2024年9月上旬・午後12:25頃・くもり
平地の二次林で低木層を構成するマルバゴマキ(別名マルバゴマギ、ヒロハゴマキ、オオバゴマキ)の枝先で果実(核果)が熟し始めました。
マルバゴマキは、日本海側の多雪地帯に適応したゴマキの変種です。
緑の未熟果が次第に赤く色づき、完全に熟すと真っ黒になります。
ヒヨドリなどの鳥に食べられて種子散布されるはずなのに、真っ黒いまま萎びた果実も樹上に多く残っていました。
マルバゴマキの熟果にヤマトシリアゲ♂(Panorpa japonica)が留まっていました。
ヤマトシリアゲには季節型があり、褐色の秋型個体はベッコウシリアゲと別名で呼ばれることもあります。
腹端がサソリのように反り返り、把握器が付いているので♂と見分けられます。
シリアゲムシが黒く熟した桑の実を食べたり、そこで交尾したりするという事例を思い出しました。
しかし私自身は、シリアゲムシが果実を食べるシーンをまだ実際に観察したことがありません。
【参考サイト】
・「シリアゲムシのくらしとかたち」by 自然観察大学
熟した桑の実やアケビの実を食べにくることもあります。
クワの果実に来たヤマトシリアゲの写真が掲載されています。
私がカメラのレンズを近づけて接写しても、ヤマトシリアゲ♂は逃げようとしません。
しかし警戒しているのか、しばらく粘ってもマルバゴマキの熟果を食べてくれません。
ちなみに、シリアゲムシは吸う口器ではなく噛む口器を有しているので、「果実を吸汁する」という描写は誤りです。
あまりにも動きが鈍いので、もしかして弱っている個体なのでしょうか?
人差し指で背後から軽く触れると、ヤマトシリアゲ♂はようやく飛んで逃げました。
しかし遠くには逃げず、少し飛んだだけで同じマルバゴマキの葉に留まり直していました。
どうやらマルバゴマキの熟果から離れたくないようです。
最後に翅を半開きにして翅紋を誇示したのは、私に対する威嚇かもしれません。
関連記事(12年前の撮影)▶ ジョロウグモ♀を捕食するヤマトシリアゲ♂秋型
【考察】
このヤマトシリアゲ♂個体はおそらく、交尾相手の♀が飛来するのを待ち伏せしているのでしょう。
マルバゴマキの熟した果実がそのまま求愛給餌のプレゼント(婚姻贈呈)になるのかもしれません。
シリアゲムシの♂は獲物(虫の死骸)など持ち運びの出来るプレゼントを用意するのが普通ですが、このヤマトシリアゲ♂は餌の鮮度を保ったまま不動産として確保していることになります。 (より強く♀にアピールできる勝ち組の♂?)
もしもライバル♂が来たら追い払うはずです。(占有行動)
同種の♀や♂が飛来するまでじっくり腰を据えて観察していれば、面白い展開が見られたかもしれませんね。
相談相手のPerplexity AIは、以下のような見解でした。
ヤマトシリアゲ♂が褐色の秋型で9月上旬にマルバゴマキの熟果に留まっていた場合の行動について、果実が交尾相手の♀へのプレゼントだと予想されるほかに、他の可能性も考えられます。
フェロモン放出や縄張りのマーキングのために熟果の近くで待機している可能性。ヤマトシリアゲのオスは餌の近くでフェロモンを出してメスを呼び寄せることが知られています。果実そのものを食べていなくても、そこを縄張りや待ち伏せポイントとして利用しているかもしれません。digital-museum.hiroshima-u
熟果を狩りをしないで長く滞在できる場所として利用している可能性。ヤマトシリアゲは腐った植物質や昆虫の死骸などを食べる習性があり、比較的動かないものに長く留まる習性もあります。そのため果実の上で休んでいるだけ、ということも考えられます。nature-engineer+1
産卵場所や環境の良い場所探し。果実のある木は湿度や環境条件がよい場合もあり、交尾の前後になどにそうした周辺環境を利用している可能性もあります。
以上のように果実がメスへのプレゼントとして直接使われていなくても、オスが交尾待ちのために利用するポイントとして熟果に留まることは別の意味で合理的と考えられます。yurinoki.main+2
このため、果実を食べていなくても長時間留まっている理由は、「果実がプレゼント」とする解釈以外に、縄張りやフェロモン放出の場として利用していたり、環境の良い場所として待機している可能性もあると言えます。
つづく→
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