2017/11/11

巣立ち後のハシボソガラス親鳥の行動(野鳥)



高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#36


2017年6月中旬・午後15:12〜15:22

全4羽の雛が巣立っても、ハシボソガラスCorvus corone)親鳥♀♂の子育て(育雛)は終わりではありません。
しばらくは縄張り内で幼鳥を引率し、自力で採食できるようになるまでは幼鳥に巣外給餌する必要があるのです。
幼鳥はどこに隠れているのでしょうか?

私が未練がましく鉄塔の空巣を撮っていると、いつもの親鳥が高圧線に止まりました。
私の様子を見に来たようです。
ときどき嘴を足元の電線(鉄塔の一番上から伸びる高圧線)に擦り付けています。
やがて高圧線から北へ滑空して採餌に出かけました。
(採餌に出かけるのは今までと同じです。)

しばらくすると、今度は営巣地の近くの住宅地の電柱で親鳥が休んでいました。
電柱の天辺から上に伸びるアルミ角柱(避雷針?)の天辺に止まっています。
ここも親鳥のお気に入りの止まり木の一つで、育雛中は雛の糞を捨てに来ていた(排糞)地点でもあります。
しかし、いつまでたっても飛び立ちません。
この日は結局、私が見ている限り、親鳥は一度も鉄塔の空巣を訪れませんでした。
空巣に用は無いのでしょう。
親鳥がどこで幼鳥に巣外給餌しているのか突き止めたかったのですが、親鳥も幼鳥の居場所を私に知られたくないような印象を受けました。

領空侵犯した別のカラスを追い払うために親鳥が飛び立ったシーンを目撃しています。
相手が慌てて逃げたので争いにはならず、親鳥も途中で引き返しました。
雛が全て巣立った後でも縄張り防衛の意識は強いようです。
動画を撮り損ねたのが残念でした。

鉄塔の南にある小さな林(スギと雑木林の混合林)に親鳥がときどき行くので怪しいと思い、私も後でこっそり行ってみました。
しかし残念ながら林内や周辺の農地でカラスの家族群を見つけられませんでした。
幼鳥がどのくらい飛べるのか知りませんが、もっと安全な遠くへ飛んで行ったのかもしれません。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


当地ではハシボソガラスの繁殖は年1回だけのようで、この巣#21もその後に2回目の繁殖に再利用されることはありませんでした。




余談ですが、実はこの最終日、定点観察の撮影地点に行く途中で事件がありました。
私が足早に歩いて営巣地へ向かっていると、向こうから飛んできたハシボソガラスが空中で脱糞しました。
頭上に落ちてきた糞を避けようと咄嗟に半身になってかわしたものの間に合わず、白いポロシャツの左肩に被弾!(命中)
明らかに私の顔や頭部を狙って強烈な嫌がらせをしてきたのです。
カラスは横の鎮守の森(杉林)に止まって、私をからかうように掠れ声で少し鳴きました。

定点観察している巣#21の親鳥なのか知りたいところですが、個体識別できていないので分かりません。
鎮守の森を縄張り(営巣地?)とする別のハシボソガラスなのか?と最初は思いました。
帰宅後に地図を広げて調べると、爆撃地点から巣#21までの直線距離は412mでした。
カラスの縄張りが半径500mと言われているので、巣#21の親鳥だとしても不思議ではないことが分かりました。

後藤三千代『カラスと人の巣づくり協定』によると、

大阪高槻市の野外条件では、ハシボソガラスの巣間距離は、樹木営巣の場合は140~680メートル(n=172)、人工物営巣の場合は140~780メートル(n=52)で、樹木と人工物に大きな違いはみられない。このデータを基準にして、本書では、電柱営巣の巣間距離が140メートル以内は同一つがい、781メートル以上は他のつがいの巣とし、141~780メートルは、営巣日の重なりや営巣時期の間隔などを考慮して、同一のうがいによる再営巣であるかどうかを個別に判断した。 (p31より引用)


連日のようにしつこく巣を見に通ってくる私の存在が親鳥は気に入らなくて憤慨し、遂に待ち伏せして鬱憤を晴らしたのかもしれません。
私も撮影地点へ通うルートをときどき変えたり遠回りしたりしていたのですけど、親鳥には私の行動パターンを読まれていたのでしょうか。
この時点で既に最後の雛も巣立っていたはずなので、親鳥が縄張りの辺境にも出てくる余裕ができたのかな?

白いポロシャツに付着した黄土色の液状便の匂いを嗅いでも無臭だったのは助かりました。
数日経った後でも、汚れに粉洗剤をまぶしてから洗濯したらきれいに落ちました。

別の記事にするか迷ったのですが、糞空爆のスクープ映像も撮れなかったので、一緒にまとめて書きました。

シリーズ完。


つづく→番外編:ハシボソガラスによるメヒシバの種子散布?

名誉の勲章?

ハスの花から飛び去るトラマルハナバチ♀



2017年7月下旬・午前5:51

早朝の蓮池に咲いたばかりのハス(蓮)トラマルハナバチBombus diversus diversus)のワーカー♀が訪花していました。
蓮池では他種のマルハナバチ(クロマルハナバチおよびオオマルハナバチ)と比べて本種は個体数が少ないのか、この短い動画を一度しか撮れませんでした。
大輪の花から出てきて飛び去る様子を1/4倍速のスローモーションでリプレイ。
後脚の花粉籠は空荷のようでした。

余談ですが、ハスを訪花中のマルハナバチが誤って水面に落ちるのを目撃しました。
落水しても自力でハスの葉に這い上がり、無事に飛び去りました。
スクープ映像を撮れなかったのが残念です。

朝日が昇ってしばらくすると、蓮池にハナバチ類がぱったり来なくなりました。
ハスの受粉と採餌は開花直後の短期決戦型なのかもしれません。
花の芳香も減った気がしますが、私の鼻が慣れてしまっただけかもしれません。
蓮池で見かける数が少なかったトラマルハナバチやクマバチは、激烈な採餌競争で優占種セイヨウミツバチ、クロマルハナバチ、オオマルハナバチに対して負けてしまったのかな?と想像を逞しくしました。

岸から手が届くハスの花の雄しべに触れてみると、ハナバチに採餌され尽くされて葯の花粉は残っていませんでした。
もう一つの花で試すと、花糸の根元に黄色い花粉が残っていました。
指が黄色く汚れたので、ようやくハスの花粉の色が分かりました。


2017/11/10

最後の雛も巣立った後のハシボソガラス空巣とその真下の糞(野鳥)



高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#35


2017年6月中旬・午後14:27〜15:57

いつもより少し早い時間に来てみたのに、ハシボソガラスCorvus corone)の巣から全ての雛が巣立っていて空き巣になっていたので、唖然としました。
前日に1羽だけ残っていた雛も、巣立つ素振りは見せていなかったので、予想外でした。
カラスの雛が巣立つ瞬間を映像で記録するという私の夢は破れてしまい、残念無念。
早起きして朝から見張るべきでしたが、巣立ちの予兆が私には分からなかったのです。
もし産卵日または孵化日が分かっていれば、巣立ちまでの日数の目安は先人の研究から見当をつけることができます。
しかし高所の巣の中を覗く術がないので、巣立ちの日を予想できませんでした。(ドローンを飛ばすことは許されるのだろうか?)
連日通う定点観察はかなりしんどくて、終盤は私も内心では飽きていたので、ようやく終わってホッとしました。
巣立ちを確実に撮るには、無人カメラで巣の監視映像を愚直に休みなく録画し続けるしかなさそうです。

念の為に微速度撮影で40分間ほど巣を監視してみても、雛の姿や親鳥による給餌シーンは見られませんでした。
10倍速の早回し映像をご覧ください。(@1:37-)
巣内に動きは全くありませんでした。
もし雛が巣にうずくまっているせいで外から見えないにしても、40分間もじっとしていることはあり得ません。
親鳥も空き巣には一度も飛来しませんでした。


さらに駄目押しとして、鉄塔の周囲を一回りしながら色んなアングルから空き巣を撮影してみました。
枯れ枝を緻密に組み合わせて作られた巣が、雛が育つにつれてどんどん風化・崩壊して貧相な巣になることも、実際に長期観察するまでは知らなかったことです。

梅雨入り前に4羽の雛全てが巣立ったことになります。
今季に同時並行でカラスの巣を幾つか観察した中で、この巣(高圧線鉄塔#21)が巣立ちまで一番遅かったです。
営巣地周囲の環境は素人目にはかなり自然豊かで育雛のための餌資源はここが一番豊富そうに見えたので、意外な結果でした。(田畑、林、池、住宅地の家庭菜園やゴミ捨て場などバラエティに富んだ環境なのに…。)
もしかすると私が見ていない営巣初期に何かトラブルがあって産卵をやり直したのか、それとも繁殖経験の浅いつがいだったのかもしれません。

以前から気になっていたのですが、長い針金を何本も束ねて扇状(円錐状?)に広げた物が高圧線鉄塔の鉄骨のあちこちに取り付けてあります。
この謎の物体(正式名称は?)はおそらくカラスが鉄塔に止まれないように電力会社が設置している障害物だと思います。

しかしカラスの営巣や育雛を妨げる効果は薄い(全く無い)ことが証明されました。 (※追記参照)

最後に、高圧線鉄塔#21の直下に行ってみました。

今までは親鳥を刺激しないように、巣の真下をウロウロしないように自重していたのです。
立入りを禁じる金網の隙間から覗いてみると、巣の真下の敷地に雛が排泄した糞が大量に散乱していました。

親鳥が給餌する度に甲斐甲斐しく雛の糞を回収して外に捨てに行っても(排糞行動)、どうしても全ては回収し切れず巣の下を糞で汚してしまうようです。(糞害)
雛が巣立ちに失敗して滑落死した可能性もわずかに疑っていたのですが、雛の死骸は落ちていなくて一安心。
後日に再訪すると、巣の下の糞は雨で洗い流されてきれいになっていました。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→#36:巣立ち後のハシボソガラス親鳥の行動(野鳥)




※【追記】
矢崎葉子『カラスバトル』を読むと、高圧線鉄塔に営巣するカラスに悩まされている東京電力に詳しく取材した見事な解説があり、とても参考になりました。
それとともに私の誤解も解けました。
電線には二種類あって、一般家庭に電気を送る配電線と、変電所間を結ぶ送電線がある。配電線はビニールで絶縁してある、いわば家庭にある電気コードの親玉みたいなもので、接触しても感電しない。一方、送電線は裸線、つまり電気コードの中味がそのまま剥き出しになっている状態だ。で、カラスの事故は大部分が送電線で起こる。(中略)たとえ裸線でも、一本の送電線に止まっているぶんにはカラスは感電しない。(中略)電位差がなければ流れないわけで、それが一本の送電線に止まったカラスが感電しない理由だ。この理屈は電線とそれを支える鉄塔の間についてもいえる。電線を鉄塔にそのままつなげてしまうと、鉄塔を通って電気はどんどん地面に放出されて、私たちの家庭には電気が来なくなってしまう。そのため鉄塔と電線を碍子と呼ばれる絶縁体で固定し、その間は、鉄塔に触れないように迂回させた電線を通しているのだ。ここでやっとカラスの登場となる。そうやって苦労して鉄塔と電線を絶縁しているのに、そこに巣材の小枝やハンガーなどが落ちたり、またカラスの羽根や体が挟まったりすると、絶縁が保てなくなり、電気が流れてショートしてしまうのだ。 (中略)巣材が針金、ハンガーではなく、たとえ木であっても、木が湿っている場合などは電気を通してしまうので、事故が起きることがあります。 p98-99より引用)

営巣場所はいろいろあるが、鉄塔と電線の間の絶縁部分付近などに巣を作られると事故が発生する危険性は高い。しかも、ちょうどその箇所は木の枝のように横につきだし、まるで枝分かれしているような構造になっており、カラスが営巣しやすい要素が揃っているのだ。送電線に巣が作られた場合、事故になりそうな箇所にある巣は撤去する。事故の可能性が低いと判断した場合はそのまま巣を残して、ヒナが巣立つのを待って取り除く。 (p103より引用)


(カラス対策として)あの手この手を使っているわけだが、これまでの経験上、視覚や聴覚に訴えるものより、物理的にカラスに来てほしくないところを防護するもののほうが費用対効果が高いそうだ。つまり、テグスを張ったり、カラスが止まれないように針山のようなものを設置したり、また、ゼリー状のネバネバしたものを貼付する、あるいは、ネットで局所を覆ってカラスの浸入を防ぐ。
ただ、物理的な対策にも欠点はある。メンテナンスを行なう際に逆にその防護が作業の支障になることがあるからだ。 (中略)最近主流になっているのが、営巣誘導カゴですね。つまり、一方で事故になりやすい部分に巣を作りにくくする対策をとっておいて、もう一方で営巣用のカゴを鉄塔の安全な場所に設置して、こっち側にお作りくださいとカラスの巣作りを誘導するわけです。(p105-106より引用)


つまり、私が観察したカラスの巣も、鉄塔中央のステージのような部分に作る分には電力会社からも黙認されているようです。(これが営巣誘導カゴ?)
一方、送電線を支える横の支柱の端にある碍子付近には絶対カラスに近づいて欲しくないので、物理的な障壁を色々と設置しているのだと理解できました。

私もカラス関連本をこれまで何冊も読んできましたが、『カラスバトル』は取り上げたトピックのバランスも取れていて名著だと思います。
筆者の取材力に感服しました。


トチノキの葉から飛びたつキンケハラナガツチバチ♀



2016年10月中旬・午後15:45

平地の住宅街で庭木として植えられたトチノキで黄葉が始まっていました。
その大きな葉でキンケハラナガツチバチ♀(Megacampsomeris prismatica)が日光浴していました。
急に歩き回り始め、飛び立ちました。



2017/11/09

水を弾き泥汚れも付かないハスの葉の秘密:ロータス効果の実演



2017年7月下旬


蓮葉の濁りに染まぬ心もて何かは露を玉と欺く (僧正遍照:古今和歌集より) → 解釈はこちら

ハス(蓮)の葉は蓮池の泥の中から育つのに、泥汚れが付着しておらずいつも綺麗なのはなぜでしょうか?
その秘密は葉の表面の微細構造にあり、ロータス効果と呼ばれます。

ハスの葉はその微細構造と表面の化学的特性により、決して濡れることがない。葉の表面についた水は表面張力によって水銀のように丸まって水滴となり、泥や、小さい昆虫や、その他の異物を絡め取りながら転がり落ちる。この現象がロータス効果として知られる。(wikipediaより引用)
ちなみに、ロータスとはハスの英語名(lotus)のことです。
夜に降った雨水が大きなハスの葉の中央の凹みに溜まっていました。
その葉を手で揺らすと、分裂した水滴が水銀のように滑らかに葉の表面を動いて全て滑り落ちました。
撥水性が極めて高いので、蓮の葉は全く濡れていません。
子供のときに、夕立が降ると大きな蓮の葉を採取して傘の代わりにさして遊んだ人がいるかもしれません。
葉の表面の汚れが動く水滴に取り込まれ、水と一緒に流れ落ちてしまいます。(自浄作用)
葉の光合成の妨げとなる泥汚れがあっても、雨が降れば自然に落ちてしまうのです。
今回は実演のために手で葉を揺らしましたが、風が吹いて揺れるだけでも葉に付いた水はほとんど零れ落ちてしまうでしょう。

ロータス効果の微細構造を模倣したコーティング材が色々と実用化されているのだそうです。





▼関連記事 
撥水性の高いサトイモの葉でロータス効果の実演
小雨でロータス効果を発揮するハスの葉 



【追記】
ネットニュースの報道によると、ロータス効果でケーキの生クリームが付かないようにするフィルムが開発されました。
あぁ、ケーキを舐める楽しみが… クリーム付かない側面フィルム誕生(@withnews


【追記2】
北村文雄『蓮―ハスをたのしむ』によると、
葉は、水面に浮かぶ浮葉と、水面上に立ち上がる立ち葉があり、葉の中央部は少しへこんで受け皿状です。表面には無数の細かい毛が生え、そこに落ちた水は玉状になります。 (p25より引用)



【追記3】
光学機器メーカーのカールツァイスは、ハスの葉の表面を真似た構造でコーティングしたガラスを使ったメガネや双眼鏡をすでに実用化している。このマイクロテクノロジーはハスの英名LotusからLotoTechと名づけられた。(p27より引用)

葉に付いた水滴の写真は撮り忘れてしまいました…。

セイヨウタンポポの花蜜を吸うキタキチョウ



2016年11月上旬

近所にある猫の額ほどの原っぱに咲いたセイヨウタンポポの群落でキタキチョウEurema mandarina)が訪花していました。
翅を閉じたまま吸蜜すると、最後はヒラヒラと少し飛んで近くのタンポポに着陸しました。
撮影直後にタンポポの萼を調べて、セイヨウタンポポであることを確認。

▼関連記事(撮影はちょうど6年前)
キタキチョウのセイヨウタンポポ吸蜜【マクロ動画】  吸蜜中の口吻の動きがよく分かります。


2017/11/08

夜明けに咲くハスの開花運動【180倍速暗視映像】



2017年7月下旬・午前3:31〜8:11 (日の出時刻は4:36)

明け方に咲くハス(蓮)の開花運動を微速度撮影するために、夜明け前から蓮池に出かけました。
この撮影テーマについては予め勉強しておいた方が良かったと後で痛感するのですが、自分で試行錯誤するのも楽しいかな?と思い、敢えてあまり情報を入れずにほぼぶっつけ本番で挑みました。



広い蓮池のどの蕾に注目して撮り始めるべきか、暗闇でまず迷いました。
照明機材を使わずに未明の暗いうちから撮影を開始するとなると、岸から近い蕾を選ぶ必要があります。

それから朝日が昇ったときに逆光にならないように、撮影する方角を考えました。

岸のすぐ近くで咲きそうな一つの蕾に注目し、まず側面から赤外線の暗視カメラで1分間隔のインターバル撮影を始めました。
朝日が昇り明るくなるとともに周囲の赤外線ノイズが増え、ビデオカメラのピントが合わなくなりました。
そこで暗視モードから通常光モードに切り替えてインターバル撮影を続けます。
終了後は連続写真から30fpsの設定で早回し動画(1800倍速)に加工したのですが、これでは早過ぎたので編集し直して180倍速に落としました。


インターバル撮影と同時に蓮池の岸に別のカメラの三脚を立てて、見下ろすアングルで10倍速の微速度撮影を始めました。
後半から被写体を3つの蕾のうちの1つに絞りました(ズームイン)。
(しっかり予習していれば、初めからどの蕾に注目すべきか分かったはずです。)
撮影後は編集し直して180倍速映像に揃えました。
カメラ2台で同じ蕾の開花を別アングルで記録したことになります。

ぶっつけ本番で撮ったにしては、完成した映像の出来栄えに満足しています。


「ハスが開花の際にポン!と音を立てる」という俗説は、やはり迷信でした。
蓮池で夜を明かしても、一度もそのような破裂音は聞こえず、 静かに開花しました。

「ハス博士」大賀一郎氏の訃報に接した毎日新聞の社説「余録」によると(昭和40年6月17日)、
ハスが開花する時にポンと音がするという俗説についても、博士は上野公園不忍池などで徹夜で調べて、とうとうこの俗説はウソだということを証明した。明け方にハス池のコイが水面近くに飛んでいる蚊をとりにきて、ハネ上がる音をハスの開花とまちがえたのだそうだ。


ハスの花の独特な芳香が濃密に漂い、むせ返りそうでした。
個人的にはエキゾチックでどことなくケミカルな匂いで、あまり好みではありません。

咲き終わった後もしばらく撮り続けると、様々な昆虫が早速訪花を始めました。
朝から快晴で日差しが強く、大きな花弁がすぐに萎れてきました。
映像の最後で早くも閉花運動が始まっているようですが、尻切れトンボになってしまいました。
昼過ぎにはもう花が閉じてしまうのだそうです。
ハスの閉花運動の撮影は今後の宿題です。
暑い昼間に長時間撮影するとなるとまた別の問題があり、カメラが直射日光によってオーバーヒートしないように日傘などを用意する必要がありそうです。


復習としてインターネット検索したところ、次の文献がとても参考になりました。
加藤文男『大賀ハス (縄文ハス)の花の開閉について』によると (福井市自然史博物館から公開されたPDFファイルへのリンク)、

・ハスの花の開閉は花弁の基部の内側の生長度が外側のそれより盛んになれば開き、逆に弱くなれば閉じる。さらに花弁の基部の生長度の違いは、生長を促すホルモン(生長ホルモン)の濃度のかたよりによって生ずると考えられる。しかし、ハスの場合どのような外因または内因によって、上述のような生長度の違いがひき起こされるのか、明確ではない。(p125より引用)
・開花がハス自体のもつ周期性(バイオリズム)によることも考えられる。
ハスの花は4日間、毎朝開閉を繰り返してから散るのだそうです。
今回撮影したのは、花の開き方から見て3日目の花だろうと分かりました。(一番美しいとされる、浅い椀状開花)
蓮池の各蕾の開花日はばらばらなのです(開花して何日目か?)。


十亀好雄『ふしぎな花時計:身近な花で時間を知ろう』によれば、
ハスの花の開閉観察 エイジング(加齢)との関係で、初めて咲く花は、その日の午後7時ごろに五分咲き程度に開花して、10時ごろには閉花してしまいます。翌2日目は午前7〜8時ごろに全開して午後0時ごろに閉花し、3日目も再び早朝に完全開花して正午ごろに半閉花します。そして、4日目の早朝に3回目の完全開花をしてその日の午後に散っていきます。風が強く吹いたり暑いときには3日間ぐらいで終わったり、気温が低めで涼しいときには1週間ぐらい開閉運動を続けます。 (p64より引用)

野外での微速度撮影は大変なので、室内で楽できないかと考えました。
ハスの蕾を採取して水差しにしたら、室内でも開花してくれるでしょうか?
ネット検索すると、ハスは水揚げが悪く、残念ながら生け花の専門家でもきわめて難しいそうです。

3:30 am(開花日の異なる3つの蕾)。以降は左の蕾に注目。
6:02 am
8:13 am(閉花開始?)
8:15 am(左から順に開花3日目、4日目、1日目)


【追記】

北村文雄『蓮:ハスを楽しむ』という本を読んでびっくりしたことの一つは、童謡「ひらいたひらいた」に関するトリビアです


ひらいた ひらいた 
なんの花が ひらいた 
レンゲの花が ひらいた 
ひらいたと思ったら 
いつのまにか つぼんだ
この歌詞に登場するレンゲの花とは、てっきりレンゲソウ(ゲンゲ)だと今まで私は思い込んでいたのですが、蓮華の花、つまりハスの花なのだそうです。
これは、ハスの花の生態をよく表している、わらべうたです。(同書p13より引用)



↑【おまけの映像】
注目した蕾の周囲の環境については、開花前後のスナップショットをブログ限定で公開します。

折れた茎の断面にレンコン様の穴

科学のアルバム『水草のひみつ』によると、

ハスの葉の付け根部分の断面。葉の先まで管が通っています。(p37より引用)


つづく→開花初日のハス蕾の開閉運動(壺状開花)【180倍速映像】

クマバチ♂は手に乗せても刺さない



2016年10月中旬・午後16:11〜16:13

▼関連記事
セイタカアワダチソウの花蜜を吸うクマバチ♂

夕方の農道沿いに生えたセイタカアワダチソウの群落でキムネクマバチ♂(Xylocopa appendiculata circumvolans)が花序にしがみついていました。
この個体は吸蜜中ではなく、ただ休んでいるだけでした。
このまま夜もセイタカアワダチソウの花で寝るつもりなのでしょうか?

複眼が大きく発達していて頭楯が白いことが雄蜂の特徴です。
この個体が雄蜂であることに確信を得たので、そっと手で触れて掌に乗せてみました。
雄蜂は毒針を持たないので、手掴みしても刺される心配は全くありません。
(もちろん♀が相手なら私もこんな危険な真似はしません。)
なんとか「手乗りクマバチ」の状態にしたものの、嫌がってすぐにセイタカアワダチソウの花の方へ移動してしまいました。
気温が低い訳でもないのに飛んで逃げないのは不思議です。
実は同じ日にもう一匹のクマバチ♂をセイタカアワダチソウの群落で連続して見つけ、同様に手乗りさせてみたのですが、やはり大人しくて飛び立ちませんでした。(映像公開予定?)
夕方になるとクマバチ♂はもう寝る時間なのか、それともたまたま見つけたのが老化した個体で、衰弱していたのかな?
あるいは飛翔筋の準備運動をして体温を上げてからでないと、すぐには飛び立てないのかもしれません。




2017/11/07

巣立ちが遅れた最後の雛に給餌するハシボソガラス親鳥【10倍速映像:野鳥】



高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#34


2017年6月中旬・午後15:29〜17:02

最後まで巣に残ったハシボソガラスCorvus corone)雛に対する親鳥の給餌活動をまとめてみました。
冒頭は通常のHD動画で記録した1回の給餌シーンで、残りは(@1:57〜)微速度撮影した10倍速映像です。
90分間で親鳥は7回帰巣したものの、そのうちの一回は給餌せず雛の様子を見に来ただけでした。
親鳥を個体識別出来ていないので、つがいの2羽が相変わらず共働きで巣に通っているのかどうか不明です。(今回の映像では2羽の親鳥が同時に登場することはありませんでした。)
もしかすると育雛に分担が生じ、巣立ち前の雛の世話は親鳥の一羽が担当し、もう一羽の親鳥は既に巣立った3羽の幼鳥に給餌したり面倒を見ているのかも知れません。

この日は明らかに給餌頻度が減りました。
しかし雛1羽あたりの給餌頻度を比べれば、前日(4羽の雛に親鳥2羽が66分間で計12回の給餌)までとあまり変わりないようです。
餌の争奪戦をしていた兄弟姉妹の雛鳥が巣立った後は、親鳥が与える餌を独り占めにすることができます。
巣立ち前に親鳥が雛への給餌を控えてダイエットさせ巣立ちを促す、という話が本当なのかどうか、私にはよく分かりませんでした。
この問題を調べるには、雛も全て個体識別した上で給餌をしっかり記録する必要があるでしょう。

独りで留守番している間、1羽で取り残された雛は羽繕いしたり羽ばたき練習をしています。
やがて巣内で動きが見られなくなりました。
私がちょっと目を離した隙に最後の1羽も巣立ってしまったのかと焦りました。
しかし鉄骨の陰に隠れ、巣にうずくまって休んでいただけと分かり、一安心。

この雛はやはり発育が遅れている印象で、体つきが華奢に見えるだけでなく、巣から離れて鉄骨を登ったり歩き回ったりするやんちゃな独り遊び(冒険)もやりませんでした。
性格が臆病なのかも知れません。
高所から飛び降りる巣立ち(初飛行)は、鳥の雛にとっても、いきなりバンジージャンプするような恐怖感があるのでしょうか?
一方、親鳥が巣の右下に張り出した鉄骨の端に止まり、そのまま帰巣せず南の杉林の方へ滑空したことが一度ありました。
巣に残った雛に飛び方のお手本を見せているのかな?

さて、巣立ったばかりの3羽の雛は、どこに行ったのでしょう?
なんとなく、鉄塔の南の杉林に隠れていそうな気がしてきました。
親鳥がときどき鉄塔に帰巣せず、南にある杉林の方へ低空で飛んで行くのが怪しい…。
幼鳥へ巣外給餌しに行ったのでは?と予想したものの、実際に確かめた訳ではありません。

映像には写っていませんが、給餌後に排泄した雛の糞を親鳥が持ち去り、近くの屋根で捨てていました。(排糞行動)
また、親鳥が縄張り防衛するのを目撃しています。
溜池の北の電線まで急行して、侵入したカラスを追い払いました。



以下は微速度撮影した映像のメモ。

再生時間  行動
0:25   帰巣、給餌
0:30   出巣 鉄骨の右端に飛んで移動しただけ。
0:38   出巣 今度こそ出巣
0:51   帰巣、給餌
0:53   出巣
1:20   帰巣、給餌
1:34   出巣
3:30?   幼鳥が巣にうずくまり、完全に見えなくなった。ときどき風で煽られる羽毛がかすかに見えるだけ
6:40?   幼鳥が一瞬立ち上がった。昼寝から起きた? すぐにまた座り込み、 姿が見えなくなった。
7:18   帰巣? やや引きの絵にすると、親鳥が鉄骨の右端に止まっていた。
7:19   出巣 雛に給餌せず飛び去った。
7:23   帰巣、給餌
7:26   出巣
7:31   帰巣、給餌
7:36   出巣
8:23   帰巣、給餌
8:25   出巣
9:02   撮影終了





※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→#35:ハシボソガラスの雛が全て巣立った後の空巣とその真下の糞(野鳥)



ラベンダーの花蜜を吸うモンシロチョウ



2016年10月中旬

街中の小さな花壇に咲いたラベンダーモンシロチョウPieris rapae)が訪花していました
翅をしっかり閉じて吸蜜しています。



2017/11/06

巣立ちが遅れた最後のハシボソガラス雛が独りで羽ばたき練習(野鳥)



高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#33


2017年6月中旬・午後15:23〜15:29

前日までハシボソガラスCorvus corone)の巣に4羽居た雛鳥がたった1羽になっていて焦りました。
成長の早い3羽は、昨日から今日にかけて既に巣立ってしまったようです。

まさか3羽が同じ日に巣立つとは予想外でした。
カラスの巣立つ瞬間を見届けるのは、やはりかなり難しそうです。

親鳥が給餌に戻って来るのを待つ間、独りぼっちで取り残された雛が羽繕いしたり跳んだり羽ばたき練習したりしています。
やはりこの個体は体つきも華奢で発育が遅れているという印象を受けます。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→#34:巣立ちが遅れた最後の雛に給餌するハシボソガラス親鳥【10倍速映像:野鳥】



シロツメクサの花蜜を吸うクロマルハナバチ♀



2017年7月下旬・午前6:58〜7:01・晴れ・気温26.4℃、湿度68%

公園の遊歩道に咲いたシロツメクサの群落でクロマルハナバチBombus ignitus)の小型ワーカー♀が朝日を浴びながら訪花していました。
この組み合わせは意外にも初見です。
クローバーと一緒に咲いていた別種の小さな白い花(種名不詳)には見向きもせず、シロツメクサで吸蜜をして回ります。
後脚の花粉籠は未だ空荷でした。

ところで、この日の私は短パンを履いていたのでヤブ蚊対策として(私としては珍しく)素足に虫除けスプレーを散布していました。
しかし、私が追いかけたり近づいたりしても虫除けスプレーのきつい匂いを蜂が嫌がっている素振りはありませんでした。
虫除けスプレーの有効成分はきちんと蚊に選択性があるようです。



【追記】
ローワン・ジェイコブセン『ハチはなぜ大量死したのか』によると、
受精が終わって花がもっとも避けたいことは、花粉媒介者たちにその後もかき回されることだ。大事なものを壊されてしまうかもしれないし、いずれにしろ、他の花に行ったほうが花粉媒介者にとっても得である。植物には、一人にしておいて欲しいことを示す方法がいくつもある。受粉が終わると色を変える花もいる。
博物学者のベルント・ハインリッチは、マルハナバチがクローバー(シロツメクサ)の花を訪れるとき、最終的な落ち着き先を選ぶ前に、いくつかの花を拒絶することがよくあるのに気づいた。匂いがヒントになっているのではないかと考えた彼は、実験を行ってみた。(中略)ほとんど何も練習しなかったのに、88%の確率で、マルハナバチがその花を訪れたかどうかを言い当てることができた。まだ蜂が訪れていない花は、甘いシロツメクサの香りが強くしたが、すでに蜂が訪れた花の香りは弱かった。 (p254より引用)
ベルント・ハインリッチは米国の著名なマルハナバチ研究者です。
私も今度、シロツメクサの花がマルハナバチを誘うシグナルとして出している芳香を嗅ぎ分けられるかどうか試してみます。


2017/11/05

ネジレバネに寄生されたキイロスズメバチ♂は飛べなくなる?



2016年10月上旬


▼前回の記事
ネジレバネに寄生されたキイロスズメバチ♂にブドウの果実を与えてみた

スズメバチネジレバネXenos moutoni)に寄生されたキイロスズメバチ♂(Vespa simillima xanthoptera)♂にブドウの実を給餌した後に透明プラスチック容器(苺パックを再利用)に入れると、蓋が無いのにいつまでたっても全然飛び立ちません。
ウロウロと容器内を徘徊するだけです。
脚力も弱っているようで、苺パックの壁面をよじ登れないでいます。

蜂は静止していても忙しなく腹式呼吸しています。
腹節の隙間から覗いて見えるネジレバネをようやくしっかり接写することができました。

キイロスズメバチ♂の運動能力に関しては、山中で見つけた時からずっと飛べないままで、飼育していると次第に歩行までも覚束なくなりました。
給餌して満腹になっても飛べないままなので、飢えて弱っていたのではなくて、やはりネジレバネに寄生されたことによる神経症状なのでしょうか。(寄主の行動操作?!)
それとも単純に、いくら餌を摂取しても寄生虫に栄養が横取りされてしまうのかな?


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


そのまま飼い続けたところ、この3日後にキイロスズメバチ♂は死亡しました。(採集してから4日後)
以下は標本の写真。


寄主の死後、このアングルからはネジレバネが見えなくなった。

フジの花蜜を吸うベニシジミ春型



2017年5月中旬

藤棚で満開に咲いたフジ(藤)の花で春型のベニシジミLycaena phlaeas daimio)が吸蜜していました。
翅を半開きにして日光浴しながら吸蜜しています。
風が強まった後半は、羽を閉じています。

薄紫色の花から花へ飛び立つシーンも撮りたかったのですが、この日は風が強く吹くせいで、ベニシジミは飛ばずに隣の花へ歩いて移動しています。
花穂が風で絶え間なく揺れて、撮りにくいコンディションでした。



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