2012/11/03
ヤマジガバチの労働寄生#9:巣坑の埋め戻し
2012年7月下旬
産卵を終えたジガバチ♀P水が盗掘した巣穴の再閉鎖を始めました。
周りから小石やゴミを拾い集めて埋め戻しています。
作業中にまたもや突然、黒い蜂が飛びかかるも撃退しました。@0:31
喧嘩の様子を1/5倍速のスローモーション↑でリプレイしてみましょう。
家主の♀H白が戻ってきたのかと思ったのですが、スロー再生しても動きが速すぎて残念ながら腹背のマーキングを確認できず。
交尾を試みたジガバチ♂を♀P水が素早く拒否したのかもしれません。
正体不明でもどかしいですけど、ハイスピード動画ではないため仕方ありません。
仕事を再開すると、巣穴の縁を大顎で崩して土を巣坑に掻き入れています。
押し固め作業だけでなく、大顎に力を込めて土塊を削り取る際にもジージー♪鳴きました。
これ以降は、初めに観察したジガバチ♀H白による本閉鎖行動と基本的に同じです。
つづく。
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ウスバアゲハの飛び立ちハイスピード動画
2012年6月中旬
ウスバアゲハ(旧名ウスバシロチョウ)が飛び立つ様子をハイスピード動画に撮ってみました。
複数個体を220fpsにて撮影。
大型の蝶なので、羽ばたきは力強く比較的ゆっくりで見応えがありますね。
最後に登場する個体は、軽く羽ばたいて隣の葉に移動する際に腹端に交尾嚢(交尾付属物)が見えました。
前回交尾した♂が付けたもので、浮気防止の貞操帯です。
従って、これは♀と判明。
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2012/11/02
ヤマジガバチの労働寄生#8:盗んだ獲物の再搬入と托卵
2012年7月下旬
撮りにくいので急遽カメラを三脚から外しました。
巣坑から斜面を転がり落ちた獲物にジガバチ♀P水が取り付いて、大顎で青虫を咥えています。
葉陰でよく見えませんが、腹部を強く曲げて毒針を刺して再麻酔手術を行っているようです。
やがて獲物を腹合わせに抱えながら大顎で咥え、再び巣へ戻し始めました。
獲物を運搬する際は必ず大顎で青虫の頭部側を咥えて前進するので、進行方向に対して獲物も前を向いています。
体長、体重ともにジガバチ♀P水<青虫でしょう。
貯食物は大型の青虫(シャチホコガ科の幼虫)が一匹だけだったようです。
運搬中にアリが近寄ってくると、♀P水はジージー♪鳴きながらすごい剣幕で追い回しました。
その間に放置された獲物がまた斜面をずり落ちてしまいました。
蜂は再び青虫を巣口までせっせと運び上げます。
先に♀P水が巣坑に入り中を点検している間にまた青虫がひとりでに斜面を滑り落ちました。
もはやコントを見ているようです。
それに気づいているのかいないのか、♀P水は巣房の掃除を続けます。
小石(♀H白が詰めた閉塞石?)などを咥えて外に何度も捨てに行きます。
育房の掃除が終わると、また青虫を咥えて斜面を登ります。
獲物が重いのか、羽ばたく力も利用しながら歩いて運び上げます。
巣口で方向転換し、入巣しようとすると青虫がまた滑り落ちてしまいます。
すぐに気づいて取りに戻ります。
やり直して運び上げるも、アリの邪魔が入り撃退に向かいます。
2回目以降は獲物を取りに戻っても刺針行動(再麻酔)は見られませんでした。
天罰のような責め苦が永遠に続くかと思いきや、度重なる失敗からようやく学習したようで、最後は巣口から少し横にずらした位置に青虫を置きました。
滑り落ちないことを確認しています。
後ろ向きに入巣してから青虫を咥え、ようやく中に引きずり込みました。
残念ながら中の様子は見えませんが、おそらく巣房内で獲物の体表に産卵していると思われます。。
一仕事終えた♀P水が外に出てくると、興奮したように近くの枝に飛んで行き大顎を拭いました。
(引きの絵でも映っていない)
岩田久二雄『自然観察者の手記』第8章:ジガバチの奇習 p113によると、ジガバチ♀は獲物の中程の環節の気門線に産みつけるらしい。
映像を見直しても盗み出した獲物の体表には卵を見つけられず、いつの間にか♀P水が食卵したかあるいは取り除いて捨てたようです。
つづく。
【参考情報、動画など】
ジガバチの生息密度が高いと同種間で苛烈な労働寄生合戦が繰り広げられているようです。
どうしても擬人化して見てしまいがちで、盗みはけしからんと非難されそうです。
しかし実際に観察してみると、カッコウの托卵と同じで実にしたたかで抜け目ない戦略だと心底から感嘆しました。
労働寄生を専門に行う新種ヤドリジガバチ(仮名)へと、種分化がまさに現在進行中なのかもしれません(妄想)。
労働寄生種の多くは同じ科で営巣する蜂を祖先に持つらしいのです。
英語版wikipediaでAmmophila sabulosa(英国産サトジガバチ)の習性として労働寄生について解説がありました。
【和訳】 托卵(育児寄生)
Ammophila sabulosaの♀は同種の♀に寄生することがよくある。他の♀の巣から獲物を盗んで自分の巣に貯食したり、あるいは托卵(育児寄生)では他の♀の卵を取り除いて自分の卵を代わりに産みつける。[6] 托卵(育児寄生)は「子孫を残すのにコストがかからず安易な方法の一つであるようだ」。なぜなら既存の巣で卵を取り替えるには約30分しか要しないのに対して、新しい巣を作って貯食するには約10時間かかるからだ。しかしながら托卵された巣の8割以上は更に別の♀によって寄生された。[7]
更に参考文献として、
Field, Jeremy. "Intraspecific parasitism and nesting success in the solitary wasp Ammophila sabulosa." Behaviour 110.1 (1989): 23-45.(邦題「単独性カリバチAmmophila sabulosaの種内托卵および営巣成功率」)という面白そうなタイトルの論文PDFへリンクが張られていました。
ダウンロードしてみるとかなり読み応えがあり、とても勉強になりました。
この論文では個体識別のためジガバチの胸背にマーキングを施していますが、穴を掘る習性から腹背に標識するしぐま式の方が確認しやすいと思います。
念のため両方に標識しておけば更に確実でしょう。
・裸地で巣を盗掘したサトジガバチが托卵する動画シリーズ(byヒゲおやじさん撮影)。
ジガバチの労働寄生はワンパターンの行動ではなく、他の♀の巣から獲物だけを自分の巣に運ぶパターンもあるそうです。
育房は自ら用意し獲物だけを盗んだ例がこちらに報告されています。(byヒゲおやじさん撮影)。
・盗掘した巣で卵をすり替えるジガバチの見事な動画(3:13 by裏庭さん)
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2012/11/01
ヤマジガバチの労働寄生#7:盗掘した巣から獲物を盗む蜂
2012年7月下旬
営巣完了したジガバチ♀H白が去ってしばらくすると(約25分後)、奥の茂みから労働寄生♀P水が登場。
腹背に水色のマーキングを施して以来、今まで姿を見ませんでした。
きっと近くに隠れて巣の閉鎖状況を虎視眈々と窺っていたのでしょう。
一体何を始めるのか、固唾を飲んで見守りました。
巣穴のあった辺りをうろうろ徘徊すると、偽装した巣口を易々と探し当て盗掘を始めました。
♀H白による偽装工作で営巣地の見た目は随分変わってますから、目印や記憶を頼りに探し当てたとは考えにくいでしょう。
匂いを手がかりに嗅ぎつけたのでしょうか?
それまで♀H白との小競り合いを繰り返したのは実は、巣を力づくで奪うためではなくてアリの道標フェロモンのように匂いで印を付けるためだったりして…。
巣口に詰め込まれた偽装材を一つずつ取り除き始めました。
雑多なゴミを口に咥えて少し飛び、空中から捨てます。
後半は大顎や脚でどんどんゴミを掻き分けるだけになりました。
頭を巣坑に入れて似我似我♪鳴いています。
押し固められた土を、大顎に力を入れて掘削しているようです。
掘った土を脚の間から後方に掻いて捨てています。
巣坑に詰め込まれた閉塞石や土塊を一つずつ抱えて飛んで捨てに行きます。
盗掘中の♀P水に突然黒い蜂が襲いかかりました。@10:10
1/5倍速のスローモーション↑で確認しても、飛びかかってきた蜂の正体ははっきり見えません。
現場ではなんとなく交尾目的のジガバチ♂のように思ったのですが、自信はありません。
小競り合いに勝ったのは♀P水でした。
巣を暴かれた♀H白が異変に気づいて戻ってきたのだとしたら、こんなにあっさりと引き下がらないでしょう。
今度は先住効果が♀P水に有利に働くようになったのでしょうか?
すぐに撃退すると、巣に戻ってしばらく警戒しています。
やがて落ち着きを取り戻し作業再開。
斜めに掘られた巣坑の奥まで完全に姿を消しました。
♀H白があれほど長時間かけて突き固めたにも関わらず、遂に土壁も破られたようです。
育房に貯食された青虫を♀P水が大顎で外に引きずり出しました。@11:40
ぐったりと動かない獲物を巣口から半分出した所で、何か白い物を咥えて捨てに行きました。@11:51
青虫の体表にジガバチ♀H白が産みつけた卵でしょうか。
(食卵する場合もあるようですが、この♀P水は空から捨てたようです。)
戻ってきた♀P水が青虫を完全に巣口から出して大顎で軽く噛みました。
狩られた際に毒針で麻酔されている獲物は噛まれても反応しません。
野次馬のアリが近づくと、獲物を横取りされないよう追い払います。
盗っ人猛々しいとはこのことですね。
営巣地は緩い斜面になっているため、獲物を点検中に何かのはずみで転がり落ちてしまいました。
斜面の下まで追いかけた♀P水が腹部を曲げて青虫に毒針を刺し、再麻酔したようです。
毒針で刺された青虫は微かに動いています。
葉っぱの陰に隠れてしまったせいで、一番興味深い肝心の行動がよく見えずもどかしい限りです。
後で思うと、ファーブルがやったように獲物の横取り実験を行えば良かったですね。
ジガバチの労働寄生を目の当たりにして興奮のあまり、とてもそんな余裕はありませんでした。
もしこの段階から観察を始めたとしたら、営巣を始めたジガバチ♀がたまたま他人の巣を掘り当てたと思うかもしれません。
しかし順を追って説明した通り、♀P水による盗み寄生(労働寄生)は完全に確信犯です。
個体標識のため一時捕獲したり炭酸ガスで麻酔したことはジガバチ♀P水の労働寄生行動や能力に悪影響を及ぼさないことが分かりました。
酸欠の副作用で記憶喪失になるかも?と内心懸念していたのですが杞憂でした。
強烈に嫌な経験として記憶され寄主の巣穴に近づかなくなる、ということもありませんでした。
![]() |
辛うじて背面が写っている。 |
貯食されていた獲物の正体
今回は動画撮影を優先したので、高画質の写真はありません。
上に掲載した静止画は動画から切り出したものです。
素人目には緑色型のヨトウムシ(ヨトウガの幼虫)の一種かと思いました。
念のためにいつもお世話になっている「不明幼虫の問い合わせのための画像掲示板」で質問してみると、ヤガ科のヨトウムシではなくシャチホコガ科の幼虫であると根無草さん、YAMKENさん、atozさんよりご教示頂きました。
(ヨトウガの類は首のくびれが無いらしい。)
候補としては
【追記】トビモンorコトビモンシャチホコorノヒラトビモンシャチホコ のいずれかだろう、とのこと。以下はatozさんのコメントです。
3種の違いについて、講談社の日本産蛾類生態図鑑(1987)と学研の日本産蛾類標準図鑑(2011)で調べてみると、学研では気門線が赤いと書かれているのはトビモンシャチホコだけでコトビモンやノヒラトビモンは黄白色とありますが、講談社の蛾類生態図鑑の写真を見るとコトビモンの幼虫も気門線が赤く見えます。
また、講談社にはコトビモンの幼虫はトビモンと酷似するが、体色はトビモンより黄色味が強いと記述されています。
ノヒラトビモンの幼虫はsoraさんが投稿されていますが、気門線が黄色で、気門は黒く周りにはっきりした白い縁取りがあります。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/taygeta/img/28970.jpg
またノヒラトビモンは出現時期が早いことから、除外できると思います。
写真を見比べていて、背中が黄緑色で気門周りの赤色も少なめなのでコトビモンシャチホコのような気がしてきました。
図鑑のトビモンシャチホコ画像は気門線がもっと赤く、体色は青緑色と書いてあります。
個体差もあるのでしょうが、絵合わせではコトビモンが一番近いと感じました。
![]() |
コトビモンシャチホコ |
カリバチに狩られた芋虫は毒針手術で麻痺させられているため、拉致被害者を監禁場所(育房)から救出して飼っても蛾の成虫まで育つことがありません。
従ってどうしても幼虫の段階で同定する必要があり、素人にはなかなか難しいものがあります。
こういうときこそDNAバーコーディングの出番でしょう。
もっと普及して、一般人でも試料を手軽に(安価に)調べてもらえるようになれば同定も捗るのになーと夢想します。
一方、獲物がシャチホコガ科の幼虫と判明したので、寄主ジガバチ♀H白の正体はそれらを専門に狩るミカドジガバチである可能性が出てきました。
しかし今回観察した営巣地が林縁の地面であることから、やはりヤマジガバチまたはサトジガバチだと思います。
後日、同じフィールドで捕獲した♀♂はヤマジガバチと写真鑑定して頂きました。ミカドジガバチの営巣習性は未見ですが、ジガバチの仲間では珍しく借坑性らしい。
「通常の営巣場所が樹幹の空洞であることでも地中営巣性のサトジガバチおよびヤマジガバチとは異なる」とのこと。(「レッドデータブックとちぎ」より)
サトジガバチが狩る獲物にはシャチホコガ科も含まれ、他の個体が用意した育房を暴き、労働寄生する個体の存在が確認されているらしい。
宿主の作業や努力に寄生するようなやり方を労働寄生という。また、あるものが捕らえた餌を奪う、あるいは盗むものを特に盗み寄生という。(wikipediaより)
つづく
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エゾイトトンボ♂♀尾繋がり後の交尾失敗
2012年7月上旬
沼岸の木の葉にエゾイトトンボの♂♀ペアが止まり、ハート型の体位で交尾しようとしています。
ところが、何度やってもなぜか交尾器がしっかり連結できないでいます。
交尾経験の浅い未熟な個体なのだろうか?
♀が交尾を拒否しているようには見えません。
近縁でも別種なのだろうか?(生殖隔離)
同定のためペアを捕獲しようと思ったら、お邪魔虫(同種のあぶれ♂)の邪魔が入り、全員飛び去りました。
2012/10/31
ヤマジガバチの労働寄生#6:巣口の偽装と営巣完了
2012年7月下旬
土壁で房室を固く閉鎖していたジガバチ♀H白の行動が変わりました。
巣を離れると、枯れた松葉を咥えて巣の方へ運ぼうとしたり、偽装材を探し歩いているようです。
巣の奥の茂みの方にも出かけるようになりました。@0:49
(ここからは初めて観察する行動になります。)
近場の林床から何かゴミを咥えてきては巣口に搬入します。
雑多な偽装材を巣口に放り込むだけになり、もはや顔で押し固めることはなくなりました。
この行動をせっせと繰り返します。
歩いて外出する時も飛んで行く時もあります。
埋め戻す巣材に小石や土塊を使うことはなくなり、枯葉や枯枝の欠片など植物質のものを選びます。
カメラを引きの絵にすると、♀H白がなるべく近場からゴミを集めてくる様子がよく分かります。
体長の何倍もある枯れ草の茎を咥えて運ぼうとするも、地面にあちこちひっかかり苦労しています。@9:48
羽ばたいて飛び上がろうとするも持ち上がりません。
最後は諦めて放置しました。
やがて空荷で戻ることが増えました。
巣を少し点検してはすぐ出かけて行きます。
巣坑の痕跡を完全に消し去りました。
これで一つ営巣完了です。
最後の偽装工作に満足したようで、ジガバチ♀H白は何の未練も感傷もなく飛び去ると、もう戻って来ませんでした。
ジガバチ♀H白は次の営巣サイクルに入ります。
巣口の偽装工作はジガバチがどの天敵を恐れて進化した習性なのでしょうか?
老婆心ながら、戸締りのセキュリティが中途半端に思えます。
巣口まで土でぎっちり埋め固めるべきだと思うのですが、そうすると房室で蜂の子が窒息したり羽化した蜂が地上に脱出できずに生き埋めになってしまうのかもしれません。
傍目には完璧な偽装工作に見えたのですが…。
つづく。
いよいよ労働寄生ジガバチ♀P水が暗躍する出番です。
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2012/10/30
ヤマジガバチの労働寄生#5:謎の襲撃
2012年7月下旬
その後もジガバチ♀H白は飽きもせずに巣坑の本閉鎖に精を出しています。
巣の乗っ取りを企むジガバチ♀P水に目をつけられたことを知っているため巣口を埋め固めをいつもより一層念入りに行っているのだろうか?
アリが近づくと撃退します。
♀H白の作業中に再び黒いハチが飛来するも、今回は一瞬で飛び去りました。@0:29
少し警戒しただけですぐに作業を再開。
1/5倍速のスローモーション↑で襲撃(ニアミス)シーンを確認してみましょう。
辛うじてジガバチだと分かるだけで、性別やマーキングの有無はよく見えません。
先程マーキングした♀P水が戻って来たのかもしれませんし、♂が交尾しようと飛来した可能性もあります。
閉鎖作業でジージー♪鳴く声が別のジガバチを誘引しているんじゃないかという気がしてきました。
もし録音したジガバチの鳴き声をスピーカーで再生すると他のジガバチ♀が様子を見に飛来するだろうか?
労働寄生♀対策として、鳴き声を発することなく黙って巣坑の閉鎖を行う♀突然変異個体がそのうち出現し、ステルス戦略が集団中に広まるかもしれない(進化)…などと妄想しながら蜂を眺めていました。
後半、外出から帰った♀H白が巣坑に何か赤い物を押し込んで埋め固めています。@4:34
肝心の搬入シーンはピントがぼけて撮り損ねました。
次の獲物(芋虫)かと一瞬焦りましたが、赤い木の実やキノコの破片だろうか?
(ジガバチ腹部の赤色にも見えて、まさか♀P水を噛み殺して埋めているのかと猟奇的な想像が先走ったりもしました。)
埋め固めの次の作業として、巣口周辺の偽装工作が始まったのかもしれません。
つづく。
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ヤマジガバチの労働寄生#4:ミネラル摂取
2012年7月下旬
巣から離れたジガバチ♀H白が地面を徘徊しつつ落ち葉を舐めていました。
巣口の押し固めで酷使した顔は土で汚れています。
黒い舌を伸ばして舐めた跡が濡れていることから、唾液または飲んだ水を吐き戻しながら溶かした塩分を吸っているようです。
蝶の仲間ではよく見られる摂食行動ですが、蜂で観察したのは初めてかもしれません。
鱗翅目だと地面や獣糞を舐めてミネラル摂取するのは大体♂と相場が決まっています。
確か、精巣の発達に必要なんだとか。
やがて私の黒いカメラバッグのベルト部分に止まると一心不乱に舐め始めました。
長年ベルトに染み込んだ汗や皮脂を摂取しているのでしょう。
摂食中はジージー♪鳴いたりしません。
おとなしくしているこの機会を利用して、♀H白をじっくり接写してみました。
(胸背と顔のアングルは動画のみで、写真は撮る前に逃げられました。)
横に定規を並べて置いて採寸してみます。
ヤマジガバチまたはサトジガバチの一体どちらなのか、写真鑑定できるでしょうか?
少なくともジガバチ♀H白および♀P水は同種なのか別種なのか知りたいところです。
後日、同じフィールドで捕獲した♀♂はヤマジガバチと写真鑑定して頂きました。
通りすがりのクロアリとニアミスしてもジガバチは向きを変えただけで、夢中で舐め続けます。
その際、アリを威嚇するように翅を振るわせました。
私の体に止まって汗を直接舐めに来ることはさすがにありませんでした。
もちろん昆虫は暑い夏でも我々ヒトのように発汗しませんが、ジガバチ♀も激しい重労働の合間に塩分を欲するというのは興味深く思いました。
もしスポーツドリンクを蜂にお裾分けしていたら喜んで飲んでくれたかな?
てっきりどこかで訪花吸蜜して栄養補給しているのかと思っていました。
ちなみに、別の日には近くで建物のコンクリート土台部分を舐めているジガバチを見ています。
つづく。
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食事
2012/10/29
ヤマジガバチの労働寄生#3:寄生♀の捕獲・標識
2012年7月下旬
依然としてジガバチ♀H白が巣坑を埋め固める作業を念入りに続けています。
日が高くなり、営巣地には木漏れ日が射しています。
さて次は、巣の乗っ取りを企んでいそうな♀Pにも個体識別の目印を付けることにしました。
もしかしたら、この辺りで労働寄生ジガバチ♀Pは一匹だけとは限りません。
巣穴の閉鎖に熱中している♀H白とは異なり♀Pはあちこち動き回るため、一時捕獲しないと個体標識するのは無理です。
この日は捕虫網を持参しなかったので、蜂の上から麻酔管を素早く被せて生け捕りにします。
どこかに出かけた♀H白の帰巣を待っている間に、巣の右の茂みに潜んでいた♀Pを捕獲しました。@2:32
そのまま日陰に持っていき、炭酸ガスで軽く麻酔してから腹背に油性ペンで水色の点を打ちました。
以降、この個体をジガバチ♀P水と呼ぶことにします(parasite、水色)。
カメラの背後でマーキング作業する一部始終の物音が録音されています。
(ボンベから炭酸ガスをシューッと出す音など)
炎天下でCO2麻酔すると体温調節できなくなった蜂が熱射病で死んでしまうことがあるので、必ず日陰で行います。
苦い経験となった関連記事はこちら→「オオモンクロベッコウの捕獲標識と麻酔事故」
麻酔から回復するまでの間に♀P水をじっくり接写しました。
この蜂は一体ヤマジガバチまたはサトジガバチどちらなのか、写真鑑定で同定できるでしょうか?
後日、同じフィールドで捕獲した♀♂はヤマジガバチと写真鑑定して頂きました。♀H白の動画撮影に気を取られて目を離した隙に、自力で飛び去りました。
♀P水が元居た林縁に飛んで行く姿を直後に目撃しています。
もしかすると捕獲・麻酔・標識された蜂がストレス(身の危険)を感じて遠くへ逃げてしまい二度と戻って来ないおそれもあります。
しかし、そこは一か蜂かの賭けです。
ジガバチ♀P水をマーキングしている間に♀H白が帰巣しました。@3:30
このとき小石を口に咥えて搬入した点が目を引きます。
実は出かけるときも同じ小石を咥えていたので、閉塞石ではなく巣口の押し固めに使う道具としての石槌と思われます。
再び外出する際も小石を咥えたまま飛び去りました。
つづく。
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造巣
2012/10/28
ヤマジガバチの労働寄生#2:巣坑閉鎖中の喧嘩
2012年7月下旬
しばらくするとジガバチ♀H白が巣に戻り、気にせず作業を再開してくれて一安心。
先程マーキングを施した際に手元が狂ったようで、腹背だけでなく翅先および右後脚にも油性ペンの白インクが付いてしまっています。
それでも飛翔や営巣行動には影響しないようです。
やがて、無印の別個体がまたやって来て、近くの茂みを徘徊しています。@2:35
後に労働寄生するジガバチ♀Pと思われ、巣を乗っ取る隙を虎視眈々と伺っているようです。
似我似我♪鳴きながら巣穴を押し固めている♀H白の背後から♀Pが忍び寄りました。
少し躊躇い辺りの凹みを物色する素振りを示しました。
無防備な♀H白の腹端を突ついて喧嘩を売りました。
2匹の蜂は取っ組み合いながら斜面を転がり落ちていきます。
ストーカーを無事に追い払ったようで、♀H白が巣に戻ってきました。
個体標識すると、喧嘩の勝者がどちらなのか明確になります。
喧嘩を売られても、予想通り先住効果で巣の持ち主が勝ちました。
同胞の度重なる襲撃・嫌がらせを受けた蜂はかなり神経質になっているようです。
油断無く辺りを警戒し、押し固め作業をなかなか再開しません。
たまたま通りかかったクロアリに凄い剣幕で襲いかかり、大顎で撃退しました。@5:57
♀H白がようやく落ち着いたようで、埋め固め作業を再開しました。
翅先に付いた白点のおかげで、ジージー♪鳴く際に翅も細かく振動していることがよく分かります。
時々休憩が必要なのか、どこかへ飛び去ります
つづく。
♀H白(左)が閉鎖中の巣坑を狙う労働寄生ジガバチ♀P(右) |
蜂の留守中に閉鎖中の巣坑を採寸 |
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オニヤンマ♂の飛び立ちハイスピード動画
2012年7月下旬
道端の草の茎にオニヤンマ(Anotogaster sieboldii)が掴まって休んでいました。
翅を開いた状態で止まっています。
副性器は見えませんが、腹端の形状から♂だと思います。
飛び立つ瞬間をハイスピード動画(220fps)に撮ってみました。
同一個体を追いかけて2回撮影。
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