2024年6月下旬
平地の二次林にあるニホンアナグマ(Meles anakuma)の旧営巣地(セット)を自動撮影カメラでしつこく監視してきたのは、越冬中に死んだ個体の次に誰か別の個体が引っ越してくるはずだと信じていたからです(願望)。
今季はこの巣穴で出産、育児するアナグマ♀は居ませんでしたが、遂に執念が実りました。
シーン1:6/22・午後22:48・気温22℃(@0:00〜)
アナグマの幼獣3頭が巣口R付近で元気にはしゃぎ回っていました。
初めての環境で興奮しているようです。
すぐに母親♀が巣穴Rから外に出てきました。
腹面に乳首があり、首筋(背中)には交尾痕があるので、成獣♀と分かります。
この母親♀右目<左目は、今季も無事に別の巣穴で出産育児に成功していたことになります。
幼獣が離乳し長距離を出歩けるようになったのを見計らって、旧営巣地に転入してきたのでしょう。
母親は幼獣たちを巣内Rに招き入れました。
しばらく母親♀が巣口Rの外に出てきて辺りを警戒しています。
背後から幼獣1頭がついてきました。
この時点(シーン1)では幼獣が3頭しか写っていません。
シーン2:6/22・午後23:06(@0:48〜)
右を見つめて警戒していた母親♀が身震いしてから、巣穴Rに戻りました。
シーン3:6/22・午後23:39(@1:00〜)
いつの間にか、アナグマの家族(母子)が巣外で散開していました。
母親♀が連れて歩いている幼獣は3頭ではなく、4頭でした。
巣口L付近で、母親♀は近くに居た幼獣の尻の辺りを舐めました。(対他毛繕い)
母親♀は左へ採餌に出かけたのかな?
幼獣3頭がセットに居残り探索する間、1頭は母親♀について行ったようです。
シーン4:6/22・午後23:40・気温21℃(@2:00〜)
別アングルで設置した監視カメラで続きが写っていました。
母親♀が画面の右端で採食していると、幼獣たちが興味津々で集まって来ます。
シーン5:6/22・午後23:45(@3:00〜)
巣口Lおよびその左で、幼獣3頭が探索したり遊んだりしています。
1頭の幼獣が立ち止まって痒い体を掻きました。
シーン6:6/22・午後23:46(@4:00〜)
幼獣2頭が巣口R付近でちょっと格闘遊びをしました。
幼獣は足元がまだ覚束なくて、その片方が巣口Rに転がり落ちかけました。
マルバゴマキの細根や落枝に体が引っかかって、なかなか抜け出せません。
手前の林床で独りひたすら餌を探している個体がいます。
シーン7:6/22・午後23:47(@5:00〜)
右エリアで幼獣2頭がうろついています。
獣道で、ある地点が気になるようで、落ち葉の匂いを嗅いだり、落枝を咥えて引っ張ったりしています。
シーン8:6/22・午後23:49(@6:00〜)
幼獣3頭と母親♀が手前からセットに戻ってきて、巣口Rに少しずつ近づきます。
シーン9:6/22・午後23:51(@7:00〜)
母親♀右目<左目が巣穴Lに入りかけたものの、なぜか止めて後退りで出てきました。
(奥には「いざりタヌキ」の白骨死骸が転がっているのではないかと私は推測しています。)
母親♀は左に移動し、幼獣2頭がセットをうろついています。
シーン10:6/22・午後23:51(@8:00〜)
別アングルで設置した監視カメラの映像に切り替えます。
幼獣2頭が巣口Rの横で取っ組み合いをして遊んでいます。
その間、別個体の幼獣がマルバゴマギの根元にある野ネズミの巣穴の匂いを嗅いでいるようです。
母親♀が幼獣の尻の辺りを舐めてやり(対他毛繕い)、巣穴Rに入りました。
巣口Rが幼獣で混み合っていたのに、母親♀は幼獣を踏んづけながら入巣R。
しかし4匹の幼獣はまだ遊び足りないようで、巣外をうろついています。
シーン11:6/22・午後23:52(@9:00〜)
1匹の幼獣が右下エリアで独り採餌活動しています。
頑張って地面を掘り返しているようです。
シーン12:6/22・午後23:55(@10:00〜)
うろついていた母親♀が右下エリアに座り込み、幼獣に毛繕いをしてやります。
シーン13:6/22・午後23:55(@10:23〜)
別アングルで設置した監視カメラの映像に切り替えます。
広場で格闘遊びしている2頭の幼獣を放っておいて、母親♀が左から右へノソノソと移動します。
左端に座り込んで、幼獣に対他毛繕い。
4頭目の幼獣が右から歩いてセットに戻ってきました。
シーン14:6/22・午後23:57(@11:23〜)
広場で三つ巴の格闘遊びが繰り広げられています。
その間、左上エリアでは母親♀が幼獣と相互毛繕いしているようです。
(白い目が光って見えるだけ)
セットに戻ってきた母親♀が、近くに居た幼獣を次々に掴まえて毛繕いしてやります。
シーン15:6/22・午後23:59(@12:23〜)
母子の相互毛繕いを別アングルで。
シーン16:6/22・午後23:59(@12:57〜)
母子の相互毛繕いのつづき。
巣口Rの近くで独りで餌を探し回る幼獣がいます。
他には、広場の奥でミズキの根元で木登りに挑戦している幼獣個体もいます。
根元の分岐を自力で乗り越えるのが楽しくて仕方がないようです。
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。
【考察】
母親♀がカメラ目線になると、赤外線を反射する目のタペータムが左右非対称(右目<左目)の個体でした。
この形質(特徴)は、前年にここで出産、育児した母親♀と同じです。
長らく姿を見ていなかったのですが、存命で健在だったことが分かり、安堵しました。
彼女が産んだ幼獣は全ての個体で目が左右均等なので、少なくとも優性遺伝(顕性遺伝)の異常ではないと言えます。
母親♀右目<左目は、前年に続いて今季も幼獣4頭を無事に育て上げていたことになります。
子連れの引っ越しにヘルパー♂は付き添わなかったようです。
今季の母親♀がこの営巣地で出産したのではないと断言できる理由は、
- ♂の求愛および交尾を見ていない。
- ♀の巣材集め行動を見ていない。
- ♀が歩けない幼獣の首筋を咥えて連れ回すのを見ていない。
- 巣外での授乳シーンや対他毛繕いを見ていない。
母親♀は少なくとも2つの巣穴を毎年交互に使い、出産と育児で使い分けているようです。
前年はここで出産し、離乳すると幼獣を連れてどこかに転出しました。
今季はその逆パターンになります。
同じ巣穴に住み続けると、巣材に寄生虫が湧いてしまうのかもしれません。
今季はこのまま越冬までアナグマ家族が住み続けてくれるでしょうか?
それまでタヌキの♀♂ペアが頻繁に巣穴を内検していたので、てっきりタヌキが巣穴を乗っ取るかと思いきや、予想外の展開になりました。
アナグマ家族の転入後は、ニホンカモシカやイエネコなどがセットに近寄らなくなりました。
つづく→
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