2025/09/21

山中の湿地帯で大群落を形成したキツネノボタンの謎

2024年6月下旬 

里山にある湿地帯が野生動物や野鳥の水場となっているので、トレイルカメラを設置して見張っています。 
梅雨の頃、その湿地帯に自生する下草に黄色い花が咲き乱れました。

見慣れない草本植物だったので、写真に撮ってPerplexity AIに画像認識してもらうと、キンポウゲ科のキツネノボタンであるとたちどころに教えてもらいました。 
やや湿った所に生えるらしく、全草に毒が含まれるそうです。 
主な毒性成分としては、
・プロトアネモニン(protoanemonin) 生の茎や葉などを傷つけることで生成される刺激性の化合物で、皮膚に付着すると炎症や水疱、口腔・消化器から摂取すると胃腸炎や下痢、吐血、重症の場合は心臓毒性で心停止も報告されています。 
・ラヌンクリン(ranunculin) プロトアネモニンの前駆体であり、植物組織を壊すことで酵素反応によりプロトアネモニンに変化します。

トレイルカメラを設置した結果、この湿地帯にはニホンカモシカCapricornis crispus)がときどき現れて、水溜りから水を飲んだり、下草や灌木の葉を食べたりしていることが分かっています。 
他の草食獣としては、ノウサギも稀に現れます。
多雪地帯の当地では、北進を続けるニホンジカがまだ定着できていません。

カモシカの採食圧があるにも関わらず、この湿地帯にキツネノボタンの大群落が形成されたということは、カモシカが有毒植物を忌避した結果であることを示唆しています。
ただし、カモシカの食べ方は単独行動で歩きながらあちこちでつまみ食いする(道草を食う)程度なので、群れで採食するシカほどの強い採食圧を下層植生に与えていないかもしれません。


カモシカやシカなどの草食動物は、キツネノボタン(有毒植物)を基本的に忌避する傾向があります。多くの反芻動物(シカ、カモシカなど)は、強い苦味や毒成分(プロトアネモニンなど)を持つ植物を本能的に避ける能力が高く、野生下ではほとんど摂食対象としません。pref.nagano+1

  • キツネノボタンやキンポウゲ科の草本は生育地で広く見られるにもかかわらず、シカやカモシカの大規模な食害例は報告されていません。rarememory.sakura

  • 一部の報告では、毒性植物(例えばハシリドコロ、ヤマトリカブトなど)と同様、強い苦味や刺激臭・成分を感じて忌避が行われていると考えられています。rarememory.sakura

  • ただし、極端な食糧不足や若い個体などが誤食して中毒を起こす事例が完全に皆無というわけではありませんが、ごく稀です。pref.nagano+1

したがって、キツネノボタンはシカやカモシカにとって「食べられにくい有毒植物」であり、普通は野生草食獣の忌避対象となっています。カモシカやシカなどの野生草食動物は、キツネノボタンのような強い毒性成分(プロトアネモニンとラヌンクリン)を含む有毒植物を本能的に忌避する傾向があります。pref.nagano+1

草食動物と有毒植物の関係

  • キツネノボタンやキンポウゲ科の植物は苦味や刺激成分が強く、シカやカモシカのような反芻動物は通常これらを避けて食べません。rarememory.sakura+1

  • シカやカモシカの食性研究でも、これらの有毒草本の大規模食害や好んで食べる例はほぼ報告されていません。rarememory.sakura

  • ただし、極端な食料不足時や幼獣の誤食による中毒例が完全に皆無というわけではありませんが、非常に稀です。pref.nagano

このように、キツネノボタンは野生のシカやカモシカにとって、日常的には食べられにくい忌避植物です。


ところで、キツネノボタンには他の植物の生育を阻害するアレロパシーがあることも知られているそうです。 

具体的には、キツネノボタンの持つ毒性成分(例えばプロトアネモニンなど)が土壌や周囲の環境に影響を及ぼし、他の植物の種子発芽や苗の生育を妨げることが考えられています。このため、湿地や田んぼの畦などでキツネノボタンが群生すると、その周辺の植生構造にも影響を与える可能性があります。

したがって、キツネノボタンは草食動物の食害に対抗する毒性だけでなく、他の植物に対する毒性を通じても競争に勝ち、大群落を形成したのでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ランダムに記事を読む