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2025/10/06

山中の水溜まりで水を飲むキジバト【野鳥:トレイルカメラ】

 

2024年7月下旬・午後16:55頃・晴れ・気温24℃ 

山林で湧き水が滲み出した湿地帯の水溜りを無人センサーカメラで見張っていると、午後に1羽のキジバトStreptopelia orientalis)が現れました。 
この地点でキジバトは初見です。 

水際に歩み寄ると、水面に嘴を付けてゴクゴク飲み始めました。 
後ろ姿ではなく少し横を向いてくれたので、飲水シーンがしっかり撮れました。 
水を飲みながらも合間に周囲を警戒しています。 
喉の乾きをいやすと、水浴びはしないで、右上に飛び去りました。
1.5倍に拡大した上で、キジバトの飲水シーンをリプレイ。(@1:22〜) 


つづく→

2025/10/05

ニホンミツバチ♀の分蜂群を誘引する不思議な蘭植物キンリョウヘン

 

2024年5月下旬・午後12:45頃・晴れ? 

山麓にある古い木造家屋の床下に昔から何年間もニホンミツバチApis cerana japonica)が自然営巣しています。 
久々に定点観察に来てみると、この日も多数のワーカー♀が活発に飛び回り、床下にある巣に出入りしていました。 

家屋の手前に養蜂用の空の巣箱が2つ置かれていました。 
ちょうどニホンミツバチが分蜂する時期なので、巣箱に引っ越してくる分蜂群を捕獲したい養蜂家がいるのでしょう。 
分蜂群を効果的に誘引するために、それぞれの巣箱の近くにキンリョウヘンという蘭の鉢植えが計3つ置かれていました。 
キンリョウヘンの花は、なぜかニホンミツバチの集合フェロモンを分泌しているのだそうです。 
ただし、我々ヒトの鼻には無臭です。
キンリョウヘンの花は、ニホンミツバチの「集合フェロモン」と非常によく似た化学物質(3-ヒドロキシオクタン酸:3-HOAA と 10-ヒドロキシデセン酸:10-HDA)を分泌します。
これは一種の化学擬態であり、フェロモンで誘引したミツバチによって授粉してもらおうというのが、キンリョウヘンの送粉戦略です。 
本やテレビなどで知っていましたが、実際に見学するのは初めてです。 
確かにニホンミツバチのワーカー♀が多数集まっていました。 

意外にも、キンリョウヘンの花で吸蜜したり花粉を集めたりする個体はいませんでした。 
キンリョウヘンの花自体には蜜がないため、ミツバチが花に留まって採餌する行動は見られないのだそうです。
キンリョウヘンの花は「背面摩擦送粉」という仕組みで受粉します。
ミツバチが花に入ると、背中に花粉塊(蘭特有の「ポリニア」)が付着し、別の花に移動することで運ばれた花粉と授粉します。
花粉塊が付着する部位は蜂自身の足先が届かず、身繕い動作(グルーミング)でも取り外しがほぼ不可能な場所です。
つまり、蜂は背中についたキンリョウヘンの花粉塊を自力で後脚の花粉籠に移し替えて花粉団子として巣に持ち帰ることはできません。
ミツバチ側にとっては花蜜や花粉という報酬がない「騙し」の仕組みですが、植物側は効率的に送粉してもらうことができます。


ニホンミツバチの偵察部隊に巣箱の入口を見つけてもらいやすくして巣箱へスムーズに誘導するために、キンリョウヘンの花の置き方が工夫されていることが分かりました。 
なぜか右よりも左の巣箱の方が蜂の出入りが多いです。 

巣箱の内部から歩いて巣口に出てきた蜂が、口にオレンジ色の小さな塊を咥えていて、外に捨てました。 
巣箱の内部を清掃しているということは、偵察部隊が巣箱を内見して気に入り、これから女王を連れて分蜂群が引っ越してくる前兆かもしれません。 

一番興味深かったのは、巣箱の手前の地面で複数のニホンミツバチ♀が団子状に集まって格闘していたことです。 
キンリョウヘンの放つ強烈な匂い(フェロモン)に酩酊したのでしょうか?
かの有名な、天敵のスズメバチを熱殺する蜂球なのかと思い接写しても、ニホンミツバチ同士の争いでした。 
ちなみに、スズメバチvsニホンミツバチの死闘が繰り広げられるのは秋です。
もしかしてこれが仮集結した分蜂蜂球の出来始め(形成初期)なのでしょうか? 
しかしよく見ると、1匹の個体を取り囲んで集団リンチしています。 
相手にしがみついて噛み付いたり、腹端の毒針で刺そうとしたりしていました。 
近所にある別々のコロニーから集まって来た斥候の蜂同士が、引越し先の巣箱を巡って争っているのかもしれません。 
襲われている個体はほぼ無抵抗で、相手を振りほどこうと必死に羽ばたきながら歩いて逃げようとしています。 
熱殺蜂球とは異なり、喧嘩が終わって蜂の団子が解散しても、死亡個体が地面に残されることはありませんでした。 

残念ながら、ニホンミツバチの分蜂群が実際に新しい巣箱へ引っ越しする様子を観察することはできませんでした。 
女王も含めた分蜂群が巣箱に引っ越しする日はなかなか予想できないので、無人のカメラを設置して何日も愚直に監視する必要がありそうです。


【考察】
キンリョウヘンの誘引成分は女王蜂のフェロモンやローヤルゼリー成分に近いため、働き蜂(ワーカー♀)だけでなく結婚飛行に飛び立った雄蜂♂を集める力もあるのだそうです。
しかし今回、新しい巣箱やキンリョウヘンに来ていたのはニホンミツバチのワーカー♀だけで、雄蜂♂はいませんでした。

 この記事を書くための調べ物をする上で、いつものようにPerplexity AIとの問答が役立ちました。
(今回は試しにPDFファイルにまとめてみました。)

私が一番知りたいのは、キンリョウヘンの鉢植えの近くの地面でニホンミツバチが団子状になっていた行動についてです。

菅原道夫『ミツバチ学:ニホンミツバチの研究を通し科学することの楽しさを伝える』 という本のPart3(p83-130)で、ニホンミツバチの特性の1つであるランに誘引される現象とその研究の現状を詳しく解説しています。
しかし読み返しても、私の疑問は解決しませんでした。

Perplexityの見解では、
集合フェロモンに誘引されたミツバチは、巣箱やその周辺で一時的に密集することがあります。これは新しい巣箱への入居前や、女王蜂を待つ間などによく見られる行動です [18] [19] 。
特に分蜂時や新しい環境下では、偵察蜂や一部の働き蜂が地面や巣箱の周囲で「仮集結」することがあり、これが団子状に見えることがあります [19] 。

また、「異なるコロニーから来たニホンミツバチの偵察部隊が巣箱を巡って激しい闘争を繰り広げることがあるのか?」という私の疑問に対して、Perplexityは否定的でした。
異なるコロニーの偵察蜂が鉢合わせた場合
偵察蜂同士が同じ巣箱やキンリョウヘンの周辺で出会うことはありますが、基本的には激しい争いは起きません。
偵察蜂はあくまで「下見」役であり、候補地を確認したら自分の群れに戻り、情報を伝達します。その後、分蜂群全体が入居を決定するかどうかが決まります [27] [28] 。
もし複数の分蜂群が同時に同じ巣箱を目指して集まった場合、最終的にはどちらか一方の群れが入居し、もう一方は別の場所を探すことが多いです。まれに両群が同時に入ろうとし、巣箱の入り口付近で一時的に小競り合いが起きることもありますが、致命的な争いには発展しません。

しかし私はどうもPerplexityの説明に納得できません。
佐々木正己『ニホンミツバチ: 北限のApis cerana』という書籍を読むと、次のような記述があったからです。
ニホンミツバチがオオスズメバチの襲来を察知して対処するときの反応をも化学擬態しているとする小野・佐藤(1997)の説は、誘引された蜂が(キンリョウヘンの)花弁をかじる不思議な行動を見事に説明する (p160より引用) 

蜂球に包まれた(キンリョウヘンの)花は熱とかじり行動でぼろぼろにはなるが、受粉は高率で保証される。そして開花時期が、まさに分蜂の季節と一致しているのである。 

私が観察した小規模な蜂球やニホンミツバチ同士の闘争行動は、これで説明できるのではないか?と思いつきました。
つまり、キンリョウヘンの化学擬態によってニホンミツバチの熱殺蜂球が誤って発動されてしまったのではないでしょうか?
この仮説なら、必ずしも他のコロニーから来た蜂との喧嘩とは限りません。(同じコロニー内の同士討ちかも)


佐々木正己『ニホンミツバチ: 北限のApis cerana』や小野・佐藤(1997)の説に基づき、「キンリョウヘンの化学擬態によってニホンミツバチの熱殺蜂球が誤って発動される」可能性について検討すると、十分に合理的な解釈といえます。

化学擬態による誤作動と観察事例

  • キンリョウヘンは、ニホンミツバチの集合フェロモンだけでなく、オオスズメバチ襲来時の危険(外敵や警戒)フェロモンまで部分的に化学擬態していると分析されています。scienceteam.jst

  • 花弁をかじったり、他個体にまとわりついたりする「異常な蜂球状行動」は、本来天敵襲来時の防御反応として発動されるべき集団行動が、化学信号によって誤誘導された結果と説明できます。38qa+1

行動の特徴

  • 通常の熱殺蜂球はオオスズメバチなど天敵が存在し、巣の防衛で発動します。その際はミツバチ死骸・負傷者が見られます。tamagawa+1

  • キンリョウヘンの場合は死骸が残らないため、攻撃性の弱い「誤発動型蜂球」や小規模衝突として観察されます。38qa

  • 花弁をかじる不思議な行動も、外敵がいないにも関わらず警戒・排除スイッチが入り、集団で花(=誤認天敵)を攻撃しようとする防衛行動の名残と考えられます。scienceteam.jst

生態・進化的解釈

  • キンリョウヘンのフェロモン成分が、ミツバチに「危険」や「集合」だけでなく「攻撃・防御」反応まで誤誘導する化学擬態であるとの学術的指摘があり、進化的視点からも特異な利用例とされています。38qa+1

  • 現場で観察された小規模蜂球や花弁へのかじり行動は、こうした「擬態シグナル誤認による行動発動」の一環として解釈してよい根拠があります。


結論
キンリョウヘンの化学擬態が、ニホンミツバチの本来の熱殺蜂球・警戒防衛行動まで誤発動させてしまうことは、最新の学術的知見にも一致します。観察された小規模蜂球や花弁かじりは、擬態による誤認誘導現象として十分説明できます。scienceteam.jst+1


手強い相手でしたが、ついにPerplexity AIを説き伏せることができました。
(Perplexityは誤解していますが、キンリョウヘンの花弁をミツバチがかじった行動を私自身は観察していません。)
もちろん、AIを論破したからと言ってそれが科学的に真理だとは限りません。
私は未だ1例しか観察していませんし、解明していくのはこれからです。
 

映像を見直すと、微小なアリ(種名不詳)がキンリョウヘンに訪花しているようですが、ニホンミツバチの観察に集中していた私は、アリのことなど眼中にありませんでした。 
今後の課題です。


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2025/10/03

ヤマザクラの樹洞の縁に産卵するフタガタハラブトハナアブ♀

 

2024年7月中旬・午前11:10頃・くもり 

低山の樹林帯を抜ける山道の横に立派なヤマザクラの老木があり、幹に開口した小さな樹洞(開口部の直径は約2cm)の手前でフタガタハラブトハナアブ♀(Mallota eristaliformis)がホバリング(停空飛翔)していました。 
樹洞の縁に停まると、樹皮に腹端を何度も接触させています。 
このとき卵を産み付けているのでしょう。 
飛び立っても少しホバリングするだけで、同じ地点に着陸し直し、産卵を繰り返しています。 

夏の樹林帯は、林冠の葉が鬱蒼と茂って昼間でもかなり薄暗いです。 
初めは黄色い蜂に見えたので、てっきりマルハナバチ類の雄蜂♂が帰巣したか、あるいは交尾のために他のコロニーの樹洞巣に飛来した(探雌飛翔)のかと思いました。 
動画とは別に同定用に撮ったストロボ写真を見直すと、マルハナバチにベーツ擬態したフタガタハラブトハナアブ♀と判明しました。



産卵直後の写真を見ても、卵は微小なのか、どこか分かりません。


樹洞開口部の直径は約2cm。



このハナアブの詳しい生態や生活史を知らなかったのですが、Perplexity AIに問い合わせると、蜂の巣に寄生するのではなく、ファイトテルマに産卵するらしい。
フタガタハラブトハナアブ(Mallota eristaliformis)の雌は、主に樹木の洞(クヌギ等)の水の溜まった部分に産卵します。幼虫はその洞の水中に存在する腐植質(腐った植物片など)を食べて育ちます。

【参考サイト】 


ちなみに、樹洞、葉腋、食中植物の壺など植物上に保持される小さな水たまりは「ファイトテルマータ」(複数形:Phytotelmata、単数形は「ファイトテルマ」Phytotelma)と呼ばれ、そこだけで興味深いミニ生態系になっています。 

ヤマザクラの細い横枝が根元から折れた後に傷口が腐り、樹洞が形成されたのでしょう。
樹洞入口の右上部分には白い糸が密に張り巡らされています。
樹皮の欠片(木屑)や虫の糞?が大量に付着しているので、クモの網ではなくて蛾の幼虫が絹糸を紡いだ巣のようです。
今回見つけた小さな樹洞の奥がどうなっているのか調べていませんが、横向きに開口しているので、中に雨水が溜まっているとは思えません。 
それでもフタガタハラブトハナアブの幼虫は、樹洞内部の湿って腐った木屑などを食べて育つのでしょう。 

今回フタガタハラブトハナアブ♀は樹洞の縁に産卵したので、幼虫は孵化直後に自ら樹洞内の水溜り(ファイトテルマータ)など餌がある安全な場所を求めて移動しなくてはなりません。 
1齢幼虫にそのような運動能力があるのであれば、♀成虫はファイトテルマータに近づきすぎてうっかり溺死するリスクを回避できそうです。 
フタガタハラブトハナアブ♀が産卵のために樹洞内に侵入しなかったのは、暗闇では目が見えず、中に潜む捕食者に襲われても逃げ遅れるからだろうと推測しました。 


※ オリジナルの映像があまりにも暗かったので、動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 羽音が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


この小さな樹洞に小鳥や小動物が出入りしていそうな気がします。
しかしトレイルカメラを設置して確かめたくても、他のプロジェクトもいくつか同時進行しているために機材の数が足りず、後回しになっています。 


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2025/10/02

夏の水場に飛来して虫を探す謎の小鳥(シメ?)【野鳥:トレイルカメラ】

 

2024年7月中旬・午前10:20頃・晴れ・気温24℃ 

山林で湧き水が滲み出した湿地帯の水溜りを無人センサーカメラで見張っていると、昼間に謎の小鳥が右から飛来しました。 
水溜まりSの上空で軽くホバリング(停空飛翔)してから、中洲に着陸。 
警戒しているのか、水場で飲水も水浴もしてくれません。 
足元の泥濘を嘴で啄んでいるだけです。 
小さな虫でも捕食しているのでしょう。

この地味な鳥の種類は何でしょうか? 
1.5倍に拡大した上でリプレイしても(@0:56〜)、やや遠くて見分けられません。 
素人目にはシメCoccothraustes coccothraustes)と似ているような気がしたのですけど、どうですかね? 
しかし、シメは冬鳥のはずです。 
夏に山形県の低山でシメを見るなんて、あり得るのでしょうか?
Perplexity AIに尋ねてみると、
山形県の低山において、シメは夏季には非常に稀ながらも繁殖が確認されていることがあり、7月中旬にも見られる可能性があります。シメは本来は本州で冬鳥ですが、秋田、岩手、山形、福島、長野といった本州の一部地域で希に繁殖し、近年山形県内でも繁殖の兆候が複数の個体で報告されています。夏季の観察例は少ないが存在し、山形の海沿いなどで繁殖行動も観察されているため、7月中旬の低山での観察も考えられます.
シメはホバリング(停空飛翔)をすることが知られています。シメは主に飛行中に翼を羽ばたかせて飛びますが、ホバリングを行うことがあるという記述が、シメを含むアトリ科の仲間に関する飛行の観察記録にあります。特にホバリングはシメが花や餌を狙う際や短い間の停止飛翔として見られることがあるようです。ただし、猛禽類やカワセミ、ハチドリのような専門的なホバリング飛行とは異なり、シメのホバリングは短時間かつ少し不安定なものと理解されています.[1]

※ 動画の後半は編集時に自動色調補正を施しています。

2025/10/01

オオバギボウシの花で採餌するクロマルハナバチ♀の羽ばたき【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年7月中旬・午前10:25頃・くもり 

郊外で道端の花壇にずらりと咲いたオオバギボウシの大群落でオオバギボウシオオマルハナバチBombus hypocrita)のワーカー♀がせっせと訪花していました。 
毎回、正当訪花を繰り返して吸蜜・集粉しています。 

後脚の花粉籠が空荷の個体と、橙色の花粉団子を付けている個体がいました。 
花筒に潜り込んで吸蜜すると、腹面が雄しべに触れてオオバギボウシの花粉が付着します。 
次の花に潜り込むと、その花粉が雌しべに授粉するのです。 
雌しべの先端部が上向きに湾曲しているのは、そのためです。
クロマルハナバチはときどき毛繕いして体毛に付いた花粉を後脚の花粉籠に移します。
花蜜ととも花粉団子を巣に持ち帰り、幼虫の餌にするのです。 

関連記事(11年前の撮影)▶ オオバギボウシに訪花するクロマルハナバチ♀ 

ギボウシの花から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:07〜) 
複数個体を撮影。 

ちなみに、花壇の奥に見えているのはアスパラガス畑です。


※ 蜂の羽音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

2025/09/29

夜の水溜りで顔を洗うフクロウと周囲を飛び回るコウモリ【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月中旬〜下旬 

シーン0:7/16・午前11:45・晴れ・気温32℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
山林の中に少し開けた湿地帯があり、湧き水が滲み出して浅い水溜りになっています。 
水場に来る生き物を無人センサーカメラ(新機種)で見張っています。 

夜な夜な通ってくるフクロウStrix uralensis)の登場シーンを以下にまとめました。 


シーン1:7/16・午後20:00・気温20℃(@0:03〜) 
久しぶり(15日ぶり)にフクロウが水場に来てくれて、ほっと一安心。 
辺りを見回して安全を確認してから、歩いて水溜りSに入水。 

やがて水面に漬けた顔を左右に素早く振って、洗顔を始めました。
我々ヒトのように手を使って顔を擦り洗いすることができないので、フクロウはこの洗顔法を編み出したようです。 

洗顔中にフクロウが足踏みする理由が私には分かりません。 
これから本格的に水浴をするのなら、わざわざ泥で水を濁らせなくてもいいのに、と素人目には思ってしまいます。 
浅い水溜りの底を足で掘って少しでも深くしたいのでしょうか。 
水底に潜む獲物を探しているのかな? 
もしかすると、この水溜りは浅く見えても底なし沼のようになっていて、足踏みし続けないとどんどん沈んでしまうのかもしれません。

結局、最後まで見届けられずに2分間の録画時間が終わりました。


シーン2:7/21・午後22:11・気温27℃(@1:40〜) 
5日後の晩遅くにもフクロウが写っていました。 
最近イノシシがヌタ打ちしたり泥濘を掘り返したりしたせいで、水溜まりSの地形が少し変わってしまいました。(映像公開予定) 

フクロウが後ろ向きで入水すると、水溜まりの中で足踏みしながら方向転換しました。 
このときコウモリの一種が上空を飛来しました。 
しかし何度も旋回するだけで、フクロウが来ている間は水溜りの水面に着水しませんでした。 
コウモリは超音波によるエコロケーションで、水場の状況をしっかり把握しているようです。 
飛びながら虫を捕食しているのでしょう。

フクロウは周囲を飛び回るコウモリを気にせずに、洗顔開始。 
泥水に脚を浸しながら、辺りをキョロキョロ見回しています。
今回も飛び去るまで見届けられませんでした。 


シーン3:7/22・午後23:15・気温22℃(@3:12〜) 
翌日も深夜にフクロウが来ていました。 
此岸から泥濘を歩いて入水すると、キョロキョロと辺りを見回しています。 
やがて力強く羽ばたくと、左上に飛び去りました。 
なぜか今回は洗顔も水浴もしませんでした。 
熱帯夜というほど気温は暑くないのですが、体を水で冷やしに来ただけのようです。 
それとも何か異変があって逃げたのかな?


シーン4:7/22・午後23:19(@3:55〜) 
3分後にフクロウが戻ってきました。 
(個体識別できていないので、別個体の可能性もありえます。) 

水溜りに入ると、すぐに顔を洗い始めました。 
辺りをキョロキョロ見回して警戒を怠りません。 


※ 水音や羽音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】
結局この時期のフクロウは、水溜りで本格的な水浴をしてくれませんでした。 

神垣健司『森の賢者 フクロウ』という本を読んでいたら、「第4章 水場のフクロウ」に私が観察したことと同じ行動が書いてありました。
水場が浅いせいか、フクロウは水場でからだを前屈みにして、まるで顔を洗うように水を浴びる。水場をぐるぐる歩きながら、顔を水につけて洗っていることもあった。雨に日にも(原文ママ)水場で水浴びをするが、雛が巣立って森を離れるとフクロウは水場に姿を見せなくなる。(p42より引用
筆者のフィールドは広島県で、YouTubeチャンネルも開設しておられます。

つづく→

2025/09/28

山中の水溜りで♂の警護なしで単独打水産卵する謎のトンボ♀【トレイルカメラ】

 

2024年7月中旬 

シーン1:7/16・午前11:45・晴れ・気温32℃(@0:00〜) 
山林にある湿地帯で湧き水や雨水が溜まった水溜りを無人センサーカメラで見張っています。 


シーン2:7/20・午後13:15頃・晴れ・気温27℃(@0:04〜) 
画面の右上奥、水溜まりNから溢れた水が流れ出る地点(湿地帯の泥濘)で、トンボ♀(種名不詳)が単独で飛びながら打水産卵を繰り返していました。 
トンボ♀は場所を変えて更に産卵してから、最後は右上に飛び去りました。 
その間、♀の近くで産卵警護する♂の姿は写っていませんでした。 

謎のトンボ♀の単独打水産卵を1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@0:34〜) 
遠くてトンボの種類を見分けられず、大型のヤンマ類なのかそれより小型のトンボ類なのかも不明です。 
オニヤンマ♀の単独打泥産卵(挿泥飛翔産卵)は体をもっと垂直に立てた姿勢でホバリングしながら上下動して産卵するので、今回の産卵動画の動きとは違います。

関連記事(2、15年前の撮影)▶ 

井上清、谷幸三『トンボのすべて(第2改訂版)』によると、
オニヤンマの♀は浅くて細い流れの上にやってくると、空中で少しホバリングしたあと、突っ立った姿勢のままストンと落下し、腹の先より突き出ている生殖弁を砂泥底に突き立てて産卵し、すぐ飛び上がり、また落下して産卵する。この動作をリズミカルにストンストンと繰り返します。(p69より引用)

同時期に別の池で見かけたオオシオカラトンボ♀の産卵行動と似ていますが、他にも候補がいるので決めつけることはできません。 



しばらくすると、手前の水溜まりSに右奥から1匹のトンボが飛来しました。 
水溜りSの上空を一回りしただけで、右奥の水溜まりNに戻りました。 

1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@1:26〜) 
更に1/3倍速のスローモーションでもう1回リプレイしてみましょう。 
残念ながらトンボの種類や性別を外見で見分けることはできませんでしたが、その行動から推理すると、おそらくトンボ♂が縄張りを張って占有飛翔しているのでしょう。 
交尾相手の♀を探し回り(探雌飛翔)、ライバルの♂が来たら縄張りから追い払うと思われます。 
動画の前後半で登場したトンボは同種とは限らず、別種かもしれません。


そもそも今回、監視カメラが何に反応して起動したのか不明です。
トンボは昆虫で変温動物のはずなのに、トレイルカメラの熱源センサーが反応したということは、飛翔筋の激しい運動により、気温よりも高く発熱しているのかもしれません。 
トレイルカメラに飛んでいるトンボが写っていたことがこれまでに何度もあるので、サーモグラフィカメラでトンボの体温を知りたいものです。

関連記事(2年前の撮影)▶ 

あるいは、たまたま飛来した鳥が高速で横切った結果、偶然トンボの産卵シーンが撮れたという可能性もあります。 


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2025/09/23

夜のアナグマ営巣地を飛ぶコウモリ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年7月上旬・午後21:05頃・気温27℃ ・日の入り時刻は午後19:08

平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)の母子家族が暮らす営巣地(セット)を無人センサーカメラで見張っていると、ある晩にコウモリが素早く飛んで手前から奥に横切りました。
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 

アナグマの家族が転入してからコウモリが登場したのはこれが初めて…ではなく、たぶん2回目です。



つづく→

2025/09/22

山中の水溜りから水を飲むアオゲラ♀【野鳥:トレイルカメラ】

 



2024年7月上旬 

シーン0:7/1・午後12:25・雨・気温27℃(@0:00〜) 
山林の湧き水が滲み出してくる湿地帯で、水溜りSを無人センサーカメラで見張っています。 
梅雨の雨が降って、水溜りが大きくなりました。 
右奥には別の水溜りNも見えています。 


シーン1:7/2・午前5:56・雨・気温18℃(@0:04〜) 
左上から緑色の鳥が湿地帯に飛来し、右下の死角に消えました。 
しばらくすると、手前からアオゲラ♀(Picus awokera awokera)が現れ、ホッピングで水溜りSに近づきました。 
水溜りの泥水を飲む後ろ姿が撮れました。 

後頭部のみ赤くて、横を向いたときに顎線が赤くないので、♀と分かります。 

ときどき泥濘をあちこち嘴でつついて、小さな虫を捕食しているようです。 
(泥そのものを食べてミネラル摂取している可能性は?) 

水場から飛び去るのを見届ける前に、1分間の録画が終わりました。 


つづく→

2025/09/21

アンズ落果の周囲を昼間に飛び回るコウカアブ?の群れ

 

2024年7月上旬〜中旬

シーン0:7/5(@0:00〜) 
アンズ(杏)の木の下で拾い集めた落果を1箇所にまとめて置き、自動センサーカメラで見張っています。 

明るい昼間はスズメバチ類がアンズの熟果を食べに来るのではないかと期待したのですが、予想は外れました。 


シーン1:7/7(@0:03〜) 
数匹の黒くてやや大きな昆虫が低く飛び回っています。 
しばらくすると、近くの下草に留まりました。 
おそらくコウカアブPtecticus tenebrifer)ではないかと推測しています。 


シーン2:7/8(@0:41〜) 
アンズ落果の表面には、微小なアリやショウジョウバエの他に、ハネカクシらしき黒っぽい甲虫もうろついていました。 
ハネカクシは肉食性で、腐果に発生するウジ虫(ハエの幼虫)などを捕食しているはずです。 
ハネカクシ同士が互いに出会うと、尻尾をくねらせて牽制していました。 

 一方コウカアブ?は、落果の山の周囲を飛び回るだけなので、熟果の吸汁が目的ではないようです。 
コウカアブ2〜3匹の飛翔を群飛と呼ぶには個体数が少な過ぎます。 
おそらくアンズ落果に産卵に来る♀と交尾しようと♂たちが待ち伏せしているのでしょう。 
周囲で飛び回る者には何にでも反応して即座に飛び立って追いかける(迎撃)ので、縄張りの占有行動に見えます。 
実際に同種のライバル♂を追い払っているかどうかまでは、映像では分かりませんでした。 

関連記事(1、4年前の撮影)▶  


シーン3:7/9(@2:29〜) 


シーン4:7/11・午前後(@3:40〜) 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

昆虫は変温動物ですから、本来トレイルカメラの熱源センサーは反応しないはずです。 
風揺れなどのせいで監視カメラが頻繁に誤作動して、たまたま撮れたのでしょう。 

2025/09/19

単独産卵中のオオシオカラトンボ♀が捕食者に襲われると警護飛翔中の♂は身を挺して守るのか?

 



2024年7月上旬・午前11:40頃・晴れ 

低山の池でオオシオカラトンボ♀♂(Orthetrum triangulare melania)の産卵行動を観察していると、捕食者が現れました! 
トンボの撮影に集中していた私は気づかなかったのですが、トノサマガエルPelophylax nigromaculatus)が池で獲物を待ち伏せしていたようです。 
単独で飛びながら岸辺の水面に打水産卵を繰り返すオオシオカラトンボ♀に気づいたトノサマガエルが左からピョンピョン跳んできました。 
そのまま獲物に襲いかかろうとしたものの、オオシオカラトンボ♀は気づいて素早く飛んで逃げ、トノサマガエルの狩りは失敗しました。 

緊迫の瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:18〜) 
トノサマガエルが獲物を狩れる射程距離に入る前に、オオシオカラトンボ♀は逃げていました。 
このトノサマガエルはまだ若いのか、やや小さ目の個体でした。 

ここで興味深いのは、♀を産卵警護していた♂の反応です。 
産卵中の♀のすぐ上空でホバリング(停空飛翔)していたオオシオカラトンボ♂は、捕食者の接近を♀に警告したり、身を挺して♀を守ったりすることはありませんでした。 
カエルから逃げた♀の後を追いかけて♂も飛び去りました。 

警護飛翔する♂はあくまでも♀が浮気しないようにライバル♂から♀を守るだけであって、捕食者から配偶者をガードすることはないようです。 
(捕食者の接近を見張るための哨戒飛翔ではないようです。)
もしもカエルの待ち伏せ猟が成功していれば、オオシオカラトンボ♂はあっさり♀を見殺しにしたと思われます。


【考察】 
擬人化すると、今回オオシオカラトンボ♂の行動を見て騎士道精神に欠ける(甲斐性がない、頼りない)と憤慨・失望する人がいるかもしれません。 
しかし、利己的遺伝子の観点からは容易に説明できます。 
♂は命を賭して捕食者に立ち向かったり身を挺して♀を守るよりも、さっさと逃げて生き残れば、新しい♀と交尾して自分の子孫をもっと増やせるチャンスがあるからです。 
そもそもトンボは天敵(捕食者)に立ち向かえる武器を何も持っていません。 


この疑問をPerplexity AIに質問すると、以下の回答を得ました。 (参考文献へのリンクは割愛。)

オオシオカラトンボの♂が行う「警護飛翔」は基本的にライバルとなる他の♂トンボに対する縄張りや交尾相手(♀)の独占を目的とした行動であり、捕食者から♀を守るための直接的な防衛行動や警告行動ではありません。

理由と背景

  1. 警護飛翔の目的
     ♂は産卵中の♀を他の♂が奪うことを防ぐために♀の周囲を飛び回り、ホバリングしたり威嚇したりします。これは「産卵相手の独占」と「ライバルの排除」が主目的です。

  2. 捕食者に対する反応
     トノサマガエルやカエル類、クモ、カマキリなどの捕食者に対して、トンボの♂が積極的に捕食者を追い払ったり警告を発したりする報告は一般的に少なく、むしろ捕食者に気付いた♀や♂自身が素早く逃避飛翔します。
     ♂は捕食者に対して防御的に護衛する行動はとらず、攻撃的な防衛は行いません。

  3. 捕食者が近づいた際のトンボの行動
     捕食者の接近は非常に危険なため、♀も♂も逃げることが多く、♂の警護飛翔は捕食者認知や防御の役割は持たないと考えられています。

まとめ

  • オオシオカラトンボ♂の警護飛翔は「競争相手の♂トンボへの排除・威嚇行動」であり、

  • 捕食者からの防衛や警告ではない。

  • 捕食者接近時は♀自身が逃げるか、周囲のトンボも飛び去るなどして回避する。

よって、今回のトノサマガエルに♀が跳びつかれた場合に♂が防御的な行動をとらず、逃げて無事だったというのは、オオシオカラトンボの自然な行動パターンとして符合します。


 
ところで、トンボの中にはノシメトンボのように♀が打空産卵する種類もいます。 
打水産卵と打空産卵で産み分けているのはなぜでしょうか?  
オオシオカラトンボのように打水産卵する方が、産卵する地点の狙いを付けやすいのですかね?

トンボの「打水産卵」と「打空産卵」は、どちらも飛翔中に腹端をリズミカルに振る動作をとりますが、前者は腹端で実際に水面を叩き卵を水中や水面直下に産みつけるのに対し、後者は空中から卵をばら撒き水面や湿地、泥などに着地させる方法です。たとえばノシメトンボやナツアカネなど、同じアカネ属でも種や状況によって使い分けることがあります。dragonflykumamoto.fc2+1

なぜ産み分けるのか?

  • 産卵環境の多様化(=卵の生存戦略の幅)と、捕食リスク・生息地特性への適応が主な理由と考えられています。

    • 打泥産卵は泥の中、打水産卵は直接水中、打空産卵は水・湿地・泥の上など、卵を分散させて環境の変動や捕食からより多くの子孫を残す可能性を高めます。dragonflykumamoto.fc2

    • 打空産卵は捕食者(カエルなど)に狙われにくい高さを飛びながら産卵できる反面、卵が正確に水中に落ちないリスクがあります。global

打水産卵の狙い付けについて

  • 打水産卵は自分の腹端で「ここだ」と狙いを定めて直接水面を叩きつけるため、卵の投入位置をかなりコントロールしやすい利点があります。kobe-c+1

  • 一方、打空産卵では相対的に「着地する地点」が卵ごとにムラが生じやすく、特に風や空中の姿勢で散布状態になります。ただし「湛水域の安定」「季節的な水たまり」など長期的な生存戦略としては有効な場合も多いです。

まとめ

  • 打水産卵は「確実に水中へ」、打空産卵は「リスク回避&卵の分散」を組み合わせた適応行動です。とくに打水産卵は「狙いをつけやすい」産卵法に該当しますが、その分、捕食リスクもやや高くなります。kobe-c+2

  • 種や産卵場所、環境条件に応じて両法を使い分けるトンボもいます。

参考:トンボの産卵方法の多様性と戦略

 
確かに、打水産卵するトンボはカエルなどに捕食されるリスクがあることを今回まざまざと教えられました。

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2025/09/17

オニグルミの堅果に誘引される謎の夜蛾を狩り損なった野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2024年7月上旬・午後21:00頃 

シーン0:7/1・午後13:14・くもり(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
里山で野ネズミやリスを観察したくて、朽ちて斜めに倒れたスギの倒木に給餌箱をくくりつけました。 
真っ白なプラスチックの容器を再利用したのですが、白では山林内であまりにも目立つため、黒いビニールテープを容器の外側にグルグル巻きに貼って隠蔽しました。 
(本当は茶色や迷彩柄のテープを使いたかったのですけど、田舎ではすぐ入手できなかったので仕方がありません。) 
給餌箱に塗料を塗るのは野生動物にとって刺激に強い異臭になると思って、次善の策でビニールテープを使いました。 

今回の餌は、前年に拾い集めておいたオニグルミの堅果を餌箱に30個投入しました。 
果皮はすでに取り除いてあります。 
すると予想通り、野ネズミ(ノネズミ)が給餌箱に通ってきて、クルミをせっせと1個ずつ持ち去りました。 
(その動画は近日公開予定。) 


シーン1:7/1・午後21:41(@0:03〜) 
2頭の夜蛾が飛来して、餌箱の外側に止まりました。 
長いのでここは5倍速の早回しでお見せします。 


シーン2:7/1・午後21:58(@0:14〜) 
野ネズミが居なくなると、入れ替わるように夜蛾が左から飛来してスギの倒木に着地したものの、すぐにまた少し飛んでから容器内に着陸しました。 
どうやらオニグルミの匂いに誘引される、夜行性の蛾がいるようです。 


シーン3:7/1・午後22:02(@0:42〜) 
トレイルカメラが起動したことに驚いたのか、左の餌箱に来かけていた野ネズミが空荷で慌てて倒木を右へ逃げていきます。 
その間にも餌箱の付近を謎の夜蛾が飛び回っています。 

しばらくすると、さっき逃げた野ネズミが餌箱に駆け戻りました。 
餌箱の縁で夜蛾を見つけた野ネズミが素早く飛びかかろうとして、餌箱から下に落ちました。 
野ネズミの無鉄砲な狩りは失敗に終わり、夜蛾は素早く飛んで逃げました。 

野ネズミが夜蛾に襲いかかった決定的瞬間を1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:03〜) 
もしかすると狩りを試みたのではなくて、暗闇で顔のすぐ近くを飛んだ蛾に驚いた野ネズミが餌箱から飛び降りて逃げただけかもしれません。 
餌箱の地面からの高さを測り忘れましたが、野ネズミが落ちて死ぬような高さではありません。(数十cm)


シーン4:7/1・午後22:04(@1:17〜) 
約1分半後、監視カメラが何に反応して起動したのか不明です。 
戻ってきた夜蛾がしばらく飛び回ってから、餌箱内のクルミに着陸しました。 


シーン5:7/1・午後22:46(@1:29〜)
斜めの倒木を右から来た野ネズミが登ってきました。
しかし途中で立ち止まり、少し離れたところから餌箱を見ているだけです。
その間に謎の夜蛾が飛来し、クルミの餌箱に着陸しました。
野ネズミはフリーズしたまま微動だにしません。
さっき(約45分前に)の野ネズミと同一個体だとしたら、餌箱から落ちて痛い目に遭ったので、夜蛾を恐れるようになったのかな?



【考察】 
オニグルミの堅果(植物学的に厳密に言うと、核果状の堅果)の山を野外に給餌したところ、夜行性の蛾が1頭だけでなく複数が誘引され、飛来しました。
この謎の蛾の正体が気になります。
白黒の暗視映像では蛾の翅の色や模様も分かりませんし、現地で採集しないことには同定できません。
素直に推理すると、オニグルミの果実に産卵または吸汁する蛾がいることになります。

現場は低山にあるスギ植林地の端で、オニグルミの大木が近くに1本そびえ立っていました。
つまり、問題の蛾はオニグルミ樹上にある生の果実や枝葉の匂いに集まって飛び回っていたのに、私が地上付近に置いた古いクルミ堅果の山の匂いに撹乱されて寄り道しただけかもしれません。

いつものようにPerplexity AIに相談してみました。 
すると、果実吸蛾類ではないか?とおかしな回答をされました。
果実吸蛾類は果樹の液果に集まるのであって、堅果には来ないはずです。
オニグルミの果実は全く甘くありませんし、むしろ渋いタンニンが多く含まれています。
しかも、謎の夜蛾が誘引されたのは、果皮を剥いてから乾燥保存しておいた1年前の古いオニグルミ堅果です。
いくら悪名高い果実吸蛾類でも、クルミの固い殻に口吻を突き刺すことはできないはずです。
乾燥堅果自体には糖分・芳香成分が乏しく、蛾は吸汁・産卵の対象として認識しにくいはずなのに、複数個体が誘引されたのはとても不思議です。

次の仮説として、ハマキガ科のコドリンガCydia pomonella)をPerplexityは教えてくれました。
幼虫がバラ科果実やくるみ果実及び核子に食入し、加害する。(植物防疫所の病害虫情報サイトより引用)

つまり、クルミの実に産卵する蛾がいるらしいのです。
ところがよく調べると、コドリンガは欧州原産の外来種であり、日本国内にはまだ定着していないらしい。(「侵入生物データベース」サイトより)
私のフィールドは山形県なので、コドリンガの可能性は除外してもよさそうです。

最後にPerplexityは、食品害虫や貯穀害虫の蛾ではないか?と私が思いつかなかった仮説を教えてくれました。
確かに台所に保管した乾物やドライフルーツに蛾がよく集まって産卵し、幼虫が食害します。
日本の野山に生息する貯穀害虫の蛾の例としては、ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)が挙げられます。この蛾は世界中で知られる貯穀害虫で、穀物を中心に乾燥食品に産卵・幼虫が食害を起こしますが、日本国内でも野外で確認例があります。

貯穀害虫の野生生息・飛来可能性
ノシメマダラメイガは主に屋内や貯蔵施設での被害が多いため「貯穀害虫」と分類されますが、野外でも発生例が報告されており、山間部や林縁、果樹園付近などに普通に飛来します。

幼虫は穀物・乾燥植物質を食べるため、野山の落ち果実、落ち種子、乾燥した植物材にも自然に入り込み生息できる環境がある可能性があります。

乾燥堅果や植物種子を餌にしていることが確認されているため、野外に置かれた乾燥オニグルミ堅果に飛来する蛾として全くありえない話ではありません(Perplexityの回答)

ノシメマダラは以前飼育したこともあり馴染みのある蛾なので、トレイルカメラの映像は違うと自信を持って言えます。
白黒の暗視映像からは翅の色や斑紋が分かりませんが、ノシメマダラよりも大きくて幅広い翅を持つ種類でした。
例えばカシノシマメイガなどに近いかもしれません。

カシノシマメイガは主に人家周辺や貯穀庫で発生しますが、里山や山間部の林縁など自然環境にも普通に飛来・生息しています。したがって、里山のオニグルミ堅果に飛来した大型で幅広い翅を持つ蛾として十分に現実的な候補種です。(Perplexityの回答)

以上の考察は、あくまでも推理でしかありません。
再実験をして謎の蛾を採集するまでは、未解決のままです。
野外で蛾を採集する方法として様々なトラップ法が開発されてきましたが、私がたまたま考案した「クルミ・トラップ」や「ナッツ・トラップ」に集まる蛾を真面目に調べれば、何か面白いことが分かるかもしれません。
誰かがすでにやってるかな?



アンズの落果に飛来した夜行性の蛾(果実吸蛾類?)【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2024年7月上旬・午前3:50頃 

アンズ(杏)の木の下で拾い集めた落果を1箇所にまとめて置き、自動撮影カメラで見張っています。 
未明に低空で飛び回っていた1頭の蛾(種名不詳)が、アンズ落果の山に着地しました。 
熟したアンズ果実の芳香に誘引されて夜蛾が飛来したのでしょう。 
これからというところで録画が打ち切られてしまいましたが、おそらく口吻を伸ばして滲み出る果汁を吸汁するはずです。 

蛾は変温動物ですから、本来トレイルカメラの熱源センサーは反応しないはずです。 
実はこの直前に野ネズミが来ていたので、たまたま撮れた映像のようです。 



夜行性の蛾の中には、果樹園の害虫として嫌われている果実吸蛾類がいます。 
落果から吸汁する分には問題ないのですが、樹上で実っている果実に蛾が口吻を突き刺して吸汁すると、その刺傷から果実の腐敗や感染が広がって商品価値が失われます。 
果樹園農家はこうした吸蛾類の防除に昔から苦労しているのです。 
対策としては、なるべく殺虫剤を散布したくないので、果実を1つずつ袋掛けをしたり、果樹を目の細かい網で覆ったり、誘蛾灯を設置したりするそうです。 

原色図鑑 夜蛾百種: 吸蛾類を中心として』という書籍によると、
・果実吸蛾類とは、多くの種類の果実に口器を刺し込んで果汁を吸汁する蛾類を総称していう。 
・多くが鱗翅目ヤガ科に属することと、その加害活動が主に夜間に限られることが特徴。 
・吸蛾類は成熟して軟化した果実、また高い甘みをもつ果実を好む。 
・加害を受けた果実は、二次的に菌類が寄生するなどして、やがて腐敗する。 
成虫は丈夫な鋭い口器をもち、成熟前のかなり硬い果実も吸収するほか、袋の掛った果実でも果袋を通して吸収加害する能力をもっている。 (以上、p106より抜き書き引用)


虫好き・蛾好きとしては、夜な夜な果樹園を巡って蛾を探してみるのも面白そうです。(もちろん立ち入る許可が必要です。) 


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2025/09/15

池で単独連続打水産卵するオオシオカラトンボ♀と警護飛翔する♂【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年7月上旬・午前11:40頃・晴れ 

里山にあるモリアオガエルに繁殖池に来てみると、最近雨が降ってくれたおかげで池の水量が増していました。 
対岸付近の水面で打水産卵するトンボ♀を見つけました。 
体色が性的二型のトンボで、黄色の♀が単独で打水産卵する間に、水色の♂が近くをホバリング(停空飛翔)しながら♀を警護していました。 

同定用の写真を撮るよりも産卵行動を記録する動画を優先したのですが、動きが速くてしっかり合焦できませんでした。 
シオカラトンボ、シオヤトンボなどと迷ったのですが、打水産卵する♀の透明な翅の根元が黒かったので、オオシオカラトンボOrthetrum triangulare melania)の♀♂ペアと確定しました。 警護する♂は撮影アングルの問題で翅の根元が見えませんでした。
(シオヤトンボは成虫の出現時期と、腹部の色の違いから却下。) 

(オオシオカラトンボの)♀は単独で浅い水面を打水し、腹端ですくい上げた水と卵とを前方に飛ばす。♂は付近を飛んで警護することが多い。(ネイチャーガイド『日本のトンボ』p483より引用) 

関連記事(12年前の撮影)▶ オオシオカラトンボ♀ 


生物関連の本の中でも、たとえありふれた普通種でも一種類の生き物に絞って生活史や行動生態を徹底的に調べて渾身の一冊にまとめた本を私は好みます。 
そんな本の一つ『シオカラトンボ (カラーサイエンス 12)』によると、
・交尾のあとすぐに、めすは、水のなかに産卵します。このとき、おすはめすのまわりととんで見はります。 
・水草のはえた池や沼では、めすが卵を水てきといっしょに水草にむかって、腹のさきでとばして、産卵します。 (p30〜31より引用)
1985年に発行された40年前の古本ですが、交尾の連続写真(当時は高速連写できないので苦労して撮り貯めたカラー写真を再構成した組写真)なども掲載されていて、充実した内容です。 
最近はこうしたじっくり腰を据えた本を作る余裕がなくなっているのが残念です。 


動画の冒頭では、池の水面の上を水色のトンボと黄色のトンボが高速で飛び回っています。 
異種間の縄張り争いかと思って慌てて撮り始めたので、ズームインし過ぎてしまい、すぐに見失ってしまいました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、産卵地点を探して飛び回るオオシオカラトンボ♀の後を同種の♂が追尾していました。 

黄色いトンボ♀が水面の上でホバリングしながら腹端を水面に叩きつける度に、水滴が斜め前方に飛んでいきます。 
単独で打水産卵に励む♀の近くを水色のトンボ♂が単独でホバリングしながら警護しています。 
オオシオカラトンボは、連結状態(尾繋がり)では産卵しないのです。

オオシオカラトンボ♀の連続打水産卵を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:58〜) 
♂の警護飛翔は写っていません。 

※ 晴れていてもスギ林に囲まれた池で遠くからズームインして撮影するとかなり暗い映像になったので、動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 




【考察】 
いつものようにPerplexity AIと問答を繰り返して、産卵行動についてブレインストーミングしました。 
トンボの種類をオオシオカラトンボと絞り込む手助けもしてくれました。 

オオシオカラトンボ♀の卵は、打水の度に前方に飛んでいく水滴の中に含まれているのか、それとも打水した瞬間に水中に沈むのか、どちらなのでしょうか?

打水産卵時の卵の挙動
オオシオカラトンボの打水産卵(飛水産卵)では、腹端を水面に打ち付けると同時に卵と水滴を一緒に前方へ飛ばす行動がみられます。

このとき腹端で水面をすくい上げた小さな水滴の中に卵が含まれていて、その水滴ごと水面の前方(浅瀬や水草の周辺)に飛ばされる、というのが標準的な解釈です。

連続して打水するので、水面には多数の小さな水滴が弧を描きながら飛び、卵もこれに含まれて飛ばされます。

詳細と補足
水滴は水面に再び落ちる際、その中に入った卵も一緒に着水し、そのまま水中に沈みます。

写真や動画の高精度な観察でも、「水滴の中に卵が混じって飛んでいる」様子が確認されており、水滴の色が微妙に濁る・色づく場合は卵塊が含まれているためとされています。

水滴の一部が透明、他がうっすら褐色の場合、褐色の水滴の方に卵や卵塊が多く含まれる状況が観察されています。

まとめ
オオシオカラトンボ♀の打水産卵では、卵は打水によってできた小さな水滴に包まれて飛び、水滴ごと前方へ飛ばされた後、水面に落ちてそのまま水中に沈みます。打水と同時に水中に直接沈むのではなく、「水滴の中に入って飛ぶ→水面に再落下して水中へ沈む」が基本の流れです。

この産卵様式は、卵をなるべく広範囲にばらまき、外敵からの(食卵)リスクを減らすためのものと考えられています。

今回私が観察した事例では、オオシオカラトンボ♀は池の浅いところから岸に向かって水滴を繰り返し飛ばしていました。
この時期は雨量が少なく池は干上がりつつあったので、卵の生存率を上げるには岸(陸上)ではなく池の中央に向かって水中に産むべきではないでしょうか?

オオシオカラトンボ♀が池の浅瀬から岸に向かって水滴を飛ばす産卵行動は、たしかにご指摘のように「池の干上がりが進む時期、水面から離れた場所では卵が孵化や発生に適さなくなる恐れ」があります。実際、トンボの打水産卵は卵を水滴と一緒に前方へ飛ばし、より広範囲かつ適した場所に分散する意味があると考えられていますが、どの程度「着水するか」は水位や池の地形、個体の打水角度など自然条件によって変動します。

トンボの産卵行動の研究では、

普段は卵を確実に水面に落下させることが繁殖戦略ですが、池が干上がりつつあるなどの極端な状況では、必ずしも全ての卵が生き残るわけではなく、生存率の低下は避けられません。

メスは本能的には「水面やその近く」で産卵しますが、水位が低くなっている場合、結果的に一部の卵が水際から外れるリスクも発生します(環境把握能力には限界があります)。

しかし、トンボは基本的に当日の池の状態(少なくとも「目で見て水がある範囲」)を選ぶ能力が備わっていると考えられており、一定の確率で着水しない場所にも卵が飛ぶことも想定内です。干上がりの進行など短期間の変動には柔軟に対応しきれないため、「池の縁」に産み落とされた卵は水位低下で生存率が下がる可能性が高いですが、これは自然環境下でトンボが常に抱えるリスクでもあります。

まとめると、「池の水位が極端に下がると卵の生存率が低下しうる」ことはその通りですが、オオシオカラトンボの産卵行動はあくまで通常状態の水辺環境を前提に進化しており、池が干上がる非常時に完全対応するものではありません。生存率の確保には、産卵タイミング・場所選択・環境変動すべてが影響します。

産卵時の水位が高ければほとんどが水面に着地し高い生存率となりますが、干上がりが進めば一部は陸地に落下し孵化できず死亡します。

トンボは水面に産みつけようとしますが、環境条件が変動する以上「最大多数を水辺に着地させる」戦略しかとれません。

したがって、今回ご覧になったような状況は、生態的にはごく普通に見られる現象であり、トンボの本能的な産卵行動が必ずしもその年の最適条件に対応できないという自然界の一断面ともいえます。

それなら、オオシオカラトンボの卵や幼虫(ヤゴ)は乾燥に対して強い(耐性がある)のでしょうか?
卵の乾燥耐性
トンボ類の卵は一般に産卵直後は乾燥に弱いですが、発生が進み眼点(発生初期の目のような構造)が現れるまではやや耐乾性が低い一方、発生が進むと乾燥耐性がかなり強くなります。

水田や池が一時的に干上がっても、多くの種で卵は土や泥の中でかなりの乾燥や低温に耐えて春になり、水が張られると孵化することが可能です。

オオシオカラトンボの卵もこの耐乾性を持ち、通常の内陸のため池などで冬期に水が抜かれて乾燥状態が続いても、生き残れるケースがあり、これは稲作地帯のシオカラトンボなどとほぼ同等の能力とみなされます。

ヤゴ(幼虫)の乾燥耐性
幼虫(ヤゴ)は卵ほどの乾燥耐性はありませんが、冬季の低温下では、ある程度の乾燥や池干しにも耐えられることが知られています。

泥の中に深く潜ったり、落ち葉の下に隠れるなどして、一時的な湿泥状態なら生存できる場合もあります。

ただし高温期(春~夏~初秋)に完全な乾燥に晒されると生き残れないことがほとんどで、特に羽化直前の終齢幼虫などは乾燥に極めて弱いです。冬季など休眠に近い低代謝の状態だとやや耐えやすいですが、卵期ほどの耐性はありません。

まとめ
卵期の乾燥耐性は高く、池や水田の“冬期干上げ”程度には十分に耐える能力がある。

ヤゴは卵ほど乾燥に強くないが、泥の中など湿り気がごくわずかに残る状況では冬季~早春に一時的な乾燥に耐えられる場合もある。

一方、完全な乾燥(土がカチカチに乾く状態)が長期間続くと、幼虫はほとんど死滅してしまう。

多くの日本のトンボ同様、オオシオカラトンボも水辺の環境変動にある程度耐える進化をしていますが、耐性の「強さ」は卵>幼虫の順です。

トンボの♂が産卵しているパートナー♀をライバル♂から守るためには、交尾後も尾繋がりの状態を保ってペアで産卵するのが最善であるはずです。
なぜオオシオカラトンボ♂は連結を解除した状態で♀の警護飛翔をするのでしょうか?
「尾繋がりの状態で連結打水産卵するのでは産卵しにくくて仕方がない」とオオシオカラトンボ♀がたとえ感じたとしても、首根っこを掴まれた♀は自分の意志では連結を解除することが出来ません。
つまり産卵中に連結するかしないかは、♂が選択した結果なのです。
むしろ、オオシオカラトンボ♂が連結しないのは♂が浮気性だからと考えられます。
たとえ警護飛翔中でも、産卵池に別個体の同種♀が飛来したら、♂はただちに新しい♀を捕獲して交尾を試みることが(私は未見ですが)報告されているそうです。
以下はPerplexityによる回答です。
オオシオカラトンボの単独産卵と♂の警護飛翔の進化・行動の実態については、実際の現場行動と繁殖戦略の両面からもっと複雑な説明が必要です。

連結解除の主導は♂
トンボ類の多くでは交尾後、♂が自発的に連結を解除して♀を離す行動が観察されています。

これは交尾後に♀が産卵に移る時点で、連結保持による直接監督より、効率的な交尾回数増加や他の♀探索への戦略を取るためです。

つまり、単独打水産卵への切り替えは、進化的には♂側の交尾戦略(浮気的=複数の♀との交尾へ)や他の♀に対する即応性の高さの副産物です。

警護飛翔中の♂の行動
産卵警護中でも、池に新たな♀が現れると、警護していた♂は即座に警護中の♀を見捨て、新到着♀にアタックし連結しようとする行動が頻繁に報告されています。

トンボ♂は「警護」と「新たな交尾相手獲得」を状況ごとにスイッチしやすく、どちらかといえば「新たな♀優先」になる傾向が強いです。

進化的意義
単独産卵を可能にしたのは**♀の進化的自由ではなく、♂の浮気行動(頻繁な交尾機会探索)や多数交尾戦略に由来**します。

産卵警護は「自分の精子で産ませたい」気持ちの表れですが、より生殖成功率を高めるためには、他の♀の出現時に即座に乗り換える「浮気性」が同じくらい重要です。

観察・実験例
産卵池では、同時に複数ペアが産卵行動をとり、♂が急に警護♀から新たな♀に乗り換える現象が容易に再現・観察できます。

男女双方の利害一致ではなく、主に♂の多回交尾・浮気性・交尾機会争取戦略によって形づくられていると考えられます。

要するに、オオシオカラトンボの警護産卵と連結解除の主因は「♂の浮気性や交尾回数の最大化欲求」と見る方が、生態的現象の実態により近いです。ご指摘の通り、産卵警護中でも♂は新規到着の♀に即反応して乗り換えるため、「本当に守っている」のは縄張りと交尾機会だけであり、♀自身や受精卵に対する献身的防衛ではありません。

トンボは種類によって産卵行動が多様です(打空産卵、打水産卵、連結産卵、単独産卵など)。 
比較行動学と分子系統分類学を組み合わせると、トンボの産卵行動がどのような順序で進化してきたか推測できるだろうか?  
それとも、産卵行動はトンボの系統とはあまり関係なくて、収斂進化の結果だろうか?

比較行動学と分子系統分類学を組み合わせることで、トンボの産卵行動の進化順序を「かなりの程度」推測することは可能ですが、産卵行動の多様性は必ずしも系統樹のパターンにきれいに一致せず、**収斂進化(独立進化)も非常に多い**ことが明らかになっています。[1][2][3]

### 行動形態と系統の対応

- トンボの産卵行動には「静止接触産卵」「静止非接触産卵」「飛翔接触産卵」「飛翔非接触産卵」など複数の基本タイプがあり、各グループごとに特徴的な行動パターンを示します。[1]
- たとえば、イトトンボ科やアオイトトンボ科は連結潜水産卵や組織内産卵が典型で、ヤンマ類やアカトンボ類は空中からの打空産卵・連結打水産卵、トンボ科は♀単独の打水産卵が多いなど、類縁ごとの偏りがあります。[2][3]

### 分子系統分類学との比較

- 最新の分子系統樹による分析では、こうした産卵行動パターンが「一度だけ進化し、系統的に保存されている」場合と、「複数回、異なる系統で独立進化した(収斂進化)」場合の両方が認められています。[1]
- 一部の行動(例:組織内産卵や連結打水産卵)は比較的原始的な形質とされ、複数の系統にわたって保存されている傾向がありますが、**打水産卵や打空産卵など「目立った派生行動」は、異なるグループ間で独立に進化したと推測されるものが多い**です。[3][1]

### 収斂進化の具体例

- たとえば「打空産卵」はアカトンボ類だけでなく他の科にも現れ、「単独打水産卵」も様々な系統で発達しており、同じ行動が系統的に遠いグループでも発現します。[2][1]
- これは生息環境や繁殖戦略、生存率向上など外部要因による適応が大きく関わっているためと考えられています。

### 結論

- 比較行動学と分子系統分類学を合わせれば「祖先形質」「系統保存された行動」「収斂的な適応」の判別が可能ですが、**産卵行動の多くは複数回・多系統で独立進化した例が多く、単純な祖先―派生の直線的な進化とは限りません**。[3][2][1]
- したがって、「産卵行動の進化順序は系統ごとに異なる分岐と収斂の複合」と解釈するのが現在の理解です。

 


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