2021年5月中旬・午後15:40頃・くもり
神社の境内にある玉垣の天辺でスズメ(Passer montanus)のペアが交尾していました。
私がカメラを向けると警戒してか、玉垣の背後に植栽されたツツジの生垣に飛び降りました。
生垣の上でもスズメは毎回場所を少しずつ変えて交尾を繰り返しています。
その度に私も右に左にずれながらコンクリート製の玉垣の隙間から隠し撮りをするのは大変でした。
これではまるで覗き魔や出歯亀のようです。
関連記事(10ヶ月前の撮影)▶ スズメ♀♂の交尾(野鳥)スズメは交尾中にヒヨヒヨヒヨ…♪と甘い鳴き声を発するらしいのですが、今回のペアは全く鳴いていませんでした。
※ スズメの鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。
スズメの交尾行動を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@2:11〜)、驚愕の事実が判明しました。
なんと、2羽が代わる代わるマウントし合って交尾していたのです。
つまり、タチ(♂役)とネコ(♀役)を交互に入れ替えて交尾を繰り返していました。
マウント・ポジションから飛び降りると、今度は身を屈めて受け入れ態勢になり、相手が背中に飛び乗るのを待っています。
後ろを向いて交尾した際に♀役の交尾器(総排泄孔)がしっかり見えました。(@4:07)
興味深いことに、後半になると上にマウントする個体(♂役)が固定されました。
その後も♀役の背に乗り降りを繰り返し、交尾を繰り返しました。
遂に、しつこくマウンティング(交尾)を繰り返す相手(♂役)に♀役が振り返って嘴でつつきました。(@1:21)
攻撃性を見せたのはこの一度きりです。
これを合図に交尾が終了し、各々が羽繕いを始めました。
鳥がこんな奇妙な交尾行動をするなんて、見たことも聞いたこともありません。
幼鳥が交尾の予行練習をしているのかと初めは思ったのですが、このペアは共に成鳥です。
交尾行動ではなく、ニホンザルの優位行動のようにマウントを取り合っているのでしょうか?
しかし、この2羽は激しく鳴いてもいませんし、嘴でつつき合っていないので喧嘩(闘争行動)とは思えません。
YouTube上にある「取っ組み合いの大喧嘩」と題したスズメの動画とは明らかに違います。
リアルタイムでは一瞬のことで見過ごしそうになったのですが、交尾中のペアの背後から別個体が飛来して高速で体当たりしました!(@0:33、4:40)
不意をつかれた♂役は生垣の中にもんどり打って転げ落ちました。
交尾を邪魔されたペアは飛んで逃げるかと思いきや、めげずにたくましく生垣の茂みの中に隠れたままで交尾を続けています。
スズメもリア充の邪魔をする(交尾干渉)とは知りませんでした。
浮気(婚外交尾)の現場を嫉妬深いパートナーに見つかって修羅場になったのでしょうか?
鳴かずに黙って交尾していたのも、浮気ならば納得です。
しかし、第三者による攻撃はこの一度だけです。
交尾を終えるとペアは並んで羽繕いを始めました。
乱れた羽毛を自分で整えるだけで、相互羽繕いはしませんでした。
やがて♂役が生垣の奥に飛び降りました。
しばらくすると、♀役も足で顔を掻いてから左に飛び去りました。
生垣の横の遊歩道をヒトが通ったせいで、警戒したスズメが逃げたようです。
動画で交尾行動を記録したことが大発見に繋がりました。(自画自賛)
漠然と写真を撮るだけでは、スズメが交互にマウントし合っていたことに気づかなかったでしょう。
ひょっとすると、今まで気づかれなかっただけで、スズメの交尾はこれが普通なのかもしれません(前戯としての両性愛?)。
私が最も知りたいのは、今回のペアの解剖学的な性別は一体どうなっているのか?という点です。
必ずしも♀♂ペアとは限りません。
スズメは雌雄同色なので、性別を外見で見分けられないのが残念です。
同性愛や両性愛、両性具有などの可能性を考えたくなります。
もしも内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)の悪影響で性決定や性行動に異常を来したり、性同一性障害になってしまった個体なのだとしたら、由々しき事態です。
スズメの交尾行動を手元にある資料で調べ直しても、両性愛の事例は見つかりませんでした。
大田眞也『スズメ百態面白帳』によれば、
交尾すると♀はすぐ身ごもり産卵するので、巣を先に用意しておかなければならない(中略)。 巣造りが一段落すると、♂は♀に付きまとうようになる。しかし、まだその気にならない♀は勝手気ままに行動し、その後を見失うまいと必死に追いかける♂の姿はけなげである。♀が立ち止まると、すぐその周りを、全身の羽毛を膨らませて大きく見せ、気取ったような格好で気ぜわしく歩きまわり、ヒヨヒヨヒヨ…と、これがスズメの鳴き声かと思うような甘く優しい声で愛をささやく。♀が移動すると、すぐその後を追い、止まると、また同じことをする。こんなことを何度も繰り返しているうちに♀もしだいにその気になってくるようで、体を低くして背を反らせ気味にして尾を上げ、下げた両翼の先を小刻みに震わせるとOKである。♂はすかさず♀の背に飛び乗り、羽ばたいてバランスをとりながら腰を低めて慎重に尾を交差させたかと思ったら、もう一回の終わりで、飛び下りている。この間ほんの数秒で、実にさばさばしており、こういうことを普通三、四回繰り返す。♀が羽繕いを始めたらもう終わりで、その後は♂がどんなに誘ってもだめである。 (p69より引用) 交尾。ヒヨヒヨヒヨ…と独特の甘い鳴き声で気づかされることが多い。 (p70より引用)自然カラーシリーズ26『スズメ』によると、
♂は、これぞと思う♀をみつけると、しきりにそのあとを追いかけます。つばさや尾羽をふるわせながら、ピイピイ、コロコロとスズメとも思えないきれいな声で鳴きます。 (さえずり:しぐま註) エンマコオロギのようにすんだきれいな声です。 つがいになると、♂は♀とならんで止まり、♀の羽毛をやさしく、つくろってやります。しかし、仲のよい夫婦ばかりとはかぎりません。♂が飛びのって、交尾しようとしたとたん、ぱっと飛び立って、どこかへいってしまう♀もいます。 ♀が、からだをかがめると、その上に♂が飛びのり、またすぐに飛びおります。同じような動作が、4〜5回くりかえされます。これが交尾です。
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