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2025/04/15

アナグマの旧営巣地に置いたキャットフードをホンドタヌキ3頭の群れが見つけ、1頭が独占して食べる【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年4月下旬 

死んだニホンアナグマの旧営巣地(セット)で、交通事故に遭ったと思われる「いざりタヌキ」の下半身麻痺が進行して歩行困難となった姿が監視カメラに写っていました。 
 餌が取れなくなれば、餓死する(あるいは捕食される)しかありません。 


シーン0:4/22・午後13:00頃・晴れ(@0:00〜) 
私は原則として、野生動物の生老病死にヒトは一切介入すべきではないという立場なのですが、悩んだ末にキャットフードを持参して給餌してみました。 
浅い木箱に少量の乾燥キャットフードを入れて、巣口Lの近くの地面に置いてやりました。 
 「いざりタヌキ」の安否確認だけでも、したいところです。 

ところが給餌後に最初に現れたのは、イエネコでした。 
 関連記事()▶ アナグマの旧営巣地で給餌したキャットフードを食べるイエネコ【トレイルカメラ:暗視映像】 


シーン1:4/22・午後21:56(@0:16〜) 
猫と入れ替わるように、ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)3頭の家族群がやって来ました。 
まず手前の獣道から来た2頭のタヌキがセットの匂いを嗅ぎ回っています。 
ネコの残り香が気になるのかな? 

しばらくすると、ようやく1頭が給餌箱の存在に気づいて、キャットフードを恐る恐る食べ始めました。 
その間に、右奥の二次林から別個体も登場しました。 
仲間が食べている給餌箱に近づいたものの、一緒に食べようとはせずに、遠慮して周囲をうろついています。 
体格はほぼ同じなのに、群れ内で力関係の順位性があるようで、下位の個体は順番待ちをしないといけないのでしょう。 
(それとも、早い者勝ちなのかな?) 
 通い慣れたセットにある日突然、見慣れない(不審な)餌箱が出現したので、2頭とも頻りに周囲を警戒しています。 


シーン2:4/22・午後21:56・気温12℃(@1:17〜) 
別アングルの監視カメラでも同時に撮れていました。 
先行個体aは、巣口Lに頭だけ突っ込んで匂いを嗅いでから左に立ち去りました。 
ようやく餌箱に気づいた個体bが、周囲を警戒しながらキャットフードをひとくち食べました。 別個体cが近寄ってきても、先客bに遠慮しているようで、一緒に食べようとはしません。 
 aが回り込んで左下から戻ってきたが、bが食べている餌には近づけない。 明らかな力関係がある。a<b 体格差も同じ。 
 bは妊娠している♀なのか? 
たまたま早い者勝ちで餌を見つけた個体bが独り占めできたのかな? 


シーン3:4/22・午後21:57(@2:17〜) 
タヌキbが餌箱を占有して乾燥キャットフードをボリボリと食べ続けている間、その周囲を2頭のタヌキがうろついています。 
音量を上げて耳を澄ませても、順番待ちをしているタヌキは物欲しげに餌乞いする鳴き声を発していませんでした。 
αの正面に回り込んで餌を食べようとしたら、餌を食べていたαタヌキが怒って威嚇しました。(@3:08〜) 
軽く吠えて(唸って)下位個体に突進したものの、噛み付きはしませんでした。 
αタヌキの剣幕に下位タヌキβ、γは怖がって退散しました。 
少し離れた位置から未練がましく様子を窺っています。(順番待ち)


シーン4:4/22・午後21:58(@3:17〜) 
別アングルの監視映像に切り替えます。 
 αタヌキがキャットフードを食べている間に、下位の2頭β、γが周囲を別々にうろついています。 
手持ち無沙汰で巣口Lの匂いを嗅いだり、座り込んで毛繕いしたりしています。 
餌のお預けをくらった個体が、欲求不満を解消するための転移行動なのでしょう。 


シーン5:4/22・午後21:59(@4:17〜) 
つづき。 


シーン6:4/22・午後22:00(@5:17〜) 
順番待ちをしていた個体のうち1頭βが餌箱のすぐ横まで近づいても、ようやくαから攻撃されなくなりました。 
キャットフードを独り占めしていたα個体が満ち足りてきたのでしょう。 
しかしβ個体はまだ餌箱から直接食べることは許されていないのか、怯えたようにちょっと走って左に離れました。 


シーン7:4/22・午後22:01(@6:17〜) 
別アングルからの映像。 

餌を専有するタヌキαがよそ見をしているときでも、近寄ってきたβは餌箱から盗み食いしたりしません。 
βはキャットフードの匂いを嗅いだだけで、なぜか怯えたようにパッと右に離れました。 
このときαは特に攻撃的な占有行動をしてませんし、威嚇の唸り声も発ていませんでした。 
餌を1頭が独り占めしているように見えたのは、群れ内の力関係を反映しているのではなく、警戒心が強いか薄いかという個体差の結果でしかないのかもしれません。 


シーン8:4/22・午後22:02(@7:17〜) 
タヌキの群れがセットから居なくなっていました。 
餌箱も忽然と消えていたので、1頭が餌箱ごと咥えて持ち去ったようです。 
その瞬間を動画に撮り損ねたのは残念です。 
右上奥の暗闇でタヌキの白く光る目が右往左往しています。 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 



【考察】 
登場したタヌキ3頭の性別だけでも知りたいものです。 
ホンドタヌキでは雌雄で体格差(♀<♂)があるらしいのですが、その性差は小さくて見分けるのが難しいとのこと。
この3頭はおそらく核家族(♀♂ペアと子供のヘルパー)で、キャットフードを独り占めしたα個体は妊娠中の♀ではないかと、私は勝手に推測しています。
つまり、お預けを食っていた2頭はパートナーの♂と子供(ヘルパー♀?)だろう、という予想です。
3頭の予想される力関係を表すと、
α:母親♀(妊娠中)>β:父親♂>γ:子供(ヘルパー)
タヌキの社会構造は基本的に単独性が強いため、オオカミやイヌなど群れ内の順位性が歴然としているわけではありません。
ただし、家族単位で行動する場合には、親ダヌキ(特に母親♀)が子供より優位に立つことが一般的です。

たまたま早い者勝ちで餌を食べ始めて他の個体を追い払った、という解釈もあり得るでしょうか?
タヌキの餌場での行動は必ずしも順位性に基づくものではなく、一時的な優位性(例えばその場での積極性や警戒心の強さ)による場合もあります。
餌を1頭が独り占めしているように見えたのは、群れ内の力関係を反映しているのではなく、警戒心が強いかどうかという個体差の結果でしかないのかもしれません。 

この3頭は親子ではなく、前年に産まれたタヌキの3兄弟(姉妹)が4月下旬になっても採餌行動を共にしている可能性はありえるでしょうか? 
4月下旬という時期だと、特に♂の兄弟は既に分散して新たな縄張りを築いているはずなので、その可能性は低いです。

給餌したキャットフードを健常個体のホンドタヌキが食べてしまった(持ち去ってしまった)ので、仮に「いざりタヌキ」が生存していたとしても、食べることができなくなりました。 
麻痺した下半身を引きずりながら、後からやって来たとしても、強者が独り占めする餌箱に近づくこともできなかったでしょう。
思いやりをもったヒトが弱者優先で給餌しようとしても、近くの強者に餌を奪われてしまうのが常です。
これは「ふれあい牧場」の給餌体験などで、誰しも経験したことがあるはずです。
「いざりタヌキ」は行方不明のままですが、おそらく巣穴Lの奥で餓死したのだろうと予想しています。

つづく→

2025/04/11

カルガモの♀♂つがい外強制交尾と配偶者ガード(野鳥)

 

2024年4月下旬・午後16:20頃・くもり 

平地の溜池の方から、激しい水音が聞こえました。 
水鳥が夕方に水浴しているのかと思ってそっと近づいてみると、3羽のカルガモAnas zonorhyncha)が水面で激しい喧嘩を繰り広げていました。 
普段カルガモは警戒心が強いのですが、今回は痴話喧嘩に夢中で、池畔で観察する私のことなど眼中にありませんでした。 

外見によるカルガモの性別判定は難しくて、私はまだスローモーションにしないと自信がないのですが、どうやら1羽の♀を巡って2羽の♂が交尾しようと争っているようです。 
【参考サイト】

正確には、♀♂ペアの間にあぶれ♂が割り込んで、強引に♀と婚外強制交尾を試みているようです。 
つがい外交尾:extra-pair copulation
強制交尾:forced copulation
つまり、♀aと強引に交尾しようとする♂bと、それを阻止しようとする(配偶者ガード)♂aとが激しく争っているのです。 
♀♂異性間の交尾行動の後半部分と、♂♂同性間の闘争行動とが似ていて紛らわしいです。 
ただし、カルガモの♀♂ペアが両性同意のもとで交尾する前には、必ず儀式的な行動をします。 
今回のあぶれ♂は、そのような求愛ディスプレイをまったくしないで、いきなり♀に背後からマウントしていました。 
関連記事(5、6年前の撮影)▶  
八木力『冬鳥の行動記:Ethology of Wild Ducks』でカモ類の交尾行動を調べると、 交尾には♀との合意が必要なので、♂が♀に近づきながら頭部を上下させるヘッドトッシングを行なって交尾を促し、これに♀が同調して頭部を上下させれば同意の合図。  ♀は交尾受け入れの姿勢をとります。♂は♀の後頭部をくわえてマウンティング。  交尾終了後、♀は必ず(儀式的水浴びと)転移性羽ばたきを行ない、♂はまれに行なうことがあります。 (p58より引用)


カルガモ♂aは配偶者♀aを守りたくても、ライバルの独身♂bを撃退するのに苦労しています。 
カルガモの嘴の先端は丸く、敵をつついて攻撃することはありません。 
足にも鋭い爪が無くて水かきしかないので、有効な武器をもっていないのです。
羽ばたく翼で相手を打ち付けたり、(異性間交尾のように)背後からマウントして相手の後頭部を嘴で咥えて押さえつけて、強制交尾を妨害するぐらいしか対抗策がありません。 
そのため、ひたすら体力勝負の消耗戦が続きます。

♀aに♂bが背後からマウントし、その上から更に♂aがのしかかるので、一番下に押さえつけられた♀aは重みで水没しています。 
♀aが何度も溺れそうになっているので、擬人化するとどうしても可哀想に感じてしまいます。 
しかしカルガモには表情がありませんから、♀aが本当に嫌がっているかどうか、定かではありません。 
(♀は意外とケロッとしているように見えなくもありません。)
酷い目にあっているのなら、♂同士が喧嘩している間に♀は池からさっさと飛び去って遠くへ逃げればいいのに、池に留まっているのが不思議でなりません。 
交尾相手の♀を巡る争いなら♂同士でとことん喧嘩するはずだと思うのですが、あぶれ♂は執拗に♀だけを狙って挑みかかります。
我々ヒトの価値観・倫理観では卑怯な振る舞いですけど、進化的に遠く離れたカルガモに無理に適応して憤慨しても仕方がありません。 
もし♀が辟易して逃げ出せば、パートナー♂もついて行かざるを得なくなり、縄張りを失いかねません。
「カルガモ♀は♂同士を密かにけしかけて喧嘩で決着を付けてもらい、より強い♂と交尾したいのではないか?」と穿った見方をしたくなります。 
あるいは、♀はパートナー♂の近くに留まった方が、あぶれ♂の執拗なハラスメントから守ってもらえる確率が高いのでしょうか。

この池にはカルガモの群れがもっと居るのですが、この騒ぎに乱入する個体はおらず、関係のない個体は飛んで逃げ出しました。 
初めは2組の♀♂ペアが池で縄張り争いをしているのかと思い、ライバル♂bのパートナー♀bが途中で助太刀に来るかと期待したのですが、そのような展開(4羽での喧嘩)にはなりませんでした。
喧嘩に巻き込まれそうになった周囲のカルガモ個体が慌てて逃げていくだけです。 

ようやく、♀aに付きまとうあぶれ♂bをパートナー♂aが背後から完全に組み伏せて♀を離させ、追い払いました。 
♂同士の喧嘩に決着が付いたように見えました。
しかし、「あぶれ♂b」は隙を見て再び♀aに突進すると、しつこく強制交尾を試みようとします。 

ようやくあぶれ♂bを追い払って配偶者ガードに成功したパートナー♂aは、水面で小刻みに方向を変えながら♀aの周囲を警戒し、勝利の凱歌を上げています。
短く連続的な「ガッガッガッ♪」という鳴き声は、縄張り宣言の示威行動なのだそうです。 
このとき鳴くのはいつも♂aだけで、♀aは黙っています。 
難を逃れた♀aは、♂aの斜め後ろをぴったり寄り添うように追随し、嘴を水面につけながら遊泳しています(緊張緩和の転移行動)。 
やがて♀aは水浴してから水面で伸び上がって羽ばたき(水切り行動)、自分で羽繕いを始めました。 
それに釣られるように、♂aも隣で同じく水浴と羽繕いを始めました。(♀a♂aペアの絆強化) 

♀a♂aペアが仲良く横に並んで水面を泳ぎ去りました。 
これで一見落着かと思いきや、♀a♂aペアの背後からしつこい「あぶれ♂b」が急いで追いかけてきました。(@4:10〜) 
敵の接近に気づくと一触即発で、3羽がほぼ同時に水面から慌てて飛び上がりました。 (@26:20〜)
すぐに着水すると、三つ巴の大騒動が再び勃発します。 
襲われた♀aは、緊急避難のため自発的に潜水しました。 
しかし独身♂bがすぐに背後から追いかけ、2羽ともしばらく水中に潜っていました。 
再び水面に浮上したときには、あぶれ♂bが♀aを掴まえて背後からマウントしていました。 
♀aを見失っていたパートナー♂aがようやく気づいて慌てて駆けつけ、救出を試みます。 
喧嘩に決着がついて、あぶれ♂bが少し飛んで逃げました。

配偶者ガードに成功した♂が、興奮したように勝利の鳴き声♪を上げながら水面を忙しなく泳ぎ回ります。 
パートナーの♀がすぐに駆けつけ、パートナー♂の斜め背後に寄り添うように遊泳します。
♂に付き従う♀は、尾羽を左右にフリフリしながら、嘴を水面に付けて遊泳しました(緊張緩和の転移行動)。 
それが♀による求愛ポーズなのかと思ったのですが、♂aは♀aを見ていません。 
♀aは水面で伸び上がって羽ばたき(水浴行動の省略)、パートナーの♂aに見せつけるように自分で羽繕いを始めました。 
♂aはようやくパートナー♀aに向き合ったものの、まだ興奮が収まらず、小声で鳴き続けています。 



一連の騒動を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@5:20〜)
後頭部から首の後ろを通る黒い縦筋模様が♀では薄れかけていて、それが目印になります。
繁殖期の♀は背後から♂に繰り返しマウントされて、その度に後頭部や首筋を嘴で噛まれますから、黒い羽毛がどんどん抜けてしまうのでしょうか?
あぶれ♂bの後頭部を嘴で咥えた♂aが羽根をむしり取ることもありました。
この「黒いたてがみ」に注目すると、3羽の個体識別ができそうです。

少し離れた相手に急いで襲いかかるときは、左右の翼を水面に同時に打ち付けながら両足で交互に水を蹴って進みます。 


※ 水飛沫の音や鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 



【考察】
カルガモの繁殖期は通常4~7月です。 
今回観察した4月下旬は、ペア形成が完了して巣作りおよび産卵を開始する前の時期に相当します。 
カルガモの♂は育雛(子育て)には全く参加しませんが、造巣の段階では♀に協力し、抱卵中の♀を警護するらしい。 
婚外強制交尾は巣作り前の時期(4〜5月)に頻発し、産卵開始後は激減するらしい。 
カルガモ♀が巣作りを開始する直前になると、パートナーの♂は特に警戒行動を強め、配偶者ガードを強化するそうです。 

カルガモは社会的単婚(一夫一婦制)を形成しますが、DNA検査で調べると婚外交尾も一定の割合で行われているらしい。
今回の調べ物で初めて知ったのですが、鳥類にしては珍しくカモ類の♂は螺旋型の長い陰茎をもつそうです。(参考サイトにすばらしい図解が掲載されています。)
短時間の交尾の際に、♀と前に交尾したライバル♂の精子を物理的に掻き出した上で自分の精子で置換するらしい。
また、強制交尾した♂が必ずしも次世代を残せるとは限らないそうです。
♀が複雑な形状の生殖器内で♂の精子を選別しているらしく、強制交尾した♂の精子は使われないことが多いそうです。
つまり、あぶれ♂の強制交尾がたとえ成功しても、寝取られた元の♀♂ペアは別れずに済むらしい。
精子競争の観点でもカルガモの配偶行動は奥が深くて、とても面白いです。

水面で激しく動き回る3羽のカルガモをしっかり個体識別できていないので、本当に配偶者ガードに成功したのか、それとも「あぶれ♂」による婚外強制交尾が成功したり♀を強奪できたのか、判断できません。 
しかし、池に残った♀♂ペアの行動から、独身♂による強制交尾は失敗に終わったと思われます。 
交尾に成功したペアが必ずやる儀式的行動(♂が「首反らし→円形泳ぎ」をする間に、♀が羽ばたきで水をかける)が見られなかったからです。
参考サイト:カルガモ 交尾行動
また、あぶれ♂による強制交尾が成功していれば、パートナー♂がただちに対抗して♀と再交尾を行い、精子を置換するはずです。

カルガモは身近にいる普通種の水鳥ですが、造巣行動や抱卵などを私はまだ観察できていません。
今回の撮影で、繁殖期の重要なミッシング・リンクがようやく一つ埋まりました。

今回の記事をまとめるにあたり、Perplexity AIを使った調べ物やブレイン・ストーミング*1 、*2 、*3)がとても役立ちました。
おかげで、動画に撮ったカルガモ3羽の行動をすっきりと(正しく?)解釈することができそうです。
Perplexityの助けがなければ、3羽のカルガモによる激しい乱闘はただ混沌としていて、素人には何がなんだかさっぱり理解できませんでした。
新たに勉強したことが多くて、AIに要約してもらおうか迷ったのですが、脳が退化しないように、なるべく自力で記事をまとめるように心がけました。
この記事が分かりにくかったら、私の責任です。



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2025/04/05

晩秋の刈田で何度も虫を狩り捕食するチョウゲンボウ♀【野鳥:FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年11月中旬・午後13:20頃・晴れのち曇り 

広い田んぼに隣接するグランド(球場)でネットの支柱の天辺にチョウゲンボウ♀(Falco tinnunculus)が止まっていました。 
ここはチョウゲンボウがお気に入りの止まり木で、毎年秋になるとよく見かけます。 
支柱の天辺は鳥の糞で白く汚れています。 
支柱の天辺で周囲を見渡して、稲刈りが終わった刈田に潜む獲物を眼光鋭く探しています。 
秋風でチョウゲンボウ♀の羽毛がなびいています。 

まるで頷くように、しきりに顔を上下に動かしている行動にも意味があります。 
眼球が固定されている猛禽類が広い視野を確保するためには、頭全体を動かす必要があります。 
このチョウゲンボウは、首をねじって背後も見張っています。 
また、猛禽は両眼視野が狭いので、頭を上下に動かすことで遠方の対象物への距離感や立体視を補完しているのだそうです。 

獲物を見つけたチョウゲンボウ♀は支柱から飛び立つと、刈田の上空で羽ばたきながら一点に留まり(ホバリング、停空飛翔)、狙いを定めてからスーッと急降下し、地上の獲物に襲いかかります。 
残念ながら、手前に生えたススキやアメリカセンダングサ、セイタカアワダチソウなどが邪魔で、チョウゲンボウ♀が獲物を狩る瞬間をどうしても撮れません。 

狩りの成否に関わらず、チョウゲンボウ♀は同じ止まり木(支柱天辺)に戻ってきます。 
舞い戻ってきて着陸するまで待ち構えて、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:41〜2:04) 
チョウゲンボウの性別は頭部の色で見分けられます。 
この個体は頭が茶色いので♀です。
尾羽根の下面に黒い横縞が目立つ点も♀の特徴です。 
スローモーションでしっかり確認できました。 

片足の鉤爪で小さな獲物と一緒に細長い藁(枯草)を運んでいました。 
獲物を掴んだ足には体重をかけず、反対側の足でふわりと着地し、翼を畳みました。 

チョウゲンボウが狩ってくる獲物は小さくて軽いので、片足で掴んで運びます。 
利き足がありそうな気がしたのですけど、何度も観察すると、左右の足を(交互にランダムで?)使っていました。 

支柱の天辺に持ち帰った獲物をチョウゲンボウ♀は早速食べ始めました。 
カメラのデジタルズームを最大にしても、少し遠くて獲物の正体をしっかり同定できませんでした。 
獲物は小動物(脊椎動物)ではなく、バッタやコオロギなど昆虫のようです。 
トンボを狩るときもあるのですが、今回の獲物はトンボには見えませんでした。 
チョウゲンボウは嘴を使って虫の翅を器用にむしり取ってから、ちびちびと食べました。 
他の種類の鳥とは違って、食後に汚れた嘴を掃除しないのが不思議に思いました。 

小宮輝之(監修)『鳥の食べもの&とり方・食べ方図鑑 おもしろふしぎ鳥類学の世界』でチョウゲンボウの食性を調べると、
大きく羽を広げ、ホバリングから急降下して昆虫やネズミなどの小動物を捕らえます。カマキリを捕獲! (p123より引用)
虫を1匹完食しても、満腹になりません。 
見晴らしの良い支柱の天辺で、チョウゲンボウは再び刈田に潜む次の獲物を探し始めます。 

支柱の天辺から飛び立つ直前に、脱糞した瞬間(@5:20〜)も動画に撮れていました。 
液状の白っぽい糞尿を後方に勢い良く噴出しています。 
今思いついたのですが、チョウゲンボウがよく止まっていた支柱の真下まで行ってペリットを採集できれば、未消化物に含まれる残渣から捕食した虫の種類を同定できるかもしれません。 
ただし、チョウゲンボウがペリットを吐き出すシーンを私はまだ観察したことが一度もありません。 
ペリットが無くても、チョウゲンボウが食前に毟り取った虫の翅などが支柱の下に散乱しているはずなので、アリなどに持ち去られる前に調べに行けばよかったですね。

やがて1羽のハシボソガラスCorvus corone)が飛来して、支柱の天辺に止まりました。 
お気に入りの止まり木を横取りされたチョウゲンボウ♀は、仕方なく隣に立つ支柱の天辺に移動して、そこで獲物を捕食するようになりました。 
別個体のカラスも加勢しに来たようで、嗄れた鳴き声が近くから聞こえます。 
カラスはとにかく猛禽類が大嫌いなので、縄張りからチョウゲンボウ♀を追い払うために集まってきたようです。 
晩秋はカラスの繁殖期ではありませんから、本格的なモビング(擬攻撃)にまでエスカレートすることはありませんでした。 
それでも地味に嫌がらせしたり心理的な圧力をかけたりしています。 
隣の空いた止まり木(コンクリート支柱)に移動したチョウゲンボウは、田んぼから少し離れたせいで獲物を探しにくくなったようです。 

最後にチョウゲンボウ♀はこの狩場から飛び去ってしまい、戻ってきませんでした。 
飛び去るチョウゲンボウをカラスの群れがしつこく追尾することはありませんでしたが、ハシボソガラスの地味な嫌がらせが奏功し、天敵を追い払えたことになります。 



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2025/03/24

早春の池で獲物を吸汁(共食い?)するマツモムシ

 

2023年3月下旬・午後13:45頃・晴れ 

山麓で沢の水(雪解け水)が溜まった池の岸辺でヤマアカガエルRana ornativentris)の卵塊を観察していると、マツモムシNotonecta triguttata)が背泳ぎしながら現れました。 
背泳しながら何か獲物を前脚と中脚で抱えて捕食(吸汁)しています。 
背泳ぎしながら腹端を水面の上に少しだけ出しているのは呼吸のためでしょうか。

獲物の正体が気になるのですが、映像をいくら見直してもよく分かりません。 
ヤマアカガエルの胚を捕食してるとしたら面白いのですが、そうではなさそうです。 
なんとなく、脱皮や羽化に失敗した仲間を共食いしているような気がします。 
しかも獲物の体が一部食いちぎられているようです。 
(マツモムシの口器は吸汁専門で、噛むことはできません。)
アングルが変わると、どうやら獲物は表面に空気の層をまとっているようで、白っぽく見えました。 

そこへ、別個体のマツモムシが近寄ってきました。 
捕食中だった個体は、獲物を横取りされないように全速力で逃げて行きました(水中に潜った)。 
逃げ遅れたら、逆に共食いされてしまう危険があるのでしょう。

獲物の正体をしっかり同定するために、マツモムシごと一時捕獲しようか私が迷っていたら、見失ってしまいました。 
早春の時期でも池の定点観察には手網タモを持参するべきですね。


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2025/03/15

カラスの群れにモビングされて逃げる昼間のフクロウ(野鳥)

 

2024年4月上旬・午後13:25頃・晴れ 

平地の二次林でカラスの群れが鳴き騒ぎ、猛禽を追い回していました。 
カラスの繁殖期が始まったので、営巣する縄張りから天敵を追い出すモビング行動(擬攻撃)が激しくなっているのです。 
落葉灌木に止まった猛禽の正体は、フクロウStrix uralensis)でした。 
昼間にフクロウの姿を初めて撮れて、感動しました! 
フクロウのすぐ左にはカラスが止まっていて、嫌がらせをしています。 
ようやく春になり、落葉していた二次林でもマルバゴマキ(別名マルバゴマギ、ヒロハゴマキ、オオバゴマキ)の若葉がいち早く開き始めています。 

樹上のフクロウが飛び去る瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:43〜) 
二次林から隣接するスギ防風林の方へとフクロウは逃げて行き、その後を複数のカラスがしつこく追いかけていきます。 




その後、カラスの群れに追いたてられて逃げていくフクロウをもう一度目撃したのですが、証拠動画を撮り損ねました。 
カラスにモビング(擬攻撃)されるフクロウという対決の構図を動画に撮るのなら、もっと引きの絵で両種を同時に撮るべきでした。 
しかし、夜行性のフクロウを生まれて初めて直に観察できた私は興奮してフクロウに思いっきりズームインしてしまい、カラスの姿が撮れていません。 
そのため、カラスの種類が分からないのですが、濁った嗄れ声で鳴いていたことから、ハシボソガラスではないかと思います。(※ 追記参照) 

実は35分前にも、現場近くでフクロウの鳴く声を聞いています。
「ゴッホウ ゴロッケ ゴゥホウ」という♂の囀りさえずりでしたが、残念ながら録音できず。
フクロウの営巣木が近くにあるとすれば嬉しいのですが、まだ樹洞を見つけられていません。 
二次林に侵入した私に対して、フクロウが警告声を発したのでしょうか? 
昼間にフクロウが鳴くとそれを聞きつけたカラスが周囲から集まり、血眼になって探し出してモビングが始まるのかもしれません。 
夜になると力関係は一転して、夜行性フクロウの天下です。 
塒入りしたカラスをフクロウが捕食するのかもしれません。 

この辺りの林床でたまに見つかる鳥の死骸は、フクロウのしわざだった可能性が出てきました。 
関連記事(半年、1年前の撮影)▶  


昼間にフクロウと出会えた状況は、神垣健司『森の賢者 フクロウ』に書いてある通りでした。
フクロウは極めて警戒心が強く臆病な野鳥である。そのため人が近づいたときには、人が気づく前に飛び去って姿を消してしまう。そのため人がフクロウを見ることは非常に難しいのだ。ただ、フクロウを目撃できるケースが2通りある。ひとつは昼間、カラスに追い出されて森から出てきたとき、もうひとつは夜に道路際などで獲物を探しているときである。ただ、こうした機会に出会うことは稀である。(第3章:森に生きる p32より引用)



※【追記】 
猛禽に対してモビングするカラスの鳴き声だけから、カラスの種類を区別できるでしょうか? 
Perplexity AIに質問すると、以下の回答を得ました。
結論から言うと、単純な聞き分けは難しいらしい。
 
モビング中は通常時と異なる緊迫した状況であり、以下の点が考えられます: ハシボソガラスは威嚇時に「グワララ」など濁った声で鳴くことが多い3。 ハシブトガラスも威嚇時には澄んだ声だけでなく濁った声を出すことがあるため、通常の鳴き声からの区別が難しくなる場合がある。

【アフィリエイト】 

2025/03/13

倒木が散乱するスギ防風林で早春に縄張り争いするホンドタヌキの群れ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年3月下旬

シーン0:3/19・午後14:06・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
多数の風倒木が散乱している平地のスギ防風林で、根返りスギの根元に掘られた「根曲がり巣穴a」をトレイルカメラで監視しています。 
春の繁殖期に何か野生動物が住み着いてくれるでしょうか? 
林床にまだ少しだけ残雪があります。 


シーン1:3/25・午前1:36(@0:04〜) 
深夜に奥の真っ暗なスギ林の中から野生動物2頭が現れました。
その目が爛々と白く光り、カメラの方を向いています。 
左手前の獣道から別個体のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が偵察に行くと喧嘩になり、激しい追いかけっこが始まりました。 
唸り声やワンッ♪と軽く吠える声が聞こえます。 


シーン2:3/25・午前1:38(@0:36〜) 
2分後に画面左の獣道をタヌキが右奥に向かって回り込んで行きました。 
闇夜の林内で白く光る眼が動いています。 
しばらくすると、右下から別個体が登場。 
右から回り込んで奥へ立ち去りました。 

別アングルで設置した監視カメラにはなぜか今回の騒動が何も写っていませんでした。 



※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】
幼獣同士の追いかけっこ遊びならともかく、タヌキの成獣同士でこんな激しい争いを見るのは初めてです。 
もしかすると、この辺りは隣接する縄張りの境界で、紛争地帯なのかもしれません。
根曲がり巣穴aを巡る争いとは考えにくいので、繁殖期に特有の発情した♀を巡る♂同士の争いなのでしょうか? 
( 発情期でタヌキが荒ぶっている?)



つづく→

2025/03/07

死んだニホンアナグマから乗っ取った巣穴を巡るホンドタヌキ同士の争い【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年3月下旬 

ホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が死んだニホンアナグマMeles anakuma)から乗っ取った営巣地(セット)を自動センサーカメラで見張っています。 


シーン1:3/25・午前1:50・気温1℃(@0:00〜) 
冒頭から2頭のタヌキが巣口R付近をうろついていました。 
(もしかすると、出巣Rした直後なのかもしれません。) 
左の個体aが、2つの巣口LRの中間地点で落枝の匂いを嗅いでから、自分の首筋を擦り付けました。(@0:16〜) 
何か気に入った匂いを自分の身にまとおうとする、「匂い付け」の行動なのでしょう。 
その様子を見ていた右の♂個体bが正面からゆっくり近づいて、互いに鼻先の匂いを嗅いでから、なぜか相手に襲いかかりました。 
喧嘩の鳴き声(唸り声)♪が聞こえます。 

※ 鳴き声が聞き取れるように、動画の一部は編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


襲いかかった♂個体bが相手aから離れて奥の林内に入り、ミズキ灌木の根本に排尿マーキングしました。 
このとき左後脚を持ち上げたので、性別が♂と判明。 
(冒頭のシーンで、♂bは侵入者aに気づいて出巣Rした直後だったようです。) 

巣外の騒ぎを聞きつけて、別個体cが巣穴Rから外に飛び出してきました。 
タヌキcがゆっくりaに近づいたものの、今度は喧嘩になりませんでした。 
次にcは♂bの方へ近づいて行きました。 
追い払うかどうか、反応が気になるところですが、1分間の録画が打ち切られてしまいました。 

真暗闇で相手が見えませんから、敵か味方(パートナー)か匂いで確認するしかないようです。 
巣穴を巡る縄張り争いなのか、♀を巡る争いなのか、何か小競り合いが生じているようです。 

aが縄張り内で匂い付けの行動をしたこと自体がbへの挑発行動とみなしたようです。 


シーン2:3/25・午前1:52(@1:00〜) 
右に居る2頭が、巣穴の現在の主である♀♂ペアのようです。 
そのうちの1頭♀cが巣穴Rに入りました。 
もう1頭♂bが巣口Rで身震いしてから、♀cの後に続いて入巣Rするかと思いきや、更に別個体dが右下隅の暗がりから登場しました。(@1:15〜) 
そのタヌキdは、麻痺した下半身を引きずって歩く個体でした。 


タヌキ♂bは、背後の「いざりタヌキd」を気にせずにそのまま入巣Rしました。 
巣口LRの中間地点に残った個体aは、巣口Rに近づくと、落葉したマルバゴマギ灌木の根元に首筋を擦り付けて再び匂い付けをしました。 
前回とは匂い付けした対象物が異なります。 
いざりタヌキdと対面しても、互いに知り合いのようで、タヌキcは無反応でした。 
cdは敵対しないので、血縁関係(別の♀♂つがいまたは兄弟姉妹?)なのでしょう。 

その後、いざりタヌキdが♂b♀cペアに入巣Rを許されたかどうか、非常に気になるのですが、残念ながら続きが録画されていません。 
(拒まれたと予想しています。)


【考察】 
2分間の動画で4頭のタヌキが登場する、目まぐるしい展開になりました。 
♂b♀cつがいが、この巣穴Rの新しい主のようです。 
そこへ余所者aが現れて、トラブルになったようです。 

早春はタヌキの繁殖期ですから、♀を巡る♂同士の争いなのか、それとも巣穴を巡る縄張り争いかもしれません。 
♀c♂bは自分の営巣地のあちこちに排尿マーキングして縄張り宣言をしているはずです。 
余所者タヌキaはそのマーキングの匂いを自分の体に擦りつけてから、巣穴に侵入してちゃっかり住み着く作戦だったのかもしれません。(化学擬態) 
ホンドギツネがホンドタヌキの巣穴を乗っ取る前にも、似たような行動が見られました。(タヌキがマーキングした地面に転げ回って匂い付け) 

余所者タヌキaの意図を♂bが見抜いたからこそ、aが縄張り内で匂い付けの行動をしたこと自体がbへの挑発行動とみなしたようです。 

麻痺した下半身を引きずって歩く(いざり歩く)タヌキdも心配です。 
どうやら顔見知りの家族群の中の1頭が(交通事故で?)半身不随になったようです。 
それとも、巣穴を巡る縄張り争いでタヌキ同士が死闘を繰り広げ、大怪我を負ったのでしょうか? 

この2日後(3/27)の晩からセットの端でニホンアナグマの死骸をタヌキが食べ始めました。 
その中の1頭が、「いざりタヌキ」でした。 



2025/02/26

繁殖池でショウジョウトンボ♂による縄張り防衛飛翔

 

2023年7月中旬・午前10:55頃・くもり 

山麓で沢の水が溜まった池の上空で2匹の赤トンボが飛び回っていました。 
高速で往復すると、2匹とも山側の方へ飛び去り、見失ってしまいました。 
何が起きたのか分からなかったので、1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう。(@0:16〜) 

新井裕『トンボ入門』によると、
真夏の池を飛び回っている真っ赤なトンボを見たらショウジョウトンボと思ってほぼ間違いない。(p143より引用)
どうやら、この池で縄張りを張って♀を待ち構えているショウジョウトンボ♂(Crocothemis servilia mariannae)が、侵入したライバル♂を追い払おうとしているようです。 
実は翌年の同時期に同じ池の岸辺で休んでいるショウジョウトンボ♂の写真が撮れました。(写真を公開予定) 


井上清、谷幸三『赤トンボのすべて』でショウジョウトンボについて調べると、まさに私が観察した通りの記載でした。
♂は成熟すると全身が真っ赤になり、夏中池の上を忙しく飛び回ったり草の上に止まったりして♀を待ち受けています。(中略)抽水植物と沈水植物が多く水面の開けた平地の池を好み、成熟♂は抽水植物の葉などに止まって♀を待ち受けていますが、他の♂が近づくと執拗に追い回します。(p132より引用)
wikipediaでショウジョウトンボの生態を調べると、なかなか充実した記述がありました。
オスは単独で池の縁に強い縄張りを持ち、縄張りの縁に沿って力強く哨戒飛行をする。他のオスが飛来すると斜め20cm弱の距離に位置関係を保ち、地形に合わせて低空編隊(にらみ合い)飛行を見せる。やや下側を飛ぶのが地主である。時に激しく羽音を立てて格闘するが、メスの飛来にはおおらかである。 雄の飛翔は速くてパワフルであり、風に乗ってゆっくり飛ぶことはなく、哨戒飛行の後はすぐに縄張り内のお気に入りの基点に止まり警戒を続ける。(中略)オスが定着すると一日に数度の格闘を目撃でき、負け去るオスは直線的に稲田上を高速で視界から消える

ショウジョウトンボ♀♂の交尾行動がまた独特で面白いらしいのですが、私はまだ観察できておらず、今後の課題です。
ショウジョウトンボは体色の性的二型が顕著ですから、野外で配偶行動を観察するのに適していそうです。
その前に私はまず、ショウジョウトンボの♀を見つけられるようにしないといけません。

ところで、周囲に聞こえる鳥の鳴き声はホトトギス♂(Cuculus poliocephalus)でしょうか。 
囀りさえずり)の節回しが独特の方言になっています。 


【アフィリエイト】 

2025/01/16

スギ林縁で追いかけっこ、横枝に飛びつきブランコ遊び、格闘を繰り返してはしゃぎ回るニホンザルの群れ

 

2023年12月中旬・午後15:30頃・くもり 

夕方の山麓を遊動するニホンザルMacaca fuscata fuscata)を追跡したら、スギの植林地まで来ました。 
おそらく猿たちは、ここを今晩眠るねぐらとするのでしょう。 
ところが、若いニホンザルたちはまだ遊び足りないようです。 
薄暗くなってきたスギ林縁ではしゃぎ回っています。 

林縁に立ち並ぶスギの横枝に掴まった子猿が、しなって揺れる枝の感覚を楽しんでいます。 
別の若い個体がキキキッ♪とかカカカッ♪などと鳴きながら激しく走り回り、追いかけっこが始まりました。 
せっかく山から降りてきて塒入りしたのに、塒のスギ林を再び離れ、急斜面の土手を登り返しています。 

追いかけられて逃げる個体が急斜面を林縁まで駆け下りると、スギの横枝に飛びつき、追手をかわしました(一時避難)。 
猿の体重でしなる枝を利用して、ターザンごっこのようなブランコ遊びをしてから地上に降りました。 
それを見た追手も同様にブランコ遊びをしました。 

土手に座って仲間が遊ぶ様子を見物している個体もいます。 
途中から別個体も走ってきて、ブランコ遊びに合流しました。 
追いかけっこしながらスギ林内に駆け込んでも、また走って土手まで戻ります。 
若いニホンザルたちは、スギ林縁の横枝を使ったブランコ遊びのスリルが大好きなようで、何度も飽きずに繰り返しています。 
土手のあちこちで追いかけっこが繰り広げられていて、どこを撮ったらよいのか目移りしてしまいます。 

いつもとは逆に、猿がスギ林縁から土手を少し駆け上がり、頭上のスギ横枝に飛びついてブランコ遊びをすることもありました。 (@2:00〜、@4:22〜)
このパターン(三角跳び?)は初めて見たかもしれません。 

土手からスギの枝葉に飛びつく際に、枝の選択や目測を誤ると、しなる枝とともに猿は地面に落ちて引きずられてしまいます。 (@3:25〜)
幸い怪我はなかったようですが、上手く遊ぶには反復学習が必要みたいです。 
スギの枝を掴み損ねた個体は、ブランコ遊びが上手くいかない苛立ちからか、腹立ち紛れにスギの枝葉に噛み付きました。 (@2:05〜)

土手を登る途中で立ち止まり、左足の裏についたゴミを手で払う個体がいました。 (@5:28〜)
スギの落ち葉を踏んでしまい、足裏に刺さったのかな? 
それを見ていた別個体が挑発するように、土手からスギ枝葉に飛びついて、相手の目の前でブランコ遊びを始めました。 
すぐに軽い取っ組み合いになり、2頭は暗いスギ林内へ走り去りました。 

逃げる相手に追いついて対峙しても、深刻な喧嘩にはならず、軽い小競り合いをするだけでした。 
(立ち止まって追手を待ち構えることもあります。)
腕を振ったり猫パンチをしたりして、相手を追い払いました。 
遊びの一環で、ふざけて軽く格闘しているだけのようです。 
格闘遊びの際に鳴き声はほとんど発してませんでした。

一連の遊びの行動は以前にも同じ地点で何回か観察しています。 
季節も時間帯も違いますが、おそらく同じ群れに代々伝わる遊びなのでしょう。 
猿のブランコ遊びを土手の上から見下ろすのではなく、土手の下から改めて撮影したかったので、今回ようやく目標を達成することができました。 

ニホンザルたちが大袈裟にはしゃぎ回ってスギの横枝を繰り返し揺らしてるのは、もしかすると、近くでしつこく撮影を続ける私に対する威嚇誇示(ディスプレイ)の意味合いもあったりするのでしょうか? 
なんとなく、私の目を意識して、私に見せつけているような気もしました。
塒のスギ林から私に早く立ち去って欲しいのかもしれません
ニホンザルの威嚇誇示と言えば、木揺すり(枝揺すり)が有名です。 
ヒトが近くに居るときしか、この飛びつきブランコ遊びをやらないとしたら、それはそれで面白いですね。
無人カメラを設置して、猿の行動を監視してみたいものです。

12月はニホンザルの交尾期なのに、今回はしゃぎ回っていたのは発情していない若い個体ばかりでした。 
顔や尻が真っ赤になっていないことから分かります。 
つまり、追いかけっこや小競り合いに見えたのも、交尾相手を巡るシリアスな喧嘩ではありません。 
一方、発情した成獣たちは求愛や交尾行動で忙しくて、遊ぶ暇もないのでしょう。 

※ 猿の鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。




余談ですが、動画の冒頭で聞こえる謎の鳴き声が気になります(@000〜0:50) 。
今まで聞いたことのない不思議な鳴き声を文字に表す(聞きなし)のは難しいのですけど、「Wrrrrrrrrreeee!」とか「Krrrrrrrrrrrreeeee!」「Grrrrrrrrrrrreeeee!」のように聞こえました。
途中で鈴を転がすような巻舌のような不思議な鳴き声です。 
後半は尻上がりに音程が上がりました。 

私の頭上のどこか樹上でニホンザルが鳴いているようですが、その姿を見つけられませんでした。(映像公開予定?)
眼の前で他のニホンザル個体による面白い行動が次々と展開されるので、辺りを見回して鳴き声の主を探すのも我慢して動画撮影を続けました。
後回しにするつもりでいたら、謎の鳴き声は止んでしまいました。

この鳴き声は、ニホンザルの繁殖期と何か関係があるのでしょうか? 
それとも、迷子になった子猿が不安になって母親を呼んでいるのかな? 
謎の鳴き声の意味をあれこれ調べてみたのですが、よく分かりません。
ここから先の解釈は、まったくの的外れかもしれませんが、個人的な備忘録として残しておきます。 

小田亮『サルのことば: 比較行動学からみた言語の進化 (生態学ライブラリー)』を読み返してみると、おそらく私が聞いた鳴き声は、ニホンザル♀による発情音、その中でもトーナルコールではないかと予想しました。 
私は目の前に居た別個体の動画撮影に集中していたために、樹上で鳴き声を発した個体を見ていませんが、おそらく意中の♂と接触する前の段階だったのでしょう。
 ニホンザルにとって秋は恋の季節である。1年のうち秋から冬にかけてしか発情しないニホンザルの♀は、この時期には顔を真っ赤にし、「クゥーァー」あるいは「ギャッギャッギャッ」という音声(発情音)をひっきりなしにあげている。(p89より引用)
発情している♀は顔を真っ赤にし、しきりに発情音をあげている。やがて♂が1頭近づいてくる、あるいは♀の方から接近していくのだが、そこですんなりと交尾に至るわけではない。交尾期以外は、オトナの♂と♀はめったに接近することはない。♀にとって、大きく力の強い♂は恐ろしい存在なのだ。しかしながら、性的欲求は♂に近づくことを求めている。(中略)馬乗りと馬乗りのあいだにも、ときには♀が逃げたり、グルーミングをしたりして、かなり時間が空くことがある。そのあいだ、♀は激しく発情音を発するのである。 
 ♀の発情音は、その音響的特徴によって大きくふたつに分けられる。耳で聞いただけでもだいたいの区別はつくのだが、周波数分析をしてみた(中略)。ひとつは、伊谷によって、<uyaa><ugyaa>などと記載されている、比較的長くて雑音の少ない音声であり、もうひとつは、<ka・ka・ka・ka...>と記載されている、短くて雑音成分の多い音声である。前者をトーナルコール、後者をアトーナルコールと呼ぶことにした。(中略)♂との接触前にはトーナルコールが期待値より多く発せられているのに対し、♂との接触後にはアトーナルコールの方が期待値より多くなっていた。どうやら交尾相手の♂との距離によって違う種類の発情音が使われているようだ。(p94〜95より引用)
ニホンザルが性的に活発なのは早朝だ。(p97より引用) 
・どうやら、♀は発情音(アトーナル:しぐま註)を発することで他個体の注意をひき、妨害行動を誘発することで♂をふるいにかけていると考えられる。(p98より引用) 
性的二型が大きな種において発情音が発達しているという結果は、まさに♀の発情音が♂間競争を煽っているということを裏付けているものである。(p103より引用)
 

1999年に出版されたこの本の内容は少し古いかもしれないので、AI Perplexityで質問した回答によれば、
ニホンザル♀のトーナルな交尾音は「ウァー」という尻上がりの声でビブレーション(振動)がかかっている。比較的明確な音程や調子を持つ音声です。 オスとの距離が遠いときは、トーナルな交尾音が多く使われる。

問題は、ニホンザル研究者が♀による発情音(トーナルコール)と呼んでいる鳴き声を実際に試聴して聴き比べたいのに、いくらネット検索しても見つからないことです。 
YouTubeや「動物行動の映像データベース」などに鳴いている様子の動画をニホンザル専門家がアップロードしてもらえると助かるのですが…。 
私の検索の仕方が下手なだけかもしれないので、音声ファイルまたは動画の在処をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非教えてください。 

仕方がないので、この動画に含まれる謎の鳴き声を後で声紋解析してみます。
上記書籍の図4-1(p96)に掲載されたアトーナルコールおよびトーナルコールのサウンドスペクトログラムと比べてみれば、分かるはずです。

もしも謎の鳴き声に関する私の解釈が正しければ、♀の発情音で誘引された他の♂たちが交尾の邪魔をして、それによって一連の騒動(はしゃぎ回りに見えた)が巻き起こったのかもしれません。
「カカカ…♪」という鳴き声は、威嚇や喧嘩の際に発するのかと私は今まで思っていました。
しかし、はしゃぎ回っていた個体は未発情の若い個体ばかりだったこと、交尾期前の夏にも同じブランコ遊びが見られたことが説明できなくなります。

野生ニホンザルの鳴き声が伴う行動を動画でしっかり記録して正しく解釈するのは、なかなか大変です。
理想的には、バウリンガル(犬用)やミャウリンガル(猫用)のように、ニホンザルのさまざまな鳴き声の意味や感情を音声翻訳してくれる機器や携帯電話アプリが登場することを期待します。

2025/01/03

ママコナの花で吸蜜中のミドリヒョウモン♀を追い払うアリ【ハイスピード動画】

 



2023年8月下旬・午前11:05頃・晴れ 

低山の尾根道に咲いたママコナの群落でミドリヒョウモン♀(Argynnis paphia)の吸蜜シーンを240-fpsのハイスピード動画で撮ってみたら、ちょっと面白い事件が起きていました。 
近づいてきたクロアリ(種名不詳)のワーカー♀がミドリヒョウモン♀の足(右中脚跗節)に噛み付いて、ママコナの花から追い払ったのです。
蜜源植物を防衛する占有行動でしょうか。
アリに足先を噛まれたミドリヒョウモン♀は、驚いて飛び去りました。

2024/12/01

落葉後の木を激しく揺すって威嚇誇示♪するニホンザル♂(木揺すり行動)

 

2023年12月中旬・午後15:05頃・くもり 

山麓を流れる水路沿いに遊動してきた2頭のニホンザルMacaca fuscata fuscata)のうち、先頭個体(発情した♂成獣)に注目して下さい。 
2頭は谷を渡る水路橋のたもとまでやって来ました。 
後続個体については別の記事しました。

先行♂個体は橋の下の谷を覗き込んで、群れの仲間の動向を気にしています。 
特に、この時期はニホンザルの交尾期ですから、♀成獣を探しているのかもしれません。 

先行する♂が谷の対岸から水路橋の手摺を伝い歩きでこちらにどんどん渡って来ます。 
このとき私は谷の此岸で突っ立ったまま撮影に集中していました。 
遊動中のニホンザルにしてみれば、私はまるで「この橋渡るべからず」と意地悪に通せんぼしているように見えたはずです。 
さあ、近づいてくるニホンザル♂はどうするでしょうか? 
「猿に道を譲ってあげたら良いのに」と言われそうですが、遊動する野生ニホンザルの群れを見つけた途端に私はその場にフリーズ(静止)し、心を無にして(気配を消して)撮影観察を始めたのです。 
今までの経験上、私が少しでも動くとニホンザルはてきめんに警戒して逃げ出してしまうはずです。 

先行する個体は、橋の手摺から横の落葉高木(樹種不明)にひょいと跳び移りました。 
このとき股間に紅潮した立派な睾丸が見えたことから、発情♂と判明。 
樹上で落葉後の枝を激しく揺すりながら大声で吠えました。 
猿が乗って激しく揺すっている枝がボキッと折れたら谷底に落ちるのではないかと心配になります。 
明らかに私の方を向きながら木揺すりしたことから、進路をふさぐ私に退いて欲しくて、威嚇してきたようです。 
橋の下の谷に散開して採食遊動している群れの仲間(特に発情♀)に向けての存在アピールも兼ねているのかもしれません。(ヒトに立ち向かう俺って勇敢だろ? 見て見て!) 
しかし木揺すり行動は過去にも見ていて想定の範囲内だったので、私は何も反応しませんでした。 
私はニホンザルとは決して目線を直接合わせず、少し俯いてカメラのバックモニターをひたすら注視していました。
私を追い払うどころか無視されたので、発情♂の威嚇誇示はわずか7秒間で終わりました。 

その木揺すりを見ていた群れの他のニホンザルたちの反応が気になります。
しかし、私は発情♂にズームインしてその行動を撮影するのに集中していたので、遠くに居る他個体の反応を同時に知ることが出来ませんでした。
後続の若い♀(跛行個体)は、木揺すりに驚いたり怯えたり感心するなどの反応を特に何も示しませんでした。

発情♂は樹上から再び水路橋の手摺に戻ろうとジャンプしたものの、着地に失敗してあやうく落ちかけました。(猿も木から落ちる?) 
手摺に無事登り直すと、伝い歩きで更に近づいて来ます。 
水路橋を渡り終えそうになると、発情♂はまたもや手摺から横の落葉性高木へと身軽に飛び移りました。 
そのまま木を下って地上に戻り、邪魔な私を無事に迂回できました。 

1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:46〜) 
この♂個体は右耳の耳介が無いことに気づきました。 
過去の喧嘩で食いちぎられたのかな? 

木揺すり威嚇誇示するニホンザルはいつも♂なのか?(男性ホルモンが関わる攻撃性なのか?)という疑問がわきました。
文献検索すると岡山県の餌付け群で長期観察した研究成果の学会発表がヒットしたので、ありがたく抄録を読んでみました。
中道正之; 山田一憲. ニホンザルの木ゆすり行動. In: 霊長類研究 Supplement 第 39 回日本霊長類学会大会. 日本霊長類学会, 2023. p. 34-34. 
♂の方が頻度が高いものの、♀も木揺すり行動をすることはあるそうです。

中心部オスは、交尾期だけでなく、非交尾期も木ゆすりを行ったが、音声を伴う木ゆすりは交尾期に多く、非交尾期では少なかった。他方、周辺部オスや集団外オスの木ゆすりは交尾期に集中し、しかも、音声を伴った木ゆすりの割合が中心部オスよりも有意に高かった。(中略)尚、28歳の高齢αオスは木ゆすりを全く行わず、目立つ攻撃行動もわずかであった。メスの木ゆすりのほとんどは、αメスとその娘たちによって、非交尾期に行われ、音声を伴うことはほとんどなかった。以上の結果から、目立つ攻撃行動をメスに行うことが困難であった周辺部オス、集団外オスは、音声を伴う木ゆすりを行うことで、メスに自身の存在を知らせ、引き付ける木ゆすりの効果(広告効果)をより高めていたと思われる。他方、中心部オスはメスに対する目立つ攻撃行動が可能だったので、音声を伴う木ゆすりの割合が低くなったと思われる。

下線部を元に素人が勝手に解釈すると、今回、交尾期に鳴きながら木揺すりした発情♂は、群れ内の順位が高くない個体(周辺部♂)で♀にアピールしていた、という可能性もありそうです。
しかし今回は明らかに対ヒト(観察者)の木揺すり威嚇行動に見えたので、ニホンザル同士のディスプレイに注目した研究結果を当てはめるのは不適切かもしれません。
ポイントとなるのは、猿は近くで観察する私のことなど実は眼中になくて木揺すり行動したのか?、という点です。
当地のニホンザルは餌付けしなくても、ときどき遭遇する私に少しずつ慣れてくれたので、私を無視して自由に振る舞ってくれたのなら観察しやすくて助かります。

この後も同じ群れで遊動するニホンザルが次々に水路橋を渡ってきたのですが(動画公開予定)、木揺すり威嚇した個体は他にいませんでした。
だとすれば、唯一木揺すりした♂個体はいわゆる「ボス猿」的なα♂だったのかもしれない、と考えたくなります。

2024/10/26

越冬用巣穴に籠城して巣口をガードするニホンアナグマと巣外をうろつく別個体の小競り合い【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年12月中旬・午前2:57〜3:17 

ニホンアナグマMeles anakuma)の越冬用巣穴Lから深夜に1頭の個体aが顔を外に出したり引っ込めたりして周囲を警戒しています。 
激しい唸り声がしたので何事かと思ったら、左から別個体bがやって来ました。 
巣口Lのアクセストレンチで2頭が対峙しても、激しい喧嘩は勃発しませんでした。 
その後もアナグマbは緩慢な動きで巣口Lの周囲をうろついています。 

アナグマbが巣内に入れて欲しいのに、アナグマaが門衛のように巣口Lをがっちりガードして拒んでいるようにも見えてきます。 
アナグマbは越冬できる巣穴を探し歩いている余所者の個体なのでしょうか? 
巣外をうろつく個体bはα♀(右目<左目)のような気もするのですけど、はっきりしません。 
α♀(右目<左目)なら、力関係で一番上のはずだったのに、まさか縄張り争いに負けて越冬用巣穴から締め出されたのかな?

アナグマbが一旦セットから離れると、アナグマaが巣口Lから外に出て見送り、辺りを警戒しています。 
侵入者bを激しく追いかけてセット(越冬用営巣地)から真剣に追い払ったようには見えません。 
しばらくすると、アナグマbがまたこっそり戻ってきました。 
門衛aと巣口Lで並んでも喧嘩にはなりませんでした。 

アナグマbが立ち去る前に獣道で座り込んだのは、スクワットマーキング(匂い付け)の意味もあったのかもしれません。 
獣道を右上奥に立ち去ったのかと思いきや、獣道の途中で未練がましく佇んで侵入のチャンスを伺っているようです。 
その気配を感じているようで、門衛aは警戒を緩めずに、巣口Lをしっかりガードしています。 

戻ってきた侵入者bが再びセットを右から左に横切り、巣口Rに近づくと、またもや激しい唸り声が聞こえました。(@4:36〜) 
唸り声と言うかフガフガ♪というような鳴き声で、繁殖期の求愛声(ジェジェジェビーム♪)と似ている気もします。 
それを聞いたアナグマaは怖がって(警戒して?)巣口Lの奥に引っ込みました。 
おそらく、隣の巣穴Rの主が威嚇して侵入者bを追い払ったのでしょう。

侵入者bがセットから離れると、門衛aは巣口Lの外に出てきて周囲を警戒しますが、決して遠くまでは行きません。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
素人目には、巣穴に入りたい個体と、入れたくない個体の静かな攻防戦に見えました。 
これがもし早春なら♂が♀の巣穴に求愛(夜這い)に来て拒まれたのだろうと解釈するのですが、撮影時期が初冬なので、いくらなんでも早すぎます。
越冬用の巣穴を巡ってアナグマ同士で争奪戦があるのでしょうか? 
もしかすると越冬用巣穴には定員があって、家族全員を収容できないのかもしれません。 
それならアナグマは穴掘りが得意ですから、越冬に備えて秋の間に巣穴を広く深く掘り広げる時間はいくらでもあったはずです。 
もしかすると、この越冬用巣穴は男子禁制なのかもしれません。

秋まで頻繁に見られた幼獣同士の格闘遊びの延長、あるいは誤認によるニアミス威嚇♪だった可能性もあって、よく分かりません。 
アナグマの個体識別をしっかりしないことには、解釈が難しいのです。 

これは何か重要な事件を記録した動画のような気がするのですが、別アングルで設置したトレイルカメラが不調で(電池切れ?)何も写っていないのは残念でした。 
2台の監視カメラで動画を撮れていれば、互いに補完し合って事件の全貌が掴めたはずです。 



2024/10/22

帆翔するトビと追い回すカラスとの激しい空中戦(野鳥)

 

2023年10月上旬・午後16:30頃・くもり・日の入り時刻は午後17:16 

広大な田園地帯でトビMilvus migrans)が刈田から飛び立ちました。 
夕方は上昇気流が弱いようで、帆翔が安定せず、高度がなかなか上がりません。 
その様子を動画に撮り始めたら、カラス(種名不詳)の群れが嗄れ声を上げながら飛来しました。 
集団ねぐらに向かって飛んで行く途中のようです。 
カラスの群れはトビの下を通り過ぎたのですが、1羽のカラスがトビに対して単独でモビング(擬攻撃)を始めました。 
繁殖期ではないので、カラスの全個体がモビングに参加する訳ではなく、この辺りを縄張りとする個体だけが天敵の猛禽を追い払うようです。 

裏山の方へ飛んで逃げるトビをカラスが執拗に追い回しています。 
トビは右に左に旋回したり高度を上下に少し変えたりすることで、背後から迫るカラスの攻撃を上手くかわしています。 
カラスが一方的に攻撃するだけで、小回りの効かないトビは反撃しません。
そもそもトビは生きた獲物を狩る猛禽ではないのです。
逃げるトビの鳴き声は聞き取れませんでした。 
カラスはようやく諦めて飛び去りました。 
遠かったので、カラスの種類がハシボソガラスCorvus corone)かハシブトガラスCorvus macrorhynchos)か見分けが付きませんでした。 


※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

2024/10/11

越冬用営巣地に侵入したホンドタヌキに突進して追い払うニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年12月上旬・午後20:55頃


シーン1:12/4・午後20:53・気温-1℃(@0:00〜) 
平地の落葉した二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する営巣地(セット)にある晩、ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が単独で現れました。 
画面の右に行きかけたタヌキが左を振り返ってじっと見ています。 

やがて、巣穴の主である丸々と太ったアナグマが左から登場しました。 
異種の2頭が少し離れて対峙しています。 
暗闇で互いに相手の姿をどのぐらい見えているのでしょう? 
視覚ではなく嗅覚で相手の存在を認識しているのかもしれません。 

巣穴の主であるアナグマの方がやはり強気で、侵入者タヌキに向かって突進しました。 
しかしアナグマは本気で喧嘩(格闘)するつもりはなくて、威嚇してタヌキを追い払うだけのつもりだったようです。(ブラフのブル・チャージ) 
アナグマの剣幕に驚いたタヌキは慌てて右へ逃走しましたが、アナグマはそのまま巣穴Rに入りました。 
タヌキに突撃しようとしたら、目の前に巣口Rが現れて減速したのかもしれません。 
アナグマは巣口Rの右で座って地面に尻を擦り付け、縄張りを主張する匂い付けを行ったようです(スクワットマーキング)。 
次に、タヌキが居た地点で残り香を嗅ぎ回っています。 
侵入者を深追いすることはありませんでした。 


シーン2:12/4・午後20:53(@1:00〜) 
アナグマがタヌキに向かって突進する様子は、別アングルでも同時に撮れていました。 
おそらくタヌキがセットに侵入した気配を感じて巣穴Lから外に出てきたのでしょう。 
あるいは、外出からセットにちょうど戻ってきたアナグマがタヌキと鉢合わせしたのかもしれません。)

アナグマの個体識別ができていませんが、ここで出産育児した♀(右目<左目)でないことは確かです。 
アナグマはタヌキに向かって黙って突進し、威嚇の鳴き声を発していませんでした。 (奇襲攻撃?)



シーン3:12/4・午後20:58・気温0℃(@1:26〜) 
4分後に何者かが画面の左端を左へ立ち去りました。 
さっき逃げたタヌキがこっそり戻って来たのかもしれません。 


【考察】
生活圏が重なるニホンアナグマとホンドタヌキは、この二次林や餌場、溜め糞場などで頻繁にニアミスして互いに顔馴染みのはずです。 
縄張り内をそれぞれ匂い付け(マーキング)しているので、その匂いでも互いに認識しているはずです。 
実際にニアミスしたシーンをしっかり撮れたのは初めてかもしれません。 


2024/10/08

越冬用巣穴で小競り合いの後にスクワットマーキングするニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年12月上旬 

シーン0:12/4・午後12:59・くもり(@0:00〜) 
シーン0:12/4・午後13:45・晴れ(@0:04〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
平地の落葉した二次林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の越冬用営巣地(セット)を新旧2台旧機種のトレイルカメラで見張っています。 
画面の奥に見える常緑の低い茂みはヒメアオキの群落です。 


シーン1:12/7・午前2:03(@0:07〜) 
深夜に左からゆっくり登場したアナグマ♂aが巣口Lの手前でぼんやり佇んでいます。 
素人目には顔つきが♂に見える(鼻面が短い)のですけど、どうでしょうか? 
ようやく左に引き返したところで、奥のヒメアオキ群落の奥に侵入者(別個体♂b)の白く光る目が右に動いています。 
手前のミズキ灌木の陰でアナグマがガルルル…♪と鼻を鳴らすような唸り声を発しました。
(鳴き声の主が♂aとは限りません。) 

画面奥の常緑ヒメアオキの茂みの奥から右に回り込んで獣道を駆けてきたのは、アナグマ♂bでした。 
セットに接近してきた侵入者♂aを巣穴の主♀が追い払ったのだと思います。 
アナグマの♂が♀の巣穴に夜這い(求愛)をするには時期が早すぎます。 
初冬のこの時期は、越冬用の巣穴を奪い合う争いがあるのでしょうか? 
残念ながら、同じシーンを別アングルの監視カメラでは撮れていませんでした。 


シーン2:12/7・午前2:04(@0:59〜) 
セットに駆けつけたアナグマ♂bがそのまま左へ行く途中で、巣口LRの中間地点の地面にスクワットマーキングしました。 
匂い付けで縄張りを主張したことになります。 


シーン3:12/7・午前2:07(@1:13〜)
ところが、約2分半後に2頭のアナグマが前後して獣道を右上奥へノソノソ立ち去る姿が写っていました。 
この2頭は敵対関係ではないということは、当歳仔(とうさいご)の兄弟なのかな?と素人が勝手に想像しています。 
通りすがりにオニグルミ立木の横に2頭が続けてスクワットマーキングして行きました。 


シーン4:12/7・午前2:10(@1:28〜) 
約3分後にまた左からアナグマが登場しました。 
おそらく巣口Rから外に出てきて周囲の様子を窺っているのでしょう。 
この個体は顔つきが♀のように見えます。 
巣口Lで立ち止まり、立ったまま後足で痒い腹を掻きました。 
そのまま巣穴Lに入るのではないか?と予想したのですが、カメラの電池が消耗していててそこまで見届けられませんでした。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


最近も外出から戻った2頭のアナグマが巣口R付近で小競り合いしてから入巣Rする謎の行動が記録されていました。

夜の森で各々がうろついていて、たまたまセット付近でニアミス(鉢合わせ)したときに、視力が悪いアナグマはびっくりして喧嘩腰に誰何してしまうのかもしれません。(誤認闘争?) 


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