2021/03/27

ハイタカとハシボソガラスの激しい空中戦:モビング行動(野鳥)

 

2020年11月中旬・午後14:45頃・くもり 

川沿いに広がる農地の上空を見慣れない猛禽が飛び回っています。 
この近辺でよく見かけるノスリかと初めは思ったのですが、大きさも飛び方も翼の下面の斑紋も明らかに違います。 
その正体はなんと憧れのオオタカAccipiter gentilis)でした。 
この地域でオオタカが生息している確証を遂に得ることができました。 
▼関連記事(2年前の撮影:今回の撮影地点の対岸付近) 
オオタカ?との遭遇(野鳥)

その正体は、ハイタカAccipiter nisus)でした。
目測ではノスリより小さく、軽快な羽ばたきと滑空を交互に繰り返しながら広大な農地の上空をグルグル飛び回っていました。 
胴体の斑紋が縦縞ではなく細い横縞なので、オオタカの成鳥と分かります。 
背面はあまりよく見えませんでした。 

ガララララ…♪というカラスの嗄れ声が聞こえたと思ったら、1羽のハシボソガラスCorvus corone)がハイタカを迎撃するために下から全速力で飛来しました。 
カラスによるモビング(擬攻撃)が始まりました。 
ハシボソガラスは執拗に追い回すものの、ハイタカの方が高高度を飛んでいるので攻守逆転し、追われる立場になりました。 
体格はハイタカよりもカラスの方がやや大きいです。 

猛禽を猛追するカラスが高圧線になぜか一瞬止まってからすぐに飛び出し、追跡を再開。(@1:14) 
激しい空中戦で疲れた翼をちょっと休めるためというよりも、高圧線に衝突しそうになったカラスが慌てて急停止したようにも見えます。 (危険物の回避行動)

カラスと互角に空中戦を繰り広げる猛禽を見るのは初めてかもしれません。 
ハイタカは小型なので、小回りの効く敏捷な飛翔能力が持ち味です。 
空中で互いに接近すると反転して両足を伸ばし相手を蹴ろうと威嚇します。 
ただし、実際に相手を蹴る本気の攻撃シーンは一度も見られませんでした。 
ハイタカが得意の急降下(ダイブ)からの反転でカラスの追跡を振り切る様は圧巻です。 
モビング中にハシボソガラスはたまに嗄れ声♪を発したのに対して、ハイタカは鳴きませんでした。(聞き取れず) 

※ カラスの鳴き声♪が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

素人目には互角に戦っていたように見えたのですが、カラスがモビングに成功したようです。 
どういう決着がついたのか、最後はハイタカが空域を離脱し、水平に飛び去りました。 
勝ったハシボソガラスは、近くの電柱の天辺に止まり、周囲の縄張りを油断なく見回しています。 
縄張りから排除したハイタカをしつこく深追いすることはありませんでした。 
このハシボソガラスの性別を知りたいところです。 
モビング中につがい相手が加勢に駆けつけるかと期待したのですが、現れませんでした。 

空中戦を1/5倍速のスローモーションでリプレイしますので、息を呑む攻防をご堪能ください。(@3:10〜) 


【追記】
YouTubeのコメント欄にて海外の視聴者数名からオオタカではなくハイタカ(sparrowhawk)ではないか?とのご指摘をいただきました。
まず、体格の問題です。
映像の猛禽はハシボソガラスよりも明らかに小さいです。
図鑑では、ハイタカ<ハシボソガラス<≒オオタカとなっていました。
これだけでもオオタカは除外できそうです。
「オオタカとハイタカの見分け方」でネット検索して勉強してみました。
動きの早い映像から切り出したスナップショットしかないので、識別点をすべて検討できません。(例えば目の回りの眉斑が不明)
私にも明快に理解できたのは、次のポイントです。
最長初列風切の暗色横斑はハイタカでは5~7本なのにたいし、オオタカでは7~8 本です(参考サイト:図鑑.jp掲示板の投稿の回答より引用)

下に掲載した写真を拡大すると、最長初列風切の暗色横斑が6本なので、確かにハイタカのようです。 

という訳で、遅ればせながらオオタカではなくハイタカに訂正しておきます。

「オオタカだと嬉しいな…」という願望に引きずられたようです。



キイトトンボ♂の身繕いと飛び立ち【HD動画&ハイスピード動画】

 

2020年7月下旬・午後15:20頃・くもり
▼関連記事(6年前の撮影): キイトトンボ♂
湿地帯の横に繁茂するクズの葉にキイトトンボCeriagrion melanurum)が止まっていました。 
本種は翅をしっかり閉じて休息します。 

マクロモードでカメラのレンズをそっと近づけると、右前脚で顔(複眼)を拭っていました。 
化粧が済むと少し飛んで、今度はヨモギの葉先に着陸しました。 
何か微小な昆虫を空中で捕食したようで、口をモグモグさせていました。 

クズの葉から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:54〜)

2021/03/26

アカタテハ蛹の体内寄生チェック

 

アカタテハの飼育記録#9

前回の記事:▶ 巣の無い無防備なアカタテハ垂蛹の威嚇行動
2020年10月下旬・午後20:30頃・室温21.3℃・湿度54% 

野外のカラムシ群落で新たに採集してきた3個のアカタテハVanessa indica)垂蛹が体内寄生されているかどうかチェックしてみました。 
蛹を指で軽く摘んでみると、身を捩って暴れ威嚇します。 

 ▼関連記事(1頭目の正常個体aの記録) 

2個の垂蛹bとc(画面の左および中央の個体)は正常に蠕動威嚇しました。
それに対して、右端の個体dはしつこくいじっても無反応でした。 
外見では全く正常なのですが、おそらくこの垂蛹dはハエやハチに体内寄生されて死んでいる(虫の息)だろうと判断し、密閉容器に隔離することにしました。

この触診による予想は後に的中します。
計4頭のアカタテハ垂蛹を採集して飼育した結果、被寄生率は1/4=25%でした。

つづく→#10:


里山の斜面を横切りながら採食するニホンカモシカ

 

 2020年11月中旬・午後12:00頃・晴れ
前回の記事:▶ 山麓の休耕地に座って休むニホンカモシカ
山麓の休耕地の端で長いこと休んでいた(おそらく反芻していた)ニホンカモシカCapricornis crispus)が急に立ち上がりました。 
それまでは全身が見えなかったのですが、座り込んでいたのだとようやく判明。 
立ち上がったカモシカは右前脚の先を舐めました。 
ずっと座っていたせいで血行が悪くなり、脚が痺れたのかな? 

カモシカは向きを変えると背後の土手を登り始め、途中で緑の下草を食べました。 
土手には落葉した灌木が藪のように林立していますが、背高く伸びて枯れたイタドリの群落のようにも見えます。 
藪の中に入るとニホンカモシカは完全な保護色で周囲に溶け込んでしまいます。 
土手の上の林道に出ると、初めはゆっくり歩き去っていたのに、急に駆け出して逃げて行きます。 
どうやら、しつこく撮影している私をまこうとする行動のようです。 
実際に、カメラの画角からカモシカが消えても私はすぐには気づきませんでした。 

カモシカが横を向いたときや後ろ姿で土手を登る際に股間や下腹部をよく見ると、睾丸や陰茎が見えた気がします。 
この個体は♂なのかな? 
カモシカの性別判定はとても難しく、今回もいまいち自信がありません。 

私から離れて充分に距離を取るとカモシカは落ち着きを取り戻し、再びゆっくりと山の斜面を横切るように歩きながらあちこちで道草を食っています。 
遠く離れると、採食メニューは分からなくなりました。
枯れ草ではなく緑の草本植物を食べているようです。 
晩秋の山でニホンカモシカの白い吐息が見えました。 

最後はススキの深い茂みに入り、姿を消しました。 
奥にはスギの山森が広がっています。 
実は山村の集落のすぐ裏に野生カモシカが出没していたことが分かります。 

つづく→
下腹部に♂の外性器?

2021/03/25

グロリオサ・デージーの花で採餌する謎のハナバチ♀【名前を教えて】

 

2020年7月上旬・午後18:00頃・くもり 

川沿いの花壇に咲いたグロリオサ・デージーアラゲハンゴンソウの園芸品種)に見慣れないハナバチの一種♀が訪花していました。 
蜂の背側から背側レンズを近づけても逃げませんでした。 
吸蜜しながら身繕いしています。 
体中が黄色い花粉で汚れていて、後脚の花粉籠にも花粉団子を運んでいるようです。 
隣にはオオキンケイギクの花も咲いていたのですが、このハナバチはグロリアスデイジーの方が(花粉が多くて?)好きなようです。 

撮影後、同定のため蜂を採集しようとプラスチックの容器を取り出した途端に、私の殺気を感じたのか、逃げられてしまいました。

吸蜜中にカメバヒキオコシの花筒を引っこ抜いてしまうヒメクロホウジャク(蛾)【ハイスピード動画】

 

2020年9月下旬・午後14:35頃・くもり
前回の記事:▶ カメバヒキオコシの花蜜を吸うヒメクロホウジャク(蛾)のホバリング【HD動画&ハイスピード動画】
林道沿いに咲いたカメバヒキオコシの群落でホバリング(停空飛翔)しながら次々に訪花するヒメクロホウジャクMacroglossum bombylans)を240-fpsのハイスピード動画で撮っていると、ちょっと興味深いシーンが撮れていました。 

停飛しながら吸蜜したヒメクロホウジャクが口吻をクイッと素早く引き抜く際に、カメバヒキオコシの花筒も一緒に引っこ抜いてしまいました。 
そのまま花は空中から地面に落ちました。(落花) 
蛾がカメバヒキオコシの花をうっかり(?)壊してしまったとすれば、共生関係を描いた映像としてはNGシーンのように見えるかもしれません。
しかし、おそらく受粉が完了した花筒は脱落しやすくなり、報酬の花蜜も少なくなっているのでしょう。 
花が次々に散る結果、未だ受粉されていない花に送粉者を効率よく誘引していると思われます。

2021/03/24

巣の無い無防備なアカタテハ垂蛹の威嚇行動

 

アカタテハの飼育記録#8 


2020年10月下旬・午後14:45頃・晴れ 

同時期に飼育しているフクラスズメの幼虫として食草のカラムシを採取しにやってきました。 
水田を抜ける農道に沿って自生するカラムシの群落は、晩秋になるとイモムシ達にすっかり食い荒らされて、葉も茎も実もほとんど丸坊主になっていました。 
定点観察に通っていなければ、そもそも植物名さえ分からなかったことでしょう。

アカタテハVanessa indica)の垂蛹bが食べ残しの葉からぶら下がり、秋風で揺れていました。 
本種幼虫はカラムシの葉を巻いた巣の中に隠れて蛹化するはずなのに、この個体は剥き出しの状態で蛹が見つかりました。 
垂蛹の隣に、もう一つ焦げ茶色の物体がぶら下がっていますが、カラムシの葉先が食べかけのまま枯れて思わせぶりに丸まっているだけでした。 
「見事な偽装・擬態!」と言いたくなりますが、おそらく単なる偶然でしょう。 

造巣・蛹化した後に別個体の幼虫(アカタテハやフクラスズメなどの幼虫)に巣(カラムシの葉巻き)を食べられてしまったのか、それとも身を隠す巣材が足りなくなり仕方なく剥き出しの状態で蛹化したのか、どちらでしょう? 
丸坊主で無防備になったカラムシ群落を脱出しても、新しい食草の群落まで無事に辿り着ける保証が無いので、巣材を求めて移動する方がリスクが高いのかもしれません。 
蛹化直前の巣作りは食草の種類にこだわらず、臨機応変にその辺の植物の葉を巻いて作ることができるのかな? (飼育で検証可能)

【追記】
福田晴夫、高橋真弓『蝶の生態と観察』によると
 イラクサ科植物を食草とするアカタテハは、幼虫時代に使用して食痕のついた葉(袋状の巣)を出て、新しい巣をつくり、そのなかで蛹化する。 食痕か糞を目当てに寄主や食物を探す天敵に対応した習性であろうか。(p76より引用)

無防備なアカタテハ垂蛹bを私が手に載せたり指で軽く摘もうとした途端に、激しく身を捩ってビチビチと暴れました。 
私が手を離してもしばらく暴れ続けています。 
蛹の状態では食草に固定されていて逃げることは出来ませんが、捕食者や寄生者を追い払う精一杯の威嚇行動です。 
この個体はおそらく体内寄生を免れた健康な状態と思われます。 

周囲のカラムシ群落をよく探すと、同様に巣のない裸のアカタテハ垂蛹が計3つ見つかりました。(b,c,d) 
本や図鑑にはこのような非典型的な状態(巣無しのむき出しの蛹)について書かれていないので、もし典型例(巣内の垂蛹)よりも先にフィールドで見つけてしまったら、正体が分からず困ってしまうかもしれません。
見つけた3個の蛹をビニール袋に採集して持ち帰り、全て飼育してみましょう。 
幼虫の飼育は新鮮な食草の調達が大変ですけど、蛹の飼育は放置して見守るだけなので簡単です。 


アカタテハ垂蛹b-巣
アカタテハ垂蛹c-巣(隣に別種の毛虫)
アカタテハ垂蛹d-巣



山麓の休耕地に座って休むニホンカモシカ

 

2020年11月中旬・午前11:50頃・晴れ
前回の記事:▶ 山麓でフキの葉を食べ歩くニホンカモシカ【短編】
山麓の休耕地を歩きながら採食する野生ニホンカモシカCapricornis crispus)を撮影しながら慎重に回り込むと、カモシカは土手の直下で動かなくなりました。 
手前の畦に隠れて姿がほとんど見えないのですが、どうやら地面に座り込んで食後の反芻をしているようです。 
経験上、撮影アングルを求めて私が更に近づいたり斜面の上に移動しようと動いたりすれば、カモシカは警戒して逃げてしまうでしょう。
無理せずにカモシカが動き出すまで待つことにしました。

カモシカは正面から私の方を油断なく見据えています。 
ときどき耳だけをピクピクと動かして、周囲の物音を探っています。 
晩秋でも日に照らされた休耕地から陽炎が立ち上っています。 

長期戦になりそうなので、途中から三脚に固定したカメラに動画撮影を任せて、私は数十m離れた近くの農道に置いてきたザックを取りに戻りました。 (@3:00)
カモシカはカメラから離れる私を目で追いました。
明らかにカモシカの緊張が和らぎ、横を向いたり眠そうにしたりしています。 
私がカメラの設置場所にそっと戻ると、ニホンカモシカは再び顔の向きを変えて正面から私を睨むようになりました。 (@5:40)
カモシカは視力があまり良くないと言われるのですが、それほど悪くはなさそうです。 

つづく→立ち上がったカモシカは…

 

2021/03/23

シロツメクサの花で採餌するセイヨウミツバチ♀を接写してみる

 

2020年5月中旬・午後14:45頃・晴れ 

原っぱに咲いたシロツメクサの群落でセイヨウミツバチApis mellifera)のワーカー♀が訪花していました。 
シロツメクサ集合花の小花はマメ科特有の蝶形花になっています。 
ミツバチは個々の小花に丹念に正当訪花すると、口吻を差し込んで吸蜜します。 
後脚の花粉籠に黄土色の花粉団子を大量に満載していました。 
隣の花に飛び立つと羽音♪がかすかに響き渡ります。 

▼関連記事(4年前の撮影:後脚の花粉籠は空荷) 
シロツメクサの花で採餌するセイヨウミツバチ♀

一寸木肇『シロツメクサの花のふしぎ』という子供向けの理科教育の本を読んで恥ずかしながら初めて知ったのですが、シロツメクサの集合花は下から上へと順に咲くのだそうです。(p21より) 
一番上についた小花は未だ蕾で、真ん中についた小花が咲いていて、受粉が済んだ下部の小花は下を向いて茶色に枯れかけています。
言われてみると確かにその通りで、普段の私はそこまで細かく意識して観察していませんでした。 
当然ながらミツバチは、シロツメクサ集合花の中で真ん中に咲いた小花から採餌していました。 

田中肇『昆虫の集まる花ハンドブック』p55によれば、
(シロツメクサの)個々の花の雄しべ雌しべは白い花びらのケースに包まれ、外からは見えない。蜜を吸うにはケースを押し下げる必要がある。それができるのは、活動的に花から花へと飛ぶハナバチの仲間。こうして花を操作できず、移動性の低いアブや甲虫を花から排除した。

モンキチョウ♂はサルビアの赤い花で吸蜜するか?

 

2020年7月中旬・午後16:30頃・晴れ 

道端の花壇に咲き誇るサルビア(スカーレットセージ)でモンキチョウ♂(Colias erate poliographus)が忙しなく訪花していました。 
シロチョウ科の蝶が赤い花に来るのは非常に珍しいと思い、慌てて撮り始めました。 
ただし個々の花に止まる時間が短く、本当に吸蜜したかどうか不明です。 
サルビアの花の構造は複雑で、長い花筒の奥に蜜腺が隠されています。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、モンキチョウは花蜜の在り処や吸蜜法が分からなかったのではないかという気がします。 

サルビアの花壇を飛び回った挙げ句に最後はようやく葉裏に止まって落ち着きました。 
翅をしっかり閉じて休息しています。
 後翅の縁が少し破損した個体でした。

2021/03/22

ハナミズキの赤く熟した果実を食べるハシブトガラスの群れ(野鳥)

 

2020年10月下旬・午後15:30〜16:10・くもり
▼前回の記事 
街路樹ハナミズキの赤い実を食べるハシブトガラスの群れ(野鳥)
街路樹のハナミズキ(別名アメリカヤマボウシ)並木が見事に紅葉し、果実も赤く熟しました。 
その樹上にハシブトガラスCorvus macrorhynchos)が群がって熟果を次々とついばんでいました。 
細い枝先にも進出して、危なっかしくバランスを取りながら赤い実を次々に採食します。 
街路樹の横の歩道を自転車で通りかかるヒトが来ると、ハシブトガラスは警戒して一時退散します。 

興味深いことに、赤い実を散々食べた後でハナミズキの枝葉を折り取って持ち去る個体がいました。(@6:13) 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
果実をお持ち帰り(テイクアウト)して、どこかに貯食するのでしょうか? 

最後にカラスの群れが居なくなってから、ハナミズキの紅葉した枝葉と赤い熟果および鱗状の樹皮のスナップショットを撮りました。

カラムシの葉を綴り中で繭を紡ぐフクラスズメ(蛾)終齢幼虫【100倍速映像】

 

フクラスズメ(蛾)の飼育記録#7

▼前回の記事 
カラムシの実を食すフクラスズメ(蛾)の終齢幼虫【10倍速映像】
2020年11月上旬

フクラスズメArcte coerula)の終齢幼虫の食欲が無くなり、朝から休んでいるだけになりました。 
やがて食草のカラムシを離れて、盛んに徘徊するようになりました。 
食草に戻してやっても、しばらくすると再び自発的に落下しました。 
繭を作る場所を探しているようです。 

てっきり本種は地中に潜って営繭するのだと思っていた※ので、試しに植木鉢の土の上に幼虫を置いてみました。 


ところがなぜか落ち着かず、何度も植木鉢からの脱走を試みています。 
鉢植えの植物が枯れた後に放置したままだったのですが、中の土がカビ臭い(ドブ臭い)ことに気づきました。 
なるほどそれならフクラスズメ幼虫が嫌がるのも納得です。 

改めて庭の表土を新たに採取してきました。 
小石などを取り除いた後で、なるべくサラサラな土をすくって、プラスチックの豆腐パック容器に入れました。 
大きなプラスチック飼育容器の中に土と食草カラムシの残りも入れてやり、幼虫を一緒に閉じ込めてみましょう。 
土の中に潜るのが嫌なら、もしかしたら、カラムシの葉を綴って営繭用の巣を作るかも知れません。 
新鮮な土を入れた容器からフクラスズメの終齢幼虫は脱走し、カラムシの葉裏に隠れました。 

やがて予想通り、カラムシの葉を絹糸で綴り合わせて巣を作り始めたので、午後(15:50〜21:50)から微速度撮影してみました。 
100倍速の早回し映像をご覧ください。 
自身の周りに巣を作ると、次はその中で繭を紡いでいます。 
カラムシの葉でしっかりと包まれているので、中の様子が見えなくなってしまいました。 

日本人はカラムシの茎の繊維から織物を産み出して、一部地域の伝統的な特産物になっています。 
一方、フクラスズメという蛾の幼虫は、カラムシの葉や実を食べて育ち、絹糸で繭を紡ぎます。 
品種改良されたカイコのように、フクラスズメの繭からも絹糸を採取できたら面白そうです。 

※ 透明プラスチックの飼育容器越しに撮った不鮮明な映像なので、照明がプラスチックの表面に反射して被写体が見えにくかったです。 
それを解消するために、動画編集時に自動色調補正(イコライザー)を施しています。 
その副作用でフクラスズメ幼虫の色彩がどぎつく強調されてしまいました。 

同時期に飼育している別種の幼虫でも同じ日に異変が起きたので、記録するカメラのやり繰りが大変でした。
翌日、飼育容器の底で完成した繭を手に取って見ました。 
繭を手で持ってひっくり返しても、中で幼虫や前蛹が暴れる振動は感じませんでした。 
方眼紙に巣を載せて採寸します。 

フクラスズメは成虫越冬なので、今年中に羽化するはずです。 
ところが、待てど暮せど成虫が羽化してくれません。 
冬が終わり春になっても未だに羽化しませんでした。 
体内寄生されて死んだのかもしれません。 
寄主から脱出した寄生者が飼育容器の蓋のスリットの隙間から逃げてしまったとしたら、私はそれを完全に見逃したことになります。 
繭を密閉容器に入れておくべきでしたが、寄生された兆候が全く無かったのです。 
繭を温かい室内に放置したまま越冬させるのではなく、寒い外気に晒すべきだったかもしれません。
あるいは、営繭の直前の幼虫を私がカビの生えた土に触れさせたせいでカビに感染して死んでしまったのでしょうか?

シリーズ完? 

↓【おまけの動画】 
同じ素材で早回し速度を落とした50倍速およびオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開しておきます。 

 

 

2021/03/21

ヤブガラシ訪花中にアルマンアナバチ同士が誤認求愛/縄張り争い?

 

2020年7月下旬・午後12:20頃・晴れ  

民家の裏庭に蔓延るヤブガラシに忙しなく訪花するアルマンアナバチIsodontia harmandi)の吸蜜シーンを動画に撮っていると、同種の大型個体が飛来して突然飛びかかりました。 
襲われた小型の個体は飛んで逃げました。 
私にはアルマンアナバチの性別を見分けられないのですが、蜜源植物を巡る縄張り争いなのか、あるいは♂を♀と見間違えた誤認求愛なのでしょう。 
日本語で「アタックする」と言えば攻撃にも求愛にも両方の意味で使えますね。
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

※ 月日が経って冷静に見直すと「もっと引きの絵で(広角で)撮れよ!」と自分でも思うのですが、アルマンアナバチが私にとって珍しい被写体なので、撮影時はとにかく嬉しがって限界までクローズアップしてしまいました。

 

セイタカアワダチソウで訪花吸蜜するアシブトハナアブ♀【HD動画&ハイスピード動画】

 

2020年11月中旬・午後15:00頃・くもり 

堤防路に咲いたセイタカアワダチソウの群落でアシブトハナアブ♀(Helophilus eristaloideus)が訪花していました。 
普通種でもハナアブ類を少しずつ見分けられるようになると嬉しいものです。 
花穂を歩き回りながら花粉や花蜜を舐めています。 
側面から見ると腹部がぺったんこでした。 
産卵後の♀で空腹状態なのでしょう。 

飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:32〜) 
ところが気温がやや低いせいか、カメラを近づけても物を投げつけても花穂を揺すっても、アシブトハナアブ♀はなかなか飛び立ちません。 
指で触れそうになったらようやく飛んでくれました。 

少しだけ飛んで近くのセイタカアワダチソウの葉に移動したアシブトハナアブ♀は、食後の身繕いを始めました。 
前脚を擦り合わせたり触角を拭ったりしています。 
化粧が済むと自発的に飛んでくれました。

 

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