2022/01/15

水場の周囲を夜な夜な活動するノネズミ(その2)【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2021年10月中旬
前回の記事:▶ 水場の周囲を夜な夜な活動するノネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

里山の水場を監視するトレイルカメラ(無人センサーカメラ)に夜行性のノネズミ(野ネズミ)の仲間がよく写ります。 
池畔の崖に開いた横穴にカメラを仕込んだら、そこはノネズミが掘った巣穴の出入り口(のひとつ)だったようです。 
アカネズミApodemus speciosus)またはヒメネズミApodemus argenteus)だと思うのですが、今のところ私には動画で見分けることができません。 

シーン1:10/15 午前3:20頃 
冒頭でゴトゴト物音がして、ノネズミがカメラのすぐ前を素早く横切りました。 
ノネズミが通ると、毛皮に付いていた土埃が空中にしばらく舞っています。 

シーン2:10/19 午前1:40頃および午前3:25頃 
カメラのすぐ前を何度も右往左往しています。 
その後、ノネズミが巣穴のすぐ上の崖を登ったようで、土砂が落ちてきました。 

被写体があまりにも至近距離過ぎて、ノネズミが一体何をしているのかさっぱり分かりません。 
トレイルカメラに巣穴の入口を塞がれて、ノネズミは困っているのでしょうか?
しかし実はすぐ横にもう一つの横穴が開いていて、第2の出入り口となっているようです。
越冬準備のための貯食行動なのかもしれません。 
あるいは、巣材の枯草を巣穴に搬入しているのではないか?と思いつきました。 
「百聞は一見に如かず」ですから、引きの絵で巣穴を狙う監視カメラをもう1台導入する必要がありそうです。



コスモスの花粉を舐めて飛び立つナミハナアブ♂【HD動画&ハイスピード動画】

 

2021年10月中旬・午後15:00頃・くもり 

農村部の道端に咲いたコスモス(秋桜)の群落でナミハナアブ♂(Eristalis tenax)が訪花していました。 
花弁が薄いピンク色の品種でした。 

ナミハナアブ♂は口吻を伸縮させて雄しべの先の葯から黄色い花粉を舐めています。 
蜜腺のある位置ではないので、吸蜜とは言えません。 
ときどき左右の前脚を擦り合わせて身繕いしました。
脚に付着した花粉を払い落とすのではなく、口吻で舐め取っています。 
秋風が吹いて秋桜の頭花が激しく揺れてもナミハナアブ♂は平気で食事を続けています。 
アングルを変えながら同一個体を撮影しました。 

飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:17〜)

2022/01/14

山中の水場に夜な夜な飛来するコウモリ(その2)【トレイルカメラ:暗視映像】

前回の記事:▶ 夜の水場に飛来するコウモリ【トレイルカメラ:暗視映像】
2021年10月中旬 

里山の水場に夜な夜な飛来するコウモリが無人センサーカメラ(トレイルカメラ)に写っています。 
1週間分の暗視映像をまとめました。 
コウモリの登場時刻はまちまちです。 
森の中や池の周囲を飛び回り、獲物となる昆虫を探索しているのでしょう。 
気温が下がる秋の夜は虫があまり飛ばない気がしますが、この機種は動画モードの際に気温のデータが記録されないのが残念です。 
カメラの存在に慣れてきたのか、コウモリはときどき池の水面をかすめるように飛びながら水を飲んでいるようです。 
バットディテクターとトレイルカメラを組み合わせて、超音波によるエコロケーションを聞いてみたいものです。 

シーン1:10/12 午前00:20頃 
水面にさっと素早く触れる行動を2回続けてやりました。 
このとき水を飲んでいるのではないかと思います。 
あるいは水面のアメンボを捕食しているのでしょうか?
それとも、ツバメのように飛びながら水浴してるのかな? 
▼関連記事(1年前の撮影)
録画のフレームレートや画質をもっと上げたトレイルカメラの上位機種が欲しくなります。 
水面にアプローチする方向は毎回違いました。 

シーン2:10/15 午前00:40、1:25、および3:20頃(@0:20〜) 
水面すれすれを往復してから飛び去りました。 
コウモリが水面に触れると、波紋が広がるので分かります。 

シーン3:10/17 午後18:00頃(@0:55〜) 
少し霧が発生しているようです。 
水場の上を活発に飛び交いました。 

シーン4:10/18 午後19:20頃(@1:00〜) 
池の上を活発に飛び交いました。 

シーン5:10/19 (@1:11〜) 
此岸で野ネズミが活動しているようですが、カメラの死角で見えません。 
そのタイミングでコウモリが画面奥の森から飛来しました。 
果たして偶然でしょうか? 
獲物と期待して確かめに来たのかもしれません。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


 
↑【おまけの動画】 
Bats Dodge Crocodile Infested River | Nature's Biggest Beasts | BBC Earth 
オーストラリアに生息する昼行性のコウモリは暑い夏に体を川の水で濡らして体温調節するそうです。 
塒に戻り、濡れた毛を舐めて水を飲むのだとか。 
所変わればコウモリの飲水行動・水浴行動も変わるのですね。

サザンカ(白花)で訪花吸蜜するキイロスズメバチ♀の群れ【HD動画&ハイスピード動画】

 

2021年10月下旬・午後13:10頃・晴れ 

民家の庭先に咲いたサザンカ(山茶花)の白い花にキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)のワーカー♀が集まり、忙しなく訪花していました。 
この日見た様々な訪花昆虫の中で、最も個体数の多い優占種がキイロスズメバチでした。 
なぜかハナバチ類は全く訪花しておらず、スズメバチ類がサザンカの授粉を助けているようです。 

隣り合う花で複数のキイロスズメバチ♀が吸蜜しても互いに無関心で、喧嘩にはなりませんでした。(蜜源の占有行動なし) 
おそらく同じコロニー出身なのでしょう。

吸蜜するキイロスズメバチ♀が別の花に飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:47〜) 
いつも花弁をよじ登ってから飛び立っていました。 

キイロスズメバチ♀の数が多いので、サザンカの白花のあちこちで様々なドラマが繰り広げられていました。 
つづく→

 

2022/01/13

朝の山林で採食するホンシュウジカ♂@山形県【トレイルカメラ】

 

2021年10月中旬・午前9:40頃・晴れ 

里山の水場を監視するトレイルカメラ(無人センサーカメラ)でまたもや衝撃映像が撮れました。 
なんとホンシュウジカ♂(Cervus nippon centralis)が登場したので仰天しました。 
ここ山形県では20世紀前半に絶滅したのに、いつの間にか復活していたようです。 
山形県の最新版レッドリストからホンシュウジカは外されていました。
福島県から北上したのか、新潟県や宮城県から山伝いに来たのか、興味深いところです。

【参考文献】 

晴れた午前中なのに、現場は鬱蒼とした雑木林に囲まれてかなり暗く、赤外線の暗視モードで録画されていました。 
てっきりいつものニホンカモシカかと思いきや、頭部に立派な角があるのでニホンジカの♂と判明しました。 
生きた鹿を見たのは昔、奈良公園に行ったとき以来なので、とても興奮しました。 
せっかくのスクープ映像がモノクロなのは残念ですが、林道に浮かぶ鹿のシルエットが逆に幻想的です。 

池の対岸で地面の匂いを嗅いで回り、下草や灌木の葉を採食しているようです。 
池の水を飲むかと期待したのですが、なぜか水辺には近寄らず、何かに驚いて急に右へ跳んで水場から離れました。 
トレイルカメラの立てる微かな物音に敏感なのか、それとも私が池の岸辺に置いた茹で栗に気づいて警戒したのかもしれません。 
(ヒトの体臭を嗅ぎ取った? カビの生えかけたクリの存在が気に入らない?) 

その後は林道を歩いて灌木の葉を採食しているようです。 
角からボロボロに垂れ下がっているのは、角から剥がれかけた皮膚なのか、あるいは枯れ葉などのゴミが角に付着したのかな? 

私の通うフィールドで見つかる蹄の足跡と言えば、かつてはカモシカだけでした。 
見分ける必要がなくて楽だったのですが、最近は絶滅から復活したイノシシとシカもたまに出没するようになり、ややこしくなりました。 
有蹄類の足跡の見分け方をしっかり勉強し直さないといけません。 

オオカミが絶滅して以来、現代の日本の山林は捕食者の大型肉食獣が不在という歪な生態系になりました。 
その結果、草食獣が増え放題となり、農作物の食害や山林の荒廃が生じるようになりました。 
特にシカ問題はどこも深刻です。
山形県も対岸の火事ではなくなりました。


【追記】
古典的名著(バイブル)の誉れ高い、高槻成紀『北に生きるシカたち シカ、ササそして雪をめぐる生態学(復刻版)』を読んで北国のニホンジカについて勉強してみたら、私の認識に誤りがあることが分かりました。
奥羽山脈の西側に位置する山形県は日本海側の気候に晒される多雪地帯です。
多雪地帯に適応したニホンカモシカと異なり、ニホンジカは蹄の面積が小さくて深雪では活動が著しく制限されてしまうのだそうです。
草食獣としては同じでも、ウシ科のニホンカモシカは低木を食べるブラウザー(browser)的、シカ科のニホンジカはイネ科の草を食べるグレイザー(grazer)的とされ、解剖学的にも生理学的にも生態学的にも異なるのだそうです。
シカの主な食料である常緑の笹が雪の下に埋もれてしまうと、飢えた鹿は低地または寡雪地域に移動します。
したがって、山形県でシカの個体数が増える可能性は今後も低いでしょう。
山形県はシカによる深刻な食害問題から冬の豪雪によって守られているのです。
逆に、暖冬が続いてシカの目撃例が山形県で増えるようだと、地球温暖化の影響が非常に深刻であることを意味します。

・シカの分布は基本的に積雪50cm以下の地域に限られており、100cm以上の地域にはほとんどいない(p101より引用)
・ニホンジカは多雪地域には進出できなかった。(p167より)
・東北地方の山地性落葉樹林は積雪量に対応して、太平洋側にブナ-ミヤコザサ-シカ複合体が、そして日本海側にブナ-チシマザサ-カモシカ複合体がある。(p104より)

今回10月中旬に雄鹿の動画が撮れた意味もだいぶ分かるようになりました。

・8月下旬になると♂の角は伸び切り、皮が剥げるようになる。♂は角を藪に荒々しく打ち付けて皮を剥ぎ、その後、角を木の枝や幹にこすりつけて磨きあげる。(中略)♂の体毛がますます黒くなり、行動も猛々しくなる10月、いよいよシカの交尾の季節になる。(p133より引用)
・10月をピークとする季節はシカの交尾期であり、この季節に成♂は体力を消耗させる。(中略)この時期の成♂は食物を摂ることも忘れたように猛々しくなり、♀を追い掛けまわす。(p150より)



つづく(1年後の撮影)→里山のトレイルカメラに写ったホンシュウジカの下半身 



ノシメトンボ♀♂交尾ペアの連結飛翔【HD動画&ハイスピード動画】

 

2021年10月中旬・午前11:50頃・晴れ

郊外の道端で交尾中のノシメトンボSympetrum infuscatum)♀♂ペアがコンクリート塀の天辺に止まっていました。 
♂は翅を深く下げて休んでいます。 
コンクリートに映る翅の縁紋や翅脈の影も美しいですね。 
 
飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:17〜) 
私がノシメトンボ♀♂の目の前で脚を動かして蹴る素振りをして飛び立たせました。
更に再生速度を落とした1/40倍速のスローモーションを見ると、 ♂が先に反応して飛び立ち、続けて♀も羽ばたき始めていることが分かりました。 
交尾姿勢のまま、♂が主導権を握って飛び去りました。 
コンクリートの塀だと私が思っていたのは、ソバ畑と車道の境界となる土留めでした。

直前までノシメトンボ♂は翅を深く下げていたので、飛び立つには一度翅を上げてから打ち下ろす必要があります。 
本当の捕食者が襲ってきたときなど危機に瀕した際には明らかにタイムロスになるはずです。 
どうして翅を深く下げて休む行動が淘汰されずに生き残っているのでしょうか? 
予備動作無しでいきなりフルパワーで翅を打ち下ろすことができない理由が何かあるのかな? 

飛んで逃げたノシメトンボ♀♂は隣のソバ 畑に逃げ込みました。 
今度はソバの実に止まって交尾を続けています。 
おかげで、側面のアングルで交尾姿勢がしっかり見えるようになりました。 
♂の副性器に♀の尾端を接触して移精しているようです。 
ときどき♂の副性器の辺りが動いているのは、連結角度を調節しているのか、精包を♀に送り込んでいるのでしょう。 
今度も♂は翅を深く下げて休んでいました。 

先を急ぐ用事があった私は、ノシメトンボ♀♂の交尾終了(連結解除)まで見届ける余裕がありませんでした。

(ノシメトンボの)交尾はおもに午前中。植物などに止まって行われる。(図鑑『日本のトンボ』p383より引用)

確かに今回の撮影時刻は正午前でした。 

2022/01/12

夜の雑木林を飛び回るヤママユガ?(蛾)【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2021年10月中旬・午後19:00頃・ 月齢11.7

里山の水場に設置したトレイルカメラ(無人センサーカメラ)に夜行性の蛾が飛ぶ姿が記録されていました。 
白黒の暗視映像では蛾の種類を見分けられませんが、大型のようですし、周囲は雑木林なので、クスサンとかヤママユなどのヤママユガ科ではないかと思います。 
ほぼ無風の静かな夜なのに、まるで風に舞う落葉のような複雑な飛び方をしていました。
♂が性フェロモンの匂いを頼りに♀を探索している探雌飛翔なのかもしれません。 

トレイルカメラは恒温動物の熱源を動体検知して起動するはずなのに、変温動物の蛾がヒラヒラと横切っただけでセンサーが反応したのでしょうか? 
(センサーが反応した原因がこの蛾とは限りません。)
飛翔中の大型の蛾は体温が意外に高いのかもしれません。
運が良ければ闇夜で繰り広げられるコウモリと蛾の攻防戦も撮れそうなので、気長に監視を続けることにします。

タヌキの溜め糞に集まり翅紋誇示と占有行動・誤認求愛を繰り広げるベッコウバエ♂の群れ

 

2021年10月上旬・午後16:30頃・くもり 

スギ林の暗い林床をトラバースする山道にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞を定点観察しています。
前回の記事:▶ タヌキの溜め糞で吸汁するベッコウバエ♂
前回の10日前に撮った動画です。 
話の都合上、実際の時系列とは逆になりました。 

私が近づくと、溜め糞に集まっていたベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)の群れが一斉に飛び去りました。 
私がじっと立ち尽くしてしばらく待つと、ベッコウバエは溜め糞に戻ってきて、互いに小競り合いを始めました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ(@4:19〜)すると、非常に面白いドラマが見えてきます。 
ベッコウバエの性別を正しく見分けられるようになったので、今度は行動をしっかり解釈できそうです。 

現場は昼なお暗いスギ林で、しかも時間帯が夕方でした。 
手持ち夜景モードで撮っても非常に暗くて画質が粗い動画になりました。 
かと言って、眩しい照明を点灯すると、昆虫の行動に影響を与えてしまいそうです。
動画編集時に自動色調補正を施したところ、ベッコウバエの体色がどぎつく不自然になってしまいました。 
私はベッコウバエの行動に興味があるので、見やすいように明るく補正したのです。 
(赤外線の暗視カメラで記録すべきでしたね。 )

ひたすら糞を舐めている個体もいますが、今回は小競り合いの行動に注目します。 
♂は閉じている翅をときどきパッパッと素早く開閉しています。 
翅を広げてくれたおかげで、腹背が黄色いことから♂と分かります。(♀の腹背は黒色) 
翅の斑点模様を誇示しているのでしょうか? 
しかし、翅紋に性差は無いので、♀を惹き寄せる求愛誇示ではない気がします。 
(虫の目で見える紫外線の下では翅紋に性差があるのかな?)
翅の開閉運動は、相手に飛びつく前の準備運動や闘争誇示なのでしょうか。
周囲にライバル♂が多いときにしか翅紋誇示はやらない印象です。 
♀は溜め糞上で翅紋誇示をしないだろうと予想するのですが、確かめたいところです。 

あぶれ♂は翅紋誇示をしながら別個体に歩み寄ると、素早く飛びかかって背後からマウントしました。 
しかし交尾には至らず、すぐに離れました。 
どうやら、あぶれ♂同士が互いに誤認求愛を繰り返しているようです。 
一旦離れてから、同じ相手にマウントをやり返すこともあります。 
ベッコウバエの交尾は早い者勝ちらしく、嫁不足で焦るあぶれ♂(独身♂)は目の前で動く仲間には性別を問わずとりあえず飛びついてみるのでしょう。 

ヒキガエルのカエル合戦のように、誤認求愛でマウントされた♂は「俺は♂だ離せ!」とrelease callを発するのかもしれません。 
ベッコウバエは鳴かないはずですから、独特の羽音がするのかもしれません。 
高性能のマイクで録音してみたくなります。
そんなことをしなくても、相手に触れると体表の化学組成で直ちに性別が見分けられるのかもしれません。

しばらく観察していると、どうも単純な誤認求愛では説明できないような気がしてきました。 
♂同士のマウント合戦は闘争行動も兼ねているようです。 
この点は、マウント行動で群れ内の優劣を決めるニホンザルを連想しました。
相手を傷つける武器を持たないベッコウバエ♂がどうやって勝負を決めているのが分かりません。
♂の体長にけっこう個体差があるので、おそらく単純に組み合った時の体格や体重で♂同士の優劣が決まるのではないかと思います。 
タヌキは溜め糞の上に次々と排便しますから、鮮度の異なる糞が積み重なっています。 
溜め糞の中でもベッコウバエ♀にとって産卵に最適な場所があるのでしょう。 
そのベストな糞を巡って♂同士がお山の大将のように争い、占有行動を繰り広げているようです。 
♂同士でマウント合戦を繰り返すと、体格の良い個体(α♂)がライバル♂を追い払ったり、劣位の小型♂個体が遠慮して(怯んで?)離れていく様子が見られました。 
結果的にα♂が最も質の良い糞塊の天辺に陣取り、産卵に来る♀を待ち伏せして交尾するのでしょう。 

ところが、占有行動だけでも説明できません。 
下剋上を挑むかのように、大型の♂に対して小型の♂が背後から飛びつくことがあるからです。 (@7:36)
♂が相手に飛びかかる行動はやはり、♀と誤認した求愛行動なのでしょう。 
小型♂でもかなりアクティブな個体がいて、性別問わず求愛アタックを繰り返しています。 
1匹の♂がライバル♂に飛びかかると、その動きに近くの別個体♂が反応して連鎖反応のように三つ巴のマウント合戦が始まることもありました。 

♂同士の小競り合いに気を取られていたら、いつの間にか1組の♀♂カップルが成立していました。 
求愛が成就して交尾を始める瞬間を見逃してしまい、残念無念。 
興味深いことに、必ずしも体長が最大の♂が♀との交尾に成功している訳ではありませんでした。 
おそらく♀に選択権は無く、早い者勝ちでカップルが成立してしまうのでしょう。 
交尾中の♂に対してもあぶれ♂は背後から飛びついてマウントを試みます。 (@7:50)
しかしあぶれ♂は連結した交尾器の間に割り込んだり♀を強奪することはなく、紳士的にすぐ離れました。 
飛びつかれた交尾中の♂は抗議の印として、中脚を高々と上げていました。(この行動は蜂やコガネムシでも見たことがあります。)
♀♂交尾ペアが少しでも身動きすると、近くで待機しているあぶれ♂が反射的に飛びついてしまうようです。 (@9:13)

溜め糞上で翅紋誇示もせずにひたすら吸汁している個体(性別不明)に対しても遂にあぶれ♂が飛びついてマウントしたものの、すぐに離れました。(@10:02)

溜め糞上で繰り広げられるベッコウバエの小競り合いは、♂同士の誤認求愛でもあり、ライバル♂を追い払うための闘争行動(占有行動)でもあると分かってきました。
ベッコウバエも腹背の色だけで仲間の性別を見分けているのだとしたら、 翅を閉じている相手の性別は飛びついてみるまで分からないことになります。
溜め糞上でベッコウバエの性比は極端に偏っていて、深刻な嫁不足です。(♂に対して♀の数が少ない) 
♀♂カップルが成立して交尾を始める瞬間を観察するのが次の課題です。 
タヌキはほぼ夜行性で、溜め糞に排便するのは夜です。
早朝から溜め糞を終日観察してみる必要がありそうです。
ベッコウバエの♀は早朝から新鮮な獣糞に飛来して♂と交尾を済ませ、その場に産卵するような気がしてきました。

しばらくすると(@3:23〜)、♂同士の小競り合いは減り、群れは落ち着きました。 
あぶれ♂同士が適度な間隔を開けて溜め糞上に陣取り、翅紋誇示もやらなくなりました。
ベッコウバエにとっても暗くなり過ぎて、活動限界を迎えたのかもしれません。
そこへメタリックグリーンに輝くキンバエ(種名不詳)が飛来しました(@3:47)。 
別種のキンバエに対してベッコウバエ♂が飛びかかることはなく、無反応でした。 

溜め糞から少し離れた下草の葉に単独個体(性別不明)が乗って身繕いしていました。(左右の手足を擦り合わせ@4:06)
あぶれ♂が争いを避け、溜め糞の辺縁部で♀の飛来を待ち伏せする作戦なのかもしれません。 (劣位♂のスニーカー戦略だとしたら面白いですね)

 

2022/01/11

真夜中に池の水を飲むホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2021年10月中旬・午前4:20頃・ 

無人センサーカメラ(トレイルカメラ)を仕込んだ水場にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が登場しました。
真夜中にカメラ目線の両目が白く爛々と光って見えます。 
どうやらトレイルカメラの存在に気づいて警戒しているようで、頭を上下させて風の匂いを嗅ぎ、辺りの様子を用心深く伺っています。 
やがて急斜面を水辺まで降りて水場の水を飲み始めました。 
タヌキの飲水シーンは初見ですが、犬のように舌で水面をすくって飲んでいます。 
水面から波紋が広がるものの、水音は聞き取れませんでした。 
水面にタヌキの顔や光る眼が映っています。 
後ずさりで崖を登り返し、右岸をカメラの方へ近づいて来ました。 
丸々と太っている個体です。
画角の右端で再度、池の水を飲みました。 
どうもカメラの赤外線LEDを警戒しているような素振りです。 
(タヌキの目には薄っすらと赤く光って見えて怪しいのかもしれません。)
 ここで録画が一旦停止しました。 

44秒後にセンサーが再び起動したときには、タヌキは画面奥の対岸に戻っていました。 
つがいのパートナー(別個体)である可能性もありますね。
よほど喉が渇いていたようで、再び水を飲みました。 
ところで、タヌキは水浴しないのでしょうか? 
ようやく喉の渇きが癒えたタヌキは地面の匂いを嗅ぎながら左へ歩いて行きます。 
このとき遂に、私が池畔に置いておいた茹で栗の存在にタヌキは気づいたようです。 
しかし匂いを嗅いだだけで興味を失い、食べませんでした。 
林道を左へゆっくり立ち去りかけたところで録画終了(尻切れトンボ)。 

茹でた大きな栗の実を分かりやすく半分にカットしておいたらタヌキは食べてくれたかな? 
水辺に何日も放置していたので、もしかするとカビ臭かったのかもしれません。 
思いつきでやってみた給餌作戦は失敗です。 
給餌無しでどこまでやれるか、今季はストイックに野生動物の撮影に挑むことにします。 
餌付けしてしまうと野生動物のためになりませんし、観察された行動の解釈が色々と面倒になるからです。



サザンカ(白花)の花粉を舐めるオオクロバエ♀

 

2021年10月下旬・午後13:05頃・晴れ 

民家の軒下に植栽されたサザンカ(山茶花)に白い花がたくさん咲いていました。 
萎れた花にオオクロバエ♀(Calliphora nigribarbis)が訪れて雄しべの花粉を舐めています。 
晩秋〜初冬に咲くサザンカの花には様々な昆虫が千客万来で、私も目移りしてしまいます。(動画公開予定) 
オオクロバエ♀が飛び立つまでじっくり待てませんでした。

本来ツバキの仲間は鳥媒花ですが、サザンカは虫媒花でもあるようです。
(サザンカの)蜜は雄しべの付け根に丸い粒となって露出している(田中肇『昆虫の集まる花ハンドブック』p37より引用)

2022/01/10

山中の池で水を飲むキジバト(野鳥)【トレイルカメラ】

 

2021年10月中旬・午後14:20頃・ 

トレイルカメラ(無人センサーカメラ)を設置した山中の水場にキジバトStreptopelia orientalis)が来ていました。 
対岸の林道から歩いて登場すると水辺に近寄り、頭を下げて水をごくごく飲み始めました。 
鳥類は嘴で水を掬って一口ごとに上を向いて水を喉に流し込むのが普通です。
下を向いたままゴクゴクと水を飲めるのはハトの仲間だけです。
喉の乾きを癒やしたキジバトが池畔から右へ立ち去りかけたところで録画終了。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
トレイルカメラの設定ミスなのか、オリジナルの映像は画面全体にピンクとモノクロが点滅するおかしな症状が出て悩まされています。 
明るい日中に自然光で撮っているのに、暗視モード用の赤外線フィルターがレンズに中途半端にかかっている不安定な状態のようです。 
自動色調補正すると背景の森の緑が少し復活しました。 



ミズナラの枝で鳴くエゾゼミ♂♪

 

2021年8月下旬・午後12:40頃・晴れ 

里山の山道沿いに自生するミズナラの灌木でエゾゼミ♂(Lyristes japonicus)が喧しく鳴いていました。 
細い横枝に下向きで止まり、休み休み(断続的に)鳴いています。 
口吻が見えないので、吸汁しているかどうか不明です。 

クロアリ(種名不詳)がミズナラの横枝を素早く通り過ぎたものの、エゾゼミ♂を襲いませんでした。 
セミもアリに対して無反応。 

最後はいきなり飛び去りました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみても、飛び立つ前後に排尿していませんでした。 

エゾゼミ♂が鳴いてる時の腹弁の振動を動画で記録したかったのですが、回り込んで腹面から撮る前に逃げられてしまいました。
関連記事(同時期の撮影)▶ クリの灌木で鳴くエゾゼミ♂を声紋解析してみる

2022/01/09

山中の水場で水を飲むニホンカモシカ【トレイルカメラ】

 

2021年10月中旬・午後13:50頃 

里山の水場でニホンカモシカCapricornis crispus)が水を飲んでいました。 
頭を下げて水面に直接口を付けてゴクゴクと飲んでいます。 
喉の乾きを癒やしたカモシカが頭を上げると、右岸に生えた灌木の葉の臭いを嗅ぎました。
しかし採食もせず眼下腺マーキングもしないで、林道を右へ立ち去りました。 

野生カモシカの飲水シーンは初見です。 
せっかく撮れたのに、トレイルカメラ(無人センサーカメラ)の設定ミスなのか、昼間でも暗視モードで録画されてしまったのが残念です。 
いくら周囲が鬱蒼と生い茂った薄暗い雑木林とは言え、昼下がりの時間帯に自然光で動画を撮れないはずがないでしょう。
なぜかこの機種はセンサー起動時にまず写真を1枚撮らないと赤外線フィルターのオン・オフが上手く作動しないようです。 
私のように全て動画で記録しようとすると、昼間の撮影で問題が生じます。
トレイルカメラの制御プログラムのバグなのであれば、ファームウェアをアップデートして欲しいものです。


▼関連記事(1月後の撮影)

タヌキの溜め糞で吸汁するベッコウバエ♂

 

2021年10月中旬・午後12:20頃・晴れ 

スギを植林した山の斜面をトラバースする細い林道上にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の立派な溜め糞dを新たに見つけました。 
この日は新鮮な糞がドカッと追加されていて、私の鼻でも糞便臭を嗅ぎ取れました。 

多数のベッコウバエDryomyza formosa)が溜め糞に集まっていました。 少し離れたところから写真を撮った後に私が溜め糞へ近づくと、ベッコウバエの群れはほとんど飛んで逃げてしまいました。 
糞の表面にはベッコウバエの卵がびっしり産みつけられています。 
現場は日中も薄暗いスギ林なのですが、糞塊の一部に木漏れ日が当たっています。 

溜め糞から逃げ遅れた個体♂が1匹で食事中でした。 
黄色っぽい新鮮な糞の表面を口吻を伸縮させて舐めています。 
腹背に黄金色の毛が密生しているのが♂の特徴です。 

その間、溜め糞のすぐ横に生えた植物の葉の上で別個体の♂が乗って休んでいました。 
交尾相手の♀が飛来するのを待ち構えているのでしょう。 

スギ植林地の林床にはタヌキが通って来るほど餌が多いとは思えないのですが、雑木林から雑木林へ移動する獣道として利用しているのでしょう。 
出来ればここもトレイルカメラ(無人センサーカメラ)で監視したいところです。 
しかしカメラを固定する適当な立木などが近くにないため、後回しになっています。 
この溜め糞dも定点観察に通ってみることにします。 


 

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