2016年1月中旬
▼前回の記事
高圧線に就塒前集合するカラスの群れ(冬の野鳥)
高圧線から飛び立ったカラスの大群が鎮守の森へ向かったので、私も雪道を歩いて追いかけました。
神社に到着して暗闇に目を凝らして待っていると、遅れてやって来たカラスの群れが杉林の樹冠に着陸する様子がシルエットで辛うじて見えました。
※ 冒頭の塒入りシーンのみ動画編集時の自動色調補正で映像を無理やり明るく加工しています。
午後17:30には群れの塒入りがほぼ完了したようです。
カラスの塒となったスギの大木の下にこっそり行って樹冠を見上げると、普段あまり聞かない奇妙な鳴き声で騒いでいました。
見えない物の例えで「闇夜にカラス」という表現があるように、真っ暗な映像で音声だけの記録です。
音量を上げると私の防寒具が衣擦れする音が耳障りかもしれません。
次第に鳴き声が収まり、寝静まりました。
赤外線の暗視モードに切り替えればよかったのに、私も寒さで頭が回りませんでした。
真っ暗で静かな鎮守の森の雰囲気だけでも最後に暗視映像でお伝えします。(@3:05〜)
空から雪がチラチラと降っていて、林床には雪が積もっています。
当然ながら塒は赤外線投光機の光も届かない高い枝にあるため、カラスの姿は見えません。
映像の撮影時刻は午後17:23〜17:41。
ちなみに、この日の日の入り時刻は午後16:41、月齢は5.1(三日月)。
午後17:39に測定した気温は4.3℃、湿度47%。
照度計も持参したのですけど、撮影に忙しくて手が回らず、あまり測定できませんでした。
そもそも街なかでは夕方から外灯が点灯するので、照度計の値は場所によって異なり、あまり意味がないかもしれません。
ついさっきまでカラスが就塒前集合していた高圧線や鉄塔に引き返してみると、カラスの大群は一羽も居ませんでした。
後日また見に来た時にはなぜかカラスは居なかったので、近所トラブルになって鎮守の森から追い払われたのか、あるいは一時的な集団塒だったのかもしれません。
就塒直後のカラスの鳴き声を声紋解析してみる?
『ネオン街に眠る鳥たち―夜鳥生態学入門』という隠れた名著(バイブル)で復習してみました。
・カラスは夜間、塒にしている木の下に人が侵入するのを極端に警戒する習性がある。(p79より)
・カラスの塒は一分の例外を除いて、照明もない、人も入らない、真っ暗な環境の中にある。月も出ない闇夜に黒い鳥影をみつけるのは至難の業だ。(p82より)
・集団塒をとるカラス、ムクドリなどでは、冬季に塒が大型化し、一カ所に集中する傾向が強い(p145より)
『Birder 2012年8月号 特集:鳥たちの夜の世界』p36-37 中村純夫「カラスはねぐらで何をしているのか?」より引用。
(夜の塒で)カラスたちは割とおとなしくしており、若い♂のカラスたちも周囲の「目」をはばかってか、♀にちょっかいを出したりはしない。周囲から攻撃されるためなのかどうか、興味深い点である。
【追記】
彼ら(ハシブトガラス)の生活が、ねぐらである森に影響を与えていることが分かってきた。彼らは森林でおびただしい数のフンをする。
(中略)ハシブトガラスは、町中で生ごみを食べて森林でフンをすることで、日本の森が今まで経験したことのなかった栄養、肥料を与えているのだ。
ハシブトガラスの生ごみという肥料の投入によって森は大きく変化しているかもしれないのだ。
(直江将司『わたしの森林研究―鳥のタネまきに注目して』p107より引用)
私にとってこれはなかなか新鮮な考え方でした。
【追記2】
藤岡正博、中村和雄『鳥害の防ぎ方』によると、
夕方、カラスはねぐらに使っている林に戻って来ます。そこで、休んでいる間に、カラスは食べたもののうち消化されなかったものを吐き出します(吐き出された未消化物の固まりをペリットといっています)。(p64〜66より引用)
カラスの集団塒の林床でペリットを拾い集めて内容物を調べてみるのも面白そうです。
2015年10月下旬
ノシメマダラメイガの飼育記録#29
生のニンニクだけを餌にしてノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)が育つか?という実験をしていました。
諦めかけて放置していたら、容器内で遂に羽化したばかりの成虫を1頭見つけました。
繭から抜け出した直後らしく、体液を翅脈に送り込んで翅伸展している途中(後半)でした。
慌てて動画と写真で記録します。
翅がすっかり伸び切ると、その翅を立てて乾かします。
ノシメマダラメイガが翅を閉じている(立てている)姿勢はこれまで一度も見たことがないので、とても珍しく思いました。
male wing gland?
成虫の口吻は退化していますが、口元でときどき開閉しているのは下唇鬚?でしょうか。
腹端を少し持ち上げていて、コーリング姿勢に似ているかもしれません。
しばらくすると閉じた翅を再び広げたのですけど、その瞬間は見逃しました。
羽化に気づいたのが外出の間際だったので、撮影に全然集中できませんでした。
記録として中途半端ですけど、ゼロよりましなので。(完全版が撮れたら差し替えます。)
次に機会があれば羽化の一部始終を微速度撮影でじっくり記録したいものです。
桑原保正『性フェロモン:オスを誘惑する物質の秘密』によると、「ノシメマダラメイガは午後にだらだらと羽化する」らしい。(p148より引用)
さて、この結果からノシメマダラメイガはニンニクだけを食べて卵から成虫まで育つことが分かりました。
大量の産卵数に比べて生存率は極めて低いです。
幼虫が栄養失調で共食いしたかもしれません。(未確認)
一つ不思議なのは、密閉容器内でこれまで全くノシメマダラメイガの交尾行動を観察していないことです。
もしかすると、ニンニク臭が性フェロモンの働きを撹乱する作用が有るのかな?と思ったりしました。
つづく→#30:巣内で休眠越冬するノシメマダラメイガ(蛾)老熟幼虫
2015年1月中旬
▼前回の記事
携帯電話アンテナ塔に就塒前集合するカラスの群れ(冬の野鳥)
日没後に塒へ飛んで帰るカラスを追跡すると、郊外で高圧線の鉄塔のてっぺん周辺にカラスの大群が集結していました。
鉄塔を中心に左右の高圧線にカラスが続々と着陸し、鈴なりになっています。
カラスが鳴き騒ぐ声もかすかに聞こえます。
いよいよ暗くなってきて画質も粗く、最大限にズーム(光学10倍)してもカラスの種類(ハシボソガラス/ハシブトガラス)を見分けるのは無理でした。
隣りの鉄塔付近の高圧線にも同様にカラスが群がっていることに気づきました。
私が左の鉄塔に歩いて接近してから撮ろうとすると、警戒したカラスは頭上の高圧線から一斉に飛び立ってしまいました。
どうやら近くにある鎮守の森へ向かっているようです。
カラスの行動に影響を与えずに塒入りを観察する難しさを痛感しました。
本格的にやろうとしたら、ブラインドを用意して隠し撮りする必要がありそうです。
冬の日没後は釣瓶落としに暗くなり、鉄塔のようなはっきりした対象物を狙わないとAFのピントが合わなくなりました。
赤外線投光機も到底届かない高所なので、暗視映像ではなくノーマルな動画撮影です。
私が樹の下に立ち止まって撮り続けると、カラスの群れがまた高圧線に舞い戻ってくれました。
高圧線は何本も並行して走っているのに、カラスが止まるのは特定の(一番上の)一本だけでした。
カラスの大群が乗っても全体重で高圧線が切れる事故が起こらないように強度が設計されているのでしょう。
私がじっと待っていると、高圧線からカラスが今度は自発的に次々と飛び立ち、鎮守の森(の方角)へ向かいました。
高圧線の鉄塔はカラスが就塒前集合する過渡的な塒だと分かりました。
巨大な鉄塔は遠くからでもよく目立つので、あちこちから群れが合流する中継地点となっているようです。
カラスの大群が鳴きながら暗い夜空を乱舞する様はいかにも威圧的です。
このような群飛は塒周辺の安全を確かめたり、天敵などを追い払ったりする示威行動なのでしょう。
※ 就塒前飛行を撮ったパート(@5:18〜)のみ動画編集時に自動色調補正を施して明るさをかなり増しています。
撮影時刻は午後17:11〜17:21。
ちなみに、この日の日の入り時刻は午後16:41、月齢は5.1(三日月)。
つづく→杉林の塒で鳴くカラスの群れ♪(冬の野鳥)
2015年12月上旬
▼前回の記事
越冬休眠していたフタモンアシナガバチ新女王の覚醒
コガタスズメバチ巣の定点観察@祠・軒下#6
採集してきたコガタスズメバチ(Vespa analis insularis)の古巣の外被を慎重に解体して中を調べていると、とても小さな蜂が一匹出てきました。
キアシブトコバチ(Brachymeria lasus)のようです。
寄生蜂の一種ですがスズメバチ類を寄主としている訳ではないので、コガタスズメバチの生活史と直接の関係はありません。
隠れ家を壊されたせいで休眠から覚醒し、飛ぶ元気はないものの辺りを歩き回ります。
方眼紙の上に自発的に乗ってくれて、採寸の手間が省けました。
『ハチハンドブック』p25によると、キアシブトコバチは樹皮下などで成虫越冬するらしい。
▼関連記事
群飛・集合するキアシブトコバチの謎
したがって、スズメバチの古巣に潜んで冬越ししても不思議ではありませんね。
私は本種の性別判定法を知らないのですが、越冬するのは♀だけなのですかね?
それとも♂も越冬して、春になったら交尾するのかな?
残念ながら、飼育下での越冬には失敗しました。
以下は標本写真。
ちなみに断熱効果に優れた古巣内で越冬していた居候としては他に、キアシナガバチ(Polistes rothneyi)新女王も1匹だけ見つかりました。(映像なし。以下に標本写真)
スズメバチの空き巣は千客万来ですね。
シリーズ完。
2016年1月中旬
この冬の目標の一つは、カラスの集団塒の位置を突き止めることです。
この日の日の入り時刻は午後16:41、月齢は5.1(三日月)。
日没直後から追跡開始。
郊外にある鎮守の森の上空を夕方になるとカラスの群れが続々と飛んで行きます。
カラスの向かった先へ少し追いかけると、農地(畑や林)の上空を乱舞していました。
携帯電話のアンテナ塔で群れの一部が一休みしました。
群れは鳴きながら更に移動しています。
ちなみに、このときの照度は9ルクスでした。
カラスの群れを更に追いかけると…。
つづく→高圧線の鉄塔に就塒前集合するカラスの群れ(冬の野鳥)
『Birder 2012年8月号 特集:鳥たちの夜の世界』p36-37 中村純夫「カラスはねぐらで何をしているのか?」より
平安時代の昔から、カラスのねぐら入り行動は知られていた。清少納言は『枕草子』の中で「秋は夕暮れ、夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ二つ三つなど、飛び急ぐさへ、あわれなり」と、烏の帰塒行動を詠んでいる。
暗い条件では望遠レンズが使えず、カラスの種類を見分けられませんでした。
普段(昼間に観察すると)この辺りはハシブトガラスよりもハシボソガラスが圧倒的に多いです(優占種)。
日本海側の穀倉地帯や積雪地帯という風土とハシボソガラスの生態とが、どのように関係しているのか、興味ある問題である。(『ネオン街に眠る鳥たち:夜鳥生態学入門』p85より)
ハシブトガラスとハシボソガラスとでは、日中の採餌の場所や習性は微妙に異なっているのに、夜の塒は同じ場所を利用することが多い。(混合集団塒:同書p170より)
2015年12月上旬
コガタスズメバチ巣の定点観察@祠・軒下#5
▼前回の記事
コガタスズメバチの古巣で集団越冬するフタモンアシナガバチ新女王
採集してきたコガタスズメバチ(Vespa analis insularis)の古巣の外被を更に壊すと、単独で越冬していた別個体のフタモンアシナガバチ(Polistes chinensis antennalis)新女王が見つかりました。
覚醒して触角が動いています。
やがて、壊した外被上をゆっくり歩き回り、化粧を始めました。
身繕いで前脚と触角を綺麗にしています。
計4匹のフタモンアシナガバチ新女王を別のプラスチック容器に閉じ込め、屋根裏部屋で越冬させることにしました。
容器に移す際に蜂をピンセットで摘み上げたら毒針で刺そうとしました。(映像なし)
ところが残念ながら室内越冬の試みは失敗してしまい、春には全滅していました。
室内ではなくしっかりと冷たい外気に晒した方がむしろ越冬生存率が高かったかもしれません。
今季は異常なくらい暖冬だったので、蜂が季節外れに覚醒してしまい容器内で消耗して春を待たずに死んでしまったのでしょう。
つづく→#6:コガタスズメバチの古巣で越冬していたキアシブトコバチ