ラベル 哺乳類 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 哺乳類 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025/10/06

アナグマの巣穴に繰り返し忍び込むホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月上旬〜中旬 

シーン0:7/2・午後13:03・くもり・気温32℃(@0:00〜) 
シーン0:7/2・午後13:38・くもり・気温33℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の様子です。 
ニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)がある平地の二次林にしかけた無人センサーカメラに写ったホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の様子を以下にまとめました。 


シーン1:7/5・午前3:12・気温19℃(@0:07〜) 
深夜に左から忍び寄ったタヌキが、アナグマの巣口Lの匂いを嗅いでから中に忍び込みました。 
巣穴Lの内検を済ませると、後ろ向きで外に出てきました。 
身震いして土の汚れを落としてから、獣道を右上奥へ立ち去ります。 
通りすがりに、ミズキ立木の幹に小便をかけてマーキングしました。 
このとき右後脚を上げたので、♂と判明。 


シーン2:7/5・午前9:50・気温26℃(@0:51〜) 
約6時間半後の明るい朝にも、手前から来たと思われるタヌキが、アナグマの巣口Lを内検しました。 
毛皮が白っぽい個体です。 
巣内に完全には入らず、後ろ向きで出てきてから、左へ立ち去りました。 


シーン3:7/5・午後12:19・気温29℃(@1:16〜) 
約2時間半後の昼下がりに獣道を右から来たタヌキが、慎重に巣穴Lに侵入しました。 
今回も完全には中に入らずに、後退して出てきて左へ立ち去りました。 


シーン4:7/9・午後21:55・気温21℃(@1:43〜) 
4日後の晩に、監視カメラのレンズの至近距離で、ザトウムシの細長い歩脚が怪しげに動いています。 

画面の下からタヌキが登場すると、大胆不敵にも巣穴Lに入り、しばらく出てきませんでした。 



シーン5:7/9・午後21:58(@2:15〜) 
監視カメラの起動が遅れ、3分後に出巣Lしたタヌキが左に立ち去る姿がチラッと写っただけでした。 
しばらくすると、左からタヌキが戻ってきて、獣道を右へ向かいます。 


シーン6:7/12・午前4:28・気温19℃(@2:43〜) 
3日後の未明、獣道を左へゆっくり立ち去るタヌキの下半身の側面が写っていました。 

この時期はなぜかもう1台の監視カメラの調子が悪かったようです。 


【考察】
何度も書いていることですが、タヌキは巣穴の主であるアナグマの家族は留守のときを見計らってやって来るのでしょうか? 
巣穴に不法侵入してもアナグマから撃退されないのが不思議でなりません。 
本当に「同じ穴のむじな」として2種が仲良く同居しているのでしょうか? 
まさか「同じ穴の狢」のタヌキは、アナグマの体臭を身にまとって、化学擬態しているのかな? 


つづく→

2025/10/05

ニホンアナグマ母子家族(幼獣3頭)の暮らし:7月中旬〜下旬【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月中旬〜下旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)がある平地の二次林を2台のトレイルカメラで見張っています。 
 この時期に撮れた、母親♀と当歳仔(幼獣)3頭の暮らしぶりをまとめてみました。 


シーン1:7/15(@0:00〜) 
初めは幼獣が2頭しか登場しなかったので、また更に1頭減ったのかと心配したのですが、やがて残りの幼獣1頭が外出から無事に帰巣しました。(@2:45〜) 
ひたすら格闘遊びを続ける2頭の兄弟姉妹に合流したので一安心。 


シーン2:7/16(@16:31〜) 
母親♀の同伴なしで、幼獣だけで夜の採餌に出かけたようです。 


シーン3:7/21・(@17:48〜) 
5日ぶりに母親♀と幼獣3頭が写り、生存確認ができました。 
トレイルカメラが電池切れだったという訳ではなくて、長らく留守にしていた家族が営巣地(セット)に戻ってきたようです。 
おそらく別宅(当歳仔を出産した巣穴)がどこかにあるのでしょう。 

これまで写っていたのは夜行性だったのですが、この日は夜だけでなく昼間にも活動していました。 
モノクロではなくフルカラーの映像でアナグマを見たいという人は、ここから(@20:37〜)ご覧ください。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→

2025/10/04

夏の夕方にアナグマの営巣地でマルバゴマキの葉裏に眼下腺マーキングするニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月中旬

シーン0:7/2・午後13:03・くもり・気温32℃(@0:00〜) 
シーン0:7/2・午後13:38・くもり・気温33℃(@0:04〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の状況です。
平地の二次林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)を2台の無人センサーカメラで見張っています。 


シーン1:7/12・午後18:50・気温22℃(@0:07〜)日の入り時刻は午後19:06。 

薄暗い夕方にニホンカモシカCapricornis crispus)が久しぶりにやって来ました。 
首を伸ばすと、アナグマの巣口R近くに生えた細いマルバゴマキ(別名マルバゴマギ、ヒロハゴマキ、オオバゴマキ)灌木の匂いを嗅いでいます。 
そして灌木の葉裏に眼下腺からの分泌物を擦りつけてマーキングしました。(縄張り宣言の匂い付け) 


カモシカはその場にしばらく佇んでから、左に立ち去りました。 
アナグマ家族が住む巣穴には全く興味がない(眼中にない)ようです。 


ちなみに、画角の右端に垂れ下がって目障りな物体は、撮影の邪魔をするザトウムシを捕獲するために巻いておいたガムテープが幹から剥がれてしまった物です。 
雨に濡れて粘着性が自然に失われたようです。 
監視カメラにお邪魔虫が写らなくなったので喜んでいたら、こういう想定外のトラブルが起こります。 







シーン2:7/12・午後18:51・気温21℃(@0:47〜) 
別アングルで設置した監視カメラにも写っていました。 
左から来たカモシカが、マルバゴマキの葉裏に眼下腺マーキングしました。 

角が細いので、まだ若い個体のようです。 
立ち去る後ろ姿の股間に睾丸のような物がぶら下がっていたので、♂ですかね?(自信なし) 

アナグマの家族は巣内で寝ているのか(それとも留守なのか)、巣穴から飛び出してきて巨大な侵入者を追い払うことはありませんでした。 
アナグマとカモシカのニアミスしたらどうなるのか、見てみたいものです。

カモシカがトボトボとゆっくり歩いて獣道を右に立ち去る際に、体をミズキ立木の幹に擦り付けて行きました。 


こっちのトレイルカメラの上にはザトウムシが居座っているようで、細長い歩脚がレンズに掛かって目障りですね。 
せっかく私が設置した粘着トラップの効果が薄れてしまったようです。 
ザトウムシ対策として良いアイデアだと思ったのに、どうやら耐久性に問題があるようです。 


つづく→

子猿をおんぶや抱っこで運びながら砂防ダムを渡って逃げるニホンザル♀の群れ

 

2024年7月上旬・午前10:50頃・くもり 

里山から流れ出る沢の水が大雨のときに土石流となって里の集落を襲わないように、山麓の砂防ダムで治水管理しています。 
この砂防ダムで野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れをよく見かけるのですが、この日も通りかかったら猿がいました。

この砂防ダムは、遊動経路の便利な橋(獣道)として使われているようです。 
猿にとっては安全な避難場所や遊び場にもなっています。 

しかし今回のニホンザルたちは私の姿を見た途端に警戒し、コンクリート堰堤を渡って対岸へ逃げてしまいました。 
私の方を振り返りながら逃げて行く母親♀の背中に子猿がおんぶして運ばれていきます。 
続けて手前からノソノソと歩いて来た別の母親♀の腹には、子猿がしがみついていました。

2025/10/03

ニホンアナグマの母子が暮らす営巣地にヘルパーが合流【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月中旬・午後21:30頃・気温21℃ 

夜の営巣地(セット)でニホンアナグマMeles anakuma)の母親♀と当歳仔の幼獣3頭がいつものように、のんびり過ごしています。 
巣口Lで穴掘りしようとしている母親♀(右目<左目)の横で、構って欲しい幼獣が邪魔しているようです。 



そこへ意外な訪問者が来たのです。
ヘルパー♂と思われる別のアナグマ成獣が右から登場しました。 
巣口Lで母親♀と顔を合わせると、気まずそうに(遠慮して?)少し離れました。 

この侵入者?(ヘルパー♂)に対して幼獣は怯えることはなく、尻の匂いを嗅いで身元を確認しました。 
ヘルパー♂はこの幼獣に対他毛繕いをしてやりました。 
以前から顔馴染みの家族であることが分かります。 

母親♀が威嚇してヘルパー♂を縄張りから追い払ったか訳でもないのに、ヘルパー♂は早足で獣道を右へ逃げて行きました。 
しばらくすると、姿を消したヘルパー♂の後を追うように、母親♀と幼獣1頭が獣道を右へ向かいました。

営巣地に戻ってきた母親♀が巣口L、Rを順に点検し、留守中に異常がなかったかどうか確認しています。 
しばらくすると、ヘルパー♂らしき成獣も獣道から戻ってきました。
母親♀よりも体格が大きく見えるのは、監視カメラの遠近法のせいではなく、性的二型でアナグマの♂はやや大柄なのです。 

営巣地の広場で♀?が幼獣2頭に対他毛繕いしてから、幼獣を連れて右に立ち去りました。 
幼獣1頭がセットに居残っています。 


【考察】 
6月下旬にアナグマの母親♀が子連れでこの旧営巣地に転入してきました。 
しばらくは母子家族だけで暮らしていたのですが、ときどきヘルパー♂と思われる別個体の成獣が営巣地に出没し、匂い付けだけして帰りました。 
7月中旬になって、ヘルパー♂がようやく母子家族とセット(営巣地)で合流したようです。 

トレイルカメラの映像だけを見て素朴に解釈すると、アナグマは一夫一妻のように見えるかもしれません。
今回、久しぶりに父親♂が母子家族と再会できた、という解釈です。
しかし前提として、ニホンアナグマの♀は特定の♂と一夫一妻のつがい関係を結ばないことが分かっています。
たとえ交尾したとしても♂と♀は別居して暮らし、アナグマの父親♂は子育てに参加しません。
その代わりに、前年仔の中から選ばれた息子♂がヘルパーになり、当歳仔を育てる母親♀を助けることがあるのです。(特に巣穴の拡張作業を担当)
下線部についてはまだニホンアナグマ生態の定説となってはいないのですが、私の観察結果の解釈です。
鳥など他の生き物で見られるヘルパーは子育ての練習も兼ねて娘が務めるのが普通ですけど、この点でアナグマのヘルパーは違って独特なのです。
母親♀とたまに同居するアナグマ♂(おそらく父親ではなく前年仔の息子)の役割がヘルパーの定義に当てはまるかどうか微妙だったので、ヘルパー♂が巣穴の掘削以外にも、幼獣に対して対他毛繕いしてやることが観察できたのは大きな収穫です。

登場するアナグマの個体識別を厳密にできていないのが問題です。
全個体の血液を採取してDNA鑑定をすれば正確な血縁関係も分かるはずですが、素人にはとても無理です。

細かい事情を毎回長々と説明するのが面倒なので、新たに合流した成獣♂を今後は本ブログでヘルパー♂と呼ぶことにします。
「定説に反して、実はニホンアナグマもタヌキのように一夫一妻だった!」という解釈でブログを書くこともできそうですが、私はその解釈を採用しません。

最近行方不明になった(迷子?)幼獣1頭がヘルパー♂と行動を共にしているのかと一縷の望みを託していたのですが、そんなことはありませんでした。 


2025/10/02

アナグマの営巣地を夏の昼間にうろつくホンドテン【トレイルカメラ】

 



2024年7月中旬・午前10:20頃・気温22℃ 

ニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地がある二次林を自動撮影カメラで見張っていると、ホンドテンMartes melampus melampus)が久しぶりにやって来ました。 
この地点では4ヶ月ぶりの登場です。 
テンが明るい時刻に現れたのも珍しいです。 
しかし夏の朝10時過ぎなのに、鬱蒼と生い茂った林冠で日光が遮られているため、かなり薄暗いです。 

ホンドテンは林床を小走りでうろつき、餌を探しているようです。 
アナグマ家族とテンのニアミスを期待したのですが、今回もありませんでした。 

最近アナグマ家族の幼獣(当歳仔)が1頭行方不明になっているのですけど、ひょっとしてテンに捕食されてしまったのでしょうか? 
Perplexity AIに相談すると、かなり否定的な見解でした。
テンの獲物はもっと小動物らしいです。

つづく→

2025/10/01

幼獣が1頭減っても元気に暮らすニホンアナグマの母子家族:7月中旬【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月中旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)がある平地の二次林を無人センサーカメラで見張っています。


シーン1:7/13(@0:00〜) 
シーン2:7/14(@10:58〜) 

※ 動画の一部は画編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
特筆すべきは、今季産まれた幼獣(当歳仔)の数がいつの間にか4頭から3頭に減っていました。 
トレイルカメラの電池切れや記録メディアの容量切れで生じた観察の空白期間に一体何が起きたのか気になります。 
子別れするにはまだ早いと思うのですが、交通事故にでも遭ったのでしょうか? 
近所のアンズの木の下に設置した監視カメラでも、写っていたアナグマ幼獣は3頭でした。 


幼獣の1頭が行方不明になっても、残りの家族は別に悲しんでいる様子はありませんでした。
3頭の幼獣は相変わらず暇さえあれば無邪気に遊び回っています。 

動画の途中で幼獣がさらに減り(2頭だけになって)焦ったのですが、しばらくすると3頭に戻りました。 
おそらく1頭の幼獣が巣穴で寝ていたか、あるいは独りで採食のため外出していたようです。 



2025/09/30

山中の湿地帯を晩にうろつくニホンイノシシの群れ【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2024年7月中旬 

シーン0:7/5・午後13:27・晴れ・気温33℃(@0:00〜) 
シーン0:7/5・午後13:31・晴れ・気温32℃(@0:04〜) 
明るい昼間にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。 
山林の中に少し開けた湿地帯があり、湧き水が滲み出して浅い水溜りになっています。 
水場に来る生き物を2台の自動撮影カメラで見張っています。 

ある晩に群れで何度も繰り返し登場したニホンイノシシSus scrofa leucomystax)の行動を以下にまとめました。 


シーン1:7/12・午後19:23・小雨・気温19℃(@0:08〜) 
小雨がぱらつく晩に起動した監視カメラが不規則に振動し、カメラの死角から獣の鼻息が聞こえます。 
どうやら野生動物が通りすがりにカメラの三脚とぶつかったようです。 

やがてイノシシ3頭の群れが登場しました。 
並んで水溜りSを渡りましたが、水を飲んだり泥浴びしたりしませんでした。 


シーン2:7/12・午後19:23・小雨・気温19℃(@1:24〜)
別アングルで設置した監視カメラに続きが写っていました。 
右から来たイノシシは水溜りNに入ったまま、しばらく佇んでいます。 
監視カメラの存在に気づいて警戒しているのか、飲水もヌタ打ちもしてくれません。 

もう1頭のイノシシと一緒に、キツネノボタンが繁茂する湿地帯をうろついています。 


下草を採食しているようですが、肝心の口元がよく見えません。 
ニホンイノシシが有毒植物のキツネノボタンを食べたかどうか、気になります。
草食動物が毒草を忌避して食べ残したからこそ、キツネノボタンの大群落ができたのではないかと考えています。


シーン3:7/12・午後19:39(@2:09〜)
約15分後、雨は止んだようです。 
またイノシシが1頭、現れました。 
先程の群れの1頭だけ戻ってきたのか、それとも別個体なのか、私には見分けがつきません。 

水溜りNをジャブジャブ横断すると、右下手前に立ち去りました。


シーン4:7/12・午後19:54・気温19℃(@2:22〜) 
さらに15分後、再びイノシシが単独で水溜りSの手前を右から左へ横切りました。 
尻の尻尾を左右に振り立て、小声の低音でブー♪と鳴きました。 
今回は水溜まりSに入りませんでした。 


※ イノシシの鳴き声や鼻息、雨音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


少なくとも3頭以上の群れでした。
なんとなく素人目には若い個体の群れのように見えたのですが、イノシシ観察歴の浅い私には、どういう関係の群れなのか、よく分かりません。

つづく→

群れの最後尾を歩き山道で私と堂々とすれ違うニホンザル♂(最後に威嚇?)

 



2024年7月上旬・午後13:55頃・晴れ 

里山で雑草が生い茂った細い林道を下からニホンザル♂(Macaca fuscata fuscata)がノシノシと歩いて登って来ます。 
先行する群れの仲間は林道から外れて藪の中に入り、私を迂回してすれ違いました。 
ところが、この個体♂は臆せず私にどんどん近づき、山道に突っ立ったまま撮影している私の横を通り抜けようとしています。 
すれ違う際に私が上半身をねじって流し撮りしようとしたら、さすがにニホンザル♂は警戒しました。 
横の笹薮に入って最小限に迂回し、無事にすれ違いました。 
(私が振り返らずにじっとしていれば、そのまま林道を歩いて横をすれ違っていたはずです。) 
このときニホンザルの股間に睾丸がちらっと見えたので、性別が♂と判明。 

私の横を迂回したニホンザル♂が、林道に戻ってきました。 
ちらちらと振り返りながら、群れを追って山道を登って行きます。
後ろ姿の股間を見ると、発情期にはまだ早いのですが、発達した睾丸が紅潮していました。
短い尻尾をピンと立てて威厳を持って堂々と歩いていますし、私とすれ違うときのあまり恐れない態度も他の個体とは明らかに違いました。
この群れで最上位のα♂ではないかと推測しました。 

最後にニホンザル♂は口を大きく開けてから、道なりに曲がって姿を消しました。(@1:51〜) 
生理現象の欠伸ではなくて、私に対して犬歯を誇示する威嚇だったのかもしれません。 
このα♂個体が群れの最後尾を遊動していたようで、これ以降は猿と出会えませんでした。 



【考察】
今回登場したニホンザルの♂個体が「群れのしんがりを務めていた」と言えるかどうか、微妙です。
ChatGPTと相談してみると、
日本語の「しんがり」はもともと軍事用語で「退却時に最後尾で敵を防ぎつつ味方を守る役目」を指します。つまり本来は 「退却時」限定の任務名 です。
ですので「しんがりをつとめる」という表現を厳密に使うと、ただ単に通常の行進や行列で最後尾にいる人には使いません。

もちろん私は猿の群れを攻撃したり挑発したりしませんでしたが(※ 追記参照)、何かあればこの最後尾の♂個体は、本来の意味でしんがりを務めたのではないでしょうか。
日本語の「しんがり」は「撤退時の後衛」という軍事用語に由来しますが、比喩的に「群れや集団の最後尾にいて、いざというとき仲間を守る役割を担う」ことも表せます。

ニホンザルの群れに当てはめれば、「最後尾にいたα♂が、もし人間などからの危険があれば群れを守る立場にあったのでは」という解釈は自然です。

これまで私が野生のニホンザルを観察してきた経験では、群れの遊動中にどの個体が先頭を歩き(斥候)、どの個体が最後尾を歩くか(殿しんがり)、決められた役割分担はないようです。
つまり、野生ニホンザルの行動の一般論として「α♂はいかにもボス猿らしく、常に群れのしんがりを務める」という訳ではありません。
たまたま今回はそうだった、というだけです。

ニホンザルに限らず、多くの霊長類では「誰が常に先頭」「誰が常に最後尾」という固定的な役割分担は確認されていません。個体の順位・性格・状況(採食地の位置、危険の有無など)によって柔軟に変わります。

今回特に、α♂が去り際に口を大きく開いた行動が興味深いです。
欠伸ではなくて、犬歯を私に見せつけて威嚇した可能性があります。
しんがりとして群れを守る行動の片鱗を見せた、と解釈するのは無理があるでしょうか?
結論から言うと、「しんがりを務めた」と断言するのは少し踏み込みすぎですが、「そのように解釈できる可能性はある」と書く余地はあります。

行動学的な整理

口を大きく開ける行動
ニホンザルの成体♂が口を開けて犬歯を見せるのは、あくび(生理的行動)とは異なり、しばしば威嚇 displayとして用いられます。特に相手に対して「自分は強い」「近づくな」というシグナルになり得ます。

群れの最後尾での威嚇
群れが退却・通過しきるタイミングで最後尾の個体が振り返ったり威嚇したりするのは、「自分と群れの間合いを守る」行動と解釈可能です。

「しんがり」の解釈
軍事的な「殿(しんがり)」のように計画的・役割的に守ったとまでは言い切れません。ニホンザルには固定的な殿役は確認されていないからです。
ただし、「たまたま最後尾に位置した高順位個体が、通過後に人間へ威嚇行動を示した」という事実は、結果的に群れを守るような機能を果たしていたと見ることはできます。

書き方の工夫

もし観察記録に書くなら:

事実:最後尾を歩いていたα♂が、通過の際に口を大きく開いて犬歯を見せた。

解釈の余地:「単なる威嚇 display かもしれないし、結果的に群れの“しんがり”として防衛的な役割を担っていたとも考えられる」


※【追記】
野生のニホンザルと遭遇した際に、目を直視してはいけません。
ヒト同士のコミュニケーションでは「目を見て話す」ことがエチケットとして重要視されますが、ニホンザルの世界では真逆なのです。
ニホンザル同士の行動を観察していると、気になる相手を横目でチラチラ見るだけなのが分かるはずです。
相手の目をじっと見つめるのは「睨みつけた」と解釈され、敵対的・挑発的な行動とみなされます。
群れ内で劣位の個体は、上位の個体に睨まれると、悲鳴を上げて逃げていきます。
もしあなたが小柄な体格の女性や子供の場合は、無意識に(悪気なく)猿の目をじっと直視するだけでも、「無礼者! 舐めとんか!」と猿が怒って攻撃してくる可能性もあるので危険です。

たとえ餌付けされていない野生群でも、ニホンザルを怖がらせずに至近距離から長時間撮影するには、コツがあります。
私は常にデジカメの液晶画面(バックモニター)を見るようにして、猿の目を絶対に直視しないようにしています。
できれば、デジカメのファインダーを覗きながら撮影すれば、顔が隠れて猿に無用な恐怖心を与えません。
「見ざる・言わざる・聞かざる」という戒めの諺は、両手で目・耳・口を塞ぐ「三猿」として表されます。
猿を刺激しないためには、こちらが目を塞いで接することが大切です。

我々ヒトがサングラスを着用する効用として、遮光の他に、自分がどこを見ているのか視線を隠すことができます。
しかし、対峙したニホンザルにとって見れば、ただ顔にとてつもなく大きな目があると思うだけです。
サングラスを付けた顔の向きによっては、「巨大な目で無礼に直視された」と猿に誤解されるリスクがありますから、猿から顔を少しそむけて横目で見るようにするのがよいでしょう。
ニホンザルが怖い人は、どうしても「襲われるんじゃないか」とビクビクしながら油断なく直視してしまうのですが、逆効果です。



2025/09/29

ニホンアナグマの母子はアンズの落果を食べるか?【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2024年7月中旬

シーン0:7/5・午後15:20・晴れ(@0:00〜) 
アンズ(杏)の木の下に散乱していた落果を拾い集めて1箇所にまとめて置き、無人センサーカメラで見張っています。 

ニホンアナグマMeles anakuma)家族の登場シーンを以下にまとめました。 
アナグマの営巣地(セット)がある二次林と今回の現場は連続していて、おそらく彼らの行動圏と思われます。 


シーン1:7/11・午前2:19・雨天(@0:05〜) 
梅雨の雨が降りしきる深夜に、獣道を右からアナグマの成獣がやって来ました。 
毛皮が雨で濡れています。 

地面を爪の生えた前足や鼻面で浅く掘り返し、好物のミミズを探しているのでしょう。 
背側からのアングルでは分かりづらいのですが、腹面に乳首がちらっと見えたので、このアナグマ成獣は母親♀のようです。 
アンズ落果の山にはほとんど興味を示さず、左へ立ち去りました。


シーン2:7/11・午前3:49・雨天(@0:47〜) 
1時間半後には、アナグマの母子が同時に登場しました。 
全員の毛皮が雨で濡れそぼっています。 

林床の下草を掘り返しながら、うろついています。 
しかし、依然としてアンズ落果を食べようとはしません。 

近所のアナグマ営巣地(セット)では母親♀と4頭の幼獣(当歳仔)を確認しているのですけど、ここでは3頭の幼獣しか写っていないようです。 


シーン3:7/11・午前3:54(@1:37〜) 
5分後にもアナグマの幼獣が再び現れ、走り回っています。 
雨は止んでいました。 


シーン4:7/11・午後23:56(@1:49〜) 
次にアナグマが来たのは20時間後でした。 
基本的にアナグマの採食行動は夜行性なのでしょう。 
この地点でアナグマが昼間に写ることはありませんでした。
しかし昼間は巣穴でずっと寝ているという訳ではなく、営巣地に設置した監視カメラでは、昼間も活発に遊んだりしていました。 

深夜に獣道を右から来たアナグマ成獣が怪しい監視カメラを見上げました。 
左右の目(タペータム)が左右均等だったので、母親♀ではない別個体(ヘルパー♂?)のようです。 

毛皮が夜露で濡れています。 
地面に尻を付け(スクワットマーキングの匂い付け?)、身震いしてから、左へ立ち去りました。 


シーン5:7/12・午前1:45(@2:13〜) 
日付が変わった深夜にもアナグマが来て、アンズ落果の山の右隣りで地面を浅く掘り返していました。 
本当にミミズを食べているのか確かめたいのですが、手前に生えた下草が邪魔で、肝心の口元が見えません。 
右へ立ち去ったかと思いきや、戻ってきて左へ横切りました。 


※ 雨音やアナグマの鼻息などが聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】 
結局、ニホンアナグマは熟したアンズの落果を一度も口にしませんでした。
アミグダリンという毒が含まれているので、忌避しているのかもしれません。 
アンズ以外で無毒の果物を置いていたら、アナグマは食べてくれたかな?

アナグマ母子の行動圏が垣間見えたのが一番の収穫です。
この辺りは平地の二次林やスギ防風林が連続していますから、営巣地(セット)➔溜め糞場stmp➔アンズの木と順に辿ってきたのかもしれません。
もっと多くのトレイルカメラをあちこちに設置したいのですけど、機材を買い足す予算がありません。

夜の水溜りで顔を洗うフクロウと周囲を飛び回るコウモリ【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月中旬〜下旬 

シーン0:7/16・午前11:45・晴れ・気温32℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
山林の中に少し開けた湿地帯があり、湧き水が滲み出して浅い水溜りになっています。 
水場に来る生き物を無人センサーカメラ(新機種)で見張っています。 

夜な夜な通ってくるフクロウStrix uralensis)の登場シーンを以下にまとめました。 


シーン1:7/16・午後20:00・気温20℃(@0:03〜) 
久しぶり(15日ぶり)にフクロウが水場に来てくれて、ほっと一安心。 
辺りを見回して安全を確認してから、歩いて水溜りSに入水。 

やがて水面に漬けた顔を左右に素早く振って、洗顔を始めました。
我々ヒトのように手を使って顔を擦り洗いすることができないので、フクロウはこの洗顔法を編み出したようです。 

洗顔中にフクロウが足踏みする理由が私には分かりません。 
これから本格的に水浴をするのなら、わざわざ泥で水を濁らせなくてもいいのに、と素人目には思ってしまいます。 
浅い水溜りの底を足で掘って少しでも深くしたいのでしょうか。 
水底に潜む獲物を探しているのかな? 
もしかすると、この水溜りは浅く見えても底なし沼のようになっていて、足踏みし続けないとどんどん沈んでしまうのかもしれません。

結局、最後まで見届けられずに2分間の録画時間が終わりました。


シーン2:7/21・午後22:11・気温27℃(@1:40〜) 
5日後の晩遅くにもフクロウが写っていました。 
最近イノシシがヌタ打ちしたり泥濘を掘り返したりしたせいで、水溜まりSの地形が少し変わってしまいました。(映像公開予定) 

フクロウが後ろ向きで入水すると、水溜まりの中で足踏みしながら方向転換しました。 
このときコウモリの一種が上空を飛来しました。 
しかし何度も旋回するだけで、フクロウが来ている間は水溜りの水面に着水しませんでした。 
コウモリは超音波によるエコロケーションで、水場の状況をしっかり把握しているようです。 
飛びながら虫を捕食しているのでしょう。

フクロウは周囲を飛び回るコウモリを気にせずに、洗顔開始。 
泥水に脚を浸しながら、辺りをキョロキョロ見回しています。
今回も飛び去るまで見届けられませんでした。 


シーン3:7/22・午後23:15・気温22℃(@3:12〜) 
翌日も深夜にフクロウが来ていました。 
此岸から泥濘を歩いて入水すると、キョロキョロと辺りを見回しています。 
やがて力強く羽ばたくと、左上に飛び去りました。 
なぜか今回は洗顔も水浴もしませんでした。 
熱帯夜というほど気温は暑くないのですが、体を水で冷やしに来ただけのようです。 
それとも何か異変があって逃げたのかな?


シーン4:7/22・午後23:19(@3:55〜) 
3分後にフクロウが戻ってきました。 
(個体識別できていないので、別個体の可能性もありえます。) 

水溜りに入ると、すぐに顔を洗い始めました。 
辺りをキョロキョロ見回して警戒を怠りません。 


※ 水音や羽音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】
結局この時期のフクロウは、水溜りで本格的な水浴をしてくれませんでした。 

神垣健司『森の賢者 フクロウ』という本を読んでいたら、「第4章 水場のフクロウ」に私が観察したことと同じ行動が書いてありました。
水場が浅いせいか、フクロウは水場でからだを前屈みにして、まるで顔を洗うように水を浴びる。水場をぐるぐる歩きながら、顔を水につけて洗っていることもあった。雨に日にも(原文ママ)水場で水浴びをするが、雛が巣立って森を離れるとフクロウは水場に姿を見せなくなる。(p42より引用
筆者のフィールドは広島県で、YouTubeチャンネルも開設しておられます。

つづく→

2025/09/28

土砂降りの日に水溜りの中から落枝を拾い上げて遊ぶニホンカモシカの幼獣【トレイルカメラ】

 


2024年7月中旬・午後15:35頃・雨天・気温20℃ 

山林内の湿地帯にある泥水溜りを2台の無人センサーカメラで見張っています。 
土砂降りの雨が降る昼間に、ニホンカモシカCapricornis crispus)の幼獣が単独で現れました。 
毛皮が雨で濡れそぼっています。 

 水溜まりSに来ると、カモシカ幼獣はジャブジャブと渡り始めました。 
水面に顔を近づけたものの、水を飲むでもなく、ただ匂いを嗅ぎ回って何かを探索しているようです。 

 水溜り内の泥濘に突き刺さっていた短い落枝が気になったようで、カモシカ幼獣は口で咥えて拾い上げました。 
ところが、ちょっと甘噛みしただけで、すぐに落枝を捨ててしまいました。
もう1本別な棒切れを水溜まりの中から口で引き抜くと、ちょっと弄んでから捨てました。 
棒切れ(短い落枝)を何か餌と誤認したとは考えにくいので、好奇心旺盛な幼獣による遊びの行動と思われます。 

首をねじって、雨で濡れた毛皮を口で毛繕いしてから、立ち去りました。 

母親♀は幼獣と別行動なのか、最後まで姿が見えませんでした。 
子別れするにはまだ時期が早いと思うのですが、母親からはぐれてしまったのかな? 

梅雨の大雨によって2つの水溜まりS、Nから水が溢れてつながり、一つの巨大な水溜まりになりつつあります。 
20分後には雨が止んで晴れました。(映像は割愛。) 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 雨音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】
このカモシカ幼獣の行動は、動物の遊びと解釈できるでしょうか?
今回はChatGPTとのブレインストーミングがとても役に立ちました。
「まるで小枝で遊んでいるように見えた」というだけでは、観察者の主観や擬人的な解釈に過ぎません。
カモシカ幼獣が本当に楽しんでいるかどうか、感情を読み取れないのが問題です。
「あまりにも厳格に擬人化を排除すると、動物行動学で《遊びの行動》を扱えなくなるのではないか?」と素人ながら心配してしまいます。
その通りです。動物行動学では「遊び(play)」というカテゴリーは確かに存在し、研究でも広く使われています。ただし、学術的には「遊び=楽しんでいるかどうか」ではなく、特定の観察可能な行動パターンとして定義されます。

例えば、Burghardt の動物遊びの定義では:

遊びは 通常の機能(狩り、攻撃、防衛など)とは異なる行動パターン を含む

自主的に繰り返される

本来の目的に直接結びつかないが、学習や身体能力の発達に役立つ可能性がある

このように定義すれば、観察者が「楽しんでいるかどうか」を推測せずとも、遊びの行動として客観的に記録できるのです。


あなたの観察記録はまさに Burghardt の定義に沿った遊び行動(play behavior) の典型例として記述できますね。ポイントを整理すると:

  1. 主体:カモシカの幼獣(juvenile serow)

  2. 状況:雨の大雨の日、単独で水場に訪問

  3. 対象物:泥に刺さった短い落枝(sticks)

  4. 行動の内容

    • 口で咥えて引き抜く

    • 軽く甘噛みする

    • 捨てる

    • 別の枝でも同様の行動を繰り返す

  5. 解釈

    • 食べ物としてではなく、好奇心や遊びの動機による行動

    • 自発的で繰り返しがある

    • 本来の機能(摂食)とは直接関係がない



今回の行動は exploratory behavior(探索行動) と解釈することも十分可能です。

理由は以下の通りです:

  1. 観察される行動の内容

    • 枝を咥えて引き抜き、軽く噛んで捨てる

    • 繰り返して別の枝も同様に扱う

    → これ自体は「対象物の性質を確認している」「環境を探っている」行為としても説明可能。

  2. Burghardt の遊びの定義との重なり

    • 自発的である

    • 本来の機能(摂食など)とは直接関係がない

    → 「探索行動」と「遊び行動」は観察上の特徴が重なることがあります。つまり、両方の解釈が可能です。

  3. 科学文献での使い分け

    • Exploratory behavior は、「好奇心や情報収集のための行動」を中立的に示す表現

    • Play behavior は、「機能的目的とは異なるが学習や身体能力の発達に関連する行動」を強調

    • 観察だけでは「楽しんでいるか」は分からないため、より中立的に記録する場合は exploratory behavior を使うことが多い


結論として、今回のカモシカ幼獣の枝操作行動は play behavior と解釈しても良いし、より中立的に exploratory behavior として記録しても良い という二重の解釈が可能です。


動物による道具使用には厳密な定義があります。
それと同様に、動物がある物体を玩具(おもちゃ)として使った(もて遊んだ)と言うのにも、厳密な条件や定義があるのでしょうか?

はい、動物が「物体を玩具として使った」「弄んだ」と解釈する場合にも、科学的には厳密な条件や定義があります。道具使用(tool use)の定義と同様に、遊びや玩具行動も単なる主観的印象ではなく、観察可能な行動パターンに基づいて区別されます。


1. 動物遊び(play)の定義

Burghardt, G. M. (2005). The Genesis of Animal Play: Testing the Limits. MIT Press. によると、動物の遊び行動には主に次の条件があります:

  1. 自発的であること(Voluntary)

    • 強制されず、主体的に行われる行動である。

  2. 通常の機能とは異なること(Non-functional in the immediate sense)

    • 摂食、防御、攻撃など生存の直接目的には結びつかない。

  3. 繰り返されること(Repeated)

    • 同様の行動が何度も観察される。

  4. 動作パターンが変形・過剰・速すぎるなど、非日常的であること(Pattern modified)

    • 通常行動のバリエーションや誇張形態がある。

さらに 物体遊び(object play) の場合は:

  • 動物が物体に興味を示し、操作・噛む・転がす・投げる・持ち上げるなどの行動を行う

  • 行動は通常の摂食や攻撃などの機能に直接関与していない

  • 行動が反復されることが多い


2. 「玩具として使った/弄んだ」の科学的条件

  • 目的が摂食や攻撃ではない

    • 食べ物と誤認した場合は遊びとは言えない

  • 対象物は外部環境に存在する物体

    • 枝、石、葉、人工物など

  • 主体的・反復的な操作

    • 一度咥えて捨てるだけでなく、繰り返し操作することが多い

  • 観察上、快感・楽しさの直接証拠は不要

    • 「楽しんでいるか」は推測ではなく、行動パターンで判断


結論として、「動物が物体を玩具として使った」ことは、行動パターンに基づき科学的に定義できるが、感情や楽しさの有無は推測に留まります。
つまり、カモシカ幼獣が棒を口で咥えて弄んだ行動も、観察記録と行動パターンに基づけば「object play」として科学的に記述可能です。



つづく→

2025/09/27

ニホンアナグマ母子家族の日常生活:7月上旬【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月上旬

シーン1:7/2(@0:00〜) 
平地の二次林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)を無人センサーカメラで見張っています。 
特筆すべき面白い行動はすでに個別の記事で紹介したので、今回は出涸らしです。 
残り物でも1時間40分間という長編映画になりました。 

林床に散開して採食するシーンや、4頭の幼獣がひたすら遊び回る様子、互いに毛繕いをする様子などが写っています。 
幼獣の遊びというのは、互いにくんずほぐれつの取っ組み合いをしたり、追いかけっこをしたり、木登りに挑戦しては転げ落ちたりしています。 
遊びながら、たまに鳴き声♪を発していました。 
見ていて微笑ましく、飽きることがありません。 
まだ幼獣が母親♀に甘えることもあり、そんな幼獣に母親♀は対他毛繕いをしてやります。 

林縁で株立ちしたミズキの根元付近の幹は、アナグマ幼獣たちのお気に入りの遊び場です。 
頻繁によじ登ろうとするために、株立ちしたミズキ幹の根元が毛皮で磨かれて黒光りしています。 
母親♀もこのミズキの木の下でよく寛いだり、幼獣の面倒を見たりしています。 


シーン2:7/3(@5:52〜) 
晩には(午後20:15〜)土砂降りの大雨が降っているのに、家族で元気に巣外で活動していました。 
さすがに幼獣達は雨宿りのため、巣内に一時避難しました。 
雨が小降りになると、再び巣外に出てきました。 


シーン3:7/4(@7:43〜) 

シーン4:7/5(@14:16〜) 
夜明け前に監視カメラが起動すると、まだ暗いのになぜか赤外線の暗視モードに切り替わりませんでした。 
仕方がないので、動画編集で自動色調補正を施すと、粗いモザイクの映像ですが、辛うじて母親♀がうろついている姿を確認することができました。 

ニホンアナグマは夜だけでなく、昼間も活動しています。 
この日の映像が一番見応えがあるかもしれません。 


シーン5:7/6(@54:17〜) 

シーン6:7/7(@1:22:58〜) 
夕方になると、林内でヒグラシ♂が物悲しげに鳴いています。 


シーン7:7/9・午前後・気温(@1:33:56〜) 
明け方になると、林内でヒグラシ♂が物悲しげに鳴き始めました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


2025/09/26

アズマモグラの腐乱死骸を食べ尽くすウジ虫

 

2024年7月上旬・午前10:40頃・晴れ 

山麓の遊歩道で小動物の腐乱死体を見つけました。 
死骸の前足に鋭い爪が発達していることから、おそらくアズマモグラMogera imaizumii)だろうと推測しました。 
腐敗と生物分解が進み、毛皮はもはや残っていません。 
皮膚も溶けかけたような状態です。 
 
なぜか頭部が失われた死骸には夥しい数の白い蛆虫(ハエの老熟幼虫)が蠢いていて、腐肉や内臓をほぼ食べ尽くしたようです。 
モグラの背骨と肋骨が見えます。 
小さな骨片が散乱しているのは、虫が運び去ろうとしたのかな?

小さなハエ(種名不詳)の成虫や微小な赤アリ(種名不詳)も腐乱死体に群がっていました。 
 死臭に誘引されたエンマムシの仲間が画面の上部から歩いて来て、そのまま死骸の下に潜り込みました。 

現場は地面がアスファルトではなくコンクリートで舗装されていました。 
動物の死骸を食べてくれる掃除屋たち(シデムシなど)は普通、死骸を見つけたら迅速に地中に埋めるはずですが、ここでは固いコンクリートに阻まれたようです。 
夏の舗装路に放置された死骸はあっという間に干からびてしまう(乾燥ミイラ化)ことが多いのですけど、今回はなんとか生物分解されたようです。 
あと数日できれいに白骨化するはずです。


【追記】
このは No.1 食べるって楽しい!』というナチュラリスト向けのムック本(季刊?)を読んでいたら、今泉忠明『モグラたちの地中生活』と題した章があり、モグラの天敵について詳しく書いてありました。
彼らの天敵は、フクロウやオコジョ、イイズナ、キツネ、アナグマ、ノスリなどかなり多い。オコジョやイイズナは穴に侵入してモグラを襲う。アナグマやキツネはトンネルを掘り開き、ノスリはトンネル内で採食中のモグラを地表から攻撃する。フクロウのペリット()にモグラの毛や顎の骨などが含まれていることがあるのだが、どのように地中のモグラを捕らえるのか長く謎だった。モグラは夜間、地上でバッタやコオロギなどを食べており、このときに狙われる (p35より引用)
アナグマがモグラを捕食するとは初耳で、とても意外でした。
下線部についても知りませんでした。
休耕地などにトレイルカメラを設置したら、モグラが地表で採食するシーンをいつか撮れるかな?


【アフィリエイト】 

見通しの悪い山道を遊動中に立ち上がって警戒するニホンザルの群れ(首輪装着・アルビノ子猿など)

 



2024年7月上旬・午後13:45頃・晴れ 

野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れが続々と山道を登って来ます。 
下山していた私の目線からはニホンザルの姿が見えたのですけど、四足歩行のニホンザルは体高が低いので、草丈が高く生い茂った雑草で見通しが悪く、私を発見するのが遅れました。 
ようやく私に気づくと猿たちは警戒し、後足で立ち上がって偵察・確認しました。 
ニホンザルの群れは次々に行軍停止して、山道に座り込みました。 

起立したときに胸に見えた乳首が小さい個体は若い♀で、経産婦♀の乳首は子猿に吸われて細長くなっています。 
先頭を歩く成獣(若い♀?)個体は、GPSの黒い首輪を装着していました。 

群れの中に、毛並みが白い子猿が混じっていました。 
この地方では「白猿」と言われて親しまれていますが、本当にアルビノなのか、それとも白変種なのか、瞳の色(メラニン色素の有無)を確認できませんでした。 
そのアルビノ?子猿aが文字通り道草を食いました。 
採食メニューは不明です。 
その背後から、別個体のアルビノ子猿bが山道を登ってきました。
初めのアルビノ個体aに比べて、やや年長の若い個体でした。 
2頭のアルビノは、同じ家系の兄弟姉妹なのかもしれません。 
どうも当地に生息するニホンザルは他の群れとの交流が乏しくて(孤立していて)血が濃いのか、アルビノ個体(白猿)が頻繁に現れやすい遺伝的集団になっているようです。 
アルビノの形質がメンデル型の劣性遺伝(潜性遺伝)なのかどうか調べるには、群れの全個体を個体識別して親子関係を把握しないといけません。 

私が山道でじっと立ち止まって撮影を続けると、安全にすれ違いたいニホンザルの群れは、山道から一旦外れて藪に入り、迂回してくれました。 
山中でよく出会う群れなので、私のことを人畜無害な奴だと個体識別してくれているようです。 
ニホンザルやニホンカモシカと出会ってもあまり怯えずに慣れてもらうために、私は毎回なるべく同じ服装で山に入るようにしています。




【アフィリエイト】 

2025/09/25

雨夜によそ者のニホンアナグマが営巣地でスクワットマーキングし、野ネズミが走って横切る【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月上旬

シーン0:7/2・午後13:03・くもり・気温32℃(@0:00〜) 
シーン0:7/2・午後13:38・くもり・気温33℃(@0:04〜) 
二次林でニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)を2台の無人センサーカメラで見張っています。 


シーン1:7/8・午後20:57・雨天・気温23℃(@0:07〜) 
雨が降る晩に獣道を左から来たアナグマの成獣が、巣口Lの手前でマルバゴマギ灌木の匂いを嗅いでから左に引き返しました。 
両目の大きさが同じだったので、母親♀ではなくて、おそらくヘルパー♂が久しぶりにやって来たのかもしれません。 

獣道の奥に自生するヒメアオキ群落の中から野ネズミ(ノネズミ)の目が白く光っていました(赤丸に注目@0:08〜)。 
藪の中からアナグマの様子をこっそり伺っていたようです。 
アナグマが居なくなるのを待ってから、セットを手前にチョロチョロと横切りました。 


シーン2:7/8・午後20:57・雨天・気温23℃(@0:58〜) 
別アングルで設置した監視カメラにも写っていました。 
アナグマのヘルパー♂?がミズキの木の下で匂いを嗅ぎ回ってから、尻を地面に擦りつけて縄張り宣言の匂い付けをしました(スクワットマーキング)。 

こっちのトレイルカメラで見ても、両目のタペータムの大きさが同じだったので、母親♀ではありません。 

アナグマが右へ立ち去ると、左から野ネズミが登場しました。 
アナグマの巣口Lの横を通って奥の林内へと駆け抜けました。 
雨夜でも林床で餌を探し歩いているのでしょう。 
セットで野ネズミを見かけたのは、アナグマの母子家族が転入してから初めてです。 



2025/09/24

夏の夜にニホンアナグマの巣穴に忍び込んで内見するハクビシン【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月中旬・午後23:00頃・気温22℃ 

ニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地を見張っている無人センサーカメラにハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)が久しぶり(5ヶ月ぶり)に写っていました。 

忍び足でセットを横切ると、巣穴Lを覗き込んでから、中に侵入しました。 
長居せずに後ろ向きで外に出てくると、立ち去りました。 
主のアナグマ家族は不在だったのかな? 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→


【アフィリエイト】

群れで山道を登りながら子猿に授乳するニホンザル♀

 

2024年7月上旬・午後13:45頃・晴れ 

里山で私が静かに下山していると、前方からニホンザル♀♂(Macaca fuscata fuscata)の群れが山道を逆に登って来きました。 
私も猿も立ち止まって互いに様子を伺います。 

先頭個体は子連れの母猿で、山道に座り込むと赤ん坊を胸に抱いて授乳していました。 
私を怖がった母猿は山道を外れて横の草むらに隠れましたが、しばらくするとまた子猿を抱えて山道に戻ってきました。 
授乳中の♀は暇つぶしに自分の体を掻いたり毛繕いしています。

乳首が長い経産婦なのに、子猿を連れずに単独で行動している♀もいます。 
今季は出産しなかった♀個体なのでしょうか。 

ニホンザル達はどうしても私と安全にすれ違って遊動を続けたいらしく、私を迂回するように横の草むらに次々と入って行きます。 
赤ん坊(乳児)は母親♀の胸にしっかりしがみつき(乳首を咥えたまま)、抱っこの状態で運ばれていきます。 




【アフィリエイト】 

2025/09/23

夜のアナグマ営巣地を飛ぶコウモリ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月上旬・午後21:05頃・気温27℃ ・日の入り時刻は午後19:08

平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)の母子家族が暮らす営巣地(セット)を無人センサーカメラで見張っていると、ある晩にコウモリが素早く飛んで手前から奥に横切りました。
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 

アナグマの家族が転入してからコウモリが登場したのはこれが初めて…ではなく、たぶん2回目です。



つづく→

2025/09/22

遊びで木登りに挑むニホンアナグマの幼獣【トレイルカメラ】

 



2024年7月上旬・午前11:23・気温26℃ 

夏の二次林は林冠の枝葉が鬱蒼と生い茂り、昼前でも日差しがほとんど遮られてかなり暗くなります。 
ニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)で4頭の幼獣が散開して林床の餌を探しています。 
しかし、そのうちの1頭は食欲よりも遊びたくて仕方がないようです。 
兄弟姉妹にちょっかいをかけて遊びに誘っても、誰も挑発に乗ってくれません。 
仕方がないので、落枝を齧って(甘噛みして)気を紛らわしています。 

元気のあり余った幼獣は、後足で立ち上がると細い灌木に前脚を掛けて、木登りに挑戦し始めました。 
アナグマの手は猿のように枝を握ることが出来ません。 
最後は手が滑って灌木から落ちて地面に転がってしまいました。 
ところが懲りずにもう一度挑戦し、今度は細い横枝を口で折り取って満足したようです。 

幼獣時代のこうした遊びが、後の巣材集めの前駆行動になっているのかもしれません。 
アナグマは成獣になっても木登りできないのですけど、巣材を集める際に後足で立ち上がって、少し高所の枝葉や蔓植物を採取することがあるのです。 
木の幹にいた虫を捕食するために後足で立ち上がることもありそうです。

ランダムに記事を読む