2012/03/31

アメリカシロヒトリ(蛾)の羽ばたき運動



2012年3月中旬・室温16℃

室内のどこかで季節外れに羽化した2頭目のアメリカシロヒトリHyphantria cunea)成虫を捕獲しました。
2月下旬に見つけた一頭目の記事はこちら→「アメリカシロヒトリ(蛾)が季節外れに室内羽化」。
容器内で大人しく静止しているところを接写すると、前脚および中脚の付け根が黄色いことがお洒落で可愛いらしい。
口吻は退化しているのかな?
仰向けにされても擬死しています。

やがて動きが活発になりました。
必死に飛翔筋を震わせて準備運動をしています。
プラスチック容器が滑って壁を登れないでいるようです。
羽ばたきが激しさを増しても結局、完全には飛び上がれませんでした。
飛翔には至らないまま疲れてしまったのか、羽ばたきを止めました。



羽ばたき運動のリリーサーは明るさの変化?

おそるべき害虫を野外に放虫する訳にもいかないのでしばらく飼い続けると、羽ばたき運動に規則性があることに気づきました。
夕暮れの定時(17:59)になると活発になり羽ばたき始めることが2・3日間続いたので、体内時計の関与がありそうだと思いました。
ところがある朝、窓から差し込む朝日が眩しいので一度開けたカーテンを閉めたら途端にアメリカシロヒトリがその場で激しく羽ばたきを始めました。
この観察結果から、体内時計ではなく視覚(複眼や単眼)で周囲の照度の変化を感知して羽ばたき運動のスイッチが入るのではないかと考えを改めました。
きちんと調べるために、照度計が欲しいなー。


♀なら容器内で未受精卵を産むはずと期待したものの、卵を産むことなく死亡したのでこの個体は♂なのかな?
触角など外見を見ても私には性別が見分けられません。




2012/03/30

雪面に残るニホンリスの足跡



2012年3月上旬

里山の雪面に気になる足跡が残されていました。
大きな後ろ足を揃えて前足よりも前に出すという全体のパターンはノウサギの足跡と似ているものの、ノウサギよりも一回り小さな足跡です。
雪道を横断して電柱の元へ向かって駆け上がったようです。

先に進むと似たような足跡をまた見つけました。
アカマツの木から飛び降りた後に、林道を横断して電柱の横を通って森に向かったようです。

これらの足跡の主は(あまり自信がないのですが)ニホンリスだと思います。
(もし間違っていたらご指摘ください。)
小動物の足跡は傾斜や雪質によって変化するようで、本に載っているような典型的な足跡は実地ではなかなか見られないのかもしれません。
実際にリスが雪原を走り去る様子を一度でも観察できれば残された足跡と照合してアニマルトラッキングに自信がもてるようになるのですが…。※
エビフライにそっくりということで有名な松ぼっくりの食痕も未だ見つけたことがありません。

【追記】
※ 一月後に早速、雪山を走るニホンリスの姿を目撃し、雪面に残されたばかりの新しい足跡も確認できました。
遡って、いまいち自信が持てなかったこの足跡もニホンリスSciurus lis)のものと判明。
ニホンリスは北海道のシマリスとは異なり冬眠しません。

『Winter Field Guide SNOW FOREST 冬の森へ』p69によれば、
ウサギの前足が縦につくのに対し、リスの前足(後ろの2つ)は後足と並行に横につきます。






2012/03/29

円網から逃げたヤマオニグモ♀(蜘蛛)



2011年10月上旬

水路沿いの鉄柵に張った垂直円網にヤマオニグモ♀(Araneus uyemurai)がいました。
腹面を向けて下向き占座しています。
甑(こしき)の高さは地上約60cm、円網の直径は約35cm。
枠糸は鉄パイプと下草に固定されています。

このクモは右側の第4歩脚が欠損しています(-R4)。
第3歩脚も左右で長さが違うので(R3<L3)、おそらく再生肢と思われます。
腹面に外雌器と垂体を確認しました。

捕食行動を観察しようと、生き餌のトンボ(マユタテアカネ♀)を網に付けてみたのですが、失敗してしまいました。
網の振動が不自然だったのか、クモが怯えて甑から逃げ出しました。
しばらく待つとヤマオニグモは網の外の鉄パイプ上にしおり糸(命綱)を付けながらゆっくり徘徊します。
しかし警戒して網に戻ってくれません。
網に付けたトンボは観念したのか全く暴れずじっとしています。

2012/03/28

雪道を歩き去るニホンザルの小群



2012年2月下旬

沢沿いの林道をスノーシューで歩いていると、前方に野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れを発見。
雪道を四つ足で歩く後ろ姿が見えます。
一頭がこちらを向いて警戒しています。
口に何か(草?)を咥えたまま逃走。
辺りから猿の騒ぐ鳴き声がかすかに聞こえます。


腐れ雪(溶けかけのシャーベット状態)が困るのは、歩きにくいだけでなく、野生動物に忍び足で接近することが不可能になることです。
自分の足音がザクザクうるさくて、周囲の鳴き声もよく聞こえないのです。



そのまま林道を進むと、雪面にサルの足跡と新鮮な糞が残されていました。
やがて足跡は道を逸れ、山に向かったようです。
「サル者は追わず」と言う訳ではありませんが、この日はニホンザルの群れを追う体力がありませんでした。
厳しい山越えにより疲労困憊で、少々投げやりな撮影になってしまいました。
どうやらこの日遭遇したのは遊動する群れの最後部(しんがり部隊)だったようです。



2012/03/27

シジュウカラ♂が冬芽を採食♪【冬の野鳥】



2012年2月中旬

集落の道端に聳え立つ大きな木(樹種不明※)で一羽のシジュウカラParus minor)を発見。
腹部にある黒い線が太いので♂。
チュチュピー、チュチュピー♪と賑やかに鳴きながら枝から枝へ忙しなく飛び回り、冬芽を啄んでいるようです。
撮影中に車が通りかかるも逃げずに平気で食事を続けます。
現場では冬芽そのものを食しているのかと思ったのですが、隠れている虫をついでに捕食していたようです。
撮れた写真を拡大してみたら、白い幼虫のような物を咥えているショットがありました。

【参考】
シジュウカラの食事」と題したブログ記事を検索で見つけました。
私の近くに【シジュウカラ】とエナガの群れがやって来ました。特にどうやら樹木の冬芽を啄んでいるようでした。 よく見ると、嘴で冬芽をもぎ取り→足下に置き、脚で掴み→嘴で冬芽の固い皮を剥がして→中の柔らかい芽を食べる。という順番で食べていました。【シジュウカラ】は固い冬芽をそのまま食べると言うことはしないんですね?(樹木の種類にもよるかとは思いますが・・・)
【追記】
シジュウカラのさえずりには、生息地域にかかわらず、明るい開けた林と、鬱蒼とした森林というふたつの異なる環境のあいだで違いがみられる。開けた環境にすむシジュウカラは周波数が高く、単音のくりかえしが早く、なおかつ周波数変調の大きな音を出す。一方、見通しの悪い森林にすむシジュウカラは、全体的に低く、単音が長い平板な音を発する。この違いは、それぞれの環境の違いによると考えられる。『サルのことば:比較行動学からみた言語の進化』p107より


【追記2】
※ 初夏に再訪すると、どうやらこの庭木はニセアカシア(ハリエンジュ)のようです。花は未見ですが葉の形から。



2012/03/26

雪山を逃走するニホンカモシカと食痕(冬の採食メニュー)



2012年3月上旬
雪山で遭遇したニホンカモシカ【後編】

前編からのつづき)
長い睨み合いの末、ニホンカモシカCapricornis crispus)は苛立つように鼻息を荒げると身を翻して逃走しました。
行き先を見定めるように立ち木の下で一瞬立ち止まりました。
走って斜面を横切ると深雪に埋もれた谷(沢)を渡り対岸の斜面へ向かいました。
林の陰になり姿が見えなくなっても大きな鼻息が二度聞こえました。
逃げたカモシカは雪の斜面をラッセルしながらトラバース移動しています。
途中で立ち止まってこちらを振り返ると、鼻息を荒げて威嚇してきます。
最後は右奥の森に消えました。

逃げられたことに少し落胆しつつ、先程までカモシカが採食していた地点に向かってみます。
木の根元だけ雪が溶けて崖の地肌が一部露出しており、そこに常緑樹の低木の茂みが生えていました。
枝葉を採集して調べてみると、ユキツバキおよびチャボガヤと判明。
ユキツバキの花が咲く時期には未だ早いようです。
明確な食痕は分からなかったものの、カモシカはこれら常緑の葉を食べに来ていたと思われます。
チャボガヤは葉がとても堅く先端が鋭く尖っていて触ると本当に痛いので(文字通り「針葉樹」)、さすがにカモシカもこれは食べない気がします。
ちなみに、秋に観察した採食行動はこちら。移動しながら常緑樹の葉(ハイイヌガヤ?、エゾユズリハ)および羊歯の葉(シシガシラもしくはオサシダ)を口にしていました。


ピッキオ編『森のいろいろ事情がありまして』p102によると、カモシカには上の門歯が無いために毟り取ったような食べ方になるそうです。




下山を続けると同様の群落が斜面に点在しており、殺風景な雪景色の中で緑が目にも鮮やかでした。

カモシカが私と遭遇する前にうろうろしていた足跡を少し辿ってみます。
この日の雪質はいわゆる腐れ雪(シャーベット状に溶けかけた湿雪)のため、残念ながら足跡が不明瞭でした。
それでも所々で蹄の跡がくっきり雪面に残っています。

野生のニホンカモシカと冬に出会えたのはとても嬉しかったのですが、採食行動の証拠映像をしっかり撮れる前に逃げられてしまったのが心残りです。
贅沢を言えば、カモシカに気づかれないようこっそり斜面を下りてから見上げるアングルで採食シーンの口元を撮れたら理想的でした。
しかしパウダースノーとは程遠い雪質で、一歩踏み出す度にザクザク音を立てるので、忍び足で移動するのは到底不可能でした。
ニアミスの状況で私はどのように動くべきだったのでしょう?
睨み合いの視線を外し、カモシカの縄張りから退散する素振りで斜面を下ったらそのまま食事を続けてくれたかな?


【参考映像】

冬山で命を落とす カモシカ」(155秒)
リンク先はNHK for schoolで、カモシカが冬の雪山で過ごす様子や命を落とすカモシカを紹介します。


2012/03/25

雪山で採食する野生ニホンカモシカ



2012年3月上旬
雪山で遭遇したニホンカモシカ【前編】

冬も峠を越したようで、晴れると里山に積もった雪も緩んできました。
スノーシューを履いて沢沿いの急斜面を下ると、腐れ雪(シャーベット状の湿雪)で足元のグリップが効かず難儀しました。
同じ斜面の左手に一頭の野生ニホンカモシカCapricornis crispusを発見。
積雪期に出会ったのは初めてです。

雪の斜面で頭を下げ、何かを食べているようです。
手前にある杉木立の陰になり肝心の口元が見えず、もどかしいです。
こちらが風下だったのか食事に夢中だったのか、私には未だ気づいていないようです。
カモシカは少しずつ斜面を登りながら採食を続けるので、何を食べているのか知りたくても益々死角に入ってしまいます。
側面から見ると黒光りする角が立派です。

観察し易いアングルを求めて、撮りながら徐々に斜面をずり落ちるように移動しました。
カモシカは雪面の匂いを嗅ぎ、舌でペロペロ舐めています。
鼻面で軽く雪を掘りました。
(ちなみに、秋に観察した採食行動とメニューはこちら。)

遂にカモシカが気づいてこちらを凝視しました(@5:55)。
顔の毛に油気が無く、老いた個体のような印象を受けました。
厳しい冬越しで消耗しているのでしょうか。
(毛が雪で濡れているだけかもしれません。)
鼻腔を大きく広げて頻りに風の匂いを嗅いでいます。
反芻するように口を少し動かしました。
鼻息を荒げて威嚇すること数回(@7:17~)。
こちらに向き直って数歩近づき、鼻息威嚇を続けます。
対抗してこちらも鼻息を立てたらどうなるだろう?という誘惑を抑え、静かに撮影を続けます。
私が動きを止めていると安心したのか、カモシカは再び斜面を数歩登り採食再開。
頭隠して尻隠さずの状態ですが、何度も幹の陰に隠れて視線を合わさないようにするのは不安の現れなのだろうか。

(採食メニューは後編で判明します。 → つづく)



【参考映像】

ニホンカモシカの冬越し」(157秒)
リンク先はNHK for schoolで、石川県に生息するニホンカモシカの冬の食べ物や行動を紹介します。






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