2015/01/17

コガタスズメバチの廃巣で休むキアシナガバチ♂



2014年9月下旬


▼前回の記事
コガタスズメバチの古巣で休むキアシナガバチ♀
コガタスズメバチ巣の定点観察#2014-7

軒下にあるコガタスズメバチVespa analis insuralis)の廃巣に今度はキアシナガバチ♂(Polistes rothneyi)が巣の外被に止まっていました。
コガタスズメバチの巣内に侵入するでもなく、じっと見下ろしています。
スズメバチの古巣にアシナガバチが集まるのは、パルプ製の構造物が安心するのですかね?
新女王との交尾シーンは残念ながら見られませんでした。

辺りをキアシナガバチ♂やキボシアシナガバチ♂などのアシナガバチ類が複数飛び回っていました。
雄蜂が群飛するシーズンですね。


コガタスズメバチ廃巣の採集調査

外被の根元をナイフで削り取り(地上からの高さ239cm)、プラスチック容器で受けて持ち帰りました。
外被を解体して内部を調べてみると、巣盤は1層しか作られておらず、育房数は14室でした。
(一部スズメバチ自身によって取り壊された育房があるかもしれません。)
育房は一辺5mmの正六角形でした。
育房の奥に白いクモの巣のようなゴミが残されていました。
これは蜂の子が育ち羽化した跡なのか、白い繭キャップや前蛹が脱糞した跡なのかな?
初期巣の徳利状の細長い入り口構造はコガタスズメバチ自身によって取り壊されたので、少なくとも1匹のワーカーは羽化したはずです。


採集した巣の下に15cm定規を並べてみる。
外被の底部中央に巣口
小さな巣盤が一層のみ
空の育房
巣盤の裏面(天井部)。中央に切り落とした巣柄の跡

私がこれまでコガタスズメバチのコロニー規模を自力で調べたのは、未だ2例しかありません。

  1. 2008年にコロニー活動を全うし12月中旬に採集した巣では、巣盤が1層、育房数は68室で全て羽化済みでした。(→関連記事
  2. 2010年6月中旬に採集した初期巣では、廃巣の巣盤は1層、育房数は18室で卵と幼虫を確認。(→関連記事

3例目の今回はワーカーが羽化する前の初期巣と同程度の規模しか無く、明らかに異常です。

営巣初期に誰かが殺虫剤で駆除したのであれば、巣ごと破壊されそうなものです。
外被がほぼ無傷で残っていたので、その可能性は一応除外しておきます。
おそらく、この巣を創設した女王蜂の生殖能力に問題があったと思われます。
コガタスズメバチ事典」サイトによると、

秋口になっても1層や2層の小さな巣も見られます.この原因としては女王バチの早期死亡やネジレバネの寄生が考えられます.
スズメバチネジレバネについてはこちらのサイトに詳しい解説があります。

シリーズ完。


巣材を持ち帰るオオフタオビドロバチ♀の定位飛行【ハイスピード動画】



2014年9月下旬

里山の頂上付近でオオフタオビドロバチ♀(Anterhynchium flavomarginatum)が巣材集めにせっせと通っていました。
個体標識していませんが、おそらく同一個体の♀と思われます。
かなり太った(体格の良い)♀個体です。

赤土を掘って泥玉を作り終えると、帰巣します。
泥玉を抱えて飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
巣に戻る直前には扇状の定位飛行ではなく、低空飛行でぐるぐる旋回していました。
採土場をピンポイントに記憶する必要がないため、大雑把に全体的な風景を覚えるのでしょう。
あるいは太陽コンパスで巣の方角を見定めているのかもしれません。


▼関連記事(同一個体をHD動画にて撮影)
巣材を採土するオオフタオビドロバチ♀



川底でクルミを拾うハシボソガラス(野鳥)



2014年9月下旬

街中を流れる川にかかる橋で欄干に止まっていたハシボソガラスCorvus corone)にカメラを向けたら飛んで下流へ逃げ、川の浅瀬に着陸しました。
(映像はここから)

カラスは浅瀬の泥からクルミの実らしき物体を拾い上げました。
望遠レンズでもやや遠く、手前に生えた雑草も邪魔でよく見えません。
ただの丸い小石なのかクルミの実なのか、定かではありません。
これまで何度か動画に撮って紹介したように、この辺りのハシボソガラスはクルミの実を食べるためによく舗装路に投げ落として硬い殻を割っています。

▼関連記事
ハシボソガラスのクルミ割り行動:Ⅳ投げ落としと貯蔵【野鳥】
なので、今回の丸い物体もクルミの実ではないかと推測しました。
カラスがどこからクルミの実を採ってくるのか、いつも不思議でした。
上流から漂着したクルミをたまたま見つけたのか、ひょっとすると予めここに隠していた(貯食)のかもしれません。
ところがなぜかクルミの実をその場に残して(埋め戻して)、水際へ歩み寄りました。
今度は川底から泥だらけのクルミ?をもう一つ拾い上げました。
水に漬けて泥を落とすと、岸辺の浅瀬に戻り泥の中に埋め戻しました。
なんとなく、貯食行動のようにも見えます。
こんな場所に食料を隠しても川が増水したら一巻の終わりです。
賢いカラスがそんな馬鹿なことするかな〜?と首をひねりつつ撮影していました。

私にずっと見られていることに気づいてバツが悪くなったのか、ハシボソガラスは貯食を中止してしまいました。
嘴にクルミを一つ咥えて飛び立つと、川岸の住宅地の方へ持ち去りました。
どこか安全な場所で投げ落とし行動に勤しみ、殻を割って仁を食すのでしょう。

私は未経験ですが、我々ヒトがオニグルミの実を食べようとすると、おそろしく手間暇がかかるらしいです。

関連記事(8年後の撮影)▶ オニグルミの落果を採集(クルミ拾い)

先ず必要な工程として、クルミの落果を水に浸したり土に埋めたりして外果(果肉)を腐食させ、同時に灰汁(アク)を抜くそうです。
今回観察したカラスも同じことをしていたのかもしれませんね!
実は縄文時代の日本人はカラスにクルミの食べ方を教えてもらったのでは?などと想像を逞しくしてしまいます。
しかしカラスは頑強で器用な嘴を持っているので、わざわざそんな面倒臭いことしなくても果肉をつついて取り除くぐらい朝飯前のような気もします。(生の果肉に含まれる灰汁が嫌いなのかな?)


【参考動画】
野性を食べよう「オニグルミ」by ktbktshさん



さて、今回撮った映像にタイトルをどのように付けたら良いでしょう?
貯食未遂行動と呼ぶべきか、クルミを拾いに来たカラスの気まぐれな採食行動なのか、川底の泥にクルミの実を埋め果肉が腐食するのを待っていたのか、解釈に悩みます。

断片的で不完全な映像記録ながらも、もしかすると重要なミッシングリンクかもしれない!と密かに興奮しました。


【追記】
2015年5月中旬、ハシボソガラスがクルミの樹の下から実を咥えて飛び去る姿を目撃しました(映像なし)。


【追記2】
水辺に好んで生えるクルミは水流で種子を散布する植物なのだそうです。
てっきり私は動物散布の中でもリスによる貯食散布に頼る戦略なのかと思っていました。
水流散布も水を利用するのは同じだが、こちらは川の流れにのって散布される。クルミがその代表的なもので、こちらの種子の内部にもすき間がある。
(直江将司『わたしの森林研究―鳥のタネまき​に注目して』p28より)

どちらが正しいという訳ではなく、クルミは2つの戦略を併用しているのだと思います。


水辺林の生態学』によれば、
(オニグルミの:しぐま註)核果状の堅果は落下後、齧歯類やリスによって運ばれるほか、流水によっても移動し、分布を拡大する。(p51より引用)


【追記3】
斎藤新一郎『リスやカケスが森をつくる:樹木種子の貯食型散布と樹木の貯食への適応』によると、
オニグルミJuglans ailanthifoliaのタネは、形態的には、多肉の偽果(fleshly false fruit)であり、成熟すれば、そのまま落果する。しかし、恐竜ならともかく、今日では、そのまま飲み込んで、被食型の散布をする動物は見られない。(中略)この多肉偽果は、土埋されれば、外側の果肉部分が腐って、殻果となる。このナッツを食べる動物は、この果肉部分を食い捨てて、殻果にしてから、地下に貯蔵する。(『種子散布―助けあいの進化論〈2〉動物たちがつくる森』p91-92より引用)
ちなみにこの文脈で、北海道でオニグルミの殻果を貯食する動物としては、エゾリスおよびエゾアカネズミを想定しています。 




2015/01/16

コガタスズメバチの古巣で休むキアシナガバチ♀



▼前回の記事
逃去した?コガタスズメバチの巣
2014年9月下旬

コガタスズメバチ巣の定点観察#2014-6

軒下に営巣したコガタスズメバチVespa analis insuralis)の巣を久しぶりに見に来ると、珍客がいました。
キアシナガバチ♀(Polistes rothneyi)が巣の外被に止まっていました。
時期的に新女王の可能性もありますが、ワーカー♀との違いが私には見分けられません。
巣口のすぐ横に堂々と居座っているのに、主のコガタスズメバチが巣から出てきて追い払ったりしません。
外被の大きさも全く成長していませんし、細かな穴も前回より増えています(破損?)。

やはり空き巣なのでしょう。
コガタスズメバチの巣内にキアシナガバチ♀が侵入したり巣材を再利用すれば面白いのにな…と内心期待したのですけど、何事もなくやがて飛び去りました。(映像なし)
廃巣になったと確信できたので、次回こそは巣を採集して巣盤を調べてみるつもりです。

つづく→シリーズ#7(最終回):廃巣の採集



オトコエシの花蜜を吸うイカリモンガ(蛾)



2014年9月下旬

薄暗いスギ植林地の林床に咲いたオトコエシイカリモンガPterodecta felderi)が吸蜜していました。
少し飛んで隣の集合花に移動しました。

草刈りで茎の上部がカットされており、花の自然な全体像が分かりません。
何となく、ヒヨドリバナですかね?(それともフジバカマ?)


実は初めイカリモンガは群れで訪花していたのですけど、私が通りかかると殆どが飛んで逃げてしまいました。
先を急ぐ用事があったため、蛾が戻ってくるのを待つ余裕はありませんでした。



2015/01/15

ヌルデの花で探餌飛行するキイロスズメバチ♀



2014年8月下旬

里山の林道脇に生えたヌルデの灌木で訪花する昆虫(ニトベハラボソツリアブ?)を撮っていたら、キイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)のワーカー♀が飛来しました。
吸蜜が目的なら花に着陸するはずですが、ゆっくりホバリング(停空飛翔)しながら獲物を探索していました。
映像の最後で、花に飛びついて何か獲物を狩ったようです。
引き続き肉団子作りを撮ろうとしたものの、残念ながら茂みに阻まれてアングルを確保できませんでした。



トノサマガエルの死骸を食すハシボソガラス(野鳥)



2014年9月下旬

電柱の天辺に止まったハシボソガラスCorvus corone)が足で押さえつけながらトノサマガエルPelophylax nigromaculatus)の死骸を啄んでいました。
周囲の環境は、稲刈りが進む田園地帯です。
カエルは干からびて見え、自分で狩りをした新鮮な獲物では無さそうです。
車に轢かれたロードキルなのか、稲刈りに巻き込まれた死骸でしょうか。
まさにcarrion crow(ハシボソガラスの英名:死肉を食うカラス)の面目躍如。

カラスaはときどき向きを変えたり、電柱の横棒(金属製)に移動して食事を続けています。
途中で食事を中断すると、獲物を咥えて警戒しています。
何事かと思いきや別個体bが飛来し、すぐ横の横木に止まりました。(@1:38)
獲物を横取りに来たのでしょうか?

カラスbは電線にへばり付いた別の獲物を啄み始めました。
カエルなど小動物が感電死したものか、カラスが貯食していたものか、あるいはモズの速贄かもしれません。

やがてカラスaが獲物を咥えたまま飛び立ち(@1:57)、一つ隣の電柱に止まり直しました。
するとすぐにもう一羽(b?)が追いかけてきて(@2:25)電柱の横棒に止まりました。
その奥に実は先客(3羽目の個体c)が居ました。
カラスaは一番上の電線に止まったまま油断なく食事を再開。

ここで私も撮影を中断し、距離を詰めてから撮影再開。(@2:58)
ハシボソガラスaはトノサマガエルの肉片を小さく千切って食べ、汚れた嘴を頻繁に電線に擦りつけて拭っています。
食事風景を見ていると、カエルの干物もなんだか美味しそうです。
獲物を咥え、不安定な電線から電柱の横棒(狭いが平坦)へ移動しました。
電柱の天辺に登り辺りを見渡してから、すぐ横棒に戻りました。
私がしつこくカメラを向けていることを嫌ったのか、遂に獲物を咥えたまま飛び去りました。(@5:45)
田んぼを横切り遠くの樹上(山麓の民家の庭木?)に着陸しました。



2015/01/14

涼しい夜も巣口で扇風行動するモンスズメバチ♀【暗視映像】



2014年9月中旬
▼前回の記事
モンスズメバチ♀の夜間飛行【暗視映像】

モンスズメバチの巣の定点観察12

モンスズメバチVespa crabro flavofasciata)の門衛はこの日の夜も巣口で扇風行動を続けていました。
赤外線の暗視ビデオカメラを手に持ち巣にそっと近づいて撮った時刻は18:22および18:42 pm。

巣口の左右で2匹の門衛が同時に扇風しています。
以前見かけた直列二連の扇風行動とは違い、今回は並列ですね。

少し時間をあけてから(20分後に)再び撮影しても、同時に2〜3匹の扇風役が巣口で踏ん張り懸命に羽ばたいていました。
寝苦しい熱帯夜ではなく、むしろ少し肌寒いぐらいでした。

外気温を測ると16℃。
同じ日の昼間に観察したときよりも涼しい夜の方が扇風役が多いのは不思議でなりません。
果たして本当に巣を冷やすための行動なのか、ますます疑念が強まりました。

蜂の観察をアシナガバチから始めた私の目にはとても奇異に映ります。
同じスズメバチ科でもアシナガバチ類の巣盤は外被がなく開放型なので、外気温が下がると扇風行動は不要になります。
やや肌寒いぐらいの気温16℃で扇風行動するなんて、アシナガバチではとても考えられません。
保温のために巣盤を外被で覆うスズメバチ属で同様の扇風行動を観察したのは、このモンスズメバチ以外では未だ一度しかありません。
昔にコガタスズメバチの巣で扇風行動を観察したときは、気温29℃の暑さでした。

したがって今回も普通に考えたら、樹洞内が夜でも30℃近くないといけません。(測ってみなければ分かりませんが、そんなことあり得ますかね?)
むしろ樹洞内が酸欠になりがち(二酸化炭素濃度が高い)なので換気が必要だ、という解釈の方が未だ自然な気がします。

赤外線投光機を近くから照射したせいでモンスズメバチが暑さを感じて扇風行動を始めたのでしょうか?
観察行為自体が対象生物の行動を変えてしまった可能性(観測問題)は否定できると思います。
その理由は、


  1. 赤外線を照射しても巣口にいる門衛のごく少数しか扇風していない。
  2. 少し時間をあけてから(20分後に)再び撮影しても変わらず扇風行動を続けていた。

樹洞内がそんなに暑いのか、温度や二酸化炭素濃度を測ってみたいのですけど、高価な防護服を持っていないのでさすがに危険なことはできません。(測定器も値が張りますし。) 
もしミニ扇風機を持参して樹洞に送風したら、加勢された扇風役の蜂はどんな反応をするでしょうね? 
ヘアドライヤーの熱風を送り込んだら? 
冷たいドライアイス(固体CO2)を樹洞に放り込んだら? 
防護服が無いと出来ることは限られてしまうのですが、実験のアイデアだけなら幾つも思いつきます。

【追記】
蜂の防護服は高価ですが、レンタルしてくれる会社を幾つかインターネット上で見つけました。¥9,800/日


扇風行動の羽音を声紋解析してみる 

扇風行動が始まるとブブブブ♪という重低音が長時間響くのですぐ分かります。 
樹洞内で反響しているのでしょう。 
本種はスズメバチ属では珍しい夜行性です。(正確には両行性) 
暗い森を飛んで帰巣する外役ワーカーに対して灯台のように巣の位置を知らせるために門衛が羽音を立てているのではないか?という大胆な仮説を思いつきました。 
コロニー毎に微妙に異なる周波数を発していたりして…。 
録音した扇風行動の羽音を別の木からスピーカーで流し(プレイバック実験)、外役ワーカーの帰巣能力を撹乱できるか調べたら面白そうです。
先走った法螺話はさておき、とりあえず扇風行動の羽音を声紋解析してみることにしました。
扇風行動と飛翔時の羽音とを区別しないといけません。
飛んで出入りする蜂が途絶えた映像後半部のオリジナルMTS動画ファイルから音声をWAVファイルにデコードしてからスペクトログラムを描いてみました。


20kHz以上の高音域に見られる断続的で思わせぶりな声紋は、背景で鳴いている直翅目(コオロギ?)の声かもしれません。
16kHz付近に持続する強い波形があり、その半分の8kHzでは逆にすっぽりと波形が抜けている現象が不思議ですね。 
これら低音域の波形が扇風行動によるものだと思うのですが、音響学の専門家に解説してもらいたいものです。 
樹洞に反響しているとか扇風役2匹の羽音が一部打ち消し合っているとか、複雑な現象なのでしょうか?
【追記】翌年、全く別の被写体を撮っても8, 16 kHzの持続する信号のパターンが再現されました。これはビデオカメラ特有のノイズかもしれません。

一方、巣に出入りする蜂が何度か飛び回る映像前半部の音声からも同様にスペクトログラムを描いてみましょう。 
二つのグラフを見比べると、飛翔時の羽ばたき成分がどれか分かってきました。(低音域の波形でムラのある部分)

扇風行動の羽音のような低音は、障害物を越えて遠くまで届くものの指向性が弱いという性質があります。
巣の位置や方角を正確に知らせたいのであれば、直翅類♂の鳴き声のように指向性の強い高音を使うべきなので、仮説としては弱いかもしれません。



つづく→シリーズ#13



【追記2】
スズメバチではありませんが、同じく真社会性昆虫であるマルハナバチに関する本を読んでいたら、似たような習性が書いてあって興味深く思いました。
『マルハナバチの謎〈上巻〉 (ハリフマンの昆虫ウオッチング・社会性昆虫記)』で第5章「マルハナバチにラッパ手がいるのか」(p121-135)まるまる割いてこの不思議な行動について論じています。
この問題は、300年以上前にオランダの学者ヨハン・ゲダルトが、にわかには信じ難い奇妙な観察記録を残したことから始まりました。
マルハナバチの巣で毎朝起床を知らせる「鼓手」のハチがいるというのです。
その後、何人もの昆虫学者が研究を進め、そのようなハチは「ラッパ手」と呼ばれるようになりました。
ラッパ手マルハナバチの仕事について三つの意見がでたことになります。第一は起床ラッパだという意見。ラッパの音自体には何の目的もなく、若いハチがはねをトレーニングしているためにおきる羽音なのだという第二の意見、そして、第三は、はねをふるわせて巣の中の換気をしているのだという意見です。(p127より引用)

  • ラッパ手が巣から出てくるのは夜中とか夜明けが多い。(p126)
  • ラッパ手は見張り番だったのです。(中略)ラッパ手は餌の採集には出ません。(p130)
  • 六月末から夏の終わりまで毎朝同じマルハナバチがラッパを吹きました。(p130)
  • ラッパ手を取り除くと、それに代わって必ず別のラッパ手がでてくる。(p135)

夕暮れ時にホバリング吸蜜するホシヒメホウジャク【蛾:暗視映像】



2014年9月下旬
▼前回の記事
ホシヒメホウジャク(蛾)の停空飛翔【ハイスピード動画】

用水路沿いに咲いたアザミ(種名不詳)の群落で訪花するホシヒメホウジャクNeogurelca himachala sangaica)を通常のHD動画でも撮ってみました。
ホバリング(停空飛翔)で一つの頭花を回りながら長い口吻を伸ばして吸蜜しています。
夕暮れ時で薄暗いので、AFのピントが合わせ難くなりました。
釣瓶落としに日が落ちて急激に薄暗くなり、HD動画の撮影はすぐ限界に達しました.
薄暗い時の写真撮影はストロボを焚くだけで済みますけど、動画で記録するのは困難な挑戦になります。(強い照明を使うと蛾の自然な行動に影響を及ぼしてしまうでしょう。)

赤外線の暗視ビデオカメラに切り替えました。
補助照明の赤外線投光機も点灯。
するとアザミの桃色、ホシヒメホウジャクの後翅の橙色もしっかり写っています。
しかし暗闇ではないので、太陽の残光で画面全体がピンク色になってしまいました。

※ 光量不足の映像前半だけ動画編集時に自動色調補正を施してあります。



2015/01/13

夜もミズナラ樹液酒場に通うモンスズメバチ♀【暗視映像】



2014年9月中旬

定点観察しているミズナラの樹液酒場は夜になるとモンスズメバチVespa crabro flavofasciata)の天下になりました。
昼間ここを我が物顔で占有していたオオスズメバチやチャイロスズメバチは日が暮れると姿を見せなくなります。
昼と夜の時間帯によってうまくニッチを棲み分けているなーと感心します。
むしろモンスズメバチが昼も夜も貪欲に(疲れ知らずに)活動しているのが印象的です。

赤外線の暗視カメラで撮っていると(時刻は18:30 pm)、同じ巣の出身と思われる2匹のワーカー♀が来ていました。
前回の観察では2匹が餌場で出会うと口移しで挨拶していましたが、今回は栄養交換は見られませんでした。

▼関連記事
夜のミズナラ樹液酒場で栄養交換するモンスズメバチ♀【暗視映像】
クロオオアリとムナビロオオキスイも樹液酒場に集まって来ています。
モンスズメバチは暗くなっても自在に飛び回ることから、闇夜でも目が見えているはずです。
しかし夜の樹液酒場で他の昆虫とニアミスしても追い払う素振り(占有行動)を示さないので、実はよく見えていないのでは?という気もしてきます。
樹液を独り占めせずに寛容なのかしらん?
一方、クロオオアリは触角でモンスズメバチの存在を探知して避けている(遠慮している)ことが映像から窺い知れます。
モンスズメバチは幹で念入りに身繕いしてから飛び去りました。


ホシヒメホウジャク(蛾)の停空飛翔【ハイスピード動画】




2014年9月下旬

用水路沿いに生えたアザミ(種名不詳)の花で小型のスズメガが飛び回り吸蜜していました。
ホバリング(停空飛翔)しながら長い口吻を伸ばして吸蜜する様子を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
ところが夕暮れ時のため、光量不足の厳しい条件です。※

1/8倍速のスローモーションでも羽ばたきは速過ぎて見えませんでした。
後翅の橙色紋だけが目立ちます。
少なくとも2頭が入れ代わり立ち代わり訪花していました。
ときどき出会い頭に軽い空中戦も勃発したのですが、その面白いシーンは撮れませんでした。

同定用にストロボを焚いた写真は上手く撮れ、ホシヒメホウジャクNeogurelca himachala sangaica)と判明しました。

※ 本種成虫は薄明時の数時間しか活動しないらしい。
英語版wikipediaの記述を引用すると

Adults do not fly very much and are active for only a few hours just after day-break and/or at dusk.
薄暗い時の写真撮影はストロボを焚くだけで済みますけど、動画で記録するのは困難な挑戦になります。(強い照明を使うと蛾の自然な行動に影響を及ぼしてしまうでしょう。)



花の名前もしっかり調べたかったのですけど、用水路の対岸の藪に咲いている群落なので、近づいて接写したり採集したりできませんでした。

つづく→HD動画&暗視動画



クロヒカゲの水難事故



2014年9月下旬

稲刈りシーズンとなり、農業用水路は水抜きされていました。
一部に残った溜まり水でキジバトが喉を潤していたようです。
私が気づかずに近づくと、驚いた鳥がバサバサと慌てて飛んで逃げて行きました。(映像なし)
おそらくその急な羽ばたきに煽られたせいだと思うのですが、クロヒカゲLethe diana)が水に落ちてしまいました。
後翅裏面の「くの字」からヒカゲチョウではなくクロヒカゲと判明。
左前翅が破損しているのは野鳥に襲われたビークマークかな?
だとすれば、自慢の眼状紋に自衛の威嚇効果は無かったことになります。
もしかすると先程見かけたキジバトに捕食されそうになり、逃げている途中で水面に緊急不時着したのでしょうか。
翅の鱗粉に撥水性があるため、浮力もあって沈まずに水面で暴れています。
鱗粉が浮いた水面でクロヒカゲが暴れる度に波紋が同心円状に広がります。
自力で岸に辿り着けば助かりそうですが、パニック状態で暴れても体力が消耗するばかりです。
安全対策上、深い用水路の底には下りれないようになっていたので、助けてやることが出来ませんでした。

映像後半は水面が反射して白飛び気味なので、YouTubeの動画編集時に自動色調補正を施してあります。
今思うと、レンズに偏光フィルターを装着すべきでしたね。(せっかく買ったのに未だ使ったことがありません…。)



2015/01/12

モンスズメバチ♀の夜間飛行【暗視映像】



2014年9月中旬


▼前回の記事
涼しくても扇風行動を続けるモンスズメバチ♀の謎

モンスズメバチの巣の定点観察11

暗くなった夜でもクヌギ樹洞の巣に出入りするモンスズメバチVespa crabro flavofasciata)ワーカー♀の飛翔シーンを暗視動画に撮りました。(時刻は18:18 pm)
昼間の撮影では見えなかったのですが、樹洞内に巣盤が少し見えました。

今夜から秘密兵器を投入します。
暗視動画を撮る際の補助照明として、赤外線LED36球の投光機を購入しました。
使ってみると細かいところまで考え抜かれており、さすがポラロイド社の製品だなーと感心し気に入りました。
夜のフィールドで従来よりも遠くまで明るく撮れるようになりました。


つづく→シリーズ#12:涼しい夜も巣口で扇風行動するモンスズメバチ♀【暗視映像】


アカショウマの花蜜を吸うジガバチの一種



2014年7月下旬

林道の道端に咲いたアカショウマの群落でジガバチの一種♀が訪花していました。
吸蜜を終えると花から葉に飛び降り、軽く身繕いしてから飛び去りました。

ジガバチの仲間を同定するには採集して標本を精査しないといけないのですが、捕獲のタイミングを逸して逃げられてしまいました。



『野草見分けのポイント図鑑』p156によれば、

アカショウマの小葉の基部はくさび形、トリアシショウマは心形。




ノシメトンボの連結打空産卵



2014年9月下旬

稲刈りが進行中の田んぼで、尾繋がりのトンボが飛びながら産卵していました。
黄金色の稲穂のすぐ上から連結打空産卵しています。
ハイスピード動画や同定用の写真を撮る前に♀♂ペアは飛び去り、見失ってしまいました。
映像を見る限り、おそらくノシメトンボSympetrum infuscatum)だと思います。
『ヤマケイポケットガイド18:水辺の昆虫』p152でノシメトンボの項目を参照すると、

♀♂が連結。挺水植物の生えているところで打空産卵
とあります。


水抜きされた田んぼに卵を産みつけても孵化できるのか、という疑問が湧きます。
調べてみると、本種は卵で越冬するらしい。
【参考サイト】:保存版 ノシメトンボの見分けと産卵によると、

春まで卵のままで越冬し、春先に水が田んぼに張られると孵化して幼虫になります。



2015/01/11

涼しくても扇風行動を続けるモンスズメバチ♀の謎



2014年9月中旬


▼前回の記事
モンスズメバチ♀門衛2匹が直列で扇風行動

モンスズメバチの巣の定点観察10

23日ぶりの定点観察です。
クヌギ樹洞を覆う被膜の範囲が変わっており、前回よりも巣口が広がっていました。
秋になり外気温が高くないのに(12:40pm頃、気温19℃)、巣口でモンスズメバチVespa crabro flavofasciata)の門衛♀がほぼ常に扇風行動をしています。
この点がいつも不思議でなりません。
樹洞内は熱気が篭っているのでしょうか?(コロニーの呼吸熱や発酵熱など)
モンスズメバチはヨーロッパにも分布する種類ですが、北方系は
高温に弱いのでしょうか?(蜂の子が高温では育たないなど暑がりなのかな?)
温度調節のためというよりも、酸素を取り入れ二酸化炭素を排出するために換気が必要なのかな?
そんなに樹洞内が暑かったり酸欠になったりするのであれば巣口を被膜で塞がずに広げれば良さそうなものですが、巣の防衛との兼ね合いもあるのでしょう。
なんとかして樹洞内に温度計などを突っ込んで測定してみないことには、いくら考えても結論は出ませんね。※

映像では巣口の下で門衛が身を乗り出しながら激しく羽ばたいています。
帰巣するワーカーに押し込まれると翅を休めますが、しばらくすると扇風行動を再開。

つづく→シリーズ#11:夜間飛行【暗視映像】


※【追記】
まず高価な防護服を買わないと、スズメバチの巣に温度計を差し込む危険な作業は無理だろうと諦めていました。
しかし翌年になって、「非接触式 赤外線放射温度計 レーザーポインタ付」なる夢のような商品を通販サイトで見つけました。
値段も手頃ですし、これならモンスズメバチを怒らせずに樹洞内の温度測定ができるかもしれません。





夜のナガコガネグモ【蜘蛛:暗視映像】



2014年8月下旬

農業用水路にナガコガネグモArgiope bruennichi)が網を張っていたので、赤外線の暗視ビデオカメラのテストで夜中に(23:00頃)撮ってみました。
クモは正常円網に占座して獲物がかかるまで動きがありませんが、網の糸や隠れ帯(白帯)もしっかり撮れています。

前回の昼間に見た時とは網を張る角度が変わっていました。
いつか造網行動を観察してみたいものです。


後日の昼間に撮影@9月中旬
全景@9月中旬

野菊の花蜜を吸うメスグロヒョウモン♀



2014年9月下旬

芋煮会シーズンの河原の堤防に咲いた野菊(種名不詳)の群落でメスグロヒョウモン♀(Damora sagana liane)が訪花していました。
風が吹いて花が揺れてもしがみついて吸蜜を続けています。





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