2018/04/14

ガードレールの枯れ蔓に初期巣を作るキアシナガバチ創設女王



2016年5月上旬・午前8:48〜9:01

平地の池に近いガードレールを前の年に覆い尽くしたクズの蔓が枯れたまま残っていました。
そこにキアシナガバチPolistes rothneyi)の創設女王が営巣していました。
巣盤の外縁部に新しい巣材(天然パルプ)を大顎で薄く引き伸ばしながら付け足して育房を増設しています。
ガードレールの南東面に営巣していたのは、やはり日当たり良好な物件を作っているのでしょう。

巣材を使い切って一仕事を終えると、女王様は巣盤の天井部に登り身繕い。
少し休んだだけでもう巣から飛び立ち、次の巣材を集めに出かけました。

しばらくすると、女王蜂が巣材集めから帰巣しました。
巣材をどこで採取してきたのかは不明です。
黒っぽいパルプの団子を噛みほぐすと、前回とは違う育房をせっせとこしらえています。
ガードレールに絡み合ったクズの蔓が邪魔で、思うように撮影アングルを確保できず、苦労しました。
育房内に産卵済みだと思われますが、その写真も撮れませんでした。
(こういうときは手鏡があれば便利なのですけど、あいにく持っていませんでした。)


このガードレールには他にも別の種類のアシナガバチ創設女王が営巣していました。(コアシナガバチフタモンアシナガバチ



キアシナガバチ創設女王@初期巣:ガードレール枯蔓+育房増設
キアシナガバチ創設女王@初期巣:ガードレール枯蔓+育房増設
キアシナガバチ創設女王@初期巣:ガードレール枯蔓+育房増設
キアシナガバチ創設女王@初期巣:ガードレール枯蔓+休息
キアシナガバチ初期巣:ガードレール枯蔓
キアシナガバチ初期巣:ガードレール枯蔓・全景
キアシナガバチ初期巣:ガードレール枯蔓・全景

トンネル天井の隅から飛び立つコウモリ【暗視映像】



2017年9月中旬・午後17:30(日の入り時刻は午後17:43)

水が流れるトンネル(山麓に埋設されたボックスカルバート@山形県)の奥にコウモリの昼塒がありました。
トンネルは通り抜けが可能なのですけど、真っ暗なトンネルの中央部でコロニー(群塊)を見つけたので(動画公開予定)、一度引き返してトンネルの反対側から入洞し直しました。

入口近くで一頭が2本の後ろ足でぶら下がっていました。
この個体iは単独で天井と壁面の角(隅っこ)に居ました。
壁にしがみついているようにも見えます。
トンネルの断面は四角形(長方形)ではなく、角が面取りされ八角形になっているのです。

コウモリは背中しか見えず、顔を拝む前に警戒して飛び去ってしまいました。
したがって種類を見分けられませんでした。
耳が長くないので、ニホンウサギコウモリは除外できそうです。

後半は飛び立つ瞬間を1/10倍速のスローモーションでリプレイ。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


2018/04/13

キジバトの首振り歩行と脱糞 【HD動画&ハイスピード動画:野鳥】



2017年9月中旬

路上を歩きながらキジバトStreptopelia orientalis)がときどき地面を啄んで採食しています。
ハトの仲間は両足を交互に出してトコトコ歩きます。
藤田祐樹『ハトはなぜ首を振って歩くのか(岩波科学ライブラリー)』というベストセラー本で以前読んだ通り、キジバトも確かに一歩ずつ首を前後に振りながら歩行していました。

後半はキジバトの首振り歩行運動を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。(@1:06〜)
スローモーションで見るとよく分かるように、一歩踏み出す度に頭を前後に動かしています。
側面からのアングルだと一目瞭然。
しかしキジバトはカワラバト(ドバト)よりも警戒心が強く、基本的にカメラからどんどん遠ざかってしまいます。
この首振り運動の謎を知りたい方は、ぜひ名著『ハトはなぜ首を振って歩くのか』の一読をおすすめします。


▼関連記事
ドバトの首振り歩行 【ハイスピード動画:野鳥】

さて、狙って撮った訳ではありませんが、スローモーションの映像にキジバトが排便する後ろ姿がたまたま写っていました。(@1:56)
立ち止まって地面をついばみ、再び歩き出す際にポトリと脱糞しています。
鳥の糞と言えば白っぽい尿酸混じりの軟便をビシャーっと排泄するのが普通ですが、キジバトの糞は黒っぽくて丸い塊でした。

キジバトの糞はいつもこのような固形便なのでしょうか?

実はこの後、同一個体のキジバトが道端でツユクサの実を大量に採食(丸呑み)しました。

▼関連記事
ツユクサの実を食べるキジバト(野鳥)
キジバトが路上に残した糞にツユクサなど植物の種子が含まれているか調べるべきでしたね。
しかし実際の脱糞は一瞬の出来事で、撮影中は見過ごしてしまいました(気づかず)。
植物の実をよく食べるキジバトは種子散布に関与するのか、それとも種子捕食者なのか、それが問題です。
本で得た知識では、種子食性のハト類は砂嚢が発達していて、植物の実を飲み込むと種子も一緒に砂嚢で砕いて消化してしまうらしい。



オオベンケイソウの花蜜を吸うウラギンスジヒョウモン♀



2017年9月中旬

民家の花壇に咲いた見慣れない謎の園芸植物でウラギンスジヒョウモン♀(Argyronome laodice japonica)が訪花していました。
ピンクの花で半開きの翅を軽く開閉しながら吸蜜しています。



園芸植物に疎い私は、この花の名前を知りませんでした。
帰宅後に園芸植物のミニ図鑑で調べてみるとオオベンケイソウだろうと判明。
葉はやや分厚く、茎の背丈はそれほど高くありませんでした。



2018/04/12

枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#9


前回の記事→#8

2016年7月下旬

前回の定点観察の次の日。
ワーカー♀2匹が相次いで出巣するだけの特に何も面白くない動画ですが、個人的な記録のためにブログ限定で公開しておきます。
巣口で中の門衛と向き合って挨拶(栄養交換?)していた個体が外役に飛び去りました。





更にその翌日に撮った動画です。
外皮を増築しているワーカー♀と、出巣する個体が写っています。
1匹は巣口のすぐ横で、もう一匹は外皮の右下で、それぞれ拡張工事を行っています。
巣は軒下の板壁とも広範囲でしっかり結合し、全体的にかなり堅牢な作りになってきました。

つづく→#10:小枝が噛み切れず奮闘するコガタスズメバチ♀



小枝が噛み切れず奮闘するコガタスズメバチ♀



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#10


前回の記事→#9
2016年7月下旬・午前7:37〜7:43

4日ぶりの定点観察。
コガタスズメバチVespa analis insularis)の巣の手前にある枯木(樹種不明)の細い小枝の先端に1匹のワーカー♀が長時間かじりついていました。
巣材集めのために樹皮を剥いでいるのでしょうか?
しかし横から見てもコガタスズメバチ♀の口元に巣材のペレット(団子)はありませんでした。
どうやら、小枝を噛み切ろうとして苦労しているようです。
枯れた小枝の先端には冬芽があります。
蜂は自分の体長とほぼおなじぐらいの長さに小枝の先を切り取ろうと奮闘しています。

その間も他のワーカー♀が忙しなく飛び回り、巣に出入りしています。

それにしても、枯れているのに驚くほど強靭でしなやかな小枝ですね。
コガタスズメバチ♀が鋭い大顎でいくら噛んでも噛み切れません。
小枝に切れ目を入れて折り曲げるのが精一杯で、諦めた蜂は飛び去りました。
巣に戻るかと思いきや、外役に飛び去りました。

このことからも、巣材集めではなかった(巣材集めに失敗した)ことが分かります。

何とも理解に苦しむ奇妙な行動でした。
もし仮に小枝が噛み切れたとして、一体何がしたかったのでしょう?
(1)ヒトがスルメを食べるように小枝を更にじっくり噛みほぐして巣材のパルプにするつもりなら、手間をかけ過ぎだと思います。

(もっと手軽に近くの木の幹から樹皮を剥いでくれば済む話です。)
スズメバチの巣材集めは学習を要しない生得的な本能行動だと思うのですけど、羽化後に初めて外役に出かけたワーカー♀が初体験の巣材集めに苦戦しているのでしょうか?
(2)巣に出入りする飛行経路から目障りな障害物を少しずつ取り除いて整備しているのかもしれません。
それなら小枝をもっと根元から断ち切るべきでしょう。
(3)あるいは、スズメバチの天敵となり得る(?)造網性クモが巣の近くで網を張れないように、足場になりそうな枝を除去したいのかな?

つづく→#11:雨が降っても造巣を続けるコガタスズメバチ♀





昼塒のトンネル天井で身繕いするコウモリ【暗視映像】(名前を教えて)



2017年9月中旬・午後17:46(日の入り時刻は午後17:43)

水が流れるトンネル(山麓に埋設されたボックスカルバート@山形県)を更に奥へ進むと、天井でバラバラに(少し間隔を開けて)ぶら下がっていたコウモリが次々に飛び立ちました。
ところが一頭だけ逃げずに身繕いしている個体wがいます。
こちらに背を向け、片足(右後脚)で天井からぶら下がっていました。
私が赤外線の暗視動画を撮りながら回り込んでも、なぜか全く怖がりません。
尾膜や翼を一心不乱に舐めて身だしなみを整えているようです(甘噛みしてる?)

なにしろ生きた野生コウモリを観察するのが初めての私は、何がどうなっているのかよく分からずに色々と想像しました。
・もしかすると、しがみついている幼獣を母親が舐めているのですかね?
・左の後脚を怪我していて、舐めて治そうとしているのかな?

後半にようやく顔をしっかり拝めたものの、私には何という種類のコウモリか分かりませんでした。
どなたか見分けられる方がいらっしゃいましたら、是非教えて下さい。
この個体wの性別も不明です。(陰茎は確認できず)

そろそろ日没後の採餌活動時刻が始まるはずですが、最後まで逃げなかったので飛び立つ瞬間の映像も撮れませんでした。
野生のコウモリに手で触れて強引に飛び立たせる訳にもいきません。(コウモリに触れるのは法律で禁じられていますし、病原菌に感染する恐れもあります)
この個体wと別れ、私はトンネルの探検を続けます。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


2018/04/11

ログハウス外壁に帰巣するオオハキリバチ♀



2017年8月上旬・午前6:06

キャンプ場のログハウスの外壁にオオハキリバチ♀(Megachile sculpturalis)が早朝から飛来すると、丸太の切り口の裂け目に潜り込みました。
どうやらこの奥で営巣しているようです。
巣材などを運搬していたかどうか、このアングルでは不明です。
スコパはおそらく空荷でした。
最後は帰巣シーンを1/4倍速のスローモーションでリプレイ。
穴を目指してジグザグに飛んでいました。

同一個体なのか定かではありませんが、この隙間に繰り返しオオハキリバチ♀が潜り込んでいました。
出入り口が一箇所だけでなら観察は容易なのですが、もし蜂が丸太の隙間の反対側に通り抜けできるのだとすると、あまり良い観察ポイントとは言えません。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

このときは蜂に気づいて咄嗟にカメラを向けて動画を撮ったのですが、ログハウスの中に泊まり客がいるかもしれないと気づきました。
トラブルにならないうちに慌てて撮影を中止して退散。


キヅタの花蜜を吸うヒメスズメバチ♂



2017年9月中旬

駐車場のブロック塀を蔓植物のキヅタ(別名フユヅタ)が覆い尽くし、生垣のようになっていました。
そこでヒメスズメバチ♂(Vespa ducalis pulchra)が訪花していました。
未だつぼみなのか?と初めは思いました。
突き出た雌しべしか見えないので、雌性期の花なのでしょう。
花弁が無い不思議な花ですが、ヤブガラシのように蜜腺が剥き出しで、いかにも舌の短いスズメバチ類が好みそうな花です。

▼関連記事 
ヤブガラシに訪花するヒメスズメバチ♀【ハイスピード動画&HD動画】
実際に色々な種類のスズメバチがここのキヅタを訪花していました。(キイロスズメバチ♀コガタスズメバチ♀

ヒメスズメバチの複数個体を撮れましたが、いずれも触角の長い雄蜂♂ばかり。

雄蜂は毒針を持たないので、刺される心配は全くありません。
なぜかワーカー♀の姿はありませんでした。


ヒメスズメバチ♂@キヅタ訪花吸蜜
ヒメスズメバチ♂@キヅタ訪花吸蜜
ヒメスズメバチ♂@キヅタ訪花吸蜜

この蔓植物の名前が初め分からず、家に帰ってから色々と調べてキヅタに辿り着きました。
しかし『昆虫の集まる花ハンドブック』p67によると、キヅタは初冬の花とされています。(wikipediaの情報ではキヅタの花期は10-12月)


いくら北国(東北地方)とは言え、この時期(9月中旬)に咲くのは早過ぎですかね?
最近特に気温が異常に下がったということもありません。
(キヅタではなく別種なのかな? もし間違っていたらご指摘願います。アイビーの品種によって開花時期が違うのかも知れません。)
キヅタは雄性期の花の次に雌性期の花になるらしい(雄性先熟)。
ヒメスズメバチ♂が来ていたマント群落の一角から横に移動して(ブロック塀を回り込んで)よく探すと、確かに雄しべをつけた雄性期の花も見つかりました。
雄性期の花にはスズメバチ類が吸蜜に来ていなかったので、分泌される花蜜の量が違うのでしょう。
写真をよく見ると一部の葉は斑入りになっていますから、もしかすると複数の品種の株を混ぜて植栽したのかもしれません。


キヅタ花(雌性期)。斑入りの葉も上に見える
キヅタ花(雄性期)

2018/04/10

煮干しを食べるチャコウラナメクジ 【10倍速映像】



2016年10月下旬・午前00:33〜00:56

飼育しているチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)がカタツムリを襲った事件をきっかけに、ナメクジの生育にはタンパク質が必要らしいと知りました。


▼関連記事
チャコウラナメクジに襲われ泡を吹くヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】

タンパク質を補給するために試しに数匹の煮干しを小皿に入れて給餌してみます。
ダシを取るための食品ですが、若干の食塩が添加されていることが気になります。
ナメクジを含めたペットに与えるときは健康のために減塩加工された煮干しの方が良いのかも知れません。


すると早速、チャコウラナメクジは初めての餌を喜んで食べ始めました。
微速度撮影で記録してみたので、10倍速の早回し映像をご覧下さい。
しばらくすると満足したのか、チャコウラナメクジは小皿の上でUターンして立ち去りました。
死んだ魚の乾燥肉を食べただけでなく、煮干しの小骨に含まれるカルシウムを喜んで摂取していたのかもしれません。

タンパク質の餌を与えたので、これでチャコウラナメクジが同居しているヒダリマキマイマイを襲うことはなくなるでしょうか?

宇高寛子、田中寛『ナメクジ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』という本を読むと、ナメクジを飼育するための餌として次のように書かれていました。

容器の底には湿らせたペーパータオルを敷き、エサとしてニンジンとコオロギ用人工飼料(魚粉を固めたもの。金魚のエサに似ている)をナメクジと一緒にいれた。(中略)数日に一度、エサや容器は新しいものと交換した。(p35より引用)

一方、同じ容器で同居させているヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)も同じ小皿に登ってきたものの煮干しには口をつけずに引き返しました。
近くに置いてあったリンゴの皮に気を取られたのかな?
あるいは、近くに天敵の(以前自分を襲った)チャコウラナメクジが居ることに気づいて、慌てて逃げ出したのかもしれません。



ユビナガコウモリ♂?:昼塒で寝起きからの飛び立ち【暗視映像】



2017年9月中旬・午後17:39(日の入り時刻は午後17:43)@山形県

ボックスカルバートのトンネルを更に探検すると、洞内を飛び回っている個体が映像の冒頭で画面を横切ります。
低い天井(高さ約170cm)にもう一頭見つけました。
この個体nも単独で天井から片足(右足)でぶら下がっています。
そっと近づくと私に気づいて顔がこちらを向きました。

横顔は、つぶらな瞳が可愛らしい。
耳の形など顔の特徴がなんとなくユビナガコウモリMiniopterus fuliginosus)かな?と思うものの、素人の当てずっぽうで自信がありません。
もし間違っていたらご指摘願います。

折り畳んだ翼から突き出て見えるのは前肢の第一指(親指)です。
なにしろコウモリの観察は初めてなので、こういう基本的なことから勉強です。


長い指の骨は、うちわの骨のような役割をして翼の膜を支えている。ただし、親指だけは翼の前に突き出している。 (『身近で観察するコウモリの世界―町を飛ぶ不思議な野生動物 (子供の科学★サイエンスブックス)』 p26より引用)
ユビナガコウモリの名前の由来は親指ではなく、前肢の第3指(中指)の第2指骨が著しく長いそうです。(この映像で確認できるのか?)

赤外線の暗視動画を撮りながら私がゆっくりコウモリの腹面に回り込むと、腹部に細長い突起物が見えました。
これは♂の陰茎なのでしょう。
『コウモリ識別ハンドブック 改訂版』によると、雌雄の見分け方は

♂の陰茎(ペニス)には陰茎骨があり、常に体外に出ているので幼獣や亜成獣であっても季節を問わず、雌雄の判別は容易である。(p9より引用)

最後は翼を広げて飛び立つ瞬間を1/10倍速のスローモーションでリプレイ。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


2018/04/09

イチジクの未熟果を舐める謎の黒い蝿 【名前を教えて】



2017年9月上旬

平地の民家の庭に植栽されたイチジク(無花果)の木に未熟な果実がなっていて、そこから早くも甘い匂いが辺りに漂っていました。

このイチジクの匂いに誘われたのか、黒くて小さな見慣れないハエが1匹、イチジクの青い実の表面を頻りに舐めていました。
その合間に、手足を擦り合わせて身繕い。

最後は少し飛んでイチジクの葉に止まり直しました。

同定のため接写よりも採集を優先したら失敗し、残念ながら飛んで逃げられてしまいました。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。




イチジクと共生して授粉を助けるイチジクコバチの話は蜂好きの教養として知っていました。
しかし日本ではイチジクコバチは生息しておらず、

日本で栽培されているイチジクはほとんどが果実肥大に日本に分布しないイチジクコバチによる受粉を必要としない単為結果性品種である。(wikipediaより引用)



コバチ以外でイチジクの授粉に関与する微小のハエはいなかったっけかな?とうろ覚えの私は気になり、念の為に動画で記録してみたのでした。


私にはこのハエが所属する科も見分けられないので、邪道ですがとりあえず周辺情報からインターネット検索に頼ります。
大森直樹『一年中楽しめるコンテナ果樹の育て方』という栽培マニュアル本の内容がヒットしました。

ヨーロッパではドライフルーツに向く、大玉のスミルナ種といわれる系統の品種が主に栽培されています。この系統の品種はすべて、雄花の授粉がされないと結実しません。雄花の咲く品種群をカプリ系といいますが、この花粉をもったイチジクの受粉のために生きているといっても過言ではないのが、ブラストファーガという極小のハエ。ミルナ種のお尻の小さな穴から侵入し、受粉が行われます。ハエは、一度中に入ったら外には飛び立てず、すぐに死んでしまいます。
このハエはほとんど人の目には見えない大きさなので、食べてもわかりません。また、ドライにする過程で自然殺虫殺菌されているので、体への害はありません。
残念ながら日本国内にこのハエは存在せず、果実を実らせることは不可能です。(p92より引用)

ところが更に調べてみると呆れたことに、ブラストファーガなる昆虫はハエではなく、イチジクコバチ類Blastophaga spp.)の属名でした。
つまり、この書籍の記述は昆虫学的に不正確であることが分かりました。


「イチジク 黒いハエ」のキーワードで検索し直してみると、「イチジク属植物とイチジクコバチの共生関係を脅かすハエ類」と題した生物学者による興味深い読み物がヒットしました。
沖縄で野生のイヌビワ(イチジク属の植物)の実を調べた結果、

タマバエに寄生される花嚢は種子も作れなければコバチも育ちません。クロツヤバエに寄生される花嚢はコバチが食べられてしまいます。

同じ研究グループによって「イチジクコバチを専食するクロツヤバエがイチジクに与える影響」という研究成果も学会で報告されているようです。

日本生態学会大会講演要旨集 巻:58th ページ:457 発行年:2011年03月08日
残念ながらこの要旨の内容は一般に公開されておらず、未読です。


タマバエは明らかに動画の個体と形態が異なるので除外しました。

クロツヤバエに注目して、もう少し深堀りしてみます。
素人目にはクロツヤバエ類のずんぐりむっくりした体型は、私の動画に登場する個体と似ているような気がします。
しかし私が見た個体は体色が黒いものの、黒光りしているという印象はありませんでした。
曇っていたので光沢(つや)が無かったのですかね?
前述のように、私が出歩くフィールドにイチジクコバチは生息していないはずなので、それを専門に捕食寄生するクロツヤバエも居ないはずです。
ただし、クロツヤバエ科には何種類もいるそうなので、未だ望みはありそうです。


「知られざる双翅目のために」というサイトによると、

クロツヤバエ科(LONCHAEIDAE)は、世界に9属約520種を擁する比較的小さな分類群。幼虫が果実を食害するため、害虫としても扱われる。
日本では2013年時点で7種が記録されているが、まだ数種類の未記載種や未記録種が残っていると推定される。
wikipediaによれば、
(クロツヤバエ科の)幼虫の大部分は植食性で、葉に食害をもたらすことが知られているが、腐食性、捕食性などの種も知られている。
一方、英語版wikipediaを参照すると更に気になる記述がありました。
The black fig-fly Silba adipata McAlpine is a pest of figs.
しかし、イチジクの害虫として知られるこの学名(Silba adipata)のハエは(今のところ)日本に分布していないようです。

私が見た個体はクロツヤバエの一種ではないか?と思ったのは素人の勝手な妄想・願望でしかありません。
もし写真や動画からこのハエの名前が分かる方がいらっしゃいましたら(科だけでも)、ぜひご教示願います。
ここまで長々と書いてきても結局、私が見たハエはクロツヤバエ科ではなかったというオチかも知れません。
たとえ関係なくても、この機会に調べものしたら面白く勉強になったので、ブログに書き残しておきます。

もしこのハエが私の予想通りクロツヤバエ科でしかも♀なら、もう少し粘って観察すればイチジクの未熟果に産卵したかもしれませんね。

また、このイチジクの木がもし自分の庭に植えられたものなら、実を収穫してハエの幼虫(ウジ虫)が中に居ないかどうか調べてみたいところです。
市販されているイチジクの果実を口にする機会も滅多にありませんが、ハエの幼虫が潜んでいたという記憶はありません。

ウジ虫が中から食害したイチジクの果実は腐ったように変色するらしく、普通はヒトが食べる前に廃棄処分されてしまうのでしょう。


【追記】
調べ物でいつもお世話になっている「みんなで作る双翅目図鑑」サイトの画像一括閲覧ページ を眺めていたら、とてもよく似たハエの写真を見つけました。
Lauxanioideaシマバエ上科,Lauxaniidaeシマバエ科Minettia sp.  画像提供 Mbc様

シマバエ科という分類群は初耳です。
シマバエ科Lauxaniidaeは腐敗植物質、鳥の巣の汚物で繁殖する他、生きた植物に寄生するものも知られる。(wikipediaより引用)

『マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版』によれば、
シマバエ科 Lauxaniidae無脊動 双翅目,環縫亜目,無弁亜区の昆虫の一科.幼虫は葉肉に穿孔する.
Minettia属については英語版wikipediaを参照。
謎のハエが今回イチジクに来ていたのは偶然なのか、それとも何か深い関係があるのか、興味深いところです。
幼虫はイチジクの葉で育つリーフマイナーなのでしょうか?




オオハンゴンソウの花蜜を吸うオオハラナガツチバチ♀



2017年9月中旬

街中の空き地に咲き乱れるオオハンゴンソウの群落でオオハラナガツチバチ♀(Megacampsomeris grossa matsumurai)が訪花していました。
風で揺れる花で吸蜜中にオオハキリバチ♀とニアミスしても互いに知らん顔。


【追記】
この花はハチミツソウではなくてオオハンゴンソウですね。
遅まきながら訂正します。



オオハラナガツチバチ♀@オオハンゴンソウ訪花吸蜜
オオハラナガツチバチ♀@オオハンゴンソウ訪花吸蜜
オオハラナガツチバチ♀+オオハキリバチ♀@オオハンゴンソウ訪花吸蜜

2018/04/08

昼塒で寝ていたニホンウサギコウモリ?の覚醒と飛び立ち【暗視映像】



2017年9月中旬・午後16:50(日の入り時刻は午後17:43)

山麓に埋設されたボックスカルバートの長いトンネルを探検してみると(†)、野生コウモリの昼塒を見つけました。(@山形県)
コウモリの鳴き声はヒトには聞こえない超音波のはずなのに、トンネルの奥から甲高い鳴き声(ヒトの可聴域)が反響しています。
トンネルの入り口から奥に進むと、初めはコウモリが一匹ずつ天井や壁面からぶら下がっていました。

この個体bは耳が三角形で大きく、ウサギのようです。
一番分かりやすい特徴を持っていたのですが、ニホンウサギコウモリPlecotus sacrimontis)ですかね?
もし間違っていたらご指摘願います。


ニホンウサギコウモリは、小さな声の超音波を使っても聞こえるように大きな耳を持っている。獲物が発する小さな音を直接聞いて獲物の居場所を知ることもできる。   (『身近で観察するコウモリの世界:町を飛ぶ不思議な野生動物 』p72より引用)


コンクリート壁面の割れ目に右後足だけで下向きにぶら下がっていました。
私が近づいた時にはすでに覚醒していました。
顔をよく撮ろうとしたら警戒され、飛んで逃げて行きました。
後半は飛び立つシーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ(@0:26〜)。

『コウモリ識別ハンドブック』によればニホンウサギコウモリの「幼獣は成獣に比べて体色が黒っぽい」らしいのですが、残念ながら暗視映像では体色の情報が得られません。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

† コウモリの繁殖期(子育て)が終わったと思われる時期(秋)を見計らい、離塒前の時刻(日没前)に入洞しました。
私もいきなり野生コウモリのねぐらに突入するほど無神経(無鉄砲)ではありません。
昼間に真っ暗な洞内で寝ているコウモリに対する光の影響を最小限に留めるために、懐中電灯も赤色LEDを使い、しかも手のひらで隠しながら弱い赤色光で進路を照らすようにしました。
赤外線の暗視カメラで動画撮影しながらトンネル(幅260cm、高さ170cm)の奥へゆっくり進みます。
寝ているコウモリを見つけたら赤色マグライトを消灯して暗視カメラのモニターのみを頼りにそっと近づくようにしました。
トンネルの底には水が流れていますがこの時期は水深が浅く、長靴のくるぶしにも達しませんでした。


コウモリの調査のために已む無く洞窟に入る場合は、時間は「朝一番に入るのがおすすめ」らしい。
塒入りした直後の時間帯がコウモリへの影響が最も少ないのでしょう。
(『身近で観察するコウモリの世界:町を飛ぶ不思議な野生動物 (子供の科学★サイエンスブックス)』より)


トノサマバッタ♀緑色型の産卵未遂



2017年9月中旬・午後16:49〜16:55

田園地帯の砂利が敷かれた農道で緑色型のトノサマバッタ♀(Locusta migratoria)が産卵を始めていました。
私がすぐ横を通り過ぎても跳んで逃げずに、身じろぎするだけでした。
(映像はここから。)


腹端を器用に開閉して地表面を探りながら、少しずつ掘り進めています。
西日を浴びて影が長く伸び、なかなかフォトジェニックです。
トノサマバッタ♀は太陽に対して横を向いていました。
この個体は、左の後脚が欠損しています。(-L3)

長期戦になるかと思い、少し離れた位置に三脚を立てて微速度撮影で記録してみることにしました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。(@1:47〜1:57)
しかし残念ながら、このトノサマバッタ♀はじきに穴掘りを中断してしまい、農道を歩き始めました。
おそらく土質が硬すぎるなど産卵に適さないと判断して諦めたのでしょう。
小さなクロアリ(種名不詳)が産卵中のバッタにつきまとったので、煩く思ったのかもしれません。

トノサマバッタ♀は砂利道を横断し、草むらへ逃げ込みました。
次回は産卵シーンを最後まで見届けたいものです。
♀を採集して飼育下で産ませるのが成功への早道かもしれません。


『カラー自然シリーズ44:バッタのくらし』によると、

(トノサマバッタは)一生のあいだに、多いものは20個近くの卵塊を産み残します(p25より引用)





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