2013年9月上旬
前回の記事で、林道の真ん中に掘られた巣坑に出入りするヒメスズメバチ♀(Vespa ducalis pulchra)を撮った映像を紹介しました。
「採寸のために巣口の横に定規(15cm)を置いたら、見慣れない異物のせいで蜂が盛んに定位飛行するようになりました。」
と書いたのですが、実際は後半になって定規を取り除いたら蜂が正常に帰巣するようになった、というのが真相です。
説明の都合で時系列を逆に紹介しました。
外役のために出かけるワーカー♀は巣の位置を記憶するために顔を巣口の方を向けたまま扇状に停空飛翔します。
この行動は定位飛行と呼ばれ、巣を作る様々な蜂で見られます。
巣の位置をしっかり覚えれば定位飛行を省略して外出します。
帰巣したワーカー♀が定規の上空で不審そうに停空飛翔(ホバリング)したり、定規に一瞬着陸して調べたりする映像をまとめてみました。
巣口を完全に見失って迷子になることはありませんでした。
私のカメラではハイスピード動画モードにすると撮影中にズームを変えられないので、出巣→定位飛行の様子は上手く記録できませんでした。
外出した蜂がすぐに戻ってきて定規を調べ帰巣する、という行動を繰り返しているような印象を受けました。(個体標識していないので確証はありませんけど…。)
もし巨大で重い定規ではなくて小枝を置いて巣口を軽く塞いだら、蜂は邪魔な障害物を除去するでしょうか?
定点観察に通ってみることにします。
つづく
2013年9月上旬
里山で野生ニホンザル(Macaca fuscata)の群れに遭遇。
血色の良い大きな睾丸が目立つ♂成獣がアカマツの樹上で独り毛繕いしていました。
よく見ると、首輪に発信機を付けています。
アカマツの高木からスルスルと身軽に下りて、群れと一緒に雑木林を遊動し始めました。
猿害対策として、この山域のニホンザルでは群れごとに何頭か首輪を付けられているようです。
♂で首輪を付けている個体は初見です。
いわゆるボス猿(α♂)なのでしょうか?
ニホンザルは母系社会なので、♂は遅かれ早かれ群れを離れてしまいます。
一方♀は生まれた群れに生涯残ります。
従って、群れの動きを知るためには♀に発信機を付けるのが得策だと思っていました。
それでもあえて♂の遊動域を調査しているのかもしれません。
あるいは、捕獲できた猿を性別問わずに発信機を付けて放獣する方針なのかもしれません。
つづく
2013年9月上旬
里山の林道の横に生えたマルバハギの群落でオオハキリバチ(Megachile sculpturalis)が花蜜を吸っていました。
花から花へと忙しなく飛び回るため腹面のスコパ(花粉刷毛)の有無がはっきり確認できず、性別は不明です。
訪花の途中で天敵(労働寄生蜂)ハラアカヤドリハキリバチとニアミスするも(@0.42)、互いに没交渉でした。
2013年9月上旬
山間部の道端で潅木の葉に見慣れない小型の蜂が止まっていました。
ギングチバチ科の一種だと思うのですが、名前が分かりません。
未採集、未採寸。
葉の上で時間をかけて身繕いしながらぐるりと方向転換してくれたので、色んなアングルから撮れました。
撮影モデルとしてはなかなか協力的です。
葉裏に止まっているツマグロオオヨコバイには無関心(獲物だとしても気づいていない?)。
飛ぶとハエのような羽音が聞こえます。
いつも大体同じ場所に舞い戻るので、縄張りがあるのかな?と想像しました。
カメラを構える動きに敏感で、すぐ逃げられてしまいます。
【追記】
いつもお世話になっている蜂類情報交換BBSに投稿して問い合わせたところ、青蜂@管理人さんより以下の回答を頂きました。
写真のギングチバチは、顔の毛が金色であることから、ナミギングチバチ属のなかでもClytochrysus亜属のメスと思われます。メスキンギングチバチ(Ectemnius lapidarius)、クボズギングチバチ(Ectemnius cavifrons aurarius)、ヒラズギングチバチ(Ectemnius ruficornis)の3種いるのですが、画像からの判別は難しいですね。
♀ということは、縄張りではなくて獲物となるハナアブ類を待ち伏せしていたのでしょう。
もう少し粘れば、狩りの様子を観察出来たかもしれませんね。
2013年8月下旬
コンクリート階段の縁にヒガシニホントカゲ(Plestiodon finitimus)の幼体が止まっていました。
北側の日陰なので、日光浴ではありません。
青い稲妻のように素早く逃げる瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
何度か物を投げたらようやく身をくねらせて逃走。
後半は更に1/3倍速のスローモーションでリプレイ。
2013年9月上旬
ニラ畑でウラギンスジヒョウモン♀(Argyronome laodice japonica)が翅を開閉しながら花蜜を吸っていました。
オオウラギンスジヒョウモンである可能性もあるかも…?
2013年9月上旬
ニラ畑でキンケハラナガツチバチ♀(Megacampsomeris prismatica)が花蜜を吸っていました。
映像の前後半でおそらく別個体を撮影。
吸蜜中に時々なぜか両脚を持ち上げた姿勢になります。
他の虫が近づいてきた際に追い払うための行動でしょうか?
マルハナバチ類の威嚇姿勢(中脚を上げる)を連想しましたが、この個体は後脚で万歳しています。
集合花の上でたまたま前傾姿勢になっただけとは考えにくい気がします。
キンケハラナガツチバチ♀はコガネムシ類の幼虫を狩って産卵するはずなのに、訪花中に偶然コアオハナムグリとニアミスしても寄主(?)の成虫には興味を示しませんでした。
これは前回の観察と同じです。
コアオハナムグリが憎き宿敵をやっつけたくても武器がなさそうですね…。
関連記事→「ガガイモに訪花吸蜜するキンケハラナガツチバチ♀」
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後脚上げ行動 |
2013年9月上旬
里山の林道脇に生えたホツツジの群落でクロマルハナバチ♂(Bombus ignitus)が訪花していました。
集粉する必要のない♂には当然、後脚の花粉籠はありません。
この白い花の名前を知らなかったのですが、図鑑で苦労して調べてようやくホツツジだろうと分かりました。
wikipediaの解説で気になったのは次の点。
グラヤノトキシンⅠ~Ⅲなどを含み、有毒。誤食すると、嘔気、頭痛、発汗、酩酊昏睡、痙攣などを引き起こす。これらの毒は花粉にも含まれ、蜂蜜に混入して食中毒を起こすことがある。
昆虫が自らの栄養源として少量吸蜜する分には影響が無いのでしょう。
それとも、この神経毒(Na+チャンネル開口毒)は脊椎動物に対してのみ毒性があるのかな?
植物の側としても、受粉を媒介してくれて共生関係にある蜂に致死量の毒を盛ったりしない筈です。
似た例として、有毒植物ヒレハリソウの花で盗蜜するクロマルハナバチ♀も観察・撮影しています。
毒性の種類はホツツジと全く違いますけど。
【追記】
ローワン・ジェイコブセン『ハチはなぜ大量死したのか』を読むとセイヨウミツバチについて次のように書いてありました。
ミツバチには10種類しか(味覚受容体)がない。餌と協調関係を結んでいるごくわずかな生命体であるミツバチは、それほど多くの味覚受容体を持つ必要がないからだ。そもそも味覚受容体のほとんどは毒素を検出するために使われる。けれども花を信頼しているミツバチは、毒素のことなど考えようともしないのだ。 (p75より引用)
翻訳書なので日本語として少し読みにくいですが、初めて知りました。
マルハナバチ類(ミツバチ科)の味覚受容体も種類が少ないのですかね?
2013年9月上旬
山裾のソバ畑でメスグロヒョウモン♀(Damora sagana)が飛び回り、花蜜を吸っていました。
2013年9月上旬
雑木林で伐採して切り揃えた枝を積んである木場(土場)にて、多数のキマワリ(Plesiophthalmus nigrocyaneus)が集まり、興味深い行動が繰り広げられていました。
長い脚で朽木の上を素早く走り回ってもう一匹を追いかけ、隙を見て背後から飛び乗るとマウントします。
ところが落ち着いて交尾器を連結することなく、すぐに別れてしまいます。
こうした行動が木場のあちこちで何度も繰り返されました。
私にはキマワリの性別が見分けられないので、解釈に困ります。
- 2匹は♂同士なのに、♀と誤認してマウントした?
- ♂同士の縄張り争い?(儀式的闘争や優位行動としてのマウンティングか?)
- ♂にマウントされた♀が交尾拒否した?
キマワリの交尾はマウントすると瞬時に完了する?
採集して対戦相手の性別や体長などを調べるべきでしたね…。
飼育下でもこの行動は再現されるのかな?
(そもそも私は甲虫に疎いので、実はキマワリではないゴミムシダマシ科の別種かもしれません。)
せめて個体識別のマーキングを施して、マウント合戦をじっくり眺めていれば何か手掛かりを得られたかもしれません。
交尾中の♀♂ペアは不思議と一組も見ませんでした。
2匹が真正面から出会ってしまうと、かなりの長時間、じっと対峙していました。
完全に静止している訳ではなく、ときどき微妙に一進一退しています。
相手の力量を値踏みしているのでしょうか?
私が痺れを切らして動画撮影を中断したら、飛びついてマウントする瞬間を撮り損ねてしまいました。
続けざまに計3回マウントした後に、このペアは離れました。
【参考動画】
「キマワリ Plesiophthalmus nigrocyaneus のペア」by kiokuimaさん
交尾器を結合したまま歩き回っています。
マウントする♂よりも♀の方が体長が大きいようです。
【追記】
キマワリやその仲間は昼間も活発に活動する。樹幹を徘徊し、外敵が近づくと、幹の反対側にまわり込んで逃げるところからこの和名がある。(『日本動物大百科10昆虫Ⅲ』p138より)
2013年9月上旬
山道の横に咲いたマルバハギの群落でキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が花蜜を吸っていました。
後脚の花粉籠は空荷のようです。
2013年9月上旬
神社境内にある石灯籠の側面にベニシタバ(Catocala electa zalmunna)と思われる蛾が頭を下にして静止していました。
派手な色の後翅を見せつける威嚇行動を見たくて物を投げつけても反応がありません。
翅に触れたら威嚇せずに、準備運動なしでいきなり飛び去りました。
240-fpsのハイスピード動画に撮ってみると、あまり羽ばたかず落下するように緊急避難したことが分かりました。
(映像後半は更に1/5倍速のスローモーションでリプレイ。)
どこに飛んで行ったか見失いました。
オニベニシタバ、エゾベニシタバなど近縁種の可能性は?
実は同じ神社で6日前にもベニシタバを撮っています。
境内を歩いたら驚いた蛾が飛んで逃げました。
真っ赤に目立つ羽ばたきが印象的です。
近くの大木(針葉樹)の幹に止まると頭を下向きに止まりました。
興奮冷めやらぬようで、しばらくは派手な赤い後翅を誇示しています。
ようやく落ち着いたベニシタバが翅を閉じると、地味な模様しか見えなくなりました。
木肌に紛れた見事な隠蔽擬態です。
前脚で触角を拭って身繕い。