2012年6月中旬
川の堤防にイタチハギ(別名クロバナエンジュ)の潅木があり、花が咲いていました。
羽音に近づいてみると、セイヨウミツバチが何匹も盛んに活動していました。
後脚脛節の花粉籠に赤い花粉団子を付けています。
吸蜜するワーカーもいます。
2008年6月に「赤い花粉団子を持ち帰るニホンミツバチ」を初めて見たときは毒々しい色の花粉団子に仰天したのですが、ようやくミッシングリンクが繋がりました。
でも、昔見た花粉団子はもっと赤かったような…。
【追記】
『カラー自然シリーズ41:ミツバチ』p24によると、
頭部は前脚、胸部は中脚、腹部は後脚で撫で回し、最後に、脚同士を擦り合わせると、自然に後脚の花粉籠に花粉が集まります。
2012年6月中旬
街中を流れる川が合流する堰で馴染みのアオサギ(Ardea cinerea jouyi)が一羽いました。
撮影を試みる度に飛んで逃げられ悔しい思いをするので、今回は素知らぬ顔で一旦通り過ぎてから、橋の欄干をブラインド代わりに隠し撮りしました。
苦節○年目でようやく驚かせずに漁を撮れました♪
アオサギは波が白く泡立つ瀬で佇み、魚を待ち伏せしています。
嘴で一突きするも空振り。
しばらくしてから漸く魚を捕らえました。
細長い魚が嘴に挟まれてつつ暴れています。
川魚にはまるで疎いのですが、ドジョウやウナギなのかな?
魚を弱らせてから一呑みにしました。
アオサギはすぐに魚をもう一匹捕食しました。
やはり細長い魚です。
食べ終えても貪欲にその場で待ち伏せ漁を続けます。
軽く飛んで隣の堰へ移動しました。
アオサギが堰で魚を待ち伏せる際は常に頭は下流側に向け、じっと魚影を見張ります。
集中力が途切れると?漁場を変えます。最後は大物を捕らえ、嘴に獲物を咥えたまま意気揚々とこちらの川岸へ歩いて来ます。
口元をよく見ると、なんと魚を二匹同時に捕まえているようです。
一石二鳥ならぬ一嘴二魚ですね。
飲み込むと再び水面の魚影を探し始めました。
私がこれまで見てきた野鳥は一般に捕食の後は嘴を頻りに枝に擦り付けたりして神経質なぐらい身繕いします。
それに対して、アオサギは魚を捕食した後に汚れた嘴を拭ったり洗ったりしないのが少し不思議に思いました。
水鳥はいつでも洗えるから気にしないのかな?
アオサギの待ち伏せ漁は一撃必殺という程ではなくて空振りもあります。
それにしても魚影が濃いようで、高い成功率でした。
街中を流れる川で、堤防には車の交通量が多いのですが、アオサギは逃げずに集中して漁を続けています。
撮影する方も緊張と緩和の繰り返しで、なかなかスリリングでした。
漁の成功シーンを中心に編集しましたが、実際は待ちの時間がかなりあります。
2012年6月中旬・気温16℃
雑木林でオレンジ色の変な虫がコナラの幹を登っているのを発見。
何だ何だ?とよく見ればシジミチョウで、羽が途中で折れ曲がっていました。
翅表は外側に半分捲れた状態です。
ゼフィルスの一種、アカシジミ(Japonica lutea)は初見になります。
蛹から羽化したばかりの成虫が落ち着いて翅を伸ばす場所を探しているのかと思い、三脚を立てて微速度撮影してみました。
10倍速の早回し映像をご覧ください。
見つけたときは私の膝下ぐらいの高さに居たアカシジミは、幹をどんどん上に登って行きます。
途中でアリに出会っても襲われることはありませんでした。
ようやく静止したのは地面からの高さ約125cmの位置でした。
ときどき風で翅が煽られても、飛ばされないよう脚で踏ん張ります。
触角をときどき上下するだけで、じっとしています。
ところがいつまで経っても羽先がピンと伸びません。
何らかの理由で羽が伸び切る前に固まってしまった羽化不全の個体のような気がしてきました。
もし♀だとしたらフェロモンを放出して♂が交尾にやって来るのをひたすら待っているのだろうか?
保育社標準原色図鑑『蝶・蛾』p35によると、アカシジミは
卵は食樹の樹皮上に1個ずつ産みつけられるが、母チョウは産卵後、腹部の先で付近のゴミをかき集めて卵の上に塗りつけてこれを隠す。卵の状態で冬を越し、翌春になって食樹の新芽がでるころにかえる。
横から顔を接写してみると、ゼンマイ状の口吻を伸縮させています。
もし本当に羽化直後なら、左右2本の口吻が繋がっていない筈です。
数時間後にまた様子を見に行くと、コナラの幹を見上げてもアカシジミの姿はありませんでした。
しかしふと横を見ると、モミジ低木の葉にちょこんと乗っていました。
風でコナラの幹から吹き飛ばされて落ちたのでしょう。
折れ曲がった翅はそのままで、もはや直る見込みはなさそうです。
蝶の羽化がこんなに長時間かかる筈がありません。
やはりこの日の朝に羽化したばかりの個体ではなく、もっと前に生まれた羽化不全個体がうまく飛べないままこの姿で森を彷徨っていると思われます。
今思うと、飛翔能力を調べてみればよかったですね。
アカシジミには手を触れず、その場に残して帰りました。
今回せっかくアカシジミの羽化が見れた!と思ったのに、ぬか喜びに終わりました。
初めて見た虫が正常個体ではなくて頭を抱えたり、非典型的な珍しい行動をいきなり見せてくれたり(ビギナーズラック♪)、というのは結構よくあることです。
【追記】
『ゼフィルスの森―日本の森とミドリシジミ族』p81によると、アカシジミはコナラの葉裏などに付いた蛹から羽化するらしい。
ゼフィルスの羽化はすべて10秒足らずで、しかも予兆がない。(※ 蛹が割れて脱出するまで。しぐま註)(中略)約30分後、翅はきれいに伸び切り、1時間近くすると処女飛行へ飛び立っていった。
【追記2】
山形県小国町で天然記念物チョウセンアカシジミの生活史や生態を丹念に観察・記録した倉兼治『生きた化石のチョウ―天敵から身をまもりつづけたひみつ (子ども科学図書館)』を読むと、羽化の連続写真に添えられた解説で興味深い事例が記してありました。
蛹から脱出して近くの枝によじ登った成虫が羽を伸ばし始めて2、3分も過ぎた頃にアリに襲われた例です。
前脚を持ち上げてアリに応戦しながら、枝先に逃げると、アリは諦めて立ち去ったそうです。
するとチョウセンアカシジミは再び羽を伸ばし始め、羽化開始から約20分後に美しい羽を伸ばし終えたそうです。(p23-24より)
私が見たアカシジミとチョウセンアカシジミは別種ですけど、参考までに記しておきます。
「もし羽を伸ばすのを途中で止めてしまったり、地面に落ちて怪我でもしたら、チョウはきっと死んでしまうだろう」とハラハラしながら見守ったと筆者は述懐しています。
今回私が見た羽化不全個体もおそらく似たようなお邪魔虫(アリ?)が現れた結果でしょう。
サイカチの枝先に作られたイラガ(Monema flavescens)の繭を採集した際に1個割れてしまいました。
中の前蛹を取り出して飼育してきました。
前の記事はこちら→「繭から出したイラガ前蛹(蛾)の激しい徘徊運動【微速度撮影】」
2012年6月中旬・室温21℃
イラガ蛹の変態が順調に進み、褐色が所々で濃くなってきました。
成虫の体の作りがもうはっきり分かります。
ときどき腹端をグルグル回すように激しく動かします。
容器内で蛹を転がす度に繰り返し見られる運動です。
腹端の回し方は決まっておらず、途中で逆回転になりました。
やがて疲れたのか、蠕動が止まりました。
自然界では硬い繭に密閉された状態で蛹の変態が行われる訳ですが、狭くて暗い繭内でも蛹はこのように激しく寝返りを打っているのだろうか?
イラガの繭をレントゲンで微速度撮影して中にいる蛹の動きを透視したら面白そうです。
可動域は腹部に限られており、大きく育った翅原基(翅芽)や触角は羽化しないと動かせないようです。
2日後には蛹を転がしても蠕動が見られなくなりました。
いよいよ成虫の羽化が近いのかな?
(つづく)
【追記】
鈴木知之『さなぎ(見ながら学習・調べてなっとく)』に読むと、ヒントが書いてありました。
イラガ科の繭は、蛹の頭部側の内壁だけが薄く、ここが羽化に際して出口となります。羽化が近づくと、蛹は破繭器を使って脱出孔を開け、半身を繭外にせり出して羽化します。破繭器は、繭内で体を回転させて缶切りのように使ったり、梃のように押し上げて使うようです。 (p77より引用)
2012年6月上旬
里山で細い山道を下っていると、道端の草むらに橙色の塊を発見。
クモの幼体の団居(団居)です。
イネ科植物(ススキではない)の葉の表側に小さな集団が2つある他、葉裏に集まった球状の塊がメインの団居です。
クモ類は一腹の卵を糸で包んで卵嚢を作る。卵が卵嚢内で孵化すると、一令幼虫は卵嚢内に止まり、もう一度脱皮して二令になって初めて出てくる。多くのクモ類ではしばらくの間はこの卵嚢の周囲に子グモが集まって過ごす。これを「まどい(団居)」と呼ぶ。(wikipediaより)
2007年に撮影した団居と素人目には似ていますけど、同種でしょうか?
当時は「コガネグモ科ムツボシオニグモの幼体かもしれない」と教わりました。
関連記事はこちら→「蜘蛛の子を散らす」
団居の付いた草に軽く振動を与えると、クモの幼体は一斉に分散しました。
まさに「蜘蛛の子を散らすように」右往左往の大騒ぎです。
警戒を解いて団居に戻る様子を10分間長撮りした映像を10倍速の早回しでお届けします。
風に乗ったバルーニングで分散する準備なのか、一部の幼体は上へ上へと移動して行きます。
この日は風が弱く撮影には助かりましたけど、バルーニングは見られませんでした。
興味深いことに、風が葉を揺らしても蜘蛛の子は平気です。
振動の周波数や振幅、加速度などで危険性を察知しているのかな?
2012年6月中旬
定点観察として4日後に再訪してみました。
意外にも幼体は未だ解散しておらず、同じ葉の表に楕円形のコンパクトな団居ができていました。
残留組で蜘蛛の子を散らす様子をもう一度動画に撮ってみました。
こういうのが苦手という人もきっと多いでしょうけど、私には気持ちのよい現象なのです。

2012年6月上旬
イタドリの葉表に乗ったトラフカニグモ(Tmarus piger)が蟻を捕食・吸汁していました。
餌食となったのはムネアカオオアリ(Camponotus obscuripes)で、首を噛まれた獲物は既に絶命しておりピクリともしません。
『日本のクモ』p254によると、本種は
他のカニグモと異なり飛翔性の昆虫はあまり捕らず、茎や枝を上って来るアリ類を捕食する。
2010年にも黒い蟻を捕食するトラフカニグモ♀を観察しています。
指をそっと近づけてクモに触れると、獲物は咥えたまま素早く横に動いて逃げました。
カニグモ科だけあって確かにカニのような動きで、クルッと葉裏に隠れたりします。
未採集、未採寸ですが、触肢は♀タイプでした。
獲物に一瞬小さなヌカカ?が飛来したように見えました。
【追記】
『クモのはなしII:糸と織りなす不思議な世界への旅』の第14章「アリに似たクモ」によると、カニグモ科で中南米に生息するアリクイカニグモ亜科は特定のシワアリ類に形態的に擬態しているばかりか、アリを襲って捕食するそうです。
ベーツ型擬態と攻撃的擬態の両面を併せ持っているユニークな例です。
一方、トラフカニグモ類もアリを好んで捕食しますが、からだはアリには似ていません。
2012年6月上旬
小さな啄木鳥が木の幹をピョンピョン登っています。
望遠で狙ってみるとコゲラでした。
樹種はカラマツかな?
開始20秒あたりで白い蛾を捕食したようにも見えるのですが、はっきりしません。
最後は飛び去りました。
うーん、小さくて動き回るコゲラを撮るのは実に難しい…。
2012年6月上旬
クロバナヒキオコシの葉に止まっていたシモフリコメツキ(Actenicerus pruinosus)。
飛び立つまでになぜか翅を半開きのまま、かなり長いことモジモジと躊躇していました。
飛翔シーンをハイスピード動画(220 fps)に撮ってみました。
この日は別個体が林床の地面から飛び立つのも目撃しています。