2024年4月上旬
シーン1:4/3・午前9:10・くもり・気温10℃(@0:00〜)
平地の二次林で死んだニホンアナグマの営巣地(セット)を監視し続けると、ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)が登場しました。 アクセストレンチから巣口Rの奥を覗き込み、細根(落枝?)を嘴で咥えて巣口から引っ張り出そうとしています。
咥えた小枝を持ち去らなかったので、これは巣材集めの行動ではなさそうです。
以前、この巣穴を乗っ取って住み着こうとしたタヌキが戸締まりのためにバリケードとして置いた落枝をカラスが撤去しているようです。
下半身の麻痺が進行した「いざりタヌキ」が巣穴の奥で餓死しているのではないかと私は疑っているのですが、カラスも死臭を嗅ぎ取って(※追記参照)侵入を試みようとしているのかもしれません。
やがて別個体のハシブトガラスが飛来し、セットの広場に舞い降りると、巣口Rに近づきました。(@0:29〜)
更に別個体がセットを見下ろすマルバゴマキの樹冠に飛来して止まったようです。
※【追記】
カラスは嗅覚が鈍く、専ら視覚で餌を探すのだそうです。
シーン2:4/3・午前9:12・くもり・気温11℃(@1:00〜)
別アングルで設置した監視カメラでも撮れていました。
左から歩いて来たハシブトガラスが巣口Lの奥を覗き込んでから、左上に飛び去りました。
好奇心旺盛なカラスも、さすがに巣穴の中に潜り込む度胸はないようです。
シーン3:4/3・午前9:12・くもり・気温12℃(@1:47〜)
2羽のハシブトガラスが巣口Rから落葉灌木の樹上に飛び上がりました。
止まり木で右を向いてカー♪と一声鳴きました。
耳を澄ますと、少し離れた別個体と鳴き交わしているようです。
樹上のカラスが、目の前にブラブラしていた細い枯れ枝を嘴でポキンと折って捨てました。
巣材集めでも威嚇行動でもなさそうです。
死骸があることは分かっているのにそれを食べることが出来ないフラストレーション(欲求不満)からきた転移行動なのかもしれません。
木から木へ次々と飛び移り、右へ飛び去りました。
シーン4:4/3・午前10:25・くもり・気温12℃(@2:47〜)
またもやハシブトガラスが巣口Rの奥をしつこく覗き込んでいます。
カーカー♪と澄んだ声で繰り返し鳴き、左に少し歩いてから、今度は早いリズムでカーカー♪鳴きました。
シーン5:4/7・午前7:14・晴れ・気温12℃(@3:47〜)
3日後の朝にもハシブトガラスがセットに降り立ち、巣口Lの奥を覗き込んでいました。
そのカラスが急に慌てて飛び去ったので、巣穴の主が飛び出してくるかと期待したのですが、その予想は外れました。
仲間の警戒声♪に反応したのかな?
その後もカラス同士で鳴き交わす声だけ聞こえます。
【考察】
カラスは死骸(腐肉)を食べるスカベンジャーです。
そのカラスが巣穴の奥を繰り返し覗き込んでいることから、中に死骸が埋まっていることが強く示唆されます。
死骸の素性について、2つの可能性が考えられます。
(1)この営巣地で越冬中に死んだニホンアナグマ。
巣外(営巣地の端)で見つかったアナグマの死骸は、カラスやタヌキによって食べられている最中に引きずって運ばれ、行方不明になりました。
タヌキが食べ残しの死骸を巣穴の中に隠した可能性が考えられます。(貯食)
しかし、死骸を巣内に搬入するシーンがトレイルカメラによって撮れていない点がネックです。
(2)下半身の麻痺が進行した「いざりタヌキ」が巣内で餓死した。
巣口Lで長時間日光浴した後で行方不明になりました。
つまり、この巣穴はアナグマとタヌキが続けざまに死んだ、いわくつきの事故物件ということになります。
巣穴を発掘調査して死体の有無を確かめたいのですが、繁殖期が始まる春に巣穴を破壊したくありません。
ちなみに、私の鼻では巣口で死臭を感じたことはありません。
穴居性の野生動物が巣穴の奥で死んだ場合、その死骸を誰が処理するのでしょう?
スカベンジャーのカラスが狭いトンネルの中に潜り込んでまで死骸を食べることはないようです。
暗くて狭いトンネルの中でカラスは目が見えず、不安なのでしょう。
普通ならハエ類が死臭をいち早く嗅ぎつけて集まり、産卵するはずですが、巣穴の奥には侵入できないようです。
ハエは暗闇で飛べませんし、巣口から長い距離を歩いて巣穴の奥にある死骸へ向かう行動は知られていません。
巣穴の奥に横たわる死骸は、おそらくアリなどの土壌生物によって少しずつ食べられて分解されると推測しています。
複数個体の野生動物が同居している巣穴の場合はどうでしょうか?
誰か1匹が巣内で死んだら、仲間(家族)がその死骸を食べてしまうのでしょうか?
それとも巣内の衛生環境を保つために、死骸はその場に埋葬されたり、巣外に運び出されて捨てられたりするのかもしれません。
(社会性免疫行動として、アリなどで有名です。)
巣内の様子を隅々まで長期観察するのは困難なので、こうした問題はほとんど調べられていないようです。