2011/09/03

繭を紡ぐクワコ終齢幼虫(蛾)の微速度撮影







クワコの飼育記録#2
2011年8月下旬・室温24〜26℃


クワコBombyx mandarina)の終齢幼虫を採集してから丁度1週間後にようやく一頭(体長〜50mm)が繭を紡ぎ始めました。



5秒間隔のインターバル撮影を行ない、撮り貯めた写真を素材に20fpsの動画を作成しました(100倍速?)
11:02〜23:30(約12.5時間)の様子をときどき休みながら記録したものです。


食樹クワの若葉の表側に乗った終齢幼虫が首を振りつつ口元から絹糸を吐き、左右から少しずつ葉を引き寄せて自らを包み込む初期段階の様子が印象的でした。


ときどき方向転換して頭の向きを変えながら繭を紡いでいきます。
繭本体から抜け出しクワの葉の上部に移動して、念入りに葉柄を絹糸でグルグル巻にします
これはおそらく、葉が枯れても大切な繭が落ちたり風に飛ばされたりしないよう補強するためだと思います。



クワコ幼虫は営繭の合間にも脱糞していました。
尾端をシェルターの外に出してから排泄するという行儀良さで、繭の中を汚したりしません。


作業の後半(映像では4:40頃)、作りかけの繭から下半身を思いっ切り出して大量の液体を排泄しました。
残念ながらこの映像では画面から見切れてしまっているのですが、初めて見る私が少したじろぐ程の量でした(びっくり!)。
別なカメラで撮った動画をそのうち公開する予定です。
つづく→シリーズ#3:「繭作り中に排泄するクワコ幼虫(脱糞と排尿)




翌日、薄い黄色のかわいい繭が完成しました。
昔の人はこれから絹糸を取って養蚕業が始まり、カイコへと品種改良を進めていったのだと思うと感慨深いものがあります(遥かなるシルクロード!)。


『イモムシハンドブック』によると本種は卵で越冬するらしいので、今年中に成虫の羽化が見れそうです。


【追記】
53日後、この繭から♀成虫が無事に羽化しました。

『糸の博物誌:ムシたちが糸で織りなす多様な世界』第6章:チョウとガの糸 p154によると、
クワコの繭にはフラボノイド色素が含まれており、その緑色は紫外線から蛹や前蛹を防護する効果があるらしい。


2011/09/01

シロスジベッコウハナアブ♀

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2011年8月下旬

里山の道端で大きなアブが草の葉に止まって休んでいました。
帰ってから調べてみるとシロスジベッコウハナアブ♀(Volucella pellucens tabanoidesだろうと判明。
クロスズメバチ類の巣に寄生するという興味深い習性があるらしい。
危険な巣にどのように侵入して産卵するのか、いつか観察してみたいものです。

動きがないので「身繕いするか飛び立つかしてくれ〜!」と念じながら待ちました。
痺れを切らしてズームアウトしたらその瞬間に飛び去ってしまいました。
うーむ、ありがち…。

休んでいる姿をただ撮っただけで特に面白い動画ではありませんが、世の中にシロスジベッコウハナアブの映像が無いようなので一応アップロードしてみました。



2011/08/31

桑の葉を蚕食するクワコ終齢幼虫(蛾)



クワコの飼育記録#1
2011年8月下旬

農村の道端に生えた桑の葉(ヤマグワ)にイモムシを二頭発見したので、食草ごと採集して持ち帰りました。
カイコガ科クワコの幼虫です。
養蚕に利用するため長年品種改良されたカイコの野生型と考えられています。
おそるべき食欲で桑の葉を断続的に蚕食していきます。
その機械のような食べっぷりの良さに惚れ惚れと見とれてしまいました。


背中に眼状紋が並んでおり尾角もあるので、なんとなくスズメガの仲間の幼虫を連想しました。
体長を測ると約40mmで、『イモムシ・ハンドブック』の記載「終齢幼虫〜35mm」よりも大きな個体でした。
飼い続けると後日、脱皮することなくそのまま繭になったので確かに終齢幼虫と分かりました。
(最後はなんと50mm以上に育ちました。)

つづく→シリーズ#2



【追記】
安田守『イモムシの教科書』によれば、
 クワは傷つくと切り口から白い乳液を出す性質がある。乳液には3種の糖類似アルカロイドという物質が含まれており、これは糖に似た構造をもち、消化や代謝を阻害する働きをする。通常、葉中の含有量は低濃度だが、乳液中にはその約100倍の高濃度で含まれている。葉が傷つくと乳液が出るので、葉を食べようとすれば乳液も摂取してしまう。(中略)スペシャリストのカイコはクワの葉を食べても正常に成長することができる。(中略)耐性酵素を発達させることによってこのしくみを突破しているのだろうと考えられている。 (p83より引用)
植物の乳液による化学的防御をイモムシがどう突破するかという軍拡競争の問題に私も興味があります。 
カイコやクワコは化学的に乳液を克服するよう進化しましたが、トレンチ行動という行動を進化させた種類のイモムシもいます。

▼関連記事




2011/08/30

画面で動くハエのCGを攻撃するウスバカマキリ♀



2011年8月下旬

カマキリは生きた獲物を狩るために優れた視覚を有するので、パソコン画面上のガーソルやポインタを動かして見せると鎌で攻撃してきます。
子猫をじゃらすようで楽しく遊べます。
以前コカマキリ幼虫で試した関連記事はこちら→「画面のカーソルを追うコカマキリ一齢幼虫


それでは、動く獲物のCGアニメをカマキリに見せてみましょう。
Fly on Desktop」というフリーウェアを以前たまたま見つけ、これは面白いネタになりそうだと実験のアイデアを温めていたのです。
スクリーンセーバーというか一種のジョーク・プログラムなのですが、起動するとデスクトップ画面上でハエが何匹も(5匹単位で増やせる)歩き回ります。
残念ながら飛べないものの、徘徊・休止・身繕いをランダムに繰り返す様子はなかなかリアルです。


飼育中のウスバカマキリ♀(Mantis religiosa)にパソコンの液晶画面を見せると、しっかり反応してくれました。
近づくハエの動きを追って顔を動かし、鎌の射程距離に入ると繰り返し攻撃を加えます。
青いデスクトップを背景に止り木で待ち伏せするカマキリのシルエットがとても美しくセクシーですねー。


ちなみに開発者のサイトでは同様のソフトウェアでゴキブリ版とテントウムシ版が用意されています。
後日、ゴキブリCGを見せて同じ実験を繰り返してみたのですが、たまたまウスバカマキリ♀が満腹だったのか反応はありませんでした。
私が見てもゴキブリCGの動きはあまりリアルではない気がしました。
背景との色のコントラストがハエのCGよりも少なくて見えにくいのかもしれません。


追記
単純化された視覚刺激をCGでカマキリに見せ反応を調べる研究は昔から真面目に行われています。
動物行動の映像データベースにて「移動しない餌モデルに対するカマキリの捕獲行動」という研究の短い動画が公開されています。
静止した正方形と振動する直線からなる「移動しない餌モデル」に対してカマキリは捕獲行動をしめす。
つづく





2011/08/29

オナガアゲハ♂の吸水



2011年8月下旬
里山を歩いていると水場近くの湿った地面に黒いアゲハチョウが降り立ち、水を飲み始めました。
オナガアゲハ♂夏型だと思います。
伸びた口吻の見えるアングルに移動しようとしたら逃げられてしまいました…。


春に撮った動画の記事はこちら→「オナガアゲハ♂春型のミネラル補給


2011/08/28

ウスバカマキリ♀の身繕い



2011年8月下旬

夜の灯火下で見慣れないカマキリが居たので連れて帰りました。
緑色型のコカマキリにしては変かな?と首を捻りつつ調べてみると、ウスバカマキリ♀(Mantis religiosa)でした。
山形県ではレッドリストの絶滅危惧種Ⅱ類(VU)に登録されている珍しいカマキリだそうです。
どうりで初めて見ました。
止まり木に落ち着くと、口を使って念入りに身繕いしています。
鎌の内側と根元にあるカラフルな斑紋が美しい。

つづく




【追記】
小松貴『絶滅危惧の地味な虫たち (ちくま新書)』によると、
(ウスバカマキリの)分布は非常に広く、世界的にはユーラシア大陸の大半、そしてアフリカ大陸にまで及ぶ。かの有名なファーブルの『昆虫記』にも、フランスに分布する本種が登場している。分布の広さは日本国内でも同様で、北海道から南西諸島まで全域にわたり分布しているのだが、南西諸島以外ではなぜか恐ろしく個体数が少ない。分布は広いのに、生息地がきわめて飛び地的なのだ。あまり人工的に荒らされていない、広大な河川敷のような環境で見つかることが多い。(p233-234より引用)

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