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2025/02/18

越冬できずに死んだニホンアナグマの亡骸に群がるクロバエ

 



2024年3月下旬・午後13:30頃・晴れ 

平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が冬眠する営巣地(セット)を2台のトレイルカメラで長期間監視しています。 
カメラの電池とSDカードを交換するため久しぶりに現場入りすると、衝撃の展開が待ち構えていました。 
うららかな早春の日差しを浴びて雪解けが進む林床に、野生動物の死骸が横たわっていたのギョッとしました。 
場所はよりにもよって、巣口Rを北側から狙うトレイルカメラNを固定した灌木の真下でした。 

死骸は腐敗が進んでいて、辺りに死臭が漂っています。 
茶色の毛並みはボサボサでした。
一瞬タヌキかと思ったのですが、前足に鋭い爪があるのでアナグマと判明。 
なぜか左前脚の毛皮がずる剥けで、皮膚が露出しています。
後脚の太腿などに、スカベンジャー(カラス?)が死骸を損壊した形跡があります。 
むしり取られた茶色い毛玉が風で飛んだのか、少し離れた地面に落ちていました。 

自分では冷静を保っているつもりでも、やはり精神的なショックが大きかったようで、後で思うと現場での観察が色々と不充分でした。 
例えば横臥している死骸を裏返して反対側(右側面)も調べるべきなのに、やっていません。 
股間の外性器や乳首などを調べて性別を確認すべきだったのですが、とてもその気になれませんでした。 
ゴム手袋やビニール袋などを何も持ってこなかったので、死骸に触れることができない、という事情もありました。 
死んだのが若い個体(当歳仔)なのか成獣か、という点も気になるものの、分からずじまいです。 
成獣なら寿命かもしれません。 

解剖しない限り、アナグマの死因は不明のままです。 
今季は異常な暖冬で積雪量も例年より少なかったので、アナグマの冬眠と覚醒のリズムが狂って無駄に体力を消耗し、餓死したのではないか?と素人ながら疑ってしまいます。 
死骸は腐敗が進んでいるため、持ち帰って解剖する気になれませんでした。 
新鮮な死骸だったら、体重を計ったり、解剖して胃内容物や体脂肪の厚さを調べたりすれば、餓死かどうか分かったかもしれません。 
剖検して骨折などが見つかれば、車道に出た際に交通事故で負傷したまま、なんとか営巣地まで戻ってきて息絶えたというシナリオが考えられます。 
大型のスカベンジャー(鳥や哺乳類)が死骸を食べに来ているらしく、アナグマの死骸は毛皮の一部が剥ぎ取られ、露出した肉が食い荒らされていました。 

アナグマは餓死したのではなく、巣穴を乗っ取ろうとする他の野生動物に襲われて、殺されたのでしょうか? 
容疑者としては、ホンドギツネやホンドタヌキ、ホンドテン、ニホンイタチが考えられます。 
これらの動物はいずれも、ニホンアナグマの冬眠する巣穴に潜り込んで物色する姿がトレイルカメラに写っていました。 
「同じ穴のむじな」として平和に同居していると思っていたのに、まさか居候が家主を殺すでしょうか? 
タヌキは自分で巣穴を掘れないので、穴掘りの得意なアナグマに依存(片利共生)しないといけません。 

アナグマがいつ死んだのかも、私には分かりません。 
私が前回(16日前の3月中旬)現場に来たときはアナグマの死骸を見ていません。
そのときは雪の下に死骸が埋もれていた可能性もあり得ます。 
早春になって積雪が溶けた結果、アナグマの古い死骸が現れたのかもしれません。 
遺体の下は日陰となって、まだ残雪がありました。 
残雪と接地していることで死骸の右半分がずっと冷やされて続け(冷蔵保存)、腐敗の進行が辛うじて抑えられているようです。

次に、推理小説や刑事ドラマで最近よく活躍する法医昆虫学者の真似事をしてみました。 
素人が死亡時期を推定できるでしょうか? 
「寒の戻り」と言って寒波(雪)が断続的に戻って来る早春には昆虫がまだほとんど活動しておらず、腐肉食性昆虫相による死亡時期の推定は難しそうです。 

それでも、クロバエ科の仲間(種名不詳)が2匹、アナグマの死骸に来ていました。 
クロバエは成虫で越冬しますから、気温が高ければ死臭を嗅ぎ取っていち早く飛来します。 
この日はよく晴れて、日向の気温は高そうです。 
(午後14:21の気温は27℃でした。)
クロバエは口吻を伸縮して死骸の表面で吸汁していました。 
特にアナグマ死骸の耳の穴や、後脚太腿の食い荒らされた傷口を舐めています。 
歩いてアナグマの左目に移動したものの、アナグマは目をしっかり閉じていたので水分の多い眼球を舐めることは出来ず、離れていきました。
食事の合間に左右の前脚を擦り合わせて身繕いしています。 
クロバエの複眼を見る限り、この個体は♀のようです。(左右の複眼が頭頂で接していない。) 
もし♀なら死骸に産卵するはずですが、腹端を見ても、動画には撮れていませんでした。 
卵胎生で幼虫を産み付ける(産仔)ニクバエ科と違って、クロバエ科の♀は産卵するそうです。
このクロバエの種類を見分けられる方がいらっしゃいましたら、教えて頂けると助かります。 
クロバエ科は(死体の)膨隆期まで、ニクバエ科は腐朽期まで入植が見られる。ニクバエ科は温暖期にのみ活動するが、クロバエ科は(中略)気温が低い時期はクロバエ属をはじめとするクロバエ類が活動している。 (三枝聖『虫から死亡推定時刻はわかるのか?―法昆虫学の話 』p61より引用)

クロバエ科・ニクバエ科意外のハエは通常、新鮮期の死体には入植しない。(同書p63より引用) 

筆者はブタの死体を着衣状態で野外に放置して、経過を調べる研究実験も敢行しています。

晩秋・早春など温暖期と寒冷期の移行期(寒暖境界期) は気温が低く、ブタ死体の腐敗分解はゆるやかに進行するため、顕著な膨隆期はみられず、乾燥が進行する。(p111より引用)

 

寒暖境界期に活動するクロバエのウジは、低温対策のためか死体内部に潜行する傾向があり観察が難しいこと、成長もゆっくりと遅いことから、死後経過時間推定の指標とするには体長の計測のみでは不充分である (p112より引用)


現場では気づかなかったのですけど、死んだアナグマの前足の肉球の隙間に、白いウジ虫が蠢いているようです。 
動画を見直して初めて気づいたのですが、死骸の毛皮に付着している数個の小さな茶色い紡錘形の物体は、ハエの蛹(囲蛹)ですかね? 
死骸に産み付けられたハエの卵が孵化して低温下で蛆虫を経て蛹になったとすれば、アナグマが死んでからかなりの日数が経過していることになります。 
それとも、謎の異物はひっつき虫などの植物由来かな? 
クロバエの蛹が死骸の毛皮に付着した状態で見つかるのは不自然ではないでしょうか?
クロバエが動物の死骸に産卵した場合、老熟した幼虫は死骸を離れて地中などで蛹化するはずです。 
Perplexity AIの回答によれば、
死骸の毛皮にクロバエの蛹が付着していることは、稀ではありますが、以下の状況では可能性があります 
・死骸の状態: 腐敗が進んでいない比較的新鮮な死骸の場合
・環境条件:周囲に適切な蛹化場所がない場合 
・幼虫の数:大量の幼虫が存在し、競争が激しい場合
いずれにせよ、私のやった現場検証は中途半端すぎて、アナグマの死後経過時間を推定できそうにありません。 
遺体や虫のサンプルを全て持ち帰って丹念に調べないことには無理だと実感しました。 

アナグマがこの地点で死んだとは限りません。 
例えば巣穴の中で死んだアナグマを、タヌキが外に引きずり出した可能性も考えられます。 
監視映像にはそのようなシーンは写っていませんでしたが、トレイルカメラにはすべての動きが記録されている訳ではない(どうしても撮り漏らしがある)という点が、もどかしいところです。 
また、どこか遠くで見つけたアナグマの死骸を他の動物に横取りされないように、タヌキがここまで運んできたのかもしれません。
積雪期なら、雪面に足跡や死骸を引きずった跡が残ったはずですが、残雪がどんどん溶けていく早春にはそのような手掛かりを得られませんでした。

当時の私は、「定点観察していたセットの主が死んだとは限らない」と自分に言い聞かせていました。 
発情した♀を探し求めて求愛する夜這い♂など、余所者のアナグマ個体が遠征してきて偶然ここで死んだ(行き倒れた?)可能性もあるからです。 
しかし、その後も営巣地(セット)で定点観察を続けると、ここでアナグマの姿をまったく見かけなくなりました。
次にアナグマが現れたのは、何ヶ月も先のことです。(映像公開予定) 



つづく→ 


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2025/02/09

早春の林縁に座って日向ぼっこする首輪を装着したニホンザル♀

 

2024年3月中旬・午後14:10頃・晴れ 

根雪がほとんど溶けた平地の畑とそれを囲むスギ防風林の境界でニホンザル♀(Macaca fuscata fuscata)が地面に独りで座っていました。 
画面奥(北)のスギ林を向いて座り、太陽に背を向けていたということは、日光浴をしているようです。 
うつむいて自分で毛繕い(虱取り)をしていそうですが、後ろ姿からはよく見えません。 
枯れ葉や枯れ草に覆われた地面に対して、ニホンザルの毛皮の褐色は目立たない保護色になっています。 

キョロキョロと辺りを見回し、振り返った猿には黒い首輪が装着されていました。 
GPSテレメトリー調査の対象個体のようです。 
猿害対策のために、遊動するニホンザルの群れが農地に近づくと自動的に通報するシステムを構築しているのかもしれません。 
雪国で早春の畑には、ニホンザルが食害するような作物はまだ何も栽培されていません。

首輪ニホンザルは、何か小さな餌をつまみ食いして、もぐもぐと咀嚼しています。 
やがて立ち上がると、左へ歩き出しました。 
股間を見ると、この個体は♀のようです。
ところが少し歩いただけで、すぐにまた林縁で座り込みました。 
落ち葉をかき分けて、越冬明けの虫やクモなどを捕食しているのかもしれません。

開けた農地でも端の林縁に沿って歩いているのは、いつでも背後のスギ林に逃げ込めるように用心しているのでしょう。

2025/02/07

稲刈り後の田んぼで落穂拾いをして頭を掻くハシボソガラス(冬の野鳥)

 

2023年12月中旬・午前11:20頃・晴れ 

郊外の稲刈りが終わった田園地帯でハシボソガラスCorvus corone)が採食していました。 
イネの落ち穂を見つけると足で押さえつけ、白い小さな米粒を嘴の先端で器用に摘み上げて食べました。 
食後は、足で痒い頭をぼりぼり掻きました。 

この刈田には二番穂ひこばえは出ていません。 
関連記事(2ヶ月前の撮影)▶ イネの二番穂


ちなみに、田んぼの用水路の中にも複数のカラスが入っていました。 
水を飲んでいるのか、それとも水浴びしているのかな?と期待したものの、私が近づくと警戒したカラスは飛んで逃げてしまいました。 

1羽のカラスが何か餌(オニグルミ堅果?)を刈田に貯食したような気がしたのですが、肝心の埋めるシーンを撮り損ねてしまいました。 
その様子を周りで仲間が見ていたので、隠した餌はすぐに盗まれそうです。 


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2025/01/25

アナグマの溜め糞に集まり求愛と交尾拒否を繰り広げるベッコウバエ♀♂

 

2023年10月下旬・午後13:45頃・くもり 

平地のスギ防風林に残されたニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場stmpを定点観察しています。 
秋になると、ベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)が下痢便(軟便)状の糞塊に群がるようになりました。 
ベッコウバエの求愛・交尾拒否については、タヌキの溜め糞場でこれまで何度も(毎年のように)観察していますが、アナグマの溜め糞では初見です。 

ベッコウバエの性別を見分けるのは簡単で、配偶行動を観察するのに適しています。 
体長は♀<♂で、♀の腹部は黒いのに対して、♂の腹部は黄金色の剛毛で覆われています。 

泥状の糞塊の中を夥しい数のウジ虫が徘徊していました。 
ベッコウバエの幼虫も含まれているはずですが、キンバエやニクバエなど他種の幼虫も混じっているはずです。 
(私には幼虫の種類を見分けられません。)

溜め糞に居座る大型のベッコウバエ♂に注目して、その行動を動画撮影してみました。 
まるで「お山の大将」ですけど、実際には交尾できていない「あぶれ♂」です。 
交尾相手の♀を虎視眈々と待ち伏せしているのです。 
あぶれ♂は探雌求愛行動に忙しくて、獣糞を吸汁する暇がありません。 
溜め糞上でせかせかと歩き回り、ときどき立ち止まって身繕いします。 

ひっきりなしに翅を素早く開閉して斑点の斑紋を見せつけているのは、♀を誘引・誘惑するための求愛ディスプレイ(誇示行動)ではないかと思います。 
♂の翅を除去したり翅の斑紋(水玉模様)を改変したら、交尾の成功率が落ちるかどうか、実験したら面白そうです。

あぶれ♂は、近くに来る同種の個体に次々と飛びかかるものの、振られてばかりです。 
飛びつく相手の性別は問わず、とにかく誰にでも挑みかかります。 
ベッコウバエ♀♂の交尾は、早い者勝ち(スピード勝負)なのでしょう。 

♀の多くは既に交尾済みらしく、♂に求愛されても交尾を拒否し、振られた♂はあっさり諦めて離れます。 
一旦離れてから同一個体♀にすぐ再アタックすることもあり、また玉砕しました。 
近くで動くベッコウバエを見つけたら、♂はとにかく反射的に飛びついてしまうようです。 

ベッコウバエ♀による交尾拒否の意思表示が具体的に何なのか、私の知る限りでは解明されていません。 
おそらく胸部の飛翔筋を振動させるのではないかと、勝手に想像しています。 

ベッコウバエの♀は色気よりも食い気で、溜め糞上で吸汁や産卵に専念しています。 
ただし、ベッコウバエ♀の産卵行動を私はまだ実際に観察できていません。 
今回は時期が遅いのか、特徴的な形(扁平)をしたベッコウバエの卵は、アナグマの溜め糞上に見当たりませんでした。 
15日前に同所で定点観察した際には、ベッコウバエ♀が産み付けた大量の卵がニホンアナグマの糞の表面にまぶされてしました。(映像公開予定)

独身♂が他のあぶれ♂にも飛びついているのは、同性愛的な誤認求愛のように見えて、実はライバル♂を一番良い餌場から追い払っているのかもしれません。(闘争による占有行動) 

首尾よく交尾に成功した♂は、交尾後も♀にマウントしたまま配偶者ガードを続けて、ライバルのあぶれ♂から♀を奪われないように守っています。 
交尾中(あるいは交尾後ガード中)の♀♂ペアに対しても、あぶれ♂は構わず飛びかかります。 
しかし横恋慕しても♀の強奪に成功して交尾に至った例を私は見たことがありません。 

体格の小さなベッコウバエ♂は、♀を巡る♂同士の争いで不利なはずですから、サテライト戦略やスニーカー戦略を発達させても不思議ではありません。 
次回は小柄なベッコウバエ♂に注目して、その繁殖戦略をじっくり観察するのも面白そうです。


余談ですが、今回の記事を書くために調べ物をしているときに、ベッコウバエの学名がNeuroctena formosaではなく正しくはDryomyza formosaだとPerplexity AIから教えてもらい、訂正しました。
Neuroctenaという属名自体が後発異名で無効らしい。

2025/01/13

モエギザトウムシ?の群れがスギ林床で徘徊探索、身繕い、追跡逃走

 

前回の記事:▶  


2023年9月上旬・午後12:40頃・晴れ 

平地のスギ防風林で倒木の横に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場phを見に来たら、モエギザトウムシLeiobunum japonicum)の群れが集まっていました。
どうやら繁殖期のようです。 
どの個体に注目すべきか、あちこち目移りしてしまいます。 
複数個体を撮った寄せ集めの映像です。 

ヤブコウジ稚樹の葉の上に乗って、日光浴しながら身繕いしている個体がいました。 
歩脚に欠損はありません。 
特に長い第1歩脚(L1)の先端を口で舐めて掃除しています。 

タヌキの溜め糞場phで2匹のモエギザトウムシ?がニアミスしたのですが、1匹が薄暗いスギ林床を慌てて逃げ出しました。 

次はスギ風倒木の上を歩いてくる個体に注目しました。
歩脚が極細で異常に長いザトウムシが素早く静かに歩くと、まるでSF映画の惑星探査機ロボットのようだと、いつも見るたびに思います。 
この個体は、左足を1本欠損していました。 
スギ倒木の側面に沿って歩いていたら、倒木の表面に静止していたワラジムシPorcellio scaber)2匹と遭遇しました。 
モエギザトウムシが歩脚の先でワラジムシに触れたので、捕食シーン(狩り)が見れるかと期待しました。 
ところ次の瞬間、ワラジムシもザトウムシも慌てて逃げ出しました。 


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2025/01/11

ヒャクニチソウの花蜜を吸いながら排尿するオオタバコガ【蛾:FHD動画&ハイスピード動画】

 



2023年10月中旬・午後15:30・晴れ 

ヒャクニチソウ(百日草)の色とりどりの品種が咲き乱れる花壇に私が戻ってくると、オオタバコガHelicoverpa armigera armigera)がまた訪花していました。 
本種は訪花中も翅を小刻みに震わせ続けて飛び立つための準備運動(アイドリング)をしています。 
その翅をよく見ると、この個体は右の翅頂が欠けていて、30分前に観察したオオタバコガ♀とは別個体であることが分かりました。 

吸蜜後にクルクルと丸めて縮めた口吻が、オレンジ色の花粉にまみれていました。 
次の花に移動する前に身繕いして、顔や触角に付いた花粉を落としています。 
舌状花の花弁が散った後の筒状花でもオオタバコガは貪欲に吸蜜していました。 

オオタバコガが訪花中に240-fpsのハイスピード動画に切り替えたら(@1:14〜)、面白いシーンがたまたま撮れていました。 
吸蜜しながら腹端から透明な液体を1滴排泄したのです。(@1:25〜) 
本種の排尿シーン(おしっこ)は初見です。 
花蜜を大量に吸い、余分な水分を排泄して飛ぶために体重を軽量化したのでしょう。

 

2025/01/09

狩ったコモリグモ♀(蜘蛛)を運搬中に身繕いするクロクモバチの一種♀

 

2023年10月上旬・午後12:35頃・くもり 

農村部の舗装された農道を私がてくてく歩いていると、牛舎の横の路上をうろつく真っ黒な蜂を見つけました。 
狩ったばかりのクモの横でうろついていたので、クモバチ科(旧称:ベッコウバチ科)の♀だろうとすぐに分かりました。 

蜂は路上で立ち止まると、触角を前脚で拭って化粧しました。 
閉じた翅を細かく震わせています。 
狩りに成功したクモバチ♀は 、獲物を運搬中に私が近づいたので、警戒して獲物を一時的に放棄してしまったようです。 

まず、路上で横倒しのまま放置された獲物を検討しましょう。
コモリグモ科の一種(種名不詳)でした。 
既にクモバチ♀の毒針によって麻痺していて、全く動きません。 
クモの写真を見直すと腹部下面に外雌器があり、♀成体と判明。
クモバチの種類によっては、獲物を狩った直後に運搬しやすいように歩脚を根元から切り落とす者がいるのですが、この獲物では歩脚の欠損はありません。 







蜂は全身真っ黒で、翅も腹背も黒色でした。
以上の情報からクロクモバチの仲間(Priocnemis属)ではないかと蜂の種類を絞り込めたのですが、それ以上は採集して標本を精査しないと分かりません。 





さてこの後、私はどうすべきかが問題です。 
その場にじっと動かずに獲物に注目して動画を撮り続ければ、いずれクロクモバチ♀が取り戻しに来て運搬を再開し、地中に巣穴を掘って貯食・産卵するまで観察できたはずです。 
クモバチの種類によって獲物の運搬法や造巣法も違うので、そこも観察ポイントです。 

クモバチ♀が毒針を刺して獲物を狩る行動を私はまだ実際に見たことがありません。 
『ファーブル昆虫記』にも詳しく書かれてあるように、運搬中の獲物をピンセットなどで摘んで動かなくすると、狩蜂♀は獲物が麻酔から覚めて抵抗したと勘違いして再び毒針を刺して麻酔し直すのだそうです。 
いつかその実演をしようとピンセットを常に持ち歩いていたのですが、ザックの奥深くにしまい込んでいました。 
カメラの電池も動画撮影中に切れてしまいました。
己の準備不足を呪いながらカメラの電池を交換したりピンセットを取り出すのにもたついている間に、クロクモバチ♀はどこかに行ってしまい、見失いました。 
巣穴をどこに掘るべきか、獲物を置いて偵察に出かけたのかもしれません。
経験豊富な蜂屋さんなら、ピンセットを使わなくても咄嗟に指で獲物のコモリグモを押さえつけたかもしれません。
しかし、素手でうっかりクモバチ♀に刺されるとひどく痛むらしいと聞いていた私は、そこまでの覚悟や根性がありませんでした。 

久しぶりにクモバチ(狩蜂)と出会えてとても嬉しかったのですが、あまりにも久々すぎて観察のコツを忘れてしまい、どっちつかずの撮影になってしまいました。 
先を急ぐ他の用事があった私は、逃げた蜂が戻ってくるまで待てませんでした。 

2024/12/31

ホンドタヌキの営巣地で見つけたオオモンクロクモバチ

 

2023年7月中旬・午後14:45頃・晴れ 

雑草が繁茂する休耕地にあるホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の営巣地を久しぶりに見に来たものの、巣口にタヌキ幼獣の姿はなく、タヌキの気配を感じられませんでした。 
子育て中はなるべく巣穴に近づかないようにしていたのですが、最後に見たのは6月上旬です。


巣口から伸びる溝(アクセストレンチ?)の土が白っぽく乾いています。 
その地面でオオモンクロクモバチAnoplius samariensis)が翅を小刻みに開閉しながら身繕い(化粧)していました。 
本種の性別の見分け方を私は知りません。 
もし♀ならば、草むらで獲物のクモを狩ったり、裸地に巣坑を掘るかと期待したのですが、すぐに飛び去ってしまいました。 
オオモンクロクモバチが飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、背後からクロアリ(種名不詳)に奇襲され、驚いて飛び立ったことが分かりました。 

近くの森からニイニイゼミ♂(Platypleura kaempferi)の斉唱♪がかすかに聞こえます。

2024/12/30

野生ニホンザル♀の同性愛行動#2(若い♀同士の抱擁、マウンティング、正常位の擬似交尾など)

 

2023年12月中旬・午後15:55頃・くもり 

夕方に山麓を遊動する野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れを慎重に追跡していたら、太い風倒木(樹種はオニグルミ、隣の立木はハンノキ)の上に並んで毛繕いしているペアを見つけました。 
相互毛繕いではなく、片方の個体が一方的に甲斐甲斐しく毛繕い(ノミ取り)しています。 

気持ち良さそうに目を瞑って毛繕い(頭皮マッサージ?)を受けていた個体が急に顔を上げると、互いに対面したまま抱き合いました。
抱擁(ハグ)したまま相手を押し倒すと、下になった個体が腰を動かして陰部を相手に擦り付けました。 
正常位の性行動(疑似交尾)と思われます。 
倒木上で仰向けに寝た個体は、ゴツゴツして寝心地が悪いと思うのですが、短時間で終わりました。 
続けて、再び対他毛繕いに戻りました。 

このとき私が立っていた地面の足場がとても不安定で、猿の手前にある枝が撮影の邪魔だったこともあり、動画を撮りながら少し移動しました。
(映像がひどく手ブレして申し訳ありません。) 
幸い、ニホンザル♀のペアは私が動いても、すぐには逃げ出しませんでした。 

次にペアの一方が立ち上がると、パートナー♀の背後に回り込み、マウンティングしながら腰を動かしました。(pelvic thrust) 
マウントされた♀は、振り返って相手の顔を仰ぎ見たものの、両手は倒木の上に付いたままでした。 
最後の点が、典型的な異性間交尾時の♀の行動とは違いました。
(片手で♂の体に触れたり引き寄せたりするはず) 
短い疑似交尾が終わると、ペアは倒木上で再び対面で座り抱き合いながら体を軽く揺すりました。 
このとき口を少しもぐもぐ咀嚼しています。 
頬袋の中に詰め込んでおいた食料を食べているようです。 

無粋な出歯亀(私)がじっと見ているせいで落ち着かないのか、倒木上のペアが移動を始めました。 
倒木から地面に降りる際に股間がちらっと見えて、ようやく性別が♀と分かりました。 
尻の色が真っ赤ではなくてピンクだったことから、発情していない若い♀のようです。 

もう1頭も倒木から降りて、パートナーを追いかけました。 
土手の途中で追いつくと、背後からマウンティングしました。 
今回も両足を相手の膝の裏に乗せてマウントし、腰を動かしました。 
マウントした個体の股間に睾丸が見えないことから、やはり♀同士のようです。 
マウンティングを終えた直後に、目を凝らしてよく見たのですが、マウントされた♀の尻に白い精液は付着していないようです。(異性間の交尾ではない) 

土手を登って用水路沿いの小径に移動すると、横に並んで座って一方的な対他毛繕いを始めました。 
手前にあるオニグルミの倒木が邪魔で見えにくいのですが、その背後でニホンザル♀のペアが再びマウンティングしました。 
このとき、マウンティングの攻守交代をした点が興味深く思いました。(異性間では決して見られない?)
今回も、マウントされた個体は振り返って相手を仰ぎ見るだけで、パートナーを片手で掴んで引き寄せる動きはしませんでした。 

マウンティングの次は、また熱い抱擁に戻りました。 
♀同士でよくみられるこの行動を、ニホンザルの研究者は「ハグハグ」と呼んでいるのだそうです。(※ 追記参照)
一素人の擬人化した解釈ですが、ハグハグは♀同士の前戯のようなもので、性的な興奮が高まるとマウンティング(後背位)や正常位に移行するようです。 
ハグハグから相手を押し倒し、正常位になりました。 
今度は倒木の上ではなく地面なので、仰向けになっても安定していて背中が痛くありません。 

私に気づいたようで、警戒した個体が左奥へ歩き去り始めました。 
それを追いかけた別個体が背後からマウンティングしました。 
マウントを止めた若い♀のペアは、用水路沿いに設置された転落防止のフェンス(金網)を相次いで身軽に登り、手摺を伝って歩き始めました。 
ここで群れの仲間と合流したことになります。 
それまで、群れの仲間は若い♀同士の同性愛行動に何も干渉しませんでした。 

 仲間が何匹も手摺に並んでいた。♀aもフェンスを登って手摺へ。 用水路の対岸の林縁から伸びた落葉性広葉樹(クリ?)の枝に飛びつくと、ターザンのようにブランコ遊びをしながら、対岸に渡りました。 

この辺りから私はもう誰が誰だかニホンザルを個体識別できなくなりました。
手摺に座って体を掻いていた個体が振り返って仲良しのパートナーを見つけると、駆け寄りました。 
フェンスから地面に相次いで戻ると、そのまま地上でマウンティングしました。 
フェンスの手摺(断面が丸い、金属の横棒)の上では足場が不安定で、マウンティングしたくてもできないのでしょう。 
マウンティングに続けてハグハグを繰り返したということは、♀同士のようです。 

私が少し移動してペアに近づき、なんとか撮影アングルを確保しました。 
(ちょっとだけ目を離して空白時間があったので、さっきと同一の♀ペアかどうか確証がありません。) 
ペアは相変わらず水路横の小径に座り、対面でハグハグしていました。 
立ち上がると背後からマウンティングしました。 
このとき♀の外性器はピンク色でした(未発情)。

マウントを解除した2頭は、相次いで横のフェンスによじ登り、手摺から頭上の落葉樹の横枝に飛びつきました。 
先行個体は、枝にぶら下がったままターザンのように対岸のフェンスに移り、地面に降りました。 
ところが後続個体は体重が軽いのか、ブランコの振幅が小さくて対岸のフェンスには手が届きませんでした。 
どうするのかと思って見守ると、臨機応変にそのまま横枝をよじ登ってから、対岸のスギ横枝に飛び移りました。 
無事に対岸の地上に降りると、先行するパートナーの後を追って遊動を続けます。 
ニホンザルの群れは、全体としてねぐらとなる森を目指しているようでしたが、私が追いかけるので警戒してどんどん逃げているのかもしれません。 

ニホンザル♀同士の同性愛行動を観察したのはこの日が始めてでした。
しかも、同じ山系の少し離れた地点で同じ日に何度も観察できたので、とても興奮しました(interestingという意味で)。 

関連記事(同日の撮影)▶  

もしかすると、発情期なのにこの群れには成獣♂が居なくて(♂不足)、交尾相手の♂が見つからない♀たちが性的に欲求不満になっているのかと、現場では安直に推測しました。
猿害対策でなぜか♂ばかりが駆除されてしまったのか、などと先走って考えたりもしました。 
ところが、この日に撮れた動画をすべて見直すと、発情した成獣♂(αアルファ♂?)も群れと一緒に遊動している様子がしっかり写っていました。 
この日♀の同性愛行動を初めて撮影できて夢中になっていた私は、♂の存在が目に入らなかった(記憶に残らなかった)ようです。 


※ 夕方で薄暗いので、動画の画質が少し粗いです。 


※【追記】
今回見られた前戯のような抱擁は、ハグハグ行動と呼ばれるのだそうです。 
少し長いのですが、文献検索で見つけた学会発表の抄録を引用させてもらいます。
中川尚史, et al. ニホンザルにおける “ハグハグ” 行動パタンの地域変異. In: 霊長類研究 Supplement 第 22 回日本霊長類学会大会. 日本霊長類学会, 2006. p. 28-28.

 

【抄録】演者のひとり下岡は、金華山のニホンザルの“ハグハグ”行動について報告した(下岡、1998)。“ハグハグ”は、「2個体が対面で抱き合い、お互いの体を前後に揺さぶる行動」であり、以下のような特徴が認められた。1)2個体の行動が同調する、2)リップスマックを伴う、3)平均持続時間は17秒である、4)主にオトナ雌によって行われ、血縁の有無によらない、5)グルーミングの中断後や闘争後に見られる。以上の特徴から下岡はこの行動には、個体間の緊張を緩和する機能があると考えた。本発表では、金華山の“ハグハグ”行動と相同と思われる行動が屋久島のニホンザルでも観察されたので報告する。 当該行動は、2005年9月から12月、屋久島西部林道域のニホンザルE群を対象に、演者を含む総勢8名で行った性行動の調査中に観察された。 観察された行動は、下岡が報告した1)~5)の特徴、および機能を持っており、“ハグハグ”と相同の行動とみなすことができた。しかし一方で、行動パタンにわずかな変異が認められた。屋久島の“ハグハグ”も「2個体が抱き合い、お互いの体を前後に揺さぶる行動」であるが、必ずしも「対面で抱き合」うのではなく、一方の個体は他方の側面から抱きつく場合があった。さらに、屋久島の“ハグハグ”は、他個体を抱いた手を握ったり緩めたりいう動作を伴ったが、金華山ではそうした動作は見られていない。 行動の革新が見られ、集団中に伝播し、世代を超えて伝承することを文化と定義すれば、文化の存在を野生霊長類で証明することはかなりの困難を伴う。そこで、1)行動の地域毎の有無、2)行動を示す個体の増加、3)行動のパタンの一致などがその傍証として用いられてきた。金華山の“ハグハグ”とは微妙に異なるパタンで屋久島においても相同の行動が発見されたことは、上記3)の文化の傍証に相当する。今後、1)、2)の傍証についての情報を収集していく予定である。

今回の私の撮影地は山形県で、鹿児島県の屋久島よりも宮城県の金華山にずっと近いです。 ハグハグ行動のパターンが、金華山の個体群と近い事がわかりました。 
屋久島の個体群で記述されたハグハグのバリエーションとは全く違います。
ハグハグが緊張緩和のための行動という解釈には、個人的に納得できません。
今回、私の耳には、同性愛行動に耽るニホンザル♀の鳴き声やリップスマック(唇で鳴らす音)をまったく聞き取れませんでした。 


【追記2】
観察に不慣れな私が若いニホンザル♂を♀と誤認しているだけかもしれません。
だとすれば、同性愛でない可能性が出てきます。
子猿♂は睾丸が未発達だとしたら、私には性別を見分けるのはお手上げです。

2024/12/23

イモカタバミの花で採餌し飛び回るハキリバチの一種♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年10月中旬・午後15:15頃・晴れ 

民家の軒下の花壇に咲いたイモカタバミの群落でが訪花していました。 
正当訪花を繰り返して吸蜜しています。 
腹面のスコパが橙色の花粉で汚れています。 
採餌の合間に身繕いして、体に付着した花粉をスコパに移しています。

イモカタバミの花から飛び立つ瞬間の羽ばたきを240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:56〜) 


関連記事(4か月前、4年前の撮影)▶  

2024/12/17

冬眠の合間に巣穴の外で毛繕いする雪国のニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年1月中旬・午後17:55頃・気温-3℃・日の入り時刻は午後16:42 

雪が積もった平地の二次林でニホンアナグマMeles anakuma)の越冬用営巣地(セット)を自動センサーカメラで見張っていると、ある晩に1頭のアナグマが短い冬眠から目覚めて巣の外に出てきていました。 
上を向いて風の匂いを嗅いでから毛繕いを始めました。 
巣口R周辺の匂いをしきりに嗅ぎ回っているものの、一歩も動きませんでした。 
巣内Rに戻るまで見届けられず、残念でした。 

暖冬で積雪量が少なく、地面があちこちで露出しています。
アナグマの越冬行動に暖冬がどのような影響を及ぼすのか、何年も継続して観察する必要があります。

2024/12/11

ブタナの花を舐め身繕いするナミハナアブ♀

 

2023年11月上旬・午後12:55頃・晴れ 

河川敷に咲いたブタナの群落でナミハナアブ♀(Eristalis tenax)が訪花していました。 
ブタナの花蜜や花粉を舐めているようです。 
合間に手足で拭って身繕いしています。 
後半になるとようやく横向きになってくれて、口吻の伸縮がしっかり見えました。 
最後は左に飛び去るまで見届けました。


これで♀♂揃いました♪
関連記事(1年前の撮影)▶ ブタナに訪花するナミハナアブ♂

2024/11/27

ニホンザルのペアが初冬の夕方に林縁でマウンティング(若い♀の同性愛行動?)

 

2023年12月中旬・午後15:35頃・くもり・日の入り時刻は午後16:24 

夕方に遊動する野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れを慎重に追うと、山麓のスギ植林地までやって来ました。 
おそらくここにねぐら入りするようです。 
猿もだいぶ私に慣れてくれて、リラックスした行動を示すようになりました。 
(ニホンザルに「餌付け」は全くしておらず、根気強く観察者に慣れてもらう「人付け」の手法です。) 

薄暗いスギ林縁に座ってうつむき、自分で蚤取り(毛繕い)している個体aを撮り始めました。 
その左隣に別個体bが並んで座っているのですが、手前のスギ立木の陰に隠れて姿がほとんど見えません。 
ただでさえスギ林は薄暗いのに、山麓の夕方なのでかなり暗く、動画の画質が粗くなってしまいました。 
カメラの設定でゲインを上げてから撮り直します。 

やがて、2頭とも立ち上がると、bがaの背後に回り込み、マウンティングして腰を振りました(pelvic thrust)。 
マウンティングされた個体aの後ろ姿の尻を見る限り、♀であることは間違いないものの、尻が赤く腫脹してないことから、発情期ではない若い♀と分かります。 
マウンティングされながら♀aが振り返って相手の顔を仰ぎ見たり、片手で相手を引き寄せる動きをやりませんでした。 
したがって、これは交尾ではなくて、群れ内で順位を決める儀式的な優劣行動なのでしょうか? 
問題なのは、マウンティングした個体bの性別です。 
これも発情していない若い個体のようですが、素人目には♀に見えます。 
もし間違っていたら、ご指摘願います。 
若い♂だと睾丸が小さいのですかね?
とにかく薄暗くて、観察しにくい条件でした。 
短いマウンティングを済ませると、2頭は前後してスギ林の奥へ遊動して行きました。 


※ 動画の後半は編集時に明るく加工しています。 


実は同じ日の昼前にニホンザル♀同士(年齢差あり)の同性愛行動を観察したばかりだったので、今回も若い♀の同性愛行動ではないか?と気になりました。 



2024/11/23

ニホンアナグマの越冬用営巣地で年始に相互毛繕いするホンドタヌキのペア【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年12月下旬〜2024年1月上旬 


シーン0:12/27・午後14:17・くもり・気温15℃(@0:00〜) 
平地の落葉した二次林で越冬するニホンアナグマMeles anakuma)の巣穴を自動撮影カメラで見張っています。 
年末年始のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の登場シーンをまとめました。 


シーン1:12/27・午後22:31・気温-2℃(@0:03〜) 
年末の晩にタヌキが単独で現れたものの、アナグマの巣穴には近寄らずに左へ立ち去りました。 
雪面は凍結(クラスト)しているようです。 


シーン2:1/2・午前5:05・気温-5℃(@0:14〜)日の出時刻は午前6:52。 
新年の未明に監視カメラが起動すると、暖冬でセット(アナグマの営巣地)の雪解けが進んでいました。 
夜明け前の雪面は凍結しています。 
左から来たタヌキaがアナグマの巣口Lを点検してから、カメラを見上げました。 
次に別個体のタヌキbが隣の巣穴Rからのんびり出てきたので驚きました! 
てっきりアナグマが巣内で越冬していると思っていたのですけど、不在なのでしょうか? 
冬のアナグマは眠そうでぼんやりしていますし、タヌキとの同居を寛容に許容しているのかもしれません。(同じ穴のむじな
もっとありそうな別の可能性として例えば、画面の手前(下)から来たタヌキbがアナグマの巣穴Rに入って点検するシーンを撮り損ねただけかもしれません。 
タヌキbは巣口Rで身震いしてタヌキaと合流すると、その場に座り込んで仲睦まじく相互毛繕いを始めました。 
きっと♀♂ペアなのでしょう。

実は2分後にもトレイルカメラが起動したのですが、何も写っていませんでした。(映像は割愛)
タヌキのペアが手前の死角に立ち去った直後のようです。


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。



2024/11/22

雪山でニホンカモシカが塒入りしてから立ち去るまで【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年12月下旬・午後15:39〜19:04・日の入り時刻は午後16:30 


シーン1:12/28・午後15:39・気温0℃(@0:00〜) 
雪山でスギの木の下に見つけたニホンカモシカCapricornis crispus)のねぐらをトレイルカメラで監視していると、夕方にカモシカが戻ってきました。 
角がほっそりしているということは、若い個体のようです。 
性別がどうしても見分けられませんでした。 

塒の周囲を歩き回った私の足跡にはあまり気にしていないようで一安心。 
カモシカはまず、塒の横に立つスギの幹の匂いを嗅ぎました。 
そこで縄張り宣言の匂い付け(眼下腺マーキング)をよくすることが後に判明しました。(映像公開予定) 
次に塒の踏み固められた雪面の匂いを嗅ぐと、身震いしました。 
左後脚の蹄を使って体の痒い部位(首の辺り? 耳の後ろ?)を器用に掻きました。
前足、後足の順に膝を折ると、塒の雪面にゆっくり座りました。 
右(斜面の谷側)を向いた体勢で、反芻を始めました。 
最後に咀嚼物を再び飲み込みました。 


シーン2:12/28・午後16:50・気温0℃(@2:00〜)日の入り時刻は午後16:30 
1時間10分後にカモシカが塒から立ち上がったときには、辺りは真っ暗になっていました。 
舌をペロペロ出し入れしながらカメラの方を向いていますが、監視カメラの存在にはまだ気づいていないのか、あるいは気にしていないようです。 

右前足を一歩前に出すと、甲や蹄の根元を舌で舐め始めました。 
ただの毛繕いというよりも、冷たい雪面で長時間座っていて足が痺れたのかもしれません。(凍傷やしもやけ予防の行動?) 
欠伸をしたのですが、吐いた息は白く見えませんでした。 

塒で180度方向転換すると、逆向きで座り直しました。 
今度は斜面の山側を向いて(顔はスギの幹の方を向けて)座りました。 
カメラに対して背を向けたので、気づかれる心配はなくなりました。 
座位のまま、首を曲げて右脇腹?を舐めています。 


シーン3:12/28・午後17:55・気温0℃(@4:00〜) 
約1時間寝た後にカモシカが立ち上がりました。 
カモシカが舌をペロペロと出し入れする舌舐めずりの行動が何の意味があるのか、いつも不思議に思います。(※ 追記参照) 

立ったままで反芻を開始。 
トレイルカメラの方を凝視していたのが目線を外して、斜面の谷側を眺めています。 


シーン4:12/28・午後17:58・気温(@6:00〜) 
やがてカモシカは塒の雪面に座り直しました。 
今度は右向きに戻り、斜面の谷側を向いています。 

暗闇でもずっと目を開いたままで反芻を続けています。 
夜の塒に座っていても、寝ないで覚醒状態のときがあると分かりました。 


シーン5:12/28・午後17:55・気温0℃(@8:00〜) 
1時間後に目を覚ましたカモシカが、塒で立ち上がりました。 
舌をペロペロ出し入れしてから、カメラ目線になりました。 
遂に移動を始めました。 
右へゆっくり歩き出し、雪山の緩斜面を谷側へ下りて行きます。 
縄張りをパトロールしながら採食に出かけたのでしょう。 

向かった先に溜め糞場sr2があるので、尿意(便意)を催して排泄に出かけたのかもしれません。 
長時間居座っていても、カモシカはねぐらでは決して排泄しませんでした。 

この日の夜は塒に戻って来ませんでした。
風もなく雪も降らず穏やかな天気で、気温は0℃のまま安定していました。 


【考察】
ねぐら入りしたニホンカモシカの行動を撮影するのが悲願だったので、ついに成就して感無量です。 
私の撮影スタイルは行きあたりばったりのことが多いのですが、このテーマは何年もかけて段階を踏んで準備して、狙って撮れたので達成感があります。 

トレイルカメラで2分間の動画を撮る設定にしましたが、瞼を閉じて寝る瞬間が撮れてない以上、睡眠のための塒とは言えないかもしれません。 
あくまでも、「座位休息しながら反芻するためのお気に入りの場所」かもしれません。 
しかし、トレイルカメラが動体検知できない休息時間が1時間×3回もあったことから、とりあえず塒で寝ていたことにします。

塒に座って寝ていたカモシカは定期的に(1時間毎)立ち上がって座る向きを変えていることが分かりました。 
(寝返りを打つことはありません。)
冷えきった脚を伸ばして血行を良くするためでしょう。 
寝起きのカモシカの体温が実際にどれぐらいなのか、サーモグラフィカメラで撮影・測定したら面白そうです。 
枯れ草などフワフワの断熱材(寝床)を敷いたりしないで冷たい雪面に直接座って寝るのはいかにも寒そうですし、お腹が冷えて反芻・消化にも影響しそうです。 
しかし、体毛や脂肪のおかげで意外と寒さを感じないのかもしれません。 

酒井仙吉『哺乳類誕生 乳の獲得と進化の謎 』と題した本(ブルーバックス)を読んで勉強になったのは、
哺乳類で効率的に進化した動物が偶蹄目で、かれらは草食性で反芻する特徴がある。(中略) 割れた蹄(偶蹄)であったことで山岳、砂漠、積雪地帯に進出できた。(中略)ニホンカモシカなどは山岳地帯に棲息し雪の上で眠る。(中略)なぜ寒さに強いかといえば、微生物が第一胃で草を分解するとき発生する熱を利用でき、非反芻動物と全く異なる発熱機構を有しているからである。 (p164-165より引用)

体内の発酵熱を利用しているとは驚きました。
反芻する草食動物よりも、キツネなど肉食性の強い動物の方が、雪山で暮らすのは大変そうです。




【追記】
ニホンカモシカの舌出し行動について。
まさかヘビの舌舐めずりのように、舌を使って空気中の匂い物質を鋤鼻器に送り込むための行動なのでしょうか?
ニホンカモシカにも解剖学的に鋤鼻器があり、フレーメン反応などに関わるそうです。
しかし、AI(Gemini1.5)に相談してみると、次の回答を得ました。
ニホンカモシカが舌をペロペロと出す行動は、ヘビのそれとは異なり、鋤鼻器に空気中の匂いを送り込むために行われているとは考えられていません。

なぜそう考えられるのか?

鋤鼻器の構造: ニホンカモシカの鋤鼻器は、ヘビのように口の中に大きく開口しているわけではなく、鼻腔の奥に位置しています。そのため、舌で直接鋤鼻器に空気を送り込むことは構造的に難しいと考えられます。
行動観察: ニホンカモシカの舌出し行動を観察しても、ヘビのように舌を細かく振動させたり、先端を鼻先に近づけたりするような行動は確認されていません。
納得しかけたのですが、下線部についてダブルチェックしてもソースが見つからなかったので、要注意です。(AIの回答ではありがち)
さらにGeminiはニホンカモシカの舌出し行動の目的について、諸説を挙げてくれたのですけど、今回の状況で当てはまりそうなものがほとんどありません。
その中でストレス反応説が気になりました。
もしかすると、赤外線による暗視映像撮影でもカモシカはトレイルカメラの存在に薄々気づいていて、不安の現れが舌出し行動なのかもしれません。
野生動物に全くストレスを与えずに観察したり隠し撮りすることは不可能ですが(観測問題)、監視カメラをもう少し塒から離れた位置に設置し直した方が良いかもしれません。




【追記2】
1985年に出版された羽田健三 監修『ニホンカモシカの生活』という本は単著ではなく、信州カモシカ生態研究グループが分担して様々なテーマについて執筆した本です。
『夜の行動』や『多雪下のカモシカ』と題した章が特に私の興味を引くのですが、トレイルカメラや暗視カメラという文明の利器が発明される前の時代に愚直な直接観察や人海戦術によってこれだけ解明できたということに驚嘆します。
その昔は、あの著名な動物写真家の宮崎学氏であっても「カモシカは夜間には活動しない」と考えていた時代があったそうで、意外でした。
カモシカが昼夜行性であると調査で明らかにするのも一苦労したそうです。
積雪2mという豪雪地帯の雪山でサーチライトと双眼鏡を使って徹夜の直接観察を行った記録は壮絶です。
野生動物を観察する上でトレイルカメラの発明(安価な販売)は本当に革命的で、私のような個人でも易々と撮影ができるようになったのは、つくづくありがたいことです。
雪山登山に必要なさまざまな装備(スノーシューなど)の発明や技術革新も含めて、「巨人の肩に乗る」を実感しています。



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2024/11/20

年末年始の雪原を1〜3頭でうろつき巣穴に出入りするホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年12月下旬〜2024年1月上旬

シーン0:12/4・午後14:08・晴れ・気温26℃(@0:00〜) 
シーン0:12/11・午後13:30・くもり・気温18℃(@0:03〜) 
明るい日中に誤作動などでたまたま撮れた現場の様子です。 
休耕地にあるホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の営巣地を自動撮影カメラで監視しています。 
辺り一面に蔓延っていたクズやカナムグラなどの蔓植物はすっかり枯れています。 

タヌキが繁殖した後にニホンアナグマMeles anakuma)が巣穴(の一部)を乗っ取ったらしく、晩秋になると越冬に備えて巣材(断熱材の枯草)を巣穴に搬入しました。 

記録が断片的なために、この営巣地で誰が越冬するのか、いまいちはっきり分かりませんでした。 


シーン1:12/19・午前9:55・晴れ・気温9℃(@0:07〜) 
暖冬でしたが、ようやく根雪が積もり、一面の銀世界になりました。 
巣穴から右下手前に向かって野生動物が出入りしている足跡(深雪のラッセル跡)が新雪の雪面に残っているのに、その行動を監視カメラは検知できませんでした。 


シーン2:12/22・午前3:21・雪・気温−7℃(@0:11〜) 
巣穴から外に出てきた直後なのか、3頭のタヌキが互いに少し離れて雪面(ラッセル済みの獣道)に座っていました。 
カメラの方を向いて少し警戒してから、辺りを見回しています。 
小雪が横殴りに降っているものの、吹雪というほど激しくはありません。 


シーン3:12/22・午前3:35・雪・気温−6℃(@1:11〜) 
13分後に監視カメラが再び起動すると、雪は降り止んでいました。 
タヌキは1頭しか外に居ませんでした。 
ラッセル済みの獣道を右往左往しています。 
新雪の雪原に足を踏み入れてわざわざラッセルするのは、体力を消耗するのでやりません。 
他の2頭は入巣したのか、姿が見えません。 


シーン4:12/22・午前3:37・(@2:11〜) 
ようやく、タヌキは右奥の巣穴Rに入りました。 
1分間の録画時間内に入巣してくれるかどうかは、運次第です。


シーン5:12/22・午前3:41・(@2:43〜) 
再び巣穴Rから外に出てきた直後なのか、ラッセル済みの獣道を左へ歩き、巣口Lを経由して手前(二次林)向かってきます。 
なぜか途中でラッセル済みの獣道を外れ、果敢に新雪をラッセルしながら右へ向かい始めました。(新規ルートの開拓) 


シーン6:12/24・午前5:24・みぞれ?・気温-3℃(@3:43〜) 
みぞれのような湿雪が降っていました。 


シーン7:12/24・午前9:48・晴れ・気温10℃(@3:49〜) 
よく晴れました。 雪原が美しいです。 


シーン8:12/24・午後18:44・夜霧・気温-3℃(@3:53〜) 
天気が目まぐるしく変わり、晩になると霧が立ち込めていました。 
左の巣口Lの辺りで2頭の野生動物の目が白く光りました。 
おそらくタヌキでしょう。 
カメラを警戒しているのか、キョロキョロ見回すだけで、なかなか手前に来てくれません。 


シーン9:12/25・午後22:46・気温-1℃(@4:14〜) 
翌日の晩遅くにも夜霧が立ち込めていました。 
右奥の巣口Rの辺りで動くタヌキの目が白く光っています。 
その後には、奥の雪原に移動した同一個体?が振り返る目が光って見えました。 


シーン10:12/27・午後20:53・気温-2℃(@4:26〜) 
2日後の晩には晴れてくれました。 
雪面は凍結した後にうっすらと雪が積もったようです。 
このような雪面だと動物は足が潜らないので、歩きやすくなります。 
深雪をラッセルした獣道は不鮮明になり、雪原を自由に歩き回った足跡が残されていました。 

タヌキが右奥の巣穴Rにゆっくり入りました。 
と思いきや、すぐに後ろ向きで出てくると、右奥の農道へ向かいました。 
画面奥で真っ直ぐな水平線のように見えるのが、深雪に埋もれた農道です。 


シーン11:12/28・午前5:54・気温-7℃(@5:26〜)日の出時刻は午前6:50。 
夜明け前にタヌキが右の巣穴Rを点検してから、左奥の巣穴Lに入りました。 


シーン12:12/28・午後20:27・気温-1℃(@6:03〜) 
久しぶりに2頭のタヌキが同時に写りました。 
1頭が右の巣穴Rに入っている間に、もう1頭は右へ立ち去りました。 


シーン13:12/28・午後22:57・気温-2℃(@6:30〜) 
雪原を右から歩いて来た2頭のタヌキが、2つの巣口R、Lを順に点検したものの、結局入りませんでした。 
右へ立ち去りました。 


シーン14:12/30・午後20:14・気温0℃(@7:30〜) 
巣口Rの辺りで匂いを嗅ぎ回ってから、雪原を左へ立ち去りました。 


シーン15:1/5・午後17:08・気温7℃(@8:19〜)日の入り時刻は午後16:37。 
新年の日没後に監視カメラが起動すると、根雪がだいぶ溶けていました。 
やはり暖冬らしく、休耕地の地面があちこちで露出しています。 
左手前の巣口L(露出した地面の枯れ草)に座ったタヌキが、カメラ目線のままで毛繕いしていました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
この期間に撮れた監視映像を見る限り、この巣穴ではホンドタヌキが越冬しているようです。 
ニホンアナグマと同居していて「同じ穴のむじな」だとしても、アナグマは冬ごもりして一度も外に出てきてないことになります。 

動画に同時に写ったタヌキの数が最大で3頭というだけで、きっちり個体識別すれば登場した延べ個体数はもっと多い可能性もありえます。




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