2014年8月中旬
キイロスズメバチ移動巣の定点観察#1
登山道の休憩所(東屋)の屋根裏にキイロスズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)が巣を作っていました。
ここは私も頻繁に利用するのですが、一番最近では15日前に来た時はここに巣はありませんでした。
したがって、創設女王が作った母巣ではなく移動巣(第二次巣)であることは間違いありません。
ごく最近コロニーごと引っ越してきたばかりのようです。
『スズメバチの科学』p171より用語の解説
巣の引っ越し(nest relocation)
モンスズメバチとキイロスズメバチにおいて越冬後の女王蜂によって狭い空間に巣が創設された場合、巣の発達に応じて広い場所に新たな巣を造り移動すること。最初の巣を母巣(primary nest)、後の巣を移動巣(第二次巣:secondary nest)という。
キイロスズメバチの古巣はよく見かけるものの、活動期のコロニーを見つけたのは意外にもこれが初めてです。
とてもワクワクしました。
巣の大きさは目測でグレープフルーツぐらいでした。
防護服を持っていないため、危なくて直接測ることは出来ません。
仕方がないので、大きさの目安となる比較対象を採寸することにしました。
巣が固定された天井の梁(太い角材)の幅は115mm、天井板の幅は145mmでした。
映像では6匹のワーカーが外被上で活動しています。
紙製の外被を蜂が歩き回るとガサゴソ、バリバリと足音がします。
真下に作られた巣口の縁を狭く補修している個体がいます。
外被上で2匹が口づけを交わし栄養交換しました。(@1:45)
花蜜もしくは樹液を吸汁してから戻って来たのかもしれません。
巣材集めから帰った♀が(@2:30)巣内に入らず外被上でパルプ玉を噛みほぐしています。
外被を歩き回って増築場所を探しています。
かなり長時間観察しても、肉団子を持ち帰るワーカーを全く見かけませんでした。
おそらく育房内は未だ卵のみで、幼虫が孵化していないため給餌する必要がないのでしょう。
コロニーの総力を上げて外被の増築に専念しています。
樹洞に営巣するモンスズメバチを同時期に並行して観察していました。
(このモンスズメバチの巣も引っ越した後の移動巣ではないかと疑っているのですが、定かではありません。)
樹洞内のモンスズメバチとは異なりキイロスズメバチは巣口で扇風行動を全くしない点が興味深く思いました。
営巣地の立地からも、開放空間に吊り下げたキイロスズメバチの巣は風通しが良くて夏の日差しは屋根で遮られ、いかにも涼しそうです。
巣を冷やす扇風行動が不要なのでしょう。
『スズメバチの科学』p26によると、
・(引越し後の)キイロスズメバチは、家の屋根の軒下などのような開放空間に全体が外被で包まれた楕円形の巣を造るのに対して、モンスズメバチは、大木の空洞などの閉鎖空間に底が抜けた釣り鐘型の外被をもつ巣を造る。
・女王蜂1頭の単独営巣期には敵に見つかりにくく環境も安定している狭い閉鎖空間に巣を造り、多数の働き蜂が羽化し気温も温暖になってから広い場所に引っ越す。
・女王蜂が最初から十分な空間のある場所に営巣した場合には引っ越しを行わない。
つづく→シリーズ#2(造巣の微速度撮影)
2014年9月上旬
夜の給湯室で(〜22:30 pm)タイル張りの壁面にゲジ(Thereuonema tuberculata)が張り付いていました。
夜行性らしいので、暗視ビデオカメラの出番です。
赤外線で接写しても、左脚の一本がぴくりと動いただけで逃げませんでした。
次に写真を撮り、採寸したタイルの一辺の長さから比例計算すると、ゲジの体長は23mmと算出されました。
脚が15対あるので成体と判明。
しかしストロボを焚くと閃光を嫌って、張り紙の裏面の縁に隠れてしまいました。
紙に触れると右往左往逃げ惑います。
しつこくやると流し(シンク)に逃走し、見失いました。
次に機会があれば暗闇で獲物を捕食する瞬間を飼育下で観察してみたいものです。
歩行時の歩脚の動かし方をハイスピード動画に撮ってみるのも面白そうです。
2014年9月中旬
水辺に生えた柳(種名不詳)の灌木でコムラサキ(Apatura metis substituta)が葉に乗って翅を休めていました。
翅表に光沢がないので、おそらく♀だと思います。
構造色の光沢は見る角度によって変わるので、今回は性別判定にあまり自信がありません…。
少し高い枝の葉に止まっていたため、腕を目一杯伸ばしカメラのバリアングルLCDを見ながら撮影しました。
柳はコムラサキ幼虫の食草なので、もしかすると♀が葉に産卵しているのかと期待しました。
しかし、翅を半開きで日光浴しているだけでした。
コムラサキを9月に見るのは初めてかもしれません。
2014年9月中旬
砂利が敷かれた農道でショウリョウバッタ♀(Acrida cinerea)の死骸にクロヤマアリ(Formica japonica)のワーカー♀が群がっていました。
おそらく車に轢かれたのでしょう(ロードキル)。
ショウリョウバッタ成体♀の破裂した腹部から黄色い卵が漏れ出ています。
解体しないと運べない大きさです。
1匹のアリが内臓を咥えて力任せに引っ張るとゴムのように伸びました。
そのまま引きちぎって巣に運搬開始。
時間があれば解体ショーを微速度撮影してみたかったのですが、先を急ぎます。
それにしても、立派なショウリョウバッタを見るのはすごい久しぶりでした。
子供の頃は原っぱでよく見かけたのですけど。
2014年9月上旬
里山の雑木林で苔むしたコナラの樹液酒場でチャイロスズメバチ(Vespa dybowskii)が群れで占有する様子を10倍速の微速度撮影で記録してみました。
同じコロニーから最大3匹のワーカー♀がやって来て交代で吸汁・防衛しているようです。
そのうち1匹の♀腹部の体節にねじれたような横縞模様があることに気づきました。
蛹期の発生(変態)でクチクラにやや異常を来した奇形なのか、それとも例えばスズメバチネジレバネが寄生しているのでしょうか?
この特徴は個体識別に使えそうです。
(来年は樹液酒場に通うスズメバチに個体識別のマーキングをしてみようと思います。)
2匹のチャイロスズメバチが出会うと挨拶のようにキスすることがあります。
口移しの栄養交換と思われます。
樹液の芳香に誘われて種々のハエが周囲に多数集まっており、スズメバチが陣取っている間は近づけずにおとなしく順番待ちしています。
敏捷性はハエの方が圧倒的に優れているので、苛立ったスズメバチに襲われて殺されるようなことはありません。
怖いチャイロスズメバチが居なくなった隙に一斉に樹液に群がります。
2014年9月中旬
畑の隅に植えられたウドの灌木でコアオハナムグリ(Gametis jucunda)が花に群がっていました。
緑色型3匹と赤銅型1匹が花で食事しています。
カメラが影を作らないよう撮影アングルに気を使いました。
2014年9月中旬
道端の花壇に咲いたマリーゴールドの群落でモンキチョウ♂(Colias erate poliographus)が訪花していました。
2014年9月上旬
里山の雑木林で1匹のオオスズメバチ(Vespa mandarinia japonica)のワーカー♀がコナラの樹液を吸っていました。
蜂が飛び立つ瞬間を引きの絵で記録するつもりで240-fpsのハイスピード動画に撮り始めたら、ちょっとしたドラマが始まりました。
幹の下から一頭のクロヒカゲ(Lethe diana)が登って来ました。
少しずつ樹液スポットに近づいて来ます。
正面から対峙し睨み合い。
クロヒカゲは翅裏の眼状紋を見せつけ威嚇しているつもりなのでしょうか?
意外にオオスズメバチも多少たじろいでいる印象を受けました(警戒姿勢)。
日本のスズメバチは天敵であるヒト(日本人)の黒髪や黒い目玉を目掛けて襲い掛かってくることが知られています。
クロヒカゲも万一襲われた時に眼状紋へ攻撃の矛先を逸らして致命傷を避けようとする戦略なのかもしれません。
やがて警戒を解くとオオスズメバチは吸汁を再開。
神経戦に痺れを切らしたオオスズメバチが歩いてクロヒカゲに詰め寄りました。(占有行動)
その迫力に負けたクロヒカゲは飛んで逃げ、幹の背後に回り込みました。
目障りなお邪魔虫を追い払ったオオスズメバチは満足気に身繕いすると、木を登り下りしています。
負けたとは言え、最強のスズメバチに立ち向かっていく強気の蝶がいることに驚きました。
クロヒカゲにしてみれば、ライバルを追い払えなくても口吻を伸ばして樹液に届く距離までなんとか近づければ良い訳です。
眼状紋の有無に関わらず、蝶や蛾の成虫をスズメバチ類が狩って獲物にする例を見聞きしたことはありません。
翅がかさばる割に肉団子になる部分(胸部に詰まった飛翔筋)の割合が少ないので、わざわざ狩る気にならないのでしょう。
したがって、眼状紋の擬態が対スズメバチの自衛戦術として効果があるのかどうか、不明です。
この続きをスローモーションでお見せしても映像的にあまり面白くないので割愛しましたが、実はつづきの未公開映像があります。
クロヒカゲが未練がましくまた飛来して幹の下方に止まりました。
オオスズメバチが油断なく見下ろしている間にクロヒカゲは歩いて幹を登り、別の樹液スポットを見つけて平和に吸汁を始めましたとさ。
めでたしめでたし。
2014年9月上旬
里山の雑木林で樹液が滲むコナラの幹をクワガタムシが登っていました。
未採集なのでコクワガタと迷うのですが、同じ木の根際で小型のスジクワガタ♂が数匹徘徊していたので、この木登り個体もスジクワガタ♂(Dorcus striatipennis)かもしれません。
(♀の可能性は?)
ビデオカメラで撮れたのは側面のみで、どうしても背面をしっかり記録できませんでした。
クワガタは休み休みゆっくり登り、二又の幹の合流地点に隠れました。
夜が来るまでここで休むつもりなのでしょうか。
スズメバチ類と樹液酒場で争うシーンを期待したのですけど、予想が外れました。
▼前回の記事
夜は静かなコガタスズメバチの巣【暗視映像】
2014年9月上旬
コガタスズメバチ巣の定点観察#2014-5
今季は他種のスズメバチの観察を優先した結果、コガタスズメバチ(Vespa analis insuralis)の定点観察に頻繁に通えませんでした。
軒下に営巣したコロニーの様子を久しぶりに見に来ました。
まずは朝に立ち寄ると、ワーカー♀が活動している気配がなく静まり返っています。
13日ぶりなのに外被は全く成長していません。
あちこちに小さな穴が開いているのに修復されていない点も気になります。
何らかの原因でコロニーが逃去してしまい、既にもぬけの殻なのでしょうか?
それとも誰かに駆除されてしまったのか(殺虫剤を噴霧?)、安否が気になります。
念の為に同じ日の晩(19:42 pm)に再訪しても、状況は同じでした。
暗視カメラで動画に撮りながら巣の外被を棒で軽く叩いても無反応でした。(良い子は真似をしてはいけません。)
日を改めてこの巣を採集してみるつもりです。
蜂が居なくなった原因を探るために、どうしても巣盤や育房の発達具合を調べてみたいのです。
つづく→シリーズ#6:キアシナガバチ♀@コガタスズメバチ廃巣
2014年9月中旬
溜池近くの林縁に生えたウワミズザクラの灌木で見慣れない派手な黄色の芋虫を見つけました。
スズメガ科の幼虫の特徴のひとつである尾角は真っ直ぐ伸びています。
帰ってから調べてみると、モモスズメ(Marumba gaschkewitschii echephron)の黄色型幼虫のようです。
ウワミズザクラの枝を登ったり下りたり方向転換したりと、なぜか落ち着きなく動き回っています。
本種の食餌植物リストにバラ科が含まれているのですけど、ウワミズザクラの葉を食すシーンは見ていません。
採集するか迷ったのですが、忙しくてとても飼育する余力がありませんでした。
2014年9月上旬
▼前回の記事
苔むしたコナラの根際で争うスジクワガタ♂
苔むしたコナラの幹の根際で小型のスジクワガタ♂(Dorcus striatipennis)が徘徊しています。
苔の下に潜り込んで樹液が滲むスポットを探し歩いているのかと思いきや、根際の地面を掘り始めたので吃驚。
穴掘りを途中で止め、向きを変えると徘徊を再開しました。
新たに地面に穴を掘って潜り込みました。
本種は夜行性らしいので、暗くなるまで休む隠れ家(シェルター)を探していたのでしょうか?
もし♀だとしたら、産卵行動である可能性もありますかね?
しかしスジクワガタ♀は広葉樹の朽木に産卵するらしいので、今回観察した行動は違う気がします。
私はクワガタムシを野外で観察した経験が未だ浅いので、初めてだと分からないことだらけです。
2014年9月上旬
溜池の横を歩くと奥の芦原に潜んでいた水鳥の群れが次々に飛び立ちました。
もしかすると巣や集団塒があるのかもしれません。
水辺の高木に止まり直した一羽を望遠で撮ってみるとゴイサギ(Nycticorax nycticorax)の幼鳥でした。
樹冠の枝が風で揺れると、羽ばたいてバランスを取っています。
9日前に同じ溜池で撮ったゴイサギ幼鳥の群れと同じだと思われます。
▼関連記事
溜池に飛来するゴイサギ幼鳥【野鳥:ハイスピード動画】
ゴイサギの幼鳥はクリーム色の斑点が星のように散らばるので、ホシゴイとよばれる。(『ヤマケイジュニア図鑑3鳥』p92より)
2014年9月上旬
里山の雑木林で夜になると(18:30 pm)、コナラの樹液酒場にムナビロオオキスイ(Helota fulviventris)が2匹来ていました。
樹液を吸汁する様子を暗視動画で撮ってみました。
後半は赤外線から白色LEDに切り替えてみました。
照明を点灯しても逃げないで頭を樹皮の穴に突っ込んでいます。
上翅のスジがところどころでくびれ、小さな楕円形をつなげたような形状なので、ヨツボシオオキスイではなくムナビロオオキスイです。
2匹居たのですけど、映像には1匹しか写っていないですね。
小型のハネカクシ(種名不詳)も来ています。