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2025/12/31

秋にヒバの梢で鳴き真似♪をするモズ♂(野鳥)

 

2024年10月上旬・午後14:50頃・くもり 

川沿いの民家の生け垣として植栽されたアスナロの梢にモズ♂(Lanius bucephalus)が留まっていました。 
私のことなど眼中になく、横を流れる用水路やその奥の田園地帯の方を見下ろしていました。 
辺りをキョロキョロと見回しながら、喉をひくひく動かしています。 
小声でチュピチュピ鳴き続けているのに、近くを流れる川の水音がうるさくて動画ではよく聞こえません。 
(撮影時に私の耳では確かに鳴き声が聞こえていたのです。)
秋のモズに特有の鳴き方(縄張りを宣言する高鳴き)ではなく、別種の鳥の鳴き真似(音声擬態)をしているようです。 
鳴き真似のモデルはツバメかな? (カワラヒワ? ヒヨドリ? セキレイ類?) 

鳥は普通、嘴を開閉しながら鳴きます。 
その動きが鳴き声と同期していれば(リップシンクロ)、被写体の鳴き声であることが確定できます。 
ところが、今回のモズ♂個体は嘴を閉じたまま鳴き続けていました。 
喉をひくひく動かしていたので、この個体が鳴管(我々ヒトでは声帯という相似器官)を使って鳴いているようです。 

やがてモズ♂は止まり木で左に向き直りました。 
秋風で細い枝先が揺れても、尾羽でバランスを取りながらしっかり留まっています。 
風が強くなって止まり木の揺れが激しくなると、モズ♂はとうとう耐えきれずに飛び去りました。 

モズの鳴き真似はとても面白いテーマです。 
今回は4分以上も鳴き続けてくれたのに、川の音でほとんどかき消されてしまい、残念でした。 

※ 少しでもモズ♂の鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】
この記事ではモズの鳴き真似として紹介しました。
しかし全ては私の勘違い(願望から来る思い込み)かもしれません。
モズが鳴き真似をしていたのではなくて、別種の鳥が近くで鳴いている声が聞こえただけという可能性もありえます。 
モズに目一杯ズームインして撮影に集中していた私は、周囲にどんな鳥がいたのか、しっかり見ていません。
過去の観察記録を読み返すと、モズが嘴を閉じた状態で鳴き真似をしている事例がありました。

関連記事(3、8、10、11、12年前の撮影)▶  

ChatGPTにブレインストーミングの相手役になってもらいました。

これはとても重要で、しかも自然観察として非常にまっとうな疑問です。
結論を急がずに言うと、

「嘴が開いていない=その個体が鳴いていない」とは断定できない
一方で、ご指摘のように誤認の可能性も論理的には残る

という、ちょうど中間に位置する状況です。

以下、観察記録としてどう整理すべきかを、
音声生理・行動観察・記録の書き方の3点から説明します。


1. 嘴を開かずに鳴くことはあり得るのか

結論:あり得ます(特にモズでは)

鳥の発声は:

  • 嘴ではなく 鳴管(syrinx) で起こる

  • 嘴は「共鳴・放射」を調整する器官

そのため、

  • 小音量

  • 高周波

  • 近距離

の場合、
嘴を大きく開けず、ほぼ閉じたまま鳴くことがあります。

特にモズ類では:

  • さえずりほど大音量でない

  • 連続的にチュピ音を出す
    とき、嘴の開閉がほとんど見えない事例は珍しくありません。


2. 喉の動き(頸部の微動)は重要な手がかり

ご記述の

喉をひくひく動かしていた

これはかなり強い状況証拠です。

  • 発声時に起こる筋活動に一致

  • 呼吸とは異なるリズム

  • 鳴き声のタイミングと同期している

のであれば、
「その個体が音を出している」可能性は高いです。

完全な証明ではありませんが、
単なる勘違いと切り捨てるほど弱い情報ではありません。


3. それでも残る「別個体が鳴いていた」可能性

科学的に正直であるために、ここも整理します。

起こり得る状況

  • 近くの茂みや川岸で
    別種(小型鳥)が高音で鳴いていた

  • モズはそれを「聞いているだけ」

  • 観察者の注意がモズに固定されていた

この場合:

  • モズの喉の動きが
    呼吸や警戒行動と誤認される可能性

  • 鳴き声の方向感が川音でマスクされる

理論上は否定できません。


4. では、どう記録すべきか(ここが一番大事)

この事例は、
「断定」よりも 適切な不確実性の書き方 が重要です。

推奨される記録表現(例)

  • 「映像中のモズ個体は嘴をほとんど開かず、喉部を周期的に動かしていた」

  • 「同時に、高音の短い鳴き声(他種模倣と考えられる)が連続して聞かれた」

  • 「鳴き声と嘴の開閉の明確な同期は確認できなかった」

  • 「当該音声がこの個体自身によるものか、近傍の別個体によるものかは断定できない」

これは弱い表現ではなく、むしろ質の高い記録です。


5. 音声処理との関係で言えば

仮に音声処理で:

  • 高音域に、短く反復する音型が現れ

  • それが映像中の喉の動きのタイミングと一致する

ならば、
「この個体が発声している」仮説はかなり強化されます。

逆に:

  • 音が常に一定方向・一定距離に感じられる

  • モズの動きと無関係

なら、
別個体説を残すべきです。


6. 今回の件の位置づけ(率直な評価)

  • 観察者の注意深さ:高い

  • 状況証拠(喉の動き):有意

  • 決定的証拠(嘴同期・音源定位):不足


「モズが鳴き真似をしていた可能性が高いが、断定はできない」

これは失敗ではありません
自然観察では、こういうグレーな記録が大量に積み重なって、後から意味を持つことがよくあります。


もし次に同様の場面に出会ったら:

  • 可能なら 少し位置を変えて撮る(音源方向が分かる)

  • 被写体が去った後も 環境音だけを録る

  • 嘴・喉がはっきり映る角度を意識する

これだけで、今回の疑問の多くは解消できます。

今回の疑問は、とても健全です。
「断定したい」よりも「誤認を避けたい」という姿勢は、
観察記録として理想的だと思います。


今回モズがずっと鳴き続けていたので、「鳴いていない区間」が充分にありませんでした。
モズが飛び去った後も同じアングルで動画をしばらく撮り続けるべきでしたね。 
ノイズとなる川の音だけを録音してあれば、音声編集ソフト(Audacityなど)で差分を取ってノイズ成分を取り除き、鳥の鳴き声を明瞭に加工することができたはずです。 
撮影時の私は、そこまで頭が回りませんでした。 

自前の音声ファイルをアップロードすればAIで解析してバックグランドのノイズ成分を除去してくれる(ノイズ・キャンセル)と謳ったウェブサービスを今回いくつか試してみたのですが、ほとんど効果はありませんでした。 

ChatGPTに相談すると、今回のような事例でノイズ除去するのは、かなり困難な(悪条件の重なった)ミッションなのだそうです。

状況の説明から判断すると、これはかなり難易度の高いケースです。
結論を先に言うと、

一般的なオンラインAIノイズリダクションで「はっきり聞こえるレベル」まで小鳥の声を復元できる可能性は低い
ただし、「注意深く処理すれば 存在が分かる程度 まで改善できる余地はある」

という位置づけになります。


なぜ難しいのか(重要)

1. 川の音は「最悪クラスのノイズ」

川のザーザー音は:

  • 広帯域(低音〜高音まで満遍なく含む)

  • 常時鳴っている(定常ノイズ)

  • 時間変動があり、完全に一定ではない

という特徴があります。

これはAIにとって
「消すと同時に、小鳥の声も一緒に消してしまいやすい」
最も厄介なタイプの背景音です。


2. 人間の耳で聞こえた ≠ 録音に十分入っている

ここが非常に重要です。

  • 人の耳:
    方向性があり、注意を向けた音を強調して知覚できる

  • カメラのマイク:
    ほぼ無指向性で、川音を等しく拾う

そのため、

撮影者には確かに聞こえたが、
録音データ上では 信号対雑音比(S/N比)が極端に悪い

という状態になっている可能性が高いです。

AIは「埋もれた音を想像で復元」することはできません。
波形として残っている成分しか強調できません。(以下省略)






このケースが「まだ救える」理由

1. 鳴き声が「短発・高音・反復的」

モズの鳴き真似は:

  • チュピ/キッ/チリリ系の短音

  • 高めの周波数帯(おおよそ 3–7 kHz が主)

  • 同じパターンを何度も繰り返す

という特徴があります。

これは

  • 川音(広帯域・低〜中音優勢)

  • 風や人声

音響的に分離しやすい ため、
AIよりも スペクトルベース処理 が効きやすいタイプです。





今回のケースの正直な限界

できないこと:

  • 川音だけを正確に学習させる

  • 「元の耳の印象」を再現する

  • 鳴き真似の細部を完全に分離する

できること:

  • 鳴き声の存在を明確化

  • 鳴き方のパターン比較

  • 「確かに模倣がある」と示せる資料化


今後に向けた教訓(これはとても大事)

今回の経験から得られる、次回以降に効くポイントです。

  • 被写体が去った後も
    同じアングル・同じ設定で30秒〜1分回し続ける

  • それだけで
    後処理の成功率が桁違いに上がる

これは録音技術というより、
**自然観察の「記録のコツ」**に近い話です。


今回の素材は、「完全再現」は無理でも
捨てるべきデータではありません



最後に、技術的に切実な疑問があります。

私のデジカメは録音時に「風音キャンセラー」および「ズームマイク」という機能があります。

特にズームマイクは、「ズーム操作に連動して、望遠では遠くの音、広角では周囲の音をよりクリアに記録します。」とメーカーの説明書では謳われています。

今回は最大限ズームインしてモズを撮ったのに、それでも背景の川音ノイズに負けてしまったのはなぜでしょう?

そもそも私はズームマイクの原理を理解していません。

とても核心を突いた質問です。
結論を先に明確に言います。

「ズームマイク」をONにして最大望遠で撮っていても、
内蔵マイクが“物理的に指向性マイクになる”わけではありません。

ただし、無指向性そのままとも言い切れません。

以下、誤解が生じやすい点を整理します。


1. 内蔵マイクの「物理的性質」

結論

**ほとんどのデジカメの内蔵マイクは、基本的に無指向性(または広指向性)**です。

理由:

  • 小型

  • 防水・防塵・耐風を優先

  • 機械的な干渉管(ショットガン構造)を持てない

したがって、

  • 望遠であっても

  • 被写体を画面中央に捉えていても

「遠くのモズの声だけを物理的に狙って拾う」能力はありません。

川音が強く入るのは、マイクとしては正常な挙動です。


2. では「ズームマイク」とは何をしているのか

ここが一番重要です。

ズームマイク ≠ 指向性マイク

メーカーの謳い文句は誤解を招きやすいですが、
ズームマイクの正体はほぼ例外なく:

複数マイク+信号処理(DSP)による疑似的な指向性制御

です。

典型的には:

  • 左右(+前後)の複数マイクを使う

  • ズーム位置に応じて

    • 中央方向の成分を強調

    • 周囲成分を減衰

  • 音量バランスやEQを動的に変更

つまり、

  • 音を“拾い分けている”のではなく

  • 拾った後で“混ぜ方を変えている”

という処理です。


3. なぜ川音には効かなかったのか

今回の条件では、ズームマイクの弱点がすべて重なっています。

川音の性質

  • 広帯域

  • 定常

  • 音源が面として広がっている

  • カメラからの距離差が小さい

これは、

  • 位相差が取りにくい

  • 「中央方向の音」としても成立してしまう

ため、
DSP的にも「切り分け不能」 になります。

ズームマイクは本来、

  • 人の声

  • 点音源

  • 比較的近距離

で最も効果を発揮します。


4. 「無指向性なのか?」への正確な答え

質問に対して、正確に言うなら:

  • 物理的には:ほぼ無指向性

  • 機能的には:条件付きで弱い疑似指向性

です。

今回のように:

  • 遠距離

  • 強い環境音(流水)

  • 小さく高音の信号(鳥の声)

という条件では、

実質的には「無指向性マイクとして振る舞った」

と評価して差し支えありません。


5. では、ズームマイクは無意味だったのか?

いいえ、完全に無意味ではありません。

考えられる効果:

  • モズ方向の音量が わずかに 上がっている

  • 周囲の低音が わずかに 抑えられている

  • 風音キャンセラーと併用されて
    低域がさらに削られている可能性

ただしそれは:

  • 耳で「確実に分かる」ほどではなく

  • 後処理で初めて差が出るレベル

です。


6. 今回のケースから言える重要なこと

あなたの判断:

最大限ズームインしてモズを撮った

これは その場でできる最善の選択 です。
それでも川音が勝ったのは、

  • 機材の限界

  • 物理法則の問題

であって、撮影判断のミスではありません。


7. まとめ(要点)

  • ズームマイクがあっても
    内蔵マイクは本質的に無指向性

  • ズームマイクは
    後処理による疑似指向性

  • 川音のような環境音には
    ほとんど効かない

  • 今回の録音結果は
    理論的に「そうなるべくしてなった」

もし今後、同様の記録を狙うなら、

  • 外部マイク(ショットガン or パラボラ)

  • あるいは「音は記録補助」と割り切る

という判断になります。

今回の疑問は、
機材仕様を正しく理解した上での、非常に妥当な疑問です。
「ズームしたのに音が寄らない」という違和感は、勘違いではありません。

2025/11/06

倒伏したコシアブラ大木の花蜜を吸うフタガタハラブトハナアブ♀

 

2024年8月上旬・午後12:30頃・晴れ 

里山の混交林で倒れたコシアブラの大木にフタガタハラブトハナアブ♀(Mallota eristaliformis)が訪花していました。 
口吻を伸ばして、花蜜や花粉を次々と舐めて回ります。 

本種はマルハナバチにベーツ擬態していると言われているのですが、当地で擬態のモデルとなる全身が黄色いマルハナバチはコマルハナバチ♂など毒針を持たない雄蜂♂なので、果たしてベーツ擬態が成立するのか(進化し得るのか)疑問です。 
毒針を持つ♀で黄色いミヤママルハナバチ♀は、当地では個体数がとても少ないのです。 

後半はミツバチのワーカー♀もちらっと登場しました。 
腹部が明るい褐色なのでセイヨウミツバチ♀っぽいのですが、もしかするとニホンミツバチの腹部が強い日差しで透けて明るく見えているだけかもしれません。 

コシアブラの散形花序が込み入っているため、カメラのピントを小さな虫に合わせるのに苦労します。 


【アフィリエイト】 

2025/10/19

獲物を待ち伏せ中に身繕いするヒメキンイシアブが飛び立つまで【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年7月中旬・午後14:20頃・くもり 

里山の急斜面をつづら折れで登る山道で、見慣れないアブを見つけました。 
ユキツバキの群落に混じって生えているオオバクロモジ灌木の葉に乗っています。 
撮った写真をGoogleレンズで画像検索してもらうと、ヒメキンイシアブChoerades japonica)と正体が判明しました。 
いつもお世話になっている「ムシヒキアブ図鑑サイト」に掲載された標本写真を参照すると、ヒメキンイシアブは複眼の形状に性差はないようです。 
腹部に黄色と黒の鮮やかな横縞模様があるのは、「24時間戦える勇気のしるし」ではなくて、ハチに似せた警告色(またはベーツ擬態)なのでしょう。 
私も初めは黒い蜂かと思いました。

どうやら獲物を待ち伏せしているようで、辺りをキョロキョロと油断なく見回しています。 
6本足で葉の上に立ったまま一歩も動かないのですが、待ち伏せ中はトンボのように首をグリグリ動かすだけでなく、全身を少しねじって、何か虫が飛来する度に向き直ることもありました。 

ときどき前脚で顔(複眼)を拭ったり、左右の前脚を互いに擦り合わせたりして、身繕い(化粧)しています。 

飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:19〜) 
いきなり左へ飛び去り、戻ってきませんでした。 
狩りの成否は不明です。


【追記】 
この個体の性別が私には分からないのですが、♂だとすると、縄張りを張って♀を待ち伏せしていたのかもしれません。



2025/10/05

ニホンミツバチ♀の分蜂群を誘引する不思議な蘭植物キンリョウヘン

 

2024年5月下旬・午後12:45頃・晴れ? 

山麓にある古い木造家屋の床下に昔から何年間もニホンミツバチApis cerana japonica)が自然営巣しています。 
久々に定点観察に来てみると、この日も多数のワーカー♀が活発に飛び回り、床下にある巣に出入りしていました。 

家屋の手前に養蜂用の空の巣箱が2つ置かれていました。 
ちょうどニホンミツバチが分蜂する時期なので、巣箱に引っ越してくる分蜂群を捕獲したい養蜂家がいるのでしょう。 
分蜂群を効果的に誘引するために、それぞれの巣箱の近くにキンリョウヘンという蘭の鉢植えが計3つ置かれていました。 
キンリョウヘンの花は、なぜかニホンミツバチの集合フェロモンを分泌しているのだそうです。 
ただし、我々ヒトの鼻には無臭です。
キンリョウヘンの花は、ニホンミツバチの「集合フェロモン」と非常によく似た化学物質(3-ヒドロキシオクタン酸:3-HOAA と 10-ヒドロキシデセン酸:10-HDA)を分泌します。
これは一種の化学擬態であり、フェロモンで誘引したミツバチによって授粉してもらおうというのが、キンリョウヘンの送粉戦略です。 
本やテレビなどで知っていましたが、実際に見学するのは初めてです。 
確かにニホンミツバチのワーカー♀が多数集まっていました。 

意外にも、キンリョウヘンの花で吸蜜したり花粉を集めたりする個体はいませんでした。 
キンリョウヘンの花自体には蜜がないため、ミツバチが花に留まって採餌する行動は見られないのだそうです。
キンリョウヘンの花は「背面摩擦送粉」という仕組みで受粉します。
ミツバチが花に入ると、背中に花粉塊(蘭特有の「ポリニア」)が付着し、別の花に移動することで運ばれた花粉と授粉します。
花粉塊が付着する部位は蜂自身の足先が届かず、身繕い動作(グルーミング)でも取り外しがほぼ不可能な場所です。
つまり、蜂は背中についたキンリョウヘンの花粉塊を自力で後脚の花粉籠に移し替えて花粉団子として巣に持ち帰ることはできません。
ミツバチ側にとっては花蜜や花粉という報酬がない「騙し」の仕組みですが、植物側は効率的に送粉してもらうことができます。


ニホンミツバチの偵察部隊に巣箱の入口を見つけてもらいやすくして巣箱へスムーズに誘導するために、キンリョウヘンの花の置き方が工夫されていることが分かりました。 
なぜか右よりも左の巣箱の方が蜂の出入りが多いです。 

巣箱の内部から歩いて巣口に出てきた蜂が、口にオレンジ色の小さな塊を咥えていて、外に捨てました。 
巣箱の内部を清掃しているということは、偵察部隊が巣箱を内見して気に入り、これから女王を連れて分蜂群が引っ越してくる前兆かもしれません。 

一番興味深かったのは、巣箱の手前の地面で複数のニホンミツバチ♀が団子状に集まって格闘していたことです。 
キンリョウヘンの放つ強烈な匂い(フェロモン)に酩酊したのでしょうか?
かの有名な、天敵のスズメバチを熱殺する蜂球なのかと思い接写しても、ニホンミツバチ同士の争いでした。 
ちなみに、スズメバチvsニホンミツバチの死闘が繰り広げられるのは秋です。
もしかしてこれが仮集結した分蜂蜂球の出来始め(形成初期)なのでしょうか? 
しかしよく見ると、1匹の個体を取り囲んで集団リンチしています。 
相手にしがみついて噛み付いたり、腹端の毒針で刺そうとしたりしていました。 
近所にある別々のコロニーから集まって来た斥候の蜂同士が、引越し先の巣箱を巡って争っているのかもしれません。 
襲われている個体はほぼ無抵抗で、相手を振りほどこうと必死に羽ばたきながら歩いて逃げようとしています。 
熱殺蜂球とは異なり、喧嘩が終わって蜂の団子が解散しても、死亡個体が地面に残されることはありませんでした。 

残念ながら、ニホンミツバチの分蜂群が実際に新しい巣箱へ引っ越しする様子を観察することはできませんでした。 
女王も含めた分蜂群が巣箱に引っ越しする日はなかなか予想できないので、無人のカメラを設置して何日も愚直に監視する必要がありそうです。


【考察】
キンリョウヘンの誘引成分は女王蜂のフェロモンやローヤルゼリー成分に近いため、働き蜂(ワーカー♀)だけでなく結婚飛行に飛び立った雄蜂♂を集める力もあるのだそうです。
しかし今回、新しい巣箱やキンリョウヘンに来ていたのはニホンミツバチのワーカー♀だけで、雄蜂♂はいませんでした。

 この記事を書くための調べ物をする上で、いつものようにPerplexity AIとの問答が役立ちました。
(今回は試しにPDFファイルにまとめてみました。)

私が一番知りたいのは、キンリョウヘンの鉢植えの近くの地面でニホンミツバチが団子状になっていた行動についてです。

菅原道夫『ミツバチ学:ニホンミツバチの研究を通し科学することの楽しさを伝える』 という本のPart3(p83-130)で、ニホンミツバチの特性の1つであるランに誘引される現象とその研究の現状を詳しく解説しています。
しかし読み返しても、私の疑問は解決しませんでした。

Perplexityの見解では、
集合フェロモンに誘引されたミツバチは、巣箱やその周辺で一時的に密集することがあります。これは新しい巣箱への入居前や、女王蜂を待つ間などによく見られる行動です [18] [19] 。
特に分蜂時や新しい環境下では、偵察蜂や一部の働き蜂が地面や巣箱の周囲で「仮集結」することがあり、これが団子状に見えることがあります [19] 。

また、「異なるコロニーから来たニホンミツバチの偵察部隊が巣箱を巡って激しい闘争を繰り広げることがあるのか?」という私の疑問に対して、Perplexityは否定的でした。
異なるコロニーの偵察蜂が鉢合わせた場合
偵察蜂同士が同じ巣箱やキンリョウヘンの周辺で出会うことはありますが、基本的には激しい争いは起きません。
偵察蜂はあくまで「下見」役であり、候補地を確認したら自分の群れに戻り、情報を伝達します。その後、分蜂群全体が入居を決定するかどうかが決まります [27] [28] 。
もし複数の分蜂群が同時に同じ巣箱を目指して集まった場合、最終的にはどちらか一方の群れが入居し、もう一方は別の場所を探すことが多いです。まれに両群が同時に入ろうとし、巣箱の入り口付近で一時的に小競り合いが起きることもありますが、致命的な争いには発展しません。

しかし私はどうもPerplexityの説明に納得できません。
佐々木正己『ニホンミツバチ: 北限のApis cerana』という書籍を読むと、次のような記述があったからです。
ニホンミツバチがオオスズメバチの襲来を察知して対処するときの反応をも化学擬態しているとする小野・佐藤(1997)の説は、誘引された蜂が(キンリョウヘンの)花弁をかじる不思議な行動を見事に説明する (p160より引用) 

蜂球に包まれた(キンリョウヘンの)花は熱とかじり行動でぼろぼろにはなるが、受粉は高率で保証される。そして開花時期が、まさに分蜂の季節と一致しているのである。 

私が観察した小規模な蜂球やニホンミツバチ同士の闘争行動は、これで説明できるのではないか?と思いつきました。
つまり、キンリョウヘンの化学擬態によってニホンミツバチの熱殺蜂球が誤って発動されてしまったのではないでしょうか?
この仮説なら、必ずしも他のコロニーから来た蜂との喧嘩とは限りません。(同じコロニー内の同士討ちかも)


佐々木正己『ニホンミツバチ: 北限のApis cerana』や小野・佐藤(1997)の説に基づき、「キンリョウヘンの化学擬態によってニホンミツバチの熱殺蜂球が誤って発動される」可能性について検討すると、十分に合理的な解釈といえます。

化学擬態による誤作動と観察事例

  • キンリョウヘンは、ニホンミツバチの集合フェロモンだけでなく、オオスズメバチ襲来時の危険(外敵や警戒)フェロモンまで部分的に化学擬態していると分析されています。scienceteam.jst

  • 花弁をかじったり、他個体にまとわりついたりする「異常な蜂球状行動」は、本来天敵襲来時の防御反応として発動されるべき集団行動が、化学信号によって誤誘導された結果と説明できます。38qa+1

行動の特徴

  • 通常の熱殺蜂球はオオスズメバチなど天敵が存在し、巣の防衛で発動します。その際はミツバチ死骸・負傷者が見られます。tamagawa+1

  • キンリョウヘンの場合は死骸が残らないため、攻撃性の弱い「誤発動型蜂球」や小規模衝突として観察されます。38qa

  • 花弁をかじる不思議な行動も、外敵がいないにも関わらず警戒・排除スイッチが入り、集団で花(=誤認天敵)を攻撃しようとする防衛行動の名残と考えられます。scienceteam.jst

生態・進化的解釈

  • キンリョウヘンのフェロモン成分が、ミツバチに「危険」や「集合」だけでなく「攻撃・防御」反応まで誤誘導する化学擬態であるとの学術的指摘があり、進化的視点からも特異な利用例とされています。38qa+1

  • 現場で観察された小規模蜂球や花弁へのかじり行動は、こうした「擬態シグナル誤認による行動発動」の一環として解釈してよい根拠があります。


結論
キンリョウヘンの化学擬態が、ニホンミツバチの本来の熱殺蜂球・警戒防衛行動まで誤発動させてしまうことは、最新の学術的知見にも一致します。観察された小規模蜂球や花弁かじりは、擬態による誤認誘導現象として十分説明できます。scienceteam.jst+1


手強い相手でしたが、ついにPerplexity AIを説き伏せることができました。
(Perplexityは誤解していますが、キンリョウヘンの花弁をミツバチがかじった行動を私自身は観察していません。)
もちろん、AIを論破したからと言ってそれが科学的に真理だとは限りません。
私は未だ1例しか観察していませんし、解明していくのはこれからです。
 

映像を見直すと、微小なアリ(種名不詳)がキンリョウヘンに訪花しているようですが、ニホンミツバチの観察に集中していた私は、アリのことなど眼中にありませんでした。 
今後の課題です。


【アフィリエイト】 

2025/10/03

ヤマザクラの樹洞の縁に産卵するフタガタハラブトハナアブ♀

 

2024年7月中旬・午前11:10頃・くもり 

低山の樹林帯を抜ける山道の横に立派なヤマザクラの老木があり、幹に開口した小さな樹洞(開口部の直径は約2cm)の手前でフタガタハラブトハナアブ♀(Mallota eristaliformis)がホバリング(停空飛翔)していました。 
樹洞の縁に停まると、樹皮に腹端を何度も接触させています。 
このとき卵を産み付けているのでしょう。 
飛び立っても少しホバリングするだけで、同じ地点に着陸し直し、産卵を繰り返しています。 

夏の樹林帯は、林冠の葉が鬱蒼と茂って昼間でもかなり薄暗いです。 
初めは黄色い蜂に見えたので、てっきりマルハナバチ類の雄蜂♂が帰巣したか、あるいは交尾のために他のコロニーの樹洞巣に飛来した(探雌飛翔)のかと思いました。 
動画とは別に同定用に撮ったストロボ写真を見直すと、マルハナバチにベーツ擬態したフタガタハラブトハナアブ♀と判明しました。



産卵直後の写真を見ても、卵は微小なのか、どこか分かりません。


樹洞開口部の直径は約2cm。



このハナアブの詳しい生態や生活史を知らなかったのですが、Perplexity AIに問い合わせると、蜂の巣に寄生するのではなく、ファイトテルマに産卵するらしい。
フタガタハラブトハナアブ(Mallota eristaliformis)の雌は、主に樹木の洞(クヌギ等)の水の溜まった部分に産卵します。幼虫はその洞の水中に存在する腐植質(腐った植物片など)を食べて育ちます。

【参考サイト】 


ちなみに、樹洞、葉腋、食中植物の壺など植物上に保持される小さな水たまりは「ファイトテルマータ」(複数形:Phytotelmata、単数形は「ファイトテルマ」Phytotelma)と呼ばれ、そこだけで興味深いミニ生態系になっています。 

ヤマザクラの細い横枝が根元から折れた後に傷口が腐り、樹洞が形成されたのでしょう。
樹洞入口の右上部分には白い糸が密に張り巡らされています。
樹皮の欠片(木屑)や虫の糞?が大量に付着しているので、クモの網ではなくて蛾の幼虫が絹糸を紡いだ巣のようです。
今回見つけた小さな樹洞の奥がどうなっているのか調べていませんが、横向きに開口しているので、中に雨水が溜まっているとは思えません。 
それでもフタガタハラブトハナアブの幼虫は、樹洞内部の湿って腐った木屑などを食べて育つのでしょう。 

今回フタガタハラブトハナアブ♀は樹洞の縁に産卵したので、幼虫は孵化直後に自ら樹洞内の水溜り(ファイトテルマータ)など餌がある安全な場所を求めて移動しなくてはなりません。 
1齢幼虫にそのような運動能力があるのであれば、♀成虫はファイトテルマータに近づきすぎてうっかり溺死するリスクを回避できそうです。 
フタガタハラブトハナアブ♀が産卵のために樹洞内に侵入しなかったのは、暗闇では目が見えず、中に潜む捕食者に襲われても逃げ遅れるからだろうと推測しました。 


※ オリジナルの映像があまりにも暗かったので、動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 羽音が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


この小さな樹洞に小鳥や小動物が出入りしていそうな気がします。
しかしトレイルカメラを設置して確かめたくても、他のプロジェクトもいくつか同時進行しているために機材の数が足りず、後回しになっています。 


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2025/07/10

日光浴していた農道から蛇行して逃げるシマヘビの幼蛇

 

2024年6月中旬・午前9:50頃・晴れ 

郊外を流れる川の堤防路(農道)でシマヘビElaphe quadrivirgata)の幼蛇がウネウネと伸びた状態で農道に静止していました。 
しばらく待ってもシマヘビ幼蛇は動きません。
舌の出し入れもなく、まさか死んでいるのでしょうか?

動画を撮りながら私がゆっくり近づいたら、シマヘビ幼蛇は身を翻して道端の草むらに姿を消しました。 
細長い体のほとんどは日向に出ていたので、おそらく日光浴をしていたのでしょう。

逃走シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
すばやく蛇行して草むらに隠れました。 
威嚇行動は見られず、舌の出し入れなども観察できませんでした。

関連記事(3、5年前の撮影)▶  


【考察】 
シマヘビは無毒ですが、幼体の時期だけ有毒のマムシにベーツ擬態していると考えられています。 
しかし、私の感覚ではフィールドでマムシに出会う頻度(≒生息数)は近年激減しています。 
その状況で無毒のヘビがモデルの有毒マムシにベーツ擬態しても効果ないはずです。 
捕食者が擬態のモデルとなったマムシを食べようとして毒で痛い目に遭い、その体色パターンを学習しなければ、シマヘビ幼蛇を忌避する行動も起こらないからです。
また、ベーツ擬態が成立するためには、「モデル(マムシ)」と「ミミック(シマヘビ幼蛇)」が同じ捕食者に遭遇しやすい環境で共存していることが重要です(同所性)。
マムシとシマヘビの生息環境は少し違うので、捕食者がマムシを学習する機会が少なくなり、擬態の効果が薄れる可能性が高いでしょう。

そもそも、シマヘビの幼蛇がマムシをモデルとしたベーツ擬態であることを、捕食者を使った実験で本当に証明した研究はないそうです。 
実は一部のヒトが「似てる」と主観的に思っているだけかもしれません。
擬態をテーマとした写真集は昔から人気があります。
ロマンがあって面白いのですが、捕食者への忌避効果があるか実証していないのに、動物写真家や自然愛好家が安易に「擬態だ!」と決めつけた例が実は多いのではないかと私は疑っています。 
実証が難しいのは百も承知です。
例えば捕食者が紫外線領域も見えるのであれば、その視覚特性を考慮した上でモデルとミミックの見た目が似ているかどうかをせめて検討すべきでしょう。
ヒトの見る可視光の世界だけで決めつけているのは問題です。

もし本当にマムシへの擬態が捕食者対策として有効なら、幼体の時期だけでなく成体になってもマムシに似せ続ければよいはずです。 
成体になってシマヘビ特有の体色パターンが現れるのは、マムシとの異種間誤認交尾を避けるため(生殖隔離)かと私は思ったのですが、それは違うらしい。 
以下はPerplexity AIの回答です。
成体でマムシに似せ続けない理由として有力なのは、捕食リスクや生態的背景の違いです。 幼蛇は体が小さく、捕食者(鳥や哺乳類など)に狙われやすいため、擬態による捕食回避効果が強く働くと考えられています。 成体になると体が大きくなり、捕食リスクが減少し、また行動範囲や生息環境も変化するため、幼体時に必要だった擬態的模様が不要になる可能性があります。 さらに、成体の体色や模様は「隠蔽(カモフラージュ)」や「環境への適応」といった別の選択圧が働いていると考えられています。 生殖隔離のために体色が変化するという説は、ヘビ類では一般的に支持されていません。 また、マムシとシマヘビは生殖行動や生息環境、繁殖時期が大きく異なるため、異種間交尾のリスク自体が極めて低いと考えられます。 まとめると、シマヘビ幼蛇が成体になるとマムシ的な外見を失うのは、捕食圧や生態的適応の変化によるものであり、「生殖隔離」のためではないと考えられています。

2025/03/06

スギ林の幹で休むシロスジナガハナアブ♂

 

2023年9月上旬・午後12:45頃・くもり 

平地のスギ防風林で、アシナガバチの仲間にベーツ擬態したシロスジナガハナアブ♀(Milesia undulata)が根元付近の幹に止まっていました。 
身繕いをするでもなく、翅を開げたまま、ただ休んでいるだけでした。 
飛び立つシーンも一度見れただけです。 
急に慌てて右後脚を動かしたのは、スギの樹皮を徘徊する微小アリに足先を噛まれて振り落としたのかな?(@0:54〜) 

動画とは別にストロボを焚いて写真を撮ると、左右の複眼が頭頂で接していたので、♂と判明しました。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
昼過ぎなのにスギ林床はかなり薄暗いのです。





2024/11/06

ヤマハッカの花蜜を吸うウラナミシジミ♂

 

2023年9月下旬・午後12:00頃・くもり後晴れ 

山腹の草地に咲いたヤマハッカの群落でウラナミシジミ♂(Lampides boeticus)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
初めは翅をしっかり閉じて吸蜜していました。 
閉じた後翅を互いに擦り合わせて、尾状突起を触角のように動かして自己擬態しています。 
鳥などの捕食者に対して「偽の頭部」を体の反対側にも見せることで、眼状紋をつつかれても本当の急所に致命傷を負う確率を半分に減らす自衛の作戦なのです。

少し飛んで次の花穂に移動すると、半開きにしてくれた翅の隙間から翅表が見えて、♂と判明しました。

2024/10/13

ナギナタコウジュの花蜜を吸い飛び回るウラナミシジミ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年10月上旬・午後14:25頃・晴れ 

里山の峠道の傍らに咲いたナギナタコウジュの群落でウラナミシジミ♀(Lampides boeticus)が訪花していました。 
意外にも、この組み合わせを撮れたのは初めてです。 
翅をしっかり閉じて口吻を伸ばし、吸蜜していました。 

ウラナミシジミの後翅には尾状突起があるはずなのに、この個体は失っていました。 
左右対称の損傷なので、鳥につつかれたビークマーク(食痕)と思われます。 
鳥を騙す自己擬態の作戦が奏功して、命からがら生き延びたことになります。
後翅の後端には黒い斑点が2つあり、2つの斑点の間には細い尾状突起が突き出ている。この黒い斑点と尾状突起は複眼と触角に似ていて、頭部に似た模様をもつことで身体の方向や頭部の位置について敵の目をあざむいていると考えられている。(wikipedia:ウラナミシジミより引用)
ウラナミシジミの性別を知るには、翅表の斑紋を見る必要があります。 
ナギナタコウジュの花穂から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:22〜) 
素早く羽ばたいて次の花へ飛び去ったのですが、スーパースローで見えた翅表から♀と判明しました。

2024/06/05

飛べ!ヤマトクチブトメバエ【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年9月上旬・午後14:50頃・くもり 

川沿いの堤防路の草むらでスズメバチに酷似した見慣れないハエを見つけました。 
初めはアップルミントの群落に居たのですが、訪花シーンを撮り損ねました。 
惚れ惚れするほど見事なベイツ型擬態で、かなりレベルが高いです。 
虫に詳しくない人が見たら間違いなく騙されて、恐れおののくでしょう。 
しかし体長はスズメバチよりも小さいです。 
私は触角や口器の形状からメバエ科の一種だろうと予想しました。 
擬態のモデルはおそらくコガタスズメバチVespa analis insularis)でしょう。 

オオブタクサの葉に止まり直したメバエをじっくり撮影してみました。 (冒頭のシーンだけ、違う種類の植物の葉にメバエが止まっていました。) 
撮れた写真で画像検索(Google Lens)してみると、どうやらヤマトクチブトメバエLeopoldius japonicus)と判明しました。 
やや珍しい種類らしいのですが、山形県ではレッドデータブックに登録されていません(絶滅危惧種というほどの希少種ではない)。 
撮影地点は平地(郊外)の堤防路で、大して自然度は高くありません。 
ススキやヨシ、クズなどに混じってニセアカシア、セイタカアワダチソウやオオブタクサなどの外来植物が繁茂するような環境です。
ヤマトクチブトミバエの寄主と思われるツチバチ類は多数見かけます。 

次のシーンでオオブタクサの葉から急に飛び立ったヤマトクチブトミバエを1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@0:31〜0:39)、同種の別個体が飛来した途端にまるで迎撃するように葉から飛び立っていました。
私はメバエの性別を形態的に見分ける方法を知りませんが、行動を見る限りでは、♂が縄張りを張って交尾相手の♀を待ち伏せしていたように見えます。 
ライバル♂を追い払ったのかもしれません。(縄張り占有行動?) 
あるいは寄主のツチバチが蜜源植物に来るのを♀が待ち伏せしていたという可能性も考えられます。 (別個体を追い払ったのは誤認?) 

オオブタクサの葉に止まり直すと、口吻の根元を少しだけ動かして角度を変えました。 
ヤマトクチブトミバエが葉から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:50〜) 
葉に着地した直後は翅を半開きにしていたヤマトクチブトミバエは、しばらくすると翅をしっかり閉じました。 
風が吹いて葉が揺れるので、ときどき足を踏み変えてバランスを保っています。 
止まり木で縄張りを張るトンボと違い、葉上のヤマトクチブトミバエは上空の飛翔体を分かりやすく複眼で追うことはしないので、どちらに飛ぶのか予測不能です。 
やがて、しっかり閉じていた翅を急に半開きに戻しました。(迎撃態勢?) 
後半はなかなか飛んでくれないので、痺れを切らした私がメバエの目の前で手足を振ったり物を投げつけたりして、強引に飛び立たせました。 


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外来植物のオオブタクサについて 


最近になって川沿いのこのエリア限定で草丈の高い見慣れない植物の群落が急激に増え始め、気になっていました。 
今回ヤマトクチブトメバエが葉に止まっていたのをきっかけに名前を調べてみると、悪名高い外来植物のオオブタクサと知りました。
風媒花で大量の花粉を撒き散らすので、花粉症の原因のひとつとされています。 
この堤防路では、古参の外来植物であるセイタカアワダチソウの群落を駆逐しつつある勢いです。 
メジャーな外来植物なのに、これまでどうして私の目に留まらなかったのか、逆に不思議です。 
幸い他のエリアでは見たことがありません。 
記憶を探っても、子供の頃にオオブタクサを見たことがあるような、ないような、自分でもはっきりしません。 (旅先で見かけたのかもしれません。) 
近年になって当地に侵入し、分布を急速に広げているのでしょうか? 
それとも駆除根絶に一度は成功した後に再侵入したのかな? 

オオブタクサの写真を撮ったのですが、連日の猛暑と雨不足のため、特徴的な形をした葉がすべてだらんと萎れていました。 
また機会があったら撮り直します。 

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2024/04/03

トリアシショウマの花を舐めるスズキナガハナアブ♀【ベイツ型擬態】

 

2023年7月中旬・午後12:20頃・くもり 

里山の細い山道(ほぼ廃道状態)に沿って咲いたトリアシショウマの群落でスズメバチにそっくりなアブが訪花していました。 
後で調べてみると、スズキナガハナアブ♀(Spilomyia suzukii)でした。 
 【参考】:「ハナアブの世界」サイトにスズキナガハナアブの標本写真が掲載されています。 

半開きの翅をリズミカルに開閉しながら口吻を伸縮させて花粉と花蜜を舐めています。 
食事の合間に左右の前脚で頭部を擦ったり口吻を挟み込んだりして、付着した花粉を拭い取りました。 
本種の訪花シーンは初見です。
同一個体を追いかけて撮影しました。 
森の中でヒグラシ♂(Tanna japonensis)が寂しげに鳴いています♪ 

冒頭のシーンではヒメトラハナムグリLasiotrichius succinctus)も同じトリアシショウマの花穂に来ていましたが、互いに無関心でした。 


スズキナガハナアブはベイツ型擬態の好例ですけど、モデルとなった蜂が何なのか、よく分かりません。 
キアシナガバチPolistes rothneyi)ですかね? 
特定の種類のスズメバチやアシナガバチではないかもしれません。 
蜂好きが見ると不完全な擬態で、粗が目立ってしまいます。 
まず腰が太いので「毒針に刺されそうで怖い!」とは思いません。 
本当に刺す蜂(有剣類)は、腰が細いのが特徴です。
私の知る限り、スズメバチ類はトリアシショウマの花で吸蜜しませんから、その点でも違和感を覚えました。 
しかし捕食者に恐怖で狩りを躊躇させるには充分似ているのでしょう。 

スズキナガハナアブは「人の手があまり入らない、原生的な自然環境を必要とする種」とのことで、確かに今回の現場は原生林というほどではありませんが、整備されずに放置された里山でした。 
多数の倒木で塞がれた廃道には雑草や灌木が生い茂っていました。 
山の管理者が林道や登山道をきれいに整備した途端に周辺の生物多様性が貧困になる(希少種は居なくなり、ありふれた普通種しか見られなくなる)という現象は私も実感しています。 
林業の観点からは山林を整備した方が良いに決まっているので、自然破壊と一概には決めつけられません。 
間伐して定期的に下草を刈るなどの整備を施して林縁的な里山環境が保全されている方が生物多様性は高まる、というのが定説ですけど、希少種の昆虫に関しては優しくないのでしょう。 

スズキナガハナアブの幼虫は何を食べて育つのか、生態が解明されているのでしょうか? 
生息環境が原生林に限られるということは、おそらくスズメバチの巣などに寄生するのではないか?(何かしらの寄生種だろう)と私はずばり予想します。
寄主の巣に産卵する際に擬態が役立っているのではないか?と先走った妄想をしています。 


関連記事(9、12年前の撮影)▶  


2024/03/31

コガタスズメバチにベーツ擬態するオオナガハナアブ♀の身繕い・飛翔

 

2023年7月中旬・午後12:05頃・くもり 

里山の雑木林を抜ける林道を歩いていると、オオバクロモジの葉の上に見慣れないアブを見つけました。 
後で調べてみると、オオナガハナアブ♀(Spilomyia gigantea)という希少種でした。 
都道府県によってはレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されているのですが、ここ山形県では特に指定されていませんでした。 

コガタスズメバチVespa analis insularis)のワーカー♀と瓜二つで、驚くほど見事なベイツ型擬態です。 
ただしオオナガハナアブの複眼は頭部と同じくオレンジ色で、この点は改善の余地がありそうです。 
ちなみに、コガタスズメバチの複眼は茶色です。
左右の前脚を揃えて拝むように擦り合わせ、身繕いしていました。 
接写するために私がレンズをそっと近づけると、オオナガハナアブ♀は警戒したのか左右の前脚を同時に上げて万歳しました。 
スズメバチの長い触角を模した行動なのでしょうか?
しかしスズメバチは触角の先を下に向けていることが多い気がします。(下の写真を参照) 
腹部をピクピクと前方に軽く屈曲させているのは、スズメバチ♀が毒針で刺す行動を真似て威嚇しているのかもしれません。(行動擬態) 
もしオオナガハナアブ♀を生け捕りにしたら、腹端で私の指を刺す真似をするかどうか、確かめてみたいものです。 



擬態のブラフが通用しないと悟ると、オオナガハナアブ♀はブーン♪と蜂のような羽音を立てて、急に左へ飛び去りました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
最後に擬態者(オオナガハナアブ♀)とモデル(コガタスズメバチ♀)の比較写真をスライドショーで示します。 


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比較として、擬態のモデルと思われるコガタスズメバチ♀の写真を載せておきます。
(全て私が過去に撮った写真で、スライドショーの素材にしました。)

2024/01/15

ツツジの花蜜を吸うサカハチクロナミシャク(蛾)

 

2023年5月下旬・午前12:55頃・くもり 

山麓の駐車場に咲いたツツジの植え込みで見慣れない白黒模様の蛾が訪花していました。 
一瞬ダイミョウセセリかと思いきや、よく見ると違います。 
後で調べると、サカハチクロナミシャク本州以南亜種Rheumaptera hecate hecate)という昼行性の蛾でした。 
和名はサカハチチョウと似たネーミングですが、漢字の八の字を上下逆さまにしたような白い斑紋が黒地の翅表に描かれていることにちなんでいるのでしょう。 

ツツジの赤紫色の花筒に正当訪花で頭部を突っ込んで、がっつくように吸蜜しています。 
正面に回り込んで撮影したいところですが、こういうとき私が無理して動くと虫は警戒して逃げてしまうので、じっと我慢して撮り続けます。 

ツツジの花から勢い良く飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:33〜1:03) 
隣の花に歩いて移動するかと思いきや、予想が外れました。 

サカハチクロナミシャクは少し飛んでツツジの葉の表側に止まり直しました。 
初めは翅を半開きで開閉していましたが、全開した状態で落ち着きました。 
風が吹いたら再び翅を開閉するようになりました。 

次にツツジの葉から飛び立つシーンをハイスピード動画でも撮ろうとしたのですけど、なかなか飛んでくれません。 
仕方なく帽子を投げつけたら、狙いどころが悪くて失敗しました。 

調べてみると、サカハチクロナミシャクの幼虫はツツジ科が食樹とのことで、ツツジの生垣に来ていたことに納得しました。 
この種類の蛾は初見ですし、性別の見分け方を知りません。 
吸蜜後もツツジの葉に産卵しませんでした。 
交尾相手の♀を待ち伏せしている♂なのかな? 

「Digital Moths of Japan」サイトでサカハチクロナミシャクについて調べると、
昼飛性で, 晴天の目中によく花に飛来するし, 湿地に群をなして止まっていることがある. 
・幼虫はレンゲツツジ,ホツツジ,ウラジロヨウラクなどツツジ科やシラカンバの葉をつづって中にひそむ.
次は幼虫を探してみるのも面白そうです。


【追記】
サカハチクロナミシャクについてネット上で調べ物をしていたら、面白いブログを見つけました。
サカハチクロナミシャクを巡る3種の鱗翅目に関する考察」by かんきちのフィールドレポート
シラフシロオビナミシャク、サカハチクロナミシャク、ダイミョウセセリ間3種の間にベイツ型擬態系が形成されていることを提唱する。

ツツジ科は有毒植物が多いので、それを食べて育つサカハチクロナミシャクの幼虫および成虫は毒成分を体内に溜め込んでいると予想されます。 

したがって、成虫の白黒斑紋が似ている鱗翅目成虫はチョウ・ガによらずサカハチクロナミシャクにベーツ擬態しているのではないか?という仮説です。

こういう考察や予想は私も大好きです。

以下に私の見解を示しますが、この仮説には懐疑的です。

見た目の類似性だけで言うと、サカハチチョウ夏型も含まれませんかね?(ちょっと赤色の斑点がありますけど)

フィールドでの個人的な印象では、このグループで無毒のダイミョウセセリやサカハチチョウが一番多い普通種で、他の種類(シラフシロオビナミシャクや有毒のサカハチクロナミシャク)は少ないです。※

※ もちろん定量的にきっちり調査した訳ではありませんし、私の探し方が下手なだけかもしれません。

これでは鳥などの捕食者は味見して痛い目にあう学習の機会が確率的に(ほとんど)なくてベーツ擬態が成立しないのではないでしょうか?

つまり、鳥がミミック種(無毒)を忌避しているのであれば、個体数がミミック種(無毒)<<モデル種(有毒)という状態で均衡しているはずです。

とりあえず実際に鳥に飼育下で給餌してみて、有毒種のサカハチクロナミシャクを忌避するかどうか、確かめてみたくなります。

サカハチクロナミシャクが本当に有毒で不味いのであれば、もっと派手な警告色を身に纏うように進化しなかったのは不思議です。

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