2023/05/06

スギ山林で遭遇したニホンカモシカを追う(対峙警戒、鼻息威嚇♪、逃走)

 

2022年10月中旬・午後14:20頃・くもり 

里山でつづら折れの山道を私が下山していると、前方にニホンカモシカCapricornis crispus)を発見。 
この山道はあまり整備されていなくて一般の登山者には不人気ですが、静かに歩けば野生のカモシカとよく遭遇するのでお気に入りのルートです。
関連記事(2ヶ月前の撮影)▶ 幼獣を伴い鼻息威嚇♪しながら夏の山道を駆け下りるニホンカモシカ♀
スギ林の斜面で立ち止まったカモシカが、振り返ってこちらを見上げていました。 
私も動きをピタッと止めて静かに動画を撮っているだけなので、視力の悪いカモシカは警戒しているものの、私の存在をはっきりと認識していないようです。 
ニホンカモシカの顔にズームインしても、角や耳に個体識別できそうな特徴はありませんでした。 
やがてカモシカはゆっくりと斜面を下り始めました。 
外性器が見えず、性別を見分けられません。

私も静かに追いかけます。 
カモシカはスギ林の木の陰に隠れていました。 まさに「頭隠して胴体隠さず」。 
警戒を解くと、斜面をゆっくりとトラバースし、藪の陰に隠れてしまいました。 
林床のスギ落枝がカモシカに踏まれてパキパキ♪と折れる音が響きます。 
(逆に、山中でパキパキ♪する音が聞こえたら、動物が歩いている証拠なので要注意です。)

撮影アングルを求めて私が更に横へ移動したら、カモシカが立ち止まってこちらを見上げていました。 遂に気づかれてしまったようです。 
私の体臭を嗅ぎ取ったのかな?
「フシュ、フシュ♪」と鼻息を荒らげて威嚇し始めました。 
それでも私が動じないでいると、逃げ出しました。 
しかし短距離を走っただけで一旦立ち止まり、再び鼻息威嚇♪しながら逃走。 
冬山なら足跡を辿って更に追跡できるのですが、非積雪期では一期一会です。

今回は出会った時点で私の方が高所に居たので、終始カモシカは弱気でした。 
(高所に居るカモシカはもっと自信満々で強気です) 

ニホンカモシカは日本固有種ですが、地方によって体色が違います。 
我が東北地方(雪国)のカモシカの毛皮は白っぽい(灰色)のに対して、西日本の個体の動画や写真を見ると明らかに黒っぽいので驚きます。 
これはまさにグロージャーの法則に当てはまっています。
鳥類・哺乳類において,一般に同じないし近縁の種において,乾燥・冷涼な気候下で生活するものは,湿潤・温暖な気候下で生活するものよりも,メラニン色素が少なく明るい色彩を呈すること.様相に若干の差はあるが,昆虫類にもよく似たような傾向が見られる.しかし広く動物界を見ると,低温が黒化をもたらす傾向などもあって,この規則に添わない場合も多い.典拠は不明.(『岩波生物学辞典第4版』より引用)
寒冷な雪国では黒っぽい毛皮を身にまとった方が太陽熱を吸収して温かそうですけど、それよりも雪景色に対して保護色になるために白っぽく適応進化したのだろうと私は考えています。 
カモシカの体色は地味で目立ちませんが、私もカモシカ観察にだいぶ慣れてきたので、山中で遠くのカモシカを目ざとく見つけられるようになりました。 
ニホンオオカミが絶滅して以来、カモシカを狩る有力な捕食者はヒト(猟師、ハンター)です。 
捕食圧が強まれば、ノウサギのように季節によって毛が生え変わる(夏毛と冬毛)ようにカモシカも進化するかもしれません。
鼻面中央の黄色はカモシカの斑紋ではなく、手前に造網したジョロウグモがピンぼけに写っているだけ。

秋のタヌキ溜め糞に集まる虫たちの活動【10倍速映像】ベッコウバエ、ハクサンベッコウバエ、オオセンチコガネ、センチコガネなど

 

2022年10月中旬・午後12:00頃・くもり・気温17℃ 

里山のスギ林道に残された溜め糞場sを定点観察しています。 
トレイルカメラを設置して通ってくる野生動物を記録しているのですが、撮れた映像を現場でチェックしたり電池を交換したりする間に、ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞の横に三脚を立てて微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 
この日、スギの落ち葉の上に残された獣糞の量は少なく、ほぼ泥状になっていました(少量の下痢便)。 
糞内容物には植物の種子が含まれています。 

秋になると獣糞に集まるハエ類はベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)がメインになりました。 
私が近づくと一斉に飛んで逃げるものの、しばらくすると溜め糞に舞い戻って来ます。 
ベッコウバエより小型のハクサンベッコウバエNeuroctena analis)も集まっていました。
ベッコウバエ類の興味深い配偶行動については、後日改めてじっくり撮影したので、別の記事にします。
キバネクロバエらしき黒っぽいハエもたまに飛来しますが、もっとズームインしないと見分けられません。 
 

 獣糞の周囲のスギの落葉や落枝が上下に細かく動いているのは、直下で糞虫が活動している証です。 
案の定、赤紫の金属光沢に輝くオオセンチコガネPhelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)と鈍い金属光沢のセンチコガネ♀♂(Phelotrupes laevistriatus)がときどき獣糞の表面に出てきます。 
 他には微小なアリ(種名不詳)の群れが獣糞の上を徘徊していました。

2023/05/05

クルミの実を運ぶ野ネズミが夜のスギ林道で右往左往【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年10月中旬・午後19:50〜20:00頃・気温10℃ 

里山のスギ林道で一晩に3回、野ネズミ(ノネズミ)の活動が自動撮影カメラに記録されていました。 

まず初めはオニグルミの実(堅果)を口に咥えて右往左往しています。
どこに埋めようか安全な貯食場所を探し歩いているのでしょう。
野ネズミの体重に対して結構重い(嵩張る)荷物のはずなのに、軽快にピョンピョン跳ぶように林道を移動します。
実は林道を右に数十m行くと、スギ林が途切れた地点にオニグルミの大木が数本自生しているので、おそらくそこから落果を運んできたようです。 
あるいはニホンリスが隠した(貯食した)クルミを見つけて盗んできたのかもしれません。(盗み寄生)
野ネズミが運んでいる丸い堅果はトチノキの実の可能性も考えられますが、この辺りでトチノキは自生していません。 

関連記事(6年前に別の山系で撮影)▶ トチノキの種子に残るアカネズミ?の食痕

野ネズミはそのまま画面の下に消え、残念ながら貯食シーンは観察できませんでした。 


6分後に再び現れた野ネズミは空荷でした。(@0:20〜) 
ただし、同一個体である保証はありません。
右のエリアでスギの落ち葉を掻き分けたり下草の茂みを探索しながらウロチョロと探餌徘徊しています。 
一旦右に消えた後も、画面の右端で活動しています。 


1分20秒後に空荷で再登場。 (@1:19〜) 
対面に見えるスギの木の右下から幹の背後にしばらく隠れました。 
すぐにまたスギの右下に戻ってくると、林道を右へチョロチョロと走り去りました。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施して明るく加工しています。

この地点で野ネズミは神出鬼没ですが、画面の右下隅の辺りに野ネズミの巣穴があることが後に判明します。





夜の林床で虫に跳びついて捕食するカエル【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年10月中旬・午後20:50頃 

山林のカラマツの木の下にドングリを給餌して、何が来るか自動撮影カメラで見張っています。 
画面下の赤丸で示した場所に注目して下さい。 
雑木林の斜面に生えた幼木の葉の背後から黒っぽい小さなカエルがゆっくりと這い出て来ました。 
目だけが白く光って見えます。 
斜面をノソノソと登っていたカエルが急にジャンプしました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@0:40〜)、どうやら林床で活動する黒い小さな虫に向かって一気に跳びついたようです。 
カエルは暗い夜でも目が見えることになります。
てっきり網膜にタペータムがあるのかと思って調べたら、どうもカエルには無いらしいので不思議です。

カエルは、本来「明所での視覚」に関わる光センサー(光受容タンパク質)の性質を、わずか1アミノ酸の置換によって「暗がりでの視覚」に適した性質に変化させている。

動画のカエルの種類は何でしょう?
なんとなくアズマヒキガエルBufo japonicus formosus)の若い個体ではないかな?と思うものの、定かではありません。
カエルは変温動物ですから、トレイルカメラの前で動き回っても本来ならカメラのセンサーに動体検知されません。
今回は恒温動物の野ネズミが横切ったおかげでカメラが起動し、たまたまカエルの捕食行動を記録してくれました。



2023/05/04

ホンドタヌキが夜な夜な通う溜め糞場にコウモリも飛来【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年10月中旬

里山の杉林道にある溜め糞場sに通ってくるホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の記録です。

シーン1:10/11・午後22:56・気温12℃ 
自動撮影カメラの起動が遅れたのか、林道の右に突然タヌキが現れました。 
珍しく林道を逸れて横の法面(斜面)の獣道を勢い良く駆け上がり、姿を消しました。 
その直後に右から溜め糞場を目がけて突っ込むようにコウモリが飛来し、溜め糞の真上で急旋回して右へ引き返していきました。 
タヌキとコウモリがほぼ同時に(入れ替わるように)トレイルカメラに撮れたのは初めてです。 
今回タヌキがいつもとは違う巡回ルートを辿ったのは偶然なのか、それともコウモリの飛来と関係あるのでしょうか?
コウモリがエコロケーションのために発する超音波をタヌキの耳は聞きとれるのかな?

溜め糞場に集まる虫をコウモリが狩りに来たのなら面白いのですけど、どうでしょうか? 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@0:08〜)、林道を飛ぶ夜蛾を追いかけて飛び回っていたようです。 
コウモリが狩りに成功する決定的瞬間を動画に撮るには、よほどの幸運に恵まれないといけないようです。 
夜蛾の種類によってはコウモリの超音波を聞くと上手く回避する特別な飛翔戦術を駆使するらしいので、その攻防戦が撮れたら最高です。
しかし動画を録画するフレームレートが25fpsしかないのでは、コウモリの素早い動きを滑らかに記録できそうにありません。 
トレイルカメラの暗視映像でも、せめて30または60fpsは欲しいところです。 
今後の技術開発に期待します。 


シーン2:10/12・午後17:58・気温12℃ (@0:19〜) 
とっぷり日が暮れた晩にタヌキが右から登場。 
(ちなみに、日の入り時刻は午後17:09。) 
溜め糞場sの手前で立ち止まって、スギの落ち葉が敷き詰められた林道の匂いを嗅ぎ回っています。 
少し迂回しながら左へ立ち去りました。 


シーン3:10/16・午後23:58・気温14℃ (@0:42〜) 
いつものように林道を右から歩いて来たホンドタヌキが足を止め、溜め糞場sの匂いをチェックしています。 
横を向いてカメラを見上げてから、左へ立ち去りました。 


シーン4:10/19・午後18:16・気温8℃ (@1:05〜) 
地面の匂いを嗅ぎながら立ち止まり、カメラ目線になりました。 
そのときスギの落枝を暗闇でうっかり踏んでしまいました。 
テコの動きで落枝の反対側がタヌキの体に触れてしまったのですが、タヌキは別にびっくりする素振りはありませんでした。 

今回も溜め糞場で排便することなく、匂いを嗅いだだけで左に立ち去りました。 
最近タヌキはここで全く排泄してくれなくなりました。 
どこか新しい場所に溜め糞場を移したのではないか?という疑念が拭えません。 

監視カメラを向ける角度を少しだけ変更しました。 
林道脇から突き出したスギ落枝にカモシカが眼下腺マーキングする行動を狙って画角を決めたので、溜め糞場sでの動向が記録されにくくなりました。 
タヌキの脱糞シーンを撮るには、画角をもう少し下げるべきですね。 
固定アングルのトレイルカメラ1台でテーマをあれもこれもと欲張るのは無理なので、どちらかに狙いを絞らないといけません。 
「撮らぬタヌキの皮算用」で強引に何か上手いこと言いたかったのですが、思いつきませんでした…。



イチモンジセセリの求愛と交尾拒否@クルマバナ花

 



2022年7月中旬・午前11:30頃・晴れ 

休耕田に咲いたクルマバナの花でイチモンジセセリ♀(Parnara guttata)が吸蜜していると、同種の♂が飛来して♀の背後に止まりました。 
体格は♀>♂で、♂の方が小型でした。 
腹端の形状や毛束の有無でもイチモンジセセリ♀♂の性別を見分けられそうです。 

♀の背後から♂は前脚で♀の翅を触れました。 
この行動は同種であることの最終確認なのか、それとも求愛行動の一環なのかな? 
♀は閉じた翅を小刻みに震わせて交尾拒否の意思表示をしました。 
私はイチモンジセセリ♂の求愛が成就して交尾に至る例を未だ観察できていないのですが、♀は♂を受け入れると翅を広げるのではないかと予想しています。

関連記事(2、5、9年前の撮影)▶ 


イチモンジセセリ♂が少し飛んで♀の横に移動しても、♀は無視して吸蜜を続けています。 
♀が飛んで逃げても、♂は気づいてないのか♀を追尾しませんでした。 
昆虫の世界でも♂が♀にしつこく強引に迫るとセクハラになりますが(♀にとっては大迷惑)、イチモンジセセリ♂の求愛は紳士的で♀の意思を尊重してくれるようです。 

1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:39〜)

2023/05/03

ニホンカモシカ(右背黒班)がスギ落枝とコシアブラ幼木に続けて眼下腺マーキング【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年10月中旬・午後17:15頃・(日の入り時刻は午後17:09) 

里山のスギ林道をトレイルカメラで見張っていると、日没直後にニホンカモシカCapricornis crispus)が左からやって来ました。 
道端から斜めに突き出したスギ落枝の先端に対していつものように顔の眼下腺をゴシゴシと擦り付けてマーキングしています。 
ちなみに、スギ落枝の尖った先端は地上から約95cmの高さにありました。
角が細いので、若い個体ではないかと思います。 
匂い付けを終えて前進すると、背中の右側に黒い斑紋がある個体と分かりました。 



スギ(杉)の大木を通り過ぎると、その右横に自生するコシアブラの幼木の枝葉に対しても眼下腺マーキングしました。 
2カ所連続で別の対象物に匂い付けするカモシカを初めて見ました。 
このコシアブラ幼木には以前から通りすがりのニホンカモシカが眼下腺マーキングしていたのですが、道端にスギ落枝が出現して以来、見向きもされなくなったという経緯があります。 

その後カモシカ(右背黒班)は林道を右へゆっくり立ち去りました。 

武田修『ロッキーへの手紙』は、生後間もない野生カモシカを保護して飼育した記録です。
当然、眼下腺マーキングというカモシカ独特の習性についても触れてますが、読んでみて特に印象深かったは次の一節です。
 毎日毎夜のスリスリのおかげで、ロッキーの眼下腺から出る水あめのような液が、わたしのズボンを、いつもカピカピにしていました。 
 ロッキーは、散歩に出ると、この眼下腺を立ち木に擦りつけていました。おそらく、カモシカの世界では、人間にはわからない眼下腺の液のにおいで個体を識別するのでしょう。(p82〜83より引用)
特に前半部は飼育経験者ならではの臨場感あふれる貴重な記述ですね。 (鼻水や涎じゃないの?と内心疑ってしまうのですけど…。)
私も現場入りした時に、このスギ落枝の先端部を嗅いでみたのですが、私の鼻には無臭でした。 
カモシカが眼下腺マーキングした直後だと少し酸っぱいような匂いがするという話をどこかで読んだ気がします。 



ヤマボウシの樹上で獲物を探すセグロアシナガバチ♀

 

2022年6月中旬・午前10:15頃・晴れ 

郊外の民家で庭木として植栽されたヤマボウシに白い花(ピンクの彩り)が満開に咲きました。 
そこにセグロアシナガバチPolistes jokahamae)のワーカー♀が飛び回っています。 
花蜜目当てではなく、葉巻の中に隠れたイモムシを探索しているようです。 
やがて葉の茂みの後ろに隠れてしまったので、残念ながら狩りの瞬間を見届けることはできませんでした。

アシナガバチを目の敵にして巣を片っ端から駆除すると、庭の害虫が激増することになります。
殺虫剤を使えば使うほど生物多様性は貧困になり、やがて殺虫剤に抵抗性を獲得した害虫の発生被害は甚大になります。

2023/05/02

深夜のスギ林道で顔を拭い、立ち上がって風の匂いを嗅ぐ野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2022年10月中旬

里山のスギ林道を見張っている自動撮影カメラに写った野ネズミ(ノネズミ)の記録です。 

シーン1:10/16・午前2:57・気温13℃ 
草木も眠る丑三つ時にスギ大木の背後から右に現れた野ネズミが右に走り去り、下草の奥に姿を消しました。 


シーン2:10/20・午後23:46・気温10℃ (@0:07〜) 
スギの根元から林道を手前に向かってチョロチョロと横断しました。 

タヌキとアナグマが共有している溜め糞場sには今回も立ち止まらずに素通りしました。 
溜め糞に含まれる未消化の種子を野ネズミが採食しに通って来るのではないかと予想しても、野生動物はなかなか本に書いてある通りに行動してくれません。 


シーン3:10/20・午後23:52・気温12℃ (@0:16〜) 
スギの根元をうろついてから林道を右に移動を始めました。 
すぐに立ち止まり、林床でじっとしています。 
カメラからやや遠くて詳細が見えないのですが、目を開いたまま休んでいるようです。 
しばらくすると、その場で顔を何度も拭って毛繕いを始めました。 
地面に身を伏せてからおもむろに立ち上がると、風の匂いを嗅いで周囲を警戒しています。 

野ネズミがいつもと違う行動レパートリーを見せてくれて、嬉しい収穫です。 
この地点で野ネズミは神出鬼没ですが、画面の右下隅の辺りに野ネズミの巣穴があることが後に判明します。



ミツバアケビの種子とエライオソーム

2022年10月中旬 

知り合いからお裾分けに貰ったミツバアケビの果実を食べました。 
秋ならではの「山の幸」です。 
果実が熟すとぱっくり割れて、中の果肉が丸見えになります。 
白い果肉は生食できて、上品な甘さがあります。 
大量の種子が含まれているため、これを口の中で選り分けて吐き出しながら食べるのが少し面倒です。 

毒キノコが怖い私は秋の山に行ってもキノコ狩りをしないのですが、アケビは毒草と間違える心配はありませんし、山中でも見つけたらその場で食べてしまいます。 
行儀が悪いと言わず、山を歩きながらアケビの果肉を食べ、種をペッペッと吐き散らすことで種子散布者としてアケビに恩返しをしましょう。 

多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』でミツバアケビを調べると、 
アケビやミツバアケビの種子は硬くりょうがあり、けものの鋭い歯を避けて胃に潜り込む。さらに種子には白いゼリー状の付属物(エライオソーム)があり、糞に出た後、さらにアリに運ばれて分散する。 (p146より引用) 

熟果2個を食べながら吐き出した種子を方眼紙上に並べて数えてみると、計146個ありました。 
つまり、果実1個につき平均73個の種子が含まれていることになります。 
種子散布の参考資料として写真に撮ると、先日フィールドで見つけた獣糞の中に含まれていた種子は確かにミツバアケビのものと判明。 
本で読んだ通り、ミツバアケビの黒い種子の端には白いゼリー状のエライオソーム(種枕しゅちん)が付属しています。 
栄養豊富なエライオソームを目当てにアリが集まり、巣に持ち去ることで種子を二次散布することになります。 


【後日談】
ミツバアケビの種子が乾いてからフィールドに持参し、適当な地面に置いてアリが集まってくるか実験してみました。
ところが置いた場所が悪かったのか、半日経ってもアリは全く来ていませんでした。
昆虫相の減退を最近感じていますが、アリが居ない場所があることにショックを受けました。
山麓の果樹園の傍だったので、殺虫剤を撒いた影響なのか?と邪推してしまいます。
機会があれば再チャレンジしてみるつもりです。

川岸の倒木に並んで休むカワウの群れ(野鳥):昼寝、羽繕い、脱糞、羽根乾燥

 

2022年10月中旬・午後14:50頃・晴れ 

川岸に立っていたニセアカシアの高木が川を跨ぐように倒れて以来、カワウPhalacrocorax carbo hanedae)お気に入りの止まり木になっています。 
この日は河畔林からそっと忍び寄り、隠し撮りすることが出来ました。 
カワウはカルガモほど警戒心が強くないようです。 

カワウの群れが倒木上で上流を向いて並んで止まり、のんびり寛いでいました。
いつものように羽繕いしたり、翼を大きく広げて濡れた羽毛を乾かしている個体も居ました。 

倒木に立っている個体は片足立ちになることもあります。 
止まり木を掴んだ足にズームインしてみましょう。 
水掻きの付いたカワウの足の指は4本らしいのですが、このアングルでは3本しか見えないような…?

 多くの鳥は前に3つ、後ろに1つのゆびをもちますが、カワウは前だけに4つのゆびがあり、それぞれのゆびの間に水かきがあります。この4つのゆびを使い、木をぎゅっとつかむのです。(たくさんのふしぎ『水辺の番人カワウ』p21より引用)

倒木の上に座り込んで休んでいる個体も居ます。 
止まり木に座っていた個体が急に立ち上がると、翼を大きく広げてストレッチ運動(@2:09〜)。

緑色のきれいな目をときどき瞑って眠そうにしています。 
すると案の定、首を背中に回して羽根に差し込み、昼寝を始めました。 

首の前面や胸の羽根が白い若鳥が止まり木から後方の下流側に白い液状便を勢い良く放出しました。 
脱糞シーンをまずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。(@1:25〜) 
直後に等倍速でリプライ。 
川面を白濁した糞が流れて行きます。 

2023/05/01

林道脇の法面を早朝に登り降りするニホンリス【トレイルカメラ】

 



2022年10月中旬・午前6:00頃・(日の出時刻は午前5:46) 

里山の林道で水溜りがある区間を自動撮影カメラで監視しています。
カメラの設置アングルを少し変えてみました。

すると、早朝にニホンリスSciurus lis)が現れました。 
食べ物を探して林道脇の法面を下りかけたものの、なぜか途中で引き返しました。 
別のトレイルカメラを固定したシナノキの根本付近の茂みの陰で何かしています。 
最後は雑木林の斜面を駆け上がりました。 


※ 旧機種は画面全体がピンク色に点滅するので、動画編集時に自動色調補正を施しています。 
冒頭シーンは明るい日中に撮った現場の様子です。 
トレイルカメラの設置直後だけ総天然色に写る謎の仕様なので困ります。 
画面の中央やや下に水溜りの泥濘があります。

ミゾソバの花蜜を吸うヒメアカタテハ

 

2022年10月中旬・午前10:10頃・晴れ 

山麓の農村部の休耕地に咲いたミゾソバの群落でヒメアカタテハVanessa cardui)が訪花していました。 
翅をほぼ全開にしたまま吸蜜しています。 
共に普通種ですが、意外にもこの組み合わせは初見です。

2023/04/30

右肩から出血したニホンカモシカがスギ落枝に眼下腺マーキング【トレイルカメラ】

 



2022年10月中旬・午後12:50頃・気温13℃ 

里山の杉林道に設置した自動センサーカメラに写ったニホンカモシカCapricornis crispus)の記録です。 
昼過ぎに林道を左から現れたカモシカが、道端から突き出したスギ落枝の先端の匂いをクンクン嗅いでいました。 
他個体が眼下腺でマーキングした匂いを調べただけで、自分ではマーキングしませんでした。 
直後にフレーメン反応のような表情になりましたが、今回は舌をペロペロと出し入れはしませんでした。 

右背に黒点の有無を確認しようと思ったら、右肩の辺りからポツンと赤く血が滲んでいることに気づきました。 
マダニウシアブなどの吸血性昆虫に刺されたのでしょうか? 
それとも単に藪を通り抜ける際に棘でも突き刺さったのかな? 
まさか同種間の闘争(喧嘩)で角に突かれたのでしょうか?
幸い大した傷ではなさそうですが、もしもこの刺し傷跡のメラニン色素が濃くなってホクロのように黒くなり体毛の斑紋パターンが後天的に変わるとしたら(黒点の誕生!)、個体識別に使えるかどうか慎重に検討しないといけません。 



ホンドテンの糞に含まれるアケビ種子のエライオソームに群がるクロオオアリ♀【種子散布と共生関係】

 

2022年10月中旬・午後15:05頃・晴れ 

里山の細い尾根道にホンドテンMartes melampus melampus)がサインポストとして排泄した糞が少し離れて点々と2箇所に続けて残されていました。 




その小さな糞塊をよく見ると、黒くてツヤツヤしたアケビの種子が未消化のまま大量に含まれていました。 
この山に自生するアケビと言えばミツバアケビです。 
雑食性のテンは果実をよく食べますから、アケビの甘い果肉も大好物なのでしょう。 
テンはアケビと持ちつ持たれつの共生関係にあり、アケビの種子散布に一役買っていることになります。 

しかし自然界はもっと複雑で、それだけでは完結しません。 
アケビの種子の端には白いエライオソームが付属しています。 
エライオソームは脂肪酸、アミノ酸、糖などの栄養が豊富で、アリの大好物です。 
テンの消化管を通った後もエライオソームは変性することなく(栄養価を保ったまま)、そのまま排泄されたようです。 
エライオソームを報酬として種子を巣に運び、種子散布を助けるアリがいるのです。 
実際に、クロオオアリCamponotus japonicus)のワーカー♀がテンの糞に群がっていました。 
他には微小のアカアリ(種名不詳)も多数来ていました。 
このアカアリの種類を見分けられる方がいらっしゃいましたら、是非教えて下さい。 
急いでいた私はマクロレンズを装着するのが億劫で、アカアリを接写しませんでした。
アカアリはテンの糞塊2つともに集まっていましたが、クロオオアリは片方の糞にしか来ていませんでした。


クロオオアリ♀+アカアリ@テン糞

クロオオアリ♀+アカアリ@テン糞

アカアリのみが来ていたテンの糞塊


急いでいた私はじっくり観察できませんでしたが、アケビの種子を持って巣に運ぶアリは居ませんでした。 
新鮮な糞は粘り気がありますから、個々の種子が互いに接着してアリは運び出せないのでしょうか? 
糞が乾燥するまで非力なアリはアケビの種子を運べないのだとしたら、ここで長期のインターバル撮影したら面白そうです。 
あいにく現場は登山客の往来が多い尾根道だったので、微速度撮影することができませんでした。 
今思えば、テンの糞を丸ごと採取してどこか人気のない山中に放置して、微速度撮影しながらアリが来るのを待てば良かったかもしれません。

それともエライオソームの付いた種子を巣に運ぶのは、種子食専門のアリ(クロナガアリなど)だけなのかな? 
今回来ていたクロオオアリやアカアリはその場でエライオソームを食べるだけなのかもしれません。 
だとすれば、アケビにとってクロオオアリは役立たずで、せっかくコストをかけて作ったエライオソームは無駄になります。(損失)

もしアリがテンの糞に含まれるアケビの種子を巣に運べば、アケビは2段階で種子散布(動物散布型)してもらうことになります。 
つまり、アケビは甘い果肉とエライオソームを駄賃として使い、種子を少しでも遠くに運んでもらうよう複数の動物たちを操作しているのです。 



【参考文献】
 ・楠井晴雄・楠井陽子『テンが運ぶ温帯林の樹木種子』(『種子散布―助けあいの進化論〈2〉動物たちがつくる森』p37-50に収録) 
・中西弘樹『アリによる種子散布』(同書p104-117) 
・大河原恭祐『なぜアリ散布が進化したのか』(同書p118-132)


 アケビ類を含む(テンの:しぐま註)糞には、トビイロケアリ Lasius niger が集まっている場面をよく見かけた。ミツバアケビやアケビの種子にはアリ散布植物に特有のエライオソームがあり、トビイロケアリはこれに誘引されるものと想像される。トビイロケアリが種子を運んでいるところは確認していないが、アリによる二次散布も考えられる。(同書p46より引用)


多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』によれば、

(ミツバアケビの)タネを地面に置くとトビイロシワアリが群がり、白いゼリー質をかじり、運んでいく。この翌年、7m離れた場所に芽が出た。(p146より引用)


 

【追記】

てっきりホンドテンの糞と思い込んでましたが、糞の形状からもしかしてホンドタヌキの糞ですかね? 

タヌキがこんな開けた尾根道で堂々と排便するかな?(反語)という気もします。

タヌキの糞だとしても、全体のストーリーは変わりません。



【追記2】
ちょうど1週間前の2022年10月上旬に同じ稜線を歩いていたら、尾根道にアケビの果皮が転がっていました。
よく見ると歯型が付いていて、中の甘い果肉は残っていませんでした。
野生動物の食べ残し(食痕)だと思います。
丸くて小さなパンチ穴が開いているのは、犬歯による歯型なのか、鳥が嘴でつついたのか、それとも虫食い穴かな?
たとえばアケビコノハ幼虫はアケビの葉だけでなく果実も食害するのでしょうか?
素人目には、ナメクジがキノコをかじった食痕にも似ている気がします。
アケビの果皮は野生動物も捨ててしまうほど苦いのに、ヒト(日本人)は料理して残さず食べてしまうのですから、知恵というか食に対する執念が凄いですね。


【追記3】
吉見光治『テン:種をまく森のハンター』という素晴らしい写真集p57に「アケビを食べたテンの糞」の写真が載っていました。
明るい日中にホンドテンが脱糞するシーンを捉えた写真には驚きました。
♂は目立つ場所に糞をする。このマーキングは縄張りを主張していると考えられる。(p54より引用)
テンの♀がサインポストに糞を残さないのなら、どこに排便するのでしょう?
副題にあるように、この本はテンの種子散布が主要テーマになっています。
残念ながら、テンが実際に木に登って果実を採食している現場の写真は柿だけでした。
撮影の難易度がきわめて高いのは容易に想像できるので、不満という訳ではありません。
アマチュアが糞分析の真似事をするのに参考になりそうなテンの糞の写真がいろいろ載っていたのは助かります。
勉強になったのは、テンは堅果類も食べるが種子散布には貢献しないという点です。
ミズナラとブナの堅果類を食べたテンの糞。種子は噛み砕かれ発芽しない。(p59より引用)



【追記4】 

ホンドテンのロードキル死骸を解剖すると、胃内容物からカキノキ種子および果肉が見つかりました。


関連記事 ▶ 交通事故死したホンドテンを解剖してみる


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