2025/11/24

ニホンアナグマの巣穴からホンドタヌキが持ち去った謎の死骸【トレイルカメラ】

 



2024年9月上旬 

シーン1:9/6・午前7:09・晴れ・気温20℃(@0:00〜) 
平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)に2頭のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が朝から来ていました。 
2頭も若々しい(色が濃い)毛並みなので、当歳仔の幼獣ではないかと思います。 
1頭はアナグマの巣口Rを点検し、もう1頭は別の巣穴Lに侵入しました。 
どうやらアナグマの家族は留守のようです。 


シーン2:9/6・午前7:10・晴れ・気温20℃(@1:00〜) 
アナグマの巣穴Lから外に出てきたばかりのタヌキが口に何か獲物を咥えていました。 
ズタボロの毛皮で、どうやら動物の古い死骸のようです。 
仲間(幼獣の兄弟姉妹)に獲物を奪われないように、左へ走って持ち去りました。 
もう1頭のタヌキも走って追いかけ、獲物の争奪戦になりました。 

これは大事件なので、1.5倍に拡大した上で1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:07〜) 
出巣Lの瞬間を撮り損ねたのが残念無念…。 


シーン3:9/6・午前7:10・晴れ(@1:22〜) 
別アングルで設置した監視カメラにも写っていました。 
動物の死骸を口に咥えたタヌキが意気揚々と右へ走り去り、もう1頭も走って追いかけます。 

死骸を持ち去るシーンを、1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:31〜) 
獲物の正体を見定めたくて、1.5倍に拡大した上で、もう一度スローモーションのりプレイ。(@1:49〜) 


シーン4:9/6・午前7:14・晴れ・気温20℃(@2:21〜) 
約4分後に、単独のタヌキが現れました。 
さっきのタヌキの片方が戻ってきたのか、それとも3頭目の幼獣が遅れてセットに来たのか、私には見分けがつきません。 

アナグマの巣口Lを恐る恐る覗き込んで匂いを嗅いだものの、中には侵入しないで左へ立ち去りました。 


【考察】
とても重大な衝撃映像が撮れました。

今回、巣穴Lに侵入したタヌキが、奥に籠城していたアナグマの幼獣を殺して捕食したのではありません。
獲物はもはや動物の原型を留めておらず、殺したばかりの新鮮な獲物には見えないからです。 
ぺしゃんこで、ただの汚らしい毛皮の塊のようです。 

この死骸の正体は、タヌキかアナグマだと思われます。
まずアナグマの可能性を考えます。
おそらく、どこかで死亡したと推測されます。
最近アナグマ家族がセット(営巣地)に近寄らなくなったのは、巣穴Lの奥で幼獣が死んで死骸の腐敗が進み、衛生環境が耐え難くなったからなのでしょうか? 
アナグマの家族が巣内で死骸を埋葬したのかもしれません。
だとすると、今回のタヌキは不届きな墓荒らしということになります。
昼間に巣口Lで飛び回っていたハエ類は、てっきりキイロコウカアブだと思っていたのに、不吉な意味合いを帯びてきます。 



次に、死骸がタヌキである可能性を考えます。
今季アナグマ♀がこの営巣地で出産しなかったのは、中で「いざりタヌキ」が死んだ事故物件だからだと思っていました。
しかし巣穴Lを発掘しない限り、死骸の有無を私には確かめようがありませんでした。
発掘調査で巣穴を壊されたアナグマは、もう二度と寄り付かなくなりそうだと判断した私は、手をこまねいて定点観察を愚直に続けるしかありませんでした。

雑食性のタヌキは、動物の死骸もよく食べるスカベンジャーです。
今回タヌキの幼獣が持ち去った死骸が同種のタヌキだとすると、共食いということになります。 
アナグマの巣穴Lにタヌキを初めとする様々な野生動物が入れ代わり立ち代わり侵入していたのは、中で死肉を少しずつ食べていたのかもしれません。
あるいは、巣内の死骸に群がる虫を捕食していた可能性もあります。

塚田英晴『野生動物学者が教えるキツネのせかい』によれば、
共食いを避ける傾向は、多くの動物で確認されており、この背景には、なかまの死体を通して寄生虫などの病気にかかることを防ぐためだと考えられています。(中略)キツネと同じイヌ科のタヌキは、雪の下のタヌキの死体をかなり頻繁に共食いすることが確認されています。野生の世界では、なかまの死体であっても貴重なエサとなるようです。 (Kindle版40%より引用)

大崎遥花『ゴキブリ・マイウェイ この生物に秘められし謎を追う』という本を読んでいたら、面白い記述がありました。
・シロアリ、アリをはじめとした社会性昆虫では「社会性免疫」と呼ばれる、コロニーの衛生管理に関わる行動がいくつか知られている 
・死体を巣の外に運び出したり、埋めたりする行動が報告されている。 
穴居性の哺乳類でも、同様の社会性免疫の行動があっても不思議ではありません。


つづく→ 


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