オニグモ♀の定点観察#2
2015年6月下旬・夜22:10頃
オニグモ♀(Araneus ventricosus)の観察を続けていると、食べかけの獲物(ヤガ科の蛾)を甑に残したまま、円網を畳み始めました。
網のあちこちが破れたり、小さな虫がたくさん付着したりするので、毎晩メンテナンス(張り替え)が必要になるのです。
コガネグモ科の仲間が円網を取り壊す様子を観察したのはこれが初めてで、感動しました。
前の晩に苦労して作り上げた作品を取り壊すのはあっという間でした。
下部を破網しながら最下部の枠糸に到達すると、甑からの引き糸を固定してから、甑に引き返します。
これで新しい縦糸が二重に張られたようです。
アナログ時計の文字盤で例えると、4時から7時の部分(全体の1/4弱)だけを壊しました
クモは甑の少し上で、上を向いたままなぜか小休止しています。
しばらくすると、オニグモ♀は甑で下向きに占座し、食べ残しの蛾を再び食べ始めました。
どうも教科書通りには進みません。(一気に円網全体を取り壊すはずなのに…?)
ジョロウグモのように日によって網の半分ずつ取り壊すのか?と、このときは不思議に思いました。
※ ただしジョロウグモは、左右半分ずつかわりばんこに巣を修復する。(『クモの巣図鑑』p45より)
もう満腹に近いので、これ以上不要な獲物が網にかかって網が大きく壊される(全壊)リスクを予防するために自ら壊したのか?などと想像を逞しくしました。
つづく→#3:♀の円網の近くで身繕いするオニグモ♂
2015年6月中旬
草地でモンシロチョウ(Pieris rapae)がムラサキツメクサ(=アカツメクサ)を訪花していました。
意外にも今まで撮ったことのない組み合わせだったので喜んで撮り始めたら、すぐに飛び去ってしまい残念。
オニグモ♀の定点観察#1
2015年6月下旬・夜21:55頃・気温20℃(地表で測定)
山麓に建てられたログハウスの軒下にオニグモ♀(Araneus ventricosus)が巨大な円網を店開きしていました。
垂直円網と言いつつも、実際は斜めに張られています。
腹面に垂体が見える成体♀は甑で何か虫を食事中でした。
獲物をラッピングした糸は獲物と一緒に体外消化され既に溶けています。
原形を留めていない獲物を同定するのは無理そうです。
円網の下半分に獲物がかかって破れた形跡があります。
他にも多数の細かい虫(蚊?)が網に付着していますが、放置されています。
近くに止まっていたヤガ科の蛾(写真を撮り忘れ、種名不明)を手掴みで捕獲し、オニグモ♀に給餌してみることにしました。
赤外線の暗視カメラで動画に撮りながら円網に生き餌を投げつけると、私のコントロールが悪くて画角の外に獲物が付着してしまいました。
クモはすぐに駆け寄り噛み付きましたが、画角の外で写っていません。
毒液を注入すると大量の捕帯で獲物をくるみ始めました(ラッピング)。
左右の第4歩脚で交互に捕帯を繰り出しながら、他の脚で獲物をくるくる回しています。
ラッピングを中断し腹端を下に向けると、白っぽい糞を2滴排泄しました。(@2:10)
獲物を捕帯で包み終えると網から外し、触肢で抱えて(咥えて)スルスルと甑に戻りました。(@3:21)
獲物を甑の直下に糸で固定します。
下向きに占座したクモは身繕いを始めました。
歩脚に付着した蛾の鱗粉を念入りに掃除しているようです。
新鮮な獲物(蛾)を手元に置いたまま、食べ残しの謎の包みから食餌を再開したのは意外でした。(@5:44)
しばらくすると漸く蛾に口を付け吸汁を始めました。(@6:30)
謎の食べ残しは捨てず網に置いたままです。
つづく→#2:円網を下半分だけ取り壊すオニグモ♀【蜘蛛:暗視映像】
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腹部腹面に垂体が見える。 |
2015年5月下旬
湿地帯でハクセキレイ(Motacilla alba lugens)が採食していました。
冒頭は水溜りで水浴や飲水していたのですが、撮り損ねました。
湿地帯を走り回り、虫を捕食しているようです。
最後はアシの茂みの陰に隠れてしまいました。
2015年6月中旬・夜22:50
山裾のとある木造建築物の板壁(外壁)に短翅のヤマトゴキブリ♀(Periplaneta japonica)が徘徊していました。
夜行性のゴキブリが光で逃げないように慌てて消灯し、赤外線の暗視動画に切り替えました。
野生のヤマトゴキブリ(在来種)はおっとりしていますね。
昨年飼育した経験があるので、私には馴染み深いゴキブリです。
▼関連記事
ヤマトゴキブリの飼育記録シリーズ
成虫♀ですけど、腹端に卵鞘をぶら下げていません。
飼育下で調べたい懸案事項が未だ幾つかあるので、採集するかちょっと悩みました。
その間に、手の届かない板壁の隙間に潜り込んでしまいました。
このときは未だよく分からなかったのですが、実は野外のとても意外な場所に居候していることが分かりました。
詳細はまた追々報告します。
▼関連記事コガタスズメバチの巣に居候するゴキブリ【暗視映像】
ノシメマダラメイガの飼育記録#14
2015年5月下旬
時期を少し遡りますが、飼育容器内でノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)成虫が活発に飛び回る様子を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
前回(シリーズ#1)は資料で読んだノシメマダラメイガの生態を考慮し(夜行性らしい)、薄暗い条件で撮ったので映像としてはいまいちでした。
今回は補助照明としてLEDリングライトを使い、容器の横から照らしました。
明るくしても飛んでくれることが分かりました。
飼育を続けた結果、照明に慣れてくれたのかもしれません。
スローモーションを見る限り、光源に向かって飛ぶ走光性は特に認められないようです。
互いに飛んだりぶつかったりした結果、連鎖反応で飛び立つことが多いです。
なるべく長く飛んでいるシーンを抜粋しました。
つづく→#15:営繭の微速度撮影
2015年6月中旬・夜23:27
夜中に水田地帯の農道で地面を歩いている蛍の光を見つけました。
初めは苔の上を歩いていたのですが※、赤外線の暗視カメラで動画に撮り始めるとスベリヒユと思われる雑草に登り始めました。
白色LEDを点灯しても強い発光が見えます。
草の天辺から飛び立とうと翅を広げるも、なぜか左の鞘翅が上手く開けないようです。
左翅をようやく開いても飛翔力が弱く、すぐに墜落してしまいます。
捕獲してみると大型のゲンジボタル(Luciola cruciata)で、発光している腹部の体節が1節であることから♀と判明。
※ ゲンジボタル♀は湿った苔に産卵するらしい。
『カラー自然シリーズ46:ホタルのくらし』p12によると、
交尾したホタルの♀は、川岸に近い、日陰の苔などを探し当てて、その上に卵を産みます。
卵を産むのは夜ですが、薄暗いところでは、昼間のこともあります。
また、『科学のアルバム:ホタル 光のひみつ』p10によると、
交尾まではあまり飛ばなかった(ゲンジボタルの)♀は、このころ(産卵期)はさかんに飛びます。
ところで、もし蛍♀が発光している動画を生きた♂に見せたら、♂はフラッシュ発光で求愛してくれるのですかね?
(動画のプレイバック実験)
2015年6月中旬・室温24℃・湿度57%
ネコハエトリ♀(Carrhotus xanthogramma)を幼体から飼育しています。
(亜成体♀だと思うのですが、真面目にステージを検討していません。)
単調な飼育環境でなるべく退屈しないようにトイレットペーパーの芯を入れておくと、キャットタワーのように登り降りしたり隠れ家にもなります。
糸や食べかすで汚れたら使い捨てします。
飼育容器内を掃除したついでにトイレットペーパーの芯を交換すると、容器側面の隙間で新たに造網を始めました。
徘徊性クモに属するハエトリグモの場合、獲物を取る粘着性の罠ではなく、自分が隠れる住居網です。
トイレットペーパーの芯を容器の中央からわざとずらして壁面に近づけて置けば、狙った場所に造網させることができます。
ネコハエトリが住居網を張る様子をプラスチック容器越しに微速度撮影してみました。
30倍速の早回し映像をご覧下さい。
この日は昼間にハエを1匹平らげた後なので、糸の分泌量は充分あるはずです。
背景がトイレットペーパー芯の黄土色なので、クモが紡ぐ白い糸が見えにくいですね。
次回やるとしたら、予め黒く塗っておこうと思います。
ときどき休憩して身繕いしています。
住居網は中で方向転換が可能な大きさです。
途中で住居網の外に出て一回りすると住居網の下側から潜り込みました。
住居網はトンネル状で、どちらからでも出入りできます。
以下の写真は翌日に撮影。
【おまけの映像】
↑同じ素材で20倍速映像
↑10倍速映像
※ これだけ自動色調補正を施したら、容器越しのやや不鮮明な映像が改善されました。
2015年6月中旬
この辺りでマイマイガ(Lymantria dispar japonica)幼虫が大量発生しており、毛虫(ブランコケムシ)が何頭も徘徊しています。
ムネアカオオアリ(Camponotus obscuripes)の巣に毛虫がたまたま近づいてしまったとき、巣口を守る門衛はどのような反応をするでしょうか?
もちろんマイマイガ幼虫は好蟻性昆虫ではありませんから、アリの巣に侵入しようとする意図は無く、単に食草や繭を紡ぐ場所を探し歩いているだけでしょう。
私の予想に反して意外にもムネアカオオアリの門衛は毛虫を積極的に(好戦的に)追い払おうとしませんでした。ムネアカオオアリは日本最大のアリなのに、マイマイガ幼虫の長い毛に阻まれて、全く攻撃できません。
警戒しつつも毛虫が立ち去るのを待っているだけでした。
同様のシーンを昼も夜も何度か観察することが出来ました。
(後半は赤外線の暗視カメラで撮影。)
面白がって毛虫が巣口の近くを通るように誘導したことも何回かあります。
もし毛虫ではない昆虫が相手なら、巣口への接近を許さず激しく撃退したのかな?
もしかすると私が思っていたほどムネアカオオアリは好戦的ではなく、無駄な争いはなるべく避けるのかもしれません。
外役に出た夜勤ワーカーが毛虫に遭遇しても襲って狩るどころか触角で触れた途端に慌てて回避しました。
やはり力関係でマイマイガ幼虫の方がムネアカオオアリよりも強いようです。
つまり、アリはマイマイガ幼虫を捕食する天敵として期待できそうにありません。
逆に言うと、マイマイガ幼虫の毛はアリから身を守る機能を充分に果たしています。
スズメバチ用の防護服のように、もしアリに対する防護服を開発する必要に迫られた場合、毛虫の毛がヒントになるかもしれません。
▼関連記事
マイマイガ(蛾)幼虫の毛の防護効果:ムネアカオオアリ♀を撃退
2015年6月下旬
午後から雷が鳴り出して、激しい土砂降りになりました。
激しい風雨の中スズメ(Passer montanus)の群れが水浴の代わりに豪雨の中を飛び回っています。
民家の塀に止まると身震いして濡れた羽根を水切りしています。
撮り始めた頃には雨が止みかけてしまいました。
いかにも梅雨時らしい光景でした。
2015年6月中旬・夜20:15頃
山際の農村部で夜道を光りながら飛んでいた蛍を目で追うと路上に着陸してくれました。
通りかかった車に轢かれずに済んだので、撮影開始。
暗闇の路上を発光しながら歩き回り、飛び立ちました。
それまで普通に飛んでいたのに、なぜか急に飛翔力が弱くなりました。
翅を広げて飛び立つも、すぐ近くに落ちてしまいます。
広げた後翅は薄い黒色でした。
夜行性で複眼が巨大なので、白色LEDを点灯すると相当眩しいはずです。
消灯して蛍の目には見えないはずの赤外線による暗視動画に切り替えても、行動は変わりませんでした(上手く飛び立てない)。
車のヘッドライトやビデオカメラの眩しい照明に当てられると、ショックから回復するのにしばらく時間がかかるのでしょうか?
撮影後は同定のため、ビニール袋で捕獲しました。
袋の中で強く光ったのはストレス(興奮状態)による刺激発光でしょうか。
以下は標本写真。
蛍のことは勉強し始めたばかりなのですけど、これはヒメボタル♂(Luciola parvula)ですよね?
体長が10mmぐらいありそうで、ヒメボタルにしては大型なのが気がかりです。
ヒメボタル♀は翅が退化して飛べないらしい。
ノシメマダラメイガの飼育記録#13
▼前回の記事
チョコの食べ過ぎで桃色になったノシメマダラメイガ(蛾)幼虫
2015年6月中旬
ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)の幼虫が育って終齢に達したのか、飼育容器の壁を登る個体が次々と現れました。
容器の垂直壁面(高さ8cm)の上端までやすやすと達し、蓋を開けたままでは脱出してしまいます。
容器の縁から上半身を大きく乗り出しているときに口から吐糸しているのが見えました。
少し滑落しかけましたが、命綱のおかげで無事でした。
プラスチック容器の蓋の裏に張り付いて徘徊している個体もいます。
過密や餌不足のために分散するのか?と初めは心配でした。
しかし、ノシメマダラメイガ用フェロモントラップの商品説明に次の一文を見つけました。
蛹になる前の終令幼虫は広範囲に分散する習性があり幼虫は穿孔能力が強く、食品包材を穿孔し、内部に侵入します。
それなら分散移動中の終齢幼虫を隔離すれば蛹化してくれるのか?と思い、実際に1匹隔離してみたのですが、なぜか上手く繭を紡いでくれませんでした。
そこで構わず密閉容器内で大量飼育を続けることにしました。
※ 映像中盤のプラスチック容器越しに接写したシーンのみ自動色調補正を施しています。
つづく→#14:成虫の飛翔【ハイスピード動画】
2015年6月中旬・午後18:43〜18:50
▼前回の記事
木造家屋に営巣したムネアカオオアリ♀
ムネアカオオアリ(Camponotus obscuripes)の巣を見つけたその日、暗くなるのを待って様子を観察してみました。
赤外線の暗視カメラで撮ると、巣口から門衛が警戒しています。
やがて慎重に外へ出て来ました。
昼間と同じルートで板壁の下端とコンクリート土台の境界に沿って横に移動して行きます。
帰巣する個体もいます。
ワーカー♀同士が出会うと触角で挨拶しています。
♪アリさんとアリさんがこっつんこ
結論として、日没後も昼間と全く変わらぬ様子で採餌行動に出かけていました。
アリは視覚にあまり頼らないので、外の明暗には関係なく一日中働けるのかもしれません。
もっと夜が更けた時間ならどうでしょうか?(アリは眠るのかな?)
2015年6月中旬
▼前回の記事
ゲンジボタル♂を見つけた!【暗視映像】
動画に撮った蛍の種類を同定するため、いつもポケットに忍ばせてあるビニール袋で捕獲しました。
袋の中で腹面を見せて発光していますが、暗闇ではAFのピントを合わせにくいです。
腹端2節が光っているので♂と判明。
赤外線の暗視動画に切り替えても発光は持続的で明るく撮れました。
この光り方は、蛍が身の危険を感じて緊張・興奮している刺激発光でしょう。
次に白色LEDを点灯して胸背の黒紋を見るとゲンジボタル♂(Luciola cruciata)と分かりました。
『カラー自然シリーズ46:ホタルのくらし』p7。によれば、
風が吹いてきて体にあたったり、歩いているときに、あしをすべらせて体が不安定になったりすると、急に強い光をだす光りかたを刺激発光と呼ぶらしい。
『日本の昆虫12:ゲンジボタル』p62によれば、
透明なビニール袋やプラスチック箱に発光するゲンジボタルの♂を入れておくと次々に他の個体が誘引される。
これが本当かどうか、次回に試してみます。
『生き物をめぐる4つの「なぜ」』p100-101によると、
(ホタルの)発光器には顆粒状の発光細胞の層と、光を反射する反射板とがあります。反射板は発光細胞のうしろにあり、尿酸塩の結晶をたくさん含んでいます。そして、その部分の皮膚(昆虫では表皮と言います)は色素がなくて透明になっています。