

意外にも、キンリョウヘンの花で吸蜜したり花粉を集めたりする個体はいませんでした。 
キンリョウヘンの花自体には蜜がないため、ミツバチが花に留まって採餌する行動は見られないのだそうです。
キンリョウヘンの花は「背面摩擦送粉」という仕組みで受粉します。
ミツバチが花に入ると、背中に花粉塊(蘭特有の「ポリニア」)が付着し、別の花に移動することで運ばれた花粉と授粉します。
花粉塊が付着する部位は蜂自身の足先が届かず、身繕い動作(グルーミング)でも取り外しがほぼ不可能な場所です。
つまり、蜂は背中についたキンリョウヘンの花粉塊を自力で後脚の花粉籠に移し替えて花粉団子として巣に持ち帰ることはできません。
ミツバチ側にとっては花蜜や花粉という報酬がない「騙し」の仕組みですが、植物側は効率的に送粉してもらうことができます。


ニホンミツバチの偵察部隊に巣箱の入口を見つけてもらいやすくして巣箱へスムーズに誘導するために、キンリョウヘンの花の置き方が工夫されていることが分かりました。 
なぜか右よりも左の巣箱の方が蜂の出入りが多いです。 

巣箱の内部から歩いて巣口に出てきた蜂が、口にオレンジ色の小さな塊を咥えていて、外に捨てました。 
巣箱の内部を清掃しているということは、偵察部隊が巣箱を内見して気に入り、これから女王を連れて分蜂群が引っ越してくる前兆かもしれません。 

一番興味深かったのは、巣箱の手前の地面で複数のニホンミツバチ♀が団子状に集まって格闘していたことです。 
キンリョウヘンの放つ強烈な匂い(フェロモン)に酩酊したのでしょうか?
かの有名な、天敵のスズメバチを熱殺する蜂球なのかと思い接写しても、ニホンミツバチ同士の争いでした。 
ちなみに、スズメバチvsニホンミツバチの死闘が繰り広げられるのは秋です。
もしかしてこれが仮集結した分蜂蜂球の出来始め(形成初期)なのでしょうか? 
しかしよく見ると、1匹の個体を取り囲んで集団リンチしています。 
相手にしがみついて噛み付いたり、腹端の毒針で刺そうとしたりしていました。 
近所にある別々のコロニーから集まって来た斥候の蜂同士が、引越し先の巣箱を巡って争っているのかもしれません。 
襲われている個体はほぼ無抵抗で、相手を振りほどこうと必死に羽ばたきながら歩いて逃げようとしています。 
熱殺蜂球とは異なり、喧嘩が終わって蜂の団子が解散しても、死亡個体が地面に残されることはありませんでした。 

残念ながら、ニホンミツバチの分蜂群が実際に新しい巣箱へ引っ越しする様子を観察することはできませんでした。 
女王も含めた分蜂群が巣箱に引っ越しする日はなかなか予想できないので、無人のカメラを設置して何日も愚直に監視する必要がありそうです。


【考察】
キンリョウヘンの誘引成分は女王蜂のフェロモンやローヤルゼリー成分に近いため、働き蜂(ワーカー♀)だけでなく結婚飛行に飛び立った雄蜂♂を集める力もあるのだそうです。
しかし今回、新しい巣箱やキンリョウヘンに来ていたのはニホンミツバチのワーカー♀だけで、雄蜂♂はいませんでした。

 この記事を書くための調べ物をする上で、いつものようにPerplexity AIとの問答が役立ちました。
(今回は試しにPDFファイルにまとめてみました。)

私が一番知りたいのは、キンリョウヘンの鉢植えの近くの地面でニホンミツバチが団子状になっていた行動についてです。

菅原道夫『ミツバチ学:ニホンミツバチの研究を通し科学することの楽しさを伝える』 という本のPart3(p83-130)で、ニホンミツバチの特性の1つであるランに誘引される現象とその研究の現状を詳しく解説しています。
しかし読み返しても、私の疑問は解決しませんでした。

Perplexityの見解では、
集合フェロモンに誘引されたミツバチは、巣箱やその周辺で一時的に密集することがあります。これは新しい巣箱への入居前や、女王蜂を待つ間などによく見られる行動です [18] [19] 。
特に分蜂時や新しい環境下では、偵察蜂や一部の働き蜂が地面や巣箱の周囲で「仮集結」することがあり、これが団子状に見えることがあります [19] 。

また、「異なるコロニーから来たニホンミツバチの偵察部隊が巣箱を巡って激しい闘争を繰り広げることがあるのか?」という私の疑問に対して、Perplexityは否定的でした。
異なるコロニーの偵察蜂が鉢合わせた場合
偵察蜂同士が同じ巣箱やキンリョウヘンの周辺で出会うことはありますが、基本的には激しい争いは起きません。
偵察蜂はあくまで「下見」役であり、候補地を確認したら自分の群れに戻り、情報を伝達します。その後、分蜂群全体が入居を決定するかどうかが決まります [27] [28] 。
もし複数の分蜂群が同時に同じ巣箱を目指して集まった場合、最終的にはどちらか一方の群れが入居し、もう一方は別の場所を探すことが多いです。まれに両群が同時に入ろうとし、巣箱の入り口付近で一時的に小競り合いが起きることもありますが、致命的な争いには発展しません。

しかし私はどうもPerplexityの説明に納得できません。
佐々木正己『ニホンミツバチ: 北限のApis cerana』という書籍を読むと、次のような記述があったからです。
ニホンミツバチがオオスズメバチの襲来を察知して対処するときの反応をも化学擬態しているとする小野・佐藤(1997)の説は、誘引された蜂が(キンリョウヘンの)花弁をかじる不思議な行動を見事に説明する (p160より引用) 

蜂球に包まれた(キンリョウヘンの)花は熱とかじり行動でぼろぼろにはなるが、受粉は高率で保証される。そして開花時期が、まさに分蜂の季節と一致しているのである。 

私が観察した小規模な蜂球やニホンミツバチ同士の闘争行動は、これで説明できるのではないか?と思いつきました。
つまり、キンリョウヘンの化学擬態によってニホンミツバチの熱殺蜂球が誤って発動されてしまったのではないでしょうか?
この仮説なら、必ずしも他のコロニーから来た蜂との喧嘩とは限りません。(同じコロニー内の同士討ちかも)


佐々木正己『ニホンミツバチ: 北限のApis cerana』や小野・佐藤(1997)の説に基づき、「キンリョウヘンの化学擬態によってニホンミツバチの熱殺蜂球が誤って発動される」可能性について検討すると、十分に合理的な解釈といえます。

化学擬態による誤作動と観察事例

  • キンリョウヘンは、ニホンミツバチの集合フェロモンだけでなく、オオスズメバチ襲来時の危険(外敵や警戒)フェロモンまで部分的に化学擬態していると分析されています。scienceteam.jst

  • 花弁をかじったり、他個体にまとわりついたりする「異常な蜂球状行動」は、本来天敵襲来時の防御反応として発動されるべき集団行動が、化学信号によって誤誘導された結果と説明できます。38qa+1

行動の特徴

  • 通常の熱殺蜂球はオオスズメバチなど天敵が存在し、巣の防衛で発動します。その際はミツバチ死骸・負傷者が見られます。tamagawa+1

  • キンリョウヘンの場合は死骸が残らないため、攻撃性の弱い「誤発動型蜂球」や小規模衝突として観察されます。38qa

  • 花弁をかじる不思議な行動も、外敵がいないにも関わらず警戒・排除スイッチが入り、集団で花(=誤認天敵)を攻撃しようとする防衛行動の名残と考えられます。scienceteam.jst

生態・進化的解釈

  • キンリョウヘンのフェロモン成分が、ミツバチに「危険」や「集合」だけでなく「攻撃・防御」反応まで誤誘導する化学擬態であるとの学術的指摘があり、進化的視点からも特異な利用例とされています。38qa+1

  • 現場で観察された小規模蜂球や花弁へのかじり行動は、こうした「擬態シグナル誤認による行動発動」の一環として解釈してよい根拠があります。


結論
キンリョウヘンの化学擬態が、ニホンミツバチの本来の熱殺蜂球・警戒防衛行動まで誤発動させてしまうことは、最新の学術的知見にも一致します。観察された小規模蜂球や花弁かじりは、擬態による誤認誘導現象として十分説明できます。scienceteam.jst+1


手強い相手でしたが、ついにPerplexity AIを説き伏せることができました。
(Perplexityは誤解していますが、キンリョウヘンの花弁をミツバチがかじった行動を私自身は観察していません。)
もちろん、AIを論破したからと言ってそれが科学的に真理だとは限りません。
私は未だ1例しか観察していませんし、解明していくのはこれからです。
 

映像を見直すと、微小なアリ(種名不詳)がキンリョウヘンに訪花しているようですが、ニホンミツバチの観察に集中していた私は、アリのことなど眼中にありませんでした。 
今後の課題です。


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2025/10/03

ヤマザクラの樹洞の縁に産卵するフタガタハラブトハナアブ♀

 

2024年7月中旬・午前11:10頃・くもり 

低山の樹林帯を抜ける山道の横に立派なヤマザクラの老木があり、幹に開口した小さな樹洞(開口部の直径は約2cm)の手前でフタガタハラブトハナアブ♀(Mallota eristaliformis)がホバリング(停空飛翔)していました。 
樹洞の縁に停まると、樹皮に腹端を何度も接触させています。 
このとき卵を産み付けているのでしょう。 
飛び立っても少しホバリングするだけで、同じ地点に着陸し直し、産卵を繰り返しています。 

夏の樹林帯は、林冠の葉が鬱蒼と茂って昼間でもかなり薄暗いです。 
初めは黄色い蜂に見えたので、てっきりマルハナバチ類の雄蜂♂が帰巣したか、あるいは交尾のために他のコロニーの樹洞巣に飛来した(探雌飛翔)のかと思いました。 
動画とは別に同定用に撮ったストロボ写真を見直すと、マルハナバチにベーツ擬態したフタガタハラブトハナアブ♀と判明しました。



産卵直後の写真を見ても、卵は微小なのか、どこか分かりません。


樹洞開口部の直径は約2cm。



このハナアブの詳しい生態や生活史を知らなかったのですが、Perplexity AIに問い合わせると、蜂の巣に寄生するのではなく、ファイトテルマに産卵するらしい。
フタガタハラブトハナアブ(Mallota eristaliformis)の雌は、主に樹木の洞(クヌギ等)の水の溜まった部分に産卵します。幼虫はその洞の水中に存在する腐植質(腐った植物片など)を食べて育ちます。

【参考サイト】 


ちなみに、樹洞、葉腋、食中植物の壺など植物上に保持される小さな水たまりは「ファイトテルマータ」(複数形:Phytotelmata、単数形は「ファイトテルマ」Phytotelma)と呼ばれ、そこだけで興味深いミニ生態系になっています。 

ヤマザクラの細い横枝が根元から折れた後に傷口が腐り、樹洞が形成されたのでしょう。
樹洞入口の右上部分には白い糸が密に張り巡らされています。
樹皮の欠片(木屑)や虫の糞?が大量に付着しているので、クモの網ではなくて蛾の幼虫が絹糸を紡いだ巣のようです。
今回見つけた小さな樹洞の奥がどうなっているのか調べていませんが、横向きに開口しているので、中に雨水が溜まっているとは思えません。 
それでもフタガタハラブトハナアブの幼虫は、樹洞内部の湿って腐った木屑などを食べて育つのでしょう。 

今回フタガタハラブトハナアブ♀は樹洞の縁に産卵したので、幼虫は孵化直後に自ら樹洞内の水溜り(ファイトテルマータ)など餌がある安全な場所を求めて移動しなくてはなりません。 
1齢幼虫にそのような運動能力があるのであれば、♀成虫はファイトテルマータに近づきすぎてうっかり溺死するリスクを回避できそうです。 
フタガタハラブトハナアブ♀が産卵のために樹洞内に侵入しなかったのは、暗闇では目が見えず、中に潜む捕食者に襲われても逃げ遅れるからだろうと推測しました。 


※ オリジナルの映像があまりにも暗かったので、動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 羽音が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


この小さな樹洞に小鳥や小動物が出入りしていそうな気がします。
しかしトレイルカメラを設置して確かめたくても、他のプロジェクトもいくつか同時進行しているために機材の数が足りず、後回しになっています。 


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2025/07/10

日光浴していた農道から蛇行して逃げるシマヘビの幼蛇

 

2024年6月中旬・午前9:50頃・晴れ 

郊外を流れる川の堤防路(農道)でシマヘビElaphe quadrivirgata)の幼蛇がウネウネと伸びた状態で農道に静止していました。 
しばらく待ってもシマヘビ幼蛇は動きません。
舌の出し入れもなく、まさか死んでいるのでしょうか?

動画を撮りながら私がゆっくり近づいたら、シマヘビ幼蛇は身を翻して道端の草むらに姿を消しました。 
細長い体のほとんどは日向に出ていたので、おそらく日光浴をしていたのでしょう。

逃走シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
すばやく蛇行して草むらに隠れました。 
威嚇行動は見られず、舌の出し入れなども観察できませんでした。

関連記事(3、5年前の撮影)▶  


【考察】 
シマヘビは無毒ですが、幼体の時期だけ有毒のマムシにベーツ擬態していると考えられています。 
しかし、私の感覚ではフィールドでマムシに出会う頻度(≒生息数)は近年激減しています。 
その状況で無毒のヘビがモデルの有毒マムシにベーツ擬態しても効果ないはずです。 
捕食者が擬態のモデルとなったマムシを食べようとして毒で痛い目に遭い、その体色パターンを学習しなければ、シマヘビ幼蛇を忌避する行動も起こらないからです。
また、ベーツ擬態が成立するためには、「モデル(マムシ)」と「ミミック(シマヘビ幼蛇)」が同じ捕食者に遭遇しやすい環境で共存していることが重要です(同所性)。
マムシとシマヘビの生息環境は少し違うので、捕食者がマムシを学習する機会が少なくなり、擬態の効果が薄れる可能性が高いでしょう。

そもそも、シマヘビの幼蛇がマムシをモデルとしたベーツ擬態であることを、捕食者を使った実験で本当に証明した研究はないそうです。 
実は一部のヒトが「似てる」と主観的に思っているだけかもしれません。
擬態をテーマとした写真集は昔から人気があります。
ロマンがあって面白いのですが、捕食者への忌避効果があるか実証していないのに、動物写真家や自然愛好家が安易に「擬態だ!」と決めつけた例が実は多いのではないかと私は疑っています。 
実証が難しいのは百も承知です。
例えば捕食者が紫外線領域も見えるのであれば、その視覚特性を考慮した上でモデルとミミックの見た目が似ているかどうかをせめて検討すべきでしょう。
ヒトの見る可視光の世界だけで決めつけているのは問題です。

もし本当にマムシへの擬態が捕食者対策として有効なら、幼体の時期だけでなく成体になってもマムシに似せ続ければよいはずです。 
成体になってシマヘビ特有の体色パターンが現れるのは、マムシとの異種間誤認交尾を避けるため(生殖隔離)かと私は思ったのですが、それは違うらしい。 
以下はPerplexity AIの回答です。
成体でマムシに似せ続けない理由として有力なのは、捕食リスクや生態的背景の違いです。 幼蛇は体が小さく、捕食者(鳥や哺乳類など)に狙われやすいため、擬態による捕食回避効果が強く働くと考えられています。 成体になると体が大きくなり、捕食リスクが減少し、また行動範囲や生息環境も変化するため、幼体時に必要だった擬態的模様が不要になる可能性があります。 さらに、成体の体色や模様は「隠蔽(カモフラージュ)」や「環境への適応」といった別の選択圧が働いていると考えられています。 生殖隔離のために体色が変化するという説は、ヘビ類では一般的に支持されていません。 また、マムシとシマヘビは生殖行動や生息環境、繁殖時期が大きく異なるため、異種間交尾のリスク自体が極めて低いと考えられます。 まとめると、シマヘビ幼蛇が成体になるとマムシ的な外見を失うのは、捕食圧や生態的適応の変化によるものであり、「生殖隔離」のためではないと考えられています。

2025/03/06

スギ林の幹で休むシロスジナガハナアブ♂

 

2023年9月上旬・午後12:45頃・くもり 

平地のスギ防風林で、アシナガバチの仲間にベーツ擬態したシロスジナガハナアブ♀(Milesia undulata)が根元付近の幹に止まっていました。 
身繕いをするでもなく、翅を開げたまま、ただ休んでいるだけでした。 
飛び立つシーンも一度見れただけです。 
急に慌てて右後脚を動かしたのは、スギの樹皮を徘徊する微小アリに足先を噛まれて振り落としたのかな?(@0:54〜) 

動画とは別にストロボを焚いて写真を撮ると、左右の複眼が頭頂で接していたので、♂と判明しました。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
昼過ぎなのにスギ林床はかなり薄暗いのです。





2024/11/06

ヤマハッカの花蜜を吸うウラナミシジミ♂

 

2023年9月下旬・午後12:00頃・くもり後晴れ 

山腹の草地に咲いたヤマハッカの群落でウラナミシジミ♂(Lampides boeticus)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
初めは翅をしっかり閉じて吸蜜していました。 
閉じた後翅を互いに擦り合わせて、尾状突起を触角のように動かして自己擬態しています。 
鳥などの捕食者に対して「偽の頭部」を体の反対側にも見せることで、眼状紋をつつかれても本当の急所に致命傷を負う確率を半分に減らす自衛の作戦なのです。

少し飛んで次の花穂に移動すると、半開きにしてくれた翅の隙間から翅表が見えて、♂と判明しました。

2024/10/13

ナギナタコウジュの花蜜を吸い飛び回るウラナミシジミ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年10月上旬・午後14:25頃・晴れ 

里山の峠道の傍らに咲いたナギナタコウジュの群落でウラナミシジミ♀(Lampides boeticus)が訪花していました。 
意外にも、この組み合わせを撮れたのは初めてです。 
翅をしっかり閉じて口吻を伸ばし、吸蜜していました。 

ウラナミシジミの後翅には尾状突起があるはずなのに、この個体は失っていました。 
左右対称の損傷なので、鳥につつかれたビークマーク(食痕)と思われます。 
鳥を騙す自己擬態の作戦が奏功して、命からがら生き延びたことになります。
後翅の後端には黒い斑点が2つあり、2つの斑点の間には細い尾状突起が突き出ている。この黒い斑点と尾状突起は複眼と触角に似ていて、頭部に似た模様をもつことで身体の方向や頭部の位置について敵の目をあざむいていると考えられている。(wikipedia:ウラナミシジミより引用)
ウラナミシジミの性別を知るには、翅表の斑紋を見る必要があります。 
ナギナタコウジュの花穂から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:22〜) 
素早く羽ばたいて次の花へ飛び去ったのですが、スーパースローで見えた翅表から♀と判明しました。

2024/06/05

飛べ!ヤマトクチブトメバエ【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年9月上旬・午後14:50頃・くもり 

川沿いの堤防路の草むらでスズメバチに酷似した見慣れないハエを見つけました。 
初めはアップルミントの群落に居たのですが、訪花シーンを撮り損ねました。 
惚れ惚れするほど見事なベイツ型擬態で、かなりレベルが高いです。 
虫に詳しくない人が見たら間違いなく騙されて、恐れおののくでしょう。 
しかし体長はスズメバチよりも小さいです。 
私は触角や口器の形状からメバエ科の一種だろうと予想しました。 
擬態のモデルはおそらくコガタスズメバチVespa analis insularis)でしょう。 

オオブタクサの葉に止まり直したメバエをじっくり撮影してみました。 (冒頭のシーンだけ、違う種類の植物の葉にメバエが止まっていました。) 
撮れた写真で画像検索(Google Lens)してみると、どうやらヤマトクチブトメバエLeopoldius japonicus)と判明しました。 
やや珍しい種類らしいのですが、山形県ではレッドデータブックに登録されていません(絶滅危惧種というほどの希少種ではない)。 
撮影地点は平地(郊外)の堤防路で、大して自然度は高くありません。 
ススキやヨシ、クズなどに混じってニセアカシア、セイタカアワダチソウやオオブタクサなどの外来植物が繁茂するような環境です。
ヤマトクチブトミバエの寄主と思われるツチバチ類は多数見かけます。 

次のシーンでオオブタクサの葉から急に飛び立ったヤマトクチブトミバエを1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@0:31〜0:39)、同種の別個体が飛来した途端にまるで迎撃するように葉から飛び立っていました。
私はメバエの性別を形態的に見分ける方法を知りませんが、行動を見る限りでは、♂が縄張りを張って交尾相手の♀を待ち伏せしていたように見えます。 
ライバル♂を追い払ったのかもしれません。(縄張り占有行動?) 
あるいは寄主のツチバチが蜜源植物に来るのを♀が待ち伏せしていたという可能性も考えられます。 (別個体を追い払ったのは誤認?) 

オオブタクサの葉に止まり直すと、口吻の根元を少しだけ動かして角度を変えました。 
ヤマトクチブトミバエが葉から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:50〜) 
葉に着地した直後は翅を半開きにしていたヤマトクチブトミバエは、しばらくすると翅をしっかり閉じました。 
風が吹いて葉が揺れるので、ときどき足を踏み変えてバランスを保っています。 
止まり木で縄張りを張るトンボと違い、葉上のヤマトクチブトミバエは上空の飛翔体を分かりやすく複眼で追うことはしないので、どちらに飛ぶのか予測不能です。 
やがて、しっかり閉じていた翅を急に半開きに戻しました。(迎撃態勢?) 
後半はなかなか飛んでくれないので、痺れを切らした私がメバエの目の前で手足を振ったり物を投げつけたりして、強引に飛び立たせました。 


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外来植物のオオブタクサについて 


最近になって川沿いのこのエリア限定で草丈の高い見慣れない植物の群落が急激に増え始め、気になっていました。 
今回ヤマトクチブトメバエが葉に止まっていたのをきっかけに名前を調べてみると、悪名高い外来植物のオオブタクサと知りました。
風媒花で大量の花粉を撒き散らすので、花粉症の原因のひとつとされています。 
この堤防路では、古参の外来植物であるセイタカアワダチソウの群落を駆逐しつつある勢いです。 
メジャーな外来植物なのに、これまでどうして私の目に留まらなかったのか、逆に不思議です。 
幸い他のエリアでは見たことがありません。 
記憶を探っても、子供の頃にオオブタクサを見たことがあるような、ないような、自分でもはっきりしません。 (旅先で見かけたのかもしれません。) 
近年になって当地に侵入し、分布を急速に広げているのでしょうか? 
それとも駆除根絶に一度は成功した後に再侵入したのかな? 

オオブタクサの写真を撮ったのですが、連日の猛暑と雨不足のため、特徴的な形をした葉がすべてだらんと萎れていました。 
また機会があったら撮り直します。 

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2024/04/03

トリアシショウマの花を舐めるスズキナガハナアブ♀【ベイツ型擬態】

 

2023年7月中旬・午後12:20頃・くもり 

里山の細い山道(ほぼ廃道状態)に沿って咲いたトリアシショウマの群落でスズメバチにそっくりなアブが訪花していました。 
後で調べてみると、スズキナガハナアブ♀(Spilomyia suzukii)でした。 
 【参考】:「ハナアブの世界」サイトにスズキナガハナアブの標本写真が掲載されています。 

半開きの翅をリズミカルに開閉しながら口吻を伸縮させて花粉と花蜜を舐めています。 
食事の合間に左右の前脚で頭部を擦ったり口吻を挟み込んだりして、付着した花粉を拭い取りました。 
本種の訪花シーンは初見です。
同一個体を追いかけて撮影しました。 
森の中でヒグラシ♂(Tanna japonensis)が寂しげに鳴いています♪ 

冒頭のシーンではヒメトラハナムグリLasiotrichius succinctus)も同じトリアシショウマの花穂に来ていましたが、互いに無関心でした。 


スズキナガハナアブはベイツ型擬態の好例ですけど、モデルとなった蜂が何なのか、よく分かりません。 
キアシナガバチPolistes rothneyi)ですかね? 
特定の種類のスズメバチやアシナガバチではないかもしれません。 
蜂好きが見ると不完全な擬態で、粗が目立ってしまいます。 
まず腰が太いので「毒針に刺されそうで怖い!」とは思いません。 
本当に刺す蜂(有剣類)は、腰が細いのが特徴です。
私の知る限り、スズメバチ類はトリアシショウマの花で吸蜜しませんから、その点でも違和感を覚えました。 
しかし捕食者に恐怖で狩りを躊躇させるには充分似ているのでしょう。 

スズキナガハナアブは「人の手があまり入らない、原生的な自然環境を必要とする種」とのことで、確かに今回の現場は原生林というほどではありませんが、整備されずに放置された里山でした。 
多数の倒木で塞がれた廃道には雑草や灌木が生い茂っていました。 
山の管理者が林道や登山道をきれいに整備した途端に周辺の生物多様性が貧困になる(希少種は居なくなり、ありふれた普通種しか見られなくなる)という現象は私も実感しています。 
林業の観点からは山林を整備した方が良いに決まっているので、自然破壊と一概には決めつけられません。 
間伐して定期的に下草を刈るなどの整備を施して林縁的な里山環境が保全されている方が生物多様性は高まる、というのが定説ですけど、希少種の昆虫に関しては優しくないのでしょう。 

スズキナガハナアブの幼虫は何を食べて育つのか、生態が解明されているのでしょうか? 
生息環境が原生林に限られるということは、おそらくスズメバチの巣などに寄生するのではないか?(何かしらの寄生種だろう)と私はずばり予想します。
寄主の巣に産卵する際に擬態が役立っているのではないか?と先走った妄想をしています。 


関連記事(9、12年前の撮影)▶  


2024/03/31

コガタスズメバチにベーツ擬態するオオナガハナアブ♀の身繕い・飛翔

 

2023年7月中旬・午後12:05頃・くもり 

里山の雑木林を抜ける林道を歩いていると、オオバクロモジの葉の上に見慣れないアブを見つけました。 
後で調べてみると、オオナガハナアブ♀(Spilomyia gigantea)という希少種でした。 
都道府県によってはレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されているのですが、ここ山形県では特に指定されていませんでした。 

コガタスズメバチVespa analis insularis)のワーカー♀と瓜二つで、驚くほど見事なベイツ型擬態です。 
ただしオオナガハナアブの複眼は頭部と同じくオレンジ色で、この点は改善の余地がありそうです。 
ちなみに、コガタスズメバチの複眼は茶色です。
左右の前脚を揃えて拝むように擦り合わせ、身繕いしていました。 
接写するために私がレンズをそっと近づけると、オオナガハナアブ♀は警戒したのか左右の前脚を同時に上げて万歳しました。 
スズメバチの長い触角を模した行動なのでしょうか?
しかしスズメバチは触角の先を下に向けていることが多い気がします。(下の写真を参照) 
腹部をピクピクと前方に軽く屈曲させているのは、スズメバチ♀が毒針で刺す行動を真似て威嚇しているのかもしれません。(行動擬態) 
もしオオナガハナアブ♀を生け捕りにしたら、腹端で私の指を刺す真似をするかどうか、確かめてみたいものです。 



擬態のブラフが通用しないと悟ると、オオナガハナアブ♀はブーン♪と蜂のような羽音を立てて、急に左へ飛び去りました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
最後に擬態者(オオナガハナアブ♀)とモデル(コガタスズメバチ♀)の比較写真をスライドショーで示します。 


【アフィリエイト】 

比較として、擬態のモデルと思われるコガタスズメバチ♀の写真を載せておきます。
(全て私が過去に撮った写真で、スライドショーの素材にしました。)

2024/01/15

ツツジの花蜜を吸うサカハチクロナミシャク(蛾)

 

2023年5月下旬・午前12:55頃・くもり 

山麓の駐車場に咲いたツツジの植え込みで見慣れない白黒模様の蛾が訪花していました。 
一瞬ダイミョウセセリかと思いきや、よく見ると違います。 
後で調べると、サカハチクロナミシャク本州以南亜種Rheumaptera hecate hecate)という昼行性の蛾でした。 
和名はサカハチチョウと似たネーミングですが、漢字の八の字を上下逆さまにしたような白い斑紋が黒地の翅表に描かれていることにちなんでいるのでしょう。 

ツツジの赤紫色の花筒に正当訪花で頭部を突っ込んで、がっつくように吸蜜しています。 
正面に回り込んで撮影したいところですが、こういうとき私が無理して動くと虫は警戒して逃げてしまうので、じっと我慢して撮り続けます。 

ツツジの花から勢い良く飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:33〜1:03) 
隣の花に歩いて移動するかと思いきや、予想が外れました。 

サカハチクロナミシャクは少し飛んでツツジの葉の表側に止まり直しました。 
初めは翅を半開きで開閉していましたが、全開した状態で落ち着きました。 
風が吹いたら再び翅を開閉するようになりました。 

次にツツジの葉から飛び立つシーンをハイスピード動画でも撮ろうとしたのですけど、なかなか飛んでくれません。 
仕方なく帽子を投げつけたら、狙いどころが悪くて失敗しました。 

調べてみると、サカハチクロナミシャクの幼虫はツツジ科が食樹とのことで、ツツジの生垣に来ていたことに納得しました。 
この種類の蛾は初見ですし、性別の見分け方を知りません。 
吸蜜後もツツジの葉に産卵しませんでした。 
交尾相手の♀を待ち伏せしている♂なのかな? 

「Digital Moths of Japan」サイトでサカハチクロナミシャクについて調べると、
昼飛性で, 晴天の目中によく花に飛来するし, 湿地に群をなして止まっていることがある. 
・幼虫はレンゲツツジ,ホツツジ,ウラジロヨウラクなどツツジ科やシラカンバの葉をつづって中にひそむ.
次は幼虫を探してみるのも面白そうです。


【追記】
サカハチクロナミシャクについてネット上で調べ物をしていたら、面白いブログを見つけました。
サカハチクロナミシャクを巡る3種の鱗翅目に関する考察」by かんきちのフィールドレポート
シラフシロオビナミシャク、サカハチクロナミシャク、ダイミョウセセリ間3種の間にベイツ型擬態系が形成されていることを提唱する。

ツツジ科は有毒植物が多いので、それを食べて育つサカハチクロナミシャクの幼虫および成虫は毒成分を体内に溜め込んでいると予想されます。 

したがって、成虫の白黒斑紋が似ている鱗翅目成虫はチョウ・ガによらずサカハチクロナミシャクにベーツ擬態しているのではないか?という仮説です。

こういう考察や予想は私も大好きです。

以下に私の見解を示しますが、この仮説には懐疑的です。

見た目の類似性だけで言うと、サカハチチョウ夏型も含まれませんかね?(ちょっと赤色の斑点がありますけど)

フィールドでの個人的な印象では、このグループで無毒のダイミョウセセリやサカハチチョウが一番多い普通種で、他の種類(シラフシロオビナミシャクや有毒のサカハチクロナミシャク)は少ないです。※

※ もちろん定量的にきっちり調査した訳ではありませんし、私の探し方が下手なだけかもしれません。

これでは鳥などの捕食者は味見して痛い目にあう学習の機会が確率的に(ほとんど)なくてベーツ擬態が成立しないのではないでしょうか?

つまり、鳥がミミック種(無毒)を忌避しているのであれば、個体数がミミック種(無毒)<<モデル種(有毒)という状態で均衡しているはずです。

とりあえず実際に鳥に飼育下で給餌してみて、有毒種のサカハチクロナミシャクを忌避するかどうか、確かめてみたくなります。

サカハチクロナミシャクが本当に有毒で不味いのであれば、もっと派手な警告色を身に纏うように進化しなかったのは不思議です。

2023/08/03

クマイチゴの葉から飛び立つセスジスカシバ♀(蛾)

 

2022年9月中旬・午後12:50頃・晴れ 

里山の急斜面をつづら折れで登る山道の傍らで、クマイチゴの葉表の縁にセスジスカシバ♀(Pennisetia fixseni fixseni)が乗っていました。 
 
触角の形状から♀と見分けられます。 
セスジスカシバ幼虫の食草はバラ科のキイチゴ類なので、♀が産卵していた可能性が高いです。 
横からではなく背側から撮ったので、残念ながら産卵姿勢かどうかはっきり見えませんでした。 
撮影後に葉をめくってみて、裏面に卵の有無をチェックすべきでしたね。 
実際に、セスジスカシバ♀が居た葉には虫に大きく食害された跡(食痕、虫食い跡)が残っていました。 
母親の立場になって考えると、虫食いの無いきれいな葉(餌資源として質の高い葉)に産卵した方が孵化してくる幼虫のためになる気がするのですけど、この♀個体は無頓着でした。

カメラを近づけたら警戒し、飛んで逃げました。 
かすかに聞こえる羽音も蜂のような重低音でした。
キイロスズメバチにそっくりなベーツ型擬態をした昼行性の蛾ですから、こんな虫が飛んで向かってきたら、多くのヒトは怯んでしまうはずです。
見た目(視覚)だけでなく羽音(聴覚)でもハチに似せているのは興味深いですね。 
翅の形態を似せれば、自ずと羽音も似てくるのでしょうか? 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

※ 羽音♪が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。


関連記事(同時期の撮影)▶ 飛べ!セスジスカシバ♂(蛾) 

2023/07/03

アリに噛まれて飛び去るオオモモブトハナアブ♀

 

2022年9月上旬・午前11:55頃・くもり 

山道の横の苔むしたハリギリ(別名センノキ)大木の根元でホバリング(停空飛翔)する昆虫がいました。 
縄張りを張っていたのか、あるいは私の汗を舐めようと飛来したのか、分かりませんでした。 
てっきりマルハナバチかと思ったのですが、林道脇に露出した石の上に着陸したのでズームインしてみると、マルハナバチにベーツ擬態したオオモモブトハナアブ♀(Matsumyia jesoensis)でした。 
 「カオグロ」オオモモブトハナアブではありません。 
側面からは分かりにくいのですけど、左右の複眼は中央で接していないので♀と判明。 

石の上で微小なアリ(種名不詳)に右中脚の先端(跗節)を噛まれ、慌てて飛び去りました。 
微小なアリにしてみれば、ただでさえ視力が悪いのに巨大なアブの全身像は把握できませんから、蜂に擬態しているかどうかなんて預かり知らぬところです。
オオモモブトハナアブ♀を攻撃して追い払ったというよりも、噛み付いて獲物かどうか味見してみたのでしょう。
つまり、アリに対してベーツ型擬態は通用しません。

オオモモブトハナアブ♀は近くの幼木の葉に止まり直したものの、すぐにまた飛び立ちました。 
音量を上げるとオオモモブトハナアブ羽音♪がかすかに聞こえます。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:30〜) 

※ 羽音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。



2023/06/13

カバエダシャク♂(冬尺蛾)の見事な保護色がバレると…

 

2022年11月上旬・午後13:45頃・晴れ

里山の雑木林を飛び回っていた蛾が林床の落ち葉に着陸しました。 
イタヤカエデの黄色い落ち葉に乗っていた蛾にズームインすると、カバエダシャク♂(Colotois pennaria ussuriensis)でした。 
触角が羽毛状なので、この個体の性別は♂と見分けられます。 

晩秋で冬尺蛾のシーズンが始まりました。 
今期初見のカバエダシャクになります。 

褐色(茶色)の翅が落ち葉に対して見事な保護色になっている他、前翅の外縁に浅い鋸歯が入っているおかげで、隠蔽擬態となっています。 
(翅の外縁が直線状よりも、ゆるくギザギザが入っている方が翅の輪郭が分かりにくくなります。)
落ち葉の上で動かなければ、見つけ出すことはほぼ不可能でしょう。
目立たない姿が、その生物の色や模様によって達成されている場合、これを保護色と言い、姿形や行動によって行われる場合を擬態と言う。両者を兼ね備えている場合も当然ながらある。(wikipediaより引用)

イタヤカエデの落ち葉と一緒にそっと拾い上げても、カバエダシャク♂は飛んで逃げませんでした。 
しかし私が親指で翅に軽く触れた途端に、準備運動無しで飛び去りました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 


▼関連記事(7、8年前の撮影) 





2023/04/18

ミゾソバに訪花吸蜜するウラナミシジミ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2022年10月中旬・午後14:25頃・晴れ 

河川敷を横切る水路(出水樋門の下流)に沿って咲いたミゾソバの群落でウラナミシジミ♂(Lampides boeticus)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
翅を閉じて吸蜜すると翅裏の眼状紋が目立ちます。 
強い西日を浴びて白飛び気味になってしまいました。 

閉じた後翅を互いに擦り合わせ、尾状突起を偽の頭部の触角のように動かしています。(自己擬態行動) 
本物の触角は剛性があるようで下げたまま動かないのに、尾状突起は秋風にヒラヒラとなびいています。 

しばらくすると翅を半開きにしてくれたおかげで翅表がしっかり見え、♀と判明しました。 
翅が無傷の新鮮な(羽化直後の)個体です。 
風が止むのを待って日光浴するのでしょうか。 

花から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:50〜)

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