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2025/01/17

厳冬期の雪山で夜に活動する冬毛のホンドテン【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月中旬・午前4:40・気温-2℃ 

雪山でスギの木の下に残されたニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr1をトレイルカメラで見張っていると、 夜明け前にホンドテンMartes melampus melampus)が久しぶりに登場しました。 
左手前から来てスギの背後に回り込みかけたものの、左奥へ立ち去りました。 
タヌキと違ってテンはカモシカの溜め糞場sr1には全く無関心で素通りしています。
テンが歩いても足跡が残らないということは、雪面は凍結しているようです。


画面の手前から奥に向かって斜面を見上げているアングルです。 
スギ林の雪面にはスギの落葉落枝が散乱しています。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 

せっかくトレイルカメラを旧機種から新機種に交換したのに、そして電池の残量は充分なのに、これ以降は月末2/29まで16日間も一切何も撮れなくなりました。 
トレイルカメラが活動限界になるほど過酷な低温環境なのか、それとも野生動物の往来が本当に途絶えてしまったのかもしれません。
厳冬期はトレイルカメラや乾電池を常に温めておきたいのですが、それにも電力を使うとなると、悪循環です。
ソーラーパネルと大容量のバッテリーを導入すべきかもしれませんが、ここは常緑のスギ林の中なので、晴れても日照不足が問題になりそうです。

2025/01/16

雪に埋もれたニホンカモシカの古い溜め糞を掘り返して食べるホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月上旬 シーン1:2/8・午前1:51(@0:00〜) 
雪山でスギの木の下に残されたニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr1をトレイルカメラで見張っていると、深夜にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が来ていました。 
鼻面を新雪の雪面に突っ込み、前脚で雪の下から何か餌を掘り出して食べました。 
まずは1.5倍に拡大した映像で穴掘り採食行動をご覧ください。 
続けてオリジナル(等倍)の映像でリプレイ。(@0:27〜) 
そこは11日前にカモシカが糞粒を大量に排泄した地点です。 

タヌキが食糞したとすれば、これで2回目になります。 

タヌキは空腹でもカモシカの糞塊を大量に食べ尽くすのではなく、少しずつ食糞するようです。 
雪の下に埋まっていますから(冷蔵・冷凍保存)、餌としての鮮度は保たれているのでしょう。 

厳冬期の雪山でカモシカの糞そのものではなく、そこに来ていた虫をタヌキが捕食していたという仮説はロマンがあります。
しかし今のところ、真冬の低温下で活動する昆虫のなかに獣糞に集まる者がいるという証拠がありません。 

溜め糞場sr1を離れて右へ立ち去る途中で、タヌキは雪山の斜面に立ち止まって何かしています。 
餌を探しているのだと思うのですが、後ろ姿のために何をしてるのか全く見えません。 
最後は右の渓谷へと立ち去りました。 


シーン2:2/8・午前1:54・(@1:16〜) 
2分10分後に、再びタヌキが写りました。 
低温のため監視カメラの起動が遅れ、タヌキの後続個体が右へ立ち去るところでした。 
雪面に新たな足跡がついているので、それを読み取ると、画面の下から来て斜面を右上へ登って行ったようです。 
♀♂ペアがつかず離れず餌を探し歩いているのでしょう。 

この後続個体は悪食(食糞)をしないで、カモシカの溜め糞場sr1を素通りしました。 
つまり、全てのホンドタヌキ個体がカモシカの糞を食べる訳ではありません。 
好き嫌いがあるようです。 
個体識別ができていませんが、2回とも同一個体のタヌキがカモシカの糞を食べたのかもしれません。 

タヌキも自分たちで溜め糞場を形成しますが、タヌキがタヌキの糞を食べることはあるのでしょうか?
私はまだ同種の食糞を見たことがありません。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→

2025/01/15

冬眠から一時的に目覚めて営巣地を元気にうろつく雪国のニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月上旬


シーン0:1/22・午後13:46・くもり・気温20℃(@0:00〜) 
平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が冬眠する営巣地(セット)を自動センサーカメラで見張り続けています。 
画面の左右に2つの巣口L、Rが開口しています。 
今季は異常な暖冬で積雪量が少なく、根雪が溶けて早くも林床の地面があちこちで露出しています。 


シーン1:2/8・午前5:08・降雪・気温0℃(@0:04〜)日の出時刻は午前6:35 

16日ぶりにアナグマが冬眠から覚醒して巣外に出てきました。 
ただし、前回(1/23)と同一個体かどうか私には見分けがつきません。 
前日(2/7)にホンドタヌキが巣穴Rに侵入したことが、アナグマの冬眠・覚醒リズムを乱したのかもしれません。
例えば、冷え込む夜に巣内で冬眠中のアナグマの横で侵入タヌキが添い寝して温めてくれた、なんてことがあるのでしょうか? 


雪が降る夜明け前に、アナグマが雪面の匂いを嗅ぎながら、右から左へ向かいました。 
冬眠明けなのに、この個体の足取りは珍しく軽快で、寝ぼけた様子もありません。 
体温が充分に上がった状態で、体調が良いのかもしれません。 
サーモグラフィカメラで撮影してみたいものです。
今回の気温(0℃)は前回(-1℃)とほぼ同じですから、気温が暖かくて体がよく動いた訳ではありません。

冬眠から覚醒したアナグマは、これから水を飲みに出かけるのか、それともアナグマ専用の溜め糞場stmpに向かったのかな? 
雪国の厳冬期にアナグマが外を出歩いても食べる餌が見つかるとは思えません。 
つまり、秋の食いだめで蓄えた脂肪を頼りに春まで絶食状態で耐え忍ぶのでしょう。 


シーン2:2/8・午前5:11・降雪(@0:33〜)
約2分半後に、同一個体と思しきアナグマが左から戻ってきました。 
巣口Rの匂いを嗅いでから周囲を少しうろつき、再び巣口Rに戻ってきました。 
営巣地を歩き回るアナグマの足跡が残らないということは、雪面は固く凍結しているようです。


シーン3:2/8・午前5:12・降雪(@1:32〜) 
結局このアナグマは巣穴Rには入らず、左へ移動しました。 
次は巣口Lの匂いを嗅いでから、左に立ち去りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
この個体は顔つきと体型から♀と思われます。 
この♀個体が外出から戻って帰巣するシーンがなぜか監視カメラには写っていませんでした。 
手前から来て入巣Rするルート(画角内で縦方向の動き)だと動体検知センサーが反応しにくく、撮り損ねもあり得ます。 
トレイルカメラをもう1台追加して別アングルからも同時に監視すれば、アナグマの巣外活動を撮り漏らすことも減るはずですが、他のプロジェクトも同時並行していて機材が足りません。

これがもし♂ならば、春の交尾期に備えて冬のうちから早くも♀の営巣地を探索している余所者♂である可能性も考えられます。 


冬眠中のニホンアナグマ♀には着床遅延という重要なイベントがあります。 
イタチ科に属するアナグマ♀は、春の出産直後に♂と交尾し、その受精卵(初期胚)は冬眠中にようやく着床し、春に出産するのです。 
たとえ♂と交尾・受精しても、秋から冬にかけて♀の栄養状態が悪ければ着床・妊娠しないのです。
通常は胚が子宮に侵入すると直ちに着床するが、イタチ科やクマ科、鰭脚類(アシカ科・アザラシ科・セイウチ科)、カンガルー、ラットなどの一部の動物種の胚は子宮内で浮遊状態を保ち、条件が整ってから着床する。これを着床遅延ちゃくしょうちえんと呼ぶ。 (wikipediaより引用)

AI geminiの解説によると、
ニホンアナグマの着床遅延は、非常に興味深い繁殖戦略の一つです。春から夏にかけて交尾を行うにも関わらず、受精卵が子宮に着床するのは冬眠中の2月頃と、かなり遅れるという現象です。この仕組みは、厳しい冬の環境下で子育てをするという、アナグマならではの適応戦略と考えられています。


つづく→ 


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2025/01/14

ニホンアナグマが冬眠する巣穴にこっそり潜り込んで一休みするホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月上旬 

根雪の積もった平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が冬眠している営巣地(セット)を自動撮影カメラで見張っています。 
近所のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が通ってくる様子をまとめました。 


シーン1:2/6・午前0:30・降雪・気温-2℃(@0:00〜) 
ボタ雪が激しく降りしきる深夜に単独行動のタヌキaが左からやって来ました。 
雪が積もっても開口しているアナグマの巣口Rにタヌキaは頭を突っ込んで、しばらく中の様子を伺っています。 
驚いたことに、タヌキaはそのまま狭い巣口Rをくぐり抜けて奥に押し入りました。 
主であるアナグマは巣内でぐっすり冬眠中らしく、怒って侵入者を追い払うことはありませんでした。 
これでまさしく「同じ穴のむじな」状態になりました。 
このまま一晩一緒に過ごすのでしょうか? 
地下に堀り巡らされた巣穴の構造がどうなっているのか全く分かりませんが、もしかすると複数の居住区に分かれていて、越冬期間も空き部屋があるのかもしれません。

タヌキa





シーン2:2/6・午前0:49・降雪(@0:40〜) 
18分後にタヌキaは同じ巣穴Rから外に出てきて左に戻っていきました。 
監視カメラの起動が遅れて出巣Rの瞬間を撮り損ねたのですが、雪面に残るタヌキの足跡を映像の境目で見比べると、新たな別個体が右から登場したのではないことが読み取れます。 
家主のアナグマが怒ってタヌキaを追いかけることもありませんでした。


シーン3:2/6・午後23:18・気温-4℃(@0:56〜) 
明るい日中は誰もセットに現れず、深夜になると雪は降り止んでいました。 
林床の雪面がボコボコなのは、落葉樹上から落雪したのでしょう。 
右から単独でやって来たタヌキbが、開口したアナグマの巣口Rを見つめ、ゆっくり頭を突っ込みました。 
その後に入巣Rしたかどうか残念ながら見届けられず、1分間の録画時間が終わりました。 

尻尾の黒班を比べると、前夜に来た「穴があったら入りたい」タヌキaとは別個体でした。 
アナグマの巣内で一休みしてから22時間半前に出巣Rした別個体タヌキaの残り香を気にしていたのかもしれません。 

タヌキb



シーン4:2/7・午後19:10・降雪・気温0℃(@1:56〜) 
翌日の晩は再び雪が降っていました。 
巣穴R内で一晩アナグマと同居したタヌキbが巣穴Rから左外に出てきた直後のように初めは見えました。 
しかし湿った新雪に残る足跡を注意深く読み解くと、この個体cは画面の手前から来て右から回り込んで巣口Rの手前を左に通り過ぎていただけと分かりました。 
トレイルカメラのセンサーが反応しにくいルートで登場したのです。 
しかも尻尾の黒班を見ると、タヌキbとは明らかに別個体で、タヌキa=cかもしれません。 
タヌキaはアナグマのもう一つ別な巣口Lの匂いを嗅いでから、最後は手前に立ち去りました。 

タヌキc=a?




※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
ホンドタヌキの尻尾に現れる黒斑を頼りに個体識別を試みると、2晩に複数個体(2頭?)が代わる代わるニホンアナグマの越冬用営巣地にやって来ていました。 
冬眠中のアナグマが巣内で寝静まっているのを確認できたのか、タヌキは大胆にもアナグマの巣穴に潜り込みました。 
ただしアナグマを追い出して完全に巣穴を乗っ取るつもりはなく、ときどき一時的な避難所(休憩所、シェルター)として間借りさせてもらうだけのようです。 
雪が激しく降る夜だったので、餌を探し歩く途中でアナグマの巣穴に立ち寄って休憩したのでしょう。

巣穴の中に何か餌があるのでしょうか?
巣内の様子を見ることはできないので、推測するしかありません。

アナグマは脂肪蓄積型の冬眠動物ですから、野ネズミのように巣穴の中に餌を貯食したりしません。
アナグマの巣穴に居候している野ネズミを侵入タヌキが捕食したり、その貯食物を盗み食いすることはあり得るかもしれません。

まさか、冬眠中で無抵抗のアナグマを侵入タヌキが隙あらば捕食しているのでしょうか?
想像するだけでも、かなりのホラーです。
しかし、18分の滞在後に巣外に出てきたタヌキの体は血に染まっていませんでした。
もしタヌキがアナグマの捕食者ならば、普段からアナグマはタヌキに対してもっと敵対的に接するはずです。
「同じ穴の狢」のような慣用句が昔からあるということは、タヌキはアナグマを獲物として捕食するよりも、穴掘り職人として利用(片利共生)する方が進化的に得策なのでしょう。

アナグマの巣穴の中で集団越冬する虫をタヌキは捕食していたのかもしれません。
実際、秋にはカマドウマと思われる穴居性の昆虫を目当てに夜な夜なタヌキを始めとする野生動物が捕食に通っていました。
巣穴の主であるアナグマや野ネズミも、巣内で虫を見つけ次第、捕食しているはずです。
したがって、巣穴の中で集団越冬する虫がいたとしても、既にほとんどが捕食され尽くしたのではないかと思われます。

つづく→

2025/01/12

外出中に新雪で埋もれた巣口を雪かきしてから中に入るホンドタヌキ♀♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月上旬

根雪の積もった休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)の越冬用営巣地を自動撮影カメラで見張っています。 


シーン1:2/2・午後22:00・気温-2℃(@0:00〜) 
雪が降る晩に、タヌキが単独で雪原を手前から奥へ向かって歩いて行きます。 
営巣地は新雪で覆われ、他の動物が残した足跡はありませんでした。 
タヌキの足は雪面にあまり深く残らないことから、凍結した雪面にうっすらと新雪が積もっている状態だと分かります。 
タヌキは 一直線に巣口Mに向かったものの、留守中に家の玄関(巣口M)が新雪にすっかり埋もれていたので、当惑したように雪面の匂いを嗅いでいます。 
身震いしてから雪原をあちこち彷徨き、雪面に鼻面を突っ込んでは匂いを嗅ぎ回ります。 (迷子になった)

この映像は赤外線による暗視動画であることを思い出してください。 
つまり、現場は真っ暗な夜の雪原です。 
タヌキの目にはタペータムがあるので、暗くても雪明りでなんとかぼんやり見えるのかもしれません。 

タヌキは巣口Mに戻ってきて前足で雪を軽く掘り、雪かきしています。 
入巣Mしたかどうか見届ける前に、残念ながら1分間の録画時間が終了してしまいました。 
この時点では、てっきり余所者タヌキが営巣地を訪ねて来た(家主の安否が心配?)のかと私は思いました。 



シーン2:2/3・午前2:06・気温-2℃(@1:00〜) 
約4時間後、日付が変わった深夜にも雪が降り続けています。 
2頭目のタヌキが雪原を手前から奥へ向かう動きに、監視カメラのセンサーが反応しました。 
タヌキの後ろ姿で尻尾の(付け根の)模様を見比べると、シーン1に登場したタヌキとは別個体bであることが分かります。 
【参考文献】野紫木 洋『オコジョの不思議』p74の模式図

4時間前のタヌキが雪原を歩いた足跡が未だくっきりと新雪に残っていることから、この間に積雪量はほとんどなかったことが伺えます。 
その古い足跡を読み解くと、営巣地から立ち去った足跡が無いので、シーン1のタヌキaは無事に入巣したのだと推理できました。 
自分の足跡を忠実に辿って手前に戻った可能性も考えましたが、前後の映像を見比べても足跡が完全にマッチする(変化なし)ことから却下しました。

一方、タヌキbは先行者aの付けた足跡を辿って巣口Mに来ると、匂いを嗅いで点検しました。 周囲を見回してから、ゆっくり巣穴Mに入りました。 


【考察】 
採餌中のタヌキは♀♂ペアで行動を共にすることが多いです。 
しかし今回は、(途中から?)別行動で採餌していたようです。 
餌の乏しい厳冬期は、各自が行動範囲を広げて餌を探し歩く必要があるのでしょう。 

外出から先に戻ったタヌキaが、留守中に新雪で埋もれてしまった巣口Mをなんとか探り当て、雪かきをしてから入巣Mしたようです。 
4時間も遅れてようやく営巣地に戻った後続タヌキbは、先行個体の足跡を辿って、雪原を迷わずに帰巣Mできました。 


つづく→


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2025/01/11

雪山でニホンイノシシの採食痕があるスギ林に来た野生動物たち:ニホンノウサギ・ホンドテン・ホンドタヌキ・ニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬〜2月上旬 

シーン0:1/30・午後14:10・くもり・気温14℃(@0:00〜) 
明るい時間帯にたまたま撮れた現場の様子です。 
雪が積もった里山のスギ植林地でニホンイノシシSus scrofa leucomystax)がスギの根元の雪や地面を掘り返して採食していました。 
イノシシは近づく私を警戒して一目散に逃げてしまったのですけど、その直後にトレイルカメラを現場に設置しました。 
同一個体のイノシシが戻ってきて、スギ林床で採食を再開してくれるのではないかと期待したからです。 
もしかするとイノシシはねぐらを掘っていたのかもしれない、という疑いもありました。 

 画面の手前から奥に向かって緩斜面が下っています。 
左端が雪に埋もれた林道になっていて、私が奥に向かって下山したスノーシューの足跡が雪面に残っています。
つまり、林道の横に生えたスギの根元に掘られた最大の採食痕を監視しています。 

夜な夜なやって来る野生動物たちを一気にまとめてご覧ください。


シーン1:1/31・午前3:05・気温-3℃(@0:04〜) 
現場にまず現れたのは、冬毛のホンドテンMartes melampus melampus)でした。 
未明に雪の緩斜面を奥から手前へ登り、歩き去りました。 
雪面に足跡が残らないということは、凍結していているようです。 
手前の雪面は、トレイルカメラの赤外線照射で白飛びしてしまっています。


シーン2:1/31・午後21:52・気温2℃(@0:11〜) 
次は、同じ日の晩に冬毛のニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)がひょこひょこと手前に来ました。 
やはりスギ林床の雪面はクラスト状態で、ノウサギの足跡が残りません。 


シーン3:2/2・午前5:02・降雪・気温-6℃(@0:22〜) 
2日後の雪が降る未明にも真っ白なノウサギが登場しました。 
しかも2羽が同時に写りました。 
交尾期が始まる頃なのに、2羽のニホンノウサギがニアミスしても喧嘩や追いかけっこにはならなかったのが不思議です。 
すでに♀♂ペアを形成していたのでしょうか?
2羽の性別も行動から読み取れませんでした。 

ノウサギは、イノシシが掘り返したスギの根元には近寄りませんでした。 


シーン4:2/2・午後18:53・降雪・気温-4℃(@1:04〜)日の入り時刻は午後17:05。 
同じ日の日没後に、♀♂ペアと思われるホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が手前からやって来ました。 
 先行個体が、イノシシが掘り返したスギの根元で匂いをじっくり嗅ぎ回っています。 
その間に後続個体は、近くでおとなしく待っています。 

雪が降り続き、雪面に薄っすら積もった新雪に、タヌキの歩いた足跡が残ります。 
後続個体は先行個体を追い越し、真っ直ぐに斜面を下りました。 
しかし先行個体は、少し先のスギの根元でもイノシシの掘り返した採食痕が気になり、寄り道して調べています。 
ようやくパートナーの後を追って立ち去りました。 

1.5倍に拡大した上で、リプレイしてみましょう。(@1:49〜) 
タヌキは新雪に鼻面を突っ込んで餌を探していますが、何も食べなかったようです。 


シーン5:2/6・午後20:32・気温-4℃(@2:35〜) 
4日後の晩に、ニホンカモシカCapricornis crispus)が緩斜面を登って手前に向かって歩いて来ました。 
監視カメラの真下を通ったのに、カメラの存在には全く気づいていないようです。 
新雪の雪面にカモシカの蹄跡が残りました。 


シーン6:2/7・午前2:25・気温-5℃(@2:46〜) 
日付が変わった深夜に、冬毛のニホンノウサギが画面の右下隅にちらっと写りました。 
気温が低いと、トレイルカメラの起動が遅れがちになります。 
尻尾が長くないので、テンではありません。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正や逆光補正を施しています。 
トレイルカメラの照射する赤外線が手前の雪面に反射して白飛びしてしまい、ちょっと見苦しいからです。 


【考察】 
私とニアミスして逃げたイノシシが採食現場に戻ってこないことがはっきり分かったので、この地点での監視は1週間で打ち切り、トレイルカメラを撤去しました。 
後で調べてみると、イノシシは縄張り意識が薄いらしいです。 
山中でヒトと遭遇して驚いて逃げたら、わざわざ戻ってくることはなく、逃げた先で自由気ままに採食することが予想されるそうです。 
どうしても自分で納得するまで確かめたかったので、たとえ空振りに終わっても満足です。 

副産物として、雪山で暮らす様々な野生動物(お馴染みの面々)が監視カメラに写ってくれたので、退屈することはありませんでした。
イノシシが掘り起こした採食痕に興味を示したのは、タヌキだけ(しかも、ペアのうち片方だけ)でした。

2025/01/10

夜霧の雪山で塒のあるスギ林に来ても眼下腺マーキングするだけで立ち去る若いニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬 

シーン1:1/19・午後12:32・くもり・気温12℃(@0:00〜)
里山の斜面に植林されたスギ林で、ニホンカモシカCapricornis crispus)のねぐらを自動撮影カメラで見張っています。 
画面の手前から右上奥に向かって斜面が下っています。 
今季は記録的な暖冬のため、積雪量が少ないです。 

カモシカの登場シーンを以下にまとめました。 
撮影効率があまりにも悪いので(カモシカが滅多に来ない)、退屈しのぎに余計なことを始めました。 
たまに来る昼行性のニホンリスSciurus lis)のために、オニグルミの堅果を給餌しようと、白いプラスチックの箱をスギの幹に固定してみたのです。
しかし、この作戦は全くの空振りに終わりました。 
私の給餌法が良くないのか、それともリスは警戒心が強いのでしょうか? 


シーン2:1/23・午前0:57・霧?・気温1℃(@0:04〜) 
画面全体がうっすらと曇っています。 
夜霧が発生しているのか、それともレンズの表面が薄っすらと凍りついてしまったのかもしれません。 

深夜に画面の右下から現れたカモシカの後ろ姿が写っています。 
斜めに倒れかけたスギ幼木の枝葉の匂いを嗅ぎ、顔の眼下腺を擦りつけてマーキングをしたようです。 
角がまだ細いので、若い個体のようです。 

雪面の匂いを嗅ぎながらゆっくりと奥に歩き、スギの立木に辿り着きました。 
根元や幹の匂いを嗅いでいる途中でふと見上げ、クルミを入れた白い給餌箱に気づいた様子です。 
若いカモシカが首を精一杯伸ばしても、給餌箱には全然届きません。 
(大雪が積もれば、届いてしまうかもしれません。) 
前足を立木に掛けて後足で立ち上がることはしませんでした。 


シーン3:1/23・午前1:00(@2:04〜) 
念入りにスギの幹や雪面の匂いを嗅いでから、カモシカは左にゆっくり立ち去りました。 
ところがしばらくすると、同一個体が左から手前に戻って来ました。 

残念ながら今回も結局、ここに塒入りしてくれませんでした。 
私が余計な異物(リスへの給餌箱)を塒のスギ立木に設置したりしなければ、警戒しないで塒で寝てくれたでしょうか? 
しかしカモシカは夜行性ですから、この時間帯に寝ないはずです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 



【考察】 
トレイルカメラによる塒の監視は、これで諦めて打ち切ることにしました。 
ニホンカモシカが雪山でスギの木の下に寝てくれたのは、結局1回切りでした。 
その後は複数個体のカモシカが代わる代わる来ては、通りすがりに眼下腺マーキングしたり排尿したりしただけです。
少なくとも、この辺りを縄張りとするカモシカ個体群が使う獣道(巡回路)になっていることは確かです。 

登場した複数個体のカモシカが同じ地点の塒を代わる代わる使って寝ることはありませんでした。 
監視カメラの存在に気づいて警戒し、ねぐらの位置を変更してしまったのか、それともカモシカが頻繁に塒を変えるのはごく普通のことなのか、この1例だけではまだ何とも言えません。

2025/01/09

真冬の雪山を夜に1〜2頭で歩き小便でマーキングするホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 




2024年1月下旬〜2月上旬

シーン0:1/30・午後12:54・晴れ(@0:00〜) 
シーン0:1/30・午後13:38・晴れ(@0:04〜) 
明るい時間帯にたまたま撮れた現場の様子です。 
根雪の積もった里山で、スギ植林地に残されたニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr1を自動撮影カメラで見張っています。 
今季は異常な暖冬で降雪量が少ないのですが、林床の溜め糞は雪で覆われ、雪面にはスギの落葉落枝が散乱しています。 
画面の手前から奥に向かって斜面を見上げるアングルになっています。 

1〜2頭で行動するホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の登場シーンを以下にまとめました。 


シーン1:1/31・午前1:03(@0:14〜) 
深夜にタヌキの先頭個体が、スギ立木の木の下を通って左から右へ斜面を横切りました。 
雪面は固く凍結していて、タヌキが歩いても足跡が残りません。 
雪面の匂いを嗅ぎながら右の渓谷へ向かいました。 

50秒後に、後続個体♂が左から足早に登場しました。 
雪面から突き出た細い落葉灌木(樹種不明)の小枝をくぐる際に、排尿マーキングしました。 
そこは、以前にもタヌキが通りすがりに排尿マーキングした地点でした。 
左後脚を上げて小便したことから、♂と判明。 
そうなると、先行個体はパートナーの♀なのでしょう。 
♂も先行個体♀の後を追って右上の谷へ向かいます。 
ホンドタヌキ♂による排尿マーキングを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:49〜) 


シーン2:2/3・午後21:57・(@1:11〜) 
単独行動のタヌキが晩に画面上を対角線状に(左下から右上へ)横切ったのに、監視カメラの起動が遅れました。 
クラストした雪面にうっすらと新雪が積もり、その上にタヌキの足跡が残されています。 


シーン3:2/3・午後22:38・(@1:18〜) 
45分後、斜面の雪面に新たな足跡が付いていました。 
またもや監視カメラの起動が遅れ、画面の右端にタヌキ?の尻尾がちらっと写っていただけでした。 
タヌキはいつものように、右の谷へ向かいました。 
一瞬の登場シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:21〜) 


シーン4:2/4・午後13:43・晴れ(@1:26〜) 


シーン5:2/9・午後18:27・(@1:33〜) 
6日後の晩に、単独行動のタヌキが珍しく左に向かう姿が写っていました。 
雪面に残った足跡を読み解くと、下から現れ、スギ立木に向かってから左へ逸れて行ったようです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


2025/01/08

ホンドタヌキの越冬用営巣地で野ネズミを狩ろうとする雪国のホンドギツネ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬

シーン1:1/22・午後14:17・くもり・気温21℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
根雪の積もった休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が越冬する営巣地を自動撮影カメラで見張っています。 
巣穴の入口は少なくとも3つあり、そこからタヌキの足跡が雪面に残されています。 
今季は異常な暖冬で積雪量が少なく、雪が溶けて地面が一部露出しています。 

ホンドギツネVulpes vulpes japonica)の登場シーンを以下にまとめました。 


シーン1:1/24・午後18:12・降雪・気温-3℃(@0:03〜) 
2日後の雪が激しく降る晩に、キツネが新雪の雪原を右から左へ横切りました。 
画面の左端で立ち止まると、タヌキの営巣地を振り返りました。 
巣穴から漂う臭いや物音に気づいたのかな? 
雪が激しく降る日のタヌキは、日没後も巣穴Lから遠出しないですぐに帰巣したことが、雪面に残る足跡から読み取れます。 
キツネはタヌキの巣穴Lへ忍び寄り、雪面の足跡の匂いをじっくり嗅いでいます。 
巣口Lに顔を突っ込んで覗き込んだものの、中に無理やり押し入ることはありませんでした。 


シーン2:1/28・午前4:31・気温-1℃(@1:03〜) 
4日後の未明に、キツネが左からやって来ました。 
新雪の雪面には、約7時間前に通ったタヌキの足跡が、雪に埋もれかけています。 
キツネはタヌキの足跡に気づくと立ち止まり、匂いを嗅ぎました。 
うっかり「足跡を見つける」と書きそうになりましましたが、暗闇でキツネがどのぐらい見えているのか疑問です。
キツネは目のタペータムが発達していますから、雪明りだけでも夜目が効くのかもしれません。

キツネは雪原をショートカットしてタヌキの巣口Mに近づいたものの、横を素通りしました。 
巣口Mを通り過ぎたことに気づいたのか、雪面の匂いを嗅ぎながら、ゆっくり引き返してきました。 

最後にキツネは何か獲物の気配を雪の下に感じ取ったらしく、後足の筋力で高く飛び上がり、揃えた前足で獲物に襲いかかろうとしました。 
しかし、その結末(狩りの成否)を見届けることなく、無情にも1分間の録画が打ち切られてしまいました。
うーむ、残念無念…。 
監視カメラの録画時間を1分間から2分間に延長すべきかもしれません。 
まるでアクションの一番良い瞬間で静止画にして余韻を残したまま劇的に終わらせる「フリーズフレーム」(またはフリーズショット)という映画の手法のようです。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@2:07〜)、意外にもキツネは後足を先に着地していました。 
着地の振動に驚いた野ネズミが雪の下から外に飛び出してくるのを期待して、次に前足と口で獲物を狩ろうとする作戦なのかもしれません。 



※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
ホンドギツネはおそらく、ホンドタヌキの越冬用巣穴に居候する野ネズミの気配を雪の下に察知して、狩ろうとしたのでしょう。 
この休耕地にも野ネズミが出没することが既に分かっています。 

これまで私は山中または森の中にトレイルカメラを設置することが多く、写った野ネズミ(ノネズミ)アカネズミApodemus speciosus)またはヒメネズミApodemus argenteus)だろうとみなしてきました。 
しかし、この撮影地点は田畑に隣接する原っぱ(休耕地)なので、ハタネズミMicrotus montebelli)の可能性もありそうです。 
キツネの狩りの成功確率はわずか2~3割らしいので、成功シーンを撮影するには辛抱強く観察を続けるしかありません。

あるいは、巣内に籠もったタヌキの動きを察知したキツネが、獲物と誤認して反応してしまったのだとしたら、それはそれで面白い話です。 
「タヌキの奴らを驚かしてやろう」というキツネの悪戯心だったりして…。




つづく→

2025/01/07

冬眠の合間に覚醒したニホンアナグマは巣外で歩行も覚束ない【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬 

シーン0:1/22・午後13:46・くもり・気温20℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
雪が積もった平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する2つの巣穴を同時に1台の自動撮影カメラで監視しています。 
今季は異常な暖冬で積雪が少なく、まるで早春のように林床の地面があちこちで露出しています。 


シーン1:1/23・午後18:41・気温-1℃(@0:04〜)日の入り時刻は午後16:54。 
真っ暗な晩に、巣穴Rから外に出てきたばかりと思われるアナグマが広場の地面に居ました。
鼻面を上げて風の匂いを嗅いでから、辺りをゆっくり歩き始めました。 
この個体は左右の目の大きさに差がなく、ここで出産・育児した母親♀(右目<左目)ではなさそうです。 
林床の濡れた(凍った)落ち葉の匂いを嗅ぎながら、ゆっくり進みます。 
冷たい残雪の部分をわざわざ歩くことはありませんでした。 
巣口Lへ近づいたものの、中に入ったかどうか、見届ける前に録画が打ち切られました。 


シーン2:1/23・午後18:46(@1:04〜) 
4分後、巣外をうろつくアナグマが、いつの間にか巣口Rまで戻ってきていました。 
巣口Rを塞ぐように生えた細いマルバゴマキの灌木が邪魔で歩きにくそうです。 
その細い木をまるで綱渡りのように伝って渡ろうとしたら、滑って転んでしまいました。 
立ち上がるのも難儀しています。 
生まれたばかりの幼獣ならともかく、成獣のアナグマがこれほど歩行が覚束ない状態なのは夏には見られませんでした。 
冬眠で体力が消耗しているようです。 
空腹と寒さで凍えているのかな? 
擬人化すると、まるで泥酔状態か足が痺れている状態のように見えます。 

地面の匂いを嗅ぎながら、ゆっくり右へ向かっています。 


シーン3:1/23・午後18:56(@2:04〜) 
8分後、アナグマは巣口Rに戻ってきていました。 
巣口Rから伸びるマルバゴマキの細い落葉灌木の幹の匂いを嗅ぎ、前脚を掛けました。 
まだ寝ぼけているのか、2本の灌木の狭い隙間に、なぜか体をねじ込もうとしています。 
進路を遮る障害物を迂回するのも億劫なのでしょうか? 
灌木の根元の匂いを嗅いでいます。 


シーン4:1/23・午後19:03(@3:04〜) 
6分後に監視カメラが再び起動したときにも、アナグマは巣口Rでぼんやり佇んでいました。 
辺りをキョロキョロ見回しているだけです。 
動きがあまりにも緩慢なので、5倍速の早回し映像でお届けします。 


シーン5:1/23・午後19:05(@3:16〜)
巣口Rでじっとしているアナグマの上半身がヒクヒクと震えているのは、体温を上げるための不随意運動(シバリング)なのでしょうか? 
冬眠から覚醒したアナグマの体温がシバリングで急上昇しているのか、サーモグラフィカメラで撮影できたら面白そうです。 
別の可能性として、咳をしてるのかと思ったのですが、音量を上げても聞き取れませんでした。 
雪がちらつき始めました。 


シーン6:1/23・午後19:10(@3:28〜) 
アナグマがようやく少し移動したと思ったら、すぐに体勢を崩して巣口Rの窪みに滑落しそうになりました。 
なんとか不格好に体の向きを変えました。 


シーン7:1/23・午後19:15(@4:12〜) 
4分後、アナグマはいつの間にか、セットの右端まで移動していました。 
真っ直ぐ巣穴Rに向かい、ようやく巣内に潜り込みました。 
緩慢だった動きが少しスムーズになったようです。 
体温が充分に上がり、運動機能が少し回復したのでしょうか? 
ところが、巣口Rを塞ぐ細い灌木(一種の防犯装置?)が邪魔で、乗り越えて入巣Rするのにもたついています。 
気温の高い夏にはスムーズに入巣Rできていたはずなのに、これほど苦労するとは、何か運動障害や神経障害を疑いそうになります。

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
私の手違いで、動画を公開する順番を逆にしてしまいました。 
この後しばらくしてから(1時間半後)、アナグマは再び巣外に出てきて巣材集めをしたのです。 

私は野生のニホンアナグマの観察を始めて未だ1年目なので、今回見られた行動が普通なのかどうか判断できません。 
異常な暖冬がアナグマの冬眠・覚醒リズムに悪影響を与えている可能性もありそうです。 
 冬のニホンアナグマは、トーパーという低体温(心拍数も下げる)の冬眠状態から定期的に目覚めるのだそうです。 
ときどき巣外に出て新鮮な空気を吸ったり体を動かして血流を回復させたりしないと、組織が壊死したりエコノミークラス症候群のようになったりするのかもしれません。 
まるで足がジンジン痺れたヒトを見ているようだと思ったのは、あながち間違いではなさそうです。 
しかし、これほど動きが緩慢で歩行も覚束ないのでは、巣外で天敵(腹を空かせたキツネやイヌなどの捕食者)に襲われたら、素早く逃げたり自分の身を守るために戦ったりできないのではないか?と心配になります。 


私がバイブルとしている本、金子弥生『里山に暮らすアナグマたち:フィールドワーカーと野生動物』には、「アナグマたちの冬」と題した章があります。 
筆者が関東のアナグマで調べた結果によると、
・(飼育下でも)5ヶ月間微動だにせずに眠り続けたわけではなく、10日から2週間眠り続けてはときどき目を覚ます、という状態だった。 
・母親と当歳の子どもたちは、生まれ育った巣穴ではじめての冬を一緒に過ごして、穴ごもり後の冬を一緒に過ごして、穴ごもり後の春になってから離れていく 
・穴ごもりによる越冬は、アナグマ属のすべて行うわけではない。(中略)今の所、ロシア極東の個体群と日本の個体群が穴ごもりをするとされているが、日本国内どこでも穴ごもりをするのか、世界のほかの地域ではどうなのか、今後研究が必要である。 (p72〜73より引用)
抜粋したポイントの2つ目については、私が観察しているアナグマでは当てはまらない気がしています。 
個体識別がろくにできていないのですが、少なくとも母親の姿を越冬用巣穴で見ていません。 


2025/01/06

新雪の積もったニホンアナグマの越冬用営巣地を横切る冬毛のホンドテン【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬・午前0:45頃・小雪・気温-1℃ 

雪の積もった平地の二次林で、ニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する営巣地(セット)を自動センサーカメラで見張っていると、小雪がちらつく深夜に冬毛のホンドテンMartes melampus melampus)がやって来ました。 
新雪が積もったセットを右から左へ横切り、後半は小走りになりました。 
ホンドテンは、雪の下に埋もれたアナグマの巣口LRには全く興味を示さずに素通りしました。 

林床の雪面にテン以外の足跡は全く付いていません。
映像をよく見ると、テンは尻尾の先をときどき雪面に引きずりながら歩いています。 
今後は雪面に残る足跡を読み解いてテンと見分けるためには、尻尾の跡も考慮する必要がありそうです。 


つづく→

2025/01/05

ニホンアナグマの越冬用巣穴が凍った雪の下に埋もれ、近所のホンドタヌキが安否確認に通う【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬~2月上旬

シーン0:1/22・午後13:46・くもり・気温20℃(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の状況です。 
平地の落葉した二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する2つの巣穴を同時に1台の自動撮影カメラで見張っています。 
今季は異常な暖冬で積雪が少なく、まるで早春のように林床の地面があちこちで露出しています。 

近所のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が1頭または3頭で立ち寄ったシーンをまとめました。 


シーン1:1/29・午前6:01・気温-3℃(@0:04〜)日の出時刻は午前6:43。 
久しぶりにアナグマの越冬用営巣地(セット)に雪が積もっていました。 
まだ真っ暗な夜明け前に、タヌキが単独で現れました。 
雪に埋もれたアナグマの巣口Rの窪みに興味を示し、雪面の匂いを嗅ぎました。 
固く凍結した雪面を歩いて左へ移動すると、巣口Lが雪に埋もれた地点にも立ち寄って匂いを嗅ぎ回ります。 
再び巣口Rに戻ってきました。 


シーン2:1/29・午前6:03(@1:04〜) 
25秒後に監視カメラが再起動すると、タヌキは巣口Rを離れて左へ立ち去るところでした。 
ぐるっと回り込んでから、画面下から再びセットに戻ってきて、またもやアナグマの巣口Rへ向かいました。 


シーン3:1/29・午前6:04(@2:04〜) 
つづけてタヌキは巣口Lを点検してから、またまたしつこく巣口Rに戻りました。 
最後はようやく左に立ち去りました。 


シーン4:1/29・午後21:35・気温-3℃(@2:47〜) 
夜行性のタヌキは、昼間は自分の巣穴で寝て過ごし、晩になるとまた採餌のために外出します。 
今回は3頭が一緒にやって来ました。 
♀♂つがいと子供から成る家族群なのか、それとも3兄弟(姉妹)なのか、私には分かりません。 

奥の林内から来た1頭が、林縁の落葉ミズキの根元に排尿マーキングしたようです。(@3:12〜) 
このとき左後脚を上げたかどうかはっきり見えず、性別不明です。 
その後で、このタヌキがアナグマの巣口Rを塞いでいる凍った雪を前足でガリガリと掘り始めました。 
しかし少し掘っただけで諦め、左へ立ち去りました。


シーン5:1/29・午後21:43(@3:47〜) 
7分後に、右から戻ってきたタヌキがアナグマの巣口Rの左で雪面の匂いを嗅いでいました。 
通りすがりに、雪で埋もれた巣口Lの匂いを軽く嗅ぎました。
左へ回り込んでから奥の林内に立ち去りました。 
途中で凍った雪面に座ると、後脚で痒い体を掻きました。 


シーン6:1/30・午前1:47・気温-5℃(@4:45〜) 
日付が変わった深夜に、単独行動のタヌキが右からやって来ました。 
雪面はクラスト状態で、足跡が残りません。 
凍った雪に埋もれたアナグマの巣口Rをチェックしてから、奥の二次林へジグザグに入って行きました。 
途中で落葉樹の根元で腰を落として、雪面に排尿マーキングしたようにも見えました。(@5:30〜) 
排尿姿勢から、この個体は♀かもしれません。 


シーン7:1/31・午前0:21・気温-5℃(@5:45〜) 
翌日も真夜中にタヌキが単独で右から登場。 
アナグマの巣口Lが雪の埋もれた地点をチェックしてから左へ。 


シーン8:1/31・午後19:48・気温-1℃(@6:11〜) 
同じ日の晩に、奥の落葉二次林へ入って行くタヌキの後ろ姿だけ写っていました。 


シーン9:2/3・午後22:38・気温-5℃(@6:27〜) 
3日後の晩遅くにも、足早に奥の二次林へ入って行くタヌキの後ろ姿が撮れていました。 

数日間雪の下に埋もれていたアナグマの巣口Rがいつの間にか開口していました。 
短い冬眠(トーパー)から目覚めたアナグマが巣内から雪を掘って外に顔だけ出したのかもしれませんが、その様子は撮れていませんでした。 
あるいは、アナグマの呼吸熱や体温で巣口を塞いでいた雪が自然に溶けたのかもしれません。
もしそうなら、アナグマの巣口から寒い冬に白い湯気が立ち昇るはずですが、こんな光景を私はまだ見たことがありません。 

凍結した雪面の上に薄っすらと新雪が積もり、そこにタヌキが残したばかりの足跡が残っています。 
せっかく久しぶりにアナグマの巣口Rが現れたのに、タヌキは立ち寄らずに素通りしていました。 


シーン10:2/5・午前0:45・気温0℃(@6:38〜) 
2日後の深夜、アナグマの巣口Rの開口部が少し拡大していました。 
雪原で地面が少しでも露出すると、晴れた昼間にそこを中心に雪解けが進みます。 

左から来たタヌキが通りすがりにアナグマの巣口Rの匂いを嗅いでから、右へ向かいます。 
この日も雪面は凍結しており、タヌキの足跡は残りません。 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
積雪量は少ないのですが、厳冬期で気温が下がり、林床の雪面がアイスバーンのように凍りました。 
アナグマが冬眠している巣穴の入口L、Rは雪の下に埋もれてしまいました。
夜な夜なやって来るタヌキは、見慣れた巣口の消失に戸惑っているようで、何度も調べています。 

こうしたタヌキの行動を童話の世界のように擬人化すると、近所に住むアナグマが無事かどうか、生き埋めにされていないか安否確認(生存確認)に通ってきているように解釈したくなります。 

アナグマの巣口が雪で埋もれて見えなくなった、さらに雪が凍って固く閉ざされた、という事が理解できずに戸惑っているとしたら、雪国の冬を初めて経験する当歳仔のタヌキなのでしょうか? 
巣口Rがあった地点の凹んだ雪面をタヌキは前肢で掘ろうとしたのに固く凍っていて、穴掘りの苦手なタヌキはすぐに諦めてしまいました。 

あるいは、タヌキはアナグマの心配をしている訳ではなく、アナグマの巣穴に居候している野ネズミの残り香を嗅ぎ取って、キツネのように興味を示しているだけかもしれません。
しかしそれだと、アナグマの巣口が再び開口した後にタヌキが興味を失って巣口を素通りするようになった理由が説明できません。

ところで、巣口を雪や氷で塞がれたら、内部で冬眠するアナグマは窒息しないのでしょうか? 
こういうときこそ、予備の換気口(空気穴)が必要です。 
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しかし、その空気穴は監視映像の画角の少し左外にあるために、雪が積もって凍っても開口状態を保って機能しているのかどうか不明です。 
やはりトレイルカメラをもう1台追加して換気口を監視すべきでしたが、他のプロジェクトも同時に並行しているので、カメラが足りず無理でした。




2025/01/04

雪山の斜面にニホンノウサギが縦横無尽に描く足跡の軌跡【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬・午後19:10頃および23:45頃 

シーン0:1/9・午後12:38・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
雪の積もった里山で、スギ植林地に残されたニホンカモシカ(Capricornis crispus)の溜め糞場sr1を自動センサーカメラで見張っています。 
今季は異常な暖冬で降雪量が少ないのですが、林床の溜め糞は雪で覆われ、雪面にはスギの落葉落枝が散乱しています。 
画面の手前から奥に向かって上り坂の斜面を見上げるアングルになっています。 

この地点で冬毛のニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)が登場したシーンをまとめました。 


シーン1:1/24・午後23:58・吹雪(@0:07〜) 
シーン2:1/25・午後2:47・吹雪(@0:14〜) 
動物は何も写っていないのですが、誤作動で撮れた映像で雪国の気象をお伝えします。


シーン3:1/25・午前7:11・くもり(@0:21〜) 
スギ樹上からときどきドサッと落雪すると、旧機種のトレイルカメラはそれに反応してしまいます。
林床には新雪が積もり、野生動物の足跡は全く付いていません。 


シーン4:1/26・午前9:43・くもり(@0:27〜) 
樹上からの落雪。 


シーン5:1/26・午後19:08・降雪(@0:33〜) 
新雪が積もった林床にノウサギが左から右へ横切った足跡が残っています。 
監視カメラの起動が間に合わなかったようです。 

雪が横殴りに降っていますが小雪程度で、吹雪とは言えません。 


シーン6:1/26・午後19:13・降雪(@0:38〜) 
5分後に再び監視カメラが起動したのですが、ノウサギの姿は写っていませんでした。 
しかし、雪面に残る足跡を直前の動画と見比べると、ノウサギが右奥から手前へ走ってきて古い足跡と交差していました。 


シーン7:1/26・午後23:42・降雪(@0:44〜) 
雪が降る深夜に斜面を右からトラバースして来たノウサギが、スギの木の手前を左に横切りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


低温下でトレイルカメラは動きの早いノウサギになかなか反応できていません。
それでも、雪面の雪質がパウダースノーの新雪だったため、ニホンノウサギの足跡から軌跡を読み解くことができました。


つづく→

2025/01/03

雪国のホンドギツネがニホンアナグマの越冬用営巣地で野ネズミ狩りに失敗【トレイルカメラ】

 



2024年1月下旬

シーン0:1/22・午後13:46・くもり・気温20℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
平地の落葉した二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する2つの巣穴を同時に1台のトレイルカメラで見張っています。 
今季は異常な暖冬で積雪が少なく、林床の地面があちこちに露出していて、まるで早春のようです。 

冬毛のホンドギツネVulpes vulpes japonica)が昼間に登場したシーンを以下にまとめました。 


シーン1:1/24・午前6:33・気温-3℃(@0:04〜)日の出時刻は午前6:47。 
夜に大雪が降った翌朝は晴れていました。 
日の出前でも充分に明るいのは、新雪のレフ板効果です。 

左から来たキツネが、アナグマの巣口Lの辺りで新雪の中に頭を突っ込んでいました。 
次に右の巣口Rに忍び寄ると、そこで匂いを嗅いでいます。 
顔を上げたキツネの鼻面には、雪が付着しています。 


シーン2:1/24・午前6:36・気温-2℃(@1:04〜) 
1分半後に監視カメラが再び起動すると、キツネが右から戻ってきていました。 
雪面の匂いを嗅ぎながら、アナグマの巣口Rの横を通り過ぎ、巣口Lに立ち寄りました。 
もしかすると、アナグマの巣穴に居候している野ネズミ(ノネズミ)の匂いを嗅ぎ取って、執拗に探しているようです。 
最後は獣道を手前に立ち去りました。 


シーン3:1/28・午前8:27・気温0℃(@1:40〜) 
4日後、小雪がちらつく朝にもキツネが現れました。 
林床の雪面がいわゆる「腐れ雪」(湿雪)で歩きにくそうです。 
キツネが一歩踏み出す度に足が雪の中にズボズボと沈みます。 

アナグマの巣口Rが雪で埋もれ、そこだけ雪面が窪んでいます。 
ホンドギツネは巣口Rの凹んだ雪面に鼻面を何度か突っ込んで匂いを嗅いでいました。
雪の下で動く獲物のかすかな物音を聞き取ってもいるようです。
やがて後足で立ち上がると、高く上げた前脚を揃えて雪面に打ち下ろしました。 
これはキツネによる典型的な野ネズミ狩りの行動です。 
同時に顔も雪の中に突っ込んで、逃げる獲物に噛みつこうとしています。 
しかし残念ながら獲物には逃げられたようで、キツネはすごすごと右に立ち去りました。 





【追記】
塚田英晴『野生動物学者が教えるキツネのせかい』を読むと、「狩りの方法」と題した章が設けられていました。
草やぶを見つめながら、まるで”ふりこ”のように、頭だけを左右にゆっくりかしげはじめます。そして、ゆっくりと後ろ足だけを曲げていき、徐々にしゃがみこむような姿勢をとったかと思うと、突然ななめ上向きにジャンプします。このとき、前肢を鼻づらの両わきにそろえた状態で、草むらの中に頭からつっ込んでゆきます。(中略)
 ネズミからすると、キツネの狩りの仕方は、まるで空から飛んでくるミサイル攻撃です。こうしたキツネのジャンプ、1~2mぐらいが多く、中には7.5mもの大ジャンプをすることもあります。(中略)狩りがうまくいく確率は2~3割ほどだといいます。(kindle版44%より引用)

続けて、キツネの狩りにおける聴覚の重要性について詳しく書いてありました。 


関連記事(同時期の撮影)▶ ホンドタヌキの越冬用営巣地で野ネズミを狩ろうとする雪国のホンドギツネ【トレイルカメラ:暗視映像】

2025/01/02

休耕地の越冬用巣穴が雪で埋もれ、近所のホンドタヌキ♀♂が心配して訪問?【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬 

シーン0:1/22・午後14:17・くもり・気温22℃(@0:00〜) 
雪が積もった休耕地でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が越冬する営巣地を自動センサーカメラで見張っています。 
今期は異常な暖冬で、積雪量がかなり少ないです。 
まるで早春のように、地面があちこちで露出しています。 


シーン1:1/27・午後21:35・降雪・気温-1℃(@0:04〜) 
新雪が少し積もっていました。 
小雪がちらつく晩に、手前から奥へ向かってタヌキaが単独で雪原を歩いています。 
新雪の雪原には足跡が皆無なので、巣ごもりしている家族とは別と思われます。 
もしかすると、血縁関係のある親戚(例えば、子別れした子供?)が実家に戻ってきて生存確認・安否確認に来たのかな? 
タヌキが歩く度に足が新雪にずぼずぼと深く潜りますけど、ラッセルするほどの深雪ではありません。 
巣口のあった位置が雪で完全に埋もれてしまい、タヌキは見つけられないでいます。 
鼻面を雪面に突っ込んで匂いで巣口の位置を嗅ぎ当てようとしても、結局は左に立ち去りました。 

手前から後続個体bが登場しました。(@0:54〜) 
♀♂ペアで行動していたのでしょう。 
先行個体aの足跡を辿って巣穴の方へ近づこうとするも、尻切れトンボで録画が打ち切られてしまいました。 


シーン2:1/29・午前3:49・気温-1℃(@1:04〜) 
2日後の晴れた未明に、♀♂ペアの先行個体aがまた手前から奥に向かって雪原を歩いて行く後ろ姿が写っていました。 
雪面には古い足跡が残っているものの、やや不明瞭です。 
タヌキが歩いた直後に足跡はほとんど残らないことから、凍結した雪面にうっすらと新雪が積もっている状態と推測されます。 
キツネの足跡(映像公開予定)を辿って進み、巣口に辿り着きました。 
巣口の匂いをひたすら嗅いでいます。 
入巣したかどうか見届ける前に、録画が打ち切られました。 


シーン3:1/29・午前3:58・気温0℃(@1:36〜) 
8分後に、監視カメラが再び起動すると、先行個体aはまだ巣口を見つけられずにいました。
巣口の雪を掘り起こすこともしていません。 
右から後続個体bが登場して、aと合流しました。 
垂らしていた尻尾を持ち上げてaの周りをうろつき、慎重に互いの匂いを嗅いで挨拶しました。 
やや緊張が見られるので、まだつがい関係ではないのかもしれません。 
この間、2頭の鳴き声は聞き取れませんでした。 

後続個体bも巣口を点検します。 
雪に埋もれた巣口の匂いを嗅ぎながら、その場でぐるぐる回っています。 

その間に、先行個体aは手前に歩いて来ました。 
雪面に足跡は残りません。 

擬人化すると、近所のタヌキ一家の安否を心配しにきたように見えてしまいます。 


シーン4:1/29・午前4:00(@2:36〜) 
先行個体aの後を追うように、後続個体も手前へ歩いて来ます。 


シーン5:1/29・午前6:10・気温-4℃(@2:43〜)日の出時刻は午前6:43。 
夜明け前に濃い霧が発生しました。 
早回しにすると初めて、手前から奥に向かって雪原を歩くタヌキがおぼろげに認識可能になりました。 
巣口で立ち止まり、雪面の匂いを嗅いでいます。 
タヌキが横向きになり、ようやく白く光る眼が見えました。 
ジグザグに歩いているので、タヌキだと思います。 
巣穴の主なら、雪原を迷いなく真っ直ぐ帰巣するはずなので、よそ者のタヌキだと推測しています。


シーン6:1/29・午後22:07・気温-4℃(@2:43〜) 
同じ日の晩になっても、今度は夜霧が発生しています。 
単独のタヌキが手前から奥に向かって歩き、雪原をうろついています。 


シーン7:1/30・午前4:18・気温-6℃(@3:08〜) 
相変わらず画面がぼんやり曇っているのは、霧ではなくてレンズの表面が低温で凍り付いてしまったのかもしれません。 
奥の雪原で、タヌキ?の白く光る眼がちらちら動いています。 


シーン8:1/30・午後17:36・気温1℃(@3:20〜)日の入り時刻は午後17:02。 
日没後の晴れた晩、監視カメラがなぜか誤作動しました。 
画面全体が鮮明に写るようになって一安心。
雪面に古い足跡が残っています。 


シーン9:2/2・午後15:26・晴れ・気温14℃(@3:23〜) 
3日後の晴れた昼間に撮れた営巣地の様子です。 
雪原に巣口が開口していました。 
雪面に古い足跡がうっすらと残っています。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
タヌキの個体識別ができていないので、ただの想像ですが、今回登場した個体は、この巣穴に普段出入りする主ではない気がします。 
近所に住む余所者(親戚?)のタヌキが単独またはペアで訪れ、雪の下に埋もれた巣穴の主の安否確認に来たのではないかと想像しています。 

別の可能性として、この巣穴で越冬していた♀♂ペアが、ある日採餌のために遠出している間に大雪が積もって巣口が完全に埋もれてしまい、雪原で迷子になってしまったという解釈もできそうです。 
タヌキは自力で地中に巣穴を掘る土木作業が苦手らしいのですが、雪で埋もれた我が家(自分の越冬用巣穴)の玄関を掘り出す雪かき作業も億劫なのでしょうか? 
ここ以外にも別宅があるはずなので、そこでしばらく過ごしている(ビバーク)はずです。 



2024/12/31

冬眠の合間に追加の巣材を集める雪国のニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬

シーン0:1/22・午後13:46・くもり・気温20℃(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の様子です。 
平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する2つの巣穴を同時に1台のトレイルカメラで監視しています。 
今季は異常な暖冬で積雪が少なく、まるで早春のように林床の地面があちこちで露出しています。 


シーン1:1/23・午後20:47・気温-2℃(@0:04〜) 
トーパーから覚醒して右の巣穴Rから外に出てきたばかりと思われるアナグマが、右端の林縁に居ました。 
ノソノソ歩いて右へ向かいました。 
何をしに行ったのでしょう?


シーン2:1/23・午後20:49(@0:20〜) 
約2分後に、アナグマが後ろ向きで右から戻ってきました。 
前脚で林床の落ち葉を大量に掻き集めながら巣内Rに搬入します。 
夏に見られた巣材集めと同じ行動ですが、今回は気温が低いせいか、ピョンピョン跳ぶように後退する動きはしませんでした。 
真冬の巣内はよほど寒いのでしょう。 
濡れている(凍っている)落ち葉に寝床としての断熱効果があるとは思えないのですが、無いよりましなのでしょう。 
自分の体温で落ち葉を乾かしてから寝床として使うのかな? 
あるいは、隙間風を防ぐために詰め込む巣材なのかもしれません。 
(それなら穴掘りの得意なアナグマは、土で隙間を埋めるかも?)
意外にも、巣材集めを繰り返すことはなく、この1回だけでした。 
翌日から再び大雪が降ったので、落ち葉掻きができる最後のチャンスでした。 
まさかアナグマに天気予報の能力があるのか?とまたひとつ謎が増えました。 

今季は異常な暖冬です。 
雪国に生息するアナグマにとって暖冬や地球温暖化が朗報なのかどうか、観察1年目ではまだ判断できません。 
積雪による断熱効果が期待できず、巣穴が地中の浅いところに掘られている場合、放射冷却現象の夜明け前などに巣内も零下までひどく冷え込むのではないかと想像しています。 

越冬に入ったアナグマは、冬眠の合間にたまに巣外へ出てきても、動きがとにかく緩慢でぼんやりしていました。 
今回は珍しく(久々に)、巣材集めという活発な行動を見れてよかったです。 



シーン3:1/23・午後21:02・気温-1℃(@1:11〜) 
12分後に再び出巣Rしたアナグマが、巣口Rの左で小刻みに震えています(体温を上げるためのシバリング?)。 
さっき巣材集めをしたアナグマと同一個体とは限らないので、注意が必要です。
(個体識別ができていません。) 
危なっかしい足取りで、巣口Rの横でマルバゴマギ落葉灌木の根元をうろついています。

右の林内へ向かう途中で林縁に座ったのは、スクワットマーキング(縄張りの匂い付け)かもしれません。 
この個体が巣材集めに行ったのかどうか、その後の動向がなぜか動画に記録されていませんでした。 


シーン4:1/23・午後22:33・降雪・気温-1℃(@2:11〜) 
1時間半後、アナグマが巣口Rの左に戻って来ていました。 
細いマルバゴマギ落葉灌木の根元をよじ登ろうとしてスリップし、地面に座り込みました。 
また緩慢な動きに戻ってしまいました。 
擬人化すると、まるで泥酔しているような、足が痺れているような、覚束ない足取りです。 
雪がちらつく中、頻りに振り返って監視カメラの方を気にしています。 
今回はあえて早回し加工せずに、アナグマの動きが緩慢な様子をお伝えしました。 


シーン5:1/23・午後22:42・降雪・気温0℃(@3:11〜) 
10分後、アナグマは営巣地(セット)をゆっくり回り込んでから、巣口Rに戻ってきました。 
巣口Rの手前で身震いしてから、ようやく中に潜り込みました。 
この個体は左右の瞳の大きさが均等だったので、ここで出産・育児した母親♀(右目<左目)ではないことだけは分かりました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


越冬中のニホンアナグマは、厳密な意味での冬眠ではなく、トーパー(torpor)と呼ばれる状態になります。 
トーパーとは、体温を一時的に環境温度近くにまで下げ、代謝を低下させる状態のことです。
冬眠する動物に比べて体温の低下幅は小さいものの、心拍数も通常の半分程度にまで低下します。(AIのGeminiに教えてもらいました。)
ニホンアナグマは冬眠期間中に体温の周期的な低下と上昇がみられ(異温性)、体温が上昇したときに覚醒して巣外活動するのだそうです。
異温性(heterothermy)とは、恒温動物において部位、もしくは生理状態の違いにより体温が大幅に異なることをいう[1]。(wikipediaより引用)


2024/12/30

雪の少ない真冬に根曲がり巣穴に通うホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬~2月上旬

シーン0:1/22・午後12:56(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
暖冬で積雪が少なく、ほとんど溶けてしまいました。 
平地のスギ防風林で、画面の手前から奥に向かって根こそぎ倒れたスギ風倒木(根返り)の根元に掘られた「根曲がり巣穴」を自動撮影カメラで監視しています。 

この巣穴aにはニホンイタチMustela itatsi)が越冬しているらしいことが分かっています。 
実はすぐ近く(画面の右背後)にもう一つ同様の巣穴bがあり、そこにもイタチが出入りしていたのですが、撮影機材が足りなくて2つの巣穴a,bを同時に監視できません。 
ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が単独で登場したシーンをまとめました。


シーン1:1/23・午前4:22(@0:04〜) 
夜明け前に、タヌキが根曲がり巣穴aに巣穴に頭を突っ込んでいました。
この後でタヌキが巣穴aの中にしっかり入ったかどうか、見届けられず、残念でした。
わずか2秒間の短い動画しか撮れていなかったからです。 
電池の残量は充分にあるはずなので、miniSDカードの異常(書き込みエラー)なのでしょう。 

しかも、実は画面の下端の地面にモリアオガエルの死骸が転がっているのに、空腹のはずのタヌキは、その場で食べたり持ち去ったりしませんでした。 
雑食性のタヌキは、腐肉食性でもあるのに、見逃したのが不思議でした。
死んだカエルの匂い(かすかな死臭)に気づかなかったのか、それとも警戒した(罠を疑った)のかな?


シーン2:2/5・午前0:52(@0:08〜) 
翌月になり、雪がまた少しだけ積もりました。 
深夜に左奥の獣道から登場しかけたタヌキが、監視カメラの存在(あるいは、かすかな物音)に気づいてフリーズしています。 
風の匂いを頻りに嗅いでから、左に引き返してしまいました。 
湿った雪質の雪面にタヌキの足跡が残りました。

監視カメラを根曲がり巣穴aからもう少し離して設置すれば、タヌキに警戒されずに撮影できるのは分かっています。
しかし、周囲に色々と障害物があるため、どうしても無理なのです。
藪に隠れた安全な場所を選んで営巣していることに、当然のことながら感心します。


つづく→

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