2010/12/11

ナガハリバエの一種が葉の甘露を舐める




2010年9月上旬

庭先でノブドウの葉を熱心に舐めている蝿がいました。
朝露などの水滴は見えないので、アブラムシが分泌した甘露が葉に付着しているのかもしれません。
尻を高く上げた姿勢で翅を広げたまま小刻みに震わせている行動が気になりました。
何か本種に特有のディスプレイ行動なのだろうか?
白い鱗板の下で小さな平均棍をピコピコ上下させているのも可愛いです。
朝だったので、飛び立つ前に体温を上げる準備運動なのかな?





同定してもらうため動画撮影後に蝿をビニール袋で採集しました。
蝿にしては動きがとろくてあっさり捕まえられました。
素人目にはヒョウタンハリバエと似ている気がしたのですが、「一寸のハエにも五分の大和魂BBS」にて写真鑑定してもらうと、ヤドリバエ科でおそらくナガハリバエ類の一種だろうとのことでした。



【追記】
ハエが乗っていた葉は、ヤブガラシではなくノブドウと訂正します。



オオフタオビドロバチ♀の塩分補給




2010年9月上旬

暑い夏に日傘をさしていたらオオフタオビドロバチ♀(Anterhynchium flavomarginatum)が飛来し、傘の柄に止まりました。
口吻を伸ばして頻りに舐め回しています。
プラスチック表面に付着した人の汗や皮脂に含まれるミネラルを摂取しているものと思われます。
私の体から直接汗を舐めに来ることはありませんでした。


【追記】
触角の先が真っ直ぐであることから、♀と判定しました。


ヒトスジシマカ♀の吸血と排泄





2010年9月中旬

山中でヤブ蚊に食われました。
右手人差し指の下の甲を刺して血を吸っています。
左手だけでカメラ操作しようとすると無理な体勢になって一苦労。
撮り始めから既に蚊の腹部は血でかなり膨らんでいました。
接写すると「く」の字に曲がった口吻の鞘と皮膚に刺した口針がよく見えます。
後脚を高く上げた姿勢で吸血しています。
よく見ると、吸血と同時に余分な水分をオシッコとして排泄しています。
成分献血とは逆ですね。


刺された手の拳を握り力を入れると口針が抜けなくなり蚊は逃げられなくなります。
後半はこの状態で蚊の全身像を接写しました。
背側の模様からヒトスジシマカ♀(Aedes (Stegomyia) albopictus)と確認。
力を抜いてやると慌てたように注射針を引き抜き逃げていきました。

エゾミドリシジミ♀の塩分補給




2010年9月中旬

午前中に里山を登っていたら地味なシジミチョウが砂利道の小石に止まり、翅を半開きにして日光浴していました。
ときどき飛んで移動しながら、路上で口吻を伸ばし土を舐めています。
翅表と翅裏を何とか両方撮れたのですが、図鑑で調べてもミドリシジミの仲間の♀としか絞り込めませんでした。






映像から切り出した写真を虫我像掲示板にて鑑定してもらったところ、アイノミドリシジミ♀だろうと教えて頂きました。
♀は凄い地味なんですね。

【追記】
YouTubeのコメント欄にてyeluexuanzhuさんよりアイノミドリシジミではなくエゾミドリシジミ♀(Favonius jezoensisだろうとご指摘頂きました。
私も100%の自信があったわけでありません。確かに翅裏の褐色味が強いことや、同じく裏の前翅中室端の影のよ­うな縦スジが目立つところ、後翅の白帯が下部で「Iv」より「w­」形に近いなどはアイノらしい点で迷うと思います。論理的ではありませんがまず動画冒頭の開翅場面、前翅のOA型の­紋様がアイノと言うよりFavonius属の♀、特にハヤシによ­く見られるそれと感じました。具体的には中室端部分の薄いオレンジが大きく、全体で蝶ネクタイ­様になります。後翅裏では、目立つ白帯が、これも論理的でなく申しわけありませ­んが、アイノだったらもっと自信を持ってスッキリと描かれたよう­になります。そして橙赤色の紋ですが、地とのコントラストが弱く、中に隙間が­あって(地色が見える)上部に黒のv字の線が入るのはアイノには­なく、ハヤシやエゾでよく見られることです。亜外縁、外側の細い日本の白帯が「コ」の字形になって分離してい­ることや、太い白帯が水中に箸を入れたように途中で「曲がる」と­いうより「ずれている」ことからハヤシでなくエゾとしました。全体的な印象ではFavonius属なのだが、細かい点でアイノ­を思わせるので弱ってしまう個体、と言えるでしょう。

ハナムグリの一種の幼虫による背面歩行




2010年9月下旬

農地横の舗装歩道で丸まると太った幼虫が徘徊していました。
よく見ると奇妙な移動法で、背面を下にした仰向け姿勢のまま蠕動しています。
背中に生えた剛毛と地面の摩擦力で前進します。
3対(6脚)の立派な胸脚があるのに決して歩行には使いません。
これはハナムグリの仲間の幼虫に特有な運動だそうです。
『ファーブル昆虫記』で読んで知っていましたが、実物をじっくり見るのは初めてかも。


体の向きを変えてやり、うつ伏せにすると腹面の胸脚を使って歩くようになるでしょうか?
しばらく擬死した後、寝返りを打って仰向けになり、頑固に背面歩行を再開します。
しかし腹面にも剛毛が生えているので、単純な毛の有無では説明できません。
そもそも腹面を下にすると重心が不安定になるようで、すぐに転がってしまいます。
胸脚が完全に退化しないのも不思議です。
面白がって実験を繰り返すと、疲れてしまったようです。
撮影後は車に轢かれないよう、道端の草叢に放ってやりました。
次回は飼育に挑戦してみようかな。
体重の軽い若齢幼虫も背面歩行するのだろうか?
発達した大顎も印象的でした。
下腹部が黒いのは腸に糞が詰まっているためだろう。




もし種類を見分けられる方がいらっしゃいましたら、是非教えて下さい。

【追記】
『日本動物大百科10昆虫Ⅲ』によると、

  • 甲虫の幼虫には、チョウやガ、あるいはハバチ類の幼虫に見られるような腹脚はない。頼れるのは3対の胸脚と腹部末端の吸盤だけである。(p90)
  • ハナムグリ類は地上での幼虫の移動法も個性的で、体を仰向けにして、環節を波状に動かして前進する。あしは歩行にではなく、終齢幼虫が蛹室をつくる際に使用されるという。(p114)
ハナムグリの幼虫の脚は小さくて、歩くときには使われません。脚には、跗節という部分しかなく、爪もなくなっています。(『ファーブル写真昆虫記6:リラの花祭りのお客』p42より)



【追記2】
奥本大三郎 訳『完訳ファーブル昆虫記 第8巻上』によれば、
・(狭い)ガラス管の中を移動するハナムグリの幼虫。腹部を下にした”正常な”姿勢で歩いている。 (p33より引用)
・ハナムグリの幼虫が奇妙な歩き方をして我々を驚かせるのは、こちらがこの虫の本来の棲息環境の外で観察しているからにすぎない。 (p34より引用)



【追記3】
林長閑『甲虫の生活―幼虫のくらしをさぐる 』という本を読むと、次のように書いてありました。
 地上に取り出したハナムグリ類の幼虫は、腹を上にして地面を這うことで知られている。各体節の背面に帯状に生じた刺毛が、足の爪と同じように地面にひっかかって体の前進を助けている。重い体を足で支える必要がなく、きわめて合理的な移動法である。この幼虫の足を観察すると、跗節とよばれる部分を残して、すでに爪が退化してなくなっていた。(p138より引用)

ダンドボロギクとベニバナボロギクの花蜜を吸うオオセイボウ♀






2010年9月中旬

青い金属光沢で宝石よりも美しく輝く蜂が林道でキク科の花から花へと忙しなく飛びながら蜜を吸っていました。
オオセイボウ本土亜種♀(Stilbum cyanurum pacificum)を撮れたのは初めて。
非常に興奮しました。
人の気配に敏感で逃げてしまうというよりも、個々の花の蜜量が少ないので次々に訪花せざるを得ないという印象でした。







撮影後に蜂を運良く採集できたのですが、固く丸まった状態で死後硬直した標本はこじ開けるのに苦労しました。
ネット検索で調べた標本軟化法を試したりしたのですが、結局はピンセットで力任せにこじ開けました。
産卵管はぺらぺらの柔らかい素材で、刺すことはないそうです。


竹筒ハチ図鑑サイト」によると、本種はエントツドロバチやスズバチなどの巣に労働寄生するそうです。
確かにこの日も林道を歩きながらスズバチを何匹も見かけたので、主な寄主はこちらなのだろう。
アルマジロを思わせるこの堅固な防御姿勢は寄主との喧嘩に備えたものらしい。
※ こちらのブログでスズバチの巣に産卵するオオセイボウの見事な写真が掲載されています。


 一方、蜂が来ていた花について調べるとダンドボロギクおよびベニバナボロギクと判明。
てっきり連日の猛暑で蜂の蜜源が不足し、窮した蜂がつぼみ(蕾)から強引に吸蜜しようとしているのかと早合点しました。
しかしこれはこれで立派な花なのだそうです。
山火事や森林伐採後の先駆植物として有名らしい。
確かにこの林道は最近伐採されて丸裸になった山肌を貫いており、納得しました。
咲き終えた花から白い綿毛の付いた種子が大量に風で飛ばされていました。


【追記】
ダンドボロギクは覚えにくい変な名前の植物だなー(ダンドボロとは何ぞや?)と思っていたら、語源としてはダンド・ボロ・ギクと音節を区切るのだそうです。
昭和初期に侵入した北米原産のダンドボロギク。和名は最初の発見地、愛知県段戸山から。(朝日選書『緑の侵入者たち:帰化植物のはなし』p18より)

キタキチョウの訪花@アメリカセンダングサ





2010年9月下旬

道端の草むらでアメリカセンダングサの花からキタキチョウEurema mandarina mandarinaが蜜を吸っていました。
翅裏の模様は細いペンで落書きしたような雑な感じが何とも言えない味わいがあります。
常に翅を閉じて止まっているので、翅表は見えません。

コナラの樹液を吸うクロヒカゲ




2010年9月中旬

コナラの樹液を占領していたオオスズメバチが飛び去るとクロヒカゲLethe dianaがやって来ました。
基本的に羽を立てた(閉じた)姿勢ですが、樹液目当てのハエが近づくと羽をパッと開いて脅します。
しばらく樹液を吸っていたものの、チャイロスズメバチが戻ると追い払われました。






チャイロスズメバチvsオオスズメバチ:樹液酒場での序列





2010年9月中旬

オオスズメバチVespa mandarinia japonica)が樹液を吸っているコナラの幹にはチャイロスズメバチVespa dybowskii)も来て樹皮をかじっています。
後からもう一匹飛来したのでチャイロは少なくとも2匹います。
同じスズメバチ科でも二種の体格差は歴然としています。
力関係でもオオスズメバチには負けるようで、樹液の一番よく出る穴はオオスズメバチが占領し、チャイロスズメバチは二番手、三番手の樹液ポイントに甘んじています。
離れた位置で吸汁しているので平和ですが、ときどきオオスズメバチが威嚇するように飛んでいくとチャイロスズメバチは慌てて退散します。
チャイロも身の程をわきまえているのか、喧嘩らしい喧嘩にはなりません。
横取りした場所もオオスズメバチにとっては樹液の出が悪かったのか、元の場所に戻りました。
ハエやムネアカオオアリCamponotus obscuripesも隙あらば樹液のおこぼれを狙っています。

≪追記≫
『本能の進化:蜂の比較習性学的研究』 岩田久二雄・眞野書店 p318 によると、
樹液の出る場所での、席次争いで強いものから弱いものへの順列は、オオチャイロ>コガタ>モン>ヒメ(スズメバチ)

コナラ樹液酒場のオオスズメバチ






2010年9月中旬

コナラの樹液酒場をオオスズメバチVespa mandarinia japonica )が占有していました。
同じ幹でもここが最高の樹液ポイント(一等地)らしく、常に少なくとも一匹が占拠しています。
ハエやアリが甘い汁を吸いに寄ってくると五月蝿そうに大顎で攻撃し追い払います。
樹液が滲む穴は元々カミキリムシの産卵跡と思われます(地上約120cm)。
ここにオオスズメバチは頭を突っ込んで大顎で更に樹皮をかじっています。
頻りに身繕いするのは、脚が樹液でベトベトするのだろうか。
別のスズメバチが飛来すると警戒するものの、同じ巣の仲間と分かるとキスで挨拶します(口移しによる栄養交換)。
オオスズメバチは「巣内以外の餌場でもこのような栄養交換がしばしばみられる」らしい。
(『日本の真社会性ハチ:全種・全亜種生態図鑑』 信濃毎日新聞社 p90 より)


葉裏に作られたムモンホソアシナガバチの巣




2010年9月中旬

ツバキの幼木の葉裏(地上45cm)にムモンホソアシナガバチParapolybia indica)が営巣していました。
レンズに対して一触即発の威嚇姿勢を取るので巣盤の様子をじっくり撮れませんでした。
空腹の♂が♀に餌をねだっています。
♀は最大4匹いました。
今季はこれで二つ目の発見です。
周囲は雑木林で餌などは豊富にありそうな環境なのにかなり小型の巣です。
おそらく営巣途中で何らかの事情から引っ越したものと思われます。
葉裏に作られた本種の巣を見るのは初めて。


≪追記≫
コロニーが解散した頃を見計らって(10月下旬)再訪し巣を採集すると、最終的な育房数は30室でした。

エントツドロバチの貯食活動




2010年9月中旬・気温28℃

木の手摺りに昔クマバチが穿坑した巣穴を再利用して(借坑性)あちこちにエントツドロバチOrancistrocerus drewseni)の巣があり、集団営巣地の様相を呈しています。
材の下面に開いた穴に泥で作られた煙突状の入り口が覗いています。
特徴的なこの煙突は巣が完成すると取り払われます。
泥玉を運んだり芋虫を運搬したり、蜂が何匹も出入りしているのでどうしても目移りしてしまいます。
今回は初めて見る貯食行動の観察に集中しました。
つまり、一つの巣に注目して蜂の活動を追うのではなく、あちこちの巣で獲物を搬入する蜂(複数個体)の映像をまとめました。


材の側面が朽ちて中が剥き出しになっている部分に先程フタスジスズバチが侵入して荒らしていたのですが、巣穴の主が獲物を抱え戻ってきました。
留守中に侵入していたヨツボシオオアリが入れ替わるように慌てて外に出てきました。
横向きの煙突の手前にある控え室のような空間に数匹の芋虫が無造作に置かれていて(捨てられていて)、これを蟻が狙っています。
やがて中からエントツドロバチが一匹の麻痺した芋虫の胴体中央を咥え巣の外に捨てました。
狩りモードのはずなのに自分の貯食物として煙突内に搬入しないのが不思議。
麻酔手術に失敗した芋虫で腐ったりカビが生えたりしたのだろうか。
それとも、この木の手摺りに外から産卵管を盛んに突き立てて回っているシリアゲコバチに寄生産卵された芋虫を見抜いて捨てたのだろうか。
断片的な観察ではよく分かりません。


獲物は褐色の芋虫で、蜂の体長より少し短いようです。
メイガ、ハマキガ、キバガ、ヤガなどの蛾の幼虫を狩るそうです。
近くの雑木林に狩場があるのだろう。
毒針で麻酔した芋虫の尾端付近を咥えて背に跨るように(腹合わせ?)抱えて空中輸送します。
従って芋虫の頭部は必ず蜂と逆を向いています。
蜂は手摺りに着地すると材の下面を逆さまに歩いて煙突に搬入します。


本種は亜社会性のドロバチで母♀が育房内の幼虫の成長に合わせるように餌を少しずつ運ぶそうです(随時給餌)。
他のドロバチよりも産卵数が少なく営巣のペースが緩慢なので身近な普通種なのに定点観察しても今まで貯食行動を見れませんでした。
今回生息密度の高い営巣地を発見したことで念願の貯食行動を繰り返し見れて大満足。
来季はここに竹筒トラップを設置したり蜂を個体識別したりすれば随時給食の様子も調べられそうです。


≪参考≫ 『ハチの博物誌』 青土社






どなたかこの芋虫の名前が分かる方がいらっしゃいましたら是非教えて下さい。
どの科に属するか、だけでも助かります。

他巣を荒らすフタスジスズバチ♀




2010年9月中旬

神社の本堂回廊で木の手摺りの下面に丸い穴が幾つも並んでいます。
昔クマバチが穿坑した坑道を借坑性のドロバチが毎年再利用しています。
入口から泥製の煙突が覗いているので、現在はエントツドロバチOrancistrocerus drewseni)が営巣しているようです。
そこへ同じく借坑性のフタスジスズバチ♀(ヤマトフタスジスズバチ;Discoelius japonicus)が飛来しました。
自分の営巣地を探索しているようです。
主のエントツドロバチが留守の間に巣穴にこそこそ潜り込んでは中の様子を物色していました。
 材の一部分で側面が朽ちており、水平方向に延びた中の坑道が剥き出しになっています。
ここも右奥にエントツドロバチの泥巣の入り口があります。
侵入したフタスジスズバチは巣穴の掃除を始めたようで、中から一匹の芋虫を咥えると数回に分けて引きずり出して外に捨てました。
この芋虫はエントツドロバチに狩られ麻痺状態で運ばれたものと思われます。
結局フタスジスズバチはここがあまり気に入らなかった様子。
身繕いしてから飛び去りました。


芋虫を巣穴から捨てるという謎の行動にかなり戸惑いましたが、前後の行動や周囲の状況から総合してこのように解釈しました。
ここがフタスジスズバチ自身の巣である可能性も初めはあったので混乱しました。
貯食作業中にカビ感染した芋虫を見つけて捨てたのだろうか。
あるいは、この木の手摺りに外から産卵管を盛んに突き立てて回っているシリアゲコバチに寄生産卵された芋虫を見抜いて捨てたのだろうか、などと色々と考えました。
その後、どれもエントツドロバチの巣であることに気づきました。
資料で調べてみると、二種の体長はフタスジスズバチ<エントツドロバチですが、狩猟対象はメイガ、ハマキガ、キバガ、ヤガなどの幼虫とされていて共通でした。
エントツドロバチの巣から貯食物を横取りするつもりなのか(労働寄生)と思いきや、惜しげもなく芋虫を外に捨てました。(※追記2参照)
どうも巣の乗っ取り(再利用)が目的だったようで、巣坑を少し掃除していたのでしょう。
競合種への嫌がらせかもしれません。
留守中に侵入され貯食物を勝手に捨てられたエントツドロバチは全く災難です。


【追記】
岩田久二雄『自然観察者の手記2』という古典的な名著でフカイドロバチとオオフタオビドロバチの習性を記した章を読んでいたら、他の可能性もあることに気づかされました。
(労働寄生者のハエに対抗する手段として)蜂は掃き出しを行うのであろう。この方法は空き巣狙いだけではなく、自分の産んだ卵も、せっかく狩り集めた獲物も、すべてを犠牲にして、独房内に存在する一切合財を巣外にとり捨ててしまうのである。(中略)このような習性は、多くの鳥類が、敵にのぞきこまれたり手を触れられたりした巣から、卵を掃き捨てる行動によく似ている。 (p197-198より引用)



【追記2】
岩田久二雄『自然観察者の手記(3)』第五部の「葉巻き虫を狩るフタスジスズバチ」と題した章を読んでみたら、盗み寄生(労働寄生)の事例が報告されていました。
竹すだれに15cm離れて2匹のフタスジスズバチ♀が営巣しており、一方の♀が他方の巣に侵入して貯食していたアオムシをまんまと盗み出して自分の巣に搬入したのだそうです(p47より)。




どなたか、この芋虫の名前が分かりましたら是非教えて下さい。
科を絞り込めるだけでも助かります。
同定のためにこの芋虫を採集したかったのですが、落ちた際にうまく受け止められず、残念ながら下の落ち葉に紛れてしまいました。




ハチに擬態したシロスジナガハナアブ♀の身繕い





2010年9月中旬


山地の道端でお地蔵さんのお供え物の横に止まっていた虻です。
両手を擦り合わせ、顔を拭います。
後脚で腹部背面も掻いています。
黄色と黒の縞模様でいかにも危険そうな信号を全身から発しており、まさに「蜂の威を借る虻」です。



一寸のハエにも五分の大和魂BBS」にて問い合わせたところ、シロスジナガハナアブ♀Milesia undulataとご教示頂きました。
本種のベーツ擬態は外見だけにとどまらず、捕まえると尾端を押し付けるようにしてまるでハチが刺すような真似をするのだそうです。
ブラフにしてもそこまで徹底するとは天晴。
今度は是非それを試してみよう。
飛んでいる姿はキイロスズメバチやキアシナガバチにそっくりだったように記憶しています。


【追記】
石井誠『昆虫のすごい瞬間図鑑:一度は見ておきたい!公園や雑木林で探せる命の躍動シーン』という本を眺めていたら、まさにこの昆虫を撮影した見事な生態写真がp108に掲載されていました。
ベイツ型擬態の見事な例として、モデルと考えられるホソアシナガバチの写真と並べて挙げられています。
しかし、キャプションの「フトハチモドキバエ」はシロスジナガハナアブの誤同定だと思います。

泥酔したモンスズメバチ






2010年9月下旬

道端に散乱した熟柿の横でモンスズメバチVespa crabro flavofasciata)が仰向けにひっくり返っていました。
脚が痙攣­しており、全く歩けません。
特に外傷は認められないので、近くで吸汁しているコガタス­ズメバチと争って負傷したのではなく、発酵した果汁を飲み過ぎて泥酔したものと思われ­ます。
(実際の吸汁シーンを見ていないので、寿命でただ弱っているだけかも。)
保護し­て経過観察し、酔いが醒めて元気になることを確認しようか迷いました。
しかしスズメバチを安全に持­ち帰ることのできる採集容器をこの日は持参してなかったので断念。


単眼の周囲が黒く、­胸部の小楯板が茶褐色である点がモンスズメバチの特徴です。
触角および腹部の体節をカ­ウントすると♀と判明。
一円玉と比較して割り出した体長~23mmから判断してワーカ­ーだと思います。
「泣きっ面の蜂」とはこんな感じでしょうか。

熟柿の果汁を舐めるコガタスズメバチ♀





2010年9月下旬

道端にカキノキが生えており、秋も深まると熟した果実がどんどん落ちて路上に散乱します。
熟柿の発酵した芳香が辺りに漂います。
甘い果汁を目当てにスズメバチが集まります。
これはコガタスズメバチ♀(Vespa analis insuralis)です。
正面から顔を見ると頭楯の下端の突起が3つあるのが特徴です。
この時期は新女王かもしれませんが、体長を採寸していないので不明です。
キイロスズメバチも一匹飛来していたのですけど、残念ながら撮り損ねました。
近くにモンスズメバチも来ていました。(つづく)

オオスズメバチの共食い




2010年9月中旬

里山で砂利道を下っているとオオスズメバチVespa mandarinia japonica)のワーカー♀が飛来。
路上の汚物を目がけて着陸し、先客のハエを追い散らしました。
謎の黒い物体はタール状なので一瞬獣糞かと思いましたが、どうやら車に轢かれた虫の内蔵みたいです。
肉団子を作りかけウロウロしていた蜂は、近くに瀕死のオオスズメバチが転がっていることに気づきました。
先程の腹わたはこの被害者のもののようです。
既に先客のアリが獲物に群がり巣に運んでいます。
二匹のオオスズメバチは同じぐらいの体長ですが、同じ巣の仲間なのか不明です。
驚いたことに、いきなり死骸の首に噛みついて力任せに引きずり、ねじ切るように断頭しました。
その場で食肉処理(咀嚼)することなく生首を巣に持ち去りました。
スズメバチの共食い行動は初めて見ました。
まさか切腹状態でもがき苦しみつつ蟻に攻撃される同胞を哀れんで介錯してやったのだろうか。
首無しの死骸をよく見ると未だ生きており、虫の息で脚が痙攣していました。
腹端近くに損傷があり、腹部側面が縦に裂けています。
虫同士の喧嘩ではあり得ない致命的な外傷です。
検死の第一歩として被害者の性別を知りたくても、肝心の触角の形状をもはや見れません(首実検)。
しかし毒針が無く腹部の体節が7つあるので♂です※。
交尾後の♂なのだろうか。
ミツバチとは違い、確かスズメバチは交尾に成功した♂も腹部が破裂して絶命することはないはずです。
オオスズメバチの交尾は巣のすぐ近くで行われるそうです。
近くに黒いタール状の内臓が地面に残されています。
ここが轢き逃げ(ロードキル)の現場で、動けなくなった被害者をアリが寄って集って引きずって来たのだろうと推理しました。
しかし元気な蜂なら車が通っても逃げるはずですから、元々弱って行き倒れていたのだろう(寿命?)。


死骸を運搬中の蟻はクロヤマアリのようです。
死骸のぱっくり開いた腹端に重点的に齧り付いています。
翅を咥えて引っ張ろうとする働き蟻もいます。


現場検証中に再びオオスズメバチ♀が低空飛行でやって来ました。
目の前で誰何するようにホバリングされ焦りましたが、身を固くしてやり過ごしました。
殺人犯(ホシ)はなぜか現場に戻って来ると言いますが、先程頭部を持ち去った♀と同一個体かどうか不明です。
さきほど生首を咥えて飛び去った際に場所を覚えるための定位飛行は行わなかったので、もう戻ってこないだろうと油断していました。
オオスズメバチ♀は死骸を少しだけ引きずるも、すぐに餌として興味を失い飛び去りました。
更に10分ほど現場で待ちましたが、もう蜂は戻って来ませんでした。
なかなか興味深い猟奇的な事件でした。


※腹部体節の数え方にあまり自信なかったのですが、蜂屋さんに見てもらって♂とのお墨付きを頂きました。

【追記】
『スズメバチの科学』p119-121によれば、

(オオスズメバチは繁殖期に巣口付近で新女王蜂と雄蜂が交尾する時間帯になると)働き蜂の外役活動は減り、飛び交う雄蜂に対して攻撃的になる。弱い雄蜂は、働き蜂に捕まり翅を噛み切られたり、毒針で刺し殺されるほどである。殺された雄蜂は肉だんごにされ、巣内の幼虫の餌となる。



アリを捕食吸汁するヤニサシガメの幼虫



2010年9月下旬

ヤニサシガメVelinus nodipes)がエノコログサの茎に止まっていました。
何やら食事中でしたが、そのままでは撮りにくいので草ごと抜いてみました。
無翅なので未だ幼虫です。
アリの頭部に口吻を突き刺して体液を吸っています。
採寸する代わりに方眼紙上に載せてみると、獲物を串刺しにしたまま足早に方眼紙の外へ逃げていきました。

それにしても、アリのような動きの速い虫をどうやって狩るのだろうか。
待ち伏せ型かな?
アリの反撃を完璧に封じるような理想的な位置(脳天)を背側から口針で貫いています。
まさに一撃必殺。
いつか狩りの瞬間を観察してみたいものです。
獲物を仕留めた後で吸汁のため頭部へ刺し直したのかもしれません。
どなたかこのアリの名前が分かる方がいらっしゃいましたら教えて下さい。


【追記】
生物系ネットニュースで衝撃的な記事を読みました。
Soley, Fernando G., and Marie E. Herberstein. "Assassin bugs enhance prey capture with a sticky resin." Biology Letters 19.4 (2023): 20220608.

粘着性の樹脂を身にまとうサシガメは、その粘着効果で捕食効率を高めているのだそうです。 

コロンブスの卵のようなシンプルかつ斬新なアイデアで、自分で思いつかなかったことが悔しい…。

ウススジハエトリ♂(蜘蛛)




2010年9月下旬

渓流の横で朝露にしっとり濡れたウワバミソウの葉上をハエトリグモが徘徊していました。
触肢が膨らんでいるので♂。
主眼が赤く見えます。
正面から接写すると、第一脚腿節の前面にある黒い線が印象的でした。
ハエトリグモの求愛や闘争威嚇において♂は第一脚を高く振り上げて誇示することが多いので、いかにも相手に見てくれと言わんばかりの位置にある黒線が気になりました。
求愛ディスプレーで♀の目を引くための模様だろうか。
捕獲すると体長6mm。



闇クモ画像掲示板にて写真鑑定してもらうと、ウススジハエトリ♂(Yaginumaella striatipes)とご教示頂きました。
♀にはこの黒線が無く腕白です。
しかし私の予想(思いつき)に反して、この黒線は本種♂だけに見られる模様ではないそうです。


アメリカセンダングサの花蜜を吸うオオマルハナバチ♀




2010年9月下旬

道端の草むらでオオマルハナバチBombus hypocrita)のワーカー♀がアメリカセンダングサに訪花していました。
後脚の花粉籠は空なので、おそらく花粉集めではなく吸蜜だと思います。
オオマルハナバチは舌が短いため、蜜源の浅い花を訪れる傾向があるそうです。

旋回が止まらないヒゲクモバチ♀



2010年9月下旬

山地の路上でおかしな動きをする蜂を発見。
クモバチ科(旧ベッコウバチ科)の一種♀だと思います。
飛べずに徘徊するだけですが、ひたすらその場でグルグルと右旋回しています。
ときどき立ち止まり身繕いしたり、まっすぐ歩くこともありますが、すぐに旋回運動に戻ってしまいます。
特に目立った外傷は見られないので、神経系の障害を疑いました。

  • 熱射病ではないはず。この日は曇り空で路面に触れてもそれほど熱くなかった(気温未測定)。 
  • 老化による異常行動? 
  • 農薬(殺虫剤)による神経症状? 腹部背面に何か白っぽい付着物あり。 
  • 平衡感覚の失調? 触角を頻りに拭っている。 
  • 獲物のクモを狩ろうとして返り討ちに合い、毒牙で神経毒を注入された? 
  • 発酵した果汁や樹液などからアルコールを摂取して酩酊? 


答えは分からなくてもあれこれ推理するのは楽しいものです。
とりあえず蜂を同定してもらうため、撮影後に採集して持ち帰りました。






蜂類情報交換BBSにて問い合わせたところ、ヒゲクモバチ属の一種かもしれないと教えて頂きました。
生前の異常行動については、特に左の触角を気にしているので何か不快な匂いの物質が付いたのかもしれない、とのコメントも頂きました。
いつか蜂を個体識別のため標識するついでに油性ペンで片方の触角に塗ってみて同様の症状が再現されるかどうか確かめてみます。


2010/12/10

キノコを食すヤスデ【名前を教えて】



2010年9月下旬

キノコの美味しい季節になりました。

里山で遊歩道の丸太の切り株に生えたキノコにヤスデの仲間が2匹集まっていました。

口元を接写すると夢中でキノコをかじっています。

頭部には触角があり、その後ろには複眼があります。

既にキノコは原形を留めていません。

一番下に写し込んだ硬貨は一円玉です。




↓動画です。




このヤスデやキノコの名前をご存知の方がいらしたら是非教えて下さい。
科名だけでも助かります。



test

YouTubeで公開している動画をブログでも紹介してみる。
こちらは日本語のみ。
皆がすなるブログといふものをΣもしてみんとてするなり。


トラックバックの練習をしてみます。

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