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2025/01/04

落葉した木の上で交尾するニホンザル♀♂

 

2023年12月下旬・午後14:40頃・くもり 

山麓の道端の落葉樹(樹種不明)にニホンザルMacaca fuscata fuscata)の♀♂ペアが登っていました。 
樹上で2頭が仲良く寄り添い、♂が♀の背後から軽くマウントしたものの、本格的な交尾には至らなかったようです。 
発情期のニホンザルは外性器が紅潮しています。 
この♀は乳首が短く、育児(授乳)経験のない若い♀個体のようです。 

現場は民家の裏庭で、室内犬がガラス窓越しに外のニホンザルに対して激しく吠えています♪(犬猿の仲) ※追記参照
それでもニホンザル♀♂は、室内のイヌを全く恐れる素振りはありませんでした。

この後も♀♂ペアが樹上で交尾を繰り返していたのですが、生憎カメラのバッテリーが切れてしまい、これ以上は記録できませんでした。 
気温の低い冬には、スペアのバッテリーも保温しながら携帯した方がよいかもしれません。


※【追記】
サルは犬を見ると激しく警戒し「クワン」「カン」という高い声を出す。かつての天敵であるオオカミに対する、警戒行動のなごりなのだろう。(p182より引用)

しかし、私はまだそのような警戒声を実際に聞いたことはありません。 


2024/12/30

野生ニホンザル♀の同性愛行動#2(若い♀同士の抱擁、マウンティング、正常位の擬似交尾など)

 

2023年12月中旬・午後15:55頃・くもり 

夕方に山麓を遊動する野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れを慎重に追跡していたら、太い風倒木(樹種はオニグルミ、隣の立木はハンノキ)の上に並んで毛繕いしているペアを見つけました。 
相互毛繕いではなく、片方の個体が一方的に甲斐甲斐しく毛繕い(ノミ取り)しています。 

気持ち良さそうに目を瞑って毛繕い(頭皮マッサージ?)を受けていた個体が急に顔を上げると、互いに対面したまま抱き合いました。
抱擁(ハグ)したまま相手を押し倒すと、下になった個体が腰を動かして陰部を相手に擦り付けました。 
正常位の性行動(疑似交尾)と思われます。 
倒木上で仰向けに寝た個体は、ゴツゴツして寝心地が悪いと思うのですが、短時間で終わりました。 
続けて、再び対他毛繕いに戻りました。 

このとき私が立っていた地面の足場がとても不安定で、猿の手前にある枝が撮影の邪魔だったこともあり、動画を撮りながら少し移動しました。
(映像がひどく手ブレして申し訳ありません。) 
幸い、ニホンザル♀のペアは私が動いても、すぐには逃げ出しませんでした。 

次にペアの一方が立ち上がると、パートナー♀の背後に回り込み、マウンティングしながら腰を動かしました。(pelvic thrust) 
マウントされた♀は、振り返って相手の顔を仰ぎ見たものの、両手は倒木の上に付いたままでした。 
最後の点が、典型的な異性間交尾時の♀の行動とは違いました。
(片手で♂の体に触れたり引き寄せたりするはず) 
短い疑似交尾が終わると、ペアは倒木上で再び対面で座り抱き合いながら体を軽く揺すりました。 
このとき口を少しもぐもぐ咀嚼しています。 
頬袋の中に詰め込んでおいた食料を食べているようです。 

無粋な出歯亀(私)がじっと見ているせいで落ち着かないのか、倒木上のペアが移動を始めました。 
倒木から地面に降りる際に股間がちらっと見えて、ようやく性別が♀と分かりました。 
尻の色が真っ赤ではなくてピンクだったことから、発情していない若い♀のようです。 

もう1頭も倒木から降りて、パートナーを追いかけました。 
土手の途中で追いつくと、背後からマウンティングしました。 
今回も両足を相手の膝の裏に乗せてマウントし、腰を動かしました。 
マウントした個体の股間に睾丸が見えないことから、やはり♀同士のようです。 
マウンティングを終えた直後に、目を凝らしてよく見たのですが、マウントされた♀の尻に白い精液は付着していないようです。(異性間の交尾ではない) 

土手を登って用水路沿いの小径に移動すると、横に並んで座って一方的な対他毛繕いを始めました。 
手前にあるオニグルミの倒木が邪魔で見えにくいのですが、その背後でニホンザル♀のペアが再びマウンティングしました。 
このとき、マウンティングの攻守交代をした点が興味深く思いました。(異性間では決して見られない?)
今回も、マウントされた個体は振り返って相手を仰ぎ見るだけで、パートナーを片手で掴んで引き寄せる動きはしませんでした。 

マウンティングの次は、また熱い抱擁に戻りました。 
♀同士でよくみられるこの行動を、ニホンザルの研究者は「ハグハグ」と呼んでいるのだそうです。(※ 追記参照)
一素人の擬人化した解釈ですが、ハグハグは♀同士の前戯のようなもので、性的な興奮が高まるとマウンティング(後背位)や正常位に移行するようです。 
ハグハグから相手を押し倒し、正常位になりました。 
今度は倒木の上ではなく地面なので、仰向けになっても安定していて背中が痛くありません。 

私に気づいたようで、警戒した個体が左奥へ歩き去り始めました。 
それを追いかけた別個体が背後からマウンティングしました。 
マウントを止めた若い♀のペアは、用水路沿いに設置された転落防止のフェンス(金網)を相次いで身軽に登り、手摺を伝って歩き始めました。 
ここで群れの仲間と合流したことになります。 
それまで、群れの仲間は若い♀同士の同性愛行動に何も干渉しませんでした。 

 仲間が何匹も手摺に並んでいた。♀aもフェンスを登って手摺へ。 用水路の対岸の林縁から伸びた落葉性広葉樹(クリ?)の枝に飛びつくと、ターザンのようにブランコ遊びをしながら、対岸に渡りました。 

この辺りから私はもう誰が誰だかニホンザルを個体識別できなくなりました。
手摺に座って体を掻いていた個体が振り返って仲良しのパートナーを見つけると、駆け寄りました。 
フェンスから地面に相次いで戻ると、そのまま地上でマウンティングしました。 
フェンスの手摺(断面が丸い、金属の横棒)の上では足場が不安定で、マウンティングしたくてもできないのでしょう。 
マウンティングに続けてハグハグを繰り返したということは、♀同士のようです。 

私が少し移動してペアに近づき、なんとか撮影アングルを確保しました。 
(ちょっとだけ目を離して空白時間があったので、さっきと同一の♀ペアかどうか確証がありません。) 
ペアは相変わらず水路横の小径に座り、対面でハグハグしていました。 
立ち上がると背後からマウンティングしました。 
このとき♀の外性器はピンク色でした(未発情)。

マウントを解除した2頭は、相次いで横のフェンスによじ登り、手摺から頭上の落葉樹の横枝に飛びつきました。 
先行個体は、枝にぶら下がったままターザンのように対岸のフェンスに移り、地面に降りました。 
ところが後続個体は体重が軽いのか、ブランコの振幅が小さくて対岸のフェンスには手が届きませんでした。 
どうするのかと思って見守ると、臨機応変にそのまま横枝をよじ登ってから、対岸のスギ横枝に飛び移りました。 
無事に対岸の地上に降りると、先行するパートナーの後を追って遊動を続けます。 
ニホンザルの群れは、全体としてねぐらとなる森を目指しているようでしたが、私が追いかけるので警戒してどんどん逃げているのかもしれません。 

ニホンザル♀同士の同性愛行動を観察したのはこの日が始めてでした。
しかも、同じ山系の少し離れた地点で同じ日に何度も観察できたので、とても興奮しました(interestingという意味で)。 

関連記事(同日の撮影)▶  

もしかすると、発情期なのにこの群れには成獣♂が居なくて(♂不足)、交尾相手の♂が見つからない♀たちが性的に欲求不満になっているのかと、現場では安直に推測しました。
猿害対策でなぜか♂ばかりが駆除されてしまったのか、などと先走って考えたりもしました。 
ところが、この日に撮れた動画をすべて見直すと、発情した成獣♂(αアルファ♂?)も群れと一緒に遊動している様子がしっかり写っていました。 
この日♀の同性愛行動を初めて撮影できて夢中になっていた私は、♂の存在が目に入らなかった(記憶に残らなかった)ようです。 


※ 夕方で薄暗いので、動画の画質が少し粗いです。 


※【追記】
今回見られた前戯のような抱擁は、ハグハグ行動と呼ばれるのだそうです。 
少し長いのですが、文献検索で見つけた学会発表の抄録を引用させてもらいます。
中川尚史, et al. ニホンザルにおける “ハグハグ” 行動パタンの地域変異. In: 霊長類研究 Supplement 第 22 回日本霊長類学会大会. 日本霊長類学会, 2006. p. 28-28.

 

【抄録】演者のひとり下岡は、金華山のニホンザルの“ハグハグ”行動について報告した(下岡、1998)。“ハグハグ”は、「2個体が対面で抱き合い、お互いの体を前後に揺さぶる行動」であり、以下のような特徴が認められた。1)2個体の行動が同調する、2)リップスマックを伴う、3)平均持続時間は17秒である、4)主にオトナ雌によって行われ、血縁の有無によらない、5)グルーミングの中断後や闘争後に見られる。以上の特徴から下岡はこの行動には、個体間の緊張を緩和する機能があると考えた。本発表では、金華山の“ハグハグ”行動と相同と思われる行動が屋久島のニホンザルでも観察されたので報告する。 当該行動は、2005年9月から12月、屋久島西部林道域のニホンザルE群を対象に、演者を含む総勢8名で行った性行動の調査中に観察された。 観察された行動は、下岡が報告した1)~5)の特徴、および機能を持っており、“ハグハグ”と相同の行動とみなすことができた。しかし一方で、行動パタンにわずかな変異が認められた。屋久島の“ハグハグ”も「2個体が抱き合い、お互いの体を前後に揺さぶる行動」であるが、必ずしも「対面で抱き合」うのではなく、一方の個体は他方の側面から抱きつく場合があった。さらに、屋久島の“ハグハグ”は、他個体を抱いた手を握ったり緩めたりいう動作を伴ったが、金華山ではそうした動作は見られていない。 行動の革新が見られ、集団中に伝播し、世代を超えて伝承することを文化と定義すれば、文化の存在を野生霊長類で証明することはかなりの困難を伴う。そこで、1)行動の地域毎の有無、2)行動を示す個体の増加、3)行動のパタンの一致などがその傍証として用いられてきた。金華山の“ハグハグ”とは微妙に異なるパタンで屋久島においても相同の行動が発見されたことは、上記3)の文化の傍証に相当する。今後、1)、2)の傍証についての情報を収集していく予定である。

今回の私の撮影地は山形県で、鹿児島県の屋久島よりも宮城県の金華山にずっと近いです。 ハグハグ行動のパターンが、金華山の個体群と近い事がわかりました。 
屋久島の個体群で記述されたハグハグのバリエーションとは全く違います。
ハグハグが緊張緩和のための行動という解釈には、個人的に納得できません。
今回、私の耳には、同性愛行動に耽るニホンザル♀の鳴き声やリップスマック(唇で鳴らす音)をまったく聞き取れませんでした。 


【追記2】
観察に不慣れな私が若いニホンザル♂を♀と誤認しているだけかもしれません。
だとすれば、同性愛でない可能性が出てきます。
子猿♂は睾丸が未発達だとしたら、私には性別を見分けるのはお手上げです。

2024/12/17

ウラギンスジヒョウモン♂同士の誤認求愛?

 




2023年7月中旬・午前11:55頃・晴れ(強風) 

民家の裏庭に咲いたオレガノ(別名ハナハッカ)で花蜜を吸っているウラギンスジヒョウモン♂a(Argyronome laodice japonica)を動画に撮っていると、同種の別個体♂bが飛来し、訪花中の個体♂aも直ちに飛び去りました。 

何が起きたのか、1/10倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう。(@0:07〜) 
酷い風揺れを我慢しながら撮影したのですが、スローモーションに加工すれば、それなりに見れる動画になります。 
まず、2頭とも翅表に黒い性斑(性標)がある♂でした。 
♂aは迎撃のために飛び立ったのでしょうか? 
 蜜源植物を巡る縄張り争いがあるのかな? 
しかし、手前で訪花していたキタテハ♀(Polygonia c-aureum)夏型に対してウラギンスジヒョウモン♂は全く興味を示しませんでした。 
したがって、同種の♂同士の誤認求愛だろうと思われます。 
ウラギンスジヒョウモン♀がオレガノの花に来たら求愛交尾しようと♂は待ち伏せしていたのでしょう。 

直後にオオフタオビドロバチAnterhynchium flavomarginatum)もオレガノの花壇から飛び去りました。

2024/11/27

ニホンザルのペアが初冬の夕方に林縁でマウンティング(若い♀の同性愛行動?)

 

2023年12月中旬・午後15:35頃・くもり・日の入り時刻は午後16:24 

夕方に遊動する野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れを慎重に追うと、山麓のスギ植林地までやって来ました。 
おそらくここにねぐら入りするようです。 
猿もだいぶ私に慣れてくれて、リラックスした行動を示すようになりました。 
(ニホンザルに「餌付け」は全くしておらず、根気強く観察者に慣れてもらう「人付け」の手法です。) 

薄暗いスギ林縁に座ってうつむき、自分で蚤取り(毛繕い)している個体aを撮り始めました。 
その左隣に別個体bが並んで座っているのですが、手前のスギ立木の陰に隠れて姿がほとんど見えません。 
ただでさえスギ林は薄暗いのに、山麓の夕方なのでかなり暗く、動画の画質が粗くなってしまいました。 
カメラの設定でゲインを上げてから撮り直します。 

やがて、2頭とも立ち上がると、bがaの背後に回り込み、マウンティングして腰を振りました(pelvic thrust)。 
マウンティングされた個体aの後ろ姿の尻を見る限り、♀であることは間違いないものの、尻が赤く腫脹してないことから、発情期ではない若い♀と分かります。 
マウンティングされながら♀aが振り返って相手の顔を仰ぎ見たり、片手で相手を引き寄せる動きをやりませんでした。 
したがって、これは交尾ではなくて、群れ内で順位を決める儀式的な優劣行動なのでしょうか? 
問題なのは、マウンティングした個体bの性別です。 
これも発情していない若い個体のようですが、素人目には♀に見えます。 
もし間違っていたら、ご指摘願います。 
若い♂だと睾丸が小さいのですかね?
とにかく薄暗くて、観察しにくい条件でした。 
短いマウンティングを済ませると、2頭は前後してスギ林の奥へ遊動して行きました。 


※ 動画の後半は編集時に明るく加工しています。 


実は同じ日の昼前にニホンザル♀同士(年齢差あり)の同性愛行動を観察したばかりだったので、今回も若い♀の同性愛行動ではないか?と気になりました。 



2024/11/20

山中の池で交尾するエゾコセアカアメンボ♀♂?

 

2023年6月上旬・午後13:25頃・晴れ 

里山で湧き水が溜まった泉の水面で2組のアメンボ♀♂が交尾していました。 
エゾコセアカアメンボ(Gerris yezoensis)だと嬉しいのですが、アメンボを見分ける図鑑などをもってないので、真面目に検討したわけではありません。 
もし間違っていたら、ご指摘願います。 
ヤスマツアメンボ(Gerris insularis)ですかね? 

交尾中のペアの上にさらに別のペアがのしかかりました。 
縄張り争いやパートナーの強奪戦があるのでしょうか? 
それにしては、その後の展開がありません。
捕食(共食い)でもありませんでした。 

水中ではアズマヒキガエルの幼生(黒いオタマジャクシ)およびトウホクサンショウウオの幼生が泳いでいます。

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2024/11/07

野生ニホンザル♀の同性愛行動(雌同士の抱擁、マウンティング、正常位の擬似交尾など)

 

2023年12月中旬・午前11:40:頃・晴れ 

里山の麓に流れる沢を治水する砂防ダムのコンクリート堰堤で2頭のニホンザルMacaca fuscata fuscata)が毛繕いしていました。 
このペアは体格に少し差があり、大柄な個体が小柄な個体に対して甲斐甲斐しく対他毛繕いをしています。 
大柄な個体は、胸にピンク色の細長い乳首があることから、経産♀(オトナメス)とすぐに分かりました。 
小柄な個体は対他毛繕いを一方的に受けながらも自分でも蚤取りをしていて、お返しの毛繕い(相互毛繕い)を全くしませんでした。 
初めは小柄な個体の性別を見分けられなかったものの、胸に乳首が見えないことは確かです。(この時点では若い♂または子育て未経験の若い♀だと思っていました。)

谷(渓流)を挟んで対岸に座って居るニホンザルと私は、充分に距離が離れているのですが、私に対して少し警戒しているようです。 
周囲をキョロキョロと見回して、物音がするとビクッと怯えました。 
群れの仲間が近くに居るのかもしれませんが、私には姿が見えませんでした。 

砂防堰堤に座ったまま至近距離から互いにちょっと見つめ合ってから、正面から抱き合いました(ハグ)。 
すぐにまた対他毛繕いを続けます。 
抱擁したのは心理的な不安を和らげるための行動なのか?と微笑ましく思いつつ撮影を続けると、驚きの展開が待っていました。 

毛繕いを受けていた小柄な個体が立ち去ろうとすると、大柄な年長♀が相手を抱きかかえるように引き留めて、2頭はハグしたまま後足で立ち上がりました。(@1:00〜) 
抱き合ったまま年長♀が後ろに倒れ込んだ結果、正常位の交尾行動?が始まりました。 
年長♀が後ろに倒れ込む際に、左手で近くの枝を掴んでいました。 
このとき初めて小柄な個体の股間がしっかり見えたのですが、外性器から♀だと分かって驚愕しました(睾丸も陰茎もない)。 
もしも若い個体の性別判定が間違っていたら以下の解釈は全て台無しなので、ご指摘願います。
小柄な若い♂が年増の♀を押し倒して正常位の交尾を始めたのではなくて、明らかに年長♀が若い♀を誘い込んでいました。 
♀同士の同性愛行動なのでしょうか? 
正常位で下になった年長♀が腰をスラストして下腹部の外性器を若い♀の体に擦り付けています。 
ここまでの行動から、年長♀の方が性的にかなり積極的で、明らかに発情しているようです。 
異性間の交尾なら正常位の上になった♂が腰をスラストさせるはずですが、上になった若い♀は棒立ち(四足)のまま腰を動かしませんでした。 

抱擁を解くと若い♀は少し離れ、砂防堰堤に身を伏せました。 
このとき若い個体の股間に見えたピンク色の陰部は、やはり♂ではなく♀の外性器でした。 
年長♀は若い♀に対して再び対他毛繕いをしてやります。 

辺りをしばらく見回してから、年長♀が若い♀の背後からマウンティングしました。(@2:13〜) 
両足で相手の腰の上に乗った年長♀は、左手で近くの木の幹を掴んでバランスを取りながら、下腹部の外性器を若い♀に擦り付けました。 
マウンティングされた若い♀は体をねじって相手の顔を見上げ、右手で相手を掴んで引き寄せています。 
この行動は、異性間交尾でマウントされた♀がやる行動と同じでした。 

若い♀の腰に乗った年増♀が地面に跳び下りると、少し離れて座って休みます。 
日当たりの良いコンクリート堰堤は暖かそうです。 
小柄な若い♀個体は、痒い体を掻いたり自分で毛繕いしたりしています。 
年長♀は、対岸で撮影している私を気にしてチラチラと見ています。 
一方、若い♀は周囲をそれほど警戒しません。 

短い休憩を挟んだだけで、すぐにまた年長♀が立ち上がると若い♀の背後に回り込み、マウンティングしました。(@2:50〜) 
年長♀が近づくと、座っていた若い♀は立ち上がり、四足で迎え入れました。 
これが交尾を促す積極的なプレゼンティングなのかどうか、観察経験の浅い私には判断できません。 
少なくとも、マウントされることを嫌がっていないのは確かです。 
今回もマウントされながら若い♀は振り返って相手を仰ぎ見ながら片手で触れました。 
若い♀が前に歩きながらのマウンティングになってしまい、バランスが不安定ですぐに離れました。 

少し離れて座ると、各々が毛繕いをしています。 
耳を澄ますと周囲からニホンザルの鳴き声がかすかに聞こえます。 
近くで遊動・採食している群れの仲間が鳴いている声なのか、それとも被写体の♀同士が鳴き交わしているのか、遠くて分かりませんでした。 

これで観察を打ち切りましたが、ニホンザル♀のペアが同性愛の行動を繰り返しながら少しずつ奥へ奥へと移動しているのは、私を警戒して物陰に隠れようとしているのかもしれません。 
群れの仲間に邪魔されないように、群れから離れて安全な砂防ダムの上で同性愛行動を始めたようです。 
ちなみにニホンザルでは異性間の交尾行動でも、繁殖期に仲良くなった♀♂ペアはライバルに邪魔されないように群れから離れて逢引することが多いです。

今回のペアが役割を入れ替えて、若いニホンザル♀が年長♀に対して逆にマウンティングしたり対他毛繕いしたりすることは一度もありませんでした。
一連の行動を見ると、群れ内での順位を決めるための優劣行動として年長♀が若い♀に対してマウンティングしただけとはとても思えません。

ボノボ(別名ピグミーチンパンジー)というアフリカの類人猿は、異性愛だけでなく同性愛も大っぴらに行う猿、正常位で性行動をする猿ということで有名で、テレビの動物番組で何度も紹介されています。 
個体間で緊張が高まると擬似的な交尾行動(マウンティング)、オス同士で尻をつけあう(尻つけ)、メス同士で性皮をこすりつけあう(ホカホカ)などの行動により緊張をほぐす[5][6]。(中略)体位については、人間だけが行うと考えられていた正常位での性行動を行うことが発見されている。 (wikipediaより引用)
ボノボの♀同士がやる有名なホカホカ行動を今回ニホンザルで初めて観察できて、びっくりしました。
ボノボは喧嘩・対立した当事者間の緊張をほぐすために儀式的な同性愛行動をするそうです。
今回私が観察したニホンザル♀の事例ではその解釈は当てはまらず、年長♀の性的衝動から始まった性行動だと思います。
撮影時期はニホンザルの交尾期(発情期)ですし、撮影直前にこの2頭のニホンザル♀が喧嘩をしていたようには見えません。
年長♀は乳首が長いことから、過去に出産・育児をして授乳経験があると考えられます。
したがって、この年長♀個体は異性♂と交尾した経験があり両性愛者です。 

Google Scholarで文献検索して、ニホンザルの♀同士の同性愛行動について調べてみました。
全文PDFが無料で閲覧できる論文をざっと斜め読みしただけでも勉強になりました。

中川尚史, 中道正之, and 山田一憲. "ニホンザルにおける稀にしか見られない行動に関するアンケート調査結果報告." 霊長類研究 27.2 (2011): 111-125.
メスのメスに対するマウンティングに代表されるメス間の同性愛行動にも個体群間変異が知られている。Vasey & Jiskoot (2010) は,メスの同性愛行動が嵐山,箕面,地獄谷の3個体群で知られ,これらはいずれもミトコンドリア DNA の型で言えば東日本タイプのうちの同じサブタイプ(A1)に属することから,遺伝的なバックグラウンドがある可能性を指摘している。しかし,メスのメスに対するマウンティングが,西日本タイプに属する屋久島(Kawamoto et al., 2007)で比較的高い観察頻度で認められたことは,この可能性を否定するものである。
Vasey, Paul L., and Hester Jiskoot. "The biogeography and evolution of female homosexual behavior in Japanese macaques." Archives of Sexual Behavior 39 (2010): 1439-1441. 
カナダのレスブリッジ大学のVasey氏がこの分野における第一人者なのか、ニホンザルの同性愛行動に関する論文を何本も精力的に発表しています。

今回観察したニホンザル♀のペアは母と娘または姉妹なのでしょうか?
群れを長期間追いかけて個体識別で家系調査をするかDNA鑑定をしないと、血縁関係は分かりません。
驚くべきことに、ニホンザル♀の同性愛行動でもインセスト・タブー が守られている(近親者を忌避する)という研究結果が報告されていました。
Chapais B, Mignault C. Homosexual incest avoidance among females in captive Japanese macaques. Am J Primatol. 1991;23(3):171-183. doi: 10.1002/ajp.1350230304. PMID: 31952407.
つまり、今回のニホンザル♀2頭は母娘や姉妹ではなく、同じ群れで年齢差があって血縁関係のない仲良しから同性愛行動に発展したと考えられます。

ヒトの同性愛に対する価値判断を伴わない純粋な動物行動学の文脈であっても、「同性愛」という手垢のついた用語を軽々しく使うことに強い抵抗を示す人々がいます。
安易な擬人化をなるべく避けるためにも、「同性間性行動」と言い換えるべきかもしれません。
交尾の体位を説明する「正常位」という用語も人間中心主義的で、ある種の価値判断が含まれているように思うのですが、中立的な用語に言い換えられるのでしょうか?
「マウントを取る(マウンティング)」というサル学の用語も最近では日本人の日常会話によく登場する比喩表現になり、すっかり手垢がついてしまいました。


【アフィリエイト】 

2024/09/10

電柱の天辺で熱烈なキスを交わすドバト♀♂(野鳥)

 

2023年9月下旬・午前11:05頃・くもり 

田園地帯の端に立つ電信柱の天辺に並んで止まった2羽のカワラバト(=ドバト;Columba livia)が、何度もキスを交わしていました。(billing) 
擬人化して愛情表現のキスと解釈したくなりますが、ピジョンミルク(素嚢乳)を吐き戻して与える求愛給餌なのでしょうか?

この2羽は♀♂ペアだと思うのですが、やや体格差があります(左L<右R)。 
やや小柄なRの方が積極的にLへキスしています。 
このR個体が♂なのかな? 
調べてみると一般にドバトの体長に性差は無いとされているので、今回の体格差はたまたまだったようです。 

キスの合間に♂Rが儀式的な羽繕いをして、首元の羽毛の構造色を相手に見せつけているようです。 
やがて♀Lも羽繕いして、自分の胸元の羽毛を整えました。 
 遠いせいか、この間にドバトが鳴き交わす声は聞き取れませんでした。 

このまま求愛行動が盛り上がって交尾が始まるかと期待して見守ったのですが、♂Rは飛び去ってしまいました。 
素人目には♀Lが交尾拒否をしたようには見えなかったのですが、♂Rは「脈なし」だとあっさり諦めたようです。 

巣立った幼鳥に親鳥がピジョンミルクを巣外給餌したという別の解釈もあり得ますかね?(※ 追記参照)
ドバトは外見で性別を見分けられず、交尾が成立したときしか性別を確定できないのが問題です。


電柱の天辺に独り残された個体♀Lは、羽繕いを続けています。 
首をひねって背中の羽毛も嘴で整えています。 
落ち着き払って飛び立つ気配がなく、私がすぐ下を通り過ぎても逃げませんでした。 

※ 逆光なので、動画編集時にコントラストではなく彩度を少し上げました。


※【追記】
親鳥が雛にピジョンミルクを口移しで与えるのは、雛が巣内にいるときだけで、巣立ち後の幼鳥は固形物の餌を自分で食べるようになるのだそうです。



2024/06/13

モエギザトウムシ?♀♂の求愛と交尾拒否

 



2023年9月上旬・午後12:40頃・晴れ 

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場phがある周辺のスギ林床で多数のモエギザトウムシ♀♂(Leiobunum japonicum)?が活動していました。 
基本情報として、ザトウムシは体格に性的二型があり、基本的に♀の方が大きいのだそうです。(♀>♂) 
また、鋏角は♂の方が大きいらしい。(♀<♂) 
つまり外見でザトウムシの性別を見分けることが出来ます。 

下草(ヤブコウジ実生の葉)の上に居たモエギザトウムシ?♀個体が方向転換し、移動を始めました。 
林床を奥から歩いて来た別個体♂がこの♀を見つけると、♀に向かって積極的に突進してきました。 
そのまま正面から向き合うと、いきなりがっぷりと組み合いました。 
体格差があるのに、長い歩脚を屈伸しながら口器で互いに噛み合っているようです。 
短いキスを交わしただけで、♀♂2匹はすぐに別れました。 
今までこんな行動を見たことがなかった私はてっきり喧嘩(闘争)なのかと思ったのですが、調べてみると求愛行動だったと分かりました。 
クモの♂は触肢に移精してから♀の外雌器に挿入します(交接)。 
それに対して、ザトウムシ♂は陰茎を♀の交尾器に挿入する点で配偶行動が大きく異なります。 

林床を逃げていく♀個体に注目して撮り続けると、すぐにまた別個体の♂と遭遇しました。 
♀の背後から追いかけてきた♂は回り込んで、今回も互いに正面から向かい合って口器でがっちり噛み合いました。 
数秒後にはすぐ♀♂ペアを解消して別れました。 
しかし長い歩脚が絡み合って、別れるのに少し苦労しているようです。 

しばらくすると、一旦別れた♂が再び♀に迫りました。 
♀は嫌がっているようですが、そこへ3匹目が乱入してきました。 
この混乱に乗じて、♀は♂のしつこいセクハラから逃げ延びたようです。 

 一連の求愛行動および交尾拒否を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう。(@2:02〜) 
ポイントとなるのは、♂が陰茎を伸ばして♀と結合したかどうか、です。 
1回戦で♀と正面から組み合った際に、♂が白い陰茎を伸ばしかけたように見えたのですが、どうでしょうか?(@3:04〜) 
2回戦は背側からの撮影アングルだったので、交尾に成功したのかどうか、素人目には分かりませんでした。
うまくいく場合は、オスはススッとメスの脚をすり抜け(メスが寛容になる)胴体を潜らせ胴体を鉢合わせます。(関連動画『ザトウムシのコミュニケーション』by 生きもの観察記録さんの解説より引用)
私の動画では♀♂ペアが互いに腹面を合わせなかったので、今回も♀が交尾拒否したようです。
♀が受け入れても、ザトウムシの交尾はせいぜい5秒ぐらいで終わってしまうのだと教えてもらいました。
ザトウムシ♂は既交尾♀と交尾する前に陰茎を使ってライバル♂の精子を♀の性器から掻き出す行動(精子置換)をしないのでしょうか?


【参考動画】
↑「モエギザトウムシの求愛(拒絶するメス)①」 by 生きもの観察記録さん

モエギザトウムシのメスが交尾を拒絶する場合、胴体を倒立させることがある(他には前脚でオスの胴体をはさむ等)。

オスはちょこまか動くメスの脚をくぐり抜け、最後にはこの鉄壁の拒絶を突破していかないといけない。オスメスの頭と頭が付き合わさらないと、交尾に至らない。

「モエギザトウムシの求愛(メスの交尾拒絶行動)」と題した同じ動画が別サイト「動物行動の映像データベース」にも掲載されていました。

ちなみに、私の動画では、♀は倒立による交尾拒否はしていません。

↑「モエギザトウムシの求愛(拒絶するメス)②」

オス(下側)のからの交尾を拒絶するメス(上側)のモエギザトウムシ。第1脚を閉じてオスの胴体の侵入を防いでいる。
これまでの飼育下では、メスの交尾拒絶行動は①胴体を倒立させる、②脚を閉じる、の2パターンが観察された。
私の動画で、モエギザトウムシ♀が脚を閉じて♂の求愛を拒絶したかどうか、素人目には見分けられませんでした。


「ザトウムシの交尾」で画像検索してみると、交尾中のザトウムシ(モエギザトウムシとは別種)を接写した見事な写真が土壌動物写真家ジーク氏のブログ記事に掲載されていました。
♂が長い陰茎を伸ばして♀と結合した様子が側面からしっかり見えます。
私も次回はザトウムシの交尾に成功するシーンを動画で記録したいものです。


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 ・鶴崎展巨『ザトウムシ』  ザトウムシ・ファン待望の書籍が発売予定です!(予約受付中) 

2024/05/10

タヌキの溜め糞場で必死に配偶者ガードするオオヒラタシデムシ♂

 

2023年7月下旬・午後14:35頃・ 晴れ 

防風林でスギ倒木の横にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場phでオオヒラタシデムシNecrophila japonica)が三つ巴で組んずほぐれつしていました。 
どうやら、交尾中の♀♂ペアにライバル♂が横恋慕して♀を強奪しようとしているようです。 
横倒しになった♀♂ペアもマウントしているだけで交尾器は結合していません。 
交尾した後も♀が産卵するまで浮気しないように♂は配偶者ガードしているのでしょう。 

♀にマウントした♂が腹端を左右に激しく振っているのは、ライバル♂に対する威嚇牽制のつもりだと思うのですが、有効な反撃になっているとは思えません。 
腹端から何か刺激臭でも放出しているのかな? 
そんなことよりも早く(再び)♀と交尾して結合を続ければ、何よりも有効な浮気防止になると思うのですけど…。
溜め糞場で栄養を摂取して産卵したい♀にとっては迷惑なだけかもしれません。 

武器を持たないオオヒラタシデムシ♂同士は♀を巡る闘争に一体どうやって決着をつけるのでしょう?
早い者勝ちで交尾するしかない気がします。 
他に急ぐ用事のあった私は、この3匹の成り行きを見届ける余裕がありませんでした。

【アフィリエイト】

2024/03/23

モクゲンジを訪花中に求愛してくるオオチャバネセセリ♂と交尾拒否する♀

 

2023年7月上旬・午後16:10頃・晴れ 

民家の裏庭に咲いたモクゲンジに複数個体のオオチャバネセセリ♀♂(Zinaida pellucida)が訪花していました。 

まず、クゲンジの葉に乗っている個体に注目しました。 
♀が飛来するのを待ち伏せしている♂なのでしょうか? 
それとは別に、右の枝で訪花中の個体♀がいました。 
その♀が花から花へと少し飛ぶと、葉上の個体♂が目敏く見つけて追尾開始。 
花に止まった♀の周囲を♂がホバリング(停空飛翔)しながら飛び回りました。 
2頭はすぐに別れてしまったのですが、何が起きたのか1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう。(@0:24〜) 
ホバリングする♂の激しい羽ばたきで♀の翅にバシバシと何度も軽く触れていました。 
求愛を受けても♀は翅をしっかり閉じたままです。 
これが交尾拒否の姿勢なのでしょう。 
♂は諦めてすぐ飛び去りました。 

独りになった♀はようやく落ち着いて口吻を伸ばすと、モクゲンジの花蜜を吸い始めました。 
しばらくすると♀も次の花に飛び去りました。 
オオチャバネセセリは羽ばたきが速過ぎて、ハイスピード動画で撮らないと翅表の斑紋がしっかり見えませんね。



オオチャバネセセリ♀@モクゲンジ訪花吸蜜

2024/01/25

ハルニレ樹上で交尾するヨツモンカメムシ♀♂

 

2023年5月下旬・午前11:15頃・くもり

平地のスギ植林地に自生する若いハルニレ灌木の枝先でヨツモンカメムシ♀♂(Urochela quadrinotata)が交尾していました。 
動画で撮っても、逆向きで交尾するカメムシの♀♂ペアに動きはありませんでした。 
しばらくして私が撮影アングルを変えたら、V字姿勢で交尾していました。 
性別の見分け方を知らないのですが、腹部がやや膨満している個体が♀なのでしょう。 

関連記事(6年前の撮影)▶ ヨツモンカメムシ♀♂交尾中の綱引き 


以前もハルニレ樹上でヨツモンカメムシ♀♂が交尾していたので調べてみると、ニレ科植物を寄主(食樹)とするらしく、納得しました。 
余談ですが、ヨツモンカメムシは日本のクヌギカメムシ科では唯一、成虫で越冬するそうです。(一般的には卵越冬。)

2024/01/09

タヌキの溜め糞場に集まって婚活するクロボシヒラタシデムシ♀♂

 

2023年5月上旬・午後15:05頃・晴れ 

平地でスギ防風林を通り抜ける獣道の途中にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が長年使っている大きな溜め糞場wbcがあります。 
定点観察に来ると、新鮮な糞が追加されていました。 

未消化の獣毛が大量に混じった糞が気になります。 
タヌキが野ネズミなど哺乳類の獲物を狩って捕食したのでしょうか? 
死骸を食べたのかな?(腐肉食) 
あるいは、季節の変わり目でどんどん抜け落ちる冬毛を自分で毛繕いする際に誤飲してしまったのかもしれません。 
糞分析の専門家は、体毛だけでも顕微鏡で調べることで種類を見分けられるのだそうです。 
糞虫の中には、糞そのものというよりも糞やペレットに含まれる獣毛や羽毛を専門に食べる種類がいるらしいですけど、見慣れない糞虫は来ていませんでした。

糞に含まれる紫色の人工物の破片は、人家から盗んできた長靴を噛んだ際に誤飲したのでしょう。 
野生タヌキの行動圏を解明するために、マーキングしたプラスチック片を仕込んだ餌を与えて各地の溜め糞場で回収されるかどうか調べるマーキング実験を連想しました。 

タヌキの溜め糞にクロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の成虫が群がっていました。 
これほど多数の群れを見たのは初めてかもしれません。 
マウントした♂を背負いながら♀が歩き回っています。 
クロボシヒラタシデムシのあぶれ♂が交尾相手の♀を求めて忙しなく動き回り、互いにマウントし合っています。 
誤認求愛に気づくとあっさり離れるのですが、鳴き声(リリースコール♪)を発している訳でもありませんし、交尾拒否の合図がよく分かりません。 

赤っぽいダニ(種名不詳)がクロボシヒラタシデムシの体表を徘徊していました。 
他にはハエ類とカメムシがタヌキの溜め糞に集まっていました。 

2023/12/20

ニホンアナグマ♀の発情期が終わってもしつこく夜這いに通い、追い払われる♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年5月上旬 

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma) の巣穴に設置したトレイルカメラの記録です。


シーン1:5/5・午前2:26・気温8℃・(@0:00〜) 
深夜に右手前の巣穴Rから♀(?)が外に出て来ました。 
巣口Rで身震いすると、何かを見つけて手前(画面下)に向かって走って来ます。 
しばらくすると、営巣地(セット)の広場に戻ってきました。 
今度は右へ向かう獣道の途中で座り込むと、茂みの陰(カメラの死角)で毛繕いしたり、体を掻いたりしています。 
後ろ向きで入巣Rしかけて、そのまま巣口Rで見張りを続けます。 


シーン2:5/6・午前1:32・(@1:46〜) 
翌日の深夜、夜這いに来た余所者の♂が右から右手前の巣口Rを覗き込んでいます。 
巣内には押し入らず、左へ立ち去りました。 
このとき♂の求愛声は聞き取れませんでした。 
もしかすると、ヘルパー(若い♂)かもしれません。 


シーン3:5/6・午前1:33・(@2:28〜) 
♂はそのまま広場に座って体の手入れをしています。(仰向け毛繕い) 
5倍速の早回しでご覧ください。 


シーン4:5/6・午前1:34・(@2:34〜) 
♂が広場から巣穴Lを経由して左に立ち去るようです。 
カメラの電池が消耗していて、細切れの映像になっています。 


シーン5:5/6・午前1:35・(@2:44〜) 
奥から手前に向かって♂が走って逃げて来ます。 
その後ろから♀(右目<左目)が追いかけてきます。 
巣穴Rを挟んで2頭が向かい合いました。 
巣口Rで立ち止まった♀が身震いしてから、再び♂に突進して撃退しました。 
このとき威嚇や求愛の鳴き声は聞き取れませんでした。 

残念ながら、せっかく面白いところで尻切れトンボで録画終了。 
深夜の採餌活動から戻って来た♀が、侵入者♂を見つけて追い払ったようです。 
ということは、これまで広場でウロウロしていた個体はやはりヘルパー♂ではなくて、求愛目的の♂(余所者)だったことが分かりました。 


シーン6:5/8・午後20:33・気温6℃・(@2:55〜) 
2日後の晩。 
広場に居た♀が右の暗闇に居た♂に突進して追い払いました。 
激しい威嚇や喧嘩の鳴き声♪および灌木の細い枝がポキポキ折れる音が聞こえます。


シーン7:5/8・午後20:31・(@3:07〜) 
別アングルの映像に切り替えてみましょう。 
画面には何も写っていませんが、カメラの背後からアナグマ♀♂の激しい喧嘩の鳴き声が聞こえます。 
残念ながら、トレイルカメラの電池切れで2秒間しか録音できていません。 


シーン8:5/8・午後20:34・(@3:09〜) 
次にカメラが起動したときには、巣口Rに戻った♀が左を向いて警戒していました。 


シーン9:5/8・午後20:35・(@3:13〜) 
別アングルの監視映像に切り替えました。 
こちらのトレイルカメラは新機種で、電池に余裕があります。 

右から戻ってきた♀が入巣Rしかけるも、巣口Rで振り返ってカメラ目線になりました。 
右目が左目よりも小さいことが分かります。 
巣口Rに後退して塹壕戦のように身を隠しながら、警戒を怠りません。 


シーン10:5/9・午後20:23・(@3:38〜) 
翌日の晩にも似たような行動が繰り返されました。 
夜這いに来た♂が広場を回り込んで巣口Rに座り込みました。 


シーン11:5/9・午後20:24・(@3:48〜) 
手前の獣道へ来かけた♂が、振り返って巣口Rの様子を見ています。 
求愛声は聞き取れません。 


シーン12:5/9・午後20:25・気温12℃(@3:48〜) 
別アングルの映像に切り替えました。 
広場の右端で佇む夜這い♂が巣口Rの方をずっと見ているものの、♀が怖いのか近づけないようです。 
しばらくして、ようやく♀が巣穴Rから出てくると、♂に突進して追い払いました。 
今回は何も鳴き声は聞き取れませんでした。 
慌てて逃げるアナグマが林床に転がっている空き缶を蹴飛ばす音がカラン♪と聞こえました。(@4:28〜) 

後日、アナグマ営巣地付近の林床で見つけた缶コーヒーの空き缶2個の写真を載せておきます。
誰かが林内で飲んだ後にポイ捨てしたのか、それとも甘い香りに誘われてタヌキがゴミ捨て場から拾ってきたのか、不明です。







シーン13:5/9・午後22:11・(@4:30〜) 
約2時間後、珍しく左奥の巣口Lからアナグマが外に出てきました。 
♀かヘルパー♂か見分ける間もなく、尻切れトンボで録画終了。 


シーン14:5/9・午後22:12・(@4:35〜) 
ワンッ♪と吠える声がしました。 
出巣Lしたのはおそらく♀で、セットにしつこく近づく夜這い♂を追い払ったようです。 


シーン15:5/9・午後22:13・(@4:40〜) 
巣口Rから出てきた♀が、奥に居座る♂と対峙しています。 
♂の目が白く爛々と光って見えます。 


シーン16:5/9・午後22:13・(@4:43〜) 
次にトレイルカメラが起動したときには、♂が逃げた後でした。 
♀は警戒を怠らず、巣口Rに残っています。 


シーン17:5/9・午後22:14・(@4:46〜) 
右の二次林から♂がセットに登場。 
逃げた♂が懲りずにしつこく戻ってきたようです。 


シーン18:5/9・午後22:15・(@4:48〜) 
巣口Rから外に出てきた♀が奥に居座る♂と睨み合っています。 


シーン19:5/9・午後22:17・(@4:51〜) 
♂を追い払った♀が奥から戻って来て巣穴Rに戻りました。 


シーン20:5/11・午後20:20・気温9℃・(@4:56〜) 
2日後の晩。 
ヘルパー♂(?)が広場で仰向けになって毛繕いしたり、辺りをうろついたりしています。 
仰向けで開脚してくれるのですが、私には外性器がよく分かりません。 

林冠から垂れ下がっている蔓をちょっとだけ掴んでぶら下がる体勢になりました。(@6:10〜) 
蔓を引っ張って遊んでいるのでしょうか? 


突然、♀が巣穴Rから飛び出してきて♂を奥の森へ追い払いました。 
凄い剣幕でワンワン吠え立てています。(威嚇の鳴き声) 

それまであまりにも巣口Rでリラックスしてるので、てっきり私はヘルパー♂が暇を潰していると思ったのですが、夜這い♂だったのでしょうか? 
育児で苛ついていた♀が、巣口Rでくつろぐヘルパー♂を夜這い♂と誤認した可能性もありますかね? 
まだ♂を個体識別できてないのが私の課題です。 

この時期はもう交尾行動が録画されなくなり、夜這いに来た♂を♀は営巣地から追い払うだけです。 
どうやら今年の♀の発情期はもう終わったようです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


蚊柱が立つ夕暮れの小川【トレイルカメラ:暗視映像】ユスリカの群飛

 

2023年5月上旬・午後18:34・気温17℃(日の入り時刻は18:39) 

小川に架かる天然の丸木橋を自動センサーカメラで見張っていると、暗くなった夕方に蚊柱がたまたま写っていました。 
流れが淀んでいる水面の上に蚊柱が立っています。 
蚊柱とは、ユスリカの仲間が配偶者を見つけるために群飛する行動のことです。 
夜も更けるとユスリカが活動停止するのか、蚊柱は写らなくなりました。(薄明薄暮性?) 

変温動物の昆虫がいくら動いてもトレイルカメラのセンサーは反応しないはずなので、そもそも今回なぜカメラが起動したのか不明です。 
恒温動物の鳥やコウモリがカメラの前を素早く飛んで横切ったのか、風で揺れる枝葉のせいで誤作動しただけかもしれません。 
激しく群飛するユスリカをサーモグラフィカメラで撮影すれば、実は定説に反して気温よりも高く発熱していることが明らかになるかもしれません。 
…とロマンを掻き立てる妄想をしましたが、それならトレイルカメラでこの後も連続してユスリカ群飛の動画が撮れていたはずです。
それが無かったということは、熱血昆虫説はあっさり否定されそうです。

関連記事(9年前の撮影)▶ 蚊柱のハイスピード動画 


2023/12/15

ニホンアナグマ♀と親密に相互毛繕いしても結局は追い払われる夜這い♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年5月上旬 

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)の営巣地を2台の自動センサーカメラで見張っています。

シーン1:5/1・午後20:21(@0:00〜) 
晩に夜這いに来た余所者の♂が珍しく左奥の巣口Lに座り込み、♀が出てくるのを見張っています。 
巣の主が外出から戻って来たのか、画面奥を振り返って警戒しています。 
慌てて広場に走って来た♂が、右の林内に走り去りました。 
このとき右手前の巣穴Rに避難しなかったことから、ヘルパー♂ではないと考えています。 
そもそも今回登場する「♂」は外見からして♂っぽくありません。
若い♂なのかな?
外性器が見えないので確定できないのですが、前後の行動から求愛♂とみなしています。

しばらくすると、別個体が画面の左端から巣口Lに登場しました。 
次の映像を見ると、同一個体がぐるっとひと回りしてきたという可能性は除外できます。 


シーン2:5/1・午後20:24・気温18℃(@1:31〜) 
別アングルで撮れた映像を見てみましょう。 
気温はおそらく異常値です。 

夜這い♂が営巣地(セット)の広場から二次林内を右上奥へ走って逃げました。 
別個体が画面の左下隅から登場。 
巣口L、Rの横を通って広場を右へ。 
さっき走って逃げた個体の後を追いかけているのでしょうか? 


シーン3:5/3・午前3:28(@2:05〜) 
2日後の未明、夜這いに来た♂が巣口Lの左に座り込んで体をボリボリ掻いています。 
手前に忍び寄ると巣口Rを覗き込み、身震いしました。 
このとき♂の求愛声(ジェジェジェビーム♪)を発したはずですが、聞き取れませんでした。 

♂が奥へ立ち去ろうとすると、異変を感じた♀(右目<左目)が巣穴Rから出てきました。 
余所者の夜這い♂と対峙して目の前で身震いしただけで、♂は逃げ腰になりました。 
左にちょっと退散しかけたものの、♂が慎重に正面から♀に近づき、互いに匂いを嗅ぎ合います。 
そのまま親密な相互毛繕いを始めました。 
これは交尾前の前戯なのでしょうか? 


シーン4:5/3・午前3:30(@3:35〜) 
相互毛繕いを5倍速の早回し映像でご覧ください。 


シーン5:5/3・午前3:30(@3:49〜) 
長々と相互毛繕いしていたのに、急に機嫌が悪くなった♀が軽く唸って♪しつこい♂を追い払いました。 
♂は少し離れた所に座っています。 
再び♀に近づこうとするも、牽制されたのか、♂は諦めて右奥の茂みの陰に隠れました。 
広場に残った♀は独りで身だしなみを整えています。 

♀が交尾する♂の選り好み(配偶者選択)をしているのでしょうか?
発情期が終わったら♀は♂と交尾しなくなります。 
この♂は前年までヘルパー役を勤めた個体(息子)ではないか?と勝手に想像してみました。
あるいはヘルパーに選ばれなかった兄弟(♀の若い息子)かもしれません。


シーン6:5/3・午前3:33・気温2℃(@4:23〜) 
別アングルの監視カメラに切り替えます。 
広場の少し左、マルバゴマキ(別名マルバゴマギ、ヒロハゴマキ、オオバゴマキ)の茂みの陰で♀が独りで毛繕いしています。 
そこへ夜這い♂が左の茂みから近づいて来ました。 
♀♂2頭が林縁ですれ違いました。 
♀は広場に残り、♂は少し奥の林内で体を掻いたり毛繕いしたりしています。 
やがて♀が広場から軽く突進して♂を追い払いました。 
逃げた♂は少し逃げただけで、♀の様子をうかがっています。 

♀が歩いて左下に移動し始めました。 
採餌やトイレ(排泄)に出かけたのかな? 
♂は♀について行くでもなく、広場の匂いを嗅ぎながらうろついています。 
そのまま♂が巣口Rに近づこうとしたら、♀が左下から戻ってきて巣口Lで座りこみました。 
それを見た♂は慌てて右へ逃げて行きます。 
♀がセットの広場に戻る途中で2分間の録画終了。 


シーン7:5/3・午前3:33(@6:24〜) 
別アングルでも撮れていました。 
広場に戻った夜這い♂がしばらくカメラ目線で警戒した後、地面の匂いを嗅ぎ回っています。 
こちらの旧機種カメラは電池が消耗して、断片的な映像しか撮れなくなりました。 


シーン8:5/3・午前3:34(@6:46〜) 
巣口Lの横で座っていた♀が立ち上がると、地面の匂いを嗅ぎ回ります。 
さっき来た夜這い♂の残り香を調べているのでしょう。
広場に座り込んでカメラ目線になると、左右の目の大きさが非対称であることが分かります(右目<左目)。 
立ち上がって身震いし、手前に歩き出したところ録画終了。 


シーン9:5/3・午前3:35(@7:06〜) 
別アングルの監視映像に切り替えます。 
広場に佇んでいた♀がようやく入巣Rしました。 

そのまま映像を撮り続けると、右から別個体(おそらく♂)がセットにやって来ました。 
巣穴Rには立ち寄らず、少し迂回しながら左へ素通りしました。 


シーン10:5/3・午前3:36(@7:49〜) 
続きを別アングルの監視映像でご覧ください。 
夜這い♂が左奥の巣穴Lに立ち寄ってからまた広場に戻ってきて巣穴Rを覗き込みました。 
体を掻いてから右の林内に立ち去りました。 
未明のしつこい夜這い行動はこれで一段落しました。 


シーン11:5/3・午前23:23・気温8℃(@7:49〜) 
同じ日の深夜に♀が右の巣穴からひょっこり外に出てきました。 
手前(画面下)へ走って来ます。 
カメラの背後で激しい鼻息や物音が聞こえるのは、おそらく♀が夜這い♂を撃退する行動と思われます。 
画面下から広場に戻ってきた♀が立ち止まって身震いし、今度は左へ立ち去りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


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