2015年6月中旬
▼前回の記事
マイマイガ(蛾)幼虫の二次寄生蜂(Acrolyta sp.)
忙しくて飼育容器を放置していたら、寄主マイマイガ(Lymantria dispar japonica)幼虫の死骸や葉っぱから少し白カビが生えてしまいました。
前回の観察から11日も経って中身を捨てようとしたら、別種の黒い微小な蜂が新たに出現していることに気づきました。
繭塊からの羽化を観察した二次寄生蜂(Acrolyta sp.)は腹部に赤い部分があったのですが、今回の蜂は真っ黒です。
触角の形状も全く異なり、明らかに別種です。
複眼は濃い褐色(焦げ茶色)で、翅は透明です。
これがマイマイガ幼虫を寄主とする一次寄生蜂(コマユバチ科?)だとしたら、二次寄生蜂よりも羽化が遅いのは奇妙です。
母蜂が寄主に産卵した時期が遅かったのでしょうか?
採集して以来ずっと密閉容器に隔離しているので、外からの新たな混入はあり得ません。
羽化してくるところを見てないのですが、実は三次寄生蜂だったりして?
事態はますます混沌としてきました。
これほど種々の寄生蜂が盛んに活動していれば、去年ほど酷いマイマイガの大発生は起こらないのではないかという気がしてきました。
寄主マイマイガの大発生から一年遅れて天敵(寄生蜂)の個体数が増えた結果、二年連続の大発生が抑えられている、と勝手にイメージしています。
黒い寄生蜂は容器に張ったサランラップの裏面に止まり、大顎でラップを必死に食い破ろうとしています。
繭から脱出するときも同様に大顎で噛み破るのでしょう。
腹端に産卵管が見えないので♂なのかな?
しかしラップを毒針で刺そうとしているように一瞬見えました。(@0:29)
非力な微小蜂ではサランラップに穿孔できず(歯が立たず)、脱出できませんでした。
疲れた寄生蜂は容器壁面に止まって身繕いを始めました。
※ サランラップの蓋越しに撮った不鮮明な映像および写真に対して自動色調補正を施しています。
以下は標本写真(後で貼ります)。
シリーズ完。
2015年6月中旬
道端に植えられたクワの灌木から黒く熟した実を摘んで食べようとしたら、葉裏に集合したカメムシの幼虫を見つけました。
齢数がまちまちの幼虫集団でした。
脱皮直後の幼虫は複眼が真っ赤。
集団のままで葉裏の葉脈から吸汁しているのですかね?
それにしては、葉が萎れている様子はありません。
葉をめくって撮影を始めるとカメムシたちはもぞもぞと動き始めました。
それでも、日光を浴びたぐらいでは分散しませんでした。
指で葉表を叩いてみても、意外にも逃げ出しません。
コロニーの端に居た個体に直接触れたら、ようやく逃げ始めました。
「蜘蛛の子を散らすように」逃げ惑うと予想したのですけど、意外にものんびりしていました。
カメムシに触れた指の匂いを嗅いでも、特に悪臭はしませんでした。
さて気になる幼虫の和名ですが、エサキモンキツノカメムシ(Sastragala esakii)とヒメツノカメムシ(Elasmucha putoni)辺りで悩みました。
素人目にはとにかく集団内の色彩変異(齢数の違いによるバリエーション)に気を取られてしまい、何が種の特徴なのか分かりません。
異種のカメムシが混群を形成する可能性は?※
実はこの日、出歩いた中であちこちの桑の葉裏で同様のカメムシ集団を見かけました。
写真を撮るのが億劫でスルーしていたのが残念。
ブックマークしていた「カメムシBBS」になぜかアクセスできなくなっていたので、いつもお世話になっている「不明幼虫の問い合わせのための画像掲示板」に問い合わせてみました。
すると早速akaitoriさんより、ヒメツノカメムシ幼虫に似てるとご教示頂きました。
ご紹介いただいたリンク先の飼育記録(およびフィールド観察)が秀逸で参考になりました。
桑の赤い実を好んで吸汁するそうです。
私も採集して飼育しようか迷ったのですが、他の飼育ネタで手一杯でした。
※【追記】
「カメムシ&混群」で検索してみると、唯一ヒットしたのが石垣島での興味深い採集記録でした。
ナナホシキンカメムシとハラアカキンカメムシが混群を形成する例が書いてました。(それほど単純な話ではありません)
セグロアシナガバチ巣の定点観察#1
2015年6月中旬
山際の神社の屋根裏というか軒下にセグロアシナガバチ(Polistes jokahamae)創設女王が営巣していました。
ワーカーは未だ羽化しておらず、女王の単独営巣期のようです。
在巣の女王の写真を撮ると前伸腹節が黒いことから、この辺りでよく営巣するキアシナガバチではなく、珍しくセグロアシナガバチと判明しました。
セグロアシナガバチの巣を見つけたのはこれが初めてです。
一部の育房は白い繭キャップで塞がれています。
老熟幼虫や繭の入った育房には新たに卵が産み付けられており、これから育房壁が伸びると二階建ての構造になります。
このような二段利用はセグロアシナガバチやキアシナガバチで知られています。
(参考:『日本の昆虫3:フタモンアシナガバチ』 文一総合出版 p62)
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キアシナガバチの育房は二階建て
軒下に巣を見つけた時には既に夕方で、通常の動画を撮るには光量不足でした。
そこで夜になるのを待って赤外線の暗視動画に撮ってみました。(18:32〜18:58)
もはや肉眼では軒下を見上げても真っ暗で何も見えません。
夜の女王は巣盤の下面中央に陣取って身繕いしていました。
ときどき育房を点検して回ります。
白色LEDを点灯しても高所のため、光がほとんど届かず暗いです。
つづく→#2:夜の巣で寝るセグロアシナガバチ女王とワーカー【暗視映像】
2015年6月中旬
道端に咲いたサラサウツギの灌木でルリシジミ(Celastrina argiolus ladonides)が訪花していました。
翅を閉じたまま吸蜜に夢中です。
翅表を見せてくれないため、性別は不明。
飛来したクマバチに驚き、飛んで逃げました。
2015年6月中旬
道端の花壇に咲いたゼニアオイをセイヨウミツバチ(Apis mellifera)のワーカー♀が訪花していました。
体中が白い花粉で汚れているものの、後脚の花粉かごは空荷です。
花の手前で見事なホバリング(停空飛翔)を披露してくれました。
吸蜜で満腹になったのか、風で揺れる葉にしがみついてのんびり身繕いを始めました。
これから花粉団子にまとめるのでしょうか?
遠雷♪が聞こえて夕立が降ってきそうなのに、飛び立つ気配がありません。
私の方が根負けしました。
2015年6月中旬
道端の原っぱに咲いたムラサキツメクサ(=アカツメクサ)をメスグロヒョウモン♀(Damora sagana liane)が訪花していました。
翅を開閉しながら吸蜜しています。
集合花の蜜腺が多数あるのか、同じ花で向きを変えながら長時間吸蜜しています。
花から花へ飛び立つシーンもようやく撮れました。
2015年7月中旬
▼前回の記事
死んだハシボソガラス(野鳥)の生物分解
昨年の夏(2014年7月下旬)にハシブトガラス(Corvus corone)の死骸を見つけました。
当時は気づかなかったのですが写真を見返すと、口の中が赤いので巣立ったばかりの幼鳥のようです。(成鳥は口の中が真っ黒)
自分で餌が上手く取れずに餓死したのですかね?
(解剖して胃内容物を調べるには、死骸の発見が少し遅かったです。)
幼鳥とは言え、カラスを襲う天敵が思いつきません。
もし万一、死因が鳥インフルエンザなら感染のリスクがあるかも…と心配したものの、杞憂に終わりました。(※追記参照)
せっかくなので、頭骨の標本を作ってみました。
全身骨格標本や剥製を作るのは物凄く手間がかかりそうなので、頭骨に絞りました。
ハシブトガラスから全身骨格標本を作る方法を詳細に解説したサイト(生物教材として骨格標本を作っておられる専門家)を後になってから見つけました。
私はほぼ自己流でやってしまいました。
完成がここまで遅れたのは、一気に仕上げず作業の途中でかなり放置してしまったからです。
亡骸を採集してから4日後に、作業開始。
ほとんど羽と骨のみで、干からびていました。
死臭も少なく、ハエもほとんど来ません。
死骸の接地していた側の肉や内臓は生物分解されていました。
まずカッターナイフで首の皮と頸骨を断ち切りました。
頭部を水で煮て除肉します。
沸騰するとアクと悪臭が大量に出ました。
何度も頭を裏返しながら弱火で煮ます。
嘴の中に舌骨が見えます。
眼球を支える強膜骨をきれいに残す方法が分からないので、取り除いてしまいました。(元から眼球は食われていたかも?)
このまま7ヶ月以上も室内に放置された頭骨は褐色に色素沈着していました。
もしかするとこの期間にカツオブシムシなどが乾燥組織を食べに来ていたかもしれません。
上下の顎が外れてしまいました。
タンパク質分解酵素を含むポリデント(入れ歯洗浄剤)処理は手軽ですけど、関節がばらばらになる失敗が怖いので、ただ水に浸してじっくり腐らせることにしました。
ペットボトル容器に頭骨を入れ水道水をなみなみと注ぎました。
サランラップで覆い、更にビニール袋で三重に密閉してから、保管します。
室温放置で丸2ヶ月が経過したので、頭骨を取り出してみました。
水は少し濁っていたものの、特に腐臭はしませんでした。
取り出した頭骨を水洗い。
嘴をキャップ状に覆う銀色の組織は、指で擦るだけで剥落しました。
関節?が今にも外れそうなので、歯ブラシで擦ったり漂白処理するのは中止。
後は自然乾燥するだけです。
脱脂処理(アセトン)も漂白処理(過酸化水素水)もしていない手抜きです。
(薬品の入手や廃液の処理が面倒そう)
頭骨標本を売り物にする訳でもありませんし、純白の白骨にしなくても、自然な色合いで満足しています。
充分に乾いてから側頭部の細長い骨を木工用ボンドで接着しました。
上下の嘴の先端をがしっかり噛み合わせようとすると、後頭部の接合部が浮いてしまいます。
何か重要な骨を紛失してしまったかな?
下顎の骨を間違って上下逆にしてますかね?
上下の嘴を接着せず、下顎にただ頭骨を乗せているだけです。
余った謎の骨は頚椎骨と舌骨の一部でしょうか?
舌骨と強膜骨を失ってしまったこと以外、初めてにしては満足の行く出来栄えでした。
頭骨の重量を量ると、上が2.1g、下が0.8gの計2.9gでした。
空を飛ぶために、おそろしく軽量化されているのですね。
実際に頭骨標本を手に取ってみると、あれほど賢いカラスの脳容量が小さいことに驚きます。
頭骨のほとんどは眼窩が占めています。
それでも他種の鳥類と比べれば破格に頭でっかちなのかもしれません。
【追記】
中村眞樹子『なんでそうなの 札幌のカラス』という本によると、
高病原性鳥インフルエンザに感染しやすいのはキジ類やカモ類などの鳥たちで、カラスが感染する可能性は低いとされています。 (p193より引用)
他にもカラスがよく罹る病気として、クル病やペローシス(腱はずれ;perosis)、鳥ポックスウイルス感染症、ウェルシュ菌などによる腸炎が詳しく解説されていて、とても勉強になりました。
ノシメマダラメイガの飼育記録#11
▼前回の記事
チョコレートに群がるノシメマダラメイガ(蛾)若齢幼虫【微速度撮影】
2015年6月上旬
ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)若齢幼虫がチョコレートを食害する様子を、今回はマクロレンズ装着のカメラを三脚に固定して接写してみました。
フォーカスの微調節がちょっと面倒臭いです。
穀類(押し麦と黒胡麻)の上に置いたチョコの側面に穴を開けて集中的に食害しています。
幼虫が育ってきた(大きくなった)ので、大顎の動きがよく見えるようになりました。
幼虫は蠕動運動で後退することも可能です。
チョコレート上面に施された商品名の刻印の中に潜んで不規則網を張り、巣内(シェルター)で採食している個体がいます。(@3:32〜)
自分の糞や成虫の鱗粉を糸で綴っているようです。
刻印Aの溝に体の幅がほぼぴったり収まります。
一方、チョコには目もくれず、穀類(押し麦と黒胡麻)隙間に潜り込んで食べてる個体もいます。(開け胡麻!)@6:03〜
引きの絵にすると黒胡麻の上に白い卵が産み付けられているような気がするのですが、成虫の鱗粉かもしれず、いまいち自信がありません。
成虫の死骸も後に重要な役割を果たします。
つづく→#12:ピンク色になった幼虫
【断り書き】
有名な某チョコレート製品に刻印されたロゴがばっちり写ってしまっているので、菓子メーカーの名誉のために申し添えます。
(映像だけ見て早とちりしたり風評被害や営業妨害になるといけないので、具体的な商品名やメーカーを明記するのは差し控えます。)
決して購入した商品にノシメマダラメイガ幼虫が混入していたのではなく、密封パッケージ等の品質管理に落ち度は全くありません。
また、チョコレートに防虫剤などは添加されていない安全な食品であることも分かります。
今回、飼育用の餌にこの銘柄のチョコレートを選んだのもたまたま近所の店で一番安かったからで、他意はありません。
チョコ表面のロゴを削るか裏返して置くか、映像にモザイクを掛けるべきですかね?
当然ながら、飼育で増やした害虫を外に放つこともしません。
2015年6月中旬
▼前回の記事
枯れ草の茎から巣材を集めるフタモンアシナガバチ♀
巣材を集めてからフラフラと飛んで行くフタモンアシナガバチ♀(Polistes chinensis antennalis)を追うと、すぐ近くの民家の屋根の軒下に帰巣しました。
在巣の蜂は計5頭。
先ほど枯れ草の茎から巣材を齧り取っていたのは創設女王ではなく、ワーカー♀と判明しました。
営巣地の近所から巣材を集めてくることも分かりました。
巣盤には白い繭キャップが見え、その幾つかは羽化後の空繭でした。
創設女王と思われる大型の個体が巣盤中央上部で静止しています。
念入りに身繕いしている個体や、育房内に頭からすっぽり潜り込んでいる個体もいます。(幼虫との栄養交換?)。
巣材を持ち帰った個体は、増築が必要とされる部位を決めるため巣盤をうろうろと徘徊しています。
巣盤の中央部で造巣を始めました。
作業の邪魔にならないよう、女王と造巣ワーカー以外は巣盤の天井側へ退避しました。
フタモンアシナガバチはありふれた普通種ですけど、実は共同営巣期のコロニーを観察できたのはこれが初めてかもしれません。
いつも単独営巣期の段階で駆除されたり創設女王が逃去したりしていました。
※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。
2015年6月中旬
道端に咲いたサラサウツギ(=ヤエウツギ)の灌木でキタテハ(Polygonia c-aureum)が何頭も訪花していました。
翅を開閉しながら花に口吻を差し込んで吸蜜。
ゼンマイ状の口吻を伸縮させながら休んでいるだけのときもありました。
翅を開いて日光浴なのかもしれません。
3日ぶりの定点観察でしたが、早くも一部の花が枯れ始めました。
2015年6月中旬
道端のちょっとした空き地に蔓延るツルマンネングサの群落にフタモンアシナガバチ(Polistes chinensis antennalis)のワーカー♀が1匹来ていました。
てっきり吸蜜のために訪花しているのかと思いました。
▼関連記事
ツルマンネングサの花蜜を吸うフタモンアシナガバチ♀
ところが、地面に落ち倒伏した真っ直ぐな枯れ茎の表面から巣材を集めていることに気づきました。
(植物名は不明。パピルス…ではなくて、なんとなくススキやセイタカアワダチソウですかね?)
「こんちゅーぶ!」の記録を遡ってみてもフタモンアシナガバチの巣材集めを観察したのは意外にもこれが初めてでした。
また他の種類のアシナガバチ類でも材木の表面から巣材を集めていることが多く、草の枯れ茎を巣材としている例は初見でした。
巣材集めの間にセイヨウミツバチ♀がツルマンネングサを訪花しています。
大顎で齧り取ったパルプを団子状に丸めると、フタモンアシナガバチ♀は巣材を持ってふらふらと飛んで行きました。
飛行速度がゆっくりなので目で追うと…。
つづく→軒下で造巣
2015年6月中旬
トンボエダシャク♂(Cystidia stratonice stratonice)が桑の葉に乗っていました。
腹端に黒い尾毛があるので性別は♂です。
ほんのわずかに腹端を持ち上げている気がするのですが、葉の形状に体を沿わせているだけかもしれません。
腹端のヘアーペンシル(hairpencil, scent brush)から性フェロモンを放出してる(コーリング)のか?とちょっと思いました。
ヒラヒラと飛ぶ様子は撮れませんでしたが、別な種類の木に移動しました。
翅を開閉しながら葉柄に止まっています。
最後は翅を広げたまま静止。
この樹種がお分かりの方はぜひ教えて下さい。
周囲の環境は杉林の林縁で、雑木の灌木が並んでいました。