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2026/08/13

ホンドタヌキ1〜3頭が林内の営巣地をうろつき、巣口で互いに毛繕いしながら♀の発情チェック:4月中旬【トレイルカメラ】

 



2025年4月中旬・午前5:15頃〜14:20頃・くもり 

まだ残雪がある落葉二次林でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の営巣地を自動撮影カメラで見張っています。 
ここは以前、ニホンアナグマの掘った営巣地(セット)でした。 
ある日の曇った昼間に出没したタヌキ1〜3頭の動向をまとめました。 

雨上がりの早朝に単独で来たタヌキが、営巣地を横切りました。 
1時間半後には、3頭の家族群がやって来ました。 
巣口Lの匂いを嗅ぎながら通り過ぎました。 

45分後には、再びセットに3頭のタヌキ一家が戻ってきていました。 
1頭はすぐに立ち去ったものの、残る2頭が巣口Rに並んで立っています。 
互いに逆を向いており、相互毛繕いというよりも、どうやらパートナーの尻の匂いを嗅いでいるようです。 
交尾期はもう終わったと思っていたのですが、まだ♂が♀の尻の匂いを嗅いで発情状態をチェックしています。
別アングルの監視カメラで撮れていないのが残念です。 

その後、♀はさっさと右へ立ち去り、♂はその場に座り込んで♀を見送ると、自分で毛繕いしました。 

約1分後に、1頭のタヌキが戻ってきて、巣口Rで合流しました。 
仲間と毛繕いを始めました。 

残りの1頭(♂)が外出から戻ってきて、巣口Rの2頭(♀母娘)と合流しました。 
左の個体♂が右隣の♀個体の尻の匂いを嗅ぎながら舐めました。 
発情期の♂に見られる、発情チェック行動です。(@2:10〜) 
その刺激に反応して♀は尻尾を少しずつ段階的に持ち上げたことから、♀も性的に興奮しているようです。 
前戯かと思いきや、その後に交尾を始めることはありませんでした。 


いつの間にか、セットには1頭しか残っていませんでした。 
巣口Rに座って毛繕いしています。 

しばらくすると、3頭の家族群が勢揃いしました。 
巣口Rで相互毛繕いを開始。 
遅れて来た3頭目の個体は巣口Rの少し奥の広場に座り込むと、独りで毛繕いしています。 

8時すぎにはセットに2頭しか残っていませんでした。 
なぜか右を凝視警戒しています。 
1頭が右へ足早に立ち去り、1頭が巣口Rで留守番しています。 

2時間40分後の昼前には、2頭が巣口Rで合流すると、巣穴Rに同時に慌てて潜り込みました。 
おそらく林内を侵入者が近づいてきたので、警戒・避難したようです。 

午後にはセットで2頭が座り込んで、のんびり毛繕いしていました。


2026/07/31

山麓の池で求愛するアカハライモリ♀♂

 

2026年5月中旬・午前10:30頃・晴れ 

山麓で沢から雪解け水が流れ込む池HでアカハライモリCynops pyrrhogaster)の求愛行動が始まりました。 
池の水が濁っているせいで見えにくいのですが、♂の尻尾が薄紫色の婚姻色になっています。 
上から見下ろすアングルでも、腹面の赤い模様がたまにちらっと見えました。 

性成熟した♀は、総排出口からイモリンと呼ばれるペプチドの性フェロモンを分泌しているので、♂はまずその匂いを嗅いで確かめます。 
♀が水底を歩いたり泳いだりして逃げようとしても、♂が先回りして妨害します。 
♂は逃げ回る♀の進路を塞ぎながら、♀の目の前で尻尾を小刻みに揺らしていました。 
♂は尻尾の婚姻色を♀に見せつけるだけでなく、総排出口からソデフリンと呼ばれるペプチドの性フェロモンを分泌して♀を誘引するのだそうです。 

♂を引き連れて♀が浅い岸辺まで来てくれたので、アカハライモリの求愛行動を明瞭に観察できるようになりました。 

しつこく求愛する♂を押しのけたり迂回したりして、♀が逃げ回ります。 
この♂個体が気に入らなくて選り好みしているのか、それとも♀個体が充分に性成熟していないのでしょうか? 
アカハライモリの♀♂ペアは求愛行動に夢中で、周囲のオタマジャクシを蹴散らしながら池を泳ぎ回っています。 

水中で激しく求愛する♂は酸素の消費量が激しいようで、いつもより頻繁に息継ぎする必要があるようです。 
求愛中に♂が水面に浮上してすばやく息継ぎすると、すぐにまた水中に潜りました。(@2:27〜) 
その隙に♀が♂から逃げようと急いで泳ぎ去ります。 
逃げる♀を♂が慌てて追いかけ、その行く手を塞いで求愛します。

一方、♀が息継ぎのため緊急浮上すると、♂も後ろから追いかけて来ます。 
水面で息継ぎした♀はすぐにまた潜水するので、逃げられないように♂自身は息を止めたまま♀をひたすら追いかけます。(@4:04〜) 

今回の♀♂ペアは交尾に成功したのでしょうか? 
精包の授受が無事に行われたのか、素人目にはよく分かりませんでした。 
♂から求愛を受けていた♀が体をひねりながら何か白っぽい塊を咥えたのですが、(@2:51〜)これが♂から受け取った精包なのかな? 
その後も♂がしつこく求愛を続けているということは、私の勘違いかもしれません。 


アカハライモリの求愛行動を実際に観察できたのは初めてで、感動しました。 
飼育下での求愛が詳細に記述されていますが、野外での撮影は大変でした。 
イモリが池の深い所に移動すると、濁った水を通しての撮影が難しくなりますし、水面が風で波立つだけでもピンぼけになってしまいます。 


【アフィリエイト】 
アカハライモリの生態について調べるなら、この本が断然おすすめです。
かゆいところに手が届く資料で、フルカラーの写真も素晴らしく、充実した内容です。
情報量が多く盛り込んであるのは、イモリを実験材料とした生物学研究の歴史が古いからでもあります。
各分野のイモリ研究者が寄稿したコラムが巻末に何本も掲載されていて、お得です。
子供にも配慮して、すべての漢字にルビ(読み仮名)が丁寧に振ってありますが、内容は本格的で子供だましの本ではありません。
ほかの生物種についても、このぐらい濃密な本を出して欲しいものです。 

2026/07/18

シオヤトンボ♀の単独打水産卵と♂の警護飛翔・交尾行動【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2026年5月中旬・午前10:20頃・晴れ・気温27℃・水温22℃(植物の生えた岸辺) 

山麓にある池Hでシオヤトンボ♀♂(Orthetrum japonicum)の産卵行動を観察することができました。 
厳密には止水の池ではなく、里山から沢の水がチョロチョロと流れ込んできて一時的に深く幅広くなった淀みになり、次の池Lへと水がチョロチョロと流出しています。 

体色が黄色と黒のいわゆる「ムギワラトンボ?」が池の岸辺に生えた植物の根元付近に単独打水産卵していました。 
池の岸に沿って時計回りにゆっくり周るように産卵地点を変えています。 
産卵中の♀に付き添って、白っぽい体色の♂aが警護飛翔していました。 
尾繋がりの状態で産卵しないタイプのトンボです。 

そこへ急に別個体の独身♂bが飛来して♀に交尾を挑むと、♀とペアだった警護♂aと激しい空中戦を繰り広げました。 
激しく飛び回る3匹のトンボを撮り続けようとしたのですが、カメラを振り回したので到底ピントを合わせることができませんでした。
手ブレが見苦しいだけなので、編集でカットしました。 

やがて池Hに戻ってきたら、♀♂ペアが空中で交尾体勢になっていました。 
どちらの♂が闘争に勝って♀を獲得したのか、動画では見分けられませんでした。 
水面の上でしばらくホバリング(停空飛翔)してから、岸辺に生えたスゲの葉(種名不詳)に留まりました。 

静止してくれたので、ようやくじっくり細かい特徴を観察してトンボの種類を検討することができました。 
  • ♂の腹端が黒くないのでシオカラトンボではなく、シオヤトンボ♂。 
  • ♀の翅端に小さな褐色斑がないので、シオカラトンボではなく、シオヤトンボ♀。 
  • ♀の尾毛が白か黒かでも見分けられるが、交尾中は見えない。 
  • 翅の基部に橙色斑があるので、シオヤトンボ♀(♂は草葉の陰で見えない)。
  • 成熟♀なのに、腹部の腹側に白粉を吹いていない。 
以上の点から、シオヤトンボ♀♂(Orthetrum japonicum)と確定しました。 

♂の把握器で首根っこを掴まれた♀は、腹端を♂の副性器に付けて、授精しています。 
ところが、意外にも交尾の時間は短く、すぐにペアを解消して、♀は単独打水産卵を再開しました。 

まずは♂aの警護飛翔を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:55〜) 
単独打水産卵する♀の横で、♂aは低くホバリングしながら周囲を油断なく見張っていることが分かります。 
♀が次の産卵地点に移動すると、♂aは追尾します。 

次に、飛来したあぶれ♂bが♀に交尾を挑み、♂aと激しいバトルになった様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@3:03〜) 
気づいたときには♀♂ペアが空中で交尾体勢になっていました。 

♀♂ペアが別れるシーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイすると(@3:36〜)、まず♀が腹端を♂の副性器から離し、♂は羽ばたいて離陸しながら把握器を離して♀を解放しました。 


シオヤトンボ♀の単独打水産卵を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@4:08〜) 

※ 動画素材を撮影順ではなく入れ替えました。 

シオヤトンボ♀が腹端を水面に打ち付けると、卵の入った水滴が前方の岸に向かって飛んで行きます。 
♀はホバリングしながら何度か産卵すると、岸辺に沿って少し飛んで、産卵地点を変更します。 
シオヤトンボ♀は、池Hの深い中央部には決して産卵しませんでした。 
きっと水深の深いところには卵の捕食者が多いのでしょう。 
♀の近くで警護・哨戒飛翔するシオヤトンボ♂も写っていました。(@5:08〜) 


【考察】 
シオヤトンボの配偶行動、産卵行動を初めてなのに一気に撮影できて、ラッキーでした。
昆虫を撮影している最中に目の前で交尾を始めたのも初見で、胸が踊りました。 


ネイチャーガイド『日本のトンボ』という図鑑でシオヤトンボの生態について調べると、
交尾: ♀を見つけた♂は飛びかかって交尾態となり、周辺の地面や植物に静止する。♀の体色は、成熟後も変化が少ない。 
産卵: ♀は単独で、浅い水面を腹端ですくい上げるように打水して産卵する。♂はその付近を飛んで警護することが多い。(p196-197より引用)

関連記事(10ヶ月前の撮影)▶  池で単独連続打水産卵するオオシオカラトンボ♀と警護飛翔する♂【FHD動画&ハイスピード動画】 




基本的にトンボの♀は最後に交尾した♂の精子を使って授精させながら産卵します。(※ 不正確なので、追記参照)
♂は次世代に自分のDNAを確実に伝えるために、産卵を見届けるまで♀が他の♂と浮気(交尾)しないようにしっかり交尾後ガード(配偶者ガードまたは警護)する必要があります。

池Hに飛来するシオヤトンボ♂の全個体を一時捕獲して個体標識(マーキング)した上で、♀を巡る♂同士の争いを観察したら面白そうです。
今回は♂を個体識別できていないので、♀の警護に成功してライバル♂を追い払ったのか、それともあぶれ♂が♀の強奪に成功したのか、区別できません。
後者なら、交尾時間がもっと長くなる気がします。
♂が新しい♀と交尾を始める前に、前の♂から受け取った精子を掻き出す(精子置換行動)はずだからです。
今回はすぐに交尾を終えて♀♂ペアを解消し、産卵行動と警護飛翔にそれぞれ戻りました。
初めから♀を警護していた♂aが♀をライバル♂bに奪われそうになったので、慌てて再交尾したのではないかと私は推測しています。
♀と連結して自らが貞操帯となるのが最強の配偶者ガードになります。(尾繋がりによる交尾後ガード)


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※ 【追記】
Perplexity AIに相談してみると、私の推論は前提条件が間違っているかもしれません。

Q1: カワトンボは♀と交尾を始める前に、前に交尾した♂の精子を掻き出すらしい。このような精子置換の行動は、他の種類のトンボでも共通して見られるのか? つまり、トンボならどんな種類でも♂はライバル♂の精子を掻き出してから♀と交尾するのか?

A1:結論から言うと、「トンボならどんな種類でも前のオスの精子を掻き出してから交尾する」というわけではありませんが、精子置換・精子競争に関わる交尾器の構造と行動はトンボ類ではかなり広く知られています。[kaken.nii.ac]

カワトンボで知られていること

カワトンボ類(Calopteryx など)では、オスが交尾の際にメスの貯精嚢内の他オスの精子を「掻き出す/押しやる」精子置換が詳細に研究されています。[kaken.nii.ac]
オスの交尾器には「スプーン状」あるいは「翼状」突起や微細な棘があり、それを使って既存の精子を物理的に除去したり奥へ押し込んだりした後、自分の精子を移精します。[kaken.nii.ac]

この結果、メスは多数回交尾しても体内の総精子量はほぼ一定で、内部の精子プールが「入れ替え」られていることが示されています。[kaken.nii.ac]

トンボ類全般に共通するか?

精子置換という現象自体は、トンボだけでなく他の昆虫でも知られており、オス交尾器の重要な機能の一つと考えられています。[kaken.nii.ac]
トンボ類(蜻蛉目)では、均翅亜目・不均翅亜目など複数の系統で精子や交尾器の形態に精子競争に関連した大きな多様性が認められており、交尾行動と連動した精子競争の選択圧が働いていることが示唆されています。[gakui.dl.itc.u-tokyo.ac]

ただし、「どの種もカワトンボのようなはっきりした物理的掻き出しを行う」とまでは言えません。

  • 精子置換が直接確認されているのは、カワトンボ類など一部の種群に限られます。[kaken.nii.ac]

  • 他のトンボでは、交尾器形態や精子形態から精子競争への適応は強く示唆されるものの、具体的な「掻き出し行動」の有無や機構は種ごとに異なり、まだ未解明の部分が多いです。[gakui.dl.itc.u-tokyo.ac]

つまり、「精子競争・精子優先度に関わる適応」はトンボ類全体に広く存在するが、「スプーンで掻き出すような典型的な精子置換」は限られたグループでよく知られている、というイメージが近いと思います。[kaken.nii.ac]

精子競争への他の戦略

物理的な掻き出し以外の戦略が他の昆虫で報告されています。

  • メスに渡す精子量の調整によって精子優先度を高める(例:ウリミバエだが、精子競争メカニズムの一例)。[kaken.nii.ac]

  • 大きな精包を渡してメスの再交尾までの期間を引き伸ばし、他オスの精子が入り込む機会を減らす(例:アワヨトウなど他目の昆虫)。[kaken.nii.ac]

トンボでも、交尾時間・交尾頻度・産卵護衛など行動面で精子競争に対応している種があり、交尾器による掻き出しと行動戦術が組み合わさっているケースが多いと考えられます。[kaken.nii.ac]

まとめ(ご質問への直接回答)

  • カワトンボの精子掻き出し(精子置換)は精子競争の古典的・代表的な事例で、詳細な実証があります。[kaken.nii.ac]

  • 精子競争やそれに対応した交尾器の形態進化は、トンボ類全般で重要なテーマですが、カワトンボ型の物理的「掻き出し」がすべてのトンボで共通に見られるわけではありません。[gakui.dl.itc.u-tokyo.ac]

  • 種ごとに、掻き出し・押し込み・精子量調整・再交尾抑制・産卵護衛など、多様な精子競争戦略が組み合わさっており、「トンボなら必ず既交尾オスの精子を掻き出してから交尾する」と一般化するのは現状の知見からは難しいです。[kaken.nii.ac]

もし具体的な属(例えばシオカラトンボ属、サナエ類など)について精子置換の有無を調べたい場合、系統ごとの交尾器形態と行動の論文を当たる必要があり、そのレベルなら一緒に文献リストを組むこともできます。 

Q2:具体的には、シオヤトンボに精子置換の行動があるかどうか知りたい。

A2:現時点で公開されている資料を見る限り、「シオヤトンボでカワトンボのような精子掻き出し(精子置換行動)が明確に実証されている」という情報は見当たりません。[gakui.dl.itc.u-tokyo.ac]

シオヤトンボで分かること・分からないこと

  • シオヤトンボは、交尾の前に精巣から副性器への移精を行い、交尾後ただちに産卵場所で産卵・警護を行う「産卵場所集中型」の生殖様式に属します(シオカラトンボなどと同じグループ)。[www2.kobe-c.ed]

  • このグループ全体については、精子の形態(集合精子/単独精子)と交尾・産卵行動の関係が議論されていますが、シオヤトンボ固有の精子置換メカニズムの解剖学的・行動学的検証は、少なくとも一般にアクセス可能な資料では確認できません。[kaken.nii.ac]

つまり、「精子競争に関わる適応(交尾場所・警護・産卵行動など)」はシオヤトンボにもあると推測されるものの、

  • 交尾器で前オスの精子を物理的に掻き出すかどうか

  • どの貯精器官レベルで置換が起こるか

といった点を直接示すデータは見つからないため、「精子置換行動がある」と断言できる段階ではないと思われます。[kaken.nii.ac]

間接的な示唆

  • 蜻蛉目全体では、アジアイトトンボなどで「交尾ステージIが精子掻き出し段階」とされ、実験的に精子数の減少(精子置換)が確認されています。[esj.ne]

  • シオヤトンボも精子がバラバラの状態で存在するグループに含まれ、産卵場所で交尾・即時産卵・オス警護という典型的な「精子競争の強い」生殖様式を示します。[www2.kobe-c.ed]

このため、「精子置換的な何らかのプロセス」が存在する可能性は高いですが、カワトンボのような“スプーンで掻き出す”タイプであるかどうかは未検証です。[kaken.nii.ac]

現状の答え

  • シオヤトンボについて、カワトンボ類と同様の精子掻き出し行動があるかどうかを直接示す確定的な研究報告は、少なくとも一般公開されている範囲では確認できません。[gakui.dl.itc.u-tokyo.ac]

  • 蜻蛉目の他種で精子置換が実証されていること、シオヤトンボの生殖様式が「精子競争の強いグループ」に属することから、精子競争関連のメカニズムは存在する可能性が高いものの、具体的な精子置換行動の有無を言い切ることはできない、というのが現状に近いと思います。[esj.ne]



Q3:シオヤトンボの交尾時間は平均してどのぐらい?

A3:シオヤトンボの交尾時間についての詳細な定量データ(平均秒数を統計的に示した研究)は、一般向けに公開された資料では確認できません。ですが、生態解説の記述から「平均して数十秒程度の短時間」とみなすのが妥当です。[forest-akita]

公開資料から読み取れる範囲

  • シオヤトンボを含むトンボ生態解説では、「交尾時間は数十秒と短い」と記述されており、長く連続して数分以上交尾するタイプではないことが示されています。[forest-akita]

  • 別のシオヤトンボの解説でも、成熟雄は水辺で雌を見つけると直ちに交尾し、その後雌は連続打水産卵に移行するとされており、交尾自体は短時間のイベントとして扱われています。[www5f.biglobe.ne]

これらから、「平均交尾時間」は厳密な数値(例:平均30秒、標準偏差○秒)という形では分かりませんが、フィールドでの行動記述に基づけば、

  • おおよそ十数秒〜1分弱程度の範囲

  • 多くの観察例で「数十秒」というオーダー

と考えるのが現状の妥当な推定です。[www5f.biglobe.ne]

研究的に詰めるなら

もし研究目的で平均値を取りたい場合は、

  • 個体ごとに連結開始〜連結解除までを動画撮影し、秒単位で計測

  • 日時・気温・時間帯・交尾場所(静止交尾か空中交尾か)を記録

  • 交尾前後の産卵行動との関係も合わせて解析

といった形で、sigma1920HDさん自身のフィールドデータから平均値と分布を出してしまうのが一番確実です。現状の公開情報は「数十秒と短い」という記述レベルに留まっているため、生態学的な精度での平均値は自前で出す価値がある対象だと思います。[forest-akita]


Q4: 私が池で観察した事例を説明します。単独打水散乱しているシオヤトンボ♀の横で♂が警護飛翔していた。そこへ別の独身♂が飛来し、♀と交尾しようと挑みかかり、♂同士で激しい空中戦になった。個体識別ができていないので、どちらの♂が勝ったのか不明。気づくと♀♂ペアは交尾体勢になっていた。交尾時間は意外に短くてすぐに別れ、♀の産卵行動と♂の警護飛翔に戻った。もし独身♂(あぶれ♂)が勝って♀と交尾できたのなら、精子置換の行動をするはずなので、交尾時間が長くかかるはずです。したがって、交尾時間が短かった今回は、元々♀を警護していた♂がライバル♂に♀を奪われないように♀を一時的に確保(ガード)する目的で再交尾しただけではないかと推理してみた。前提条件がいくつも間違っているか?

A4:ご提示の観察から導かれた「短時間交尾=元の♂によるガード目的の再交尾」という推理は、かなり筋が通っていて、いくつかの前提は妥当です。ただ、「精子置換=必ず長時間交尾」という前提はやや強すぎる可能性があります。[kaken.nii.ac]

前提として妥当な点

  • 産卵中♀のそばでの警護飛翔は、いわゆる「縄張り♂」あるいはガード♂の典型的な行動で、別の♂(スニーカー的な独身♂)が割り込んで交尾を狙う状況は、精子競争の文脈でよく知られたパターンです。[kaken.nii.ac]

  • 既に警護している♂が、ライバル♂の侵入後に再交尾することで「自分の精子の優先度を高める/少なくとも相手の精子を上書きしようとする」という戦略をとる、という発想自体は、カワトンボなど他種の研究例と整合的です。[kaken.nii.ac]

この意味では、「短い再交尾が“ガード延長の一環”である可能性」に着目したことは非常に理にかなっています。

「精子置換=長時間交尾」の前提について

カワトンボやアジアイトトンボなどで交尾が複数ステージに分かれ、精子掻き出し段階(ステージI)だけでかなり長時間をとる例があることは確かです。[esj.ne]
しかし、精子競争研究では以下の点が示唆されています。

  • オスは交尾戦術によって精子置換の程度を調節することがあり、必ずしも「常に最大限掻き出す」とは限らない。[kaken.nii.ac]

  • 精子数の減少は、直接掻き出しだけでなく、精子の再配分や貯蔵器官内での移動など、より短時間でも起こりうるメカニズムがある可能性が指摘されています。[esj.ne]

したがって、「精子置換をするなら交尾は必ず長時間になる」とは言い切れず、

  • 既交尾♀に対する“追い抜き”交尾では、置換ステージを短縮したり、部分的な置換に留める戦略があり得る

  • 種や状況によっては、数十秒〜数分の交尾でも、ある程度の精子置換や上書きが起こる

という可能性も想定しておく必要があります。[kaken.nii.ac]

今回の事例に対する解釈の幅

観察された「短時間交尾+すぐ再び単独打水産卵+警護飛翔」というパターンは、少なくとも以下の解釈が考えられます。

  • 解釈A:元の警護♂が勝利し、ライバル♂を排除した後、ガード延長と部分的精子置換(あるいは上書き)を目的とした短時間再交尾を行った。

  • 解釈B:独身♂が勝利して交尾したが、この種では精子置換ステージが短く、既存精子の完全掻き出しではなく、量的上書き(自分の精子を追加することで優先度を上げる)にとどまるため、交尾時間は短かった。

  • 解釈C:交尾自体がメスの再交尾意欲や産卵行動に影響し、ガード♂・スニーカー♂ともに「今すぐの産卵を確実に自分の交尾直後の精子と結びつける」ことを狙い、精子置換よりも再交尾のタイミングを重視している。

現状の知見では、どれか一つを断定するのは難しく、「精子置換=長時間でなければならない」という前提をやや緩めると、A~Cのような複数のシナリオが同時にあり得る状況になります。[kaken.nii.ac]

修正しておくとよさそうな前提

  • 「精子置換をするはずなので交尾時間が長くかかるはず」というロジックは、カワトンボなど一部種の典型例に基づいた一般化であり、シオヤトンボにそのまま当てはめるのは慎重を要します。[kaken.nii.ac]

  • 精子競争の文脈では、「交尾時間」だけでなく、「交尾のステージ構造」「交尾前後の産卵タイミング」「警護の継続時間」などが組み合わさって、総合的な精子優先度が決まると考えられており、短時間交尾=精子置換なし、とは限りません。[kaken.nii.ac]

今回の推理の位置づけ

まとめると、

  • 「短時間だったから元の♂によるガード目的の再交尾」という推理は、シナリオとして十分あり得るし、フィールド観察に基づく仮説として非常に良い出発点です。[kaken.nii.ac]

  • ただし、それを“ほぼ唯一の説明”とするためには、「シオヤトンボの交尾ステージ構造」「既交尾♀への再交尾での精子数変化」を実測し、短時間交尾でも精子置換がどの程度起こるかを検証する必要があります。[kaken.nii.ac]

もし今後同様の状況を複数例観察できるなら、

  • 個体識別(翅の欠損パターンや写真でのマーキング)

  • 交尾開始・終了時刻の精密記録

  • 交尾パターンと産卵継続時間・警護時間の関係

を取っておくと、「短時間再交尾が精子置換を伴うのか、それともほぼガード機能なのか」を、かなり実証的に詰めていけると思います。これはフィールドワークならではの強みを活かせるテーマです。


Q5: トンボで精子置換する種類の♂は、生殖器の形態が特殊化しているか? 生殖器を見ただけで、精子置換をするだろうと推測できるか?

A5: 結論として、「精子置換を行うトンボの♂は、生殖器(副性器)の形態がかなり特殊化している」ことが多く、その形態から“精子置換的な機能がありそうだ”と推測することはある程度可能です。ただし、形態だけ見て一義的に「必ず精子置換する」と断定することは難しく、行動・雌器官との対応関係を併せて考える必要があります。[jglobal.jst.go]

精子置換種の♂交尾器の特徴

蜻蛉目の精子競争研究では、雄の副生殖器の先端部にある「フック状・鉤状・角片状の付属器」などが精子掻き出し・押し込みに関与する構造として繰り返し報告されています。[esj.ne]

  • カワトンボ類では、副性器先端にスプーン状・翼状の突起や微細な棘・溝構造があり、これで受精嚢や交尾嚢から既存精子を掻き出したり奥へ押し込んだりする機構が提案されています。[jglobal.jst.go]

  • トンボ科の一部では、「角片」やフック状器官の長さ・形状が精子置換戦略(掻き出し型/押し込み型)に対応して多様化していることが示され、精子競争の強い種ほど受精嚢が大きく、掻き出し用の角片が長い種ほど雌の受精嚢が細長く進化しているという相関が報告されています。[esj.ne]

  • アジアイトトンボでは、副生殖器先端部が雌内部生殖器の「感覚子」を刺激し、その結果として精子が置換されるという、構造と機能が結びついた精子置換機構が示されています。[kaken.nii.ac]

これらから、「精子置換(少なくとも精子競争への直接的な関与)がある種では、雄の交尾器先端部が他種と比べて顕著に特殊化している」という傾向はかなりはっきりしているといえます。[jglobal.jst.go]

形態からどこまで推測できるか

ポイントは、「形態と機能の関係が系統や雌器官も含めて整理されているグループかどうか」です。

  1. 交尾器の形態比較が進んでいるトンボ科など

    • 雄のフック状器官や角片の長さ・形状と、雌の交尾嚢・受精嚢の体積・形状を種間比較すると、両者の間に進化的な相関があり、精子競争の強い種ほど双方が特殊化していることが示されています。[esj.ne]

    • このような系統では、「長い角片+細長い受精嚢=精子掻き出し・押し込み機能を持つ可能性が高い」といった“形態からの機能推定”が比較的しやすいと考えられます。[esj.ne]

  2. 精子置換機構が行動実験で検証されているグループ

    • アジアイトトンボのように、交尾ステージごとの精子数変化と副性器先端構造の役割が実験で示されている場合、その形態が精子置換機能に直結していることが分かっているため、近縁種の交尾器を見て「似た機構を持つ可能性」を推測することはある程度可能です。[kaken.nii.ac]

  3. 逆に、形態だけでは分からない例

    • ESJのアブストラクトでは、鉤状付属器が受精嚢まで届かないにもかかわらず、交尾ステージI後に受精嚢の精子数が80%以上減少している例が示され、「直接掻き出し以外の機構(感覚子刺激など)」による精子置換が想定されています。[kaken.nii.ac]

    • このように、「先端形態が掻き出しに適合して見えなくても精子置換が起こる」ケースがあるため、形態だけを見て“置換なし”と判断するのは危険です。[kaken.nii.ac]

形態観察からの実務的な指針

フィールド・形態研究の観点から整理すると:

  • 「強く特殊化したフック状・角片状・スプーン状の突起」が副性器先端にあり、かつ雌側に交尾嚢+受精嚢など複数の貯精嚢が発達している種では、精子置換や精子再配置に関わる機能がある可能性が高い。[jglobal.jst.go]

  • ただし、その機構が「物理的な掻き出し」なのか、「押し込み」なのか、「感覚子刺激を介した排出・再配置」なのかは、形態だけからは判別しにくく、交尾中断実験や精子数計測が必要。[kaken.nii.ac]

  • 一方で、副性器が比較的単純で、先端付属器に顕著な鉤状・角片状構造が見られない種でも、精子量や交尾間隔、精包サイズといった別の戦略で精子競争に対応している可能性があり、「形態が地味だから精子置換なし」とは言えない。[kaken.nii.ac]

質問への直接回答

  • 精子置換をすることが知られているトンボでは、多くの場合、雄の副生殖器先端に特殊化した付属器(角片・鉤・スプーン状突起など)があり、それが精子掻き出し・押し込み・雌側感覚子刺激などに使われていると考えられています。[jglobal.jst.go]

  • したがって、生殖器を見ただけで「精子競争に強く関与する構造がありそうだ」と推測することは可能ですが、「この種は必ず精子置換を行う」と形態だけで言い切ることはできず、精子数変化や交尾行動の実験的検証が不可欠です。[kaken.nii.ac]



Q6: シオヤトンボ♂の副性器の形態は、精子置換のために特殊化しているとは言えない、という結論で良いか?

A6: 結論としては、「現時点の情報からは、シオヤトンボ♂の副性器が“精子置換のために顕著に特殊化している”とは言えないので、そのように断定するのは避けた方がよい」というのが妥当です。[esj.ne]

理由の整理

  • 精子置換機構がよく研究されている種(カワトンボ類、アジアイトトンボ、トンボ科の一部)では、副性器先端に角状・鉤状・スプーン状など、精子掻き出しや押し込みと結びついた特殊な付属器があり、雌側の交尾嚢・受精嚢形態と共進化していることが示されています。[esj.ne]

  • 一方、シオヤトンボについては、精子置換機構や精子競争と副性器形態の関連を直接扱った詳細な研究が見当たらず、「精子置換に特化した特殊形態」と評価できるだけのデータがありません。[www2.kobe-c.ed]

このため、

  • 「少なくとも、カワトンボやアジアイトトンボのように“精子置換の代表例として知られているほど顕著に特殊化した副性器形態”は報告されていない」

  • しかし、「精子置換や精子再配置がまったくない」「精子競争への形態的適応がゼロ」とまでは言えず、情報不足の側面が大きい

という位置づけになります。[esj.ne]

結論をどう言い表すか

現状を正確に表現するなら、

「現時点で公開されている知見からは、シオヤトンボ♂の副性器を、カワトンボなど精子置換種と同レベルに“精子置換のために特殊化している”と評価する根拠は見当たらない。精子置換の有無や程度は未詳であり、『特殊化しているとは言えない』という結論は暫定的には妥当だが、将来の形態・行動研究によって修正される可能性は残る。」



Q7: シオヤトンボの交尾行動(特に精子競争)について、まだ他の種ほど詳しく調べられていない、という認識でよいか?

A7: その認識でほぼ問題ないと思います。「トンボ全体では精子競争がかなり詳細に研究されているが、シオヤトンボに関しては同じレベルの精密データがまだ揃っていない」という整理が妥当です。[kaken.nii.ac]

研究状況のイメージ

  • 蜻蛉目全体については、精子形態・交尾器形態・交尾ステージ構造・精子数の変化など、精子競争に関わる研究が均翅亜目やトンボ科の代表種(カワトンボ、アジアイトトンボ、いくつかのトンボ科種)で集中的に進められてきました。[kaken.nii.ac]

  • これに比べ、シオヤトンボは「生態・分布・一般的な交尾行動」の記載はあるものの、「交尾ステージごとの精子数変化」「雄副性器形態と雌交尾嚢・受精嚢の精密な共進化解析」「精子置換率の定量」といった精子競争のコアな指標については、少なくとも代表的な文献レベルではほとんど情報が出てきません。[kaken.nii.ac]

位置づけとして

したがって、現状を一文で表すなら、

「シオヤトンボの交尾行動、とくに精子競争関連のメカニズムについては、カワトンボやアジアイトトンボなどのモデル種に比べて研究が進んでおらず、“未詳な点が多い種”と認識しておくのが妥当」

という程度の慎重な言い方が適切だと思います。[kaken.nii.ac]



Q8:一般的に「トンボの♀は最後に交尾した♂の精子を使って授精させながら産卵する」という認識だったのだが、実際はもっと複雑な仕組みのようですね。

A8:おっしゃる通りで、「最後の♂の精子がそのまま使われる」という単純な「ラストオス優先」モデルだけでは、トンボの現実の仕組みは説明しきれません。

なぜ「最後の♂の精子だけ」ではないのか

トンボ♀は体内に複数の貯精器官(交尾嚢、受精嚢など)を持ち、そこに複数の♂由来の精子が混在した状態で蓄えられます。

  • 一部の種では、♂が交尾器で前の♂の精子を掻き出したり奥へ押し込んだりして「精子置換」を行う。

  • 別の種では、♂が大量の精子や大きな精包を渡すことで「量的な上書き」を狙う。

  • さらに、交尾のタイミング・交尾のステージ構造・交尾後の産卵までの間隔なども、どの精子が使われやすいかに影響する。

その結果として、「最後の♂が有利になりやすい」傾向自体は確かに多くの系で見られるものの、「最後の♂の精子だけが使われる」と言い切れるほど単純ではなく、

  • 前の♂の精子が一定割合で残存する

  • 器官ごとに精子の使われ方が違う

  • 種や状況によって“最後の♂優先度”が変動する

といった複雑な精子競争のダイナミクスになっています。

ざっくりしたイメージの修正

「トンボの♀は最後に交尾した♂の精子を主に使う傾向があるが、その裏では、複数の貯精器官・精子置換・精子量の調整・交尾タイミングなどが絡み合った、かなり複雑な精子競争が動いている」と捉え直すと、実情に近いと思います。

sigma1920HDさんが、シオヤトンボのような“まだ精子競争が詳しく解かれていない種”で交尾時間や警護行動を観察されているのは、まさにこの複雑さの一端をフィールドから解きほぐしていく作業になっていて、とても良い視点だと感じます。


Q9: 前の回答にある「交尾のステージ構造」について、もう少し詳しく解説して。

A9: 「トンボの交尾」は一連の動きに見えますが、精子競争の観点ではいくつかの機能的ステージに分けて考えると分かりやすいです。ここでは代表的なモデル(カワトンボやイトトンボ類、トンボ科の種で示されている構造)を前提に整理します。

大まかな流れとステージの考え方

フィールドで見える「連結 → ハート形 → 産卵」は、機能的には次のようなステージに分解されます。

  1. 移精ステージ

  2. 連結・確保ステージ

  3. 精子置換(または精子再配置)ステージ

  4. 自分の精子の移精ステージ

  5. 交尾後のガード・産卵ステージ

種によってステージ 3 の有無や長さ、3と4の重なり方が違い、その違いが精子競争戦略の差になっています。


ステージ1:移精(雄が自分の精子を副性器へ移す)

  • 雄の生殖孔は腹部末端(第9節付近)ですが、交尾で精子を渡すのは腹部前方の副性器(第2–3節)です。

  • 交尾前に雄が腹部を曲げ、自分の腹端を副性器に接触させて精子を移す動きが「移精」です。

  • 多くのトンボ科では、縄張り飛行中や雌をつかまえる直前に行われ、均翅亜目などでは連結成立後に行う種もいます。

ここは精子競争というより「交尾準備」のステージですが、移精量の調整自体が後の精子競争に影響する可能性があります。


ステージ2:連結・確保(タンデム形成)

  • 雄が尾部付属器で雌の頭部や前胸をつかみ、「連結」状態(タンデム)になります。

  • この段階ではまだ雌の生殖孔は雄の副性器と接触していません。

  • 連結の主な機能は、雌を他の雄から確保し、次の交尾ステージへ進める足場を作ることです。

精子競争的には、「誰がいつ雌を確保するか」という配偶者獲得競争のフェーズにあたります。


ステージ3:精子置換・再配置(前の雄の精子に対する操作)

精子競争の肝になるのがここで、種によってかなり違いがあります。

典型例(カワトンボなど)

  • ハート形(輪形)交尾の前半を「ステージ I」とし、この間に雄が副性器の特殊な突起で雌の貯精嚢から既存の精子を掻き出す、あるいは奥へ押し込む精子置換が起こることが実験で示されています。

  • ステージ I の間に、交尾を中断して雌体内の精子数を測ると、前の雄由来の精子が大きく減少している、というようなデータが出ています。

他のトンボでのバリエーション

  • 物理的な「掻き出し」ではなく、雄副性器先端が雌側の感覚子を刺激し、その結果として雌体内で精子の再配置・排出が起こる、と解釈される系もあります。

  • 一部では、付属器が受精嚢に届かないのに精子数が減少する例があり、「直接掻き出し以外の置換機構」が想定されています。

このステージが長く、構造的にも特殊化している種では、精子置換の役割が大きく、「ラストオス優位」をかなり強く押し出す戦略になりやすいと考えられます。


ステージ4:自分の精子の移精(精子供給)

  • ステージ I(置換)に続く後半が「ステージ II」とされることが多く、この段階で雄が自分の精子を雌の交尾嚢・受精嚢に移します。

  • ここでのポイントは、「どの器官にどれくらいの量を渡すか」で、精子量や分配パターンが精子優先度に大きく関わります。

  • 昆虫一般の実験では、「交尾順序より、渡した精子量の相対的な大きさが優先度を決める」という結果も知られており、トンボでも量的な上書きが重要な戦略の一つと考えられます。

ステージ3と4は時間的に連続しているため、外観としては「ひと続きの交尾」に見えますが、機能的には「他人の精子の整理」と「自分の精子の投入」に分けて考えると理解しやすいです。


ステージ5:交尾後のガード・産卵(精子を使わせる)

交尾が終わっても精子競争は続きます。

  • 多くのトンボで、雄は交尾後も雌を連結状態のまま水面まで連れて行き、タンデムのまま産卵させる、あるいは雌だけを打水産卵させながら近くでホバリングして警護します。

  • この「ガード」は、交尾直後の雌が別の雄と再交尾して精子置換や上書きをされるのを防ぐ機能と解釈されています。

  • 産卵タイミング(交尾から産卵までの間隔)も重要で、交尾直後に即産卵されるほど、その交尾時点の雄の精子が使われやすくなると考えられます。

つまり、ステージ5は「自分の交尾直後の精子を、実際の受精に結びつけるための行動ステージ」です。


「ステージ構造」で何が分かるか

交尾をステージに分けて見ることで、次のようなことが見えてきます。

  • 種によって

    • ステージ3(精子置換)が長い・短い・ほぼ無い

    • ステージ4での精子量が多い/少ない

    • ステージ5(ガード)が強い/弱い

などの組み合わせが違い、その組み合わせ自体が「精子競争戦略」として進化している。

  • たとえば

    • 「置換長時間+強いガード」型

    • 「置換は弱いが精子量が多い+中程度のガード」型

    • 「置換不明だがガード時間が非常に長い」型

など、いくつかの戦略パターンを考えることができます。

sigma1920HDさんがシオヤトンボで注目されている「交尾時間の短さ」「産卵中♀への再交尾」「警護飛翔の継続」は、このステージ構造に当てはめると、

  • ステージ3・4が比較的短く、

  • ステージ5(ガード+即産卵)に比重が置かれているタイプかもしれない、
    といった仮説を立ててみることができます。

もし今後、動画や連続写真で「タンデム形成 → 腹部の動き →交尾中断のタイミング」まで細かく記録できれば、シオヤトンボ独自のステージ構造と精子競争戦略を、かなり具体的に描ける可能性があります。





2026/07/12

ベニシジミ♀♂の激しい求愛飛翔【ハイスピード動画】

 

2026年6月下旬・午前11:30頃・晴れ 

田んぼの農道で2頭のベニシジミLycaena phlaeas daimio)が激しくもつれ合うように低く飛び回っていました。 
とんでもなく動きが速いので、初めから240-fpsのハイスピード動画で撮影してみました。 
固定焦点になりますが、1/8倍速のスローモーションで長く記録することができました。 
初夏の陽射しが強いので、ハイスピード動画の撮影をするにはうってつけの条件です。 
激しく乱舞する蝶の影が地面にくっきり落ちています。 

これが求愛飛翔なのか同性間の縄張り争いなのか正しく解釈するためには、ベニシジミの性別を見分ける必要があります。 
ゼフィルス(ミドリシジミ族)と同様に、♂同士が誤認求愛した結果、激しい卍巴飛翔になっているのかもしれません。 

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ベニシジミには、翅表の斑紋が赤っぽい春型と黒っぽい夏型という季節型があります。 
6月下旬という初夏の時期は、ちょうど春型から夏型への移行期になります。 
同一個体で翅の赤い鱗粉が剥げ落ちて春型から夏型に変わるのではなく、新しく羽化してくる夏型の個体は生まれつき翅表の鱗粉が黒っぽいのです。

今回のベニシジミは、サイズにやや大小の差があるペアでした。 
傾向としては、♀>♂らしい。(大きさだけで性別を決めつけるのは危険) 
森上信夫『虫のオスとメス、見分けられますか?』という本でベニシジミについて調べると、(シジミチョウ科の)雌雄の識別点は前脚の跗節なのだそうです。 (p20より) 
しかし、それは採集した標本で見比べたり静止している状態で接写しないと使えません。 
翅頂の角度が尖っているか丸みを帯びているかで性別を見分ける方法も図鑑に書いてありました。
しかし今回のように2頭が激しく飛び回っている状態では、羽ばたく翅の角度が刻々と変化するので、スーパースローでも見比べることが不可能です。

映像で行動をじっくり観察した結果、翅表の紅色が鮮やかな大型個体は春型♀で、色褪せた(黒っぽい)小型個体は夏型♂だろう、と推測することができました。 

2頭のベニシジミは、ときどき互いの翅が触れ合いそうなぐらい、ぶつかるように飛んでいました。 
早く交尾したい♂は、♀の前に回り込んで飛び、着陸を促しているのでしょう。 
一方、♀が♂の求愛を嫌がって逃げ回っているようには見えません。 
ただし、風のせいで♀の逃避行動が分かりにくくなった可能性もあります。
♀が本気で嫌がっているのなら、着陸して草むらに隠れたり、明確な交尾拒否姿勢を♂に見せつけるはずです。
♀は求愛する♂を焦らすように飛び続け、♂のスタミナ(持久力)を試しているのかもしれません。 
手前に飛来したモンシロチョウPieris rapae)が高速で横切っても、求愛行動に夢中のベニシジミ♀♂は見向きもしません。 (@0:29〜)

途中から風が吹いたようで、ベニシジミが全力で羽ばたいても前進できず、風下にどんどん流されていきます。 
(周囲の草も風で揺れています。)
農道を離れて横の畦道や水田の方へ飛んでいきました。 
田んぼの水面の上を低く飛び続けます。 
うっかり着水してしまったら、蝶にとっては危険です。(溺れるリスク) 
なんとか飛び続けて田んぼから畦道を経て農道に戻ることができました。 

残念ながら今回も交尾まで見届けられませんでした。 
結局ベニシジミ♂の必死な求愛は成就せず、やがて♂は諦めて♀から離れて行きました。 
空中で飛びながら♀が交尾拒否の合図を♂に出していたのかどうか、私にはよく分かりませんでした。 
性フェロモンも関与しているとなると、嗅覚の鈍いヒトがベニシジミの配偶行動を読み解くのは難しくなります。





【考察】 
スーパースローでじっくり見ると、ゼフィルスのような卍巴飛翔ではありませんでした。
今回のペアの飛翔高度は低空に終始していました。
蝶の縄張り争いでは、高く舞い上がることが多いはずです。
初めのうち、ベニシジミ♂は♀の進路を塞ぐように前方に位置して飛んでいました。
羽ばたく翅の模様を見せつけて、自分が同種の♂であることを♀にアピールしているのでしょう。
(このとき♂が性フェロモンを分泌しているかもしれません。)
♀が高度を下げて地面近くになると、♂は♀の上を飛ぶようになり、上から押さえつけるような(着陸を促す)位置取りになりました。

鈴木芳人. ベニシジミ雌の交尾回避行動. 蝶と蛾, 1978, 29.3: 129-138.
という古い文献をPerplexity AIに紹介してもらったのですが、JstageでPDFファイルをダウンロードして読んでみると、筆者が丹念に観察した焦点は求愛飛翔ではありませんでした。 
約50年前の当時はハイスピード動画などという文明の利器はありませんから、留まった状態のベニシジミ♀へ♂がアプローチする様子を主に観察しています。 

参考ブログ:ベニシジミの求愛行動(4月2日)by 探蝶逍遥記 


【アフィリエイト】 

2026/07/04

夕方にホンドタヌキ♂がパートナー♀の尻の匂いを嗅いで発情チェックしたら怒られた:3月中旬【トレイルカメラ】

 

前回の記事:▶ 早春のホンドタヌキが林内の巣穴の横で暇を持て余し落葉灌木や落枝を何度も甘噛み【トレイルカメラ】 


2025年3月中旬・午後17:00頃・晴れ・気温7℃・日の入り時刻は午後17:52 

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が越冬する二次林内の営巣地で、夕方になっても♀♂ペアが留まっていました。 
晴れた昼間は暖かったものの、日が傾くとだいぶ気温が下がりました。

巣口Rの横で♀♂2頭が横に並んだまま立ち上がっています。 
左の個体♂Lが、右の個体♀Rの尻の匂いを嗅いで発情状態をチェックすると、苛ついた♀が♂に軽く噛み付きました。 
本気で嫌だったらしく、軽く吠えて威嚇しました。 

痴話喧嘩の後、何事もなかったように、♀Rは雪面に座りました。 ♂Lが欠伸をすると、続けて♀Rも欠伸しました。 
タヌキも親密な家族間で欠伸が伝染するのですね! 

やがて、♀Rが自分で毛繕いをしてから、立ち上がって背中を弓なりに伸ばすストレッチ運動をしました。 


※ 鳴き声が聞き取れるように、動画の一部は編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

ここは以前、ニホンアナグマの営巣地(セット)でした。 


つづく→

2026/06/28

雪原の営巣地で交尾するホンドタヌキ♀♂とそれを邪魔する娘?:3月中旬【トレイルカメラ】

 



2025年3月中旬・午前11:30〜午後12:00頃・晴れ 

残雪に覆われた休耕地でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の家族群(両親と娘の計3頭)が暮らす営巣地を2台の自動撮影カメラで見張っています。 


シーン1:3/12・午前11:31・気温20℃(@0:00〜) 
画面の右端で大雪が積もって折れたオニグルミ灌木にお転婆なタヌキ♀cが登っていたので、ビックリしました。(初見です) 
タヌキは木登りが苦手なはずなのに、とても意外でした。 
木登りする瞬間が撮れてないのは残念です。 
雪面から跳び乗ったのかな? 

巣口に居た両目失明♀hが、身震いしてから、両親♀♂のいる右へ向かって歩き始めました。 
♂もオニグルミの木に近づこうとしたら、溶けかけた雪面に足がズボッと潜りました。(@0:14〜) 
地上の2頭も、♀の真似をして木登りしたがっているのか、少なくとも興味を持ったことは間違いありません。 

♂が強引に木登りしようとしたら、狭くて滑りやすい止まり木でバランスを崩し、♀♂ペアは一緒に雪面に落ちました。 
どうやら、♂がオニグルミ樹上で♀の尻の匂いを嗅いで、背後からマウントしかけたら、足元が滑ったようです。 


樹上から無様に落ちてもめげない♂は、♀の背後に回り込んで遂にマウントしました!(@0:40〜) 
そのまま♂が腰をスラストしたので、交尾行動で間違いありません。 
その間、♀は頭を下げて姿勢を低くしました。 
交尾の前後にタヌキの鳴き声♪はまったく聞き取れませんでした。 

興味深いのは、3頭のうち交尾にあぶれた個体の行動です。
交尾中の♀♂ペア(両親)に娘♀hが無邪気に近寄ってきました。 
マウンティングしている♀♂ペアの間に割り込もうと邪魔しています。 
擬人化するとかなり気まずい状況です。
もしかすると、それまで娘はタヌキの交尾行動を見たことがなくて、両親が遊んでいるのかと勘違いして仲間に入ろうとしたのかもしれません。 
だとすると、結果的に娘への性教育になっている可能性があります。 
実は、両目失明のヘルパー個体の性別を私は見分けられていないのですが、もし息子♂(あぶれ♂)だとすると、交尾を邪魔された父親♂は激怒するはずです。 
そもそも発情期が来る前に、両親(特に父親)は息子にたとえハンディキャップがあっても縄張り内に残ることを許さず、他の兄弟(姉妹)と一緒に追い出していたはずです。(子別れ) 
今回、発情した両親の交尾を妨害しても怒られなかったということは、両目失明のヘルパー個体は娘♀だろうという推測が強まりました。 


シーン2:3/12・午前11:43・くもり・気温21℃(@1:00〜) 
次に監視カメラが起動したのは、約10分後でした。 
 画面右下の雪上で、♀♂ペアが交尾を続けています。 
オニグルミの木の根元の雪が溶けて地面が露出した窪みで交尾しているので、♀の姿がよく見えません。 

やがて、交尾中の♀が背後を振り向いて、嫌がり始めました。(@1:15〜) 
暴れる♀を背後から♂が首筋を噛みながら組み伏せたようです。
(よく見えないので、アナグマの交尾行動からの類推です。) 

その間、両目失明のヘルパー個体♀hは、交尾中の両親♀♂から離れて、逆の左を向いて佇んでいます。
 「いいから、あっち行ってろ!」と両親に追い払われたのでしょうか? 
身震いしてから巣口に歩いて戻り、周囲を警戒しています。 


シーン3:3/12・午前11:56・晴れ・気温23℃(@2:00〜) 
12分後に監視カメラが再び起動すると、あぶれ♀(両目失明のヘルパー個体♀h)が巣口から居なくなっていました。 
入巣または外出したのかもしれません。 

交尾を終えた♀♂ペアが互いに少し離れて、巣口の右の雪原に佇んでいました。 
右の個体Rが身震いしてから、背中を弓なりに伸ばすストレッチ運動をしました。 
左の個体Lが体をねじって毛繕いを始めました。 
私はまだ外見でタヌキの性別をしっかり見分けられません。 
♂の体格が♀よりも少し大きいらしいので、交尾後の♂が自分の陰茎を舐めているようです。
♀♂ペアが並んでいるのに、対他毛繕いなどの後戯はありませんでした。(賢者タイム?) 
右の個体♀Rがパートナー♂Lの横を歩いて通り過ぎ、巣口に辿り着きました。 




【考察】 
ようやくこの重要な動画を紹介できる日が来ました。 
トレイルカメラの設置場所を変更したおかげで撮れた、スクープ映像です。 

「猿も木から落ちる」ならぬ、「狸も木から落ちる」という貴重な映像が撮れました。 
前評判通り、タヌキの木登りは下手糞でした。
幸い地上からの高さも低く、雪面のクッションがあるおかげで、落ちた2頭は無傷で済みました。 
この近くで昨年見かけた、下半身が麻痺したホンドタヌキ個体は、交通事故ではなく、木登り中に落ちて脊髄を損傷した、という新しい可能性も出てきました。 

もしかすると、ホンドタヌキ♂からのしつこい求愛を嫌がって、身軽な♀が樹上に逃げたのかもしれません。 
穿った解釈をすると、発情した♀が求愛する♂をふるいにかける行動かもしれません。 
つまり、♀の後を追って木登りできるぐらい運動能力の高い♂を交尾相手として選ぶのです。 


ホンドタヌキの交尾行動を無人カメラで初めて撮影することができました。
(もちろん発情期にはカメラに写らない所でも交尾を繰り返しているはずです。)
両親♀♂が娘の目の前で交尾していました。
父親が娘(両目失明のヘルパー♀h)に交尾を挑まなかったのは、性的に未熟で発情もしていないからでしょう。 
近親婚を避けるように本能でプログラムされているのかな?(インセスト・タブー
しかし、父親のタヌキが息子を縄張りから追い払う(子別れ)ということは、母親と交尾する可能性がある息子を性的なライバルとみなしていることになります(エディプス・コンプレックス)。


タヌキの交尾についてPerplexity AIを相手に問答してみました。

Q1: 交尾中のタヌキの♀♂ペアに、別個体が近づいて邪魔しようとした。この行動を繁殖干渉と呼ぶのは不適切か?

A1:この状況を繁殖干渉と呼ぶのは適切ではありません。繁殖干渉は、異なる種の個体間で起こる現象を指します。

繁殖干渉(Reproductive interference)は、以下の特徴を持つ現象です:

異種の個体が配偶過程で相互作用する

その結果、関与する個体の一方または両方の適応度が低下する

個体が誤認をしたり、自種を識別できないことが原因で生じる

タヌキの事例では、同種の個体間での相互作用であるため、繁殖干渉の定義に当てはまりません。

この状況はむしろ、同種内での繁殖競争や交尾妨害と呼ぶべきでしょう。多くの動物種において、オス同士が交尾の機会をめぐって競争することは一般的な行動です。

繁殖干渉は、昆虫、哺乳類、鳥類、両生類、海洋生物、植物など、さまざまな分類群で確認されていますが、あくまでも異種間の現象です。


Q2: 同じ巣穴でホンドタヌキの♀♂ペア以外にもう1頭が冬からずっと同居している。タヌキの性別や年齢を私には見分けられないのだが、この個体は前年に産まれたヘルパーだろうか? 営巣地の近くで交尾する♀♂を少し妨害した後は巣口に戻っておとなしく見ていたので、あぶれ♂かもしれない。しかしあぶれ♂と♀♂ペアが普通に同居するとは思えない。3月中旬に山形県でトレイルカメラによる観察。

A2:ご観察された状況は非常に興味深いです。ホンドタヌキの通常の社会構造と繁殖行動を考慮すると、以下のような可能性が考えられます:

前年生まれの子供(ヘルパー)
観察された3頭目の個体が前年に生まれた子供である可能性が高いです。タヌキは通常、春から初夏にかけて3-5匹の子供を出産します。前年生まれの子供が親と同じ巣穴で冬を過ごすことは珍しくありません。

繁殖期の行動
3月中旬は、タヌキの繁殖期にあたります。この時期、前年生まれの子供が親の交尾を妨害しようとする行動は、自然な現象かもしれません。ただし、その後おとなしく見ていたという観察結果は、この個体が完全に性的に成熟していない可能性を示唆しています。

社会構造の柔軟性
タヌキは基本的に一夫一妻制ですが、その社会構造には柔軟性があります。特に冬期は、生存のために複数個体が同じ巣穴で過ごすことがあります。

あぶれオスの可能性
観察された個体があぶれオスである可能性も完全には否定できませんが、通常、あぶれオスが繁殖ペアと長期間同居することは稀です。

個体識別の難しさ
タヌキの性別や年齢を外見から判断するのは非常に困難です。トレイルカメラによる観察では、さらに判別が難しくなります。

結論として、観察された3頭目の個体は、前年に生まれた子供(ヘルパー)である可能性が最も高いと考えられます。この個体が親の交尾を軽く妨害した後、おとなしく見ていたという行動は、性的に完全には成熟していない若い個体の特徴と一致します。




Q3: 3頭目の個体の性別を推理したい。前年生まれの子供が親と同じ巣穴で冬を過ごす場合、子供の性別は♀♂両方ありえるか? タヌキで親と同居するヘルパーは♀に限る、というような知見は得られているか?

A3:3頭目の個体の性別について、以下のように推理できます:

前年生まれの子供の性別
タヌキの場合、前年生まれの子供が親と同じ巣穴で冬を過ごす際、♀♂両方の可能性があります。タヌキの社会構造に関する具体的な情報は限られていますが、近縁種であるキツネの例を参考にすると、♀♂両方が親と同居する可能性があります。

ヘルパーの性別
タヌキにおいて、ヘルパーが♀に限るという明確な知見は得られていません。しかし、キツネの例を見ると:

ホンドギツネでは、前年生まれのメス(ヘルパー)が母親の子育てを手伝うことが知られています。

ヘルパーは最大4頭になることもあります。

オスも子供が生後1ヶ月頃までは子育てを手伝いますが、その後は家族群に加わらなくなります。

タヌキの社会構造
タヌキの社会構造は柔軟性があり、冬期には生存のために複数個体が同じ巣穴で過ごすことがあります。これは♀♂両方の若い個体が含まれる可能性を示唆しています。

性別判断の難しさ
タヌキの性別を外見から判断するのは非常に困難です。特にトレイルカメラによる観察では、さらに判別が難しくなります。

結論として、3頭目の個体の性別は♀♂両方の可能性があります。タヌキに関する具体的な研究データが限られているため、キツネの例を参考にすると、ヘルパーとして同居する可能性が高いのは♀かもしれません。しかし、タヌキの社会構造の柔軟性を考慮すると、♂が同居している可能性も完全には否定できません。

より正確な判断のためには、タヌキに特化した長期的な観察研究が必要です。現時点では、3頭目の個体が♀である可能性がやや高いと推測されますが、♂である可能性も排除できません。


Q4: キツネと違ってタヌキではヘルパーは存在しない(報告されていない)のか?

A4:タヌキにおけるヘルパーの存在については、キツネほど明確な報告はありませんが、完全に存在しないとは言い切れません。

キツネとの比較
ホンドギツネでは、前年生まれのメス(ヘルパー)が母親の子育てを手伝うことが明確に報告されています。ヘルパーは最大4頭になることもあり、オスも子供が生後1ヶ月頃までは子育てを手伝います。

タヌキの社会構造
タヌキは基本的に一夫一妻制をとり、オスとメスが協力して子育てをします。しかし、タヌキの社会構造には柔軟性があり、環境に応じて変化する可能性があります。

タヌキのヘルパーに関する研究
タヌキのヘルパーに関する直接的な報告は少ないですが、いくつかの研究がタヌキの社会構造の複雑さを示唆しています:

東京都心部の赤坂御用地での研究では、タヌキが行動圏およびコアエリアを大きく重複させて生息していたことから、孤立緑地内でのタヌキの社会構造が一般的な一夫一妻制の社会構造ではない可能性が示唆されています。

タヌキのタメフン場(排泄場所)は、単なる排泄の場としてだけでなく、情報交換の場として利用されており、家族および隣接個体の確認や相互許容の機能など、タヌキの社会構造に深くかかわっていることが指摘されています。

結論
タヌキにおけるヘルパーの存在は、キツネほど明確には報告されていませんが、完全に否定されているわけでもありません。タヌキの社会構造の柔軟性や、一部の研究結果から、環境によってはヘルパー的な役割を果たす個体が存在する可能性は否定できません。

ただし、タヌキの社会構造や繁殖行動に関する研究はまだ十分ではなく、より詳細な調査が必要です。今後の研究によって、タヌキにおけるヘルパーの存在や役割がより明確になる可能性があります。

Q5: タヌキは交尾後に着床遅延するか?

A5: タヌキ(Nyctereutes procyonoides viverrinus)は、交尾後に着床遅延を行うという明確な証拠は提供されていません。タヌキの繁殖サイクルについて、以下の情報が分かっています:

タヌキの繁殖期は1月から3月頃で、この時期にオスとメスがペアを形成し交尾します。

妊娠期間は約60〜65日間です。

出産は通常4月から5月にかけて行われ、2〜6頭(最大12頭)の子を産みます。

これらの情報から、タヌキの繁殖サイクルは比較的直線的であり、交尾から妊娠、出産までの期間に明確な遅延は見られません。着床遅延は、提供された検索結果ではタヌキについて言及されておらず、むしろニホンアナグマ(Meles anakuma)の特徴として述べられています。

したがって、現在の情報では、タヌキが交尾後に着床遅延を行うとは結論付けられません。タヌキの繁殖生理について更なる研究が必要かもしれません。




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