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2025/12/05

子別れが進む秋に幼獣を1頭だけ連れて久しぶりに帰巣したニホンアナグマ♀が入口の掃除だけして帰る【トレイルカメラ】

 



2024年9月中旬・午前11:00頃・くもり・気温27℃ 

しばらく留守にしていた営巣地(セット)にニホンアナグマMeles anakuma)の母子が久しぶりに帰ってきました。 
先行する成獣の腹面に乳首があるので、母親♀と分かります。
その母親♀が、巣口Lに溜まっていた土砂や落ち葉を外に掻き出してから、別の巣口Rへ向かいました。 
後からついて来た幼獣は、母親♀がさっき掃除した巣口Lの匂いを嗅いだだけで、中には入りませんでした。 

別アングルに設置した自動センサーカメラで続きが撮れていました。 
先行する母親♀は、もうひとつの巣口Rでも保守作業の穴掘りしながら中に入りました。 

せっかく久しぶりに帰巣したのに、居心地がよくなかったのか、長居することはありませんでした。
セットを離れたアナグマの母子は、奥の二次林に向かいました。 
後続の個体(幼獣?)が獣道でちょっと座りました。 
尻を地面に擦り付けはしなかったものの、スクワットマーキングかもしれません。 


【考察】
当歳仔の幼獣は最近まで3頭いたはずなのに、今回は1頭しか登場しませんでした。 
残る2頭の幼獣たちは、どこに行ったのでしょうか? 
一時的に別行動で採食しているのなら良いのですが、母親♀とはぐれたのかな? 
それとも子別れが完了し、残ったのはヘルパー候補の幼獣だけなのかもしれません。 
いつものようにPerplexity AIに相談してみると、

山形県でのトレイルカメラ観察で9月中旬に、3頭いた当歳仔のうち母親と一緒にいる幼獣が1頭だけになったのは、まさに子別れが進行中であると考えて問題ありません。

ニホンアナグマの当歳仔は秋頃(9〜10月)に独立する傾向があるため、9月中旬はちょうど離散が始まる時期にあたり、他の幼獣が巣穴周辺を離れて単独行動を始めた可能性が高いです。残った1頭はまだ母親と同居しているか、協同繁殖的な行動で手伝いをしているメスの幼獣であることも考えられます。

したがって、観察された状況は典型的なニホンアナグマの子別れの過程として理解できます.wikipedia+2

 

​ニホンアナグマの当歳仔は、おおまかに「秋(9〜10月ごろ)」に親から独立し、子別れすると考えられます。wikipedia+2

子別れの時期の目安

  • 繁殖期は春で、出産は春〜初夏、生後2〜3か月で巣穴外に出て行動範囲が広がり、夏には親とほぼ同じ大きさになります。instagram+2

  • 秋になると、冬眠に備えて脂肪を蓄えつつ、この時期が「子別れ」の時期とされ、子は親から独立して単独で採食行動をとるようになります。hollyshit.fc2+2

行動生態的な整理

  • 春生まれ(4〜5月前後)とすると、独立時には生後およそ4〜6か月齢に達しており、体格的には成獣に近く、単独生活に耐えられる状態になっています。wikipedia+2

  • ただし、メスの娘が1頭だけ母親と同居し、翌年の繁殖時に子育てを「手伝う」協同繁殖的なケースも報告されており、全ての当歳仔が完全に離散するとは限らず、特にメスでは親元に残る個体もいます。jglobal.jst+1



来季のヘルパーを務める幼獣は♀が多いらしいのですが、まだ定説として固まっておらず、♂の場合もあるそうです。
私はアナグマ幼獣の性別を外見で見分けられないのですけど、少なくとも当地の個体群では、力が強くて穴掘りが得意な♂がヘルパーになるのではないかという気がしています。

このニホンアナグマ母子にとって、この巣穴はどうやら別宅(別荘)のようで、本宅は別の場所にあるような気がしています。 
複数用意してある巣穴を点々と移動しながら暮らしているのでしょう。
しかしアナグマを一次捕獲して電波発信機やGPSを取り付けない限り、巣穴を見つけるのは難しそうです。 
冬に雪面に残された足跡を辿って行くという雪国ならではの方法(アニマルトラッキング)もあるのですけど、アナグマは冬ごもりしてほとんど活動しなくなってしまいます。 


つづく→

2025/12/04

夜の水溜りで水を飲む子連れのツキノワグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2024年9月中旬・午後19:00頃・気温24℃ ・日の入り自国は午後17:56

山中の湿地帯にある水溜りSにある晩、ツキノワグマUrsus thibetanus)の親子がやって来ました。 
大雨が降った後で、水溜まりが溢れています。 
少なくとも1頭の幼獣(子熊)を連れていたので、成獣は母親だろうと分かりました。 
後から来た幼獣が母親の尻にまとわりついています。 

母親♀が水面に口を付けて、舌でピチャピチャと泥水を飲みました。 
クマの斜め後方から、水を飲む舌の動きがしっかり撮れました。 
イヌやネコと同じような飲み方です。 
残念ながら、音量を上げても水を飲む音は聞き取れませんでした。 
飲水したのは母親♀だけで、子熊は水溜まりに近づきませんでした。 

喉の乾きを癒やすと、ツキノワグマの母子は水浴はしないで左に立ち去りました。 
クマが水浴びするには、この水場は浅すぎるでしょう。 

※ 動画の後半は編集時に自動色調補正を施してリプレイ。(@0:22〜) 


関連記事(2、3年前の撮影)▶  


この地点でツキノワグマは初見になります。 
また、子連れのツキノワグマがトレイルカメラに写ったのも初めてです。 
もし昼間の山中で子連れのツキノワグマ♀と出くわすと危険なので、充分に注意する必要があります。


つづく→

2025/12/03

里山の廃道でニアミスしたニホンカモシカが鼻息を荒らげて逃走

 

2024年9月上旬・午後13:50頃・晴れ 

里山で廃道状態の細い山道を私が静かに下っていると、前方でニホンカモシカCapricornis crispus)がガバッと立ち上がりました。 
おそらくカモシカは直前まで座り込んで休んでいた(反芻?)のでしょう。 
(映像はここから。)
藪の影に隠れて私の様子を伺っています。 
私以外の登山者が誰も通らなくなった山道には左右から灌木の枝が伸びてきて、ほとんど獣道の状態です。 

私がその場にゆっくりしゃがんで姿勢を低くしたら、カモシカは警戒を解いて近づいてくれるかと期待したのですが、今回その作戦は上手く行きませんでした。 



カモシカの姿を見失ってしまったので、動画を撮りながら静かに追いかけてみました。 
廃道をゆっくり進むと、カモシカが鼻息を荒らげて威嚇する音が聞こえます。 
私からどんどん逃げているようで、次第に鼻息が遠ざかりました。 

途中で廃道から右折し、獣道を通ってカモシカの溜め糞場sr2へ向かいます。 
その分岐点に以前あったアナグマ・タヌキの溜め糞はもう残っていませんでした。 



カモシカの溜め糞場sr2を見張るトレイルカメラを固定したアカマツの下まで辿り着きました。 
ミズナラの幹に設置した岩塩プレートも見えます。
(映像はここまで。) 


※ カモシカの鼻息威嚇が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


早速トレイルカメラをチェックして、撮れた動画を見直しました。
しかし残念ながら、直前に逃げて来たカモシカの姿は写っていませんでした。 
カモシカ溜め糞場sr2の付近で藪が激しく揺れて、カモシカの鼻息威嚇♪が録音されていただけです。 
そもそも最近、カモシカは溜め糞場sr2に来ていないようでした。 
私がカモシカのトイレに取り付けた岩塩プレートという異物を嫌がって、近づかなくなったのでしょうか。



2025/12/02

初秋の山林で餌を探し歩くニホンイノシシ【トレイルカメラ】

 



2024年9月上旬・午後16:05頃 

山林にあるカモシカの溜め糞場sr2を自動撮影カメラで見張っています。 
昼間遅くにニホンイノシシSus scrofa leucomystax)が奥から単独で登場しました。 
牙が小さいので♀または若い個体のようです。 

カモシカの溜め糞場sr2がある混交林の林床を嗅ぎ回り、左下に立ち去りました。 
と思いきや、一度戻ってきてから再び左下に姿を消しました。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→

2025/12/01

ホンドテン2頭が9月上旬の山林で追いかけっこ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年9月上旬・午後20:45頃 

里山の混交林の中にあるカモシカの溜め糞場sr2を見張るトレイルカメラに、ある晩、夏毛のホンドテンMartes melampus melampus)が写りました。 
画角が狭くて何をしているのか分かりにくいのですが、どうやら2頭が夜の山林で追いかけっこをしているようです。 
テンの繁殖期は夏らしいので、求愛の追いかけっこなのでしょうか? 
それとも幼獣同士の遊びなのかな? 
私がミズナラの幹に設置した塩場(岩塩)には今回も興味を示してくれませんでした。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:33〜) 



テンの繁殖期や求愛行動についてCopilot AIに問い合わせたところ、以下の回答を得ました。
ホンドテンの求愛および交尾の時期は夏です。具体的には、6月下旬から7月中旬にかけてが最も活発な時期とされています12。 ホンドテンの求愛ディスプレイについての具体的な記述は少ないですが、一般的にイタチ科の動物は、求愛時に鳴き声や匂いを使ってコミュニケーションを取ることが知られています12。また、オスがメスに対して積極的にアプローチし、追いかける行動も見られることがあります2。 ホンドテンも同様に、鳴き声や匂いを使ってメスにアピールし、求愛行動を行うと考えられます。具体的な行動については、観察が難しいため詳細な情報が少ないですが、他のイタチ科の動物と似たような行動を取ると推測されます。 ホンドテン(Martes melampus melampus)は、通常6〜7月に繁殖期を迎えます。交尾後、翌年の3月頃に出産し、約2頭の子を産むことが多いです1



※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


つづく→

2025/11/30

山中の湿地帯の草むらで餌を探し回るホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2024年9月上旬・午後20:10頃・気温24℃ 

山中の湿地帯にある晩、ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)がやって来ました。 
水溜りSで水を飲んだり水浴したりすることはなく、奥の草むらで獲物となる何か小動物(昆虫やカエルなど)を探しているようです。 

その間に、右上奥の林道から別個体が登場したようで、両目のタペータムが赤外線に白く反射して見えます。 
おそらくタヌキの♀♂ペアが付かず離れず一緒に採食活動しているのでしょう。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→

2025/11/29

ニホンリスは岩塩を直接かじらなくなり、塩水で濡れた樹皮を舐めるだけになった【トレイルカメラ】

 



2024年9月上旬〜中旬

シーン0:9/4・午後14:10・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
里山で雑木とスギの針広混交林にあるニホンカモシカ(Capricornis crispus)の溜め糞場sr2を自動撮影カメラで見張っています。 

ミズナラの幹にプレート状のヒマラヤ岩塩(155×100×25mm、870g)をベルトで固定して、野生動物の塩場を作ってみました。 
撮影しやすいように、岩塩プレートが監視カメラに正対するように、固定し直しました。 

ニホンリスSciurus lis)が通ってくる様子を以下にまとめます。 


シーン1:9/5・午前10:24・晴れ(@0:04〜) 
リスが午前中からミズナラ幹の下部にしがみついて、岩塩プレート直下に来ていました。 
滴り落ちる塩水で濡れた樹皮を舐めているのかもしれません。 
岩塩プレートを直接かじることはありませんでした。 
岩塩の向きが変わったので、不審がっているのかな? 

リスがときどき顔の向きを変えると、目に日光がキラッと反射して見えます。
 (首の横の白い毛がちらっと見えているだけかもしれません。) 
やがて左下手前の林床に跳び降りると、走り去りました。 


シーン2:9/7・午後13:51(@0:55〜) 
2日後の午後にニホンリスが登場。
ミズナラの根元付近(右下)で幹にしがみついていました。 
塩水が滴り落ちる場所ではないので、樹皮を舐めているのではなく、匂いを嗅いでいるだけのようです。 


シーン3:9/7・午後13:51(@1:56〜) 
このシーンは1.5倍に拡大した映像をご覧ください。 
ミズナラ幹の下部にしがみついたリスは、よほど気に入ったのか、延々と同じ場所を舐め続けています。 
何か小さな虫でも捕食しているのでしょうか? 

リスがしゃっくりのような奇妙な鳴き声を発しました。(@2:15〜) 

しばらくすると、ようやく幹を少しずつ慎重に登り始めました。 
垂れ下がったベルト先端部の匂いを嗅いでから、幹の裏側へ隠れてしまいました。 
幹の左側に回り込んで、物色しています。 


シーン4:9/9・午前6:19(@2:57〜)日の出時刻は午前5:13。 
2日後の早朝にリスが塩場に来ていました。 
ミズナラ幹の左下部にしがみついていたのに、岩塩プレートまでは登らずに身を翻して飛び降り、林床を手前に走り去りました。 


シーン5:9/9・午前15:53(@3:10〜) 
約9時間半後に、またリスが現れました。 
ミズナラ幹の下部にしがみついて岩塩プレートを見上げています。 
警戒しているのか、なぜか決して岩塩プレートまでは登ろうとしませんでした。 
塩水で濡れた樹皮を舐めているようです。


シーン5:9/9・午前15:55(@4:12〜) 
いつの間にかリスは奥にあるスギに移動していて、幹の下部にしがみ付いていました。 
スギの裏側に回り込んでから、右上の樹上に素早く消えました。 


シーン6:9/14・午後16:28(@4:27〜) 
次にリスが塩場に来たのは、5日後の午後遅くでした。 
画面の左下隅から現れたニホンリスが、林床のカモシカ溜め糞場sr2をピョンピョン跳ねるように横切りました。 
スギ幹の下部に登ってしがみつくと、少し休んでから、左に走り去りました。 
今回は岩塩プレートには立ち寄りませんでした。 

1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@4:38〜) 


シーン7:9/15・午前10:28(@5:02〜) 
翌日の午前中に、またリスが塩場に来ました。 
ミズナラ幹の下部の裏側に止まっているリスの尻尾だけが見えます。 
少し木登りすると、樹皮を丹念に調べている(舐めている?)ようです。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
あれほど岩塩が気に入って頻繁に舐めたり齧ったりしていたニホンリスが、この時期はなぜか岩塩プレートを直接かじらなくなりました。 
塩水で濡れた樹皮を控えめに舐めるだけになりました。
調子に乗って塩分を摂り過ぎると喉が渇くなどして体に良くないことに自分で気づいて、摂取量を節制するようになったのでしょうか。
塩場に立ち寄らず、カモシカの溜め糞場sr2を素通りすることもありました。

岩塩プレートの向きが急に変わったので、不審に思ったリスは露骨に警戒しているのかもしれません。
どうも、リスは岩塩と監視カメラとの位置関係をしっかり把握しているような気がしてなりません。
岩塩を舐める際に無防備な背中を監視カメラに向けたくないのでしょうか。
トレイルカメラが起動するときに発するカチッというかすかな音に怯えて(警戒して)、岩塩プレートに近づけないのかな?


つづく→

2025/11/28

首輪を装着したニホンザルが山林を右往左往【トレイルカメラ】

 



2024年9月上旬・午後12:00頃 

里山の混交林でニホンカモシカの溜め糞場sr2を自動撮影カメラで見張っていると、ちょうど正午頃にニホンザルMacaca fuscata fuscata)が単独でやって来ました。 
登場の直前に死角から動物の鳴き声(イヌが吠える声?)というか咳のような奇妙な音が続けて2回聞こえました。 
左下から来たニホンザルは黒い首輪を装着しており、そこから短いアンテナが背側に伸びています。 
群れと一緒に刻々と遊動する位置をGPSまたは電波発信器でテレメトリー調査する対象個体のようです。 

首輪ニホンザルはカモシカの溜め糞場sr2に立ち止まったものの、何者かに追われているのか、他に気になることがあるらしく、ミズナラ幹に固定した岩塩プレートには気づきませんでした。 
猿の目線より高い位置にあっても、ピンク色の岩塩はとても目立つはずです。 
そのまま右折すると、獣道を右へ走り去りました。 
ところがしばらくすると、同一個体と思しきニホンザルが獣道を左下へ駆け下りて来ました。 
カモシカの溜め糞にも興味を示さずに、往復の2回とも素通りしました。 

群れの仲間はどこに居るのか、クーコール(コンタクトコール)や歩く物音などの気配が感じられません。 
単独で彷徨する離れザル♂なのでしょうか?

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】
野生ニホンザルに装着するGPS首輪についてPerplexity AIに質問しまくり、詳細を教えてもらいました。

近年のニホンザル野生個体に装着されている首輪型送信機は、ほとんどがGPS発信機付きの首輪と考えて差し支えありません。首輪から背中側に短いアンテナが伸びているタイプは、GPS位置情報の取得やデータ通信のためのアンテナです。pubmed.ncbi.nlm.nih+3

首輪型GPSの特徴

  • 2000年代以降、ニホンザル生態調査で自動記録式のGPS首輪による位置追跡が一般的になっています。従来はVHFやUHFによるテレメトリー(ラジオ発信機)中心でしたが、現在は高精度な位置データ収集・遠隔取得が可能なGPS方式が主流です。pmc.ncbi.nlm.nih+1

  • 装着例では首輪に小型GPSユニットとアンテナが一体化されており、アンテナは通信や衛星受信効率向上のため外部に突出している場合が多いです。jstor+1

  • データの取得方法によっては一部でVHFテレメトリー(受信機で追跡する古典的方式)が併用されることもありますが、首輪に伸びたワイヤ状アンテナは通信・データ転送(回収)用途の物が主流です。

日本の野生動物調査の現状

  • GPS首輪は、森林・山地・都市近郊などの複雑な環境でも高精度に位置情報を得られるため、個体の行動・移動域解析に広く使われています。ecojane+1

  • 日中だけでなく夜間や悪天候でも自動的に記録する設計が一般的です。


野生のニホンザルに装着されたGPS首輪のデータ取得方法は、主に次のようなものです。

まず、GPS首輪が個体の位置情報を刻々と記録しますが、そのデータは首輪から直接リアルタイムに通信で送信される場合と、首輪に内部記録されて後で回収する方式の2タイプが存在します。日本では、電波を頼りに研究者が近づき、GPS首輪の装置と無線接続して位置データを読み取る方法が一般的です。このため、首輪が現場で自動的にデータを送信し続けるわけではなく、一定期間後に首輪が自動的に外れた後、その首輪(装置)を回収してデータを取得するケースもあります。qzss+1

しかし近年は、携帯電話回線(4G)などを利用して遠隔地からリアルタイムに位置情報を取得できるGPS首輪も増えてきており、専用の基地局やスマートフォン経由でデータを随時受信・解析するシステムも導入されています。この場合、首輪のアンテナは衛星GPS受信だけでなく、位置情報の送信にも使われています。maff+2

まとめると、ニホンザルのGPS首輪の位置データは、

  • 電波を頼りに研究者が現地で近づいて無線接続しダウンロードする、

  • または携帯通信網を通じて遠隔でリアルタイムに受信する、
    のどちらかの方法で取得されるのが主流です。

首輪が一定期間後に自動的に外れるのは、首輪を装着した個体の負担軽減や安全のためで、その後に首輪を回収して記録データを得る場合もありますが、リアルタイム送信機能付きの場合は外れていなくてもデータを取得可能です。agri.mynavi+2



携帯電話の電波が届かない山奥や僻地で行動するニホンザルの場合、研究者はその地域に専用の自動受信局やアンテナ基地を設置してデータを受信することがあります。この専用受信局はGPS首輪からの電波を一定距離内で受信し、そこからデータを回収します。受信局の設置場所は、調査地域の地形やサルの行動範囲に基づいてネットワーク的に配置されます。maff+1

一方で、GPS首輪自体は位置情報を記録するロガー機能もあるため、サルが携帯電話網の届く場所や自動受信局の通信圏内に入るまでデータを内部に記録し続けます。そして、その範囲に近づいたときにデータがまとめて送信されます。したがって必ずしも研究者が常に近寄ってデータを取得するわけではなく、基地局が受信できる場所にサルが移動すればデータ更新が行われる仕組みも使われています。town+1

つまり、携帯電話電波が届かないエリアでは、

  • 山中に専用の電波受信局やアンテナを設置し、

  • GPS首輪は位置データを内部に記録しつつ、

  • サルが受信可能な場所に来たときにデータが送信される、
    という複合的な技術とシステムにより位置情報の取得が可能となっています。tracking21+2

このように、GPS首輪による野生ニホンザルの行動解析は、調査対象地域の地理的条件に合わせて通信設備や運用方法を工夫・設置するところから始まるケースが多いです。


ニホンザル用GPS首輪に内蔵された電池の寿命は、おおよそ約1年程度とされています。電池寿命は首輪のGPS測位回数や発信スケジュール設定によって変わりますが、一般的な設定(1日24回のGPS測位、ビーコン発信も含む)で1年前後の運用が可能です。tracking21+1

また、電池は交換できないタイプが多く、電池切れを考慮して約1年を目安に首輪を外す設計や電池切れリスクへの対処がされます。さらに最近は、太陽電池を搭載して充電しながら長期運用を可能にしているGPS首輪もあります。そうしたタイプでは、約7か月半の装着でまだ8割以上の電池残量が確認された例もあります。prtimes+1

なお、扱う研究の目的や計測頻度によっても電池寿命は変動し、必要に応じて設定を最適化しているケースが多いです。山間部や携帯回線が届かない場所でのデータ取得も含めて、機器の消耗や動作条件を踏まえた運用がされています。tracking21+1



電池が切れたGPS首輪が野外で脱落してしまった場合、その首輪は電波を発信しなくなるため、通常の方法ではその首輪を探して回収するのは非常に困難になります。電池切れになると通信も脱落機構も動作しなくなるため、首輪はそのまま放置されるリスクがあります。そのため調査では電池寿命を十分に考慮して、計画的に早めに首輪を回収する運用が重要視されています。tracking21+2

一部の高機能GPS首輪には、電池切れ前に電波ビーコンを数週間発信し続けて位置を知らせる機能を持つ製品もありますが、これも電池残量がある一定ラインまで低下した場合に限られます。電池が完全に切れるとビーコンも発信停止し、位置の特定は不可能になります。seidensha-ltd

また、山中のような視界が効かない環境や広範囲の調査地では、回収不可能な首輪が予想されるため、その損失も想定して費用・機器調達や研究計画が立てられます。GPS首輪は高価な機器であるため、研究者は紛失リスクを減らすために速やかな追跡・回収体制を整えることが一般的です。wmo+1

要点は、電池が切れて首輪が脱落するとほぼ回収は困難になるが、電池寿命内に計画的に回収し、電波ビーコンが発信されている間に場所を特定する運用が不可欠であることです。tracking21+1


ニホンザル用GPS首輪の自動脱落(ドロップオフ)機構は、非火薬方式の機械的装置が使われており、研究者が遠隔操作で首輪を外す仕組みが一般的です。具体的には、専用のスマートフォンアプリ(例:GL-Link Manager2)を用いて、装着した首輪発信器と通信可能な範囲内で手動で切り離し操作を行います。自動スケジュールによる脱落機能はなく、脱落操作は一回限りです。tracking21+1

脱落操作は、装置内の脱着機構を電気的に作動させてベルト部分を切り離すものであり、安全かつ非火薬方式のため法令上も問題ありません。電源のON/OFFは磁石の脱着によっても操作が可能です。これにより、首輪の脱落は研究者の判断に基づいて現地で任意のタイミングで行います。tracking21+1

この脱落機構により、生物に不必要な長期間の装着による負担を軽減するとともに、回収可能な時期に首輪を確実に外すことで、データの取得完了や機器の回収率向上に貢献しています。したがって、脱落は内蔵プログラムでの自動実行ではなく、無線の司令による“遠隔操作”形式で安全に行われています。tracking21+1


首輪のベルトを通電で焼き切るのではなく、脱落機構は非火薬方式の機械的装置です。具体的には、内蔵モーターとウォームギアでベルトの留め具やピンを物理的に外す構造で、遠隔操作によって動作します。つまり、電気的に機械部品を動かしてベルトを切り離す方式であり、ベルトを焼き切るような通電による燃焼は行いません。tracking21+2

この設計は安全性と確実性を考慮したもので、火薬類取扱法にも抵触しない非火薬技術を採用しているため、野生動物に対する安全面にも配慮されています。脱落は遠隔側から一度だけ実行可能な仕様であり、脱落後は首輪は再装着不可能です。tracking21+1



つづく→

2025/11/27

アナグマの営巣地で落枝に興味を示したり少し移動したりするホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年9月上旬〜下旬

シーン1:9/9・午前4:45・気温22℃(@0:00〜)日の出時刻は午前5:13。 
平地の二次林にあるニホンアナグマの営巣地(セット)で未明に3匹のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が一緒にやって来ました。 
まずはアナグマの巣口Rを覗き込んで点検してから、別の巣口Lへ向かいます。 


シーン2:9/9・午前4:44・気温21℃(@1:00〜) 
別アングルで設置した監視カメラにも撮れていました。 
後続個体が林床から何かを拾って咥えたものの、すぐに興味を失ってその場に捨てました。 
短い落枝かと思ったのですが、少し太いので、もしかすると、私が以前に給餌したバナナが干からびた物かもしれません。 


タヌキはアナグマの巣口Lで何か小さな虫を捕食しました。 
獲物は穴居性のカマドウマ幼虫と思われます。 

身震いしてから獣道を右へ立ち去りました。 
2番目の個体は、通りすがりにオニグルミの根元に排尿マーキングして行きました。 
このとき後足を上げて小便したので♂と判明。 
最後(3番目)の個体も、仲間に遅れないよう慌てて走り去りました。 


シーン3:9/24・午前5:24・気温12℃(@1:58〜)日の出時刻は午前5:26。 
15日後の日の出直前に単独行動のタヌキがアナグマの営巣地に来ていました。 
2つの巣口L、Rの中間地点に佇んで、クゥーンと甲高い声で鳴きました。 

足元で見つけた細くて短い落枝を咥えて拾い上げ、マルバゴマギ灌木の根元にそっと置き直しました。 
隠したつもりなのでしょうか。
初めて見る不思議な行動です。
遊びでもなさそうですし、探索行動で説明できるかな? 

タヌキが左へ立ち去った後、アナグマの巣口Lに注目して下さい。 
1.5倍に拡大した上で5倍速の早回しにすると、小さな虫の群れが続々と巣口Lから外に出て来ました。(@2:26〜) 
アナグマの巣穴Lに居候していたカマドウマの幼虫が、巣外に来ているタヌキの足音・振動に驚いて出てきたのでしょう。 
アナグマの巣穴の奥に潜んでいる謎の昆虫の群れについては、後日(10月下旬〜11月上旬)証拠動画を撮ってカマドウマの幼虫と突き止めたので、もうしばらくお待ち下さい。(映像公開予定) 


つづく→

2025/11/26

岩塩が気になるツキノワグマ【トレイルカメラ】

 



2024年9月上旬

シーン0:8/23・午後12:45・晴れ(@0:00〜) 
里山でスギと雑木の混交林にあるニホンカモシカの溜め糞場sr2を自動撮影カメラで見張っています。 
ミズナラの幹にヒマラヤ岩塩(155×100×25mm、870g)のプレートをベルトで固定して、野生動物の塩場を作ってみました。 

この時期に登場したツキノワグマUrsus thibetanus)の動画をまとめました。 

シーン1:9/1・午前5:03(@0:03〜)日の出時刻は午前5:06。 
日の出直前の薄明に真っ黒なクマが手前から来たようです。 
岩塩プレートを木の幹に固定したベルトの匂いを嗅いでいました。 
次に岩塩プレートの側面の匂いを嗅ぎましたが、舐めてはいなさそうです。 
味見してくれないことには塩だと認識してくれないのですが、警戒心の強いクマはなかなか慣れてくれません。 

ツキノワグマは直下の落ち葉の匂いを嗅いでから、右折して斜面の獣道を登り始めました。 
すぐに左折して、画面の奥に立ち去りました。 


シーン2:9/3・午後16:25(@0:42〜) 
2日後の夕方に茂みの奥を左から右へ黒い動物が歩いて横切りました。 
カモシカはこんなに黒くないはずですから、おそらくツキノワグマでしょう。 
 1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:49〜) 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→



↑【おまけの動画】
Taking aim at Japan's bear problemーNHK WORLD-JAPAN NEWS

人里近くに出没するクマに対して、ドローンで上空から監視・通報しようという試みについて報じています。

2025/11/25

カモシカの溜め糞場に来た夏毛のホンドテン【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年8月下旬・午後21:40頃 

里山の混交林にあるニホンカモシカの溜め糞場sr2を見張っている自動センサーカメラに、ある晩ホンドテンMartes melampus melampus)が写っていました。 
カメラの起動が遅れ、左下隅にちらっと写っただけでした。 
夏毛のテンはカモシカの溜め糞や岩塩プレートに興味を示さず、林床をゆっくり歩き去りました。 


つづく→

2025/11/24

ニホンアナグマの巣穴からホンドタヌキが持ち去った謎の死骸【トレイルカメラ】

 



2024年9月上旬 

シーン1:9/6・午前7:09・晴れ・気温20℃(@0:00〜) 
平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)に2頭のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が朝から来ていました。 
2頭も若々しい(色が濃い)毛並みなので、当歳仔の幼獣ではないかと思います。 
1頭はアナグマの巣口Rを点検し、もう1頭は別の巣穴Lに侵入しました。 
どうやらアナグマの家族は留守のようです。 


シーン2:9/6・午前7:10・晴れ・気温20℃(@1:00〜) 
アナグマの巣穴Lから外に出てきたばかりのタヌキが口に何か獲物を咥えていました。 
ズタボロの毛皮で、どうやら動物の古い死骸のようです。 
仲間(幼獣の兄弟姉妹)に獲物を奪われないように、左へ走って持ち去りました。 
もう1頭のタヌキも走って追いかけ、獲物の争奪戦になりました。 

これは大事件なので、1.5倍に拡大した上で1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:07〜) 
出巣Lの瞬間を撮り損ねたのが残念無念…。 


シーン3:9/6・午前7:10・晴れ(@1:22〜) 
別アングルで設置した監視カメラにも写っていました。 
動物の死骸を口に咥えたタヌキが意気揚々と右へ走り去り、もう1頭も走って追いかけます。 

死骸を持ち去るシーンを、1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:31〜) 
獲物の正体を見定めたくて、1.5倍に拡大した上で、もう一度スローモーションのりプレイ。(@1:49〜) 


シーン4:9/6・午前7:14・晴れ・気温20℃(@2:21〜) 
約4分後に、単独のタヌキが現れました。 
さっきのタヌキの片方が戻ってきたのか、それとも3頭目の幼獣が遅れてセットに来たのか、私には見分けがつきません。 

アナグマの巣口Lを恐る恐る覗き込んで匂いを嗅いだものの、中には侵入しないで左へ立ち去りました。 


【考察】
とても重大な衝撃映像が撮れました。

今回、巣穴Lに侵入したタヌキが、奥に籠城していたアナグマの幼獣を殺して捕食したのではありません。
獲物はもはや動物の原型を留めておらず、殺したばかりの新鮮な獲物には見えないからです。 
ぺしゃんこで、ただの汚らしい毛皮の塊のようです。 

この死骸の正体は、タヌキかアナグマだと思われます。
まずアナグマの可能性を考えます。
おそらく、どこかで死亡したと推測されます。
最近アナグマ家族がセット(営巣地)に近寄らなくなったのは、巣穴Lの奥で幼獣が死んで死骸の腐敗が進み、衛生環境が耐え難くなったからなのでしょうか? 
アナグマの家族が巣内で死骸を埋葬したのかもしれません。
だとすると、今回のタヌキは不届きな墓荒らしということになります。
昼間に巣口Lで飛び回っていたハエ類は、てっきりキイロコウカアブだと思っていたのに、不吉な意味合いを帯びてきます。 



次に、死骸がタヌキである可能性を考えます。
今季アナグマ♀がこの営巣地で出産しなかったのは、中で「いざりタヌキ」が死んだ事故物件だからだと思っていました。
しかし巣穴Lを発掘しない限り、死骸の有無を私には確かめようがありませんでした。
発掘調査で巣穴を壊されたアナグマは、もう二度と寄り付かなくなりそうだと判断した私は、手をこまねいて定点観察を愚直に続けるしかありませんでした。

雑食性のタヌキは、動物の死骸もよく食べるスカベンジャーです。
今回タヌキの幼獣が持ち去った死骸が同種のタヌキだとすると、共食いということになります。 
アナグマの巣穴Lにタヌキを初めとする様々な野生動物が入れ代わり立ち代わり侵入していたのは、中で死肉を少しずつ食べていたのかもしれません。
あるいは、巣内の死骸に群がる虫を捕食していた可能性もあります。

塚田英晴『野生動物学者が教えるキツネのせかい』によれば、
共食いを避ける傾向は、多くの動物で確認されており、この背景には、なかまの死体を通して寄生虫などの病気にかかることを防ぐためだと考えられています。(中略)キツネと同じイヌ科のタヌキは、雪の下のタヌキの死体をかなり頻繁に共食いすることが確認されています。野生の世界では、なかまの死体であっても貴重なエサとなるようです。 (Kindle版40%より引用)

大崎遥花『ゴキブリ・マイウェイ この生物に秘められし謎を追う』という本を読んでいたら、面白い記述がありました。
・シロアリ、アリをはじめとした社会性昆虫では「社会性免疫」と呼ばれる、コロニーの衛生管理に関わる行動がいくつか知られている 
・死体を巣の外に運び出したり、埋めたりする行動が報告されている。 
穴居性の哺乳類でも、同様の社会性免疫の行動があっても不思議ではありません。




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2025/11/23

慌てて逃げ出す小心者のニホンイノシシ【トレイルカメラ】

 



2024年8月下旬・午後16:55 

山林にあるカモシカの溜め糞場sr2に設置した自動センサーカメラにニホンイノシシSus scrofa leucomystax)がちらっと写っていました。 

夕方に単独で現れたイノシシが慌てたように方向転換し、手前へ引き返しました。 
トレイルカメラのカチッというかすかな起動音に驚いたのか、それとも不審な岩塩プレートが目の前に現れたことに警戒したのか、逃げてしまいました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


2025/11/22

真夏の昼間に巣穴を掘り広げるニホンアナグマ♀【トレイルカメラ】

 



2024年8月下旬・午前11:45頃・晴れ・気温35℃ 

ニホンアナグマMeles anakuma)営巣地(セット)での活動を自動撮影カメラで録画しています。 
それまで幼獣(当歳仔)の相手をして遊んでいた母親♀が、幼獣と別れて独りで巣穴Lに向かうと穴掘りを始めました。 
巣口Lの拡張工事をしているようです。 

今回は母親♀の穴掘りを手伝おうとする幼獣個体はおらず、もうひとつの巣口Rで幼獣同士が遊んでいます。
ときどき軽く吠えるような鳴き声が聞こえますが、おそらく遊んでいる幼獣の鳴き声でしょう。


2025/11/21

カモシカの溜め糞場を素通りするハクビシン:その3【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年8月下旬・午前2:05頃 

草木も眠る丑三つ時に、ハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)が奥から手前に向かって山林の林床をうろついています。 
ニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr2を横切っても、まったく興味がないようです。 
ミズナラの幹に固定した岩塩プレートには気づかずに通り過ぎました。 


つづく→

2025/11/20

岩塩が気に入り何度も通って舐めるニホンリス【トレイルカメラ】夏の塩分摂取

 



2024年8月下旬〜9月上旬 

シーン0:8/23・午後12:45・晴れ(@0:00〜) 
明るい時間帯にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。 
里山でスギと雑木の針広混交林にあるニホンカモシカ(Capricornis crispus)の溜め糞場sr2を自動センサーカメラで見張っています。 

新たな試みとして、ミズナラの幹にプレート状のヒマラヤ岩塩(155×100×25mm、870g)をベルトで固定して、野生動物の塩場を作ってみました。 
ニホンリスSciurus lis)が通ってくる様子を以下にまとめました。 


シーン1:8/24・午後17:59(@0:03〜)日の入り時刻は午後18:23。 
夕方に1匹のリスがミズナラ幹の左側面で、岩塩プレートのすぐ下を登りかけていました。 
しかし、まだ不審な岩塩を警戒しているのか、奥にあるスギの細い幹に飛び移りました。 
スギの幹を登り、枝葉で動き回っています。 
やがて林床に飛び降りると、獣道を右へピョンピョン走り去りました。 


シーン2:8/27・午前7:38(@0:31〜) 
3日後の朝に、リスがまた現れました。 
ミズナラ幹の陰に隠れていたリスが右側に回り込み、岩塩を固定した黒いベルトに興味があるようです。 


シーン2:8/27・午前8:20(@0:43〜) 
約40分後にリスが再登場。 
ミズナラ幹の右側面にしがみついたリスが手前に回り込んで、ベルトの匂いを嗅いでいます。 
木を少し登り下りすると、頭を下にした逆さまの状態で遂に岩塩プレートをかじり始めました。 
口で咀嚼する動きが見られたので、岩塩の表面を舐めるだけでなく歯で齧ったようです。 
リスが岩塩を摂取するシーンを1.5倍に拡大した上でリプレイ(@1:43〜)。 


シーン3:8/27・午前8:22(@2:29〜) 
次にリスはミズナラの幹から地面に飛び降り、走り去りました。 
と思いきや、ミズナラの根元に再登場。 
落ち葉の下に顔を突っ込んでいるようですが、虫を捕食しているのか、それとも塩水が滴り落ちた落ち葉を舐めているのかな? 

1.5倍に拡大した上でリプレイ(@3:29〜)。


シーン4:8/28・午前7:38(@4:23〜) 
翌朝にもリスが塩場にやって来ました。 
ミズナラ幹の裏側に登って岩塩プレートを舐めているようです。 
初めは死角でよく見えなかったのですが、方向転換してくれて、リスと判明。 
頭を下向きで幹に止まり、岩塩プレートを直接舐めたり齧ったりしているようです。

1.5倍に拡大した上でリプレイ(@4:34〜)。


シーン5:8/29・午前9:31(@4:45〜) 
翌日の朝にもリスが姿を現しました。 
スギ幹の下部を登り降りしています。 
林床に一旦降りてからミズナラの木に登ったものの、幹の裏側でリスの姿が見えません。 
監視カメラを警戒しているのでしょうか? 


シーン6:8/29・午前9:33(@5:07〜)
次にリスはミズナラ幹の右側から手前に回り込み、ようやく姿をしっかり現してくれました。 
岩塩プレートを固定するベルトに興味を示しています。 
ただベルトの匂いを嗅いでいるだけなのか、それとも塩分が染み込んだベルトを舐めているのかな? 

幹に下向きになり、地面に飛び降りて手前に走り去りました。 


シーン7:8/29・午後17:28(@6:02〜)日の入り時刻は午後18:16。 
約8時間後の夕方にリスがまた塩場に来ました。 
地面からミズナラ幹を少し登り、岩塩プレートの直下の塩味が効いた樹皮を舐めています。 
途中から幹の手前側に回り込んでくれたおかげで、カメラからよく見えるようになりました。 

1.5倍に拡大した上でリプレイ(@7:01〜)。


シーン7:8/29・午後17:30(@8:01〜) 
次にニホンリスは再びミズナラ幹の裏側に回り込んでしまいました。 
幹に下向きになって、岩塩プレートを直接舐めているようです。 
少し幹を下りてから頭を上向きに戻し、岩塩プレート直下の樹皮を舐めています。 

このときリスがチョッ、チョッ、チョッ♪と小声で3回、間隔を開けて鳴きました。(@8:39〜) 
鳴き声と同時にリスが口を開閉したので(リップリンクロ)、リスの鳴き声で間違いありません。 
前後の行動を見てもリスに危険が迫った状況ではなく、警戒声ではなさそうです。 
リラックスして樹皮を舐める合間に鳴きました。 

1.5倍に拡大した上でリプレイ(@9:00〜)。
※ 鳴き声が聞き取れるように、ここだけ動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。


シーン8:8/30・午後16:59(@9:43〜) 
翌日も夕方にリスが塩場に来ていました。 
ミズナラの幹で少し木登りして、岩塩プレート直下の樹皮を舐めていました。 
すぐに地面へ飛び降りると、奥のスギ幹の下部に登ってから奥に走り去りました。 
スギの樹皮も舐めて味を比べているのかな? 


シーン9:9/3・午前10:17(@10:03〜) 
4日後の午前中。 
スギの幹に地面から登りかけたリスが左に飛び降り、林床をチョロチョロと駆け抜けました。 


シーン10:9/3・午後15:38(@10:13〜) 
約5時間20分後にリスがミズナラ幹の根元に来ていました。 
立ち上がってミズナラ幹を少しだけ登り、岩塩プレートから樹皮を滴り落ちる塩水を舐めているようです。 
リスの腹面は白いことがよく分かります。 
最近は岩塩プレートを直接舐めることはしなくなりました。 

1.5倍に拡大した上でリプレイ(@11:14〜)。 


シーン11:9/3・午後15:39(@12:15〜) 
次にリスは、スギの根元で落ち葉を舐めていました。 
岩塩プレートから滴り落ちる塩水が落ち葉に染み込んでいるのでしょう。 

やがてリスは奥のスギ幹に取り付いてから、獣道を右へ駆け抜けました。 


シーン12:9/4・午前6:54(@12:33〜)日の出時刻は午前5:09。 
翌朝も、リスはミズナラの根元の落ち葉を舐めに来ていました。 
地面からミズナラの幹に跳びつくと、少しだけ登って樹皮を舐めました。 

やがて奥に飛び降り、スギ幹の下部を経由して、奥に素早く走り去りました。 
1.5倍に拡大した上でリプレイ(@13:16〜)。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


【考察】 
私としては、ウシ科のニホンカモシカが塩場に通うようになると予想(期待)して、カモシカの溜め糞場に岩塩を設置したのです。
ここに出没する野生動物の中で、まさかニホンリスが岩塩を一番気に入ってくれるとは全く予想外でした。

見慣れない不審物に対してリスは当初かなり警戒していましたが、ついに勇気を出して不審な岩塩プレートを味見してみたら、塩だと気づいてくれたようです。 
体が欲する塩分が気に入って、歯で齧り始めました。 
逆さまの体勢を長時間続けても平気なリスの身体能力の高さに驚きます。 

その後リスは塩分を摂取しに、頻繁に通って来るようになりました。 
ニホンリスの観察歴が浅い私には個体識別ができませんが、この山林では生息密度が低いので、おそらく同一個体のリスが塩場に通ってきているのでしょう。
(同一個体と仮定して)同じ日に何度も塩場に来ることもありました。
当地の自然界にはない岩塩はリスにとって強烈な嗜好品となり、ほとんど中毒状態(依存症)になったかもしれません。 

塩分を摂り過ぎると体がパンパンにむくむだけでなく、リスが高血圧にならないか心配です。 
塩を舐めた後は喉が渇くはずですが、リスはどこで水を飲むのでしょうか? 
私は未だニホンリスが水を飲むシーンをトレイルカメラで撮れたことがありません。
というか、リスが通う水場が一体どこにあるか、突き止める必要があります。
もしも真夏の渇水(雨不足)で水場が干上がり、水が飲めなくなると、塩を舐めたリスにとって死活問題になります。
岩塩の横に水場(鳥用の自動給水器)を設置したら、リスは飲んでくれるかな? 

後半になると、リスは岩塩プレートから直接舐めたり齧ったりすることは減り、真下の落ち葉や幹の樹皮を舐めるようになりました。
岩塩が雨で溶けて滴り落ち、濡れているのでしょう。
間接的に塩分を舐めることで、過剰摂取を避けることを学習したようです。


岩塩を舐めに通うリスについて、Copilot AIに質問してみたら、以下の回答が得られました。
はい、リスは塩を舐めることがあります。特に、自然界ではミネラルを補給するために塩を求めることがあります。リスが塩を舐める行動は、体内のナトリウムやその他のミネラルバランスを保つためです²。

野生のニホンリスが塩を舐めるという具体的な記録は見つかりませんでしたが、リスは一般的にミネラルを補給するために塩を求めることがあります²。ニホンリスも同様に、必要なミネラルを摂取するために塩を舐める可能性があります。 

後日(9月上旬)に現場入りした際に、岩塩プレートの状態を写真に撮りました。
リスが岩塩を直接齧った跡が残っています。
しかし素人目には、リスの門歯で削った歯型とは分かりませんでした。







岩塩を野外に放置すると、雨が降る度に少しずつ岩塩が溶け落ちるだけでなく、晴れた日も空気中の水分を吸収して岩塩の表面が濡れてきます。
特に湿度(湿気)の高い環境では顕著です。
これは潮解ちょうかいと呼ばれる現象です。
岩塩プレートにベルト(化繊のストラップ)を2本巻いて木の幹に固定しているのですが、ベルトとの接触面からも重点的に岩塩が溶けていきます。
最終的にはベルトによって岩塩プレートが自然に切断されてしまいそうです。
岩塩の下端はずり落ちてこないように、木ネジで支えています。
岩塩の設置法には改良が必要ですね。




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↑【おまけの動画】 
"We Hung a SALT LICK on a Post in the Woods. We couldn't believe what showed up! Trail Camera" by The Outdoor Theater 

私とは岩塩の設置法が違い、今後の参考になりました。
紐を通せる穴が開いたタイプの岩塩は値段が高いのが難点です。)
トレイルカメラの定点映像で、塩場に登場した色んな野生動物を長期間一気に見せてくれる編集スタイルです。
リスも何度か岩塩を舐めに(かじりに?)来ていたのが私と共通していて興味深く思いました。

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