2023年7月中旬・午後12:20頃・くもり
里山の細い山道(ほぼ廃道状態)に沿って咲いたトリアシショウマの群落でスズメバチにそっくりなアブが訪花していました。
後で調べてみると、スズキナガハナアブ♀(Spilomyia suzukii)でした。
【参考】:「ハナアブの世界」サイトにスズキナガハナアブの標本写真が掲載されています。
半開きの翅をリズミカルに開閉しながら口吻を伸縮させて花粉と花蜜を舐めています。
食事の合間に左右の前脚で頭部を擦ったり口吻を挟み込んだりして、付着した花粉を拭い取りました。
本種の訪花シーンは初見です。
同一個体を追いかけて撮影しました。
森の中でヒグラシ♂(Tanna japonensis)が寂しげに鳴いています♪
冒頭のシーンではヒメトラハナムグリ(Lasiotrichius succinctus)も同じトリアシショウマの花穂に来ていましたが、互いに無関心でした。
関連記事(1年前の撮影)▶ トリアシショウマの花から花へ飛び回るヒメトラハナムグリ
スズキナガハナアブはベイツ型擬態の好例ですけど、モデルとなった蜂が何なのか、よく分かりません。
キアシナガバチ(Polistes rothneyi)ですかね?
特定の種類のスズメバチやアシナガバチではないかもしれません。
蜂好きが見ると不完全な擬態で、粗が目立ってしまいます。
まず腰が太いので「毒針に刺されそうで怖い!」とは思いません。
本当に刺す蜂(有剣類)は、腰が細いのが特徴です。
私の知る限り、スズメバチ類はトリアシショウマの花で吸蜜しませんから、その点でも違和感を覚えました。
しかし捕食者に恐怖で狩りを躊躇させるには充分似ているのでしょう。
スズキナガハナアブは「人の手があまり入らない、原生的な自然環境を必要とする種」とのことで、確かに今回の現場は原生林というほどではありませんが、整備されずに放置された里山でした。
多数の倒木で塞がれた廃道には雑草や灌木が生い茂っていました。
山の管理者が林道や登山道をきれいに整備した途端に周辺の生物多様性が貧困になる(希少種は居なくなり、ありふれた普通種しか見られなくなる)という現象は私も実感しています。
林業の観点からは山林を整備した方が良いに決まっているので、自然破壊と一概には決めつけられません。
間伐して定期的に下草を刈るなどの整備を施して林縁的な里山環境が保全されている方が生物多様性は高まる、というのが定説ですけど、希少種の昆虫に関しては優しくないのでしょう。
スズキナガハナアブの幼虫は何を食べて育つのか、生態が解明されているのでしょうか?
生息環境が原生林に限られるということは、おそらくスズメバチの巣などに寄生するのではないか?(何かしらの寄生種だろう)と私はずばり予想します。
寄主の巣に産卵する際に擬態が役立っているのではないか?と先走った妄想をしています。
関連記事(9、12年前の撮影)▶
0 件のコメント:
コメントを投稿