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2025/02/18

越冬できずに死んだニホンアナグマの亡骸に群がるクロバエ

 



2024年3月下旬・午後13:30頃・晴れ 

平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が冬眠する営巣地(セット)を2台のトレイルカメラで長期間監視しています。 
カメラの電池とSDカードを交換するため久しぶりに現場入りすると、衝撃の展開が待ち構えていました。 
うららかな早春の日差しを浴びて雪解けが進む林床に、野生動物の死骸が横たわっていたのギョッとしました。 
場所はよりにもよって、巣口Rを北側から狙うトレイルカメラNを固定した灌木の真下でした。 

死骸は腐敗が進んでいて、辺りに死臭が漂っています。 
茶色の毛並みはボサボサでした。
一瞬タヌキかと思ったのですが、前足に鋭い爪があるのでアナグマと判明。 
なぜか左前脚の毛皮がずる剥けで、皮膚が露出しています。
後脚の太腿などに、スカベンジャー(カラス?)が死骸を損壊した形跡があります。 
むしり取られた茶色い毛玉が風で飛んだのか、少し離れた地面に落ちていました。 

自分では冷静を保っているつもりでも、やはり精神的なショックが大きかったようで、後で思うと現場での観察が色々と不充分でした。 
例えば横臥している死骸を裏返して反対側(右側面)も調べるべきなのに、やっていません。 
股間の外性器や乳首などを調べて性別を確認すべきだったのですが、とてもその気になれませんでした。 
ゴム手袋やビニール袋などを何も持ってこなかったので、死骸に触れることができない、という事情もありました。 
死んだのが若い個体(当歳仔)なのか成獣か、という点も気になるものの、分からずじまいです。 
成獣なら寿命かもしれません。 

解剖しない限り、アナグマの死因は不明のままです。 
今季は異常な暖冬で積雪量も例年より少なかったので、アナグマの冬眠と覚醒のリズムが狂って無駄に体力を消耗し、餓死したのではないか?と素人ながら疑ってしまいます。 
死骸は腐敗が進んでいるため、持ち帰って解剖する気になれませんでした。 
新鮮な死骸だったら、体重を計ったり、解剖して胃内容物や体脂肪の厚さを調べたりすれば、餓死かどうか分かったかもしれません。 
剖検して骨折などが見つかれば、車道に出た際に交通事故で負傷したまま、なんとか営巣地まで戻ってきて息絶えたというシナリオが考えられます。 
大型のスカベンジャー(鳥や哺乳類)が死骸を食べに来ているらしく、アナグマの死骸は毛皮の一部が剥ぎ取られ、露出した肉が食い荒らされていました。 

アナグマは餓死したのではなく、巣穴を乗っ取ろうとする他の野生動物に襲われて、殺されたのでしょうか? 
容疑者としては、ホンドギツネやホンドタヌキ、ホンドテン、ニホンイタチが考えられます。 
これらの動物はいずれも、ニホンアナグマの冬眠する巣穴に潜り込んで物色する姿がトレイルカメラに写っていました。 
「同じ穴のむじな」として平和に同居していると思っていたのに、まさか居候が家主を殺すでしょうか? 
タヌキは自分で巣穴を掘れないので、穴掘りの得意なアナグマに依存(片利共生)しないといけません。 

アナグマがいつ死んだのかも、私には分かりません。 
私が前回(16日前の3月中旬)現場に来たときはアナグマの死骸を見ていません。
そのときは雪の下に死骸が埋もれていた可能性もあり得ます。 
早春になって積雪が溶けた結果、アナグマの古い死骸が現れたのかもしれません。 
遺体の下は日陰となって、まだ残雪がありました。 
残雪と接地していることで死骸の右半分がずっと冷やされて続け(冷蔵保存)、腐敗の進行が辛うじて抑えられているようです。

次に、推理小説や刑事ドラマで最近よく活躍する法医昆虫学者の真似事をしてみました。 
素人が死亡時期を推定できるでしょうか? 
「寒の戻り」と言って寒波(雪)が断続的に戻って来る早春には昆虫がまだほとんど活動しておらず、腐肉食性昆虫相による死亡時期の推定は難しそうです。 

それでも、クロバエ科の仲間(種名不詳)が2匹、アナグマの死骸に来ていました。 
クロバエは成虫で越冬しますから、気温が高ければ死臭を嗅ぎ取っていち早く飛来します。 
この日はよく晴れて、日向の気温は高そうです。 
(午後14:21の気温は27℃でした。)
クロバエは口吻を伸縮して死骸の表面で吸汁していました。 
特にアナグマ死骸の耳の穴や、後脚太腿の食い荒らされた傷口を舐めています。 
歩いてアナグマの左目に移動したものの、アナグマは目をしっかり閉じていたので水分の多い眼球を舐めることは出来ず、離れていきました。
食事の合間に左右の前脚を擦り合わせて身繕いしています。 
クロバエの複眼を見る限り、この個体は♀のようです。(左右の複眼が頭頂で接していない。) 
もし♀なら死骸に産卵するはずですが、腹端を見ても、動画には撮れていませんでした。 
卵胎生で幼虫を産み付ける(産仔)ニクバエ科と違って、クロバエ科の♀は産卵するそうです。
このクロバエの種類を見分けられる方がいらっしゃいましたら、教えて頂けると助かります。 
クロバエ科は(死体の)膨隆期まで、ニクバエ科は腐朽期まで入植が見られる。ニクバエ科は温暖期にのみ活動するが、クロバエ科は(中略)気温が低い時期はクロバエ属をはじめとするクロバエ類が活動している。 (三枝聖『虫から死亡推定時刻はわかるのか?―法昆虫学の話 』p61より引用)

クロバエ科・ニクバエ科意外のハエは通常、新鮮期の死体には入植しない。(同書p63より引用) 

筆者はブタの死体を着衣状態で野外に放置して、経過を調べる研究実験も敢行しています。

晩秋・早春など温暖期と寒冷期の移行期(寒暖境界期) は気温が低く、ブタ死体の腐敗分解はゆるやかに進行するため、顕著な膨隆期はみられず、乾燥が進行する。(p111より引用)

 

寒暖境界期に活動するクロバエのウジは、低温対策のためか死体内部に潜行する傾向があり観察が難しいこと、成長もゆっくりと遅いことから、死後経過時間推定の指標とするには体長の計測のみでは不充分である (p112より引用)


現場では気づかなかったのですけど、死んだアナグマの前足の肉球の隙間に、白いウジ虫が蠢いているようです。 
動画を見直して初めて気づいたのですが、死骸の毛皮に付着している数個の小さな茶色い紡錘形の物体は、ハエの蛹(囲蛹)ですかね? 
死骸に産み付けられたハエの卵が孵化して低温下で蛆虫を経て蛹になったとすれば、アナグマが死んでからかなりの日数が経過していることになります。 
それとも、謎の異物はひっつき虫などの植物由来かな? 
クロバエの蛹が死骸の毛皮に付着した状態で見つかるのは不自然ではないでしょうか?
クロバエが動物の死骸に産卵した場合、老熟した幼虫は死骸を離れて地中などで蛹化するはずです。 
Perplexity AIの回答によれば、
死骸の毛皮にクロバエの蛹が付着していることは、稀ではありますが、以下の状況では可能性があります 
・死骸の状態: 腐敗が進んでいない比較的新鮮な死骸の場合
・環境条件:周囲に適切な蛹化場所がない場合 
・幼虫の数:大量の幼虫が存在し、競争が激しい場合
いずれにせよ、私のやった現場検証は中途半端すぎて、アナグマの死後経過時間を推定できそうにありません。 
遺体や虫のサンプルを全て持ち帰って丹念に調べないことには無理だと実感しました。 

アナグマがこの地点で死んだとは限りません。 
例えば巣穴の中で死んだアナグマを、タヌキが外に引きずり出した可能性も考えられます。 
監視映像にはそのようなシーンは写っていませんでしたが、トレイルカメラにはすべての動きが記録されている訳ではない(どうしても撮り漏らしがある)という点が、もどかしいところです。 
また、どこか遠くで見つけたアナグマの死骸を他の動物に横取りされないように、タヌキがここまで運んできたのかもしれません。
積雪期なら、雪面に足跡や死骸を引きずった跡が残ったはずですが、残雪がどんどん溶けていく早春にはそのような手掛かりを得られませんでした。

当時の私は、「定点観察していたセットの主が死んだとは限らない」と自分に言い聞かせていました。 
発情した♀を探し求めて求愛する夜這い♂など、余所者のアナグマ個体が遠征してきて偶然ここで死んだ(行き倒れた?)可能性もあるからです。 
しかし、その後も営巣地(セット)で定点観察を続けると、ここでアナグマの姿をまったく見かけなくなりました。
次にアナグマが現れたのは、何ヶ月も先のことです。(映像公開予定) 



つづく→ 


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2024/12/28

家ネズミの死骸を樹上で食べるハシボソガラス(冬の野鳥)

 

2024年1月下旬・午前9:55頃・降雪 

夜の間に、この冬一番のドカ雪が積もりました。 
気温が低いため、雪質はサラサラな乾雪です。 

裏庭の落葉したケヤキの樹上に1羽のハシボソガラスCorvus corone)が近所の住宅地から飛来しました。 
嘴には小動物(小型哺乳類)を咥えています。 
冠雪したケヤキの横枝に止まったカラスが、両足で獲物をしっかり押さえつけながら、嘴で突き刺そうと何度もつつき始めました。 
獲物を狩ってきた直後なのかと初めは思ったのですが、死骸は硬く凍っていました。 
(死後硬直かもしれません。)
カラスが肉片を食べても、獲物の傷口から血は出ません。 
貯食物を雪の下(地中?)から掘り出してきた可能性もありそうです。 

死骸を咥えて持ち上げた際に、無毛の長い尻尾が見えたので、モグラではなくネズミの仲間と判明しました。 
周囲の環境から、おそらく野ネズミではなく家ネズミの可能性が高そうです。 
素人目には、ハツカネズミMus musculus)よりも大きそうなので、クマネズミRattus rattus)またはドブネズミRattus norvegicus)だと思うのですが、どうでしょう。
ネズミの種類を見分けられる方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。 

窓の隙間から隠し撮りしている私にハシボソガラスが気づくと、気まずそうに獲物を持ってケヤキの幹の陰に隠れてしまいました。 
カーテンの動きでバレてしまったようです。

※ 窓ガラス越し斜めに撮った不鮮明な映像に、動画編集時に自動色調補正を施しています。


【考察】
ネズミ類は、雪国の冬でも冬眠しません。 
暖かい人家に住み着く家ネズミをカラスが捕食してくれたのだとすれば、益鳥ということになり、とても助かります。 
もしかすると、殺鼠剤で駆除(毒殺)された家ネズミの死骸を近所から拾ってきたのかもしれない、と思いつきました。 
だとすれば、殺鼠剤は無色で無味無臭らしいので、カラスは疑うことなく毒入りの死骸を食べてしまい、健康を害する可能性があります。 
そのカラスの死骸は、また別のスカベンジャー(死肉食の分解者)が食べに来るはずですから、毒物の生物濃縮が起こってしまいます。 
殺鼠剤を使う場合は、死んだネズミを野外に捨てるのではなく、環境から隔離して適切に処理することが必要です。 


2024/12/24

モリアオガエルの死骸を持ち去るカケス【冬の野鳥:トレイルカメラ】

 



2024年1月下旬・午前9:00頃・晴れ 

平地のスギ防風林の林縁で、雪の消えた地面にカエルの死骸が転がっているのを見つけました。 
頭部を背側からつつかれていたので、鳥が食べ残したようです。 
今期は異常な暖冬ですから、冬眠から季節外れに目覚めてしまったカエルが天敵に捕食されたのでしょうか? 
それとも、冬眠中のカエルを野鳥が地中から掘り出して捕食しかけたのかな? 

モズLanius bucephalus)のはやにえが地面に落ちた可能性も考えられます。 
ここは田畑や休耕地の近くなので、モズが生息していても不思議ではありません。 
一説に毎月40、1シーズンに120ほどのはやにえをつくるともいわれるモズ。このはやにえを他の鳥がちゃっかりいただくことも。 (小宮輝之ら『鳥の食べもの&とり方・食べ方図鑑』p107より引用)
関連記事:▶  


さて、犠牲となったカエルの種類は何でしょう? 
シュレーゲルアオガエルまたはモリアオガエルだと思うのですが、死体の頭部が損傷しているため、重要な識別ポイントである目の色が分かりません。 
腹面に斑紋があるので、モリアオガエルRhacophorus arboreus)と判明しました。 
こんな平地の小さな林にモリアオガエルが生息しているとは知らず、ちょっと意外でした。 
近くに水がたまった素掘りの水路や池?もあるので、水辺の樹上にモリアオガエルの泡巣が作られるかどうか、初夏の繁殖期に確かめないといけません。(忙しくて、すっかり忘れてしまいました。) 

野外で見つけた死骸を素手で触れてはいけません。 
ビニール袋を手袋代わりにしてモリアオガエルの死骸を掴むと、死後硬直はなく、凍死体でもなく、ぐったりしていました。 
腐敗臭はまったくしませんでした。
実はすぐ近く(約3m離れた地点)に、ニホンイタチMustela itatsi)の越冬用巣穴があります。 
根こそぎ倒れたスギの風倒木が何本も放置され、その根元に巣穴が2つ掘られているのです。 
せっかく新鮮な肉が手に入ったので、根曲がり巣穴aのすぐ手前の地面にカエルの死骸を放置して、巣穴の主に給餌してみましょう。 
監視カメラに何が写るか、楽しみです。 
すぐに雪が積もって埋もれてしまうことを心配しましたが、幸い雪が降る前に餌を見つけてくれました。 


翌日の朝に現れたのは、イタチではなく1羽のカケスGarrulus glandarius)でした。 
地面に仰向けで転がっているモリアオガエルの死骸を見つけると、周囲を警戒しています。 
まずは屍肉の本体ではなく小さな白っぽい肉片を咥え、左に飛び去りました。 
すぐにまたカケスが戻ってくると、モリアオガエルの死骸を丸ごと咥えて右へ飛び去りました。 
三回目に戻ってくると、最後の白い肉片を咥え上げ、左奥へピョンピョン跳んでカメラの死角に消えました。 
監視カメラの存在を警戒しているのか、カケスは死肉を食べるシーンを決して見せてくれませんでした。 
もしかすると、カケスは小さな肉片だけ食べて、メインのモリアオガエル死骸を再び貯食した(近くに隠し直した)のかもしれません。 
気温が低い厳冬期なので、日向を避ければ死骸は冷蔵/冷凍保存され、腐る心配はありません。 

カケスの死肉食を観察できたのは今回が初めてです。 
カケスはカラス科に属しますから、腐肉を食べても不思議ではありません。 
近くの二次林で秋にドングリ(堅果)をせっせと貯食していましたが、餌の乏しい冬には、カエルの死骸でも嬉しいご馳走だったはずです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


2024/10/10

ダイサギの群れは池で死んだアオサギを弔うか?(野鳥)

 



2023年10月上旬・午後14:30頃・くもり 

溜池にダイサギArdea alba)の群れが集まっていました。 
この夏は日照り続きで、この溜池は干上がりかけていたのですが、秋に雨が降るようになって水位がやや回復しました。 
池の中に散開したダイサギの多くは、ただ佇んでいるだけでした。 
優雅に歩き回って獲物を探し回り、立ち止まって羽繕いする個体もいました。 

対岸の泥濘に横たわっているアオサギArdea cinerea jouyi)の死骸に気づいているはずなのに、ダイサギは興味がない(あるいは恐れている?)ようで、あまり近寄ろうとしませんでした。 (※追記参照)
鳥が仲間の死を悼むとは思えませんが、もしも同種のダイサギの死骸だとしたら、何かしらの感情的な行動を示したでしょうか? 
ダイサギが共食いしたり屍肉を直接食べたりするとは考えにくいです。 
アオサギの死骸にはハエ♀がすぐに集まって卵を産み付けているはずですから、屍肉を食べて育つウジ虫などをダイサギがついばみに来るのではないか?と期待しました。 
池の水かさがもう少し増して死骸が水に浸れば、死骸の周囲に小魚が集まり、それを食べにダイサギが集まるかもしれません。
しかし、そのような二次的な捕食行動も見られませんでした。 
溜池に忍び寄る私の存在に薄々気づいてダイサギたちは警戒しているのかもしれません。 

動画の前半で手ブレが酷かったのは理由があります。 
警戒心の強いダイサギに見つからないように、池畔に繁茂するクズの藪の隙間に腕を伸ばしてカメラを挿し込み、こっそり隠し撮りしたからです。 
もっと良い撮影アングルを求めて私がそっと移動した途端に気づかれてしまい、ダイサギの群れは一斉に飛んで逃げてしまいました。 
6羽と3羽の群れに別れて飛び去ったダイサギは、隣接する刈田に降り立ち、今度は落ち穂拾いを始めました。(映像公開予定?) 

その後もときどき定点観察に通ったのですが、溜池の泥濘に放置されたアオサギの死骸に(遠目では)変化はありませんでした。
死骸に近づくスカベンジャーの足跡も泥濘には残っていませんでした。
底なし沼のように深い泥濘に阻まれて、スカベンジャーも死骸に辿り着けないのでしょうか?
ところが、ある日突然、アオサギの死骸が忽然と無くなっていました。 
大型のスカベンジャーが全く来ないのなら、アオサギの死骸が虫に食べられて完全に白骨化するまで待って採集したかったのですが、残念ながらそれも果たせませんでした。

無人カメラを設置して、何者がアオサギの死骸を食べたり持ち去ったりするのか、スカベンジャーの活動を撮影してみたかったです。
残念ながら、手持ちの機材は他のプロジェクトで全て出払っていて使えませんでした。 
底なし沼の可能性が怖くて死骸に近づけず、この現場に監視カメラを設置するのがきわめて難しい、という理由もありました。
トレイルカメラに任せられないとなれば、昔ながらの撮影方法に回帰するしかありません。
池畔にブラインドを張って私自身が死骸をじっくり見守り、隠し撮りするべきでした。


※【追記】
アオサギの死因がたとえば鳥インフルエンザ・ウイルスの場合はダイサギにも感染するリスクがありますから、屍肉食性ではないダイサギがアオサギの死骸に近寄らないのは適応的な行動と言えるでしょう。


【追記2】
哺乳類(チンパンジー)についてですが、ごく僅かな死臭に対しても無意識に忌避することが実験的に確かめられたそうです。




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2024/06/12

ヒヨドリの腐乱死体に群がるハエとヨツボシモンシデムシ(野鳥)

 

2023年9月中旬・午後13:40頃・晴れ 

里山で急斜面の細い沢を下っていると(沢登りの逆)、急に強い死臭がしました。 
辺りを探すと、沢の横でヒヨドリHypsipetes amaurotis)の死骸が仰向けで転がっていました。 
死後数日経っているようで、腐敗が進んでいます。
ヒヨドリの死因が不明です。 
沢の水を飲んだり水浴びしていたヒヨドリが捕食者に襲われたのだとしたら、どうして死骸が何日もまるごと残っているのでしょう?


私が近づくと死骸からハエの群れが飛び立ち、辺りを飛び回るハエの羽音がウヮーンと鳴り響きます。 

死肉食性の昆虫を観察するために、拾った小枝でヒヨドリの死骸を裏返してみると、鮮やかなオレンジ色が目に付きました。 
少なくとも6匹のヨツボシモンシデムシNicrophorus quadripunctatus)が腐敗の進む死骸の下面に潜り込んでいて、腐肉を食べていました。 
腐肉に執着しているようで、ヨツボシモンシデムシを小枝でつついても逃げようとしません。
仰向けにひっくり返り、起き上がろうともがいている個体もいます。 
「頭隠して尻隠さず」の状態で腹端を振っているのは、威嚇行動かもしれません。 
死骸の横の小石の下にもヨツボシモンシデムシが隠れていました。

後になって気づいたのですが、ヒヨドリが死んだ地点は必ずしも沢の横とは限りません。
ヨツボシモンシデムシは死骸を見つけるとその下に潜り込み、力を合わせて運んでから地中に埋めるからです。


現場では気づかなかったのですが、フラッシュを焚いて撮った写真を見直すと、ヨツボシモンシデムシ以外の小さな甲虫も数匹写っていました。 
謎の甲虫の名前が分かる方がいらっしゃいましたら、教えて下さい。
しばらくすると、キンバエLucilia caesar)の仲間やニクバエの仲間が死骸に舞い戻ってきました。 

足元が不安定な崖で体勢が悪かったこと、死臭をなるべく吸い込まないように息を止めて撮影していたこと、飛び回るハエが私の顔に絶え間なくぶつかってくるのに閉口したことから、撮影が雑になってしまいました。 
状況説明の動画を撮る際に、カメラを焦って振り回してしまう悪癖が出ました。 
酔いそうな映像になってしまったので、仕方なくスローモーションに加工しました。 

ヒヨドリの死骸ごと採集してヨツボシモンシデムシを飼育すれば、有名な育児行動を観察できたかも知れません。 
今回はあまりの強烈な腐臭にたじろいでしまい、そこまでする根性がありませんでした。 
野鳥の腐乱死体を運んでいる途中で警察に職務質問されたりしたら、説明するのが厄介です。
それが無理でもヨツボシモンシデムシを採集して、鞘翅の裏面の色を確かめるべきでしたね。 



自然界でヒヨドリの死骸が生物分解される様子を微速度撮影しても面白そうです。 
残念ながら今回はトレイルカメラなどの機材を持ってきていませんでした。 

沢登りしていると清流に見えて、沢の水を直接飲みたくなります。
しかし、源流域で野生動物が沢に糞尿を排泄したり死骸が転がっているのを知ると、そんな気は失せてしまいます。
関連記事(1年前の撮影)▶ 


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・舘野鴻『しでむし』 

2024/05/03

ヒバカリの死骸に群がるハエとアリ

 

2023年7月下旬・午前10:35頃・晴れ 

山麓の舗装された農道で蛇の死骸を見つけました。 
真っ白な腹面を上に向けて死んでいます。 
車に轢き殺されてしまったようです。

動物の遺体に真っ先に集まる常連として、キンバエの仲間(種名不詳)とニクバエの仲間(種名不詳)が飛び回っていました。 
死骸の表面を舐めて吸汁し、その合間に身繕いしています。 
他にはクロオオアリCamponotus japonicus)のワーカー♀が来ていました。 
ヘビを採寸するために15cm定規を並べて置いたら、ハエ類は警戒して飛び去りました。 

腹面だけではヘビの種類が分からなかったので、死骸を裏返してみました。 
頭部と尾端の損傷が激しいです。 
おそらくジムグリ(Elaphe conspicillata)の幼蛇ではないかと思います。 
成長して白い腹面に黒い市松模様が現れる前に非業の死を遂げたようです。 

関連記事(7年前の撮影)▶ ジムグリの幼蛇を見つけた!


死骸の下にシデムシ類などが潜んでいるかと期待したのですが、何も来てませんでした。 
土ではなく固い舗装路では埋葬虫の活動が阻害されてしまうのでしょう。 
夏の炎天下でアスファルトが熱せられ、ロードキル死骸は乾燥が進んでいます。

撮影後は小枝を使ってヘビの死骸を舗装路から拾い上げ、道端の草むらに投げ込んでおきました。 
衛生当局や清掃業者が回収して焼却処分するよりも、自然界のスカベンジャー(掃除屋)の活動に任せる方がはるかにエコです。 
生物分解されて土に還るまでの様子を微速度撮影してみたかったのですけど、手持ちのトレイルカメラは全て他のプロジェクトで稼働中のため、諦めました。 
あまり世間に知られていませんが、『ファーブル昆虫記』にはヘビの死骸を放置してその変化を克明に観察した章もあります。


【追記】
YouTubeのコメント欄にて、RIFLAさんよりご指摘いただきましたので、ジムグリ幼蛇ではなくヒバカリHebius vibakari)の死骸と訂正しておきます。
腹板に市松模様がなく、体色からもヒバカリかと思われます。 


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2024/04/09

スズメの死骸(野鳥):ロードキル

2023年7月下旬・午後15:05頃・晴れ 

郊外の住宅地を抜ける車道でスズメPasser montanus)の死骸が路肩に転がっていました。 
損傷が激しく、赤い肉や内臓が露出しています。 
飛んでいるときに対向車に衝突し、その後で後続車に轢かれたのでしょうか? 
スズメのロードキルを見つけたのは初めてです。 
それとも、スズメを営巣地で狩ったカラスが獲物を持ち去る前に落としてしまったのですかね? 



死肉食性の昆虫はまだハエ1匹も死骸に来ていませんでした。 

残念ながら、骨格標本を作るには状態が悪すぎます。 
スズメの死骸を食べに来る掃除屋(カラスなど屍肉食性のスカベンジャー)を観察するために、どこか落ち着いた場所に亡骸を移動させてからトレイルカメラで監視するのも面白そうです。 
しかしこの日はあいにく、死骸を持ち帰るためのビニール袋や容器を何も持ってきてなかったので、泣く泣く諦めました。 
運用しているトレイルカメラの台数が足りないという事情もありました。 


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2024/04/06

ミミズの死骸に群がるキンバエ

2023年7月中旬・午前11:35頃・くもり 

里山の中腹をトラバースする林道でスギの落葉が堆積している一角にキンバエの仲間(種名不詳)が群がっていました。 
臭い匂いもしたので、てっきり少量の獣糞で汚れているのかと思ったのですが、撮った写真を見直すとミミズの死骸が写っていました。 
暑い真夏の山行でよほどバテていたのか、観察が疎かになっていたようです。
死んだミミズが腐って変色し、周囲のスギ枯葉と同系色(茶色)になっていたので、紛れて気づかなかったのでしょう。


2024/04/02

死んだカラスの羽根に群がるシデムシの幼虫

2023年7月上旬・午後12:20頃・晴れ 

平地のスギ防風林の林床にタヌキなどが歩く獣道が形成されています。 
定点観察のためにホンドタヌキの溜め糞場phから溜め糞場wbcへ獣道を辿って歩いていると、腐りかけたカラスの死骸が獣道の真ん中に転がっていました。 
骨も肉もほとんど残ってなくて、数枚の黒い羽根だけでした。 
頭部が無いとカラスの種類(ハシブトガラスかハシボソガラスか)を見分けることが出来ません。 
おそらく死肉食性の野生動物が死んだカラスをどこかで見つけ、死骸を運んでいく途中で落とした羽根なのでしょう。
カラスも死肉食の掃除屋ですけど、仲間の死骸を共食いすることはあるのでしょうか?
 
通い慣れた獣道にある日突然現れたので、ここで死んだカラスが生物分解された訳ではありません。
スギ林をねぐらとするカラスが死んで、樹上で腐った死骸の一部が地面に落ちたという可能性も考えられます。

腐りかけたカラスの羽根に、黒くて三葉虫のような体型をしたシデムシ類の幼虫が群がっていました。 (種名不詳)
落枝を使って羽根を裏返してみてもシデムシ成虫の姿がなかったので、私には幼虫の種類を見分けられません。
近くの溜め糞場でよく見かけるクロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の幼虫ですかね?
他には微小なハエも来ていました。 

鬱蒼としたスギ林の中は日差しが遮られて薄暗いのに、かなり蒸し暑い日でした。 
写真の後で動画も撮ろうとしたのですけど、先を急ぐ用事があって焦っていた上にあまりの暑さで頭がボーッとしていた私は動画撮影が雑になってしまいました。
不用意に近づいたら、シデムシの幼虫は散り散りに素早く逃げてしまいました。


【アフィリエイト】
・舘野鴻『しでむし

全景写真の中央の上下に獣道が走る。

2023/12/26

ゴマダラカミキリばらばら死体の謎

2022年8月中旬

里山の尾根道でゴマダラカミキリAnoplophora malasiaca)の死骸が転がっていました。
頭部、胸部、腹部とバラバラにされた部位が点々と散らばっています。
鞘翅を開げたまま死んでいるのも不思議です。
復元すればほぼ全身が残っているので、野鳥や野生動物が捕食した食べ残しにしては変です。
自然死した死骸がアリによって解体されて巣に運ばれる途中なのでしょうか?
アリの大群は居なかったものの、写真をよく見直すと、頭部の死骸に2匹の黒アリ(種名不詳)が写っていました。
(右触角の先と大顎の下)

2023/12/18

草地でハタネズミの死骸を見つけた!

 

2023年5月上旬・午後15:10頃・晴れ 

川沿いの農道(堤防路)で見慣れない野ネズミが仰向けに死んでいました。 
トレイルカメラの映像でよく見ているアカネズミやヒメネズミに比べて顔つきが丸っこい印象です。 
調べてみると、ハタネズミMicrotus montebelli)のようです。 


平地(特に農地の近く)で野ネズミを見つけた場合、ハタネズミも考慮に入れる必要があると学びました。 

素人目には外傷が認められず、死因が不明です。 
殺鼠剤でも撒かれたのでしょうか? 
死後間もないらしく、死臭もありません。 

腐肉食の掃除屋は1匹のニクバエ科(種名不詳)しか来ていませんでした。 
現場では気づかなかったのですが、撮れた写真を拡大すると、死んだハタネズミの耳に小さなアリ(種名不詳)が数匹群がっていました。 (※追記参照)
拾った棒切れで死骸を裏返してみても、死骸の下にシデムシ類は潜り込んでいませんでした。 

死骸を採寸するために15cm定規を並べて置くと、ニクバエがそれに止まって前脚を擦り合わせました。(身繕い) 
ハタネズミ死骸を裏返して腹面を向けると黄色くて長い門歯が目立ちます。 
耳介が小さくて目立ちません。

このとき私は強行軍の後で疲労困憊していたので、ハタネズミの死骸をせっかく見つけたのに、写真と動画で記録しただけです。 
今思えば貴重な死骸を解剖して胃内容物を調べたり、頭骨標本を作成したりしたかったのですが、とても余力がありませんでした。

ハタネズミの死骸をそのまま放置するにしても、トレイルカメラを横に設置しておけば、カラスやトビなどのスカベンジャー(あるいは近所のネコ?)が 死骸を食べに来る様子を録画できたかもしれません。


※【追記】
飯島正広、土屋公幸 『リス・ネズミハンドブック』でハタネズミを調べた際に、次の記述を読んで震え上がりました。
耳介に着いているダニの1種であるツツガムシによってリケッチア症が媒介されるので注意が必要だ。(P45より引用)
当地はツツガムシ病という死に至る風土病がかつて猖獗を極めた最上川流域の某地区に近く、私が子供の頃はツツガムシ病について大人から散々脅かされてきたものです。
野ネズミの死骸を素手で触れてはいけません。

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