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2025/01/17

厳冬期の雪山で夜に活動する冬毛のホンドテン【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月中旬・午前4:40・気温-2℃ 

雪山でスギの木の下に残されたニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr1をトレイルカメラで見張っていると、 夜明け前にホンドテンMartes melampus melampus)が久しぶりに登場しました。 
左手前から来てスギの背後に回り込みかけたものの、左奥へ立ち去りました。 
タヌキと違ってテンはカモシカの溜め糞場sr1には全く無関心で素通りしています。
テンが歩いても足跡が残らないということは、雪面は凍結しているようです。


画面の手前から奥に向かって斜面を見上げているアングルです。 
スギ林の雪面にはスギの落葉落枝が散乱しています。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 

せっかくトレイルカメラを旧機種から新機種に交換したのに、そして電池の残量は充分なのに、これ以降は月末2/29まで16日間も一切何も撮れなくなりました。 
トレイルカメラが活動限界になるほど過酷な低温環境なのか、それとも野生動物の往来が本当に途絶えてしまったのかもしれません。
厳冬期はトレイルカメラや乾電池を常に温めておきたいのですが、それにも電力を使うとなると、悪循環です。
ソーラーパネルと大容量のバッテリーを導入すべきかもしれませんが、ここは常緑のスギ林の中なので、晴れても日照不足が問題になりそうです。

2025/01/16

雪に埋もれたニホンカモシカの古い溜め糞を掘り返して食べるホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月上旬 シーン1:2/8・午前1:51(@0:00〜) 
雪山でスギの木の下に残されたニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr1をトレイルカメラで見張っていると、深夜にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が来ていました。 
鼻面を新雪の雪面に突っ込み、前脚で雪の下から何か餌を掘り出して食べました。 
まずは1.5倍に拡大した映像で穴掘り採食行動をご覧ください。 
続けてオリジナル(等倍)の映像でリプレイ。(@0:27〜) 
そこは11日前にカモシカが糞粒を大量に排泄した地点です。 

タヌキが食糞したとすれば、これで2回目になります。 

タヌキは空腹でもカモシカの糞塊を大量に食べ尽くすのではなく、少しずつ食糞するようです。 
雪の下に埋まっていますから(冷蔵・冷凍保存)、餌としての鮮度は保たれているのでしょう。 

厳冬期の雪山でカモシカの糞そのものではなく、そこに来ていた虫をタヌキが捕食していたという仮説はロマンがあります。
しかし今のところ、真冬の低温下で活動する昆虫のなかに獣糞に集まる者がいるという証拠がありません。 

溜め糞場sr1を離れて右へ立ち去る途中で、タヌキは雪山の斜面に立ち止まって何かしています。 
餌を探しているのだと思うのですが、後ろ姿のために何をしてるのか全く見えません。 
最後は右の渓谷へと立ち去りました。 


シーン2:2/8・午前1:54・(@1:16〜) 
2分10分後に、再びタヌキが写りました。 
低温のため監視カメラの起動が遅れ、タヌキの後続個体が右へ立ち去るところでした。 
雪面に新たな足跡がついているので、それを読み取ると、画面の下から来て斜面を右上へ登って行ったようです。 
♀♂ペアがつかず離れず餌を探し歩いているのでしょう。 

この後続個体は悪食(食糞)をしないで、カモシカの溜め糞場sr1を素通りしました。 
つまり、全てのホンドタヌキ個体がカモシカの糞を食べる訳ではありません。 
好き嫌いがあるようです。 
個体識別ができていませんが、2回とも同一個体のタヌキがカモシカの糞を食べたのかもしれません。 

タヌキも自分たちで溜め糞場を形成しますが、タヌキがタヌキの糞を食べることはあるのでしょうか?
私はまだ同種の食糞を見たことがありません。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→

スギ林縁で追いかけっこ、横枝に飛びつきブランコ遊び、格闘を繰り返してはしゃぎ回るニホンザルの群れ

 

2023年12月中旬・午後15:30頃・くもり 

夕方の山麓を遊動するニホンザルMacaca fuscata fuscata)を追跡したら、スギの植林地まで来ました。 
おそらく猿たちは、ここを今晩眠るねぐらとするのでしょう。 
ところが、若いニホンザルたちはまだ遊び足りないようです。 
薄暗くなってきたスギ林縁ではしゃぎ回っています。 

林縁に立ち並ぶスギの横枝に掴まった子猿が、しなって揺れる枝の感覚を楽しんでいます。 
別の若い個体がキキキッ♪とかカカカッ♪などと鳴きながら激しく走り回り、追いかけっこが始まりました。 
せっかく山から降りてきて塒入りしたのに、塒のスギ林を再び離れ、急斜面の土手を登り返しています。 

追いかけられて逃げる個体が急斜面を林縁まで駆け下りると、スギの横枝に飛びつき、追手をかわしました(一時避難)。 
猿の体重でしなる枝を利用して、ターザンごっこのようなブランコ遊びをしてから地上に降りました。 
それを見た追手も同様にブランコ遊びをしました。 

土手に座って仲間が遊ぶ様子を見物している個体もいます。 
途中から別個体も走ってきて、ブランコ遊びに合流しました。 
追いかけっこしながらスギ林内に駆け込んでも、また走って土手まで戻ります。 
若いニホンザルたちは、スギ林縁の横枝を使ったブランコ遊びのスリルが大好きなようで、何度も飽きずに繰り返しています。 
土手のあちこちで追いかけっこが繰り広げられていて、どこを撮ったらよいのか目移りしてしまいます。 

いつもとは逆に、猿がスギ林縁から土手を少し駆け上がり、頭上のスギ横枝に飛びついてブランコ遊びをすることもありました。 (@2:00〜、@4:22〜)
このパターン(三角跳び?)は初めて見たかもしれません。 

土手からスギの枝葉に飛びつく際に、枝の選択や目測を誤ると、しなる枝とともに猿は地面に落ちて引きずられてしまいます。 (@3:25〜)
幸い怪我はなかったようですが、上手く遊ぶには反復学習が必要みたいです。 
スギの枝を掴み損ねた個体は、ブランコ遊びが上手くいかない苛立ちからか、腹立ち紛れにスギの枝葉に噛み付きました。 (@2:05〜)

土手を登る途中で立ち止まり、左足の裏についたゴミを手で払う個体がいました。 (@5:28〜)
スギの落ち葉を踏んでしまい、足裏に刺さったのかな? 
それを見ていた別個体が挑発するように、土手からスギ枝葉に飛びついて、相手の目の前でブランコ遊びを始めました。 
すぐに軽い取っ組み合いになり、2頭は暗いスギ林内へ走り去りました。 

逃げる相手に追いついて対峙しても、深刻な喧嘩にはならず、軽い小競り合いをするだけでした。 
(立ち止まって追手を待ち構えることもあります。)
腕を振ったり猫パンチをしたりして、相手を追い払いました。 
遊びの一環で、ふざけて軽く格闘しているだけのようです。 
格闘遊びの際に鳴き声はほとんど発してませんでした。

一連の遊びの行動は以前にも同じ地点で何回か観察しています。 
季節も時間帯も違いますが、おそらく同じ群れに代々伝わる遊びなのでしょう。 
猿のブランコ遊びを土手の上から見下ろすのではなく、土手の下から改めて撮影したかったので、今回ようやく目標を達成することができました。 

ニホンザルたちが大袈裟にはしゃぎ回ってスギの横枝を繰り返し揺らしてるのは、もしかすると、近くでしつこく撮影を続ける私に対する威嚇誇示(ディスプレイ)の意味合いもあったりするのでしょうか? 
なんとなく、私の目を意識して、私に見せつけているような気もしました。
塒のスギ林から私に早く立ち去って欲しいのかもしれません
ニホンザルの威嚇誇示と言えば、木揺すり(枝揺すり)が有名です。 
ヒトが近くに居るときしか、この飛びつきブランコ遊びをやらないとしたら、それはそれで面白いですね。
無人カメラを設置して、猿の行動を監視してみたいものです。

12月はニホンザルの交尾期なのに、今回はしゃぎ回っていたのは発情していない若い個体ばかりでした。 
顔や尻が真っ赤になっていないことから分かります。 
つまり、追いかけっこや小競り合いに見えたのも、交尾相手を巡るシリアスな喧嘩ではありません。 
一方、発情した成獣たちは求愛や交尾行動で忙しくて、遊ぶ暇もないのでしょう。 

※ 猿の鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


余談ですが、動画の冒頭で聞こえる謎の鳴き声が気になります(@000〜0:50) 。
今まで聞いたことのない不思議な鳴き声を文字に表す(聞きなし)のは難しいのですけど、「Wrrrrrrrrreeee!」とか「Krrrrrrrrrrrreeeee!」「Grrrrrrrrrrrreeeee!」のように聞こえました。
途中で鈴を転がすような巻舌のような不思議な鳴き声です。 
後半は尻上がりに音程が上がりました。 

私の頭上のどこか樹上でニホンザルが鳴いているようですが、その姿を見つけられませんでした。(映像公開予定?)
眼の前で他のニホンザル個体による面白い行動が次々と展開されるので、辺りを見回して鳴き声の主を探すのも我慢して動画撮影を続けました。
後回しにするつもりでいたら、謎の鳴き声は止んでしまいました。

この鳴き声は、ニホンザルの繁殖期と何か関係があるのでしょうか? 
それとも、迷子になった子猿が不安になって母親を呼んでいるのかな? 
謎の鳴き声の意味をあれこれ調べてみたのですが、よく分かりません。
ここから先の解釈は、まったくの的外れかもしれませんが、個人的な備忘録として残しておきます。 

小田亮『サルのことば: 比較行動学からみた言語の進化 (生態学ライブラリー)』を読み返してみると、おそらく私が聞いた鳴き声は、ニホンザル♀による発情音、その中でもトーナルコールではないかと予想しました。 
私は目の前に居た別個体の動画撮影に集中していたために、樹上で鳴き声を発した個体を見ていませんが、おそらく意中の♂と接触する前の段階だったのでしょう。
 ニホンザルにとって秋は恋の季節である。1年のうち秋から冬にかけてしか発情しないニホンザルの♀は、この時期には顔を真っ赤にし、「クゥーァー」あるいは「ギャッギャッギャッ」という音声(発情音)をひっきりなしにあげている。(p89より引用)
発情している♀は顔を真っ赤にし、しきりに発情音をあげている。やがて♂が1頭近づいてくる、あるいは♀の方から接近していくのだが、そこですんなりと交尾に至るわけではない。交尾期以外は、オトナの♂と♀はめったに接近することはない。♀にとって、大きく力の強い♂は恐ろしい存在なのだ。しかしながら、性的欲求は♂に近づくことを求めている。(中略)馬乗りと馬乗りのあいだにも、ときには♀が逃げたり、グルーミングをしたりして、かなり時間が空くことがある。そのあいだ、♀は激しく発情音を発するのである。 
 ♀の発情音は、その音響的特徴によって大きくふたつに分けられる。耳で聞いただけでもだいたいの区別はつくのだが、周波数分析をしてみた(中略)。ひとつは、伊谷によって、<uyaa><ugyaa>などと記載されている、比較的長くて雑音の少ない音声であり、もうひとつは、<ka・ka・ka・ka...>と記載されている、短くて雑音成分の多い音声である。前者をトーナルコール、後者をアトーナルコールと呼ぶことにした。(中略)♂との接触前にはトーナルコールが期待値より多く発せられているのに対し、♂との接触後にはアトーナルコールの方が期待値より多くなっていた。どうやら交尾相手の♂との距離によって違う種類の発情音が使われているようだ。(p94〜95より引用)
ニホンザルが性的に活発なのは早朝だ。(p97より引用) 
・どうやら、♀は発情音(アトーナル:しぐま註)を発することで他個体の注意をひき、妨害行動を誘発することで♂をふるいにかけていると考えられる。(p98より引用) 
性的二型が大きな種において発情音が発達しているという結果は、まさに♀の発情音が♂間競争を煽っているということを裏付けているものである。(p103より引用)
 

1999年に出版されたこの本の内容は少し古いかもしれないので、AI Perplexityで質問した回答によれば、
ニホンザル♀のトーナルな交尾音は「ウァー」という尻上がりの声でビブレーション(振動)がかかっている。比較的明確な音程や調子を持つ音声です。 オスとの距離が遠いときは、トーナルな交尾音が多く使われる。

問題は、ニホンザル研究者が♀による発情音(トーナルコール)と呼んでいる鳴き声を実際に試聴して聴き比べたいのに、いくらネット検索しても見つからないことです。 
YouTubeや「動物行動の映像データベース」などに鳴いている様子の動画をニホンザル専門家がアップロードしてもらえると助かるのですが…。 
私の検索の仕方が下手なだけかもしれないので、音声ファイルまたは動画の在処をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非教えてください。 

仕方がないので、この動画に含まれる謎の鳴き声を後で声紋解析してみます。
上記書籍の図4-1(p96)に掲載されたアトーナルコールおよびトーナルコールのサウンドスペクトログラムと比べてみれば、分かるはずです。

もしも謎の鳴き声に関する私の解釈が正しければ、♀の発情音で誘引された他の♂たちが交尾の邪魔をして、それによって一連の騒動(はしゃぎ回りに見えた)が巻き起こったのかもしれません。
「カカカ…♪」という鳴き声は、威嚇や喧嘩の際に発するのかと私は今まで思っていました。
しかし、はしゃぎ回っていた個体は未発情の若い個体ばかりだったこと、交尾期前の夏にも同じブランコ遊びが見られたことが説明できなくなります。

野生ニホンザルの鳴き声が伴う行動を動画でしっかり記録して正しく解釈するのは、なかなか大変です。
理想的には、バウリンガル(犬用)やミャウリンガル(猫用)のように、ニホンザルのさまざまな鳴き声の意味や感情を音声翻訳してくれる機器や携帯電話アプリが登場することを期待します。

2025/01/15

冬眠から一時的に目覚めて営巣地を元気にうろつく雪国のニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月上旬


シーン0:1/22・午後13:46・くもり・気温20℃(@0:00〜) 
平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が冬眠する営巣地(セット)を自動センサーカメラで見張り続けています。 
画面の左右に2つの巣口L、Rが開口しています。 
今季は異常な暖冬で積雪量が少なく、根雪が溶けて早くも林床の地面があちこちで露出しています。 


シーン1:2/8・午前5:08・降雪・気温0℃(@0:04〜)日の出時刻は午前6:35 

16日ぶりにアナグマが冬眠から覚醒して巣外に出てきました。 
ただし、前回(1/23)と同一個体かどうか私には見分けがつきません。 
前日(2/7)にホンドタヌキが巣穴Rに侵入したことが、アナグマの冬眠・覚醒リズムを乱したのかもしれません。
例えば、冷え込む夜に巣内で冬眠中のアナグマの横で侵入タヌキが添い寝して温めてくれた、なんてことがあるのでしょうか? 


雪が降る夜明け前に、アナグマが雪面の匂いを嗅ぎながら、右から左へ向かいました。 
冬眠明けなのに、この個体の足取りは珍しく軽快で、寝ぼけた様子もありません。 
体温が充分に上がった状態で、体調が良いのかもしれません。 
サーモグラフィカメラで撮影してみたいものです。
今回の気温(0℃)は前回(-1℃)とほぼ同じですから、気温が暖かくて体がよく動いた訳ではありません。

冬眠から覚醒したアナグマは、これから水を飲みに出かけるのか、それともアナグマ専用の溜め糞場stmpに向かったのかな? 
雪国の厳冬期にアナグマが外を出歩いても食べる餌が見つかるとは思えません。 
つまり、秋の食いだめで蓄えた脂肪を頼りに春まで絶食状態で耐え忍ぶのでしょう。 


シーン2:2/8・午前5:11・降雪(@0:33〜)
約2分半後に、同一個体と思しきアナグマが左から戻ってきました。 
巣口Rの匂いを嗅いでから周囲を少しうろつき、再び巣口Rに戻ってきました。 
営巣地を歩き回るアナグマの足跡が残らないということは、雪面は固く凍結しているようです。


シーン3:2/8・午前5:12・降雪(@1:32〜) 
結局このアナグマは巣穴Rには入らず、左へ移動しました。 
次は巣口Lの匂いを嗅いでから、左に立ち去りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
この個体は顔つきと体型から♀と思われます。 
この♀個体が外出から戻って帰巣するシーンがなぜか監視カメラには写っていませんでした。 
手前から来て入巣Rするルート(画角内で縦方向の動き)だと動体検知センサーが反応しにくく、撮り損ねもあり得ます。 
トレイルカメラをもう1台追加して別アングルからも同時に監視すれば、アナグマの巣外活動を撮り漏らすことも減るはずですが、他のプロジェクトも同時並行していて機材が足りません。

これがもし♂ならば、春の交尾期に備えて冬のうちから早くも♀の営巣地を探索している余所者♂である可能性も考えられます。 


冬眠中のニホンアナグマ♀には着床遅延という重要なイベントがあります。 
イタチ科に属するアナグマ♀は、春の出産直後に♂と交尾し、その受精卵(初期胚)は冬眠中にようやく着床し、春に出産するのです。 
たとえ♂と交尾・受精しても、秋から冬にかけて♀の栄養状態が悪ければ着床・妊娠しないのです。
通常は胚が子宮に侵入すると直ちに着床するが、イタチ科やクマ科、鰭脚類(アシカ科・アザラシ科・セイウチ科)、カンガルー、ラットなどの一部の動物種の胚は子宮内で浮遊状態を保ち、条件が整ってから着床する。これを着床遅延ちゃくしょうちえんと呼ぶ。 (wikipediaより引用)

AI geminiの解説によると、
ニホンアナグマの着床遅延は、非常に興味深い繁殖戦略の一つです。春から夏にかけて交尾を行うにも関わらず、受精卵が子宮に着床するのは冬眠中の2月頃と、かなり遅れるという現象です。この仕組みは、厳しい冬の環境下で子育てをするという、アナグマならではの適応戦略と考えられています。


つづく→ 


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2025/01/14

ニホンアナグマが冬眠する巣穴にこっそり潜り込んで一休みするホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月上旬 

根雪の積もった平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が冬眠している営巣地(セット)を自動撮影カメラで見張っています。 
近所のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が通ってくる様子をまとめました。 


シーン1:2/6・午前0:30・降雪・気温-2℃(@0:00〜) 
ボタ雪が激しく降りしきる深夜に単独行動のタヌキaが左からやって来ました。 
雪が積もっても開口しているアナグマの巣口Rにタヌキaは頭を突っ込んで、しばらく中の様子を伺っています。 
驚いたことに、タヌキaはそのまま狭い巣口Rをくぐり抜けて奥に押し入りました。 
主であるアナグマは巣内でぐっすり冬眠中らしく、怒って侵入者を追い払うことはありませんでした。 
これでまさしく「同じ穴のむじな」状態になりました。 
このまま一晩一緒に過ごすのでしょうか? 
地下に堀り巡らされた巣穴の構造がどうなっているのか全く分かりませんが、もしかすると複数の居住区に分かれていて、越冬期間も空き部屋があるのかもしれません。

タヌキa





シーン2:2/6・午前0:49・降雪(@0:40〜) 
18分後にタヌキaは同じ巣穴Rから外に出てきて左に戻っていきました。 
監視カメラの起動が遅れて出巣Rの瞬間を撮り損ねたのですが、雪面に残るタヌキの足跡を映像の境目で見比べると、新たな別個体が右から登場したのではないことが読み取れます。 
家主のアナグマが怒ってタヌキaを追いかけることもありませんでした。


シーン3:2/6・午後23:18・気温-4℃(@0:56〜) 
明るい日中は誰もセットに現れず、深夜になると雪は降り止んでいました。 
林床の雪面がボコボコなのは、落葉樹上から落雪したのでしょう。 
右から単独でやって来たタヌキbが、開口したアナグマの巣口Rを見つめ、ゆっくり頭を突っ込みました。 
その後に入巣Rしたかどうか残念ながら見届けられず、1分間の録画時間が終わりました。 

尻尾の黒班を比べると、前夜に来た「穴があったら入りたい」タヌキaとは別個体でした。 
アナグマの巣内で一休みしてから22時間半前に出巣Rした別個体タヌキaの残り香を気にしていたのかもしれません。 

タヌキb



シーン4:2/7・午後19:10・降雪・気温0℃(@1:56〜) 
翌日の晩は再び雪が降っていました。 
巣穴R内で一晩アナグマと同居したタヌキbが巣穴Rから左外に出てきた直後のように初めは見えました。 
しかし湿った新雪に残る足跡を注意深く読み解くと、この個体cは画面の手前から来て右から回り込んで巣口Rの手前を左に通り過ぎていただけと分かりました。 
トレイルカメラのセンサーが反応しにくいルートで登場したのです。 
しかも尻尾の黒班を見ると、タヌキbとは明らかに別個体で、タヌキa=cかもしれません。 
タヌキaはアナグマのもう一つ別な巣口Lの匂いを嗅いでから、最後は手前に立ち去りました。 

タヌキc=a?




※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
ホンドタヌキの尻尾に現れる黒斑を頼りに個体識別を試みると、2晩に複数個体(2頭?)が代わる代わるニホンアナグマの越冬用営巣地にやって来ていました。 
冬眠中のアナグマが巣内で寝静まっているのを確認できたのか、タヌキは大胆にもアナグマの巣穴に潜り込みました。 
ただしアナグマを追い出して完全に巣穴を乗っ取るつもりはなく、ときどき一時的な避難所(休憩所、シェルター)として間借りさせてもらうだけのようです。 
雪が激しく降る夜だったので、餌を探し歩く途中でアナグマの巣穴に立ち寄って休憩したのでしょう。

巣穴の中に何か餌があるのでしょうか?
巣内の様子を見ることはできないので、推測するしかありません。

アナグマは脂肪蓄積型の冬眠動物ですから、野ネズミのように巣穴の中に餌を貯食したりしません。
アナグマの巣穴に居候している野ネズミを侵入タヌキが捕食したり、その貯食物を盗み食いすることはあり得るかもしれません。

まさか、冬眠中で無抵抗のアナグマを侵入タヌキが隙あらば捕食しているのでしょうか?
想像するだけでも、かなりのホラーです。
しかし、18分の滞在後に巣外に出てきたタヌキの体は血に染まっていませんでした。
もしタヌキがアナグマの捕食者ならば、普段からアナグマはタヌキに対してもっと敵対的に接するはずです。
「同じ穴の狢」のような慣用句が昔からあるということは、タヌキはアナグマを獲物として捕食するよりも、穴掘り職人として利用(片利共生)する方が進化的に得策なのでしょう。

アナグマの巣穴の中で集団越冬する虫をタヌキは捕食していたのかもしれません。
実際、秋にはカマドウマと思われる穴居性の昆虫を目当てに夜な夜なタヌキを始めとする野生動物が捕食に通っていました。
巣穴の主であるアナグマや野ネズミも、巣内で虫を見つけ次第、捕食しているはずです。
したがって、巣穴の中で集団越冬する虫がいたとしても、既にほとんどが捕食され尽くしたのではないかと思われます。

つづく→

2025/01/13

疥癬で毛が抜けたホンドギツネがニホンアナグマの越冬用巣穴を覗いて回る【トレイルカメラ】

 



2024年2月上旬・午後12:40頃・気温11℃ 

根雪が積もった平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する営巣地(セット)をトレイルカメラで見張っていると、白昼堂々ホンドギツネVulpes vulpes japonica)が登場しました。 

この時期のキツネはふさふさの冬毛をまとっているはずなのに、この個体は毛並みが黒っぽく、ボサボサでやや汚らしい印象でした。 
特に、尻尾の毛量が貧弱です。 
素人目には尻尾の骨が曲がっているような気もするのですけど、どうでしょうか? 
全身の毛が濡れている訳でもなさそうですし、おそらく疥癬という皮膚感染症にかかっていると思われます。 
ヒゼンダニSarcoptes scabiei)が体外寄生した結果、痒くて掻き毟り、毛が抜けていくのだそうです。 
恒温の野生動物にとって、厳寒期に毛が抜ける疥癬症は死活問題です。 
この個体は果たして雪国の冬を無事に越せるのかどうか、心配です。
半年前の夏にここで見かけた個体「細尾」の症状が進行したのかな? 

関連記事(3、半年前の撮影)▶  


アナグマの巣口は2つとも開口しているのですが、疥癬キツネはまず巣口Lを覗き込んで匂いを嗅いでいました。 
次は巣口Rへ向かうと、そこでも匂いを嗅いだだけでした。 
巣内には侵入しようとせずに、右奥の二次林へとに立ち去りました。 
もしも疥癬キツネがアナグマの巣穴に押し入ったら、中で冬眠するニホンアナグマにもヒゼンダニが移り、疥癬の感染が拡大しかねません。

塚田英晴『野生動物学者が教えるキツネのせかい』によると、
キツネが、皮膚の中にひそむダニによって引き起こされる疥癬という病気にかかっていた場合、キツネが寝場所としたところなどに飼い犬や飼い猫が接触することで、この皮膚病に感染してしまう
・しっぽがゴボウのようにとがり、全身の毛が抜けた、お化けのような姿のキツネ
・疥癬がひどくなったキツネは死んでしまいます。


【関連文献】
曽根啓子; 西村祐輝; 野呂達哉. 名古屋市内で疥癬症によって死亡したと思われるアカギツネ. なごやの生物多様性, 2020, 7: 89-92. (全文PDFが無料ダウンロード可)


つづく→ 


【アフィリエイト】 

2025/01/12

外出中に新雪で埋もれた巣口を雪かきしてから中に入るホンドタヌキ♀♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年2月上旬

根雪の積もった休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)の越冬用営巣地を自動撮影カメラで見張っています。 


シーン1:2/2・午後22:00・気温-2℃(@0:00〜) 
雪が降る晩に、タヌキが単独で雪原を手前から奥へ向かって歩いて行きます。 
営巣地は新雪で覆われ、他の動物が残した足跡はありませんでした。 
タヌキの足は雪面にあまり深く残らないことから、凍結した雪面にうっすらと新雪が積もっている状態だと分かります。 
タヌキは 一直線に巣口Mに向かったものの、留守中に家の玄関(巣口M)が新雪にすっかり埋もれていたので、当惑したように雪面の匂いを嗅いでいます。 
身震いしてから雪原をあちこち彷徨き、雪面に鼻面を突っ込んでは匂いを嗅ぎ回ります。 (迷子になった)

この映像は赤外線による暗視動画であることを思い出してください。 
つまり、現場は真っ暗な夜の雪原です。 
タヌキの目にはタペータムがあるので、暗くても雪明りでなんとかぼんやり見えるのかもしれません。 

タヌキは巣口Mに戻ってきて前足で雪を軽く掘り、雪かきしています。 
入巣Mしたかどうか見届ける前に、残念ながら1分間の録画時間が終了してしまいました。 
この時点では、てっきり余所者タヌキが営巣地を訪ねて来た(家主の安否が心配?)のかと私は思いました。 



シーン2:2/3・午前2:06・気温-2℃(@1:00〜) 
約4時間後、日付が変わった深夜にも雪が降り続けています。 
2頭目のタヌキが雪原を手前から奥へ向かう動きに、監視カメラのセンサーが反応しました。 
タヌキの後ろ姿で尻尾の(付け根の)模様を見比べると、シーン1に登場したタヌキとは別個体bであることが分かります。 
【参考文献】野紫木 洋『オコジョの不思議』p74の模式図

4時間前のタヌキが雪原を歩いた足跡が未だくっきりと新雪に残っていることから、この間に積雪量はほとんどなかったことが伺えます。 
その古い足跡を読み解くと、営巣地から立ち去った足跡が無いので、シーン1のタヌキaは無事に入巣したのだと推理できました。 
自分の足跡を忠実に辿って手前に戻った可能性も考えましたが、前後の映像を見比べても足跡が完全にマッチする(変化なし)ことから却下しました。

一方、タヌキbは先行者aの付けた足跡を辿って巣口Mに来ると、匂いを嗅いで点検しました。 周囲を見回してから、ゆっくり巣穴Mに入りました。 


【考察】 
採餌中のタヌキは♀♂ペアで行動を共にすることが多いです。 
しかし今回は、(途中から?)別行動で採餌していたようです。 
餌の乏しい厳冬期は、各自が行動範囲を広げて餌を探し歩く必要があるのでしょう。 

外出から先に戻ったタヌキaが、留守中に新雪で埋もれてしまった巣口Mをなんとか探り当て、雪かきをしてから入巣Mしたようです。 
4時間も遅れてようやく営巣地に戻った後続タヌキbは、先行個体の足跡を辿って、雪原を迷わずに帰巣Mできました。 


つづく→


【アフィリエイト】

河川敷の芝生で虫を捕食しようと探し歩く三毛猫

 

2023年11月上旬・午後13:10頃・晴れ 

河川敷の芝生でイエネコ♀(Felis silvestris catus)がうろついていました。 
舶来品種なのか、三毛猫にしては茶色も黒も薄い気がします。 

芝生の匂いを嗅ぎながら、忍び足でゆっくり前進しています。 
斜めに上げた尻尾の先をくねらせていることから、三毛猫がワクワクしている感情が伺えます。 
突然、前足を揃えて前方の地面に飛びかかりました。 
その足元をしげしげと見つめていますが、どうやら狩りには失敗したようです。 
獲物に跳びついた狩りの瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:12〜) 
逃げた獲物の正体は不明ですが、おそらくバッタやコオロギの仲間だと予想しています。 
三毛猫は残念そうに舌舐めずりしながら辺りを見回し、左に引き返しました。 

この個体は、やや太り気味の体格でした。 
(冬毛に生え変わったからそう見えるだけかな?) 
近所の飼い猫だと思われますが、首輪は付けていませんでした。 
三毛猫の♂は遺伝学的に極めて珍しいので、この個体は♀の可能性が高いのですが、股間に睾丸(にゃんたまω)は見えませんでした。 
ただし、野良猫でなければ、♂でも去勢されているはずです。


三毛猫は芝生に座り込んでも、私とは目を合わせようとしません。 
再び歩き出すと、生け垣(植え込み)の横を通って左へ向かいます。 
また座って身を低くしましたが、狩りの行動には移りませんでした。
しつこく動画を撮り続ける私を嫌がったのか、ついに三毛猫は生け垣の中に潜り込んで隠れてしまいました。 


【アフィリエイト】 

2025/01/11

雪山でニホンイノシシの採食痕があるスギ林に来た野生動物たち:ニホンノウサギ・ホンドテン・ホンドタヌキ・ニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬〜2月上旬 

シーン0:1/30・午後14:10・くもり・気温14℃(@0:00〜) 
明るい時間帯にたまたま撮れた現場の様子です。 
雪が積もった里山のスギ植林地でニホンイノシシSus scrofa leucomystax)がスギの根元の雪や地面を掘り返して採食していました。 
イノシシは近づく私を警戒して一目散に逃げてしまったのですけど、その直後にトレイルカメラを現場に設置しました。 
同一個体のイノシシが戻ってきて、スギ林床で採食を再開してくれるのではないかと期待したからです。 
もしかするとイノシシはねぐらを掘っていたのかもしれない、という疑いもありました。 

 画面の手前から奥に向かって緩斜面が下っています。 
左端が雪に埋もれた林道になっていて、私が奥に向かって下山したスノーシューの足跡が雪面に残っています。
つまり、林道の横に生えたスギの根元に掘られた最大の採食痕を監視しています。 

夜な夜なやって来る野生動物たちを一気にまとめてご覧ください。


シーン1:1/31・午前3:05・気温-3℃(@0:04〜) 
現場にまず現れたのは、冬毛のホンドテンMartes melampus melampus)でした。 
未明に雪の緩斜面を奥から手前へ登り、歩き去りました。 
雪面に足跡が残らないということは、凍結していているようです。 
手前の雪面は、トレイルカメラの赤外線照射で白飛びしてしまっています。


シーン2:1/31・午後21:52・気温2℃(@0:11〜) 
次は、同じ日の晩に冬毛のニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)がひょこひょこと手前に来ました。 
やはりスギ林床の雪面はクラスト状態で、ノウサギの足跡が残りません。 


シーン3:2/2・午前5:02・降雪・気温-6℃(@0:22〜) 
2日後の雪が降る未明にも真っ白なノウサギが登場しました。 
しかも2羽が同時に写りました。 
交尾期が始まる頃なのに、2羽のニホンノウサギがニアミスしても喧嘩や追いかけっこにはならなかったのが不思議です。 
すでに♀♂ペアを形成していたのでしょうか?
2羽の性別も行動から読み取れませんでした。 

ノウサギは、イノシシが掘り返したスギの根元には近寄りませんでした。 


シーン4:2/2・午後18:53・降雪・気温-4℃(@1:04〜)日の入り時刻は午後17:05。 
同じ日の日没後に、♀♂ペアと思われるホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が手前からやって来ました。 
 先行個体が、イノシシが掘り返したスギの根元で匂いをじっくり嗅ぎ回っています。 
その間に後続個体は、近くでおとなしく待っています。 

雪が降り続き、雪面に薄っすら積もった新雪に、タヌキの歩いた足跡が残ります。 
後続個体は先行個体を追い越し、真っ直ぐに斜面を下りました。 
しかし先行個体は、少し先のスギの根元でもイノシシの掘り返した採食痕が気になり、寄り道して調べています。 
ようやくパートナーの後を追って立ち去りました。 

1.5倍に拡大した上で、リプレイしてみましょう。(@1:49〜) 
タヌキは新雪に鼻面を突っ込んで餌を探していますが、何も食べなかったようです。 


シーン5:2/6・午後20:32・気温-4℃(@2:35〜) 
4日後の晩に、ニホンカモシカCapricornis crispus)が緩斜面を登って手前に向かって歩いて来ました。 
監視カメラの真下を通ったのに、カメラの存在には全く気づいていないようです。 
新雪の雪面にカモシカの蹄跡が残りました。 


シーン6:2/7・午前2:25・気温-5℃(@2:46〜) 
日付が変わった深夜に、冬毛のニホンノウサギが画面の右下隅にちらっと写りました。 
気温が低いと、トレイルカメラの起動が遅れがちになります。 
尻尾が長くないので、テンではありません。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正や逆光補正を施しています。 
トレイルカメラの照射する赤外線が手前の雪面に反射して白飛びしてしまい、ちょっと見苦しいからです。 


【考察】 
私とニアミスして逃げたイノシシが採食現場に戻ってこないことがはっきり分かったので、この地点での監視は1週間で打ち切り、トレイルカメラを撤去しました。 
後で調べてみると、イノシシは縄張り意識が薄いらしいです。 
山中でヒトと遭遇して驚いて逃げたら、わざわざ戻ってくることはなく、逃げた先で自由気ままに採食することが予想されるそうです。 
どうしても自分で納得するまで確かめたかったので、たとえ空振りに終わっても満足です。 

副産物として、雪山で暮らす様々な野生動物(お馴染みの面々)が監視カメラに写ってくれたので、退屈することはありませんでした。
イノシシが掘り起こした採食痕に興味を示したのは、タヌキだけ(しかも、ペアのうち片方だけ)でした。

2025/01/10

夜霧の雪山で塒のあるスギ林に来ても眼下腺マーキングするだけで立ち去る若いニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬 

シーン1:1/19・午後12:32・くもり・気温12℃(@0:00〜)
里山の斜面に植林されたスギ林で、ニホンカモシカCapricornis crispus)のねぐらを自動撮影カメラで見張っています。 
画面の手前から右上奥に向かって斜面が下っています。 
今季は記録的な暖冬のため、積雪量が少ないです。 

カモシカの登場シーンを以下にまとめました。 
撮影効率があまりにも悪いので(カモシカが滅多に来ない)、退屈しのぎに余計なことを始めました。 
たまに来る昼行性のニホンリスSciurus lis)のために、オニグルミの堅果を給餌しようと、白いプラスチックの箱をスギの幹に固定してみたのです。
しかし、この作戦は全くの空振りに終わりました。 
私の給餌法が良くないのか、それともリスは警戒心が強いのでしょうか? 


シーン2:1/23・午前0:57・霧?・気温1℃(@0:04〜) 
画面全体がうっすらと曇っています。 
夜霧が発生しているのか、それともレンズの表面が薄っすらと凍りついてしまったのかもしれません。 

深夜に画面の右下から現れたカモシカの後ろ姿が写っています。 
斜めに倒れかけたスギ幼木の枝葉の匂いを嗅ぎ、顔の眼下腺を擦りつけてマーキングをしたようです。 
角がまだ細いので、若い個体のようです。 

雪面の匂いを嗅ぎながらゆっくりと奥に歩き、スギの立木に辿り着きました。 
根元や幹の匂いを嗅いでいる途中でふと見上げ、クルミを入れた白い給餌箱に気づいた様子です。 
若いカモシカが首を精一杯伸ばしても、給餌箱には全然届きません。 
(大雪が積もれば、届いてしまうかもしれません。) 
前足を立木に掛けて後足で立ち上がることはしませんでした。 


シーン3:1/23・午前1:00(@2:04〜) 
念入りにスギの幹や雪面の匂いを嗅いでから、カモシカは左にゆっくり立ち去りました。 
ところがしばらくすると、同一個体が左から手前に戻って来ました。 

残念ながら今回も結局、ここに塒入りしてくれませんでした。 
私が余計な異物(リスへの給餌箱)を塒のスギ立木に設置したりしなければ、警戒しないで塒で寝てくれたでしょうか? 
しかしカモシカは夜行性ですから、この時間帯に寝ないはずです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 



【考察】 
トレイルカメラによる塒の監視は、これで諦めて打ち切ることにしました。 
ニホンカモシカが雪山でスギの木の下に寝てくれたのは、結局1回切りでした。 
その後は複数個体のカモシカが代わる代わる来ては、通りすがりに眼下腺マーキングしたり排尿したりしただけです。
少なくとも、この辺りを縄張りとするカモシカ個体群が使う獣道(巡回路)になっていることは確かです。 

登場した複数個体のカモシカが同じ地点の塒を代わる代わる使って寝ることはありませんでした。 
監視カメラの存在に気づいて警戒し、ねぐらの位置を変更してしまったのか、それともカモシカが頻繁に塒を変えるのはごく普通のことなのか、この1例だけではまだ何とも言えません。

2025/01/09

真冬の雪山を夜に1〜2頭で歩き小便でマーキングするホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 




2024年1月下旬〜2月上旬

シーン0:1/30・午後12:54・晴れ(@0:00〜) 
シーン0:1/30・午後13:38・晴れ(@0:04〜) 
明るい時間帯にたまたま撮れた現場の様子です。 
根雪の積もった里山で、スギ植林地に残されたニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr1を自動撮影カメラで見張っています。 
今季は異常な暖冬で降雪量が少ないのですが、林床の溜め糞は雪で覆われ、雪面にはスギの落葉落枝が散乱しています。 
画面の手前から奥に向かって斜面を見上げるアングルになっています。 

1〜2頭で行動するホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の登場シーンを以下にまとめました。 


シーン1:1/31・午前1:03(@0:14〜) 
深夜にタヌキの先頭個体が、スギ立木の木の下を通って左から右へ斜面を横切りました。 
雪面は固く凍結していて、タヌキが歩いても足跡が残りません。 
雪面の匂いを嗅ぎながら右の渓谷へ向かいました。 

50秒後に、後続個体♂が左から足早に登場しました。 
雪面から突き出た細い落葉灌木(樹種不明)の小枝をくぐる際に、排尿マーキングしました。 
そこは、以前にもタヌキが通りすがりに排尿マーキングした地点でした。 
左後脚を上げて小便したことから、♂と判明。 
そうなると、先行個体はパートナーの♀なのでしょう。 
♂も先行個体♀の後を追って右上の谷へ向かいます。 
ホンドタヌキ♂による排尿マーキングを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:49〜) 


シーン2:2/3・午後21:57・(@1:11〜) 
単独行動のタヌキが晩に画面上を対角線状に(左下から右上へ)横切ったのに、監視カメラの起動が遅れました。 
クラストした雪面にうっすらと新雪が積もり、その上にタヌキの足跡が残されています。 


シーン3:2/3・午後22:38・(@1:18〜) 
45分後、斜面の雪面に新たな足跡が付いていました。 
またもや監視カメラの起動が遅れ、画面の右端にタヌキ?の尻尾がちらっと写っていただけでした。 
タヌキはいつものように、右の谷へ向かいました。 
一瞬の登場シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:21〜) 


シーン4:2/4・午後13:43・晴れ(@1:26〜) 


シーン5:2/9・午後18:27・(@1:33〜) 
6日後の晩に、単独行動のタヌキが珍しく左に向かう姿が写っていました。 
雪面に残った足跡を読み解くと、下から現れ、スギ立木に向かってから左へ逸れて行ったようです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


2025/01/08

ホンドタヌキの越冬用営巣地で野ネズミを狩ろうとする雪国のホンドギツネ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬

シーン1:1/22・午後14:17・くもり・気温21℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
根雪の積もった休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が越冬する営巣地を自動撮影カメラで見張っています。 
巣穴の入口は少なくとも3つあり、そこからタヌキの足跡が雪面に残されています。 
今季は異常な暖冬で積雪量が少なく、雪が溶けて地面が一部露出しています。 

ホンドギツネVulpes vulpes japonica)の登場シーンを以下にまとめました。 


シーン1:1/24・午後18:12・降雪・気温-3℃(@0:03〜) 
2日後の雪が激しく降る晩に、キツネが新雪の雪原を右から左へ横切りました。 
画面の左端で立ち止まると、タヌキの営巣地を振り返りました。 
巣穴から漂う臭いや物音に気づいたのかな? 
雪が激しく降る日のタヌキは、日没後も巣穴Lから遠出しないですぐに帰巣したことが、雪面に残る足跡から読み取れます。 
キツネはタヌキの巣穴Lへ忍び寄り、雪面の足跡の匂いをじっくり嗅いでいます。 
巣口Lに顔を突っ込んで覗き込んだものの、中に無理やり押し入ることはありませんでした。 


シーン2:1/28・午前4:31・気温-1℃(@1:03〜) 
4日後の未明に、キツネが左からやって来ました。 
新雪の雪面には、約7時間前に通ったタヌキの足跡が、雪に埋もれかけています。 
キツネはタヌキの足跡に気づくと立ち止まり、匂いを嗅ぎました。 
うっかり「足跡を見つける」と書きそうになりましましたが、暗闇でキツネがどのぐらい見えているのか疑問です。
キツネは目のタペータムが発達していますから、雪明りだけでも夜目が効くのかもしれません。

キツネは雪原をショートカットしてタヌキの巣口Mに近づいたものの、横を素通りしました。 
巣口Mを通り過ぎたことに気づいたのか、雪面の匂いを嗅ぎながら、ゆっくり引き返してきました。 

最後にキツネは何か獲物の気配を雪の下に感じ取ったらしく、後足の筋力で高く飛び上がり、揃えた前足で獲物に襲いかかろうとしました。 
しかし、その結末(狩りの成否)を見届けることなく、無情にも1分間の録画が打ち切られてしまいました。
うーむ、残念無念…。 
監視カメラの録画時間を1分間から2分間に延長すべきかもしれません。 
まるでアクションの一番良い瞬間で静止画にして余韻を残したまま劇的に終わらせる「フリーズフレーム」(またはフリーズショット)という映画の手法のようです。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@2:07〜)、意外にもキツネは後足を先に着地していました。 
着地の振動に驚いた野ネズミが雪の下から外に飛び出してくるのを期待して、次に前足と口で獲物を狩ろうとする作戦なのかもしれません。 



※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
ホンドギツネはおそらく、ホンドタヌキの越冬用巣穴に居候する野ネズミの気配を雪の下に察知して、狩ろうとしたのでしょう。 
この休耕地にも野ネズミが出没することが既に分かっています。 

これまで私は山中または森の中にトレイルカメラを設置することが多く、写った野ネズミ(ノネズミ)アカネズミApodemus speciosus)またはヒメネズミApodemus argenteus)だろうとみなしてきました。 
しかし、この撮影地点は田畑に隣接する原っぱ(休耕地)なので、ハタネズミMicrotus montebelli)の可能性もありそうです。 
キツネの狩りの成功確率はわずか2~3割らしいので、成功シーンを撮影するには辛抱強く観察を続けるしかありません。

あるいは、巣内に籠もったタヌキの動きを察知したキツネが、獲物と誤認して反応してしまったのだとしたら、それはそれで面白い話です。 
「タヌキの奴らを驚かしてやろう」というキツネの悪戯心だったりして…。




つづく→

雪山のスギ林でニホンイノシシが掘り返した採食痕を見つけた!【フィールドサイン】

 

2024年1月下旬・午後13:10頃〜14:30頃・晴れ 

スノーシュー(西洋かんじき)を履いて雪山を探索していた私が下山中に、前方のスギ植林地の林縁から1頭のニホンイノシシSus scrofa leucomystax)が慌てて逃げ去りました。 
あっという間の出来事で、残念ながらその姿を証拠動画に残すことはできませんでした。 
GoProなどのアクションカメラを体に装着してドライブレコーダーのように山中で常時撮影していれば、一人称目線の証拠動画が撮れたはずなので、私も1台欲しくなります。



遅ればせながら動画を回し、イノシシが居た地点を現場検証してみましょう。 
雪で埋もれた林道の横に育ったスギの根元の雪や土が盛大に掘り返されていました。 
どうやら私が来るまでイノシシは採食行動をしていたようです。 
冬でも地中のミミズや虫を捕食したり、植物の根っこを食べたりして飢えを凌いでいるのでしょう。 
林床ならどこでも良いのではなく、スギの根元を重点的に掘り返していました。
雪かき穴掘りの重労働に対して摂取カロリーの収支が見合わない(コスパが悪い、エネルギー収支が赤字)気がするのですけど、秋に溜め込んだ脂肪で春まで乗り切れるかという問題になります。
あるいはもしかすると、寝るためのねぐらを作ろうと常緑樹の下で雪を掘っていたのかもしれません。 
イノシシの足跡を辿って周囲を調べて回ると、計3本のスギの根元が次々に掘り返されて土が露出していました。
これまでにも私は山中で同様のフィールドサイン(掘り返し跡)を見かけていましたが、今回はイノシシの仕業であるという確証があります。 
現場から逃げたイノシシは1頭しか見ていませんが、親子が行動を共にしていた可能性もあります。 



次は、逃げたニホンイノシシが雪面に残した足跡を辿ってみましょう。(アニマルトラッキング) 
穴掘りをした直後なので、雪面に残った蹄跡の一部が土で汚れています。 
しばらくは、歩きやすい林道を辿って麓へと向かっていました。 
林道の中央だけ雪が溶けて地面の落ち葉が露出していました。
イノシシがそこを歩くと足跡が残りません。
やがてイノシシの蹄跡は林道を外れて、雪の積もった急斜面を下っていました。 
さらにしつこく足跡を追跡しようか迷ったのですが、逃げたイノシシを下手に追い回すと二度と戻って来なくなってしまうだろうと判断して、追跡を打ち切りました。 



同一個体のイノシシが戻ってきてくれることを期待して、遭遇地点にトレイルカメラを設置することにしました。 
山中の別の地点(ニホンカモシカのねぐら)に設置してあるトレイルカメラを撤去して、急遽こちらに移しました。 
3箇所ある採食痕のうち、最大の穴を監視することにしました。 
イノシシの雪山での採食行動やねぐら入りの行動が撮れたら嬉しいです。 




山形県で一時期イノシシは絶滅していたのですが、再び戻ってきたようです。
多雪地帯でイノシシは冬を越せないだろうと言われていたのですけど、積雪がそれほど多くなければ、雪山でも自力で掘り返して採餌できることを確信しました。
今季は異常な暖冬で、積雪量が少ないです。
山形県では冬の豪雪がイノシシやシカの進出を阻んできたのに、このまま地球温暖化が進行すれば、イノシシの分布域はさらに北上し、当地でも越冬するイノシシの個体数が増えるはずです。
そうなれば、他の地域(暖地)と同様に農作物の食害が深刻になる、と予想できます。
このまま手をこまねいて温暖化を食い止めなければ、将来は獣害対策という形でも莫大なコストを払う羽目になりそうです。(しっぺ返し)



【アフィリエイト】 

2025/01/07

冬眠の合間に覚醒したニホンアナグマは巣外で歩行も覚束ない【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬 

シーン0:1/22・午後13:46・くもり・気温20℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
雪が積もった平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する2つの巣穴を同時に1台の自動撮影カメラで監視しています。 
今季は異常な暖冬で積雪が少なく、まるで早春のように林床の地面があちこちで露出しています。 


シーン1:1/23・午後18:41・気温-1℃(@0:04〜)日の入り時刻は午後16:54。 
真っ暗な晩に、巣穴Rから外に出てきたばかりと思われるアナグマが広場の地面に居ました。
鼻面を上げて風の匂いを嗅いでから、辺りをゆっくり歩き始めました。 
この個体は左右の目の大きさに差がなく、ここで出産・育児した母親♀(右目<左目)ではなさそうです。 
林床の濡れた(凍った)落ち葉の匂いを嗅ぎながら、ゆっくり進みます。 
冷たい残雪の部分をわざわざ歩くことはありませんでした。 
巣口Lへ近づいたものの、中に入ったかどうか、見届ける前に録画が打ち切られました。 


シーン2:1/23・午後18:46(@1:04〜) 
4分後、巣外をうろつくアナグマが、いつの間にか巣口Rまで戻ってきていました。 
巣口Rを塞ぐように生えた細いマルバゴマキの灌木が邪魔で歩きにくそうです。 
その細い木をまるで綱渡りのように伝って渡ろうとしたら、滑って転んでしまいました。 
立ち上がるのも難儀しています。 
生まれたばかりの幼獣ならともかく、成獣のアナグマがこれほど歩行が覚束ない状態なのは夏には見られませんでした。 
冬眠で体力が消耗しているようです。 
空腹と寒さで凍えているのかな? 
擬人化すると、まるで泥酔状態か足が痺れている状態のように見えます。 

地面の匂いを嗅ぎながら、ゆっくり右へ向かっています。 


シーン3:1/23・午後18:56(@2:04〜) 
8分後、アナグマは巣口Rに戻ってきていました。 
巣口Rから伸びるマルバゴマキの細い落葉灌木の幹の匂いを嗅ぎ、前脚を掛けました。 
まだ寝ぼけているのか、2本の灌木の狭い隙間に、なぜか体をねじ込もうとしています。 
進路を遮る障害物を迂回するのも億劫なのでしょうか? 
灌木の根元の匂いを嗅いでいます。 


シーン4:1/23・午後19:03(@3:04〜) 
6分後に監視カメラが再び起動したときにも、アナグマは巣口Rでぼんやり佇んでいました。 
辺りをキョロキョロ見回しているだけです。 
動きがあまりにも緩慢なので、5倍速の早回し映像でお届けします。 


シーン5:1/23・午後19:05(@3:16〜)
巣口Rでじっとしているアナグマの上半身がヒクヒクと震えているのは、体温を上げるための不随意運動(シバリング)なのでしょうか? 
冬眠から覚醒したアナグマの体温がシバリングで急上昇しているのか、サーモグラフィカメラで撮影できたら面白そうです。 
別の可能性として、咳をしてるのかと思ったのですが、音量を上げても聞き取れませんでした。 
雪がちらつき始めました。 


シーン6:1/23・午後19:10(@3:28〜) 
アナグマがようやく少し移動したと思ったら、すぐに体勢を崩して巣口Rの窪みに滑落しそうになりました。 
なんとか不格好に体の向きを変えました。 


シーン7:1/23・午後19:15(@4:12〜) 
4分後、アナグマはいつの間にか、セットの右端まで移動していました。 
真っ直ぐ巣穴Rに向かい、ようやく巣内に潜り込みました。 
緩慢だった動きが少しスムーズになったようです。 
体温が充分に上がり、運動機能が少し回復したのでしょうか? 
ところが、巣口Rを塞ぐ細い灌木(一種の防犯装置?)が邪魔で、乗り越えて入巣Rするのにもたついています。 
気温の高い夏にはスムーズに入巣Rできていたはずなのに、これほど苦労するとは、何か運動障害や神経障害を疑いそうになります。

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
私の手違いで、動画を公開する順番を逆にしてしまいました。 
この後しばらくしてから(1時間半後)、アナグマは再び巣外に出てきて巣材集めをしたのです。 

私は野生のニホンアナグマの観察を始めて未だ1年目なので、今回見られた行動が普通なのかどうか判断できません。 
異常な暖冬がアナグマの冬眠・覚醒リズムに悪影響を与えている可能性もありそうです。 
 冬のニホンアナグマは、トーパーという低体温(心拍数も下げる)の冬眠状態から定期的に目覚めるのだそうです。 
ときどき巣外に出て新鮮な空気を吸ったり体を動かして血流を回復させたりしないと、組織が壊死したりエコノミークラス症候群のようになったりするのかもしれません。 
まるで足がジンジン痺れたヒトを見ているようだと思ったのは、あながち間違いではなさそうです。 
しかし、これほど動きが緩慢で歩行も覚束ないのでは、巣外で天敵(腹を空かせたキツネやイヌなどの捕食者)に襲われたら、素早く逃げたり自分の身を守るために戦ったりできないのではないか?と心配になります。 


私がバイブルとしている本、金子弥生『里山に暮らすアナグマたち:フィールドワーカーと野生動物』には、「アナグマたちの冬」と題した章があります。 
筆者が関東のアナグマで調べた結果によると、
・(飼育下でも)5ヶ月間微動だにせずに眠り続けたわけではなく、10日から2週間眠り続けてはときどき目を覚ます、という状態だった。 
・母親と当歳の子どもたちは、生まれ育った巣穴ではじめての冬を一緒に過ごして、穴ごもり後の冬を一緒に過ごして、穴ごもり後の春になってから離れていく 
・穴ごもりによる越冬は、アナグマ属のすべて行うわけではない。(中略)今の所、ロシア極東の個体群と日本の個体群が穴ごもりをするとされているが、日本国内どこでも穴ごもりをするのか、世界のほかの地域ではどうなのか、今後研究が必要である。 (p72〜73より引用)
抜粋したポイントの2つ目については、私が観察しているアナグマでは当てはまらない気がしています。 
個体識別がろくにできていないのですが、少なくとも母親の姿を越冬用巣穴で見ていません。 


2025/01/06

新雪の積もったニホンアナグマの越冬用営巣地を横切る冬毛のホンドテン【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬・午前0:45頃・小雪・気温-1℃ 

雪の積もった平地の二次林で、ニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する営巣地(セット)を自動センサーカメラで見張っていると、小雪がちらつく深夜に冬毛のホンドテンMartes melampus melampus)がやって来ました。 
新雪が積もったセットを右から左へ横切り、後半は小走りになりました。 
ホンドテンは、雪の下に埋もれたアナグマの巣口LRには全く興味を示さずに素通りしました。 

林床の雪面にテン以外の足跡は全く付いていません。
映像をよく見ると、テンは尻尾の先をときどき雪面に引きずりながら歩いています。 
今後は雪面に残る足跡を読み解いてテンと見分けるためには、尻尾の跡も考慮する必要がありそうです。 


つづく→

2025/01/05

ニホンアナグマの越冬用巣穴が凍った雪の下に埋もれ、近所のホンドタヌキが安否確認に通う【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬~2月上旬

シーン0:1/22・午後13:46・くもり・気温20℃(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の状況です。 
平地の落葉した二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する2つの巣穴を同時に1台の自動撮影カメラで見張っています。 
今季は異常な暖冬で積雪が少なく、まるで早春のように林床の地面があちこちで露出しています。 

近所のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が1頭または3頭で立ち寄ったシーンをまとめました。 


シーン1:1/29・午前6:01・気温-3℃(@0:04〜)日の出時刻は午前6:43。 
久しぶりにアナグマの越冬用営巣地(セット)に雪が積もっていました。 
まだ真っ暗な夜明け前に、タヌキが単独で現れました。 
雪に埋もれたアナグマの巣口Rの窪みに興味を示し、雪面の匂いを嗅ぎました。 
固く凍結した雪面を歩いて左へ移動すると、巣口Lが雪に埋もれた地点にも立ち寄って匂いを嗅ぎ回ります。 
再び巣口Rに戻ってきました。 


シーン2:1/29・午前6:03(@1:04〜) 
25秒後に監視カメラが再起動すると、タヌキは巣口Rを離れて左へ立ち去るところでした。 
ぐるっと回り込んでから、画面下から再びセットに戻ってきて、またもやアナグマの巣口Rへ向かいました。 


シーン3:1/29・午前6:04(@2:04〜) 
つづけてタヌキは巣口Lを点検してから、またまたしつこく巣口Rに戻りました。 
最後はようやく左に立ち去りました。 


シーン4:1/29・午後21:35・気温-3℃(@2:47〜) 
夜行性のタヌキは、昼間は自分の巣穴で寝て過ごし、晩になるとまた採餌のために外出します。 
今回は3頭が一緒にやって来ました。 
♀♂つがいと子供から成る家族群なのか、それとも3兄弟(姉妹)なのか、私には分かりません。 

奥の林内から来た1頭が、林縁の落葉ミズキの根元に排尿マーキングしたようです。(@3:12〜) 
このとき左後脚を上げたかどうかはっきり見えず、性別不明です。 
その後で、このタヌキがアナグマの巣口Rを塞いでいる凍った雪を前足でガリガリと掘り始めました。 
しかし少し掘っただけで諦め、左へ立ち去りました。


シーン5:1/29・午後21:43(@3:47〜) 
7分後に、右から戻ってきたタヌキがアナグマの巣口Rの左で雪面の匂いを嗅いでいました。 
通りすがりに、雪で埋もれた巣口Lの匂いを軽く嗅ぎました。
左へ回り込んでから奥の林内に立ち去りました。 
途中で凍った雪面に座ると、後脚で痒い体を掻きました。 


シーン6:1/30・午前1:47・気温-5℃(@4:45〜) 
日付が変わった深夜に、単独行動のタヌキが右からやって来ました。 
雪面はクラスト状態で、足跡が残りません。 
凍った雪に埋もれたアナグマの巣口Rをチェックしてから、奥の二次林へジグザグに入って行きました。 
途中で落葉樹の根元で腰を落として、雪面に排尿マーキングしたようにも見えました。(@5:30〜) 
排尿姿勢から、この個体は♀かもしれません。 


シーン7:1/31・午前0:21・気温-5℃(@5:45〜) 
翌日も真夜中にタヌキが単独で右から登場。 
アナグマの巣口Lが雪の埋もれた地点をチェックしてから左へ。 


シーン8:1/31・午後19:48・気温-1℃(@6:11〜) 
同じ日の晩に、奥の落葉二次林へ入って行くタヌキの後ろ姿だけ写っていました。 


シーン9:2/3・午後22:38・気温-5℃(@6:27〜) 
3日後の晩遅くにも、足早に奥の二次林へ入って行くタヌキの後ろ姿が撮れていました。 

数日間雪の下に埋もれていたアナグマの巣口Rがいつの間にか開口していました。 
短い冬眠(トーパー)から目覚めたアナグマが巣内から雪を掘って外に顔だけ出したのかもしれませんが、その様子は撮れていませんでした。 
あるいは、アナグマの呼吸熱や体温で巣口を塞いでいた雪が自然に溶けたのかもしれません。
もしそうなら、アナグマの巣口から寒い冬に白い湯気が立ち昇るはずですが、こんな光景を私はまだ見たことがありません。 

凍結した雪面の上に薄っすらと新雪が積もり、そこにタヌキが残したばかりの足跡が残っています。 
せっかく久しぶりにアナグマの巣口Rが現れたのに、タヌキは立ち寄らずに素通りしていました。 


シーン10:2/5・午前0:45・気温0℃(@6:38〜) 
2日後の深夜、アナグマの巣口Rの開口部が少し拡大していました。 
雪原で地面が少しでも露出すると、晴れた昼間にそこを中心に雪解けが進みます。 

左から来たタヌキが通りすがりにアナグマの巣口Rの匂いを嗅いでから、右へ向かいます。 
この日も雪面は凍結しており、タヌキの足跡は残りません。 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
積雪量は少ないのですが、厳冬期で気温が下がり、林床の雪面がアイスバーンのように凍りました。 
アナグマが冬眠している巣穴の入口L、Rは雪の下に埋もれてしまいました。
夜な夜なやって来るタヌキは、見慣れた巣口の消失に戸惑っているようで、何度も調べています。 

こうしたタヌキの行動を童話の世界のように擬人化すると、近所に住むアナグマが無事かどうか、生き埋めにされていないか安否確認(生存確認)に通ってきているように解釈したくなります。 

アナグマの巣口が雪で埋もれて見えなくなった、さらに雪が凍って固く閉ざされた、という事が理解できずに戸惑っているとしたら、雪国の冬を初めて経験する当歳仔のタヌキなのでしょうか? 
巣口Rがあった地点の凹んだ雪面をタヌキは前肢で掘ろうとしたのに固く凍っていて、穴掘りの苦手なタヌキはすぐに諦めてしまいました。 

あるいは、タヌキはアナグマの心配をしている訳ではなく、アナグマの巣穴に居候している野ネズミの残り香を嗅ぎ取って、キツネのように興味を示しているだけかもしれません。
しかしそれだと、アナグマの巣口が再び開口した後にタヌキが興味を失って巣口を素通りするようになった理由が説明できません。

ところで、巣口を雪や氷で塞がれたら、内部で冬眠するアナグマは窒息しないのでしょうか? 
こういうときこそ、予備の換気口(空気穴)が必要です。 
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しかし、その空気穴は監視映像の画角の少し左外にあるために、雪が積もって凍っても開口状態を保って機能しているのかどうか不明です。 
やはりトレイルカメラをもう1台追加して換気口を監視すべきでしたが、他のプロジェクトも同時に並行しているので、カメラが足りず無理でした。




2025/01/04

雪山の斜面にニホンノウサギが縦横無尽に描く足跡の軌跡【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月下旬・午後19:10頃および23:45頃 

シーン0:1/9・午後12:38・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
雪の積もった里山で、スギ植林地に残されたニホンカモシカ(Capricornis crispus)の溜め糞場sr1を自動センサーカメラで見張っています。 
今季は異常な暖冬で降雪量が少ないのですが、林床の溜め糞は雪で覆われ、雪面にはスギの落葉落枝が散乱しています。 
画面の手前から奥に向かって上り坂の斜面を見上げるアングルになっています。 

この地点で冬毛のニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)が登場したシーンをまとめました。 


シーン1:1/24・午後23:58・吹雪(@0:07〜) 
シーン2:1/25・午後2:47・吹雪(@0:14〜) 
動物は何も写っていないのですが、誤作動で撮れた映像で雪国の気象をお伝えします。


シーン3:1/25・午前7:11・くもり(@0:21〜) 
スギ樹上からときどきドサッと落雪すると、旧機種のトレイルカメラはそれに反応してしまいます。
林床には新雪が積もり、野生動物の足跡は全く付いていません。 


シーン4:1/26・午前9:43・くもり(@0:27〜) 
樹上からの落雪。 


シーン5:1/26・午後19:08・降雪(@0:33〜) 
新雪が積もった林床にノウサギが左から右へ横切った足跡が残っています。 
監視カメラの起動が間に合わなかったようです。 

雪が横殴りに降っていますが小雪程度で、吹雪とは言えません。 


シーン6:1/26・午後19:13・降雪(@0:38〜) 
5分後に再び監視カメラが起動したのですが、ノウサギの姿は写っていませんでした。 
しかし、雪面に残る足跡を直前の動画と見比べると、ノウサギが右奥から手前へ走ってきて古い足跡と交差していました。 


シーン7:1/26・午後23:42・降雪(@0:44〜) 
雪が降る深夜に斜面を右からトラバースして来たノウサギが、スギの木の手前を左に横切りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


低温下でトレイルカメラは動きの早いノウサギになかなか反応できていません。
それでも、雪面の雪質がパウダースノーの新雪だったため、ニホンノウサギの足跡から軌跡を読み解くことができました。


つづく→

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