2021/06/19

睡蓮の葉の上で交尾するアメンボ♀♂

 

2019年8月中旬・午後12:10頃・晴れ 

真夏の睡蓮池でアメンボの一種がヒツジグサの濡れた葉の上で交尾していました。 
アメンボの♀♂カップルは葉の上を歩くと最後はピョンと跳び下りて池の水面に戻りました。 
風で波打つ水面を滑るだけでなく、ピョンピョン跳ねて移動して行きます。 
ところがしばらくすると、別のスイレンの葉に再び打ち上げられてしまいました。 
風で荒れる水面から自発的に避難したのかな?
アメンボも大シケだと船酔いしたりして…?

※ 交尾器の結合状況がよく見えなかったのですが、交尾前または交尾後の配偶者ガードかもしれません。

岸辺の卵塊に潜り込むヤマアカガエルの抱接ペア♀♂

前回の記事:▶ 浅くて小さな池は繁殖期のヤマアカガエルに不人気?(岸辺で♀を待つ♂同士の誤認抱接/縄張り争い)

2021年3月中旬・午後13:30〜13:45頃・くもり 

定点観察のため前回から3日後に山中にあるヤマアカガエルRana ornativentris)の繁殖池を再訪しました。 
里山の雪解けが更に進み、池の周囲で地面が露出した部分が増えています。 
池Hの東端には前回よりも多くの卵塊が産みつけられていました。 
ゼラチン質のブヨブヨした卵塊は水中で浮遊していて、風が吹くと波の動きで揺れています。 
卵の中の黒い点で胚発生がゆっくりと進行中です。 





卵塊の真下の水中に抱接ペアが潜んでいました。 
いよいよ産卵してくれるかな? 
♀の額が白く汚れていて、個体識別に使えるかもしれません。 
例によってヤマアカガエルの抱接ペアはとても臆病かつ慎重で、なかなか岸辺に上がってくれません。 
遂に♂を背負った♀が池の底を登り始め、岸辺の卵塊に近づきました。 
抱接ペアは既存の卵塊の下に潜り込んで静止しました。 
次には卵塊をかき分け、上にのしかかるように静止しました。 
水面から顔を出した♀は水中で仁王立ちのように後脚でほぼ直立しています。 
♀が水中に居る限り(上陸しない限り)、抱接♂は鳴かないようです。 
しかし、いくら待っても産卵を始めてくれません。 

突然、方向転換して卵塊から離れてしまいました。 
潜水して水底でしばらく待機すると、岸辺の別区画(卵塊なし)に近づいています。 
この♀は産卵地の探索モードなのでしょう。

赤外線温度計で池Hの水温を測定すると、 岸辺に産みつけられた卵塊の表面(濡れている)は10.2℃。 浅い岸辺の水底は6.5〜8.4℃。(別地点) 深い水底は5.2℃でした。 非接触式の赤外線温度計を使うと、普通の温度計で測定するよりも私が色々と動き回らずにすみます。 とにかく警戒心の強いヤマアカガエルを撮影するには、なるべく刺激したくありません。 

どうして抱接ペアは産卵してくれないのでしょうか? 
日が暮れるのを待っているのか、それとも曇りという天候が気に入らないのかな? 
(後に資料を読むと、雨の日にヤマアカガエルの産卵が活発になるのだそうです。) 
この池Hでは独身♂による求愛歌のコーラスが聞こえず静まり返っているので(沈黙の春)、抱接ペアの♀は警戒しているのかもしれません。 
そもそもこの日は、岸辺で待機する独身♂の姿をほとんど見かけませんでした。 

岸辺の卵塊付近で待機する独身♂2

池の底の卵塊付近で待機する独身♂



残念ながら、ヤマアカガエルの繁殖期は終わりつつあるのかもしれません。 
来季は気合を入れて、雨の降る日に夜通しの終日観察をしてみる必要がありそうです。 
池の畔に予め本格的なブラインドを張って(かまくら制作?)中から隠し撮りすれば、カエルに見つからずに撮影できそうです。
いっそのこと、岸辺に無人カメラを仕掛けたり、抱接ペアを捕獲して飼育下で産卵させる方が早いかも。



2021/06/18

早朝の川で激しく争うコハクチョウの群れ(早春の野鳥)

 

2021年3月下旬・午前6:05頃・晴れ 

白鳥が日本での越冬を終えて北帰する前に久しぶりの観察にやって来ました。 
コハクチョウCygnus columbianus bewickii)の群れが毎晩過ごす集団ねぐらの川で夜が明けるのを待ちました。 
日の出時刻(午前5:26)から30分後、目覚めて対岸近くに集結したコハクチョウの群れ内でなぜか喧嘩が始まりました。
初めはオナガガモ♀♂の群れとオオバンもコハクチョウに混じって居たのですが、コハクチョウが大騒ぎを始めると他の水鳥は離れてしまいました。 

事の発端は、1羽のコハクチョウ成鳥が興奮したように奇妙な鳴き声で騒ぎ始めたことです。 
翼は半開きのまま、斜め前方に伸ばした首を上下に曲げ伸ばししながら、喉から絞り出すように大声で鳴いています。 
私は白鳥の行動について未だ勉強不足なのですが、これは求愛行動なのでしょうか? 
何をアピール(または抗議?)しているのか、さっぱり分かりません。 
この時期に縄張り争いをするはずはありません。
なんとなく幼鳥が親鳥に餌乞いするとこんな風に振る舞いそうだと思ったのですが、この個体は成鳥です。 
コハクチョウの群れ内で互いに鳴きながら突進したりつつき合ったりする闘争が勃発し、大騒ぎになりました。 
体色が灰色に煤けて見える幼鳥がドサクサに紛れて純白の成鳥につっかかって行くこともあって驚きました。 

朝の目覚めの挨拶にしては随分と攻撃的です。 
この集団塒には複数の家族群が集まっていると思うのですが、家族間で争っているのですかね? 
それにしても、何を巡って喧嘩しているのか、さっぱり分かりません。 
これから小群(家族群?)に別れて、川から採食地に向かって順次飛び去るのですけど、離塒の順番を決めるのに揉めているのでしょうか? 
給餌人が毎朝やって来る前にコハクチョウの群れが岸辺で場所取りの争いを繰り広げるという話なら少しは理解できるのですが、今回の喧嘩は給餌の5分後でした。 
毎朝川に通って白鳥を観察しないと、こうした疑問は解決しそうにありません。 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

早春の谷川に入って走り去るニホンカモシカ

 

2021年3月中旬・午前後12:05頃・晴れ 

私がスノーシューを履いて里山の谷沿いをザクザク登っていると、私の足音に気づいたニホンカモシカCapricornis crispus)が慌てて逃げて行きました。 
慌ててカメラを向けたものの間に合わず、雪解け水が流れる冷たい川に入ってバシャバシャと上流へ(砂防堰堤の方へ)逃げて行くカモシカの後ろ姿がほんの一瞬だけ写っていました。 
1/10倍速のスローモーションでリプレイ。 
雪国のカモシカは厳冬期でも平気で川に入ることが知られていて、それ自体は驚くことではありません。
関連記事(8年前の撮影)▶ ニホンカモシカが冬の谷川を渡渉
実はその3日前に、私はこの沢に降りて探索(アニマルトラッキング)していました。 
映像後半はその様子です。 
ジャリジャリに溶けかけた雪面にニホンカモシカの蹄の跡を見つけたので辿ってみると、砂防堰堤付近の沢沿いの岸を上流に向って移動していました。 
カモシカの足跡は急斜面を登っていたものの、私の体力が残っておらず、追跡を断念。 
この日見たのは痕跡だけで、生身のニホンカモシカと出会えていません。 

さすがのカモシカでも砂防堰堤の切り立ったコンクリートは(おそらく)登れませんが、沢の両側の急斜面なら難なく登り降りできると足跡から分かりました。 
つまり連続する砂防堰堤に挟まれた短い上流域にカモシカは閉じ込められている訳ではなく、縄張りの一部として利用しているようです。

2021/06/17

早春の池で共食いするマツモムシ

前回の記事:▶ 早春の池に現れたヤマアカガエルとマツモムシは互いに捕食するか?
2021年3月中旬・午後15:30頃・晴れ 

ヤマアカガエルが繁殖活動をしている雪山の池で奇妙なマツモムシNotonecta triguttata)のペアを見つけました。 
互いに腹面を接して抱き合っているので、初めは交尾中なのかと思いました。 
しかし腹端は接しておらず、どうやら共食いしているようです。
関連記事(12年前の夏に撮影)▶  マツモムシの共食い(1:41〜)
マツモムシの背面を見る機会は滅多にありません。 
獲物を抱えたまま潜水しようとしても、浮力で上手く潜れないようです。 
最後は水底の抽水植物の根元にしがみついて静止しました。 
そこでじっくり獲物の体液を吸汁するのでしょう。
雪解け水の池には他の虫が未だいませんから、飢えたマツモムシは共食いするしかないようです。 

私はここで撮影を止めてしまったのですが、もしかして、これから交尾に移行するのですかね? 
画像検索すると、マツモムシの交尾は対面ではなく背面からマウントするようです。 
てっきりカメムシの仲間は全て反対向きに交尾するかと思ったのですけど、マツモムシは違うのですね。 
マツモムシの繁殖期が早春とは思えないのですが、ハンマー氏は3月下旬に撮影しています(ただし雪国ではない)。 

この池ではヤマアカガエルが繁殖のため多数集まっているのに、マツモムシがヤマアカガエルの成体を襲って捕食するシーンは一度も見たことがありません。 
逆に、ヤマアカガエルが水面・水中でマツモムシを捕食することもありませんでした。 
繁殖期のヤマアカガエルは食欲がないのか、そもそも蛙は水中で獲物を捕食できないのかな? 
マツモムシはカエルの幼生のオタマジャクシは襲って捕食吸汁することがあるらしいです。 

※ 円偏光(CPL)フィルターをレンズに装着したまま撮ったので、その副作用でズームインの倍率を上げた時に像が滲んだようなピンぼけになってしまいました。 

浅くて小さな池は繁殖期のヤマアカガエルに不人気?(岸辺で♀を待つ♂同士の誤認抱接/縄張り争い)

前回の記事:▶ 産卵地点を決めかねて繁殖池の底と岸辺を往復するヤマアカガエル♀♂抱接ペア

2021年3月中旬・午後13:10および14:40頃・晴れ 

雪山で大きな池H(high)から溢れた雪解け水が下段の小さな池L(low)に流れ込んでいます。 
大小2つの池は繋がっているので同じ水質だと思うのですが、繁殖期に入ったヤマアカガエル♀♂(Rana ornativentris)の多くは池Hに集まり、池Lはあまり人気がありません。 
したがって池Hでの撮影が多かったのですけど、池Lで少しだけ撮れたヤマアカガエルの映像をここでまとめておきます。 
他には求愛歌の動画も池Lで撮影しました。 

池Lは日陰になっている部分が多いので、水温が低いのかもしれません。(測定すべき) 
また、池Lは水深が浅く、ショウブ類のような抽水植物の遺骸が底に堆積しています。 
2つの池の間でヤマアカガエルの行き来があるのかな? 
運悪く(?)この池Lで冬眠した個体が早春に目覚めて繁殖活動を始めた場合、「井の中の蛙大海を知らず」のように隣の池Hの存在を知らないまま過ごすのでしょうか?
そんなはずはありません。
なぜなら、♂が求愛歌を鳴いて♀を呼ぶので、近くに別の繁殖池があることは互いに聴覚で認識できるはずです。
ヤマアカガエルが冬眠する条件としては、2つの池のどちらが適しているのでしょう? 
産卵に適した条件とはまた違うのかもしれません。
たとえば水深が浅いと「寒の戻り」で池の水が凍結しやすく、卵塊や幼生が死滅するかもしれません。
逆に、浅い池Lの方が抽水植物の遺骸など幼生(オタマジャクシ)の餌となる有機物の量が多そうです。

♂同士の♀獲得競争が激し過ぎる池Hはいわばレッドオーシャンなので、何か別の勝算があればブルーオーシャンの池Lに来る♂がいても不思議ではない…かな?

シーン1: 
日陰の岸辺に1匹の独身♂が浮かんで池の外側を向き、♀が来るのを待機していました。 

シーン2: 
岸辺で隣り合う独身♂同士で誤認抱接したようです。(跳びつく瞬間は撮り損ね) 
本当の(♀相手の)抱接とは違ってしがみつく力は緩いのですが、マウントを取ると背後から体当たりのように何度も相手をぐいぐい押しています。 
やられた♂は小声でリリースコール♪を発していましたが、やがて逃げて行きました。 
池Hでも見られたこの行動は♂同士の闘争(縄張り争い)だと私は考えています。 
繁殖期のヤマアカガエルで縄張り行動は見られないというのが定説になっているらしいのですが、どうも私には納得できません。 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

観察初日の記録は以上です。 

2021/06/16

営巣地に領空侵犯したトビを追い払うハシブトガラス(野鳥)

前回の記事:▶ ニセアカシアの枝を運んで高架橋の側面に巣作りを始めたハシブトガラス♀♂(野鳥)
2021年3月下旬・午前9:25頃・くもり 

高速道路の高架橋の側面に営巣したハシブトガラスCorvus macrorhynchos)の♀♂つがいを観察していると、巣から飛び出した1羽が近くの電柱の天辺に止まりました。 
腹面の羽毛が乱れているのは、初期巣を作っている作業の影響でしょうか? 
未だ産座を作る段階ではないので、自分の羽毛を毟り取ったはずはありません。(まさか♀の抱卵斑?) 
それとも興奮すると鳥肌が立って全身の羽毛が逆立つのかな? 
カメラを左にパンすると、広い農地を挟んで離れた所に立っている別の電柱の天辺にパートナーが陣取っていました。 
左を向いて大きく広げた翼を上下に動かしながら威嚇の鳴き声♪を上げました。 
繁殖期のカラスは縄張り侵入者に対して警戒を強めています。 

しばらくすると、ハシブトガラスは初期巣を作っている高架橋に戻りました。 
巣があるのと反対側の橋脚の手摺に止まり、周囲を警戒しています。 
急に飛び立ったので、てっきりしつこくカメラを向けている私を攻撃してくるかと焦りました。 
しかしカラスは左旋回すると高架をくぐり抜け、縄張りに侵入した鳥を追いかけ始めました。 
撮影中は隣の縄張りのカラスがちょっかいをかけに来たのかと思ったのですが、1/5倍速でスロー再生してみると、縄張り侵入者の正体はトビMilvus migrans)でした。 
つまり天敵の猛禽に対するモビング(擬攻撃)と判明。 
慌てて逃げるトビに空中戦を挑んで縄張りの外に追い出すと、ハシブトガラスはもう深追いしませんでした。 
近くの電線に止まり、興奮したように勝どきの声♪を上げているようです。(聞き取れず) 
尾羽根を高々と持ち上げる動きを繰り返しているのは、激しく揺れる電線でバランスを保つための行動でしょうか。 
モビング直後で気が立っていたカラスは、電線に止まっていた先客の小鳥に対しても威圧的に振る舞い、追い払ってしまいました。 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

産卵地点を決めかねて繁殖池の底と岸辺を往復するヤマアカガエル♀♂抱接ペア

前回の記事:▶ 繁殖池の岸に上陸して産卵場所を探し回るヤマアカガエル♀♂の抱接ペア(その4)崖から滑落・ライバル♂を撃退-+

2021年3月中旬・午後15:25頃・晴れ 

雪山の池Hでヤマアカガエル♀♂(Rana ornativentris)の抱接ペアが水底から対岸の岸辺に向かって慎重に上がって来ました。 
岸辺の水草の辺りで静止し、周囲の様子を窺っています。 
岸の残雪の端から雪解けした水滴が池の水面にポタポタと滴り落ちて波紋が広がっています。 
しばらくすると抱接ペアが何かに驚いたのか、それともこの場所は産卵に不適と判断したのか、岸辺から水中に潜ってしまいました。 
池の底では近くに潜んでいたあぶれ♂が気づいて抱接ペアに少し近づいたものの、♀の争奪戦(蛙合戦)には至りませんでした。 

7分後、同じ池内でも別の方角の岸辺にヤマアカガエルの抱接ペアが現れました。
(同一ペアかどうか不明)
別個体♀によって最近産みつけられた大量の卵塊の近くです。
♀の背にしがみついた♂が喉をヒクヒクサせているのは、小声で♀にささやきかけているのかな? 

繁殖池Hにおける観察初日の記録は以上です。 


2021/06/15

ジガバチ♀が探餌飛翔の合間に休憩

 

2019年9月下旬・午後16:20頃・晴れ 

夕方の河原でジガバチの一種♀が草地の上を低空で飛び回っていました。 
やがて飛び疲れたのか、砂地(砂利)に着陸すると西日を浴びながら一休み。(日光浴?)
正面を向いた時に顔色が黒いので、♀と分かります。 
触角が動かなくなったので、まさかこのまま寝るのかと思いきや、 しばらくすると覚醒してその場で方向転換。 
飛び立つと疎らに生えた草むらの方へ再び獲物となるイモムシを探索しに出かけたようです。(探餌飛翔)

繁殖池の岸に上陸して産卵場所を探し回るヤマアカガエル♀♂の抱接ペア(その4)崖から滑落・ライバル♂を撃退

 


2021年3月中旬・午後15:00頃・晴れ 

繁殖池Hの水中をヤマアカガエル♀♂(Rana ornativentris)の抱接ペアが対岸に向かって泳ぎ始めました。 
撮影順序からすると、直前に撮った抱接ペアと同じかもしれません。 
しかしヤマアカガエルを個体識別できていない私は、本当に同一ペアかどうか自信がありません。 
抱接ペア♀♂を見つけたら目を離さずにひたすら動画を撮り続けるべきなのですが、池のあちこちで様々な事件が次々に起こるために、どうしても目移りしてしまいます。 

対岸に泳ぎ着いた抱接ペアは、水面から顔を出してしばらく辺りの様子を安全確認しています。 
岸辺に沿って右へ右へ移動しながら産卵に適した場所を探索しているようです。 
沢の水(雪解け水)が池Hに流れ込んでいる地点に上陸した♀が露出した崖を登り始めたので私はびっくりしました。 

♂を背負った♀が流水で濡れた崖で向きを少し変えた途端に滑落し、池にポチャンと落ちてしまいました。(@2:16) 
抱接ペアはそれでもめげずに岸辺を左に少し泳ぐと、再上陸する地点を探しているようです。 

あぶれ♂が待機していた岸辺に抱接ペア♀♂がたまたま接近してしまいました。 
気づいたあぶれ♂がすかさずペアの背中にとびかかってマウント・抱接を試みます。 
水中で激しい蛙合戦が始まりました。 
配偶♂が背後からしがみついてくるライバル♂を足蹴にしながら、♀は慌てて潜水で逃げます。 
産卵地探索を邪魔された抱接♀♂ペアは深い池の底に潜ったまま静止しました。 
あぶれ♂はいつものようにあっさり諦めてペアから離れ、自分の縄張り(岸辺)に戻りました。 
独身♂が抱接ペアに挑みかかって♀を強奪するシーンを私は一度も見たことがありません。 
私が見た限り、抱接ペアの♂は常にライバル♂に勝って配偶者ガードに成功します。 
そもそも強い♂が♀を獲得してペアを形成し、非力な弱い個体があぶれ♂となって岸辺に並ぶようになるのかもしれません。 
個人的な妄想ですが、あぶれ♂の繁殖戦略はスニーカー型で、抱接ペアが産卵を始めた瞬間に卵塊に跳びついて(抱接に参加して)放精するのではないかと予想しています。

今回、池の水面からの眩しい反射光を抑えて水中の様子がよく見えるように、カメラのレンズに円偏光(CPL)フィルターを装着しました。 
比較的近い水中の被写体を撮る分には確かに効果的なのですが、対岸の遠いカエルを撮るために望遠側にズームインすると像が不自然に滲む(ピンぼけ?)副作用が現れてしまいます。 
現場でこの症状に気づかずにCPLフィルターを付けたまま撮影を続けたのがつくづく悔やまれます。 
私は池から離れた雪面に立って撮影したので、直射日光だけでなく雪からの照り返しもあって非常に眩しい状況でした。 
カメラのバックモニター(液晶画面)がほとんど見えず、オートフォーカス(AF)にお任せで適当に撮ったのです。 
横着せずにカメラのファインダーを覗いて確認すべきでしたね。 
この動画をお蔵入りにしようか迷ったのですが、記録された行動自体は興味深いので、不本意ながら公開しておきます。
安物買いせずにカメラメーカー(Panasonic)純正品のCPLフィルターを買っておけば、こんな副作用は出ないのですかね?

さて、池畔の崖を登ろうとした抱接♀の行動をどのように解釈したらよいでしょう?
繁殖池を離れて山に帰りたいのであれば、既に産卵を終えた♀が冬眠場所に戻ろうとしているのでしょう。 
しかし池の周囲は未だ残雪で一面覆われています。 
雪解けして地面が僅かに露出した所で地中に潜り込むのかな?
♀に未練がましく抱きついている♂は、女心が分からない野暮な♂ということになります。 
変温動物のヤマアカガエルが冷たい雪面を長距離移動するスクープ映像が撮れるか!と期待に胸が高鳴りました。
(雪山踏破なんてカエルには無理だ!というのが私の予想・先入観です。) 
捕獲したヤマアカガエルを池から離れた雪面に放せば再び池に向かって移動してくれるか、低温耐性を実験で確かめたくなりました。 
(途中で低体温になり動けなくなるか? 活動限界を迎えるか?) 
一方で、産卵後のヤマアカガエル♀は再び池の底で冬眠する、という説もあります。 


無料で閲覧できるPDF文献をネット検索で調べてみると、ヤマアカガエルの抱接ペアは産卵が済むと直ちに別れてしまうのだそうです。
したがって、今回観察した抱接ペアは未だ産卵前で、産卵適地を探索中だったことになります。

 ♀は、産卵の準備ができた個体だけが調査地内に現れ、出現直後には♂とペアを形成した。♀が現れてからペアを形成するまでの過程は、残念ながら断片的な観察しかできなかった。ペアはあちこち移動を繰り返してから産卵したが、その際、既に産みつけられた卵塊の脇を産卵場所として選ぶ傾向が強かった。産卵そのものに要する時間はきわめて短く、せいぜい1〜2分程度であった。産卵が終了すると♀♂は離れ、♂は再び活発な活動を始めたが、♀はしばらくその場で浮かんでいることが多かった。産卵後の♀が翌日以降に再び発見されることはなかった。(下山2001より引用)


 一般に両生類の♂は繁殖期間中は水中に留まり、♀の到着を待つ。一方、♀は産卵直前の状態で産卵場所に現れ、産卵をすますとすぐに上陸してしまう。(中略)(アカガエル類の:しぐま註)産卵は1分ほどで終わり、♂はすぐに抱接を解いて♀から離れる。(倉本ら2000より引用)

 

【参考文献】 
・倉本満, 石川英孝. 北九州市山田緑地におけるアカガエル類の繁殖生態. 爬虫両棲類学会報, 2000(1), 7-18.(PDFファイル) 
・下山良平.ヤマアカガエルの繁殖活動.茅野市八ケ岳総合博物館紀要2001(9), 1-5. (PDFファイル) 長野県茅野市の水田で4月に調査した記録です。

ただし、これら専門的な文献を読んでもどうしても納得できなかった箇所があるので、自分の目で産卵の一部始終を観察しない限り、参考にしつつも鵜呑みにはできません。
日本国内でも調査地によって気候が異なりますから、ヤマアカガエルの繁殖生態が微妙に変わってくる(適応進化)ことは充分に考えられます。




以下に掲載するのは、自動色調補正した崖登りシーンの写真です。

2021/06/14

ニセアカシアの枝を運んで高架橋の側面に巣作りを始めたハシブトガラス♀♂(野鳥)

 

2021年3月下旬・午前9:00〜9:30頃・くもり 

高速道路が田園地帯を通り川を渡る手前の地点で高架橋の周囲を飛び回るハシブトガラスCorvus macrorhynchos)が嘴に長い枝を咥えていました。 
近くの電柱の天辺に止まり直して休んでいる間も、細長い枝を持て余しています。 
春はカラスの繁殖期ですから、巣材を運んでいる途中だと私には予想がつきました。 
ハシブトガラスはおそらく作りかけの巣の位置を私に知られたくなくて、巣材の運搬途中に油を売っているのでしょう。 
自分の体長より長い小枝を咥えたハシブトガラスが電柱天辺の水平支柱に止まっています。 
枝の中央部を咥えるように器用に持ち替えて、枝の左右のバランスを取り直しました。 
そこから飛び立つと高架下をくぐって別の電柱の天辺に止まり直しました。 
そこでもバトン回しのように長い小枝を器用に取り扱いました。 
カラスがこんなに長い枝を巣材として運んでいる例を私はこれまで見たことがありません。 
造巣の初期段階では長い枝が必要なのでしょうか。

二箇所に寄り道してからカラスは私の存在が危険ではない(人畜無害)と判断したようで、ようやく巣材を巣に搬入しました。 
ハシブトガラスがせっかく新しく運んできた巣材を積み上げたら、下の巣材を1本落としてしまいました。 

判明した営巣地は意外な場所でした。 
高架橋の目立たない側面に太い排水パイプが水平(やや斜め)に取り付けてあり、その端の上にハシブトガラスは小枝を組み上げて造巣中でした。 
同じパイプで右に少し離れた所にも巣を試作した痕跡があります。 
どうやらこのパイプは、高速道路に降った雨水を路肩に流し、それを集めて下の地面まで排水するために設置されたようです。 
実は最近、河川敷のニセアカシア河畔林が次々に伐採されています。 
おそらく水害(洪水)対策および外来樹駆除のためと思われますが、カラスが長年使っていた営巣木の多くが失われ、深刻な住宅難に陥りました。 
このつがいも仕方なく人工物に営巣するようになったのかもしれません。 
高速道路の高架橋ですから、終日車が走っています。
車の騒音や振動を気にせずに営巣したということは、ヒトが簡単には近づけないという安全性を重視したようです。

巣材を追加した直後に親鳥は澄んだ声でカーカーカーカー♪と4回鳴きました。 
すぐに巣から飛び立つと、次の巣材を採取するために河畔林の方へ向かって行きました。 
河川敷ではヒバリ♂の囀り♪が聞こえますね。 

巣作り中のカラスは巣の位置を極力ヒトに知られたくないはずなので、私は高架橋の巣がある側面とは反対側に回り込んで離れたところから観察することにしました。 
(それでもカラスからは丸見えです。)
すると案の定、ハシブトガラスは寄り道せずに真っ直ぐ帰巣するようになりました。
しばらくすると、♀♂つがいの片方が空荷で(巣材を持たずに)帰巣しました。
(この短いシーンだけ、1/5倍速のスローモーション。) 
出巣するときも、私の目を欺くように高架橋の死角を利用してわざと撒くような飛び方をすることもありました。(行方を見失った) 

出巣したハシブトガラスが高架橋の近くの電線に止まってカーカー♪鳴きました。 
電線から飛び立つと高架下をくぐり抜け、私のほぼ頭上を通り過ぎて河畔林へ向かいます。 
落葉したニセアカシア(別名ハリエンジュ)の樹上に止まり、枝先の生木を嘴で折り始めました。 
落枝を拾い集めるのではなく、わざわざ生木を折るとは驚きました。 
小枝を折る作業中は細い枝先に止まってバランスを保つのに苦労しています。 
採取した小枝を咥えてすぐに巣へ搬入します。 

またしばらくすると、2羽のハシブトガラスが連続して小枝を巣に搬入しました。 
交尾中でもなければ私はカラスの性別を見分けられないのですが、つがいの♀♂共に協力して巣作りしていることが分かりました。 
このとき1羽が巣材の小枝を珍しく左右非対称に咥えて空輸していました。 
小枝が軽ければ左右のバランスを厳密に取る必要がないのでしょう。 

今思うと、三脚を立てて初期巣の建設過程を微速度撮影でじっくり記録すればよかったですね。 
ところが私を警戒したのか、カラスは巣になかなか戻ってこなくなってしまいました。 
私のせいで巣作りを中止しないと良いのですが…。 

撮影が一段落した後で、ハシブトガラスが巣材の枝を採取していた河畔林を訪れました。 
営巣地からの直線距離は約160mでした。 
ただし、ハシブトガラス♀♂は毎回同じニセアカシアの木から小枝を折り取っていた訳ではありません。 
未だ落葉していたものの、ニセアカシア(別名ハリエンジュ)だと樹種が判明しました。 
ニセアカシアの枝には丈夫で鋭い刺が並んでいるので、巣に組み上げた時に互いに刺がひっかっかってずれにくく、巣材として適しているのかもしれません。 
棘だらけの材料で巣作りしたら雛が傷つくと心配になるかもしれませんが、巣の内側には柔らかくてふわふわした素材を敷き詰めて産座を作りますから安心です。

▼関連記事(同じ日に別の場所で撮影:産座の巣材を集めるカラス)



つづく→営巣地に領空侵犯したトビを追い払うハシブトガラス(野鳥)
排水パイプ上の2か所に初期巣を試作している。

【追記】
この営巣地はアクセスが悪く、定点観察に通えませんでした。
6月中旬に現場を再訪すると、雛が巣立った後と思われる空巣(古巣)が残っていました。
初期巣の段階では排水パイプの上2か所に巣材を組み上げていましたが、左側の巣に統一したようです。


ヤマアカガエルの♀♂抱接ペアがあぶれ♂から逃げ回る

 



2021年3月中旬・午後14:00頃・晴れ 

繁殖池の岸辺に上がって産卵地点を物色していたヤマアカガエルRana ornativentris)の抱接ペア♀♂に、横で待機していた独身♂が気づいて泳ぎ寄り、♀に跳び付こうとしました。 
水面にギラギラと反射する太陽が眩しくて浅瀬の水中が見えにくいのですが、挑んできたライバル♂を抱接♂が足蹴にしながら♀は逃げたようです。 
独身♂は諦めが良くて、激しい蛙合戦にはなりませんでした。 
産卵準備を邪魔された抱接ペアは水底に潜ってしまいました。 
スロー再生すると、最後は独身♂が再びカップルに挑みかかったのではなく、元の縄張りに戻ろうと離れて行っただけなのに、抱接ペアは慌てて池の底に逃げて行きました。 

ヤマアカガエルのあぶれ♂は池の岸辺に並んで♀を待機している癖に、いざ抱接ペアが現れても反射的に飛びつくだけで♀を強奪しようとせずに淡白なのが不思議でなりません。 
あくまでも♀が単独で現れるのを待ち構えているのでしょうか? 
カップルが成立した後は横恋慕しないという紳士協定が♂の間に交わされているのかな? 
(♀が必要に応じて性フェロモンを出しているのだとすれば説明がつきそうです。)
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水面にギラギラと反射する太陽光が眩しくて閉口したので、この撮影後にカメラのレンズに円偏光(CPL)フィルターを装着しました。 
しかし、付けたら付けたで望遠側にズームすると像が滲む副作用が現れるので、一長一短です。


2021/06/13

トゲグモ♀(蜘蛛)の垂直円網で音叉を鳴らすと♪…

 

2020年8月中旬・午前10:50頃・晴れ
前回の記事:▶ 円網にかかった獲物を捕食するトゲグモ♀(蜘蛛)
せっかく山道で見つけた珍しいトゲグモ♀(Gasteracantha kuhli)で少し実験してみましょう。 
カメラバッグに入れて常に持ち歩いている音叉を取り出し、叩いてラの音(440Hz)を鳴らしてから正常円網の上部にそっと触れてみました。 
円網の中心部(こしき)に下向きで占座していたトゲグモ♀は、途端に反応して音叉に駆け寄りました。 
トゲグモ♀は音叉に歩脚で触れたものの、噛み付いたかどうかはピンぼけのため不明です。 

獲物ではないとすぐに気づいたトゲグモは再びこしきにすごすごと戻りました。 
(映像はここまで。) 
その後、私が網から音叉をそっと外そうとしても粘着性の横糸がきれいに剥がれずに切れ、網が破損してしまいました。 
したがって、造網性クモに対してこの実験をあまり頻繁にはできません。 
続けて網の修復行動を観察したいところですが、下山しないといけませんでした。

 ※ 音叉の音が聞こえるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 
背後の山林でミンミンゼミ♂やチッチゼミ♂が鳴き続けていますね。 

微小なクモにしっかりピントを合わせることができず、残念な動画になってしまいました。 
森の樹冠部を見上げるアングルなので、カメラのAF(オートフォーカス)に任せると、どうしても背後の枝葉に合焦してしまうのです。 
こういうときは固定焦点MFモードに切り替えてから適当に置きピンして、虫眼鏡のように撮るべきでしたね。 
この日は山に登るため重い三脚を持参せず、手持ちカメラのまま撮らないといけませんでした。 
そのうえ、暑くて少しバテていた私はクモの接写が雑になってしまいました。 


繁殖池の岸に上陸して産卵場所を探し回るヤマアカガエル♀♂の抱接ペア(その3)卵塊付近

前回の記事:▶ 繁殖池の底で♀に殺到するヤマアカガエル♂の群れ(蛙合戦)
2021年3月中旬・午後15:40〜15:46・晴れ 

ヤマアカガエル♀♂(Rana ornativentris)の抱接ペアが雪山の繁殖池Hの水中から岸辺にまた浮上しました。 
同一ペアが産卵場所を物色してあちこち巡っているのか、それとも別のペアなのか、個体識別できていないので不明です。 
今度はヤマアカガエルの卵塊が既に多数産み付けられている区域に現れました。 
産卵実績があるということは、水温や日当たり条件などヤマアカガエル♀が産卵するには最適の場所のはずです。 
もし捕食者が卵を食べに来ても、多数の卵塊が集中的に産み付けてあれば、自分の卵は食べ残される確率が上がるでしょう。(数の多いほうが安全) 
風が吹くとゼラチン質の卵塊がゆっくり波打っています。 

周囲の安全を確かめると、抱接♀は卵塊の間に割り込んだり、卵塊の上にのしかかったりしました。
いよいよ産卵を始めてくれるかと期待したのに、どうも抱接♀は何かが気に入らないようです。 
いくら待っても、この抱接ペアはなかなか産卵を始めてくれません。 
遂には卵塊のある区域から離れて右に少し移動してしまいました。 
抱接♀は日没や降雨を待っているのかな? 
池から少し離れたところに立って撮影している私の存在を警戒しているのだとすれば、野鳥観察のようにブラインドを張って隠し撮りするべきかもしれません。 
予め録音しておいたヤマアカガエル♂の鳴き声(求愛歌)をBGMとして聞かせれば、♀は安心して産卵を始めてくれるでしょうか? (プレイバック実験)
いっそのこと、繁殖池の岸辺に無人カメラを仕掛けるのが早道かもしれません。 

抱接ペアから少し離れた右の岸辺であぶれ♂が縄張りを張り♀を待機していました。 
この独身♂が横に居る抱接ペアに跳びついて♀を強奪するかと期待したのですが、抱接ペアの存在に気づいていないのか、動きませんでした。 
自分の縄張りを離れたくないのかな? 
どうもヤマアカガエルの独身♂はやる気があるのか無いのか、傍目にはやきもきしてしまいます 

※ 遠くの抱接ペアにズームインした強拡大時に変にピンぼけになるのは、カメラのレンズに装着した円偏光(CPL)フィルターの副作用です。 

撮影中ときどきコッコッコッ♪と高音の小声で鳴く声が聞こえたのですが、抱接ペアの鳴き声ではなさそうです。
(♀の背に乗った♂の頬が鳴き声に同期して膨らんでいません) 
 ※※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 



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