2013/10/26

ギンヤンマ♂♀の連結産卵



2013年8月中旬

池の岸辺に生えたガマの葉にギンヤンマAnax parthenope)の連結ペアが止まり、産卵していました。
憧れのギンヤンマを初めて見て興奮しました。

♀は腹端を水に浸すだけで、全身を水没させることはありません。

ギンヤンマの成虫は交尾後にオスとメスが連結したまま、あるいは、単独で水面に突き出た水草などに止まる。メスは腹部先端にある産卵管を植物の組織内に突き刺し、1粒ずつ産卵する。(wikipediaより)

ギンヤンマのカップルが連結したまま少し飛んで産卵場所を移動したので、私も水際まで近づき望遠で狙います。
やや側面のアングルになり、胸部側面に黒条が無いのでクロスジギンヤンマは除外されます。

実は池の上をパトロールする別個体の♂がいたのですけど、その飛翔シーンは速過ぎて撮れませんでした。
産卵中にあぶれ♂が接近すると、翅を少し持ち上げかすかに震わせるだけで撃退しました。
強引に♀を強奪しないところが紳士的だなーと思いました。
それでもあぶれ♂は何度もやって来たことが、カップルの動きで分かります。
♂は交尾した♀の首根っこを掴んでおけばライバル♂に寝取られる心配はないのでしょう。(交尾後ガード)
ギンヤンマの♂は性成熟すると池で縄張り争いするらしい。(『カラー自然シリーズ15:ギンヤンマ』より)
縄張りの広さは長さ30m、幅10mにおよぶことがあるとのこと。



【追記】
図鑑『ネイチャーガイド:日本のトンボ』でギンヤンマを参照すると、
交尾を終えたペアは連結態のまま水面に飛来し、浮葉植物の葉や浮いた枯死植物などに産卵する。♀単独での産卵も行う。 (p207より引用)



▼関連記事(6年後に撮影)
池で単独産卵するギンヤンマ♀


ギンヤンマ♂♀@連結産卵。♀♂ともに脚の体節が赤褐色
ギンヤンマ♂♀@連結産卵


柳の樹液を舐めるシロテンハナムグリ



2013年8月中旬

柳の樹液酒場に群がるシロテンハナムグリProtaetia orientalis submarumorea)をじっくり動画に撮ってみました。
発酵して白く泡立つ樹液を吸汁する口器の動きを接写してみます。
相席になった客同士で樹液を巡りときどき小競り合いが勃発します。
辺りに漂う樹液の匂いに誘われ、重低音の羽音を響かせながら続々と樹液酒場に飛来します。
前翅(鞘翅)を閉じたまま後翅だけで飛ぶのですけど、ハイスピード動画に撮りたかったです。




ノブドウとヤブガラシに訪花吸蜜するチャイロスズメバチ♀



2013年8月下旬

用水路脇にヤブガラシノブドウが絡み合うように生い茂ったマント群落でチャイロスズメバチのワーカー♀が花蜜を吸いに来ていました。

吸蜜の後は身繕いしてから飛び去りました。



2013/10/25

アリとアブラムシ、ゴイシシジミ幼虫の関係



2013年8月中旬

前回の記事はこちら→「ゴイシシジミ幼虫vs兵隊アブラムシ(ササコナフキツノアブラムシ)

笹の葉裏(アズマネザサ?)に密集するササコナフキツノアブラムシCeratovacuna japonica)のコロニーとそれを捕食するゴイシシジミTaraka hamada)幼虫を観察していると、クロアリのワーカーが一匹登って来ました。
クロヤマアリ♀(Formica japonica)だと思うのですがどうでしょう?(ハヤシクロヤマアリとの見分けがあまり自信ありません)

アブラムシと蟻と言えば共生関係を結んでいる話が有名ですけど、ここではどうでしょうか?
蟻がアブラムシのボディーガードとして振る舞うのかどうか、興味があります。(※追記2参照)

コロニーを徘徊する蟻がアブラムシの尻から甘露を舐める行動ははっきり撮れませんでした。(やってない気がします。)
また、蟻がゴイシシジミ幼虫と出会っても触角でタッピングするだけで素通りし、攻撃したりコロニーから排除したりしませんでした。
共生関係ではないのか、ゴイシシジミ幼虫の化学擬態が完璧なのか、どちらでしょう?


【追記】
『日本動物大百科9昆虫II』p43によれば、
ゴイシシジミの幼虫も背部蜜腺をもたないので、おそらくアリにとって利益はない。アブラムシなどの同翅類はアリとの共生関係をむすんでいるものが多く、そのなかに肉食性を獲得したゴイシシジミが割り込んでいったと考えられる。(中略)成長するとアブラムシが分泌するロウ状物質を体表に付着させるのは、天敵の攻撃から身を守るためであろう。


【追記2】
『チョウのはなしII』p64(第10章:アブラムシ牧場へのなぐりこみ)によると、
(ゴイシシジミが)捕食するササコナフキツノアブラムシにはアリがきません。したがって、この群落は牧場ではなく、野性の天国です。アリの保護がないのですから、アブラムシは一方的に捕食される立場となります。ところがどっこい、(以下略)


つづく



ムラサキツメクサの花で交尾するトモンハナバチ♀♂【ハイスピード動画】



2013年8月中旬

ムラサキツメクサの花で交尾中のトモンハナバチ♀♂(Anthidium septemspinosum)を240-fpsのハイスピード動画に撮りました。
今回のペアは珍しく♀の方から交尾器の連結を外して先に飛び去りました。

近くのクサフジ群落で訪花中に交尾するペアはこれまでよく見かけましたが、それ以外の花で交尾するのは初見です。
有望な蜜源であったクサフジの花が散ったので、♀がムラサキツメクサによく訪花するようになったのだと思います。

関連記事→「トモンハナバチの交尾@クサフジ【HD動画&ハイスピード動画】



ところで前日に近くのヨモギ群落でトモンハナバチ♀が巣材を集めていました。
ヨモギ葉裏に密生した白い産毛を掻き集め、丸めた巣材を巣に持ち帰りました。
まさに『ファーブル昆虫記』に書いてあった行動を目の当たりにして感動しました。
生憎カメラのバッテリーが切れており、撮影できませんでした。
痛恨のミスを取り返そうとこの夏頑張って通ったのですけど、残念ながら二度と目にすることはありませんでした。
来年以降の課題です。
竹筒トラップに営巣するそうなので、設置してみようと思います。



【追記】
小松貴『虫のすみか―生きざまは巣にあらわれる (BERET SCIENCE)』p48によると、
初夏に涼しい地域のヨモギが繁茂する草原へ行くと、トモンハナバチという美しいハチを見ることがあります。彼らは巣の仕切り材として、ヨモギの葉裏に生える綿毛をかき集める習性があるため、ヨモギが多くない場所では見られません。



2013/10/24

柳の樹液に来たシロテンハナムグリとコムラサキ♂【微速度撮影】



2013年8月中旬

水辺に生えた柳の潅木に樹液酒場がオープンしていました。
幹の根元付近のあちこちから白く泡立つ樹液が分泌され、独特の発酵臭が辺りに漂っています。
カミキリムシの産卵痕から滲み出しているのでしょう。

樹液酒場に集まる昆虫の様子を微速度撮影で長時間、記録してみました。
ジオラマモードで撮った10倍速の早回し映像をご覧ください。

シロテンハナムグリProtaetia orientalis submarumorea)と思われる大型の甲虫が樹液に多数群がって吸汁しており、コムラサキ♂(Apatura metis substituta)も来ていました。

樹液をめぐるシロテンハナムグリ同士の喧嘩がコミカルに描かれています。
喧嘩の後で酒場に誰も居なくなったところで、樹液が滲み出す様子が写っています。
コムラサキ♂は左後翅の破損した(ビークマーク)個体と無傷の個体の少なくとも2頭が入れ替わりで樹液を舐めに来ていました。
コムラサキの成虫はあまり訪花せずに専ら樹液で栄養補給するらしく、更に幼虫の食草はヤナギだそうです。
従って、最近この辺りでコムラサキをよく目にするのは納得です。

実は途中でスズメバチが飛来したのですが、早回し映像ではほんの一瞬しか写っていません。
コムラサキ♂は驚いて飛び去ったものの、固い装甲で身を守るシロテンハナムグリは平気で吸汁を続けていました。

つづく



アキカラマツを訪花するセイヨウミツバチ♀



2013年8月中旬

線路沿いの砂利に咲いたアキカラマツの群落でセイヨウミツバチApis mellifera)のワーカー♀が訪花していました。
後脚の花粉籠にオレンジ色の花粉団子を付けて飛び回っています。

競うように訪花していたクマバチよりも羽音の音色が高いです。

関連記事→「アキカラマツの花で振動集粉するクマバチ♀


2013/10/23

ゴイシシジミ幼虫vs兵隊アブラムシ(ササコナフキツノアブラムシ)



2013年8月中旬

前回の記事はこちら→「ササコナフキツノアブラムシを捕食するゴイシシジミ幼虫

真社会性昆虫であるササコナフキツノアブラムシCeratovacuna japonica)には小型ながらもコロニー防衛を専門とする兵隊カーストがいます。
(アブラムシにとって)天敵であるゴイシシジミTaraka hamada)幼虫に立ち向かうシーンをまとめてみました。

捕食中のゴイシシジミ老熟幼虫の体表をたまにアブラムシが歩き回っていることがありました。
それに対してゴイシシジミ幼虫が身を反らせているため、アブラムシがたまたま徘徊しているだけではなさそうです。
とても小さいので、アブラムシが天敵に口吻や角を突き刺しているかどうか確認できませんでした(上手く接写できませんでした)。

ゴイシシジミ幼虫と接触したアブラムシが腹端を持ち上げ、透明な液体を腹端から分泌することがあります。(※追記2参照)
これは兵隊カーストを召集する警報フェロモンなのでしょうか?

小型の兵隊アブラムシが絶望的な特攻を散発的に繰り返すだけではゴイシシジミ幼虫を撃退するには至らず、素人目には有効な抑止力になっていない印象です。

戦力を小出しにする逐次投入は最悪の愚策というのが兵法の常識です。
それでも生殖虫の損失さえ抑えられれば兵隊アブラムシの目的は果たしたことになるのでしょう。(利他的行動
ササコナフキツノアブラムシのコロニーはクローンだし、健気な兵隊アブラムシはなんだか病原菌に立ち向かう白血球みたいだなーと思いました。

ゴイシシジミ幼虫が身に纏っている白い粉はアブラムシ由来のワックスらしく※、自分で分泌したものなのか分かりませんが、いかにも兵隊アブラムシに存在を気づかれないよう化学擬態の効果がありそうです。


※ 『里山蝶ガイドブック』p50によると、
ゴイシシジミ終齢幼虫はアブラムシの白いワックスを、自分の体に擦りつける行動が見られる。



参考サイト:ササコナフキツノアブラムシとゴイシシジミ(@ひむか昆虫記)

つづく→「アリとアブラムシ、ゴイシシジミ幼虫の関係

【追記】

野外で見られる特殊化した捕食者は、長いあいだにアブラムシの攻撃に対して対抗策を進化させていることが多く、実際に攻撃の現場を観察することはむずかしい。むしろ、ふつうならアブラムシのコロニーを訪れることがない、いも虫状の幼虫を置いてやれば、たちまち多くの兵隊がたくましい前脚で組み付くのが見られるだろう。(『日本動物大百科8昆虫Ⅰ』p146より)


※【追記2】
アブラムシの体の構造について私は勉強不足だったのですが、谷口達雄『アブラムシ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』という本を読んだらp19に詳細な模式図が掲載されていて体の各部位の名前を知ることが出来ました。
以前はこの「オシッコ」はアブラムシの下腹部から出ている角状管というものから排泄されていると考えられていましたが、現在はお尻の尾片から排泄され、角状管は別の機能を果たしていることがわかっています。(p40より引用)
尾片と角状管がそれぞれアブラムシのどこを指しているのかも、ようやく分かるようになりました。


兵隊アブラムシの頭部には角がある。

ユリズイセンの花で盗蜜するエントツドロバチ♀



2013年8月中旬

民家の庭先に咲いたユリズイセンエントツドロバチ♀(Orancistrocerus drewseni)が訪花していました。
正当訪花ではなく盗蜜していたので慌ててカメラを向けたのですが、すぐに飛び去ってしまいました。
穿孔盗蜜というよりも、園芸品種であるユリズイセンの花が開くと花弁と花弁の間に隙間が自然にできてしまうため、花筒の根元から蜂が吸蜜できてしまうようです。

関連記事→「ユリズイセンに訪花するフタモンアシナガバチ♀2つの採餌戦略(正当訪花/盗蜜)



2013/10/22

ヤドリバエ(寄主ヨシカレハ)の蛹化【微速度撮影】



2013年8月中旬

前回の記事はこちら→「寄主ヨシカレハ(蛾)の繭から脱出するヤドリバエ幼虫

寄主ヨシカレハの繭から脱出した4匹の蛆虫を別の密閉容器に隔離しました。
円筒容器の直径は5cm。
自然環境下では土に潜って蛹化するはずですが、観察の都合上、土は入れていません。
インターバル撮影やジオラマモードによる動画撮影で、カメラのバッテリーが切れるまで長時間の変化を記録しました(微速度撮影)。

ハエ類のさなぎ形成の際は、終齢幼虫が脱皮せずに、幼虫の体が短縮してコメの様な形になり、そのまま幼虫の外皮が硬化するのが特徴である。硬化した外皮の内側で、真のさなぎがさらに一回り小さく収縮して形成される。こうした二重構造の蛹(さなぎ)を囲蛹(いよう)と呼ぶ。(wikipediaより)

しばらくの間、蛆虫は活発に容器内を徘徊しています。
垂直な壁にも途中まで登れます。
蛆虫の後端に見える1対の黒い点は呼吸のための気門ですかね?

やがて蛆虫の運動性が低下してくると容器の底で蛹化が始まります。
蠕動しても自由な歩行移動ができなくなり、のた打ち回っても不器用に後退するだけになります。
幼虫の時よりも体長は縮み、時間経過と共に褐色が濃くなりました。
寄主から脱出して蛹化するまで同じ日に起こりました。



8日後に撮った囲蛹の写真↓です。



成虫が羽化してくれないと、ヤドリバエの名前が分かりません。
夏の間に羽化するかと思いきや、このまま蛹で越冬する予感…。
もしかすると、土を入れてやらないと蛹が乾燥し過ぎて死んでしまうのでしょうか?(※)

つづく

ついでに、微速度撮影した同じ素材でスピードを落とした早回し映像↓もブログ限定で公開します。



【追記】
※ 蛹化から丸一年経ってもヤドリバエ成虫が羽化してくれません。
困り果てて「一寸のハエにも五分の大和魂・改」掲示板にて質問してみました。


Q: 野外で採集した蛾の幼虫を飼育すると、営繭後に寄生ハエの幼虫が脱出してくることがあります。
現在はヨシカレハ、オビガ、マイマイガを寄主とするヤドリバエ?の囲蛹が手元にあります。(プラスチック容器の底に数個ずつ転がっています)
私は寄生現象にも興味があるので、ウジ虫が出ても別に嫌悪感を抱くことも無く気持ちを切り替えているのに、待てど暮らせどハエが羽化してくれません。
ヨシカレハから脱出したのは去年の8月なので、いくら蛹越冬だとしても羽化が遅れてますよね。
成虫が羽化してくれないと名前も分からず困っています。
囲蛹の飼育には湿り気が必須なのですか?
囲蛹を裸で飼うと、乾季だと思って休眠状態に入ってしまうのでしょうか?
暗所に置かないといけないのか?など色々と悩みます。
やはり今からでも容器に土を入れてやる(囲蛹を土に埋めてやる)べきでしょうか?
まさか蛹のまま何年間も地中で過ごすのが普通なのですか?

恥ずかしながらこれまで私の虫の飼育の失敗の多くはカビが原因です。
霧吹きしたり土を入れたりすると、特に梅雨時や夏はあっという間にカビが発生蔓延してしまい他の飼育容器までもが全滅してしまった苦い過去がトラウマになっていて躊躇しています。
何かアドバイスがありましたら、よろしくお願いします。

ちなみにドロバチの巣を発掘した際に採集した寄生ハエ(ドロバチヤドリニクバエ?)の囲蛹からは、過去に同様の飼育法(プラスチック容器に裸で置いただけの乾燥条件)で室内越冬し問題なく羽化しています。

するとアノニモミイアさんより以下の回答を頂きました。

A: 私はヤドリバエ科の生態に詳しい者ではありません。しかし,本科に最も詳しい研究者に以前お聞きしたところ,ヤドリバエの囲蛹は囲蛹化した位置に置かないと羽化しにくい,囲蛹を動かすとまずい,と言う話をお聞きしたことがあります。ヤドリバエ科の多くの幼虫は寄主から脱出した後は当然地上に落ちるでしょうから,常識的に考えれば地中に潜り込んでそこで囲蛹化するのではないでしょうか。

このような見解を元に考えますと,寄主から脱出してまだ囲蛹化していない蛆は湿り気のある清潔な土を入れた容器に移すことが適当かとおもいます。また容器内(裸出した状態)で囲蛹化してしまったものは,そのまま動かさないで,上記のような湿った清潔な土(電子レンジなどで蒸気消毒したもの)をやさしく掛けるということも考えられます。

一方,オオミノガヤドリバエ等ミノガ科の幼虫に寄生するヤドリバエは,ミノの中で蛹化する場合が一般的のようです。この場合はそのままにしておくと,羽化して,ミノの下口部から脱出してきます。

園芸用の赤玉土の細粒(小粒より小さい)と言うのがあります。私はこれを十分に湿らせたうえで電子レンジで蒸気消毒したものを長期休眠(初冬から翌年晩秋まで)するハエの幼虫に使ったことがあります。好成績でした。数か月以上に亘ってカビなどが生じなかったです。

土を昆虫の飼育に長期に使うときは,庭の土などはかなり用心して用いないと,中に捕食者の卵や幼虫などが含まれていることがあります。また,トビムシ類もかなり入っていて,繁殖します。土はポリ袋に入れて(密閉しないで)電子レンジで内部が高温になり熱い蒸気で滅菌,殺虫して使うのが安全です。

ヤドリバエ科の事を勉強したいとのこと。参考文献で手ごろなものは,東海大学出版会の「ハエ学」にヤドリバエの生態がかなり詳しく記述されています。また,同書の参考文献にもあげてありますが,嶌 洪,1989.寄生生活への道―ヤドリバエの場合ー.インセクタリゥム,26号,100-126 にも詳しく記述されているはずです。嶌博士は舘卓司博士と共に我が国のヤドリバエ科の分類学者です。インセクタリゥムは現在は廃刊ですから,図書館などで蔵書しているところで見たらいかがですか。

まさかヤドリバエの囲蛹がそんなに繊細だとは知りませんでした。
確かに数少ない成功例を思い返してみると、完全に忘れていて放置していたら(つまり、囲蛹に全く手を触れなかったら)いつの間にか寄生ハエが羽化して死んでいたことがありました。(寄主イラガ、オビガ)
じっくり観察しようと囲蛹を転がしたりいじくり回すことが致命的なのですね。
この反省を活かして、次回からは殺菌した土を入れてみようと思います。


【追記】
『ハエ学:多様な生活と謎を探る』p298-299より用語の解説を引用します。
(センチニクバエの研究での文脈なので、もしかするとヤドリバエ科ではまた用語が違う可能性もあります。)

十分に摂食した幼虫はこの時点で餌から離れ蛹になる場所を求めて這い回る。この時期の幼虫をワンダリングステージの幼虫といい、前蛹という。この幼虫はほどなく蛹になるが、ハエでは幼虫時の表皮が固まってその中で蛹ができるのでそのことを囲蛹化、または囲蛹殻形成という。幼虫の表皮は硬くなり囲蛹殻となり幼虫は白い俵状の形をとり動かなくなる。このものをWhite pupa “白い蛹”とよぶ。その後は時間とともに囲蛹殻は硬化し、赤茶色から茶褐色になってゆく(白い蛹から蛹になるまでを潜蛹という)。この囲蛹殻の中で蛹となり成虫羽化までじっとしている。

飛べ!カノコガ(蛾)【ハイスピード動画】



2013年7月下旬

里山で葉に止まって休んでいるカノコガAmata fortunei fortunei)が飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
なかなか自発的に飛んでくれないので、草むらに物を投げつけて蛾を飛び立たせました。
カノコガは葉裏に隠れて止まることが多い印象です。


2013/10/21

ササコナフキツノアブラムシを捕食するゴイシシジミ幼虫



2013年8月中旬

前回の記事はこちら→「笹の葉裏でアブラムシを捕食するゴイシシジミ幼虫【微速度撮影】

体長(齢数)の異なるゴイシシジミTaraka hamada)幼虫がササコナフキツノアブラムシCeratovacuna japonica)のコロニーに4匹も群れていました。
産卵時期がまちまちなのでしょう。
ゴイシシジミの幼虫は老熟すると側面に黄色の部分が現れるようです。

『里山蝶ガイドブック』p51によると、
若いうちの(ゴイシシジミ)幼虫は口から吐いた糸で簡単なテント巣を作り、そこに潜んでいることが多い。



しばらくすると、ようやくゴイシシジミ幼虫が食事を始めました。
アブラムシの本体だけでなく、葉裏に分泌された白いワックス質も盛んに食べています。
甘露のように甘くて美味しいのでしょうか。
ワックス質に残されたアブラムシの脱皮殻や死骸も一緒に食べているようです。
口元にたまたま近づいてきた小型のアブラムシ幼虫をガブリと捕食する決定的瞬間も接写することができました。
あっという間に獲物を噛み砕き咀嚼します。
このときアブラムシから茶色い体液が滲み出ます。
(これはアブラムシを手で潰したときも同じ。)
ゴイシシジミ幼虫は肉食の合間に必ず周囲のワックス質をかじる点が興味深く思いました。
デザート感覚なのでしょうか。(甘い物は別腹?)
コロニーに身を寄せ合っている大型のアブラムシには余り手を出さないようです。



一方、アブラムシの側も天敵に捕食されるがままになっている訳ではありません。
ササコナフキツノアブラムシは真社会性アブラムシです。
コロニーを守る兵隊アブラムシという不妊カーストの幼虫が居るのです。
兵隊アブラムシは褐色の幼虫で、頭部に生えた一対の角で敵を攻撃するそうです。
実は今回の映像でも兵隊がゴイシシジミ幼虫に立ち向かっているのですけど、あまり有効な攻撃にはなっていない気がします。
次々に特攻しても返り討ちに会うばかりです。
天敵の背中に乗って角で突き刺している(ように見える)兵隊アブラムシもごく僅かです。
兵隊アブラムシは自らを生贄として捧げゴイシシジミ幼虫に満腹になってもらい、コロニーの生殖虫の損失を抑えられればそれで良いのかもしれません。
ゴイシシジミ幼虫は全身が白く粉を吹いたようにアブラムシのワックスで覆われているため※(自ら分泌したのか?)、強力なカモフラージュになっているのでしょう。
アブラムシのコロニーで巧妙に紛れ込んでいるようです。


※ 『里山蝶ガイドブック』p50によると、
ゴイシシジミ終齢幼虫はアブラムシの白いワックスを、自分の体に擦りつける行動が見られる。


  • ササコナフキツノアブラムシの幼虫には普通型と兵隊アブラムシがある。ササ世代では相手を角で攻撃する1齢幼虫が見られる。 (『校庭のクモ・ダニ・アブラムシ』p177より)
  • アリやシロアリに見られる兵隊階級と同じように、自分を犠牲にしてコロニーのほかのメンバーを捕食者の攻撃から守る幼虫個体を「兵隊アブラムシ」と呼ぶ。
  • マワタムシ亜科とヒラタアブラムシ亜科のアブラムシは兵隊アブラムシと通常幼虫(普通型)の2型の幼虫を産み出し、兵隊アブラムシは1齢幼虫のままで不妊である。兵隊アブラムシは不妊カーストとよばれ、形態は攻撃に用いる脚や角が大きく発達し、キチン化も強い。 (同図鑑p168より)
警報フェロモンを分泌?

食事中のゴイシシジミ幼虫に向かって歩いて来た一匹のアブラムシが捕食されそうになると、腹端を持ち上げ透明の甘露を分泌しました!(@7:55〜8:15)
ゴイシシジミ幼虫はすぐにこの液滴を吸汁しました。
この隙にアブラムシが逃げる作戦なのかと思いきや、結局は捕食されてしまったようです。
あるいはボディーガードのアリに催促されたと勘違いして甘露を分泌したのでしょうか。
それとも兵隊カーストへの警報フェロモンなのかな?(参考サイト

蝶の幼虫による肉食行動と兵隊アブラムシを初めて目の当たりにして、いたく感激しました。
笹薮でこれほどドラマチックな弱肉強食がひっそりと繰り広げられているとは知りませんでした。

今回じっくり落ち着いて捕食シーンを接写するために、風揺れ対策として笹の葉(アズマネザサ?)を葉柄から切り落とし、地面に静置しました。
もともと葉裏に群がっていたササコナフキツノアブラムシは直射日光を嫌う傾向があるようです。
異変に気づいた者から分散を始め、葉の下に隠れようと移動します。
また、葉を茎から切り離すと水脈を絶たれたアブラムシは師管から上手く吸汁できなくなるようで、それが分散の原因かもしれません。
葉柄の切り口に移動したアブラムシは吸汁を続けます。
ゴイシシジミ幼虫も獲物の後を追うように移動開始。
何が言いたいかというと、今回の映像はアブラムシもゴイシシジミ幼虫も100%自然な行動とは言えないかもしれません。
特にアブラムシは普段これほど活発に動き回らない気がします。

切り落とした笹の葉は炎天下ですぐに萎れてしまいました。
撮影後は観察した葉を笹の群落の上に置いて帰りました。
アブラムシやゴイシシジミ幼虫が自力で生葉に移動してくれることを期待しました。

つづく→「ゴイシシジミ幼虫vs兵隊アブラムシ(ササコナフキツノアブラムシ)


寄主ヨシカレハ(蛾)の繭から脱出するヤドリバエ幼虫



2013年8月中旬・室温24℃

ヨシカレハの飼育記録2

繭を紡いでから3日後の早朝、ヨシカレハEuthrix potatoria bergmani)の繭から蛆虫が脱出しかけていることに気づき、仰天しました。
ヤドリバエの仲間が寄主を捕食寄生して十分に育った後に寄主の体外へ脱出し、これから蛹化するものと思われます。

繭の先端部が濡れており、そこからヤドリバエの幼虫が脱出しています。
繭の狭い脱出口に体が閊えている蛆虫もいます。
脱出した蛆虫が這い回った跡は大量の液体で濡れています。
この液体は蛆虫の分泌した潤滑液なのでしょうか?
それとも蛆虫の唾液に繭の絹糸を溶かすタンパク質分解酵素(コクナーゼ※)が含まれているのでしょうか?
寄主のヨシカレハの体液である可能性は?

※ コクナーゼとは

[英cocoonase]
鱗翅目の一部の昆虫の蛹が分泌する蛋白質分解酵素で,孵化酵素の一種.繭(cocoon)のセリシンを分解しフィブロインだけにすることによって,繭からの成虫の脱出を容易にする.
(『岩波生物学辞典第4版』より)

白くて丸々と太った蛆虫の体表に付着している黒い毛は、寄主ヨシカレハの毛虫が繭に植えた毛です。

野外で採集したヨシカレハ終齢幼虫が異常なほど巨大化していた謎がこれで解けました。
体内寄生者が自らの発生に都合の良いように寄主の内分泌系(脱皮ホルモン・幼若ホルモン)を撹乱制御していたのかもしれません。
安全な隠れ家となる繭を作らせてから寄主を体内から食い尽くして殺したのでしょう。

計4匹の蛆虫が続々と脱出する様子をジオラマ・モードで撮影した10倍速の早回し映像をご覧ください。
(私が気付く前に脱走した個体もいるかもしれないので、4匹以上ですね。)
ある蛆虫は繭の左端から脱出を試みてから一旦諦めて繭の中を右往左往し、ようやく繭の右端から脱出に成功しました。

元気な蛆虫はプラスチック容器の垂直な壁面も登れます。
容器内を徘徊する蛆虫が繭の付いたボール紙(ティッシュの紙箱)の裏側に潜りこもうとするため、ボール紙が一緒に動いてしまい、微速度撮影の邪魔になります。

次は蛆虫の蛹化が始まります。→つづく(蛹化の微速度撮影

ヤドリバエに捕食寄生を受けたのでヨシカレハは殺され、成虫が羽化することは無くなりました。
毒毛に刺されないようゴム手袋を着用してから繭を切り裂いてみると、ヨシカレハ前蛹の干からびた死骸が見つかりました。
繭を紡いだ後で蛹化(脱皮)する前にヤドリバエ幼虫が食い殺したようです。



2013/10/20

アキカラマツの花で振動集粉するクマバチ♀



2013年8月中旬

線路横の砂利の斜面に生い茂ったアキカラマツの群落でキムネクマバチXylocopa appendiculata circumvolans)が忙しなく訪花していました。
複数個体(2匹以上)居ました。
後脚の花粉籠にうっすらと白い花粉団子を付けています。
風に揺れるアキカラマツの動きに合わせて停空飛翔(ホバリング)し、タイミングを見計らって着陸します。
飛翔時は重低音の羽音が迫力あります。
花で翅を休めている間にときどき振動集紛の甲高い音が聞こえました。
マルハナバチ類ではよく耳にしますが、クマバチでは初耳でした。
採餌が済んだクマバチ♀は、水田を飛び越え一直線に帰巣しました。
2匹は西および北の方角へ飛び去ったので、別の巣から来ているのかもしれません。


【追記】
坂上昭一、前田泰生『独居から不平等へ―ツヤハナバチとその仲間の生活』の第5章は『クマバチの生活』となっています。
クマバチの訪花行動についても短く要点をまとめられていました。
ナス科・ツツジ科などに多い長い葯の先の小孔から花粉が出てくるような花では、クマバチは翅の振動で花粉をゆすぶり出す。この方法―バズ・ポリネーション―は、他の一部のハナバチもやるが、ミツバチなどは決して行わない。(p151より引用)




クマバチの振動集粉を声紋解析してみる

オリジナルのMTS動画ファイルから音声部をWAVファイルとして抽出し、適当に切り出してからスペクトログラムを描いてみました。
私の耳には羽音と振動集粉は明確に聞き分けられるのですけど、残念ながら素人目にも分かるような違いは声紋に認められませんでした。
おそらく録音の精度がいまいちなのだと思います。(カメラの仕様で高音域がカットされているなど)


羽音→振動集粉→羽音
羽音→振動集粉→羽音
振動集粉→振動集粉→羽音

この花の名前を調べても分からなかったので、植物の画像掲示板で問い合わせてみました。
するとアキカラマツだと親切に教えて頂きました。



笹の葉裏でアブラムシを捕食するゴイシシジミ幼虫【微速度撮影】



2013年8月中旬

前回の記事はこちら→「笹の葉裏でアブラムシの甘露を舐め産卵するゴイシシジミ♀

定点観察のため、林道脇のアズマネザサ?群落を再訪しました。
笹の葉裏にササコナフキツノアブラムシと思われるアブラムシがびっしり群がっています。

アブラムシのコロニーに混じってゴイシシジミTaraka hamada)の幼虫が数匹見つかりました。
産卵時期がまちまちなのか、体長(齢数)の異なる幼虫でした。
図鑑で予習していなければとても蝶の幼虫とは思えない、奇妙な形状でした。

葉裏を徘徊しアブラムシを捕食する様子を微速度撮影してみました。
下から葉裏を見上げるアングルだと逆光になり、照明がないと影になってよく見えません。

インターバル撮影で毎回ストロボを焚くのではバッテリーが長時間持ちません。
そこで笹の葉を捲り上げて近くの枝にクリップで固定しました。
ジオラマ・モードの動画で撮った10倍速の早回し映像をご覧ください。
風揺れを軽減するために動画編集時に手ブレ補正処理を施してあります。

徘徊シーンはともかく、捕食の様子はもっと拡大接写しないと分かりませんね。
ちょっと思い描いていたような映像にはなりませんでした…。(物足りない)
ゴイシシジミ幼虫以外に葉裏をときどき素早く動き回る細長い幼虫が何者なのか気になります。(ヒュッと縮んで葉裏の巣に隠れる?)
後半に登場した尺取虫はヒラタアブの幼虫かもしれません。
カメラをセッティングした後は現場を離れていたので、実物は見ていません。
セグロベニトゲアシガの幼虫?

次回は捕食シーンを接写します→つづく




ヌルデを訪花するヨツスジハナカミキリ



2013年8月中旬

里山の林道脇に咲いたヌルデの花でヨツスジハナカミキリLeptura ochraceofasciata ochraceofasciata)を発見。
花を食べるのですが、とにかく忙しなく花の上を歩き回ります。


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