2020/10/10

天敵に腹部を捕食されたカブトムシ♂が虫の息で動く

 

2020年7月下旬・午前11:50頃・晴れ 

郊外の道端にカブトムシ♂(Trypoxylus dichotomus)の生首(正確には頭部および胸部)が仰向けに転がっていたのでギョッとしました。 
瀕死のカブトムシ♂には微小なクロアリ(種名不詳)が群がっています。 
よく見ると、頭部だけでなく胸部の一部も付いていて、1対の前脚がピクピクと動きました。 
虫の息でも未だ生きていて、前脚および角を動かしました。 
敏感な口器や触角の辺りをアリが徘徊したから反応したのか?と思いきや、後半は自発的に前脚を動かしています。  
採寸のため路面に定規を並べて置いてみましょう。 
定規を使って死骸を裏返すと、立派な角は無傷でした。 
おそらく野鳥に捕食された後の食べ残しだと思われます。 

辺りを見回すと、少し離れた縁石の上に、捕食者が食べかけのカブトムシ腹部が転がっていました。 
胸部の翅および脚は全て毟り取られた状態で、パッと見は体節だけの特徴がない塊です。
腹部の背面には後翅を毟り取った跡が見えます。 
鳥につつかれた食痕があるものの、腹部の肉は完食されていません。 
捕食者の鳥は獲物を解体中に何かに驚いて、せっかくのご馳走を置いたまま逃げてしまったのでしょう。 
このカブトムシ♂腹部にも微小なクロアリ(種名不詳)がたかっていました。 
白い微小な肉片をアリが持ち去ろうとしています。  

私が振り返ると、瀕死のカブトムシ♂の生首は前脚だけで歩いていました。 
ちょっとしたホラー映像です。 
前脚を左右交互に動かしても暴れるだけで、正常に前進できません。  


さて、カブトムシ♂を生きたままバラバラにした捕食者の正体を推理してみましょう。
(カブトムシの)成虫の天敵となる捕食者は、タヌキ、イノシシなど森に棲む動物、カラスやフクロウなどがいる。(wikipediaより引用)
確かに今回の撮影中、周囲でカラスが鳴いていました。 
この辺りでタヌキをよく見かけますが、イノシシは生息数がまだ少ないようです。  
本郷儀人『カブトムシとクワガタの最新科学 (メディアファクトリー新書)』を読むと、筆者は雑木林での直接観察で捕食者の正体を意外にもフクロウStrix uralensis)と突き止めています。
注意深く見ていくと、私の演習林内でもただ寿命で死んだわけではない死体が存在していました。それらの特徴は、おなかだけをごっそり何者かに食いちぎられ、胸から上しか残っていないこと。なかには腹を失いながらも、まだ動いているカブトムシもいるほどです(おそらく、ついいましがた何者かに襲われたのでしょう)。(中略)昆虫には痛覚がないと言われているので、彼はまだ食べられたことにも気づいていないかもしれません。(中略)フクロウは、主にネズミなどの小型の哺乳類や小型の鳥類を捕食すると考えられており、昆虫食の鳥とは考えられていなかったのです。(中略)現在では、この調査地以外の場所のフクロウたちもカブトムシを捕食していることがわかっています。(中略)どうやらフクロウは柔らかくて食べやすいおなか部分だけが好きな美食家のようです。 (p116〜119より引用)
 

私のフィールドにもフクロウが生息するらしいことが分かっています。
▼関連記事(4年前の撮影) 
杉林に響くフクロウ(野鳥)の鳴き声♪
しかし、それでも私はカラスの方が容疑者として怪しいのではないか?と思ってしまいます。
そもそも現場は雑木林から少し離れていました。 (鳥にはひとっ飛びの距離かもしれません)
夜の街灯に誘われてカブトムシ♂が飛んでいるところを鳥に襲われたのかな?

余談ですが、12日後の8月中旬。
郊外の交差点の歩道でカブトムシ♀死骸の上半身が転がっていました。 
これは動いていなかったので、写真だけで紹介します。
鞘翅(前翅)が左半分だけ残っていました。
柔らかい腹部だけが捕食されたようです。
カブトムシ♀は体内(腹部内)に栄養豊富な卵巣があり、邪魔な角も持たないので、捕食者にとっては同じカブトムシの♂よりも魅力的な獲物だと思われます。





リョウブの花蜜を吸うクロアゲハ♀の羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】

 

2020年7月下旬・午後14:00頃・くもり 

 峠道の横に自生するリョウブの灌木でクロアゲハ♀(Papilio protenor)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
翅を広げて吸蜜していました。
リョウブの花序を歩き回るときには、羽ばたいてバランスを取っています。

リョウブの花から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:57〜)
優雅な羽ばたきをスーパースローで堪能できます。
飛来したキバネセセリ♀(Bibasis aqulina)とニアミスしたシーンも偶然撮れました。
 

2020/10/09

ベニバナインゲンの花で採餌するクマバチ♀

 

  2020年7月下旬・午前11:00頃・晴れ 

 民家の家庭菜園に咲いたベニバナインゲン(別名:花豆、紫花豆)キムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が忙しなく訪花していました。 
後脚の花粉籠が空荷だったので、マメ科の蝶形花で盗蜜しているのか?と半ば期待したものの、毎回、正当訪花で吸蜜していました。

水溜りで水浴するホオジロ幼鳥(野鳥)

 

  2020年7月下旬・午前11:20頃・晴れ 

 平地の池へ向かう農道を私が歩いていると、ホオジロEmberiza cioide)の幼鳥が水溜りの周囲でウロウロしていました。 
きっと水浴したいのだろうと意図を察して私がフリーズしていると案の定、警戒を解いて行水を始めました。
正面を向いてくれたときに胸に縦斑があるので、♀ではなく幼鳥と判明。 
山渓カラー名鑑『日本の野鳥』p498によると、ホオジロの幼鳥は胸に縦斑があるとのこと。
 

ホオジロ幼鳥は逃げ遅れたのか、ヒトに対して警戒心が薄い印象を受けました。
成鳥(親鳥)はとっくに逃げてしまったのでしょう。

水たまりに入ると少し深い所に身を屈め、こちらを向いたまま水浴を開始。
行水の合間に小声で鳴いているような気もしたのですが、聞き取れません。
翼を高速で小刻みに震わせ、水飛沫を跳ね上げています。
頭を水面に素早く浸けても、すぐに上げてしまいます。
カラスの行水のように頭を水中で左右に振らないのは、ホオジロ特有の作法なのか、それとも私を警戒しているためなのかな?
次に機会があればハイスピード動画で撮ってみたいものです。(実はホオジロも頭を水中で素早く左右に振っているのかもしれません )
ジュジュジュジュ…♪という鳴き声が近くのニセアカシア樹上から聞こえます。 (@1:50)
もしかすると先に逃げたホオジロ親鳥が警戒声を発しているのかもしれませんが、被写体から目線を切る訳にはいきません。( ただのスズメの鳴き声?)
水浴の合間に濡れた胸の羽毛を嘴で少し整えました。
ホオジロ幼鳥は水たまりの外にピョンと跳び出ました。
砂利道の路上で体を震わせて濡れた羽毛の水気を切ると、羽繕い。
2本脚を揃えて跳ぶホッピングで水たまりからどんどん離れて行きます。
やはり私を警戒しているようです。
砂利道に座り込んで羽繕いを始めました。
足で身体を掻いています。
せっかく水浴したのに、直後に土で汚すのは台無しだと素人目には思ってしまいます。
農道に座り込んで親鳥からの巣外給餌を待つのでしょうか?
しかし、ここでは保護色になっておらず、天敵(捕食者)に対して目立ってしまいます。
最後に突然、左上に飛び去りました。

平地でホオジロの行水を見たのは初めてです。
この日は温度計を持参していなくて、気温を測れず残念。
▼関連記事(7、8年前の撮影@山中の池) 
ホオジロ♂の水浴と羽繕い2012【野鳥】 
ホオジロ♂の水浴と羽繕い2013【野鳥】

2020/10/08

クズの茂みを徘徊・跳躍するマガネアサヒハエトリ♂(蜘蛛)

 

  2020年7月下旬・午後15:30頃・晴れ

湿地帯の周囲に繁茂するクズの群落で マガネアサヒハエトリ♂(Phintella arenicolor)を見つけました。
 マクロレンズを装着して正面から接写すると、第1脚腿節の前面が青い金属光沢に輝いて、とてもきれいです。
背側から見ると、頭胸部の後縁も青いです。
隣のクズの葉へ跳び移った直後は、腹端の糸疣から伸びる細いしおり糸が見えました。
カメラを警戒してすぐにクズの葉裏に隠れてしまいます。

※ 動画編集ミスで無音になってしまいました。


▼関連記事(8年前の撮影) 
マガネアサヒハエトリ♂の徘徊・跳躍

 



オトコエシの花蜜を吸うヒロオビヒゲナガ♀(蛾)【HD動画&ハイスピード動画】

 

  2020年7月下旬・午後16:40頃・くもり

低山を抜ける峠道の横に咲き始めたオトコエシの群落でヒロオビヒゲナガ♀(Nemophora paradisea)が訪花していました。
美しい小蛾がただ休息しているだけかと思いきや、マクロレンズで接写してみると、伸ばした口吻を小さな花の中央に差し込んで吸蜜していました。
側面から接写すると口吻がよく見えます。
この株では未だほとんどが蕾で、オトコエシの花は数えるぐらいしか咲いていません。

後で調べてみると、ヒロオビヒゲナガ♀はオトコエシの花の蕾に産卵すると知りました。
広渡俊哉, and 永池徹也. "ヒロオビヒゲナガに関する生物学的知見." 蝶と蛾 49.4 (1998): 288-294.  (全文のPDFファイルがダウンロード可能)
今回の映像では残念ながら腹端が翅に隠されていて、産卵の有無は不明ですが、産卵姿勢ではないと思います。

次は飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。(@1:18〜)
オトコエシの花序を指で軽くつついて揺らすと、準備運動なしに羽ばたいて飛び去りました。
すぐ近くのヨモギの葉裏に隠れていました。
もう一度指で軽く触れると、慌てて羽ばたきながら落下し、ヨモギの葉にぶつかりながらも飛び去りました。

▼関連記事(5年前の撮影)

2020/10/07

シロツメクサの花蜜を吸うキンケハラナガツチバチ♀【HD動画&ハイスピード動画】

 

  2020年7月下旬・午後16:35頃・晴れ 

 平地の農道に咲いたシロツメクサの群落でキンケハラナガツチバチ♀(Megacampsomeris prismatica)が少なくとも2匹、訪花していました。

 個々の小さな蝶形花に丹念に正当訪花して口吻を差し込み、吸蜜しています。 
この組み合わせは初見です。 
同じ農道に疎らに咲いていたヒメジョオンの花には全く興味を示さず、シロツメクサばかり続けて訪花しています。 

 現場では同一個体を追いかけて撮ったつもりでしたが、映像を見直すと、 1匹は地中から羽化したばかりなのか、頭頂部の単眼や腹端、後脚の脛節などに乾いた泥が付着しています。
単眼が塞がれて見えなくても訪花および飛翔行動に支障は無いようです。 
自覚があれば身繕いして単眼にこびりついた土を落とすと思うのですけど、それよりも空腹を満たすのが優先なのでしょう。 
通常マクロモードの撮影でレンズを吸蜜中の蜂にそっと近づけても、逃げませんでした。 

 花から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@3:07〜) 
最後はシロツメクサの花から隣のイネ科の葉に歩いて移動したら、自分の体重を支え切れずに落ちてしまいました。 

 ※ せっかく蜂の羽音も記録できたのに、動画編集ミスで無音になってしまいました。

落ち葉をめくって虫を探す早春のシジュウカラ♀♂(野鳥)



2020年3月中旬・午後12:55頃・晴れ

マンサクの花が満開に咲いた民家の庭でシジュウカラParus minor minor)の♀♂つがいが採食していました。
地面の落ち葉を嘴でめくって食べ物を探すと、次は落葉した庭木に飛び上がり、と庭を上下に往復しています。
樹上では足元の横枝をつついているのかと初めは思ったのですが、何か固い餌を足で押さえつけて嘴で割ろうとしているようです。
落ち葉をめくって見つけた餌は何でしょう?
植物の固い種子なのか、それとも越冬中の昆虫の固い蛹や卵なのか、映像を見直しても採食メニューは不明です。

結構近距離から撮影したのに、珍しくシジュウカラ♀♂は私をほとんど恐れませんでした。
採食に夢中だったのかな?
動画の音声を正規化して音量を上げても、警戒声を発していませんでした。


2020/10/06

陸上を跳びはねて水溜りに向かうヒメアメンボ



2020年7月中旬・午後15:40頃・くもり

河川敷に出来た水たまりの周囲をヒメアメンボGerris lacustris latiabdominis)が跳びはねていました。
乾いた舗装路をピョンピョン跳んで移動しています。
初めは水溜りから遠ざかっていましたが、途中で方向転換し、水溜りを目指すようになりました。
私が逃げるアメンボを追い回した訳ではなく、一箇所に立ち止まって撮影した映像です。
無翅の幼虫ならともかく、しっかり翅がある成虫がどうして羽ばたいて飛ばないのでしょうか?
陸上をピョンピョン跳ぶ方が省エネなのかな?
アメンボは進化の結果、他の昆虫のように脚を使って普通に歩くことはできなくなったのでしょうか?
てっきりアメンボは翅を使って水溜りに飛来するのだと思っていました。
地上を跳びはねる移動法では目線が低いので、遠くの水溜りを見つけにくいはずです。
ようやく浅い水溜りに到達すると、アメンボらしい遊泳を始めました。

陸上の跳躍シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:54〜)
ジャンプしているように見えて実は空中で少し羽ばたいているかもしれないので、次に機会があればハイスピード動画に撮ってみるつもりです。


ヒメアメンボ?@歩道+跳躍移動
ヒメアメンボ?@水溜り

ヤブガラシを訪花中にナミアゲハ♂同士で誤認求愛【HD動画&ハイスピード動画】



2020年7月中旬・午後15:50頃・くもり

川沿いの土手に蔓延るヤブガラシのマント群落で2頭のナミアゲハPapilio xuthus)が訪花していました。
翅を広げたまま吸蜜しています。
飛来した別個体♂bが一瞬、先客♂aに誤認求愛したようですが、♂aは動じずに吸蜜を続けます。(@0:37)
蜜源植物での激しい縄張り争いは無さそうです。

花から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:11〜)

訪花中の個体♂Aを撮っていると、別個体♂Bが飛来し、隣のヤブガラシ花序で吸蜜を始めました。(@1:27)
ほぼ同時に飛び立つと、短い追跡の後に別れました。
探雌飛翔の合間に栄養補給しているのだと思うのですけど、♂同士で激しい縄張り争いが無いのが不思議でした。

吸蜜中のナミアゲハ♂の目の前をハエ(種名不詳)が飛来すると、翅を素早く開閉して威嚇し追い払いました。(@1:48、1:58)
この行動は別の記事で独立に紹介すべきだったかもしれません。


▼関連記事(6年前の撮影:ハイスピード動画なし)
ヤブガラシの花蜜を吸うナミアゲハ




2020/10/05

狩ったクロオオアリ♀を運ぶアオオビハエトリ♀(蜘蛛):後編



2020年7月中旬・午後15:05〜15:15・くもり


▼前回の記事
クロオオアリ♀を狩って運ぶアオオビハエトリ♀(蜘蛛):前編

私がトイレから戻って来ると、依然としてアオオビハエトリ♀(Siler cupreus)はミズキ根際の石に登って落とした獲物を取り戻す機会を窺っていました。
クロオオアリCamponotus japonicus)の巣口に近いので働き蟻(ワーカー♀)の往来が激しく、なかなか獲物に近づけません。

その石の上では2匹のクロオオアリ♀が向かい合って休んでいるように見えます。
後に判明したのですが、左の個体Lが先程クモに噛まれて麻痺状態でした。(クモの落とし物)
右の個体Rは心配そうに付き添ってるのでしょうか?
しかしクモ毒が回った仲間を手当てする方法などありません。
アリの社会には兵隊アリというカーストがあっても、衛生兵はいないのです。
弱った仲間を今度は餌と認識して巣に運ぶか、あるいは営巣地付近の衛生状態を保つために巣から遠い所に死骸を捨てに行くだろうと予想したのですが、そのようなドライな行動も見られませんでした。
瀕死の仲間の傍らにちょっと付き添うだけですぐに離れて行きます。
仲間がクモの手に渡らないように必死で守る訳でもありません。

アオオビハエトリ♀が右のアリRに歩脚で軽く触れると、その個体Rは反応しました。
クモはアリRの背後に回り込み、周囲を警戒しています。
クモは立ち止まると、第1脚の先を舐めて身繕いを始めました。
他の元気なアリが石の舞台に乱入すると、クモは慌てて退散します。
石の側面に一次避難したクモは再び石の上に登ると、痙攣しているアリLを正面から取り戻しに行きました。(@1:30)
いつの間にかアリRは居なくなっていました。
クロオオアリ♀Lの左触角を咥え、獲物を引きずりながら後退します。
獲物の運搬法は先程(前編で)観察したのと同じでした。
虫の息の獲物はわずかに脚を踏ん張って抵抗するものの、痙攣している脚にあまり力が入りません。
アオオビハエトリ♀が獲物の首元に噛みつこうとした瞬間に、別個体の元気なアリが助けに来ました。(@1:47)
おそらく瀕死のアリが放出した警戒フェロモンに反応して、近くの仲間が駆けつけたのでしょう。
クモは慌てて獲物を離し、逃げ惑います。
しかし助けに来たはずのアリは深追いせずに、すぐに居なくなってしまいます。
敵であるアオオビハエトリに腹端から蟻酸を吹きかける攻撃もしませんでした。
この点が私にはさっぱり理解できません。
素早く逃げ回るアオオビハエトリをアリはよく見えないのでしょうか?(クモが体表を化学擬態?)
クモに連れ去られそうになっている仲間を奪還しに来たように素人目に見えるだけで(擬人化)、実はただのランダムウォーク中にクモと遭遇しただけなのかもしれません。

すぐに戻って来たクモは、今度は獲物の左中脚の先端(跗節)を咥えると、またもや獲物を引きずりながら後方に運搬開始。(@1:52)
獲物に近づいて体を抱え込み、噛もうとした瞬間に、再び邪魔が入りました。(@2:02)
クロオオアリは急所を噛まれる(とどめを刺される)寸前に警戒フェロモンを発するのでしょうか。
クモは慌てて退散します。

同じことの繰り返しで、事態がさっぱり進展しません。
観察している私も焦れったくなってきました。

クモが落とした獲物は小石の側面に引っかかっていました。
その下でアオオビハエトリ♀は別個体の元気なアリと対峙しています。(@2:27)
クモがヒットアンドアウェイしてもアリは逃げません。(この個体も実はクモに軽く噛まれて麻痺状態?)
ようやくクモは落とした獲物を取り戻しました。(@3:05)
麻痺した獲物の左触角を咥えて後方へ運びます。
獲物が脚を踏ん張って抵抗するので、アリの右の触角も噛んで同時に2本咥えるようにしました。(@3:27)

獲物を運んで石から下りると、幹を這う蔓を何本も苦労して乗り越え、蔓植物の小葉に乗りました。
ここなら他のアリに邪魔されにくいでしょう。
私が初めに見たときは獲物を持ってミズキの幹を運び上げようとしていたのですが、今度は逆向きに運んだことになります。
つまり、アオオビハエトリ♀は決まった場所(住居網※)に獲物を持ち帰ろうとしているのではありません。
※ 本種は樹皮下や葉裏に袋状住居を作るらしい。(ネイチャーガイド『日本のクモ』p305より)

アリの巣から少しでも離れて、どこでも良いから安全な場所に獲物を運んで、落ち着いて捕食したいだけのようです。
獲物を裏返すと、喉元に噛みつきました。(@4:15)
ここが獲物を吸汁するための決まった部位なのでしょう。
そのまま葉裏に回り込んで隠れてしまいました。

しばらくすると、クモは獲物の喉から吸汁しながら葉表に戻っていました。(@4:54)
葉を伝い歩き、獲物を更に運搬して行きます。
ただでさえ曇り空なのに、草むらの中をマクロレンズで接写すると、かなり薄暗いです。
仰向けにしたアリの死骸の喉元に噛みつきながら葉上を運搬
草むらのあちこちにアリの体が引っかかって運びにくそうです。
咥えた獲物を前に運ぼうとすることもありましたが、周囲の障害物に引っかかるので、後退するほうが楽なのでしょう。
獲物は絶命したようで、もう全く動いていません。
最後は私も茂みでクモを見失ってしまいました。
アリに邪魔されない場所で落ち着いて捕食吸汁を楽しむのでしょう。

アオオビハエトリがアリを狩る(初めて噛み付く)瞬間を観察できなかったのは残念です。
アリからの反撃を恐れ、素早いヒットアンドアウェイの攻撃を繰り返すらしいのですが、今回の観察ではとにかく臆病な印象を受けました。
アオオビハエトリを生け捕りにすれば、飼育下でアリ狩りを観察・撮影できるかな?
夕方に現場を再訪したものの、アリの巣の近くにアオオビハエトリ♀の姿はありませんでした。
大型のクロオオアリ♀を1匹狩って満腹したら、その日はもう狩りをしないのかもしれません。
あるいは夕方で薄暗くなると、狩りは打ち切るのかもしれません。
私は未練がましく後日に何度も現場を再訪したのですが、二度とアオオビハエトリ♀に会えませんでした。


【追記】
小松貴『絶滅危惧の地味な虫たち (ちくま新書)』によると、
アリは個体数が多く、いたる所に生息している。栄養価も高い。だから、ひとたびアリの「食いづらさ」さえ克服できたものたちにとっては、アリの巣や行列は汲めども尽きぬ無尽蔵の食料庫である。脊椎動物・無脊椎動物の別なく、そんなアリ専門の捕食者として進化した生物が、いくつもの分類群からぽつぽつ誕生している。クモの仲間もそのうちの一つだ。(中略)
 徘徊性の「アリ専」グモの多くについては、狩りの時に「アリに飛びかかり、噛みつくとすぐ離す」習性を持つ。(中略)アリ捕食に特化したクモは、逃げられるリスクを冒してなお捕らえた獲物を一度手放すのだ。アリは反撃能力が高い昆虫のため、ずっとアリに噛みついたままだと断末魔のアリの抵抗にあい、致命的な反撃を食らうおそれがある。獲物に先手を打って攻撃し、相手が力尽きるまでは距離を置くという戦法は、昆虫と比べて体の軟弱なクモにとってまさに必勝の技といえよう。(p266より引用)

筆者はアリに詳しいので、この辺りの記述は力が入っています。

アオオビハエトリが獲物を落としてしまったり臆病に見えた理由がこれで分かりました。 









オオジシバリの花畑でハシボソガラスが採食(野鳥)



2020年7月中旬・午後16:00頃・くもり

河川敷で計3羽のハシボソガラスCorvus corone)が餌を探して歩き回っていました。
芝生で覆われただけの殺風景だった河川敷にオオジシバリコウリンタンポポの花が咲き乱れていました。
密生したオオジシバリのひょろひょろした茎の方がカラスの背丈よりも高く、カラスの姿がほとんど隠れています。
その中でハシボソガラスは芝生の地面を嘴であちこち突いて探餌採食しています。
カラスはオオジシバリの花そのものには興味を示しませんでした。

採食メニューも分かりませんし、カラスの採食行動の記録として特に面白い訳ではありませんが、舞台が絵になる(バエる)「お花畑」ということで、スナップ撮影しました。




2020/10/04

ナツメの花蜜を吸うフタモンアシナガバチ♀



2020年7月中旬・午後14:25頃・くもり

ナツメの庭木でフタモンアシナガバチPolistes chinensis antennalis)のワーカー♀が訪花していました。
花から花へ飛び回り、吸蜜の合間に身繕いもしています。

※ 動画編集のミスで無音になってしまいました。
改定するとなるとまた一から編集しないといけないので、このままお届けします。




ナツメの開花期に何度も通って観察したのに、ミツバチを初めとするハナバチ類が全く訪花していなかったのが非常に不思議です。
時間帯の問題でしょうか?
果たしてこれは普通のことなのか気になるので、来年も見に行くつもりです。
私の杞憂だと良いのですが、どうも最近フィールドでミツバチが激減しているような気がしてなりません。

ナツメの木の下には多数の実生がすくすくと育っていて、花も咲いていました。
雪国でもナツメの実生が育つとは意外でした。

ナツメ属は多く熱帯から亜熱帯に分布し、ナツメ以外にも食用にされるものはあるが、ナツメが最も寒さに強い。wikipediaより引用)




以下は、前年2019年10月下旬に撮影した、熟したナツメの果実の写真です。

ラベンダーの花蜜を吸うイチモンジセセリ



2020年7月中旬・午後17:10頃・晴れ

道端の花壇に咲いたラベンダーの群落で夕方の西日を浴びながらイチモンジセセリParnara guttata)が訪花していました。
この組み合わせは初見です。
花穂から花穂へ忙しなく飛び回るということは、花蜜の量が少ないのでしょう。




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