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2019/09/29

イタドリの花で吸蜜するトラフシジミ春型【HD動画&ハイスピード動画】



2019年6月下旬

平地の川沿いの原っぱに咲いたイタドリの群落でトラフシジミRapala arata)春型が訪花していました。
翅をしっかり閉じて吸蜜しています。

閉じた後翅を互いに擦り合わせ、尾状突起を触角のように動かしています。
鳥などの捕食者に急所の頭部を狙われないように偽の頭部を体の後方にも作って惑わせているのです。(自己擬態)
黒い尾状突起の先端は白くて目立ちます。
ところが自己擬態のモデルとなった本物の触角は全体が黒でした。
必ずしも完全に体の前後が対称に見えなくても、尾状突起が触角っぽく見えればそれで良いのでしょう。

翅表を撮るために飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:40〜)
ところがトラフシジミは吸蜜に夢中で、物を投げつけてもなかなか飛んでくれません。
仕方がないのでイタドリの葉を掴んで揺すり、強引に飛び立たせました。
羽ばたいた瞬間に垣間見た翅表はメタリックブルーでした。(天気が曇りなので映像では藍色に見えます)
トラフシジミの翅表を見たのは初めてかもしれません。
更に1/4倍速のスローモーションでリプレイしても、性標の有無は見分けられませんでした。


ちなみにセマダラコガネAnomala orientalis)およびクロヤマアリFormica japonica)♀も一緒にイタドリで訪花していました。


トラフシジミ春型@イタドリ訪花吸蜜

2019/08/14

ムラサキツメクサの蕾に産卵するツバメシジミ♀【HD動画&ハイスピード動画】



2019年5月下旬

堤防沿いの道端に咲いたムラサキツメクサ(=アカツメクサ)の群落でツバメシジミ♀(Everes argiades hellotia)を見つけました。
蕾に止まって休んでいるように見えたので、飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画で記録しようと撮り始めました。(@00:00〜3:16)
後翅に見落としそうなぐらい小さな尾状突起があるので、ヒメシジミではなくツバメシジミです。
閉じた翅の僅かな隙間から見えた翅表が茶褐色ですから、♀と判明。

映像を見直してみると、なんとツバメシジミ♀は腹端をムラサキツメクサの蕾に擦り付けて産卵していました。
本種の食草はシロツメクサなど各種マメ科植物とのことで、納得しました。
古い図鑑ですが、保育社『原色日本昆虫生態図鑑IIIチョウ編』でツバメシジミの産卵行動について調べると、

母蝶は食草の新芽・つぼみ・花などに1個ずつ産卵する。(p196より引用)


産卵後のツバメシジミ♀は飛び立つと、辺りの草むらをしばらく落ち着きなく飛び回りました。
ようやくイネ科の草の葉に止まると、翅を半開きにして休息。
後翅の尾状突起をまるで触角のように交互に動かすことで、頭部が逆向きにも付いているように見せかけています。
こうすれば、もし捕食者に襲われても本当の頭部に致命傷を負う確率を減らすことができます。
シジミチョウ科でよく見られるこの現象・行動は、自己擬態と呼ばれています。
この個体も、後翅の尾状突起付近が破損しているのは鳥に襲われたビークマークかもしれません。
(鳥が昆虫を狩るときには、頭部などの急所を狙います。)

ムラサキツメクサの花蜜を吸うシーンは残念ながら撮れませんでした。


ツバメシジミ♀@イネ科葉
ツバメシジミ♀@イネ科穂
ツバメシジミ♀@イネ科穂

2019/04/17

ウラナミシジミ♀が後翅を擦り合わせる訳とは?



2018年10月中旬

水路沿いに咲いたセイタカアワダチソウの群落でウラナミシジミ♀(Lampides boeticus)を見つけました。


▼前回の記事(2ヶ月前の8月中旬に撮影)
尾状突起を破損したウラナミシジミの飛び立ち【HD動画&ハイスピード動画】

東北地方をフィールドとする私にとってウラナミシジミは去年まで一度も見たことのなかった珍しい蝶なのですが、今年になってこれが早くも2頭目の出会いとなります。
本種はツマグロヒョウモンと同じく南方系で渡りをする蝶ですから、今年の夏の猛暑や地球温暖化を利用して北進中なのでしょう。



この個体は訪花中ではなく、翅を閉じて蕾に止まり休んでいました。
飛び立つ瞬間を動画撮影しようと私がしつこくちょっかいをかけたら、左右の後翅を擦り合わせる行動を始めました。
地味な動きですけど、これは自衛のための自己擬態行動なのでしょう。


福田晴夫、高橋真弓『蝶の生態と観察』によると、

ウラナミシジミ類などの後翅には、糸のような尾状突起がある。このつけ根には赤斑や黒点などがあり、翅を閉じてとまると、ある種の昆虫の頭部に見えるのかもしれない。後翅をすり合わせるようにして動かすと、1対の尾状突起は、ちょうど昆虫の触角のように動くので、捕食者が偽の「頭部」を攻撃すると、蝶はそれを与えて反対側に飛び、難をのがれることになる。この場合、尾状突起の先端が白色となりめだちやすいことは注目される。 (p104より引用)


(ウラナミシジミの)後翅の後端には黒い斑点が2つあり、2つの斑点の間には細い尾状突起が突き出ている。この黒い斑点と尾状突起は複眼と触角に似ていて、頭部に似た模様をもつことで身体の方向や頭部の位置について敵の目をあざむいていると考えられている。(wikipediaより引用)


ところが、この個体は右の尾状突起が破損していて左側しか残っていませんから、擬態の効果は半減してそうです。
右後翅の肛角部付近の眼状紋を狙って鳥が嘴でつついたのかもしれませんが、通常のビークマークは左右対称に破損するはずです。
更に、前翅も縁がギザギザに損傷していることが長旅の苦労を偲ばせます。
欲を言えば、翅の状態がきれいな(尾状突起が無傷の)個体で撮り直したいものです。

やがて少し飛んで近くのセイタカアワダチソウの葉に止まり直しました。
今度は翅を全開にして日光浴です。
残念ながら私には翅表を見せてくれず、下面しか撮れませんでした。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→飛び立ち


ウラナミシジミ♀:翅裏@セイタカアワダチソウ蕾
ウラナミシジミ♀:下面@セイタカアワダチソウ葉+日光浴

2018/12/17

蜂に擬態したサッポロヒゲナガハナアブ♀がニラを訪花



2018年9月中旬

川沿いの民家の花壇に咲いたニラの群落で蜂にそっくりなハナアブが訪花していました。
ホバリング(停空飛翔)で飛び回り、ニラの白い花に着陸すると口吻を伸ばして花蜜や花粉を舐めます。
採集できませんでしたが、映像から切り出した静止画と見比べて、おそらくサッポロヒゲナガハナアブ♀(Chrysotoxum sapporense)だろうと突き止めることが出来ました。

参考サイト:ヒゲナガハナアブ族 - Hoverflies world(Diptera,Syrphidae) ハナアブの世界

見事なベイツ型擬態です。
腹部の横縞模様が黄色と黒だけでなく、焦げ茶色も混じっていることから、なんとなくモデルはコアシナガバチPolistes snelleni)ですかね?

クロアリやキンバエの仲間も一緒にニラを訪花していました。



ちなみに、近縁種を春にも観察しています。
▼関連記事カキドオシの花粉を舐めるヒゲナガハナアブ♂

サッポロヒゲナガハナアブ♀:背面@ニラ訪花吸蜜
サッポロヒゲナガハナアブ♀:背面@ニラ訪花吸蜜
サッポロヒゲナガハナアブ♀:側面@ニラ訪花吸蜜
サッポロヒゲナガハナアブ♀:顔@ニラ訪花吸蜜
サッポロヒゲナガハナアブ♀:側面@ニラ訪花吸蜜

鳥追いカイトは田んぼのスズメ対策に有効か?(野鳥)



2018年9月上旬
▼前回の記事(8月中旬)
水田を鳥害から守る鳥追いカイト(フクロウ型の凧)


実りの秋になり、黄金色の稲穂が広がる田園地帯のあちこちに設置された鳥追いカイト(凧)の数が増えていました。
収穫前の鳥による米の食害を防ぎたいのでしょう。
プリントされたデザイン(擬態)がタカとフクロウの2種類ありました。



幾つもの凧を田んぼに設置すると決して安い買い物ではないので、気になるのはその有効性です。
鳥追いカイトの防除効果を厳密に試験する際には、圃場に処理区と無処理区(無防除区)とを設ける必要があります。

カイトを上げていない区画で田んぼに隣接する民家の辺りにスズメPasser montanus)が群がっていました。
チュンチュン♪と賑やかに鳴き交わしながら、庭木のカエデの木と田んぼの端を往復するように飛び回っています。
民家のトタン屋根にも群れの一部が止まっています。
いざというときにすぐ避難できる場所を確保しつつ、稲穂を食べに来たのでしょう。

田んぼには稲穂以外にもイヌビエがたくさん生えています。
スズメがイヌビエの実も食べるのかどうか、証拠映像を未だ撮れていません。(イネの実の方が好み?)

さて次に、私がその場で向きを変えると、広大な田んぼの反対側の区画に設置された鳥追いカイトが幾つも見えました。
長い釣り竿を立て、その先から糸でカイトが吊り下げられています。
風が吹くと煽られたカイトが右に左に動き回ります。
ヒトに擬態した昔ながらの案山子に比べれば、激しい動きがある分だけ鳥追い効果がありそうです。

カイトの下面にはフクロウやタカと言ったスズメの天敵となる猛禽類の絵柄がプリントされていました。
しかしカイトの上面は意外にも白紙でした。(日焼けして退色したのではなさそうです。)
上空から田んぼに飛来する野鳥に対して脅かすには、コストをけちらずにカイトの上面にもリアルなプリントをした方が良いと思うのですが…。
それでも鳥追いカイトの周囲にはスズメの群れは見当たりませんでした。

この映像だけ見ると、まるで商品CMのように、確かに鳥追いカイトにスズメを追い払う効果がありそうに思えます。
しかし、この比較はフェアではありません。
鳥追いカイトが設置された区画は広大な田んぼの中央部にあり、近くにスズメの避難場所がありません。
スズメの性質からすると、元々あまり来ない(食害が少ない)区画である可能性があるのです。
民家に近い田んぼの端にもカイトを設置して、スズメが来なくなることを実証しなければいけません。

おそらく田んぼの区画によって違う農家が管理・栽培しているのでしょう。

藤岡正博、中村和雄『鳥害の防ぎ方』によれば、

(イネの)登熟期の被害はスズメ、ハト、カルガモによるものですが、スズメによるものがもっとも大きく、重要です。(中略)広く開けた水田地帯では、それほど大きな被害を受けることは少ないようです。しかし、人家の近くや電線の下、樹木の近くなどの水田では大きな被害が発生します。これらの場所では、スズメの逃げ場が確保されているからだと思われます。(p190より引用)

スズメの被害は、登熟した穀類の種子ばかりでなく、田んぼや畑に播種された種子にも発生します。
登熟:穀物や豆類の種子が次第に発育・肥大して、炭水化物や蛋白質が集積されること。(p60より引用)


もう一つの問題として、スズメの群れが稲穂の茂みに完全に隠れてしまうと、私にも見つけられなくなり、動画が撮れないのは当然です。
もしかすると、鳥追いカイトに慣れてしまったスズメの群れが、カイトのお膝元でもこっそり稲穂を食害しているかもしれません。
無人の監視カメラを田んぼのあちこちに設置したら面白そうです。
鳥追いカイト自体にGoProのような小型のCCDカメラを付ければ、カイト目線の映像が撮れるでしょう。

毎日、夕方になったら田んぼの凧を回収するのかな?

無風で凧が動かない日は防除効果が無くなるのでしょうか?
逆に台風が来る前には予め凧を取り外しておく必要がありそうです。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

2日に分けて同じ田んぼで撮った映像をまとめました。

2018/10/24

水田を鳥害から守る鳥追いカイト(フクロウ型の凧)



2018年8月中旬

夏の水田に見慣れない物体が出現しました。
フクロウの絵柄をプリントした(擬態)、結構大きな凧(カイト)が朝の風に揺れていました。
長い釣り竿(?)を田んぼに突き刺し、その先に凧を糸で繋いでいます。

これから水田に稲穂が実る季節になると、これを食害するスズメなどが現れます。
害鳥を追い払うために案山子かかしの改良版を農家が試しに設置したのでしょう。
フクロウは猛禽類ですから、小鳥が本能的に怖がると期待した鳥害対策グッズのようです。
風が吹くと凧は自然に動くので、馴れが生じにくい(防鳥効果が持続する)のでしょうか?
ネット通販でも同じ商品や類似商品を見つけました。
私の素人考えでは、もっと高く飛ばした方が広範囲に効果がありそうな気がするのですけど、開発者が実験的に検討した結果この高さが最適なのでしょうか。

商品をたくさん買ってもらいたいから竿や糸を短くしてるのかな?と邪推してしまいます。
この田んぼを高所から見下ろす撮影ポイントがあれば、鳥追い効果の有無をいつか検証してみたいものです。
(ドローンは長時間飛ばせませんし、ドローンの存在自体が「鳥追い」になってしまうでしょう。)

カイトに小型の監視カメラを取り付けて飛ばしたら面白そうです。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


鳥追いカイト梟(フクロウ:野鳥)@水田
鳥追いカイト梟(フクロウ:野鳥)@水田


【追記】
藤岡正博、中村和雄『鳥害の防ぎ方』によると、
外国では、凧が鳥を追い払うためによく用いられています。(中略)アドバルーンの下に凧をぶら下げて、畑の上に揚げるという試みもなされています。これは、上空を旋回するワシタカをまねたものと考えることができるかもしれません。(中略)私たちは、ダイズを加害するキジバトに対して凧(ゲイラカイト)の効果を調べたことがあります。その結果は、マネキンよりは劣るものの、相当高い効果が得られました。p150-151より引用)



▼関連記事
鳥追いカイトは田んぼのスズメ対策に有効か?(野鳥)


2018/10/06

後翅を擦り合わせるウスイロオナガシジミ



2018年7月中旬

里山の林道脇の雑木の葉表に乗ってウスイロオナガシジミAntigius butleri)が休んでいました。
閉じた翅を互いにゆっくり擦り合わせて後翅の尾状突起を触角のように動かしています。
鳥類などの天敵は急所の頭部を狙ってくるので、身体の前後を誤認させる自己擬態で身を守っているそうです。
舞台となった葉の樹種はおそらくハルニレではないかと思います。

てっきりミズイロオナガシジミかと思ったのですが、帰宅後に調べてみると実は初見のゼフィルスでした。

▼関連記事(9年前の撮影)
ミズイロオナガシジミ
飛び立ちのハイスピード動画など、もっとじっくり撮るべきでしたね。


ウスイロオナガシジミ:翅裏@ハルニレ?葉上
ウスイロオナガシジミ:翅表@ハルニレ?葉上

2018/06/10

キンケハラナガツチバチ♂は捕まえると腹端のトゲで刺そうとするが痛くない



2017年11月中旬

8年前にキンケハラナガツチバチ♂(Megacampsomeris prismatica)を初めて撮影したブログ記事で、私は次のように書きました。

♂なので毒針はもちませんが、腹端に刺が3本生えていて捕まえるとこれでチクチク刺してくるのだそうです。
今度見つけたら試してみよう。

セイタカアワダチソウに訪花していた♂雄蜂を見つたので、長年の懸案だったテーマを実験してみましょう。
持っていたビニール袋を使ってキンケハラナガツチバチ♂を生け捕りにしました。
♀と比べて♂の大顎は貧弱なのか、ビニール袋を食い破れません。



家に持ち帰り、袋からハチを取り出しました。
右翅と脚を指で摘んだ状態で保定すると、長い腹部を曲げて腹端にある3本の鋭い突起で刺そうとしてきました。
しかし全く痛みはなく、こけ脅しでした。
腹端トゲの材質が柔らかく、いくら指に突き立てても皮膚を貫通して出血するほど刺さりません。
これは以前、キンケハラナガツチバチ♂標本の腹端トゲに触れた時も感じたことで、だからこそ私は恐怖心を抱かずに生きた雄蜂で実験できたのです。

つまり同種(あるいは近縁種)の♀による刺針行動を♂が擬態しているのでしょう。(刺針行動擬態と勝手に呼ぶことにします。)
もし鳥などの捕食者がキンケハラナガツチバチ♀の毒針に刺された経験があれば、雄蜂♂が痛くなくても刺す素振りをするだけでその恐怖の記憶が蘇り、捕まえた雄蜂を咄嗟に離してしまうことは有り得そうです。
比較対象として、キンケハラナガツチバチ♀の毒針を使った刺針行動も動画に撮ってみたいものです。
ちなみに、腹部が黄色と黒の縞模様なのは多くのハチ類に共通したミューラー型擬態です。



♂に特有の腹端トゲの正式名称を知らないのですが(ご存知の方は教えて下さい)、もしかすると♀と交尾する際に何か重要な役割があるのかもしれません。

例えばトンボの♂は腹端には把握器があり、♀の首根っこを掴んで尾繋がり状態になるのが交尾への第一歩です。
しかしキンケハラナガツチバチ♂の腹端トゲは動きません。

あるいは♂同士が争うときに、この三叉棘を武器として使うのでしょうか?
3本のトゲの物理的な強度をもう少し上げて刺す武器として進化させるのは難しくない(明らかに生存に有利)と思うのですが、武器としてなまくらな状態のままなのは何故でしょう?

繭から羽化脱出するときに普通の蜂は大顎で食い破るのですが、キンケハラナガツチバチ♂はこのトゲを使って繭を内側から破いたり引き裂いたりするのかな? 
しかしこの仮説は、♂にしか無い理由を説明できるでしょうか?
ツチバチの♂成虫は♀よりも腹部が長いので、繭の段階から性的二形があったりして?
ツリアブ科の中にはハナバチや狩蜂の巣内に労働寄生して育つものがいます。
そのようなツリアブは蛹の頭頂部に生えている鋭い突起を使って寄主♀が(泥などで)巣を封じた隔壁を中から破って外に脱出してから羽化するのです。
▼関連記事 
竹筒トラップに寄生したエゾクロツリアブ?の羽化

♀の毒針は産卵管が変化したもので伸縮自在です。
一方♂の腹端トゲ(三叉矛)は、腹端のクチクラが棘状に変形した構造で、伸縮しません。

余談ですが、顔を接写してみるとキンケハラナガツチバチ♂の大顎は左右非対称でした。
左の大顎だけが開閉しています。
どの個体もそうなら、機能的にどんな意味があるのでしょうね?
実は腹端トゲに刺されるよりも、大顎に噛まれたくなかったので、今回の実験では翅を摘んだのでした。
(実は噛まれても痛くないのかな?)


キンケハラナガツチバチ♂@捕獲+刺針行動擬態
キンケハラナガツチバチ♂@捕獲+刺針行動擬態
キンケハラナガツチバチ♂@捕獲+刺針行動擬態

2017/11/20

ハチに擬態したシロスジナガハナアブ♀は捕獲すると刺す真似をするか?



2017年7月下旬

室内で虫の羽音が聞こえるので振り返ると、窓際をシロスジナガハナアブ♀(Milesia undulata)が飛び回っていました。
いつの間にか室内に侵入したようです。
本種はハチにベイツ型擬態している例として考えられています。
擬態のモデルとなった蜂は、なんとなくコアシナガバチPolistes snelleni)ではないかと個人的には考えています。

とりあえずプラスチック容器で捕獲

ベイツ型擬態のシロスジナガハナアブ:腰に白い部分がありハチの細い腰を彷彿とさせる。一定の場所を占有し、近づく虫や人を駆逐するような行動をとることがある。飛び方や羽音もハチに似て、一瞬たじろぐ。 (wikipedia「擬態」の項目で写真の説明より引用)


7年前に初めてこのアブを撮ったときに、面白い話を教えてもらいました。
▼関連記事
シロスジナガハナアブ♀の身繕い
本種のベーツ擬態は外見だけにとどまらず、捕まえると尾端を押し付けるようにしてまるでハチが刺すような真似をするのだそうです。


ずっと気になっていたので、この機会に早速、実験してみました。
捕獲したアブをビニール袋に移してから炭酸ガスで麻酔し、指で翅をつまみました。
本種はハナアブの仲間で吸血性ではありませんから、口器で指を刺される心配はない…はずです。

▼関連記事
シロスジナガハナアブがドクダミに訪花
汗を舐めるシロスジナガハナアブ♀

麻酔から醒めるとアブは逃れようと必死に暴れ始めます。
確かにときどき腹部を屈曲させています。
ハチが腹端の毒針で刺す行動に似ていなくもありません。
しかし意外にも、それほど頻繁にはやりませんでした。

ハンディカムで動画に撮りながらだと片手しか保定に使えないので、苦労しました。(三脚を使えば良かった…。)
翅ではなくてアブの足を摘んだ方が良かったかもしれません。
ときどき胸部の飛翔筋を高速振動させる音がビー♪と響きます。
やがて疲れたのか諦めたのか、あまり暴れなくなりました。

果たしてこれが本当に「行動の擬態」と呼べるのかどうか、疑い深い私は未だ信じきれません。
ハチ類の一部が狩蜂に進化する過程で腹部にくびれが生まれ、そのおかげで♀の腹端にある毒針で刺す動きに自由度が生まれたと考えられています。
シロスジナガハナアブが腹部を深く屈曲させるにはアシナガバチの前伸腹節のような腰のくびれが足りないように思います。

▼関連記事
キアシナガバチの刺針攻撃:♂♀比較
翅をつままれたら脚と腹部ぐらいしか自由に動かせませんから、どんなハナアブでも腹部を繰り返し屈曲しそうな気がします。
比較対象として、蜂に擬態していないハナアブではどうなのか、検討する必要がありますね。
もし蜂にベーツ擬態するアブだけが腹部をハチのように曲げるのなら、確かにハチが毒針で刺す真似をしている行動擬態と言えそうです。
そんなに難しく考えなくても、腹部を少し屈曲することで「刺すハチ」に似た外見と相まって鳥などの天敵や捕食者に恐怖の記憶が蘇ってたじろがせる効果があれば、それで充分なのかもしれません。

例えば、何らかの方法でシロスジナガハナアブの腹部を屈曲できないようにすると鳥に捕食されてしまう率が上がるのか、調べれば良さそうです。(言うは易く行うは難し)
これを実証しようとすると、擬態モデルのハチに刺された経験のある鳥を準備するところから大変そうです。


【参考図書】
上田恵介・有田豊『黄色と黒はハチ模様:ハチに擬態する昆虫類』 (『擬態:だましあいの進化論〈1〉昆虫の擬態』p62-71に収録) によると、

クロスズメバチの巣を好んで襲うハチクマは例外にして、鳥がスズメバチやアシナガバチを食べている場面を見かけることは滅多にない。毒針を持つ蜂を、鳥が避けるのは、一般的な傾向である。とすると、針はないが、ハチの姿をまねることで、鳥に襲われないようにして生存価を高める擬態形質が進化しうる。(p62より引用) 

”虻蜂取らず”はアブの戦略 
針を持たないのにハチの姿をまねている昆虫というと、まず双翅目のアブ類が挙げられる。(p62より) 
こうしたハチ擬態はどのようにして進化してきたのだろう。人が見て”そっくりである”ということと、その昆虫がモデルであるハチに本当に擬態しているのかどうかは別の問題である。これはその擬態種の形態を進化させた淘汰圧がなにかによって異なってくる。(p69より)
ハチ擬態をする昆虫の野外での生態はまだよく調べられていないし、実際にこうした擬態が捕食者にどの程度の効果があるのかもよくわかっていない。(p71より) 


以下は標本の写真。




2017/10/18

ネムノキの実で見つけたホソヘリカメムシ幼虫



2016年10月上旬

堤防に生えたネムノキの灌木に実がなっていました。
その豆果でホソヘリカメムシRiptortus pedestris)の幼虫を発見。
本種の幼虫期はクロアリにベイツ型擬態していることで有名です。
それまで成虫しか見たことがなかった私にとって、嬉しい出会いでした。

食草はマメ科植物の子実とのこと。
ネムノキ(マメ科)の実を吸汁しているのかどうか、口器の状態が気になるところです。
いかにも硬そうな鞘を貫き通して種子から吸汁出来るのかな?
マクロレンズで口器を接写したくても、夕刻の木陰は非常に薄暗くて無理でした。
そこで豆果ごとそっと採集して、残光で少し明るい地面に置き、接写してみました。
ホソヘリカメムシ幼虫は警戒しているのか、実の裏面に回り込んで隠れてしまいます。
その実をゆっくりめくってみると、豆果を下りて地上を逃げ出しました。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



撮影後に採集して持ち帰りました。
忙しくてほったらかしにしていたら、なんと容器内でいつの間にか脱皮していました!
抜け殻は食べておらず、無傷で残っていました。
(よく考えると、カメムシの口器は咀嚼できないので当然ですね。)
脱皮後も成虫ではなく、未だアリに似た幼虫でした。
何齢幼虫なのかは、不明です。
栄養状態が悪いまま死んでしまったと思われ、反省。

wikipediaの情報によれば、

幼虫はふだんは分散して暮らしているが、脱皮の直前に集まり、脱皮集団を作る[8]。幼虫は1齢から5齢までで20から30日を経過し、次には羽化して成虫になる[9]。


背面
側面
側面
腹面。口器が面白い
後脚腿節の斑紋が面白い
ホソヘリカメムシ幼虫:脱皮殻@方眼紙
ホソヘリカメムシ幼虫:脱皮殻(側面)@方眼紙

2016/11/01

飛んで木に隠れるゴイサギ幼鳥(野鳥)



2016年7月下旬

ゴイサギNycticorax nycticorax)の幼鳥を2羽、溜池で見つけました。

左の個体が少しだけ飛んで浮島の近くへ移動しました。
ススキの茂みから隠し撮りしている私に気づいて警戒し、茂みの死角に隠れたのかもしれません。
すぐにまた飛び立つと、池の畔で立ち枯れしたハンノキの枝に着陸しました。
足は黄色いものの羽の模様は見事な保護色(カモフラージュ)になっていて、動かなければ絶対に気づかれないでしょう。
ときどき首を伸ばし、警戒姿勢の片鱗を見せてくれました。
せっかくの擬態をすぐに止めてしまう幼鳥は、飽きっぽいのでしょうか。
何かに驚いて首を伸ばすのだと思うのですけど、警戒の対象がよく分かりません。
列車の通過音と踏切の音を聞いて首をわずかに伸ばしかけるものの、擬態を強めることはありませんでした。
おそらく卵の時期から聞き慣れた騒音なのでしょう。
樹上の幼鳥は羽繕いを始めました。
調子に乗って撮り続けていると、しつこいパパラッチを嫌ったのか急に飛び立ち、溜池の岸辺に広がるヨシ原に降り立ち姿を消しました。
飛翔能力があり、巣立ち後の幼鳥ですね。


『日本動物大百科3:鳥類I』p41によると

(ゴイサギは)幼鳥羽から成鳥羽になるまでに2年かかり、そのあいだは中間的な羽色で、換羽ごとに少しずつ成鳥羽に近づく。


一方、大田眞也『田んぼは野鳥の楽園だ』によれば、
(ゴイサギが)成鳥羽になるには三年を要し、その間の幼鳥羽がまだ残る若令個体でも繁殖能力はあります。年中見られますが、足環を付けた標識調査の結果、冬には相当数のものがフィリピンや台湾などに渡っていることが分かってきました。 (p83より引用)


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2016/08/13

オオマルハナバチに擬態したマツムラハラブトハナアブ♀?【名前を教えて】



2016年6月上旬

山麓の農村部の民家の花壇に咲いたキリンソウの群落で、オオマルハナバチにベイツ型擬態したハナアブが訪花していました。
花粉や花蜜を舐めています。


手元にある図鑑『札幌の昆虫』p214-215でマルハナバチに擬態するハナアブの仲間を調べてみると、素人目にはトゲミケハラブトハナアブ♀(Mallota tricolor)が一番似ています。
一方、「ハナアブの世界」サイトに掲載された標本写真を見比べると、マツムラハラブトハナアブ♀(Mallota rubripes)が一番似ている気がします。
今回は採集できなかったので標本はありませんが、もし間違っていたらご指摘願います。
ハラブトハナアブ属の一種(Mallota sp.)としておいた方が無難でしょうか。



【追記】
中公新書:鈴木紀之『すごい進化 - 「一見すると不合理」の謎を解く 』によると、
アブの仲間で擬態のうまさを網羅的に比較した研究では、アブの体サイズが小さいほど擬態が不完全になっていく傾向が見出されました。天敵はどちらかというと体の大きなアブを狙います。体が大きい分だけエサとしての栄養分が多く含まれているからです。そのため、体の大きなアブはできるだけ蜂に姿を似せて天敵からの攻撃を未然に回避する必要があります。一方で、体の小さなアブはそもそも天敵からの攻撃をそれほど受けないので、ハチに似せていく方向に働く圧力がそこまで強く生じません。天敵にしてみれば、エサの候補となりにくい小さい種類はアブであろうがハチであろうがどちらでも構わないため、そもそも識別しようとしないのです。この研究は、天敵からの圧力が弱い種類ほど不完全な擬態が維持されやすいことを示唆しています。 (p218より引用)





2016/06/15

モズ♂(野鳥)がオオヨシキリの鳴き真似?



2016年5月上旬・早朝6:36

土手に生えた灌木のてっぺんにモズ♂(Lanius bucephalus)が止まって鳴いています。
横の湿地帯でもオオヨシキリAcrocephalus arundinaceus orientalis)が頻りに囀っているのですけど、もしかして、このモズもオオヨシキリの鳴き真似をしてますかね?
特に後半の鳴き声がモズの嘴の動きと一致しなくなった(リップシンクロしない)ので、私の気のせいかな?
指向性の高い集音マイクを使って録音しないと分かりませんね。


百舌鳥が飛び立った直後に近くでキジ♂が縄張り宣言で絶叫しました。



【追記】
あまり詳しくないのですが、もしかすると「ぐぜり」という鳴き方なのかもしれません。
『マルチメディア鳥類図鑑』によると、

ぐぜり:サブソングともいう。はっきりとしたさえずりではなく、くちばしを完全には開かずに、つぶやくような鳴き方。地鳴きやさえずりのフレーズをおりまぜる。モズなどは、ほかの種類の鳥の鳴き声をおりこむ。


千葉県立中央博物館のサイト「音の標本箱」によれば、
ぐぜりとは、若鳥がさえずりを学習する過程で鳴く不完全なさえずり(サブソング subsong) のこと。
同種や異種の鳴きまねなどを取り混ぜてグチュグチュ取り留めなく鳴くこともあります。
春先には、前年にさえずっていた成鳥もぐぜりながら練習をして、正しいさえずりを歌うようになります。

もっとはっきりオオヨシキリなど数種類の鳴き真似をしたモズを2年前に撮っています。

▼関連記事
モズ♂(野鳥)の鳴き真似♪を声紋解析してみる




2016/06/10

ミズキを訪花するジョウザンメバエ♀?



2016年5月中旬

沢に生えたミズキの高木でジョウザンメバエConops flavipes)が訪花していました。
翅を半開きにしたまま集合花の上を歩き回り、口吻を伸ばして花蜜や花粉を舐めています。

一瞬ハチかと思ったら、ベーツ擬態したハエでした。
全体が黒く、腹部に黄色の横縞が3本入っています。
翅の前半部が黒っぽく、顔(頭楯?)が白い。
見慣れないハエでしたが、手元の図鑑『札幌の昆虫』をめくってみると、p193のジョウザンメバエが似ていると思いました。
p216のニトベナガハナアブにも似ていて悩ましいのですけど、触角の形状が異なるので除外。
「ジョウザンメバエ」でインターネット検索した交尾写真(リンク12)を見ると、素人目には複眼の形状で性別判定できない種類のようです。
口吻の形状に性差があるのかな?
真っ直ぐ長い口吻を持つ個体がマウントしているので♂なのでしょう。(そんな特殊化した形状の口吻は吸蜜専門?)
一方、私が撮った個体の口吻はよく見るハエ型の舐める口器でした。(ということは♀?)
♀は卵巣の発達にタンパク質が必要なので、花粉を摂取できるように舐める口器なのかな?(ド素人の勝手な予想です)
それとも全く違う種ですかね?
もし間違っていたらご指摘ください。
未採集、未採寸。



2016/05/19

瀕死のクリストフコトラカミキリ



2016年4月下旬

郊外の路上で美しいカミキリムシがひっくり返っていました。
黄色と黒の模様で蜂っぽく、なかなか見事なベーツ擬態です。
腰に一対の黄紋があるので、フタモンアシナガバチにしては変だな?と一瞬騙されかけました。
見たことのないカミキリムシなので帰ってから調べてみると、クリストフコトラカミキリPlagionotus christophi)と判明。
接写するために静かな場所に持って行きました。
地面に置くとアリが集ってくるので、望遠レンズを台として横倒しで置きました。
死骸かと思いきや、摘み上げると弱々しく脚を動かしました。
顔を見ると、大顎があまり発達しない種類のようです。
ときどき脚がぴくぴくと動くだけで、死にかけています。
飛んでいるときに車に衝突されたのでしょうか?



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