2023/08/12

雪深い年始のスギ林道でホンドタヌキが鳴いた♪【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年1月上旬 

雪深い里山でスギ林道を行き交うホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の記録です。 
この時期は、カモシカが眼下腺マーキングするスギ落枝を画面中央で監視できるようにトレイルカメラのアングルを決めたせいで、タヌキの溜め糞場sが画角の少し右外になってしまい、排便シーンが写りません。 
積雪期もタヌキは溜め糞場sにときどき通っているようです。 


シーン1:1/1・午後20:25・気温-2℃・(@0:00〜) 
細かい雪が降りしきる正月の晩に、タヌキが雪道を左から登場。 
1歩ずつ歩くたびに足が雪に少し潜っているものの、ラッセルというほどの重労働ではありません。 


シーン2:1/1・午後20:35・(@0:12〜) 
10分後に同一個体が戻って来たのか、タヌキが右から左へ通過しました。 
タヌキが立ち去ってしばらくすると、ウユーン♪という甲高い謎の鳴き声が聞こえました。(@0:27〜) 
※ ここだけ音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

調べてみると、これがタヌキの鳴き声のようです。 
タヌキの鳴き声が録音されたのは初めてで、嬉しい収穫でした。 
トレイルカメラの発する「ザ・ザ・ザ・ザ…♪」という内部ノイズが耳障りですけど、その後もクーンクーン♪とかすかに鳴き交わしているようです。 



【参考サイト】 
たぬきの鳴き声は「ウユーーン」。その鳴き声の意味を知っていますか?
たぬきは小型犬が発するような甲高い声をしています。また、鳴き声を文字にすると「ヴーーー」「ウワーーン」「ウユーーン」というようなもので、再現するのがちょっと難しい鳴き方をします。 (中略) 相手を威嚇するときや喧嘩しているときに、たぬきは鳴きます。反対に、うれしいときや楽しいときは一切鳴きません。たぬきは怒っているときや警戒しているとき以外は感情を表に出さない生き物なので、声だけでなく表情や身体のどこかが変化するといったこともありません。

 

そのままカメラが動画を撮り続けると、左からタヌキが走って戻ってきました。(@0:46〜) 
録画が終わる間際の1秒間にちらっと写った映像を1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:52〜) 
残念ながら尻切れトンボですけど、2頭のタヌキが雪山の夜道でばったり出くわし、威嚇からの逃走に発展した(縄張り争い)と想像してみました。 

調べてみると、タヌキの発情期は2月(下旬)らしいです。 
発情期には未だ1ヶ月以上も早いはずですが、普段から一緒に行動している♀♂ペアが鳴き交わしたり、ふざけて追いかけっこをするようになったのでしょうか? 
これから春にかけて、溜め糞場の付近でホンドタヌキの鳴き声を何度も聞くことになります。(映像公開予定)



シーン3:1/9・午後20:58・気温-1℃・(@1:01〜) 
8日後の晩、小雪がちらつき、レンズがやや曇っています。 
右から登場したタヌキが左へ歩き去りました。 
雪面はスギ樹上からの大量落雪で荒れているものの、クラスト凍結しているらしく、タヌキが歩いても足がほとんど潜っていません。 



夏の夜にスギ林道でトレイルカメラに写った人魂の正体は蜘蛛の粘球?【暗視映像】

 

2022年8月下旬・午後18:07・気温24℃ 

里山のスギ林道にあるタヌキの溜め糞場sを自動センサーカメラで見張っていると、謎の現象(物体)がときどき写ります。 

地平線に日が沈む日の入り時刻は午後18:21ですが、現場は山の東斜面なので、それよりもずっと早くから太陽が山の端に隠れて暗くなります。 
トレイルカメラは熱源の動きを検知して起動する仕組みですから、昆虫やクモなどの変温動物が動いても反応しないはずです。 
動画の冒頭には何も写っておらず、今回はなぜ起動したのか不明です。 
おそらく飛来したコウモリが素早く横切ったのかもしれません。 

やがて夜蛾らしき小さな昆虫が飛来し、右から左に高速で横切りました。 
そして画面の左端から明るく白く光る謎の玉がちらっと登場します。 
まるで人魂(火の玉)や怪しいUMAが空中に漂っているように見えますが、おそらく日没直前に造網を始めたクモの糸の粘球ではないかと思います。 
幽霊の正体見たり枯れ尾花。 

クモの粘球にしても巨大で、しかも一つだけブラブラしているということは、珍種のナゲナワグモなのか?と期待が膨らみます。 
日本の北国ではナゲナワグモの仲間は生息していないことになっているからです。
日本でナゲナワグモの習性を持つのは、コガネグモ科イセキグモ属に属するマメイタイセキグモとムツトゲイセキグモの2種である。いずれも熱帯系のクモであり、日本では本州南部以南に分布し、採集例はきわめて少ない。(wikipedia:ナゲナワグモより引用)

 

関連記事(10月中旬、下旬の撮影)▶ 

未だ撮影例が少ない(n=2)のですが、この謎の人魂?粘球?は秋にしか現れないのかと思っていました。
トレイルカメラの映像記録を遡って見返すと夏にも写っていたので、記事にしておきます。
今回でようやく3例目です(n=3)。
記録が蓄積すれば、通年見られるありふれた現象だと分かってくるかもしれません。

残念ながら粘球を作った主(クモ?)がいつも写っていないのが、もどかしいです。
粘球が自ら発光しているのか、それとも暗視カメラが照射する赤外線を強く反射しているだけなのか、突き止めたいところです。 
前者だとしたら、グローワームのように糸で生物発光して獲物を誘引する新種の虫かもしれず、ロマンがあります。 
夜に現場入りして実際に探すしかなさそうですが、ツキノワグマが出没すると分かってからは二の足を踏んでいます。 


2023/08/11

雪山のスギ林道を昼も夜も行き交うホンドギツネ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年1月上旬〜中旬 

雪深い里山のスギ林道に設置した自動センサーカメラに写ったホンドギツネVulpes vulpes japonica)の記録です。 



シーン1:1/10・午前11:01・気温-3℃・(@0:00〜) 
昼前で明るいのに、寒波の到来で気温が氷点下のまま冷え込み、雪がしんしんと降り続いています。 
カメラの起動が遅れたのは、低温による電圧低下のせいもありますが、右からキツネが走ってきたからでしょう。 
画角の左端でちょっと立ち止まってから、そのまま左に去りました。 
尻尾しか写りませんでしたが、 乾いた深雪(パウダースノー)で覆われた林道に残る足跡は、キツネに特有の一直線に付いていました。 


シーン2:1/19・午後19:38・気温-1℃・(@0:09〜) 
9日後の晴れた晩にキツネが登場。 
左から右へ足早に駆けて行きます。 
画面の右端で立ち止まり、雪面の匂いを嗅ぎました。 雪の下に埋もれた野ネズミの巣穴からかすかに獲物の匂い(気配?)がしたのかもしれません。 
しかし結局狩りは行わずに、林道を右に立ち去りました。 



ところで、林道中央の雪面に真っ黒な細長い異物が見えます。 
これは実はタヌキが最近持ってきた黒いビニールテープなのですが、キツネは全く興味を示しませんでした。 
雪の下に埋もれたタヌキ溜め糞の匂いにも反応しませんでした。





つづく→

メジロの群れが熟柿を食べ脱糞(冬の野鳥)

 

2023年1月上旬・午後14:10頃・晴れ 

道端の庭に植栽されたカキノキメジロZosterops japonicus)の群れが集まり、賑やかに鳴き交わしていました。 
初め、メジロ同士が落葉したカキノキ樹上で小競り合いのような追いかけっこをしていました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
忙しなく飛び回るため、別種の鳥も混じっていた(混群)のかどうか不明です。 

関連記事(6年前の撮影)▶ 熟柿をついばむ雪国のスズメとメジロ(冬の野鳥)
後半は、甘く熟した果実を美味そうに啄む様子を順光できれいに撮れました。
横の車道を車が通りかかるたびにメジロは警戒して少しずつ飛び去ってしまい、居残って採食を続ける図太い個体も逃げ腰になります。 

採食の合間にメジロが枝先で後ろ向きになり、脱糞しました。 
排便の瞬間をまずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。(@1:44〜) 
続けて等倍速でリプレイ。 
普段バードウォッチャーが見慣れた尿酸混じりの白っぽい鳥の糞ではなく、いかにも熟柿食後らしいオレンジ色で粘度の高い軟便でした。 
これは種子散布の瞬間でしょうか? 
カキノキは果実(液果)を種子ごと丸呑みする動物(哺乳類と大型の鳥類)に種子散布を託しています。 
チビチビと熟柿の果肉を啄むメジロの採食法から見て、柿の種を丸呑みするとは思えません。 
柿の種はメジロの口には大きすぎるので、カキノキの種子散布には関与してないはずです。 
撮影後にカキノキの下でメジロの糞を探して、種子が含まれていないことを確かめればよかったですね。

2023/08/10

年末年始の雪深いスギ林道で眼下腺マーキングするニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年12月下旬〜2023年1月上旬

雪深い里山のスギ林道を巡回するニホンカモシカCapricornis crispus)を自動撮影カメラが捉えた記録をまとめました。 



シーン1:12/28・午後14:54・くもり・気温2℃・(@0:00〜) 
明るい日中に林道を左からやって来ました。 
林道に積もった雪質は腐れ雪のようです。 
道端から突き出すように斜面に引っかかっているスギ落枝の匂いを嗅ぐと、尖った先端部にゴシゴシと顔を擦り付けて眼下腺の分泌液を塗りつけました。 
マーキングが済むと、カメラ目線で舌なめずり。 
右肩に黒班のある個体でした。 
雪面の匂いも嗅いでから、右へ立ち去りました。 

西日本のカモシカの映像をYouTubeで見ると、その黒さに驚きます。
それに対して、ここ雪国(北日本)のカモシカの毛皮が白っぽいのは、グロージャーの法則が当てはまります。
単純に積雪期に目立たないように捕食者から隠れる保護色なのかな?
ニホンオオカミが絶滅して以降、カモシカが恐れるべき天敵はヒト(猟師)ぐらいでしょう。
晴れれば雪山の紫外線は強烈なので、それを遮ったり反射したりする必要があるかもしれません。

岩波生物学辞典第4版で「グロージャーの規則」を引くと、
[英Gloger's rule]
鳥類・哺乳類において,一般に同じないし近縁の種において,乾燥・冷涼な気候下で生活するものは,湿潤・温暖な気候下で生活するものよりも,メラニン色素が少なく明るい色彩を呈すること.様相に若干の差はあるが,昆虫類にもよく似たような傾向が見られる.しかし広く動物界を見ると,低温が黒化をもたらす傾向などもあって,この規則に添わない場合も多い.


シーン2:12/29・午前3:22・小雪・気温0℃・(@0:45〜) 
翌日は小雪がかすかにちらつく深夜に左から登場。 
毛皮が濡れています。 
立ち止まってスギ落枝の先端の匂いを嗅いだだけで、マーキングせずに右へ立ち去りました。 


シーン3:12/31・午前2:30・小雪・気温-2℃・(@1:05〜) 
2日後の大晦日には小雪の降る深夜に、またもや左から登場。 
新雪の少し積もった林道を軽くラッセルしながら(雪をかき分けながら)歩きます。 
スギ落枝の端の匂いを嗅いで舌舐めずりしたものの、眼下腺マーキングしないで右へ立ち去りました。 


シーン4:1/1・午前1:30・くもり・気温-2℃・(@1:25〜) 
翌日、年が明けた元旦も深夜にカモシカが現れました。 
この日は珍しく雪道を右から登場しました。 
雪面がボコボコと荒れているのは、スギ樹上からドサドサとまとめて落雪したせいです。 
立ち止まってスギ落枝の先に眼下腺マーキングしてから左に立ち去りました。 
1歩ずつ歩くたびに、蹄が雪に少し潜っています。

スギ植林地の林床は微気象が安定していて、この時期の最低気温は-2℃止まりでした。
気温の低い厳冬期は眼下腺からの分泌物が揮発しにくくなり、匂いがあまりしない(マーキングに使えない)のではないか?と思ったのですが、素人予想は外れました。 
実際にニホンカモシカの眼下腺分泌物の融点や沸点を化学的に調べた研究はあるのでしょうか? 
そもそもどういう組成の物質なのかな? 



夏にタヌキの古い溜め糞に集まる虫たち:アカバトガリオオズハネカクシに噛み付くムネアカオオアリ♀など

 

2022年8月下旬・午後13:50頃・くもり 

里山の雑木林を抜ける林道にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場aを久しぶりに見に来ました。 
林道の両脇に生えているアカマツとブナが目印です。 
新鮮な糞は残されておらず、一見すると溜め糞場aは使われていないようです。 
しかしよく見ると、糞塊が乾いて粒状の黒土と化しています。 
糞虫の活動によって、よく耕されていることが見て取れます。 
タヌキ溜め糞の遷移過程で夏によく見かける状態です。(何か専門的な呼び名があるのでしょうか?) 
遠目からは、ガリガリ、ザクザクとした霜柱をいつも連想します。 

肉食性のアカバトガリオオズハネカクシ(旧名アカバハネカクシPlatydracus brevicornis)が獲物を求めて徘徊しています。 
糞中に浅く潜るハネカクシの尻尾にムネアカオオアリCamponotus obscuripes)のワーカー♀が試しに噛み付きましたが、さすがに獲物として狩ることはありませんでした。 
2匹のハネカクシが出会うと、小競り合いになりました。

青紫色の金属光沢が糞の中からちらっと覗いているのは、おそらくセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)だと思うのですけど、棒でほじくって確認すべきでした。 
溜め糞場でセンチコガネをタヌキが捕食してから後日、未消化のまま排泄された鞘翅だとしたら面白いですね。

関連記事 ▶ 

小型の黒い糞虫はエンマコガネの仲間でしょうか?(自信なし) 
同定のためにエンマコガネ?を採集して持ち帰りました。 
以下に標本の写真を載せる予定です。 

採寸代わりに並べた熊よけスプレー(長さ20cm)


2023/08/09

厳冬期の雪深いスギ林道を夜に駆け回る冬毛のニホンノウサギ【トレイルカメラ:暗視映像】

 




2022年12月下旬〜2023年1月下旬〜2月上旬

里山のスギ林道に設置したトレイルカメラに写るニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)の記録をまとめました。 
雪深い厳冬期も夜行性で元気に活動しています。 
足早に通り過ぎるとカメラの起動が間に合いませんが、たまたまカメラの前でスピードを緩めたり立ち止まったりしたときだけ録画されます。 


シーン1:12/29・午前6:06・気温-1℃・(@0:00〜) 
日の出時刻は午前6:51。 
小雪が降る日の出前にノウサギが林道の右から左へゆっくり横切りました。 
ノウサギは足裏の面積がかんじきのように広く、深雪にも潜らないようになっています。 
冬毛のニホンノウサギは全身が純白で、長い耳の先端裏側だけが黒いワンポイントになっています。 


シーン2:1/30・午前4:54・気温-7℃・(@0:09〜) 
約1ヶ月後の未明に登場したノウサギは、左にゆっくり立ち去りました。 
低温のため雪面は固く締まっていて、ノウサギの足跡が残りません。 

新雪が積もった林道に、スギ樹上からの落雪がごろごろと散乱しています。 
画面の右上隅に垂れ下がった氷柱が光って見えます。 


シーン3:2/1・午後23:29・気温-1℃・(@0:16〜) 
2日後、しんしんと雪が降る深夜に白兎が画面の左端に立ち止まっていました。
白い尻だけが見えます。 (赤い矢印⇦) 
しばらくすると、ヒョコヒョコと左に立ち去りました。



アサギマダラの飛翔

 

2022年10月上旬・午後13:30頃・くもり 

アサギマダラParantica sita)が峠道の谷側の茂みの上をフワフワと飛んでいました。 
じっくり撮影したかったのに訪花してくれず、谷側の方へ飛び去り見失ってしまいました。 
スロー再生しても性別を見分けられず、渡り調査のための個体標識も翅に書かれていませんでした。 
アサギマダラは今期初見です。 

チョウの行動生態学』第7章:アサギマダラの生態とその特異な配偶システムによると、
アサギマダラは他のマダラチョウ類とは対照的に暑さに大変弱いため、盛夏に主に観察されるのは本州中部や東北地方の冷涼な地域(高標高地を含む)に限定される。(p99より引用)
地球温暖化や異常気象(夏の高温化など)が急激に進むと、アサギマダラの分布も変わってきそうです。

2023/08/08

雪道で車に轢かれたホンドテンの死骸

 

2022年12月下旬・午後14:45頃・くもり 

雪山から下山した帰り道、意外なものを見つけました。 
山麓の別荘地帯で車道をきれいに除雪した道端の雪の上に野生動物の亡骸が横たわっています。 
毛皮が黄色っぽいので初めはキツネ(ホンドギツネ)かと思ったのですが、近づいてよく見ると冬毛のホンドテンMartes melampus melampus)でした。 
目立った外傷はなく、金色の毛皮が美しいです。 
雪山で夜に活動するホンドテンをトレイルカメラで撮影していますが、モノクロの暗視映像なので冬毛の色はこんなにきれいなのかと感動しました。
毛皮目当てに乱獲されるのも納得です。
 
関連記事(同時期の撮影)▶ 冬毛のホンドテンが夜に出歩く雪山のスギ林道【トレイルカメラ:暗視映像】

毛並みが乱れているのは、濡れているからでしょう。 
足が黒いのがテンの特徴です。 
死後間もないようで、口から滴り落ちる鮮血が路肩の腐れ雪を赤く染めています。(吐血?)

周囲の雪面にテンの足跡が全く残されていないということは、除雪された車道でテンを車ではねた(轢いた)ドライバーが死骸を道端に投げ捨てた(車道から邪魔にならないように移動した)のだろう、と推理できます。 
車がいくら猛スピードで走っていたとしても、路上ではねたテンがこれほど遠くまで飛んで路肩の雪に着地したとは考えにくいです。
ちなみに、入山のため午前中に現場を通りかかった際には、テンの死骸はありませんでした。 
したがって、明るい日中に活動していたテンが死んだことになります。 
テンは基本的に夜行性だと思っていたので、昼間にこんな里まで降りてきたのは意外でした。 



実は、この死骸を見つける直前に、冬季閉鎖された近くの某山麓公園でホンドテンが残したと思しき糞を雪面に見つけています。 
複数のヒトが歩いた足跡(クロスカントリースキーおよび長靴の跡)の横に残されていました。 
散歩に連れてこられた飼い犬(小型犬)が排便した可能性もありますが、たぶんテンが生前に残した最後の糞だと思います。 
テン?の足跡は不鮮明でよく分かりませんでした。
餌(獲物)を探して山麓の公園をパトロール・脱糞してから更に里へ降りてきたホンドテンが車道を走って渡ろうとして、対向車にぶつかったのでしょう。 

吉見光治『テン:種をまく森のハンター』によると、
テンが成獣になる前、車との接触によって命を落とす事故が多発しています。動物が安全に道路を渡れるような注意標識や、アンダーパスの設置も積極的に検討をして頂けることを願っています。(p63より引用)

死後間もないホンドテンの状態が比較的きれいだったので、持ち帰って詳しく調べることにしました。 
こういうときのために、私は常に丈夫なビニール袋(米袋)を持ち歩いています。 
ビニール製の米袋は非常に優秀で、分厚くて匂いやドリップ(血液・体液)も通しません。 
素手で死骸に触れないように注意します。 
テンの死骸を持ち上げると、死後硬直しておらず、グニャグニャ(ぐったり)でした。 

必ずしもロードキルとは決めつけられず、コロナウイルスなどの病原体に感染して吐血死したのか?という可能性も頭をよぎりました。
しかし、野生のテンがコロナウイルスに罹患した事例は報告されていないそうです。 
他には毒入りの餌を食べてしまった?…など死因を妄想し出すと切りがないので、解剖して死因を突き止めます。 
そもそも行き倒れなら、雪面にテンの足跡が残っているはずです。







剖検の結論を先に言うと、死因はやはり走行車と頭から正面衝突したようです。 
私は衝突事故の瞬間を目撃していませんし、もちろん私が運転していた車ではありません。
もし私が車でテンを跳ねたのなら、ドライブレコーダーの映像を一緒に公開しています。 

交通事故で野生動物が死ぬ瞬間の動画を投稿するのは悪趣味だと非難されそうですが、不幸な事故を減らすためにも、ドライブレコーダーの映像を闇に葬らずに公開して蓄積するのは重要だと考えています。
AIによる自動運転が進歩すれば、急に車道へ飛び出してきた野生動物を緊急回避する超絶ドライビングテクニックが開発されるはずです。 
そのためには大量のデータ(ビッグデータ分析)が必要です。
冬の雪道でドライバー(運転者)が咄嗟に急ブレーキを踏むのはスリップして危険ですから、衝突回避の自動運転に期待しています。 
ちなみに現場は坂道でした。
車道に出てきたテンは車が走ってくると立ちすくんでしまう(擬死)のか、それともパニックになって逆に車のヘッドライトに向かってくるのか、クラクションを鳴らすとどう反応するのか、など緊急時の行動習性も誰かが調べないと分かってきません。 
野生動物の種類によっても挙動が違うはずです。 
離島ではとくに天然記念物のイリオモテヤマネコやアマミノクロウサギがロードキルで毎年かなり死んでいて、種の存続が危ぶまれています。
野生動物を轢き殺してしまった運転者を過剰に責めたり罪に問うのではなく、免責してドライブレコーダーの映像提出を求めて対策に役立てるべきです。
データが蓄積すれば、野生動物の生息状況や事故多発現場の傾向も見えてくるでしょう。
輪禍の死を無駄にしてはいけません。


↑【おまけの動画】
【タヌキ死にすぎ】動物が轢かれるデータがヤバい。生態系が心配になる【道路生態学1】#28 by ゆる生態学ラジオ



秋の川岸に集まり首を伸ばして背比べ・小競り合いするダイサギの群れ(野鳥)

 

2022年10月下旬・午後14:10頃・晴れ 

最上川の左岸の砂州にサギ類の混群が集まっていました。 
画面の左側に6羽のダイサギArdea alba)、右側に2羽のアオサギArdea cinerea jouyi)が居ます。 

ダイサギの隣り合う個体が互いに向き合うと、長い首を伸ばして真上を向きました。 
長い首を見せつける誇示行動なのでしょうか。 
まるで背の高さを競い合っているようです。(背比べ) 
首を伸ばすディスプレイ中の2羽が嘴でつつきあって小競り合いになりました。 
更に嘴でつつこうと突進して、近くの個体を牽制し追い払いました。 
背の低い個体の方がむしろ強気で、背の高い相手を追い払ったのが驚きました。 
互いに適切な距離を保つと(ソーシャルディスタンス)、群れは平和を取り戻しました。 
近くの水門から流れ落ちる水の轟音でかき消されてしまい、ダイサギの鳴き声は聞き取れませんでした。 
ネット検索で調べると、サギ類が首を真上に伸ばすのは求愛の誇示行動(ディスプレイ)なのだそうです。
しかし撮影した秋はサギの繁殖期ではありませんし、前後の行動から見ても、今回の首伸ばしは闘争的な誇示行動だと思います。
ダイサギとアオサギの混群でも、ダイサギ対アオサギの小競り合いは見られませんでした。

川面を遊泳していた1羽のカワウPhalacrocorax carbo hanedae)が、白鷺の小競り合いを見物に来ました。 

遠近法の錯覚かもしれませんが、白鷺の群れに小柄な個体が混じっている気がします。 
もしかすると、コサギEgretta garzetta)かもしれません。 
よく晴れた強い西日を浴びて、白鷺が眩しく白飛びしてしまっています。 
手前に生えたヨシの群落が邪魔ですね。 
コサギが混じっているのかどうか確かめたくて、よく見えるアングルへと私が移動したら、サギたちは警戒して一斉に下流へ飛び去ってしまいました。 
この後、夕方になると、サギ類は河畔林の樹上に集まってねぐら入りします。 

2023/08/07

年末の雪山でツキノワグマの足跡を見つけた?

 

2022年12月下旬・午前11:20:頃・晴れ 

根雪が積もった低山にスノーシューを履いて登りました。 
晴れた日の雪山は最高です。
通い慣れた林道の途中で小さな沢を渡る手前の地点で大きな足跡を雪面に見つけ、ギクリとしました。
私の手と比べても大きいので、ツキノワグマUrsus thibetanus)の足跡でしょうか。 
爪痕も見えます。 
残念ながら雪質が悪いせいで、明瞭な足跡ではありませんでした。 
スギ樹上からの落雪で、雪質はザクザクに凍っていて雪面は凹凸しています。 
根雪が降ったばかりなので、未だ冬眠せずに活動している個体がいるようです。 

少しだけ足跡を辿ってみました。(アニマルトラッキング) 
横にはニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)の足跡が明瞭に残っている他、前方に黄色く汚れた雪も見えます。 
小便跡と思われますが、上の枝から滴り落ちる雪解け水が雪を染めているのかもしれません。 
斜面を少し登った先には、こんもりした雪の小山があります。 
もしかしたら、ツキノワグマが冬眠している巣穴(樹洞?)があるかもしれません。 
しかしクマとのニアミスが怖くて確認しに行けず、急いで現場を離れました。 

秋までは入山時に必ず熊よけスプレーを携帯していたのですが、冬になって根雪が降ったのでもうクマは冬眠しただろうと判断し、荷物を少しでも軽くするために持参しませんでした。
念のために、冬(積雪期)も護身用の熊よけスプレーを持ち歩くべきだと反省しました。 




実は10年前にも別の山系で初冬の雪道を歩いたツキノワグマの足跡を見ています。
確か動画か写真を撮った記憶があるので、探してみます。(@2012年12月上旬 03)


【追記】
現場ではクマの足跡だ!と戦慄したのですが、落ち着いて動画を見直すと、自信がなくなってきました。 
雪面がザクザクに凍っているせいで足跡が不鮮明なのが問題で、もしかするとノウサギの足跡かもしれません。 
クラストした(凍った)雪面を割りながらノウサギが跳びはねると、こんな紛らわしい足跡が残ることもありそうです。
雪上のアニマルトラッキングはこの日が今季初だったので、読み解く力が鈍っていました。



巣材の泥玉を作るスズバチ♀

 



2022年9月下旬・午前後14:20・くもり 

里山の尾根道でスズバチ♀(Oreumenes decoratus)が巣材の泥団子を作っていました。
地面は乾いていますが、スズバチ♀は予め飲んでおいた水を吐き戻しながら細かい砂のような土を丸めて泥玉に加工しています。 
微小な赤アリ(種名不詳)が近づいてニアミスしても、スズバチ♀は気にせずに作業を続行。 
作りかけの泥団子を小石の上に乗せると、小石が濡れました。 
丸い泥玉を作り終えると、稜線の上空を北に飛び去りました。 

今回も営巣地を突き止められず、残念でした。 
クロスズメバチの巣を見つける達人のように、スズバチが泥玉を夢中になって作っている間に細いリボン(こより?)を蜂にくくりつけることが出来たら、それを目印として、作りかけの泥巣へ飛び去るスズバチを追跡できるでしょうか? 
しかしスズバチ♀は採土中も警戒を怠らないので、撮影のために近寄るのも難しいのです。
クロスズメバチに与える獲物と違って、スズバチの巣材はどこにでもあるので、採土場も1か所に執着する必要がありません。 
超小型の電波発信機(GPS?)が開発され、素人でも気軽に使えるようになるのを待っています。

2023/08/06

雪に埋もれたスギ林道の溜め糞場(雪隠)で排便するホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 




2022年12月下旬

里山のスギ林道が根雪に埋もれた年末にもホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が夜な夜な溜め糞場sに通ってきます。


シーン1:12/23・午後20:43・気温-4℃・(@0:00~) 
雪が降る晩に雪道を左から登場したタヌキが溜め糞場sを素通りして、右へ立ち去りました。
雪面は固く締まっているようで、タヌキが歩いても深く潜りません。 (ラッセル不要)


シーン2:12/24・午後19:03・気温-1℃・(@0:10~) 
翌日も2夜連続でタヌキが登場。 
スギ樹上から大量の落雪があった後らしく、凍った雪面に落枝も散乱しています。 
凍結(クラスト)した雪面の匂いを嗅ぎながらグルグルと徘徊すると、ようやく溜め糞場sの匂いを嗅ぎつけ、その上に跨り右向き(南向き)で排便。 
用を足しながらカメラ目線になりました。 
夏季に比べると冬季(積雪期)は便量が少なく、食生活が困窮していることが伺えます。 
そのまま林道を右へ立ち去りました。 

雪国のホンドタヌキが雪上の溜め糞場(まさに雪隠せっちん!)に排泄する様子を初めて記録することができました。
私にとって最高のクリスマスプレゼントになりました。 




山中の池でトレイルカメラが捉えたオニヤンマ♀の産卵(その2)

 


2022年8月上旬・午後13:40頃・晴れ 

里山で湧水が溜まった泉を自動センサーカメラで見張っていると、オニヤンマ♀(Anotogaster sieboldii)が単独で飛来しました。 
日陰になっている左岸でホバリング(停空飛翔)しながら、岸辺の浅瀬に腹端をチョンチョンと付けて産卵しています。 
池の浅瀬に沿って移動しながらあちこちで産卵を繰り返し、飛び去りました。 
オニヤンマ♀の産卵行動を1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:22~) 

この時期はずっとオニヤンマ♂がこの水場で縄張りを張って交尾相手の♀を待ち伏せしていたのに、♂の留守中を狙ったかのように♀が産卵に来たことになります。 
これは前回も同じでした。 


交尾済みのオニヤンマ♀は♂のしつこいセクハラで産卵行動が邪魔されるのが嫌で、意図的に♂を避けているのかもしれません。 
それとも監視カメラに写っていないだけで、実は首尾よく交尾できた♂が近くで♀の産卵を見守っているのでしょうか? 

水場に飛来したオニヤンマ♀を♂が捕捉して交尾に至る瞬間をトレイルカメラで記録するのは、よほどの幸運に恵まれないと難しそうです。 


※ 癖のある旧機種のトレイルカメラを騙し騙し使い続けています。 
明るい昼間の動画撮影に難があり、なぜか画面全体がピンク色に点滅するのです。 
あまりにも不自然で見づらいので、動画編集時に自動色調補正を施してモノクロに加工しました。


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