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2025/01/16

スギ林縁で追いかけっこ、横枝に飛びつきブランコ遊び、格闘を繰り返してはしゃぎ回るニホンザルの群れ

 

2023年12月中旬・午後15:30頃・くもり 

夕方の山麓を遊動するニホンザルMacaca fuscata fuscata)を追跡したら、スギの植林地まで来ました。 
おそらく猿たちは、ここを今晩眠るねぐらとするのでしょう。 
ところが、若いニホンザルたちはまだ遊び足りないようです。 
薄暗くなってきたスギ林縁ではしゃぎ回っています。 

林縁に立ち並ぶスギの横枝に掴まった子猿が、しなって揺れる枝の感覚を楽しんでいます。 
別の若い個体がキキキッ♪とかカカカッ♪などと鳴きながら激しく走り回り、追いかけっこが始まりました。 
せっかく山から降りてきて塒入りしたのに、塒のスギ林を再び離れ、急斜面の土手を登り返しています。 

追いかけられて逃げる個体が急斜面を林縁まで駆け下りると、スギの横枝に飛びつき、追手をかわしました(一時避難)。 
猿の体重でしなる枝を利用して、ターザンごっこのようなブランコ遊びをしてから地上に降りました。 
それを見た追手も同様にブランコ遊びをしました。 

土手に座って仲間が遊ぶ様子を見物している個体もいます。 
途中から別個体も走ってきて、ブランコ遊びに合流しました。 
追いかけっこしながらスギ林内に駆け込んでも、また走って土手まで戻ります。 
若いニホンザルたちは、スギ林縁の横枝を使ったブランコ遊びのスリルが大好きなようで、何度も飽きずに繰り返しています。 
土手のあちこちで追いかけっこが繰り広げられていて、どこを撮ったらよいのか目移りしてしまいます。 

いつもとは逆に、猿がスギ林縁から土手を少し駆け上がり、頭上のスギ横枝に飛びついてブランコ遊びをすることもありました。 (@2:00〜、@4:22〜)
このパターン(三角跳び?)は初めて見たかもしれません。 

土手からスギの枝葉に飛びつく際に、枝の選択や目測を誤ると、しなる枝とともに猿は地面に落ちて引きずられてしまいます。 (@3:25〜)
幸い怪我はなかったようですが、上手く遊ぶには反復学習が必要みたいです。 
スギの枝を掴み損ねた個体は、ブランコ遊びが上手くいかない苛立ちからか、腹立ち紛れにスギの枝葉に噛み付きました。 (@2:05〜)

土手を登る途中で立ち止まり、左足の裏についたゴミを手で払う個体がいました。 (@5:28〜)
スギの落ち葉を踏んでしまい、足裏に刺さったのかな? 
それを見ていた別個体が挑発するように、土手からスギ枝葉に飛びついて、相手の目の前でブランコ遊びを始めました。 
すぐに軽い取っ組み合いになり、2頭は暗いスギ林内へ走り去りました。 

逃げる相手に追いついて対峙しても、深刻な喧嘩にはならず、軽い小競り合いをするだけでした。 
(立ち止まって追手を待ち構えることもあります。)
腕を振ったり猫パンチをしたりして、相手を追い払いました。 
遊びの一環で、ふざけて軽く格闘しているだけのようです。 
格闘遊びの際に鳴き声はほとんど発してませんでした。

一連の遊びの行動は以前にも同じ地点で何回か観察しています。 
季節も時間帯も違いますが、おそらく同じ群れに代々伝わる遊びなのでしょう。 
猿のブランコ遊びを土手の上から見下ろすのではなく、土手の下から改めて撮影したかったので、今回ようやく目標を達成することができました。 

ニホンザルたちが大袈裟にはしゃぎ回ってスギの横枝を繰り返し揺らしてるのは、もしかすると、近くでしつこく撮影を続ける私に対する威嚇誇示(ディスプレイ)の意味合いもあったりするのでしょうか? 
なんとなく、私の目を意識して、私に見せつけているような気もしました。
塒のスギ林から私に早く立ち去って欲しいのかもしれません
ニホンザルの威嚇誇示と言えば、木揺すり(枝揺すり)が有名です。 
ヒトが近くに居るときしか、この飛びつきブランコ遊びをやらないとしたら、それはそれで面白いですね。
無人カメラを設置して、猿の行動を監視してみたいものです。

12月はニホンザルの交尾期なのに、今回はしゃぎ回っていたのは発情していない若い個体ばかりでした。 
顔や尻が真っ赤になっていないことから分かります。 
つまり、追いかけっこや小競り合いに見えたのも、交尾相手を巡るシリアスな喧嘩ではありません。 
一方、発情した成獣たちは求愛や交尾行動で忙しくて、遊ぶ暇もないのでしょう。 

※ 猿の鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


余談ですが、動画の冒頭で聞こえる謎の鳴き声が気になります(@000〜0:50) 。
今まで聞いたことのない不思議な鳴き声を文字に表す(聞きなし)のは難しいのですけど、「Wrrrrrrrrreeee!」とか「Krrrrrrrrrrrreeeee!」「Grrrrrrrrrrrreeeee!」のように聞こえました。
途中で鈴を転がすような巻舌のような不思議な鳴き声です。 
後半は尻上がりに音程が上がりました。 

私の頭上のどこか樹上でニホンザルが鳴いているようですが、その姿を見つけられませんでした。(映像公開予定?)
眼の前で他のニホンザル個体による面白い行動が次々と展開されるので、辺りを見回して鳴き声の主を探すのも我慢して動画撮影を続けました。
後回しにするつもりでいたら、謎の鳴き声は止んでしまいました。

この鳴き声は、ニホンザルの繁殖期と何か関係があるのでしょうか? 
それとも、迷子になった子猿が不安になって母親を呼んでいるのかな? 
謎の鳴き声の意味をあれこれ調べてみたのですが、よく分かりません。
ここから先の解釈は、まったくの的外れかもしれませんが、個人的な備忘録として残しておきます。 

小田亮『サルのことば: 比較行動学からみた言語の進化 (生態学ライブラリー)』を読み返してみると、おそらく私が聞いた鳴き声は、ニホンザル♀による発情音、その中でもトーナルコールではないかと予想しました。 
私は目の前に居た別個体の動画撮影に集中していたために、樹上で鳴き声を発した個体を見ていませんが、おそらく意中の♂と接触する前の段階だったのでしょう。
 ニホンザルにとって秋は恋の季節である。1年のうち秋から冬にかけてしか発情しないニホンザルの♀は、この時期には顔を真っ赤にし、「クゥーァー」あるいは「ギャッギャッギャッ」という音声(発情音)をひっきりなしにあげている。(p89より引用)
発情している♀は顔を真っ赤にし、しきりに発情音をあげている。やがて♂が1頭近づいてくる、あるいは♀の方から接近していくのだが、そこですんなりと交尾に至るわけではない。交尾期以外は、オトナの♂と♀はめったに接近することはない。♀にとって、大きく力の強い♂は恐ろしい存在なのだ。しかしながら、性的欲求は♂に近づくことを求めている。(中略)馬乗りと馬乗りのあいだにも、ときには♀が逃げたり、グルーミングをしたりして、かなり時間が空くことがある。そのあいだ、♀は激しく発情音を発するのである。 
 ♀の発情音は、その音響的特徴によって大きくふたつに分けられる。耳で聞いただけでもだいたいの区別はつくのだが、周波数分析をしてみた(中略)。ひとつは、伊谷によって、<uyaa><ugyaa>などと記載されている、比較的長くて雑音の少ない音声であり、もうひとつは、<ka・ka・ka・ka...>と記載されている、短くて雑音成分の多い音声である。前者をトーナルコール、後者をアトーナルコールと呼ぶことにした。(中略)♂との接触前にはトーナルコールが期待値より多く発せられているのに対し、♂との接触後にはアトーナルコールの方が期待値より多くなっていた。どうやら交尾相手の♂との距離によって違う種類の発情音が使われているようだ。(p94〜95より引用)
ニホンザルが性的に活発なのは早朝だ。(p97より引用) 
・どうやら、♀は発情音(アトーナル:しぐま註)を発することで他個体の注意をひき、妨害行動を誘発することで♂をふるいにかけていると考えられる。(p98より引用) 
性的二型が大きな種において発情音が発達しているという結果は、まさに♀の発情音が♂間競争を煽っているということを裏付けているものである。(p103より引用)
 

1999年に出版されたこの本の内容は少し古いかもしれないので、AI Perplexityで質問した回答によれば、
ニホンザル♀のトーナルな交尾音は「ウァー」という尻上がりの声でビブレーション(振動)がかかっている。比較的明確な音程や調子を持つ音声です。 オスとの距離が遠いときは、トーナルな交尾音が多く使われる。

問題は、ニホンザル研究者が♀による発情音(トーナルコール)と呼んでいる鳴き声を実際に試聴して聴き比べたいのに、いくらネット検索しても見つからないことです。 
YouTubeや「動物行動の映像データベース」などに鳴いている様子の動画をニホンザル専門家がアップロードしてもらえると助かるのですが…。 
私の検索の仕方が下手なだけかもしれないので、音声ファイルまたは動画の在処をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非教えてください。 

仕方がないので、この動画に含まれる謎の鳴き声を後で声紋解析してみます。
上記書籍の図4-1(p96)に掲載されたアトーナルコールおよびトーナルコールのサウンドスペクトログラムと比べてみれば、分かるはずです。

もしも謎の鳴き声に関する私の解釈が正しければ、♀の発情音で誘引された他の♂たちが交尾の邪魔をして、それによって一連の騒動(はしゃぎ回りに見えた)が巻き起こったのかもしれません。
「カカカ…♪」という鳴き声は、威嚇や喧嘩の際に発するのかと私は今まで思っていました。
しかし、はしゃぎ回っていた個体は未発情の若い個体ばかりだったこと、交尾期前の夏にも同じブランコ遊びが見られたことが説明できなくなります。

野生ニホンザルの鳴き声が伴う行動を動画でしっかり記録して正しく解釈するのは、なかなか大変です。
理想的には、バウリンガル(犬用)やミャウリンガル(猫用)のように、ニホンザルのさまざまな鳴き声の意味や感情を音声翻訳してくれる機器や携帯電話アプリが登場することを期待します。

2024/12/20

雪国の落葉樹林で採餌するエナガの群れ(冬の野鳥)

 



2023年12月下旬・午後13:15頃・晴れ 

平地の落葉した二次林でエナガAegithalos caudatus)の群れと遭遇しました。 
私がじっとしていると、ジュリリ、ジュリリ♪と鳴き交わしながら私の周囲に近寄ってきました。 
エナガはヒトをあまり恐れず好奇心旺盛な印象があります。
どの個体を撮るべきか目移りしてしまいました。 

落葉灌木に登って枝先や枯れ蔓をあちこちつついて虫を食べているようです。 
ついに地上に下りてきた個体は、枯れた藪を覗いて餌を探し、雪面の落枝をついばみました。 
実は、少数のシジュウカラと混群を(一時的に?)形成して一緒に採餌行動していました。 

2024/12/16

雪国の森で根回り穴を覗き込んで虫を探すシジュウカラ♀(冬の野鳥)探餌行動

 

2023年12月下旬・午後13:20頃・晴れ 

平地の落葉した二次林で小鳥の混群と遭遇しました。 
初めは樹上で採食していたのですが、私がじっとしていたら次第に警戒を解いてくれたのか、地上(雪面)でも採食するようになりました。 
1羽のシジュウカラ♀(Parus minor minor)に注目すると、灌木の根本の周りで雪が丸く溶けた穴(根回り穴)を次々と覗き込んでいました。 
根回り穴の内部は周囲よりも気温が少し高くて暖かく、寒風もあまり吹き込まないので、越冬する虫が集まっているのかもしれません。 
それを知っているシジュウカラが、獲物となる虫を探索しているのでしょう。 
短い登場シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
胸にある黒いネクタイのような斑紋が細いので、♀と判明。

実は、エナガの群れと少数のシジュウカラが混群を形成しているようでした。 
私はどうしても寄りの絵で各個体の行動を録画したくなるので、引きの絵(広角)で混群全体の動向を記録できないことが多いのです。


【追記】
「冬に雪が積もった森で木の根元の周りだけ雪が丸く溶けた穴」を指す用語として、これまで私は「ツリーホール」を使ってきました。
AIのGeminiに相談すると、ツリーホールは樹洞と誤解されやすいので、「根開き」や「根回り穴」と呼ぶのが一般的と教えてもらいました。

根回り穴の中に越冬昆虫やクモが多く潜んでいるのかどうか、実際に調べてみるのも面白そうです。


2024/12/12

落葉したウルシの樹上で熟した果実を食べるエナガ(冬の野鳥)

 

2023年12月下旬・午後13:20頃・晴れ 

雪が積もった平地の二次林でエナガAegithalos caudatus)の群れと遭遇しました。 
完全に落葉したウルシの樹上で熟した果実(核果)を次々に食べています。 

高木の下から見上げる撮影アングルなので、エナガのお尻しか見えませんが、逆にエナガは私に気づいておらず、無警戒で採食を続けています。 
ジュリリ、ジュリリ…♪というエナガの鳴き声が聞こえますが、食事しながら鳴いてるのか、群れの別個体が鳴いているのか不明です。 

ウルシの木に巻き付いて育ったツルウメモドキの赤い実も手前にあるのに、エナガは全く食べようとしません。 
ウルシの実の方が美味しい(好み)のでしょう。 
エナガを始めとする鳥がウルシの実を丸ごと食べて遠くに糞をすることで、ウルシの種子散布に貢献していることになります。 
鳥がウルシの実を食べてもかぶれないのは何故なのか、何か対策(適応進化)しているのか、不思議です。


さて、このウルシ属の樹種を正確に見分けられるでしょうか? 
山形県にハゼノキやヤマハゼは自生していないはずなので、除外します。 
夏に葉や花を見ればたちどころに判明するのですが、落葉した冬だと一気に難しくなります。 
樹高は目測で約10m近くありました。 
実の表面が無毛で白い粉を吹いていないことから、ヤマウルシ ではなくウルシだろうと暫定的に判断しました。 
ウルシだとすれば、昔に誰かが漆の樹液を採取するために植栽したのかもしれません。
次にヌルデの可能性を排除するのが、また難題です。 
果柄が比較的長いので、やはりウルシでしょうか?
冬芽や葉痕で樹種を見分ける方法は全くの勉強不足で、写真に撮っていません。
ウルシ候補の木に登って、樹上にわずかに残った枯れ葉を調べに行こうか迷ったのですが、落葉後の冬でも不用意に木登りしたらかぶれる可能性が高いらしく、諦めました。 
葉が出る季節まで待って定点観察し、もしヌルデだったら訂正することにします。 

参考:「葉と果実によるウルシの仲間の見分け方」@山渓ハンディ図鑑『樹に咲く花:離弁花2』P288




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2024/12/01

落葉後の木を激しく揺すって威嚇誇示♪するニホンザル♂(木揺すり行動)

 

2023年12月中旬・午後15:05頃・くもり 

山麓を流れる水路沿いに遊動してきた2頭のニホンザルMacaca fuscata fuscata)のうち、先頭個体(発情した♂成獣)に注目して下さい。 
2頭は谷を渡る水路橋のたもとまでやって来ました。 
後続個体については別の記事しました。

先行♂個体は橋の下の谷を覗き込んで、群れの仲間の動向を気にしています。 
特に、この時期はニホンザルの交尾期ですから、♀成獣を探しているのかもしれません。 

先行する♂が谷の対岸から水路橋の手摺を伝い歩きでこちらにどんどん渡って来ます。 
このとき私は谷の此岸で突っ立ったまま撮影に集中していました。 
遊動中のニホンザルにしてみれば、私はまるで「この橋渡るべからず」と意地悪に通せんぼしているように見えたはずです。 
さあ、近づいてくるニホンザル♂はどうするでしょうか? 
「猿に道を譲ってあげたら良いのに」と言われそうですが、遊動する野生ニホンザルの群れを見つけた途端に私はその場にフリーズ(静止)し、心を無にして(気配を消して)撮影観察を始めたのです。 
今までの経験上、私が少しでも動くとニホンザルはてきめんに警戒して逃げ出してしまうはずです。 

先行する個体は、橋の手摺から横の落葉高木(樹種不明)にひょいと跳び移りました。 
このとき股間に紅潮した立派な睾丸が見えたことから、発情♂と判明。 
樹上で落葉後の枝を激しく揺すりながら大声で吠えました。 
猿が乗って激しく揺すっている枝がボキッと折れたら谷底に落ちるのではないかと心配になります。 
明らかに私の方を向きながら木揺すりしたことから、進路をふさぐ私に退いて欲しくて、威嚇してきたようです。 
橋の下の谷に散開して採食遊動している群れの仲間(特に発情♀)に向けての存在アピールも兼ねているのかもしれません。(ヒトに立ち向かう俺って勇敢だろ? 見て見て!) 
しかし木揺すり行動は過去にも見ていて想定の範囲内だったので、私は何も反応しませんでした。 
私はニホンザルとは決して目線を直接合わせず、少し俯いてカメラのバックモニターをひたすら注視していました。
私を追い払うどころか無視されたので、発情♂の威嚇誇示はわずか7秒間で終わりました。 

その木揺すりを見ていた群れの他のニホンザルたちの反応が気になります。
しかし、私は発情♂にズームインしてその行動を撮影するのに集中していたので、遠くに居る他個体の反応を同時に知ることが出来ませんでした。
後続の若い♀(跛行個体)は、木揺すりに驚いたり怯えたり感心するなどの反応を特に何も示しませんでした。

発情♂は樹上から再び水路橋の手摺に戻ろうとジャンプしたものの、着地に失敗してあやうく落ちかけました。(猿も木から落ちる?) 
手摺に無事登り直すと、伝い歩きで更に近づいて来ます。 
水路橋を渡り終えそうになると、発情♂はまたもや手摺から横の落葉性高木へと身軽に飛び移りました。 
そのまま木を下って地上に戻り、邪魔な私を無事に迂回できました。 

1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:46〜) 
この♂個体は右耳の耳介が無いことに気づきました。 
過去の喧嘩で食いちぎられたのかな? 

木揺すり威嚇誇示するニホンザルはいつも♂なのか?(男性ホルモンが関わる攻撃性なのか?)という疑問がわきました。
文献検索すると岡山県の餌付け群で長期観察した研究成果の学会発表がヒットしたので、ありがたく抄録を読んでみました。
中道正之; 山田一憲. ニホンザルの木ゆすり行動. In: 霊長類研究 Supplement 第 39 回日本霊長類学会大会. 日本霊長類学会, 2023. p. 34-34. 
♂の方が頻度が高いものの、♀も木揺すり行動をすることはあるそうです。

中心部オスは、交尾期だけでなく、非交尾期も木ゆすりを行ったが、音声を伴う木ゆすりは交尾期に多く、非交尾期では少なかった。他方、周辺部オスや集団外オスの木ゆすりは交尾期に集中し、しかも、音声を伴った木ゆすりの割合が中心部オスよりも有意に高かった。(中略)尚、28歳の高齢αオスは木ゆすりを全く行わず、目立つ攻撃行動もわずかであった。メスの木ゆすりのほとんどは、αメスとその娘たちによって、非交尾期に行われ、音声を伴うことはほとんどなかった。以上の結果から、目立つ攻撃行動をメスに行うことが困難であった周辺部オス、集団外オスは、音声を伴う木ゆすりを行うことで、メスに自身の存在を知らせ、引き付ける木ゆすりの効果(広告効果)をより高めていたと思われる。他方、中心部オスはメスに対する目立つ攻撃行動が可能だったので、音声を伴う木ゆすりの割合が低くなったと思われる。

下線部を元に素人が勝手に解釈すると、今回、交尾期に鳴きながら木揺すりした発情♂は、群れ内の順位が高くない個体(周辺部♂)で♀にアピールしていた、という可能性もありそうです。
しかし今回は明らかに対ヒト(観察者)の木揺すり威嚇行動に見えたので、ニホンザル同士のディスプレイに注目した研究結果を当てはめるのは不適切かもしれません。
ポイントとなるのは、猿は近くで観察する私のことなど実は眼中になくて木揺すり行動したのか?、という点です。
当地のニホンザルは餌付けしなくても、ときどき遭遇する私に少しずつ慣れてくれたので、私を無視して自由に振る舞ってくれたのなら観察しやすくて助かります。

この後も同じ群れで遊動するニホンザルが次々に水路橋を渡ってきたのですが(動画公開予定)、木揺すり威嚇した個体は他にいませんでした。
だとすれば、唯一木揺すりした♂個体はいわゆる「ボス猿」的なα♂だったのかもしれない、と考えたくなります。

2024/11/13

雪山のスギ林で餌を探す年末のカケス【野鳥:トレイルカメラ】

 

2023年12月下旬 

シーン0:12/25・午後12:18・晴れ(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。 
根雪が積もった里山のスギ植林地でニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr1をトレイルカメラで見張っています。 
画面の手前から奥に向かって斜面を見上げるアングルです。 
林床の雪面にスギの落葉落枝が散乱しています。 
画角の右外には渓谷(山肌を深く侵食した沢)があります。 

日中にカケスGarrulus glandarius)が来るようになりました。 
この地点でカケスが写ったのは初めてです。 


シーン1:12/28・午前10:47(@0:04〜) 
左に立つスギ大木の枝葉に1羽の鳥が止まっていました。 
横枝から横枝へ飛び移り、スギ幹の背後に隠れました。 
逆光で同定するのが難しかったのですが、ジェー♪という嗄れた鳴き声でカケスと分かりました。 
しばらくすると、スギに巻き付いた太いフジ蔓にカケスがぴょんと飛び移りました。 
ようやく右の雪面に飛び降りると、雪面に散乱したスギの落ち葉を調べたり凍った雪面を啄んだりしています。 
越冬中の虫が隠れていないか、獲物を探しているのかもしれません。 

1.5倍に拡大した上でリプレイ(@1:37〜)。 


シーン2:12/28・午前10:49(@3:08〜) 
20秒後にトレイルカメラが再び起動したときにも、カケスが居残っていました。 
スギの横枝にまた止まっています。
カケスがスギの球果や冬芽を食べるとは思えないので、越冬中の虫を探しているようです。
秋の間に貯食しておいたドングリを取りに来た可能性も考えられます。 
いずれにせよ、説得力のある証拠映像は撮れていません。 
横のフジ蔓に止まってから、上の横枝に向かって飛び上がりました。 

1.5倍に拡大した上でリプレイ(@3:39〜)。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ カケスの鳴き声が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。


2024/11/05

夕方に塒を目指して飛び去るカラスの大群(冬の野鳥)

 

2023年12月中旬・午後16:15頃・くもり(日の入り時刻は午後16:24) 

日没直前の夕方に、市街地の上空を夥しい数のカラスが鳴きながら一斉に飛んでいました。 
集団塒(または就塒前集合場所)を目指して飛んでいるのでしょう。 
遠くてカラスの種類を見分けられませんでした。 
かすかに聞こえる鳴き声は、ハシブトガラスCorvus macrorhynchos)っぽいです。 
2種類のカラスの混群かもしれません。
カラスの大群を追いかけて集団ねぐらの場所を突き止めたかったのですが、この日は用事があって無理でした。 

これほどの大群を見たのは久しぶりで、壮観でした。 
最近ではカラスのねぐらとなる林が次々に伐採されたり、カラスが追い払われたりして、群れの規模がどんどん小さくなっている気がしています。 
群れで塒入りしたカラスの鳴き声がうるさかったり、糞害に悩まされたりして、近隣住民から苦情が出るのでしょう。 


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2024/10/26

越冬用巣穴に籠城して巣口をガードするニホンアナグマと巣外をうろつく別個体の小競り合い【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年12月中旬・午前2:57〜3:17 

ニホンアナグマMeles anakuma)の越冬用巣穴Lから深夜に1頭の個体aが顔を外に出したり引っ込めたりして周囲を警戒しています。 
激しい唸り声がしたので何事かと思ったら、左から別個体bがやって来ました。 
巣口Lのアクセストレンチで2頭が対峙しても、激しい喧嘩は勃発しませんでした。 
その後もアナグマbは緩慢な動きで巣口Lの周囲をうろついています。 

アナグマbが巣内に入れて欲しいのに、アナグマaが門衛のように巣口Lをがっちりガードして拒んでいるようにも見えてきます。 
アナグマbは越冬できる巣穴を探し歩いている余所者の個体なのでしょうか? 
巣外をうろつく個体bはα♀(右目<左目)のような気もするのですけど、はっきりしません。 
α♀(右目<左目)なら、力関係で一番上のはずだったのに、まさか縄張り争いに負けて越冬用巣穴から締め出されたのかな?

アナグマbが一旦セットから離れると、アナグマaが巣口Lから外に出て見送り、辺りを警戒しています。 
侵入者bを激しく追いかけてセット(越冬用営巣地)から真剣に追い払ったようには見えません。 
しばらくすると、アナグマbがまたこっそり戻ってきました。 
門衛aと巣口Lで並んでも喧嘩にはなりませんでした。 

アナグマbが立ち去る前に獣道で座り込んだのは、スクワットマーキング(匂い付け)の意味もあったのかもしれません。 
獣道を右上奥に立ち去ったのかと思いきや、獣道の途中で未練がましく佇んで侵入のチャンスを伺っているようです。 
その気配を感じているようで、門衛aは警戒を緩めずに、巣口Lをしっかりガードしています。 

戻ってきた侵入者bが再びセットを右から左に横切り、巣口Rに近づくと、またもや激しい唸り声が聞こえました。(@4:36〜) 
唸り声と言うかフガフガ♪というような鳴き声で、繁殖期の求愛声(ジェジェジェビーム♪)と似ている気もします。 
それを聞いたアナグマaは怖がって(警戒して?)巣口Lの奥に引っ込みました。 
おそらく、隣の巣穴Rの主が威嚇して侵入者bを追い払ったのでしょう。

侵入者bがセットから離れると、門衛aは巣口Lの外に出てきて周囲を警戒しますが、決して遠くまでは行きません。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
素人目には、巣穴に入りたい個体と、入れたくない個体の静かな攻防戦に見えました。 
これがもし早春なら♂が♀の巣穴に求愛(夜這い)に来て拒まれたのだろうと解釈するのですが、撮影時期が初冬なので、いくらなんでも早すぎます。
越冬用の巣穴を巡ってアナグマ同士で争奪戦があるのでしょうか? 
もしかすると越冬用巣穴には定員があって、家族全員を収容できないのかもしれません。 
それならアナグマは穴掘りが得意ですから、越冬に備えて秋の間に巣穴を広く深く掘り広げる時間はいくらでもあったはずです。 
もしかすると、この越冬用巣穴は男子禁制なのかもしれません。

秋まで頻繁に見られた幼獣同士の格闘遊びの延長、あるいは誤認によるニアミス威嚇♪だった可能性もあって、よく分かりません。 
アナグマの個体識別をしっかりしないことには、解釈が難しいのです。 

これは何か重要な事件を記録した動画のような気がするのですが、別アングルで設置したトレイルカメラが不調で(電池切れ?)何も写っていないのは残念でした。 
2台の監視カメラで動画を撮れていれば、互いに補完し合って事件の全貌が掴めたはずです。 



2024/10/22

帆翔するトビと追い回すカラスとの激しい空中戦(野鳥)

 

2023年10月上旬・午後16:30頃・くもり・日の入り時刻は午後17:16 

広大な田園地帯でトビMilvus migrans)が刈田から飛び立ちました。 
夕方は上昇気流が弱いようで、帆翔が安定せず、高度がなかなか上がりません。 
その様子を動画に撮り始めたら、カラス(種名不詳)の群れが嗄れ声を上げながら飛来しました。 
集団ねぐらに向かって飛んで行く途中のようです。 
カラスの群れはトビの下を通り過ぎたのですが、1羽のカラスがトビに対して単独でモビング(擬攻撃)を始めました。 
繁殖期ではないので、カラスの全個体がモビングに参加する訳ではなく、この辺りを縄張りとする個体だけが天敵の猛禽を追い払うようです。 

裏山の方へ飛んで逃げるトビをカラスが執拗に追い回しています。 
トビは右に左に旋回したり高度を上下に少し変えたりすることで、背後から迫るカラスの攻撃を上手くかわしています。 
カラスが一方的に攻撃するだけで、小回りの効かないトビは反撃しません。
そもそもトビは生きた獲物を狩る猛禽ではないのです。
逃げるトビの鳴き声は聞き取れませんでした。 
カラスはようやく諦めて飛び去りました。 
遠かったので、カラスの種類がハシボソガラスCorvus corone)かハシブトガラスCorvus macrorhynchos)か見分けが付きませんでした。 


※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

2024/10/15

初冬の水場に来たニホンイノシシの母子【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年12月中旬・午後19:50頃 

山中の湧き水が貯まった泉に、ある晩ニホンイノシシ♀(Sus scrofa leucomystax)がやって来ました。 
岸辺を歩きながら、落ち葉の匂いを嗅ぎ回っています。 
低音でフゴフゴ鳴いている♪のは、後から付いてくる1頭の幼獣に呼びかけているのでしょう。 
大きく育った幼獣の毛皮からはすでに縦縞模様が失われていて、「ウリ坊」とは呼べません。
イノシシ♀が入水したところで、トレイルカメラの電池切れで映像が打ち切られてしまいました。 
気温の下がる冬季は乾電池の電圧低下に悩まされます。
そんな寒くても水場に来る野生動物は逞しいですね。

イノシシの母子が向かった画面の左は行き止まりの崖(急斜面)なので、おそらく池で水浴(ヌタ打ち)したり水を飲んだりしに来たと思われますが、撮り損ねて残念無念。 


つづく→

2024/10/08

越冬用巣穴で小競り合いの後にスクワットマーキングするニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年12月上旬 

シーン0:12/4・午後12:59・くもり(@0:00〜) 
シーン0:12/4・午後13:45・晴れ(@0:04〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
平地の落葉した二次林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の越冬用営巣地(セット)を新旧2台旧機種のトレイルカメラで見張っています。 
画面の奥に見える常緑の低い茂みはヒメアオキの群落です。 


シーン1:12/7・午前2:03(@0:07〜) 
深夜に左からゆっくり登場したアナグマ♂aが巣口Lの手前でぼんやり佇んでいます。 
素人目には顔つきが♂に見える(鼻面が短い)のですけど、どうでしょうか? 
ようやく左に引き返したところで、奥のヒメアオキ群落の奥に侵入者(別個体♂b)の白く光る目が右に動いています。 
手前のミズキ灌木の陰でアナグマがガルルル…♪と鼻を鳴らすような唸り声を発しました。
(鳴き声の主が♂aとは限りません。) 

画面奥の常緑ヒメアオキの茂みの奥から右に回り込んで獣道を駆けてきたのは、アナグマ♂bでした。 
セットに接近してきた侵入者♂aを巣穴の主♀が追い払ったのだと思います。 
アナグマの♂が♀の巣穴に夜這い(求愛)をするには時期が早すぎます。 
初冬のこの時期は、越冬用の巣穴を奪い合う争いがあるのでしょうか? 
残念ながら、同じシーンを別アングルの監視カメラでは撮れていませんでした。 


シーン2:12/7・午前2:04(@0:59〜) 
セットに駆けつけたアナグマ♂bがそのまま左へ行く途中で、巣口LRの中間地点の地面にスクワットマーキングしました。 
匂い付けで縄張りを主張したことになります。 


シーン3:12/7・午前2:07(@1:13〜)
ところが、約2分半後に2頭のアナグマが前後して獣道を右上奥へノソノソ立ち去る姿が写っていました。 
この2頭は敵対関係ではないということは、当歳仔(とうさいご)の兄弟なのかな?と素人が勝手に想像しています。 
通りすがりにオニグルミ立木の横に2頭が続けてスクワットマーキングして行きました。 


シーン4:12/7・午前2:10(@1:28〜) 
約3分後にまた左からアナグマが登場しました。 
おそらく巣口Rから外に出てきて周囲の様子を窺っているのでしょう。 
この個体は顔つきが♀のように見えます。 
巣口Lで立ち止まり、立ったまま後足で痒い腹を掻きました。 
そのまま巣穴Lに入るのではないか?と予想したのですが、カメラの電池が消耗していててそこまで見届けられませんでした。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


最近も外出から戻った2頭のアナグマが巣口R付近で小競り合いしてから入巣Rする謎の行動が記録されていました。

夜の森で各々がうろついていて、たまたまセット付近でニアミス(鉢合わせ)したときに、視力が悪いアナグマはびっくりして喧嘩腰に誰何してしまうのかもしれません。(誤認闘争?) 


カキノキ樹上でホオジロ♂がさえずる早春の朝(野鳥)

 

2023年3月中旬・午前7:40頃・晴れ 

山間部の農村で庭に植栽されたカキノキの天辺に朝からスズメPasser montanus)とホオジロ♂(Emberiza cioide)が1羽ずつ止まっていました。 
初めはスズメの方がホオジロよりも高い樹冠に止まっています。 
ホオジロ♂が高音の美声で朝の囀りさえずりを始めました。 
スズメが片足を上げて痒い顔を掻いてから、チュチュン♪と鳴き返しました。 
しかし、そのスズメは止まり木から飛び去ってしまいました。 

お立ち台を争って奪い取った訳ではないのですが、残ったホオジロ♂はスズメが居なくなった梢の最上部に移動して、何度も縄張りを宣言しています。 
後半になると、ホオジロ♂は囀りのメロディ(節回し)が少し変えたようです。
遠くでカラスやカワラヒワも鳴いています。 

しばらくすると、ホオジロ♂は鳴き止んで羽繕い。(@4:15〜) 
すぐにまた囀りを再開しました。 




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2024/10/04

越冬用の巣穴入口からアクセストレンチを四方八方に掘りまくる晩秋のニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年11月下旬 

シーン0:11/23・午後12:14・晴れ・気温26℃(@0:00〜) 
明るい時間帯にたまたま撮れた現場の様子です。 
平地の落葉した二次林でニホンイタチMustela itatsi)の越冬用営巣地をトレイルカメラで見張っています。 


シーン1:11/27・午前1:13・気温0℃(@0:04〜) 
冷え込む深夜に巣穴Rから勢い良く外に出てきた個体aが巣口Rを見下ろして、巣内の個体bと対峙しています。 
アナグマaは巣口Rの縁を前脚で引っ掻いて掘り始めました。 
なぜかアクセストレンチを新しい方向に掘り始めたようです。 


シーン2:11/27・午前1:20・気温2℃(@1:04〜) 
独りで巣外に居るアナグマが、営巣地(セット)の広場で落ち葉の上に座り込みました。 
林縁でうつ伏せに寝そべると、前脚で地面を掻き始め、そのまま横臥姿勢になりました。 
観察歴の浅い私にはなんとも解釈に苦しむ行動なのですが、掘ったばかりのひんやりした土に触れると気持ち良いのかもしれません。 
しかし暑い夏ならともかく、寒い晩秋の深夜にやることではないと思うのですが…? 


シーン3:11/27・午前1:20・気温2℃(@1:32〜) 
ようやく横臥から起き上がると、新たなアクセストレンチを掘り始めました。 
掘り返したばかりの黒土の上に腹這いになりました。 


シーン4:11/27・午前1:26(@2:31〜) 
巣口Rから外に向かって、なだらかなスロープを作ろうとしています。 
作業の合間に身震いしました。 
座り込んでしばしの休息。 


シーン5:11/27・午前1:32(@3:18〜) 
左から急いで巣口Rに戻ってきたアナグマが短い鳴き声を発しました。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、ここだけ動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

巣穴Rに入りかけたものの、アクセストレンチをまた別方向に掘り始めました。 


シーン6:11/27・午前1:36・気温4℃(@4:18〜) 
アクセストレンチを掘り続ける個体と、それを巣R内から見守る個体(門衛?)が対照的です。 
アナグマの社会(家族群)では分業がしっかり別れているのでしょうか。 
穴掘りはヘルパー♂の担当なのかな? 
体型や顔つきは確かに♂っぽいのですが、越冬前で丸々と太っているために、分かりにくいです。 
巣内で見守る個体の顔つきは♀っぽいのですが、顔馴染みの母親♀(右目<左目)ではありません。(@4:26) 
穴掘り作業を途中で交代することはありませんでした。 


シーン7:11/28・午前7:28・気温3℃(@5:19〜)日の出時刻は午前6:29 
2日後の明るい朝にたまたま撮れたセット(営巣地)の様子を最後にお見せします。 
晩秋の林床は落ち葉に覆い尽くされているのですが、巣口Rの周囲だけが掘り返されて、黒土が露出しています。 


【考察】 
アナグマのアクセストレンチというのは本来、巣穴の奥から掘り出した土砂を外に捨てる際に自然に形成されるスロープや溝のことです。 
今回はトンネル(巣穴)を深く掘る土木工事はしないで、表土を耕すようにアクセストレンチの拡張整備だけに専念していました。 
巣口Rからアクセストレンチを放射状に(四方八方に)伸ばして掘りました。 

巣材(寝床)として使う落ち葉の搬入に続いて、これから深い根雪が積もる前の冬越し準備だと思うのですけど、一体どういう意味があるのか、私にはさっぱり分かりません。 
我々ヒトが野営(キャンプ)する際には、テントを張ってから四方に排水用の溝を掘るのが鉄則です。 
それに対して、アナグマのアクセストレンチが排水を考えて掘られているとは思えません。 
巣口付近が深いすり鉢状になると、大雨が降ったときや春の雪解けで巣内に浸水するのではないか?(まるで城の水攻め)と老婆心ながら心配になります。 
巣口付近を予め整地しておかないと、厳冬期の吹雪が吹き荒れる荒天時に変な吹き溜まりができてしまうのかもしれません。 

タヌキやテン、イタチなどの部外者がセットを訪問することがあまりにも多いので、アナグマが落ち着いて越冬できるように、巣口付近の表土を掘り返してマーキングの匂いを消していた、という可能性はどうでしょう?



2024/10/02

越冬用巣穴に入る前に取っ組み合いをする2頭のニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年11月下旬 

シーン0:11/23・午後12:14・気温26℃(@0:00〜) 
明るい時間帯に撮れた現場の状況です。 
平地で落葉した二次林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の越冬用営巣地(セット)をトレイルカメラで監視しています。 


シーン1:11/27・午前0:44・気温0℃(@0:04〜) 
深夜に2頭のアナグマが前後してセットに現れました。 
巣口Rの匂いを嗅いでいた先行個体が振り返ると、後続個体がにじり寄ってから飛びかかりました。 
越冬巣穴を巡る縄張り争いが勃発したのでしょうか? 
小声で唸りながら格闘しています。 
ところが、すぐに取っ組み合いを止めて2頭が相次いで巣穴Rに潜り込んだので、幼獣同士による遊びの兄弟喧嘩ではないかと思います。 
(夏から秋にかけて、アナグマ幼獣同士の格闘遊びを散々見てきました。)
それまで一緒に採食に出かけていた兄弟(姉妹?)がセットに戻ってきて、誰が先に入巣Rするか、という幼稚ないざこざがあったのかもしれません。



越冬に備えて脂肪を蓄えているために体型が変わってしまって分かりにくいのですが、素人目には2頭ともずんぐりむっくりとした♂のように見えます。(自信なし) 
顔馴染みがある母親♀(右目<左目)でないことは確かです。 


シーン2:11/27・午前1:36(@0:46〜) 
(シーン1との関連や繋がりはなくて、おまけのような付け足しです。) 
約1時間後に出巣R直後と思われるアナグマが左へ立ち去り、しばらくすると、別個体(♀?)が巣口Rに顔を出して外の様子を警戒しています。 

計何頭のアナグマがこの営巣地で越冬するのか知りたいのですが、やはり個体識別がしっかりできないことには話になりません。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


つづく→(今回のシーン1と2の間に起きた出来事)

2024/09/14

農道を走り飛んで逃げるハクセキレイの幼鳥たち(野鳥)

 

2023年9月下旬・午前11:45頃・くもり 

広大な田園地帯の農道を私が歩いていると、横の農業用水路内に潜んでいたハクセキレイMotacilla alba lugens)が慌てて飛び立ち、波状飛行で逃げて行きました。(映像なし) 
人懐こく(?)近くに留まって逃げない2個体にズームインすると、幼鳥でした。 
顔の白い部分が薄黄色で、嘴の根元が黄色っぽいのがハクセキレイ幼鳥の特徴です。 

不安そうに辺りを見回し、砂利道と横の原っぱを早足で行き来しています。 
最後は2羽で農道を助走してから、奥に飛び去りました。 
周囲の田んぼでは黄金色の稲穂が実っていました。

2024/09/04

晩秋の二次林で鳴くカケス【野鳥:トレイルカメラ】

 



2023年11月上旬・午後12:20・気温19℃ 

ニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する営巣地(セット)にカケスGarrulus glandarius)が現れました。 
 画面右下手前に生えた落葉性灌木(樹種不明)の枝に止まり、アナグマの巣穴Lを見下ろしていたカケスが、右の地面に飛び降りました。 
林床で採餌を始めたようです。
耳を澄ますとカケスの耳障りな鳴き声が聞こえますが、この個体が鳴いているのかどうか不明です。 

しばらくすると、別個体のカケスが短く鳴きながら右から左へセットを飛んで横切りました。
飛翔シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 
新機種のトレイルカメラはフレームレートが15fpsから25fpsに向上したので、被写体の素早い動きも以前より滑らかに録画できます。 
(個人的にはこれでも不満で、フレームレートは60fpsまで欲しいところです。) 

秋の盛りにはこの二次林でカケスがドングリ堅果をせっせと運んでいたのですが、貯食作業も見られなくなりました。 
この地点でカケスが写ったのは、2023年ではこれが最後になりました。

2024/08/31

電柱の天辺で鳴き、順に脱糞してから飛び立つノスリの♀♂ペア(野鳥)

 

2023年10月上旬・午後16:05頃・くもり 

農村部の田園地帯で2羽のノスリButeo japonicus)が電柱のてっぺんに仲良く並んで止まっていました。 
眼下に広がる田んぼを眼光鋭く見渡して、獲物となる小動物を探しているようです。 
実はこのとき近くの田んぼでは稲刈り作業が進行中で、コンバインで刈った稲穂をまとめて並べていました。 

ノスリは体格に性差があるため、左の小柄な個体が♂で右のやや大型な個体が♀と分かります。 
左の♂はコンクリート製電柱の天辺に止まり、右の♀は碍子を跨ぐように電線に止まっています。 
ノスリのつがいを同時に撮れたのは珍しいです。 


右の♀がおもむろに尾羽を持ち上げ、白い液状便を勢い良く後方に放出しました。(@0:32〜) 
脱糞して体重を軽くすると、直後に右へ飛び去りました。 
このとき左の♂は、隣の♀が脱糞した勢いにびっくりしたようですが、♀につられて飛び立つことはありませんでした。
逃げたノスリ♀は、カメラを向ける怪しい私から距離を取りたかったようで、道端に並ぶ隣の電柱(私から離れた奥の電柱)に止まり直していました。 

電柱の天辺に居残った♂は、ピーエ、ピーエ♪と甲高い声で繰り返し鳴き始めました。 
ノスリの鳴き方はバリエーションが乏しいのですが、今回は私に対する警戒声なのでしょう。
嘴を開閉する動きと鳴き声が同期しているため(リップシンクロ)、この個体の鳴き声で間違いありません。 
(鳴く♂に注目し続けたので、遠く離れた♀が鳴き返したかどうか不明です。) 

しばらくすると、♂は身震いしました。 
次に♂は電柱の天辺で細かく足踏みしながら方向転換し、♀が見える方向に向き直りました。 
♀と同様に脱糞してから(@2:33〜)♂も電柱から右に飛び立ちました。 
羽ばたきと滑空を交互に繰り返し、♀からも離れてどこかへ飛び去りました。

パートナーの♂が居なくなっても、♀は遠くの電柱に止まったままでした。 
撮影後に私が道を歩いて近づくと、カメラを起動した途端に♀は逃げてしまいました。(映像なし) 

ノスリ♀♂が1羽ずつ脱糞してから飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう。(@3:34〜) 
♀が飛び去る直前に♂と鳴き交わしていました。 
(♂が一瞬先に鳴き、♀が応えてから離陸。) 

※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


日の入り時刻は午後17:16。
夕方に塒入りする時刻にはまだ早いのかもしれませんが、ねぐらの位置を突き止められませんでした。 
おそらく近くのスギ防風林ではないかと予想しています。 
それとも山林に帰るのでしょうか? 


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2024/08/19

電線で鳴く♪秋のジョウビタキ♂(冬の野鳥)

 

2023年10月下旬・午前11:00頃・晴れ 

山麓の農村部の住宅地で電線にジョウビタキ♂(Phoenicurus auroreus)が止まっていました。 
早くも冬鳥が渡来する時期になりました。 

よく晴れた青空を背景に、鳴いています。 
ズームインすると、嘴を開閉する動きと鳴き声が同期していた(リップシンクロ)ので、この個体の鳴き声で間違いありません。 
赤い口内が見えました。 
ヒッヒッ♪という鳴き声に、聞き慣れない舌打ちのような音が混じっています。 
私の耳には濁った舌打ちに聞こえたのですが、図鑑の聞きなしでは「カカカ♪」と記されていました。 
例えば『日本の野鳥 さえずり・地鳴き図鑑 ~CDで鳴き声を聴き分ける全152種~』によると、
なわばりを構え、11月から12月ごろは目立つところにとまって、ヒッ、カカカと鳴く。 地鳴き:ヒッ、カカカ、ヒッカカとかクククと鳴く (p25より引用)
渡来直後の縄張り宣言だとすれば囀りさえずりなのかと思いきや、地鳴きの扱いになっているのは繁殖期ではないからなのでしょう。 
(あるいは♀も同様に鳴くから?)
背後の山林では落葉樹の黄葉、紅葉が進んでいます。 

ジョウビタキ♂の鳴き声を声紋解析してみる? 
手ブレが酷い動画ですけど、周囲が静かなので、声紋解析には最適です。 


※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


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2024/08/14

秋の山道で出くわしたニホンカモシカを追跡開始

 

2023年10月下旬・午後14:30頃・晴れ 

紅葉や黄葉が進む里山で、砂利が敷かれた林道を私が静かに下山していると、カーブを曲がった地点でニホンカモシカCapricornis crispus)と鉢合わせしました。 
振り返ってこちらをじっと見ています。 
手前に自生するタニウツギ灌木の葉でカモシカの顔が隠れていたのですが、私がゆっくり少しだけ動いて、顔を拝めるようになりました。 
角や耳介を注意深く見ても、個体識別できそうな特徴はありませんでした。 
首を振って身震いしたり、耳や尻尾をピクピク動かしたりして、吸血性の昆虫を追い払っています。 

やがてカモシカは警戒を解くと、向きを変えて、林道を右に渡ってから振り返ってこちらを見ました。 
このとき後ろ姿の股間を見ても、カモシカの外性器は見えませんでした。 
全身像が顕になったのですが、顔馴染みの個体ではない気がします。 

耳をピクピク動かし、ペロペロと舌舐めずりしています。 
頭を低く下げて身震いしました。 

私が動画を撮りながらその場にゆっくりしゃがみ、砂利道に座り込みました。 
これでカモシカよりも姿勢が低くなりました。 
カモシカは不思議そうに私を見ています。 
濡れた鼻孔をヒクヒクと大きく広げて、私の体臭を嗅いでいます。 

再び方向転換して左を向くと、カモシカの顔が手前のタニウツギの葉でまた隠れてしまいました。 
私と視線を合わせるのが怖いのでしょう。
動画撮影中の私はカメラのバックモニターを見つめていて、カモシカを直視しないようにしています。

やがてニホンカモシカは、フシュ!と鋭い鼻息を発して威嚇を始めました。(@2:46〜) 
計5.5回も断続的に鼻息威嚇を繰り返したのですけど、カメラの電池が途中で切れてしまいました。 

私が慌てて電池を交換するまで、カモシカはその場で逃げずに留まってくれました。 
頻りに耳を動かして、顔に集る虫を払っています。 
カモシカの顔が見えるように、カメラを持った腕をゆっくり上に挙げました。 
こういうときは、バリアングル液晶のバックモニターが欲しくなります。 
カモシカが頭を下げたので、私もカメラを持つ腕をゆっくり下げたら、カモシカは手前のタニウツギ群落の葉の隙間からこちらを覗き見していました。 

私とのにらめっこに飽きたのか、カモシカは頭を低く下げて地面の匂いを嗅ぎ、左へ歩き始めました。 (下山)
林道を曲がると、死角に消えました。 

私がそっと追いかけると、カモシカは曲がり角の先の林道の右端でこちらを振り返って見ていました。 
私は立っていた撮影姿勢から再びその場にゆっくり座り込んで姿勢を低くします。 
今度は手前に生えたススキの群落が邪魔になりました。 

山中で野生カモシカと出会った際に観察時間を長くするためには、警戒心をなるべく解いてやる必要があります。 
今のところ低姿勢で臨む作戦が良さそうだと思って試行錯誤しています。 

「またお前か(何か用なの?)」という表情でカモシカは再び左へ歩き始め、次の曲がり角の死角に消えました。 
もはや私に対して鼻息威嚇をしなくなりました。 
私を受け入れてくれたようです。



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2024/08/05

オニグルミの木を登って鳴きながら♪逃げるニホンリス

 

2023年10月下旬・午後14:15頃・晴れ 

里山の中腹で小さな沢を渡る地点に育ったオニグルミの樹上に何か動く生きものを見つけました。 
てっきりキツツキの仲間かと思いきや、カメラでズームインしてみるとニホンリスSciurus lis)でした。 
私が肉眼では見えているのにカメラの画角内にリスを収めるのに四苦八苦している間も、珍しく動かずに居てくれたので助かりました。 
オニグルミの苔むした(地衣類?)幹に止まったリスの横顔がようやく撮れました。 

やがてニホンリスはキキキッ♪と鋭い警戒声を発しながら幹の背後に素早く隠れ、逃げてしまいました。 
素早く木登りしたリスは隣接するスギ高木の枝葉に飛び移って姿を消したのですが、カメラで流し撮りするのはとても無理でした。 
リスの通り道となったスギの枝葉が揺れています。 

黄葉しかけた葉および落果から、リスが木登りした樹種がオニグルミであることを撮影後に確認しました。 


※ リスの鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


ニホンリスがクルミの実を採食するシーンを動画で撮るのが今後の課題です。 
片手間では無理そうで、じっくり腰を据えてリスを狙う必要がありそうです。


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