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2025/10/30

クズの葉の向日回避運動(調位運動)と蔓の旋回運動【4000倍速映像】

 



2024年8月上旬〜中旬 

クズの葉の調位運動(日光に対して位置を調節する運動)をタイムラプス専用カメラ(Brinno TLC200)で2回目の微速度撮影をしてみました。 
西向きの土手を覆い尽くすように蔓延るクズ群落を横からではなく、下から見上げるアングルで撮ることにしました。 
三脚は同時進行中の他のプロジェクトで使っているので、持参した細竹の廃材4本を針金で束ねて三脚(四脚)を現場で自作しました。 
強風が吹いたら倒れそうですが、軽いカメラなので大丈夫でしょう。 

前回の反省を活かして、30秒ではなく20秒間隔のインターバル撮影です。 
このカメラ機種にはストロボが内蔵されておらず、赤外線による夜間の暗視撮影もできないので、就眠運動の記録はできません。 
明るい昼間だけ(午前4:30〜午後19:00)自然光下で撮影するようにタイマーを設定しました。 
カメラを8日間(8/5〜8/13)放置して撮れた定点映像を早回し加工した、20x20x10=4000倍速動画をご覧ください。 

8/15に現場入りすると、カメラの防水ケース内に水滴が結露していて焦りました。 
幸い、中のカメラは壊れておらず、記録メディアの容量一杯まで撮り切っていました。 
即席の三脚(四脚)でもアングルが途中でずれることなく、狙ったアングル通りにしっかり固定されていました。 
日が落ちる時刻が少しずつ早まり、後半になると、晩にしっかり暗くなります。 

クズの葉の向日回避運動(調位運動)がしっかり撮れていました。
夏の太陽が高く登ると、葉柄にある葉枕の動きによって小葉の角度が立ってきて、葉が互いに合わさるように閉じます。 
まるで二枚貝の殻がパタンと閉じるようです。 
光合成するには日照が強すぎて、葉から蒸散で乾燥してしまうので、対策が必要なのです。 
曇ったり雨が降ったり、夕方になって日が沈んだりすると、葉枕が逆に動いて、葉が元のように開きます。 
毎日のように雨が降りますが(夕立?)、晴れるとすぐにレンズが乾きます。 
クズの葉が大きく育ちすぎると、葉が重すぎて調位運動ができなくなりますから、葉の大きさには上限があるはずです。 

赤紫色のクズの花穂が2つだけ写っています。 
蔓の先端部がぐるぐる回りながら伸びていく旋回運動も2本、記録されていました。 
不思議なことに、今回は旋回の向きが前回とは逆でした。
定説ではクズの蔓の旋回運動は、植物から見て右回り(時計回り)のはずなのに、逆向きだったのです。
関連遺伝子が変異した株の蔓をたまたま撮影したのでしょうか?


※ 動画編集時にコントラストを少し上げました。 


満足できるタイムラプス映像が撮れたので、プロジェクトを打ち切ってカメラを撤去しました。 


 

↑【おまけの動画】 
早回し加工する前のオリジナル素材の400倍速映像です。 
動きが遅い長編動画なので(32:57)、ブログ限定で公開しておきます。 


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2025/10/22

有毒植物ナニワズの種子

2024年6月下旬 

平地の二次林でジンチョウゲ科の低木ナニワズ(別名エゾナニワズ、エゾナツボウズ)に今年も赤い実がつきました。 
早くも黄葉が始まっていて、夏になると落葉してしまいます。 
雪国なのに、緑の葉を付けた状態で冬を越すという不思議な樹木です。(冬緑性) 

ナニワズの熟果
未熟果と熟果

ジンチョウゲ科のナニワズは、花、葉、樹皮、果実などにクマリン系配糖体のダフィニン(daphnin)を含む有毒植物です。 
確かに、ナニワズの葉に虫食い跡(食痕)を一度も見たことがありません。 

山渓ハンディ図鑑4『樹に咲く花:離弁花2』でナニワズのことを調べようとしても、近縁種のオニシバリ(別名ナツボウズ)の写真しか掲載されていませんでした。
果実は有毒。 種子のようにみえるのはかたい内果皮に包まれた核。なかに種子が1個ある。 (p594-595より引用)

ナニワズの果実は液果状の核果(正確には液果ではない)で、その種子は被食型の動物散布で分布を広げると考えられています。 
具体的には、ヒヨドリなど果実食性の鳥類がナニワズの果実を丸呑みにした後、遠くに飛んでから未消化の種子を糞と一緒に排泄し、運が良ければ発芽するのでしょう。 
ヒヨドリはナニワズの毒に対して耐性があるようです。 
トレイルカメラを使って、ナニワズの熟果を食べに来る鳥や動物を私もいつか観察してみたいものです。 


これから種子散布を調べるための資料として、採取してきたナニワズの熟果から果肉を水で洗い流し、種子(核)を得ました。
もしもタヌキやニホンザル、ヒヨドリなどの糞にナニワズの種子が含まれていれば、果実を食べたことが分かります。    


関連記事()▶ 植物の種子コレクション

ナニワズの葉と熟果@方眼紙
ナニワズの種子(核)@方眼紙

2025/10/20

フジの葉の自励振動

 

2024年7月中旬・午後12:00頃・くもり 

里山の林道脇に立つスギ(杉)の木にフジ(藤、別名:ノダフジ)の蔓が巻き付いて育っていました。 
ノダフジの奇数羽状複葉が風で揺れています。 
すべての葉が一斉に揺れるのではなく、一部の葉だけが長時間、自励振動していました。 
葉柄に弾性があるために、力が加わると振動するのですが、ある角度で一定の微風を与えると振動が減衰しなくなります。 


関連記事(2年前の撮影)▶ イタヤカエデの葉は自励振動しやすい?
フジの蔓は下から上に左巻きで伸びる。左肩上がりに登っていれば左巻き。

2025/10/18

ビワの種子を採る

2024年6月中旬 

ビワ(枇杷)の果実が旬なので、食後のデザートで熟果を食べました。 
薄甘い果肉を食べながら、種子を吐き出します。 
1個の果実に複数の種子(平均21/4=5.25個)が含まれていました。
集めた種子を水洗いしながら、こびりついた果肉を古い歯ブラシで擦ってみたら、種子の皮が少し剥がれてしまいました。 
よく乾燥させた種子を方眼紙上で写真に撮りました。 

種子散布や糞分析の資料として保存します。
例えば、タヌキの溜め糞にビワの種子が未消化のまま含まれているかもしれません。


以下の写真は水増しではなくて、同じ物を逆側からも撮影したものです。
ストロボ光の当たる角度で見え方が少し変わるので。

フィールドベスト図鑑『日本の有毒植物』によると、ビワの種子には青酸配糖体のアミグダリンが含まれているので要注意とのことでした。
知らなかったのですが、ビワはバラ科に属する帰化植物です。

私が食べるビワの果実は庭木から採れるもので、甘みが弱くて、あまり美味しいと思ったことがありません。 
しかし果肉の甘みが増すような品種改良もされているそうです。 


【追記】 
ビワの果実はてっきり核果だと思っていたのですが、Perplexity AIに確認してみたら、仁果に分類されるのだそうです。 
植物学は難しいですね。 
ビワ(枇杷)の果実は核果ではありません。分類上、ビワは「仁果(にんか)」に属しています。仁果はリンゴやナシと同じく、花床(花托)が発達して可食部になる果実のことであり、ビワもこのグループに含まれます。一方、モモやウメのように固い核(種)を果皮が包むタイプのものが「核果」と呼ばれます。この違いは、可食部がどの花の構造から発達するか、種子のまわりにどのような組織ができるかで決定されます。


【考察】
ビワの種子は被食型の動物散布で分布を広げます。 
果実を丸呑みにした動物が移動した先で種子を未消化のまま排泄し、運が良ければ新天地で実生が発芽します。
果実の形態分類は異なっても、仁果、液果、核果はいずれも被食型動物散布なのです。

NHKの動物番組「ダーウィンが来た!」でビワの種子散布を扱った回が2023年に放送されました。 
果実が実るビワの木に監視カメラを設置したり、市民科学の手法で視聴者から提供された情報も含めると、ビワの種子散布者として、鳥類ではカラスとワカケホンセイインコ、哺乳類ではハクビシン、タイワンリス、イノシシなどが判明したそうです。 

私もこれから自分なりに調べてみるつもりです。
たとえ二番煎じでも、自分の住む地域(フィールド)で自分で実際に調べてみることが大切です。
ささやかながらも新しい発見がきっとあるはずです。


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クズの葉の調位運動(向日回避運動)と蔓の旋回運動【6000倍速映像】

 

2024年7月下旬〜8月上旬 

動きが遅くてなかなか認識されにくいのですが、「植物の運動」も面白いテーマです。
この分野も開拓したダーウィンは、つくづく偉大な生物学者です。
『種の起源』(1859)を出版した後に『よじ登り植物ーその運動と習性』(1865)や『植物の運動力』(1880)を発表しました。

植物図鑑や本を読んでいたら、マメ科の蔓植物であるクズの葉は興味深い運動を毎日繰り返していると知りました。 
 『花のおもしろフィールド図鑑 (秋) 』によると、
クズの葉(夜だけでなく昼間も葉を閉じて眠ります。晴れた夏の昼下がり)(p97より引用)

POINT図鑑『フェンスの植物:はい回る蔓たち』によると、

クズの葉は日差しが強いと左右の小葉を合わせるように立てて昼寝する。(p166-167より引用) 



【参考サイト】 クズの葉の調位運動 @千葉県立中央博物館 生態園 
クズは陽当たりに応じて葉の角度を変える能力があり、これを調位運動といいます。直射日光が強い時、葉を立てることにより、日光を受ける実効面積を減らし、葉温の上昇を防ぎ、蒸散量を減らし、水ストレスの発生を抑え、結果的に光合成速度の低下を防ぐ、という効果があると考えられています。 

クズの葉の調位運動を可視化するために、タイムラプス専用カメラ(Brinno TLC200)を使って30秒間隔のインターバル撮影をしてみました。 
この機種にはストロボが内蔵されておらず、赤外線による夜間の暗視撮影もできないので、就眠運動の記録はできません。
明るい日中だけ(午前4:30〜午後19:00)自然光下で撮影するようにタイマーを設定しました。 

クズの群落が蔓延はびこってヒトが誰も来ない堤防で手すりにミニ三脚を使ってカメラを設置しました。 
西に面した土手(斜面)です。 

週間天気予報によると、そろそろ梅雨が明けそうですが、カメラが雨で濡れてもすぐに撥水して乾くように、防水ケースのレンズ部分に予めメガネの曇り止めスプレーを塗布しておきます。 
(念のために雨よけの庇を取り付けるべきだったかもしれません。) 

 クズの葉が夏の強い日差しを避けるために傾く日周運動を微速度撮影したい。 蔓の先端(成長点)が巻き付く足場を求めて旋回する運動もタイムラプスで撮れるかも? 

カメラを7日間(7/29〜8/5)放置して撮れた定点映像を早回し加工した、30x20x10=6000倍速動画をご覧ください。 
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
透明プラスチックの防水ハウジングにカメラを格納して撮影すると、どうしても少しぼんやりした写真になってしまうのです。

1週間後に薮漕ぎしてタイムラプスカメラを回収すると、 炎天下の土手に放置されても熱暴走せずに健気にインターバル撮影を遂行してくれました。 
雨が降っても晴れればレンズの水滴はすぐに乾きます。

晴れて日差しが強いと葉の角度を立て、曇ると元に戻るという調位運動を繰り返しています。 
葉そのものが折り紙のように折り畳まれるのではなく、葉柄にある葉枕という部分が水圧ポンプの力で膨満と収縮を繰り返し、日光に対して平行になるように葉の角度を変えているのです。 

似たような運動として、マメ科植物は就眠運動を行います。 
夜になると同様に葉を閉じ、翌朝になると葉を開きます。 
今回は昼間しか撮影できませんでしたが、いつか赤外線で暗視できるトレイルカメラを使って夜も昼も(終日)インターバル撮影をしてみるつもりです。 
花の自然史:美しさの進化学』第14章『花の睡眠』によれば、
ほかのマメ科の葉と同じように、クズは日中は葉を開いているが、夜間は葉を折りたたんで就眠する。(p211より引用)
クズ(Pueraria lobata)の葉の運動は、日中の調位運動(paraheliotropism)も夜間の就眠運動(nyctinasty)も、どちらも葉柄の基部にある葉枕(pulvinus)による同一の運動機構で実現されています。 
違うのは制御する刺激と目的です。 
クズの葉の昼間の調位運動と夜間の就眠運動は、いずれも葉枕の膨圧変化による同一の屈曲機構によって生じますが、前者は強光や乾燥への即時的な応答(向日回避運動)、後者は概日時計に基づく周期的運動(就眠運動)です。 


ところで、今回のタイムラプス動画には、別の運動も記録されています。
クズの蔓の先端にある成長点が、植物から見て右回り(時計回り)で円を描くように旋回運動しています。 
何か構造物に触れるまで自律的な旋回を続けます。 
エンドウマメなどとは違ってクズには「巻きひげ」はなく、蔓自体が長く伸び、先端の成長点が旋回運動(circumnutation)しながら支えを探索します。

葉の就眠運動や調位運動とは異なり、蔓の旋回運動は昼夜を問わず絶え間なく続くらしいので、次は終日タイムラプス撮影して確認したいものです。


余談ですが、蔓植物の「マント群落」(mantle community)という植生学の用語について私は中途半端な理解をしていました。
林縁で木本植物を被覆するように蔓植物が蔓延る高さを持った群落に対してしか使えない、とChatGPTに教えてもらいました。
今回のように、土手(斜面)の草地を被覆するクズの群落に対しては高さ(高低差)があっても「マント群落」とは呼べません。
(例外として、草本植物である竹林の林縁に形成されるマント群落は正しい用語らしい。)
今回の動画画面の右上で土手に柳の木が生えていて、それをクズが覆い尽くしているのですが、この場合も木が孤立しているためにマント群落とは呼べません。





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 ↑【おまけの動画】 

早回し加工する前のオリジナル素材の600倍速映像です。 
変化が遅くて長い動画なので(20:08)、ブログ限定で公開しておきます。

2025/10/09

マスクメロンの種子を採る

2024年7月中旬 

食後のデザートで食べたマスクメロンから種子を採ってみました。
甘く熟した果肉を食べながら種子を吐き出し、きれいに水洗いしてから乾燥させます。 
種子散布の資料とするために、写真に撮りました。 

メロンの果実はてっきり液果だと思い込んでいたのですが、ウリ科植物の果実は瓢果ひょうかに分類されるのだそうです。 
自然界でメロン瓢果の種子は、被食型の動物散布で分布を広げると考えられています。 
もしも今後、タヌキやニホンザルの糞からメロンの種子が見つかったら、比較・同定するための資料となります。

2025/10/08

ウメの落果から種子を採る

2024年7月上旬〜中旬 

ウメの果実は核果で、ちょうど梅雨の時期に熟します。 
庭で白梅の木の下に散らばっている落果を拾い集め、果肉を取り除いて水でよく洗い、種子を取り出しました。 
アンズの種子と違って、両端が尖っています。

現代ではヒトが管理する園芸植物または果樹となっていますが、自然界でウメの種子は被食型の動物散布で分布を広げるそうです。 
たとえば、タヌキが排泄した溜め糞の中にウメの種子は含まれているでしょうか?
ウメの種子を見つけた野ネズミは、持ち去って貯食するでしょうか?
採集した種子を、これから種子散布の実験に使います。




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2025/09/21

山中の湿地帯で大群落を形成したキツネノボタンの謎

2024年6月下旬 

里山にある湿地帯が野生動物や野鳥の水場となっているので、トレイルカメラを設置して見張っています。 
梅雨の頃、その湿地帯に自生する下草に黄色い花が咲き乱れました。

見慣れない草本植物だったので、写真に撮ってPerplexity AIに画像認識してもらうと、キンポウゲ科のキツネノボタンであるとたちどころに教えてもらいました。 
やや湿った所に生えるらしく、全草に毒が含まれるそうです。 
主な毒性成分としては、
・プロトアネモニン(protoanemonin) 生の茎や葉などを傷つけることで生成される刺激性の化合物で、皮膚に付着すると炎症や水疱、口腔・消化器から摂取すると胃腸炎や下痢、吐血、重症の場合は心臓毒性で心停止も報告されています。 
・ラヌンクリン(ranunculin) プロトアネモニンの前駆体であり、植物組織を壊すことで酵素反応によりプロトアネモニンに変化します。

トレイルカメラを設置した結果、この湿地帯にはニホンカモシカCapricornis crispus)がときどき現れて、水溜りから水を飲んだり、下草や灌木の葉を食べたりしていることが分かっています。 
他の草食獣としては、ノウサギも稀に現れます。
多雪地帯の当地では、北進を続けるニホンジカがまだ定着できていません。

カモシカの採食圧があるにも関わらず、この湿地帯にキツネノボタンの大群落が形成されたということは、カモシカが有毒植物を忌避した結果であることを示唆しています。
ただし、カモシカの食べ方は単独行動で歩きながらあちこちでつまみ食いする(道草を食う)程度なので、群れで採食するシカほどの強い採食圧を下層植生に与えていないかもしれません。


カモシカやシカなどの草食動物は、キツネノボタン(有毒植物)を基本的に忌避する傾向があります。多くの反芻動物(シカ、カモシカなど)は、強い苦味や毒成分(プロトアネモニンなど)を持つ植物を本能的に避ける能力が高く、野生下ではほとんど摂食対象としません。pref.nagano+1

  • キツネノボタンやキンポウゲ科の草本は生育地で広く見られるにもかかわらず、シカやカモシカの大規模な食害例は報告されていません。rarememory.sakura

  • 一部の報告では、毒性植物(例えばハシリドコロ、ヤマトリカブトなど)と同様、強い苦味や刺激臭・成分を感じて忌避が行われていると考えられています。rarememory.sakura

  • ただし、極端な食糧不足や若い個体などが誤食して中毒を起こす事例が完全に皆無というわけではありませんが、ごく稀です。pref.nagano+1

したがって、キツネノボタンはシカやカモシカにとって「食べられにくい有毒植物」であり、普通は野生草食獣の忌避対象となっています。カモシカやシカなどの野生草食動物は、キツネノボタンのような強い毒性成分(プロトアネモニンとラヌンクリン)を含む有毒植物を本能的に忌避する傾向があります。pref.nagano+1

草食動物と有毒植物の関係

  • キツネノボタンやキンポウゲ科の植物は苦味や刺激成分が強く、シカやカモシカのような反芻動物は通常これらを避けて食べません。rarememory.sakura+1

  • シカやカモシカの食性研究でも、これらの有毒草本の大規模食害や好んで食べる例はほぼ報告されていません。rarememory.sakura

  • ただし、極端な食料不足時や幼獣の誤食による中毒例が完全に皆無というわけではありませんが、非常に稀です。pref.nagano

このように、キツネノボタンは野生のシカやカモシカにとって、日常的には食べられにくい忌避植物です。


ところで、キツネノボタンには他の植物の生育を阻害するアレロパシーがあることも知られているそうです。 

具体的には、キツネノボタンの持つ毒性成分(例えばプロトアネモニンなど)が土壌や周囲の環境に影響を及ぼし、他の植物の種子発芽や苗の生育を妨げることが考えられています。このため、湿地や田んぼの畦などでキツネノボタンが群生すると、その周辺の植生構造にも影響を与える可能性があります。

したがって、キツネノボタンは草食動物の食害に対抗する毒性だけでなく、他の植物に対する毒性を通じても競争に勝ち、大群落を形成したのでしょう。



【追記】

キツネノボタンの種子散布についてもPerplexityに質問してみました。

キツネノボタンの種子散布は主に自力散布と動物散布の複合的な形式で広がっています。

種子散布の特徴

  • キツネノボタンの果実は小さなトゲ状の集合果で、これが動物の毛や羽に引っかかって広がる(付着散布)ことが多いです。biodiversity.pref.fukuoka+1

  • また、小さな種子は周囲に自然に散る(自力散布)とともに、湿地や水辺の場合は水によって流されて分布を拡大する(水散布)の要素も持っています。biodiversity.pref.fukuoka

  • 動物散布に関しては、種子を含む果実が動物に付着するタイプの「ひっつき虫」として知られており、これが移動距離を伸ばしています。city+1

このようにキツネノボタンは、集落近くや湿地内での局所的な自力散布と、動物の移動を利用した付着による種子散布の両方の方法で分布を広げる特徴があります。キツネノボタンの種子散布は主に自力散布と動物付着散布の組み合わせで広がります。果実は小さなトゲ状の集合果で、動物の毛や羽に付着して運ばれることが多いです。また、自力で自然に散るほか、水辺や湿地では水散布も補助的に行われています。city+1

2025/08/22

ヒメアオキの果実に形成された虫こぶ(アオキミフクレフシ)から羽化したアオキミタマバエ♀♂

 

2024年5月上旬 

里山で林内の低層に自生する常緑のヒメアオキ群落に果実が赤く色づき始めました。 
ほとんどの果実が寄生されているようで、いびつな形状の虫こぶ(虫瘤、虫えい)が形成されています。 
虫えいの和名は「植物名+部位+形+フシ」を付ける原則があるのに、ヒメアオキの果実にできる虫こぶの名前は「ヒメアオキミフクレフシ」ではなくて、アオキ属全体の果実虫こぶとして「アオキミフクレフシ」でまとめられるて呼ばれているのだそうです。 
そもそもヒメアオキとアオキは別種に別れてはおらず、変種の扱いです。
(日本の太平洋側の暖温帯林下に自生するアオキの日本海側多雪地帯型の変種がヒメアオキ。)

この虫こぶを数個採集し、家に持ち帰りました。 
採集時の動画を撮り忘れたので、動画の冒頭はスライドショーで写真を見せます。
100円ショップで買えるプラスチック製のピルケースは、採集した虫や抜け殻、果実、虫こぶなどの小物を収納するのに重宝しています。 


『虫こぶハンドブック』でアオキミフクレフシについて調べると
寄主:アオキ(ヒメアオキ) 
形成者:アオキミタマバエ Asphondylia aucubae 
形状:果実が変形する虫えい。内部は数個の虫室があり、1幼虫を含む。南日本で正常果より小さく、北日本やヒメアオキではやや大きくなる傾向がある。虫えい化した果実の方が、枝に残ることが多い。 
生活史:6月に羽化し、幼果に産卵。1齢幼虫で虫えい内越冬。 (p53 より引用)


2日後に様子を見ると、ピルケース内でアオキミタマバエAsphondylia aucubae)の成虫♀♂が羽化していました。 
慌ててカメラにマクロレンズを装着し、動画で記録しました。
ピルケースの1区画のサイズは、2.0 x 1.8 x 1.5 cm。
アオキミタマバエはプラスチックのつるつるした垂直壁面をよじ登れないようですが、蓋を開けると、次々に飛んで逃げてしまいます。 
虫こぶ(ヒメアオキミフクレフシ)の表面に仰向けになって落ちたときに羽根がへばりつき、動けなくなっている個体がいました。 

アオキミタマバエの性別の見分け方をよく知らないのですが、きっと腹部が太い個体が♀で、細い個体が♂なのでしょう。 
複眼の形状に性的二型はありませんでした。 
羽化直後に交尾している♀♂ペアはいませんでした。 
アオキミタマバエに二次寄生した寄生蜂などは羽化していませんでした。



文献検索してみると、山形大学の研究グループによる面白そうな論文がヒットしました。
山口良彦; 林田光祐. アオキミタマバエによる虫えい形成がヒメアオキの実生更新に及ぼす影響. 日本森林学会誌, 2009, 91.3: 159-167. 

抄録 
東北日本海側のコナラ林において, 常緑低木ヒメアオキの果実の成熟から実生の定着までの繁殖過程とそれに対する三つの生物間相互作用の影響を調べ, 虫えい形成者による散布前捕食の相対的な重要性について評価した。0.25 haの調査区内のすべての果実を調べたところ, アオキミタマバエの寄生による虫えい形成果の割合が1998年生で57%, 1999年生で77%と高い値を示した。虫えい形成果の種子含有率は1∼2割であり, 散布前捕食が種子生産を大きく減少させていた。一方, 健全果は渡り途中のヒヨドリによってごく短期間にほぼ完全に消費され, 種子が散布された。野ねずみによる種子の摂食は確認されたが, 播種した種子の消失率は1割以下であり, 散布後の種子捕食圧は強くなかったと推察される。発芽率は8割以上と高く, 実生の生存率も低くなかった。以上のことから, 本調査地のヒメアオキ個体群では, 虫えい形成者による果実への寄生が実生更新の重大な阻害要因であることが示唆される。 




2024年5月下旬 
平地のスギ防風林でもヒメアオキの群落を見つけたので、熟果を探してみました。 
赤く熟した果実は全て歪に変形している虫こぶ(アオキミフクレフシ)ばかりで、寄生率が非常に高いことが分かります。 
果皮に張りがなくて皺くちゃの虫こぶはもう古いのかな? 
黒い穴はアオキミタマバエ成虫の羽化孔で、ひとつの果実から数匹が羽化したことが分かります。 
しかし、付近にアオキミタマバエを見つけられませんでした。 
私の悪い癖で、接写しながらカメラを忙しなく動かしてしまい、動画酔いしそうです。 
仕方がないので、1/2倍速のスローモーションでお見せします。 

鳥や動物による種子散布を調査する準備段階として様々な植物の種子を集めているのですが、ヒメアオキの種子を採取するために寄生されていない熟果(正常果)をいくら探しても今季は見つけられませんでした。 
ヒヨドリなど果実食性の鳥がヒメアオキの正常果を片っ端から選択的に食べてしまうのだそうです。 
ちなみに、虫こぶ(アオキミフクレフシ)の中では種子が正常に形成されません。
いずれフィールドにトレイルカメラを設置して、鳥がヒメアオキの実を食べに来る決定的な証拠映像を撮影してみたいものです。 
虫こぶ(アオキミフクレフシ)を忌避して正常果を選り好みする様子を実際に観察するのが次の目標です。 


※ Perplexity AIと問答を繰り返して、勉強しながらこの記事を書きました。


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2025/08/19

ニホンザルと白斑ススキ

 

2024年6月下旬・午前11:00頃・くもり 

山麓の民家の裏庭の端でニホンザルMacaca fuscata fuscata)が背を向けて座っています。 
立ち上がって遊動するまで撮り続けるつもりだったのですが、周囲で群れのメンバーが様々な行動を繰り広げているために、目移りしてしまいました。 

この記事のメインはニホンザルではなく、その横に生えていた斑入りの園芸植物についてです。 
調べてみたら色々と面白いことが分かったので、紹介します。
まるでクマザサのように葉身の両側の縁が白くなっている(隈取りがある)イネ科の植物です。 
ChatGPTに相談し、写真も検討してもらうと、斑入りのススキと教えてもらいました。 
植物の斑入りには様々なタイプが知られていますが、このススキは縁斑えんふです。

再確認:画像の植物の特徴

  • イネ科で葉が細長く、立ち上がり気味。

  • 白い縁取り(縁斑)が明瞭で、葉幅は中程度。

  • 群落形成している。

  • 植栽地:山形県の山麓の裏庭(耐寒性必須)

  • 撮影時期:6月下旬(十分展開している)


結論:やはり最有力候補は

Miscanthus sinensis 'Variegatus'(斑入りススキ)


理由(山形県の環境と整合性がある点)

  1. 耐寒性が高い(東北地方で越冬可)
     Miscanthus sinensisは在来種ススキと同種であり、耐寒性が非常に高く、山形県でも屋外越冬が可能です。海外品種(例:‘Cosmopolitan’)は地域によっては冬枯れが激しくなることもあるためやや不利。

  2. 葉の展開時期が早く、6月下旬で十分育っている
     ‘Morning Light’など一部の細葉品種は春の立ち上がりがやや遅く、6月下旬ではまだボリューム不足な場合もあります。‘Variegatus’は早めに展開する傾向があります。

  3. 庭園用途での定番斑入りススキ
     日本の民家の庭では、最もよく植えられてきた「斑入りススキ」はこの‘Variegatus’(日本語では単に「斑入りススキ」)で、昭和〜平成期の和風庭園や公園で頻繁に見られました。


ニホンザルは野生株のススキの葉を食べることがあるのですが、今回の個体は斑入りススキを採食しませんでした。
葉全体が緑色の正常な野生株と比べて、白斑ススキはサルにとって栄養価が低い(と判断した)のでしょう。

関連記事(8、9年前の撮影)▶  


ススキは風媒花で、種子も風散布される植物です。
斑入りの品種が風任せで近所にどんどん分布を広げているようには見えないのは不思議です。なぜでしょうか?

ススキは通常、種子によって風散布されますが、斑入り園芸品種(たとえば 'Variegatus')が自然分布を広げることはほとんどありません。その理由は、以下のような遺伝的・生理的・繁殖的制限によるものです。


理由1:斑入りはしばしば劣性または不安定な変異で、種子に遺伝しにくい

  • 斑入り(特に縁斑)は、多くの場合、色素合成に関わる遺伝子の変異によって生じます。

  • これはしばしば**栄養変異(体細胞変異)**であり、種子を通して子に安定して遺伝しないことが多い。

  • 仮に種子ができても、斑のない(緑一色の)実生になる可能性が高い。

→ よって、「風で飛んだ種から新たな斑入り個体が生える」ことは非常にまれ。


理由2:斑入り品種は種子をほとんどつけないことがある

  • 一部の斑入りススキ園芸品種は、

    • 花芽が形成されにくい

    • 花粉が不稔(不完全)

    • 種子がほとんど実らない(不稔性)
      などの性質を持っていることがあります。

  • これは、園芸的に選抜された変異株であるため、野生の繁殖力とは異なる場合があるのです。

→ そのため、そもそも風で散布できる種子ができないというケースも多い。


理由3:斑入りは光合成効率が落ちるため、野外では競争力が低い

  • 白い部分には葉緑体が少ない(または欠如)しており、光合成効率が緑葉より劣る

  • 自然環境では、緑葉型に比べて成長・生存に不利になる。

  • たとえ実生や株分けで逸出しても、雑草型のススキ(緑葉)に駆逐されやすい

→ 野生環境では定着しにくく、拡散力が低い


理由4:広がる場合は主に地下茎(栄養繁殖)による

  • 'Variegatus'などは地下茎で少しずつ広がるが、それは植えられた場所の近傍に限定される。

  • 自然分布のように広範囲に散布されることはほとんどない。


補足:例外もあるが極めて稀

  • ごくまれに、斑入り形質を種子を通じて遺伝可能な系統もありますが、

  • それは非常に限られた交雑系統や栄養固定化された特殊株であり、

  • 一般に庭園に植えられている‘Variegatus’のような品種では起きにくい現象です。


まとめ

斑入りススキ園芸品種が近所に自然に拡散しない主な理由は:

  1. 種子に斑入りが遺伝しにくい(栄養変異)

  2. 花や種子が不稔のことがある

  3. 光合成能力が劣り、自然環境で競争力がない

  4. 繁殖しても地下茎による局地的な広がりのみ


このため、斑入りススキが**「庭にあるのに、周囲には広がらない」のはごく自然な現象です。
もし逸出していたとしても、それは
緑葉型の実生(原種返り)**である可能性が高いでしょう。


つまり、斑入りススキは地下茎のクローンで増やす園芸品種らしい。

Miscanthus sinensis 'Variegatus' は百年以上にわたって世界各地の庭園に生き続けている、まさに「園芸植物の古典」と言える存在です。

しかもこの品種は、地下茎によって安定してクローン維持され、極寒にも耐える丈夫さを持ち、美しい斑入りを毎年確実に再現する──という点で、遺伝的にも環境適応的にも非常に優秀な系統です。


縁斑とは別のタイプの斑入り品種のススキも見たことがあるのを思い出しました。

昔の記憶を頼りに、後日写真を撮りに某集落へ行ってきたら、タカノハススキでした。


ススキ(Miscanthus sinensis)には「縁斑」以外にも、さまざまなタイプの斑入り品種が存在し、日本では古くから**和名付きの系統(地方名や意匠名)**として親しまれてきました。

以下に、代表的な斑のタイプごとにススキの品種名と特徴を整理します。


◼️ ススキの斑入り品種の分類(代表例)

斑のタイプ品種名(和名)特徴備考
縁斑(えんふ)白斑ススキ、‘Variegatus’葉の縁が白く抜ける最も一般的。海外でも人気
中斑(ちゅうふ)タカノハススキ(鷹の羽薄)葉の中央に太く白または黄の筋鷹の羽の模様に例える。華やか
縞斑(しまふ)ヤハズススキ(矢筈薄)葉に細い白筋が多数並行に入る“矢筈”模様に見立て
矢羽状散斑ヤバネススキ(矢羽薄)不規則な白斑が左右交互に出る(矢羽模様)細かな白斑が点在・交錯する
点斑・モザイク状斑点ススキ(仮称)まばらな点斑稀に見られる。葉緑体の変異由来
全体白化型(極端な白化)シロススキ、白覆輪ススキなど白地にわずかな緑縞栄養が乏しく成育がやや劣る

◼️ それぞれの品種の特徴を少し詳しく

タカノハススキ(鷹の羽薄)

  • 葉の中央に明瞭な太い黄白色の筋

  • 鷹の羽根のような勇壮な姿から命名

  • 江戸時代から観賞用に使われる伝統的品種

  • 夏〜秋にかけて斑が明瞭になる

ヤハズススキ(矢筈薄)

  • 細くシャープな白い縞が平行に数本ずつ入る

  • 葉の縁や中央のラインが複数走り、スタイリッシュ

  • やや繊細な外観で、茶庭などにも使われる

ヤバネススキ(矢羽薄)

  • 葉の表面に不規則な白斑が左右交互に斜めに交錯する

  • 独特の装飾性で、名前どおり矢羽根に見えることから命名


◼️ 斑入りススキ品種の文化的背景

  • これらの品種は、日本の伝統園芸において「意匠的な美しさ」が重視され、名前に**動物や武具の名(鷹、矢筈、矢羽など)**を用いてきました。

  • 鑑賞されるのは、花穂よりも葉の美しさ・風に揺れる姿

  • 茶庭や坪庭、路地植えに利用され、季節の移ろいを表す植物として愛されてきました。

 

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斑入り植物百科: 美しい銘品から話題の珍品まで! (別冊趣味の山野草)

2025/05/22

ミズナラの幼木に出来たナラメリンゴフシ【虫こぶ】

2024年5月上旬

里山の細い林道の脇に自生するミズナラ幼木の群落で白いピンポン玉のような物が目に付きました。
ナラメリンゴタマバチ(Biorhiza nawai)の両性世代がナラ類の芽に形成した虫こぶらしい。
細い枝の分岐点で大きく膨らんだ虫こぶの表面はまだ黄緑色で、少しだけ赤く色づき始めていました。

以前もミズナラに寄生しているのを見つけています。

関連記事(8年前の撮影)▶ ミズナラに形成したナラメリンゴフシ【虫こぶ】#1 
定点観察した連載記事#1〜#6。


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2025/05/19

初夏の風に吹かれて飛散するポプラ(セイヨウハコヤナギ)の綿毛【風散布型種子:FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月中旬・午後14:25頃・晴れ 

街路樹として植栽されたポプラ(=セイヨウハコヤナギ)の大木から白い綿毛が風に乗って大量に舞っていました。 
ポプラが属するヤナギ科の種子は、典型的な風散布型です。 
ヤナギの白い綿毛は「柳絮りゅうじょ」、ポプラの場合は「楊絮ようじょ」と呼ばれるのだそうです。 

関連記事(5年前の撮影)▶  


ヤナギ科の果実は蒴果で熟すと裂開し、中から綿毛に包まれた小さな種子が多数現れます。 
この綿毛は種子そのものから直接生えている訳ではなく、種子を包む果実(蒴果)の内側の壁や種皮の表面から発生した付属物(種毛、種子毛)です。
綿毛の主成分はセルロースで中空構造を持ち、風による種子散布への適応形態です。 

ポプラ大木の下から見上げてズームインすると、枝先に白い綿毛が大量に付いていました。 
白い花が咲いているように見えますが、花ではなく蒴果の綿毛です。 
(私はポプラの花を実際に見たことがないかもしれません。)
ポプラは雌雄異株なので、白い綿毛の付いた木は雌株です。
初夏(晩春)の風が強く吹くと、その綿毛が風に乗って飛散します。 
ポプラの若葉も風でザワザワ音を立てながら揺れています。 

セイヨウハコヤナギの綿毛が飛散する様子を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:37〜) 
明るい空を背景にすると飛散する白い綿毛がよく見えないので、背景が暗くなるようにアングルを決めないといけません。 
ハイスピード動画は固定焦点ですから、撮り始めにポプラの大木に焦点を合わせてしまうと、手前の空中を飛ぶ綿毛にピントが合いません。 
シャッターボタンを半押しにして、適当な距離の物体に合焦してから撮り始めました。 
カメラの仕様で、ハイスピード動画は無音になってしまうのですが、無音のシーンが続くと味気ないので今回は風の吹く音をアフレコしてみました(別撮りの動画から音声だけ流用)。 

動画を撮影した後に、風に舞う綿毛を手掴みで採集できたので、種子の写真を掲載しておきます。







【考察】
中国の乾燥した地域では、ポプラ並木から大量に飛散した白い綿毛(楊絮)が地面に溜まり、誰かの不注意(火の不始末)で発火すると一気に燃え広がって火事になってしまうのだそうです。
ポプラの白い綿毛(楊絮)は主にセルロースと植物油脂から成り、可燃性が非常に高くなっています。
綿毛状の形態で空気を多く含むため、密集して堆積すると、着火した際に一気に爆発的に燃え広がる性質があるのです。

楊絮が燃えやすいという性質は、ポプラがそのように進化した結果なのでしょうか? 
火災を積極的に利用して分布を広げるパイロファイト(火災適応植物)と呼ばれる植物が知られています。
(多雨多湿で山火事の発生頻度が少ない日本にはほとんど居ないとされています。)
ポプラはパイオニア植物(先駆植物)なので、山火事を起こしてライバルの植物を焼き払い、その後に発芽する戦略かもしれない、と私は素人考えで思いつきました。

しかし、地上に堆積した楊絮に着火したら、種子も焼け死んでしまいます(高温で発芽能力を失う)。
つまり、ポプラの種子に耐火性はありません。
セルロースからできた綿毛の表面には油脂成分(ワックス)が含まれていて、可燃性が高くなっています。
これもポプラに火災を誘発したいという進化的意図がある訳ではありません。
この油脂分のおかげで撥水性が高まり、フワフワの綿毛が雨や湿気から守られるのだそうです。
これも風散布の効率を高めるための適応と考えられます。

まとめると、ポプラの綿毛が燃えやすいのは、風散布のために軽く繊維状になった結果の副産物であり、「火災を誘発して生存競争を有利にする」ために進化したものではありません。

※ Perplexity AIの回答を参考にまとめました。
植物生態学も調べてみると面白いですね。

昨今では、ポプラの大木が次々に伐採されています。
台風や大雪などによる倒木で事故が起きることを行政当局や土地管理者が恐れているようです。
ポプラを観察したいと思いたった時に身近にあまり残ってないことに気づき、焦りました。
ポプラに限らず、あちこちで樹木の伐採がどんどん進んでいるので、思いついた時にすぐ撮っておかないと、後悔することになります。


 
 ↑【おまけの動画】 
公園覆う“白いもの”これは何?今だけの絶景に…意外な危険【スーパーJチャンネル】(2025年6月20日) by ANNnewsCH

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