2012/01/21

アズマキシダグモ♀亜成体の雪原逃走



2011年12月下旬・気温2℃@雪面

雪山(標高〜550m地点)で新雪の上にアズマキシダグモを一匹発見。
思いのほか軽快な動きで、雪の斜面を逃げて行きました。


一時捕獲すると体長7mm、8本の歩脚は全て健在です。
腹面に未発達の外雌器らしきものがあり、♀亜成体のようです。
クモ生理生態事典 2010』によると、本種は「落葉中で亜成体で越年する」とのこと。







2012/01/20

飼育ジョロウグモ♀に牛乳を与えてみる



2011年12月中旬

実はこのジョロウグモNephila clavata)♀成体(体長21mm)は、飼育中のコカマキリ♀に与える生き餌として採集してきたクモです。
ところがコカマキリの食欲が全く無くなり、狩りをしなくなって命拾いしました。
外は根雪になり、逃がすと寒さで忽ち死んでしまう事態になりジョロウグモの処遇に困りました。
一方、コカマキリ♀には冬の代用食として牛乳を与え始めました。
さすが完全食品だけあって、延命効果は抜群です。
関連記事はこちら→「飼育コカマキリ♀に牛乳を与える【冬の代用食】
ついでにクモにも牛乳をお裾分けしたらどうかと思いつきました。
以前、徘徊性のイオウイロハシリグモ♀を飼っていたときに、冬になってからハチミツを水に溶かして与えてみたことがあります。
関連記事はこちら→「飼育イオウイロハシリグモ♀:こっちの水は甘いぞ♪

ジョロウグモ♀は狭い容器内で粗末な網を張って占座しています。
牛乳に浸した綿棒でクモの口元に雫を付けてみました。
網の振動を感知してクモが逃げ回るので何度か失敗したものの、ようやく上手くいきました。
(ちなみに、映像の冒頭で容器の底に付着している白い液体は牛乳ではなくジョロウグモの排泄した糞です。)

口器を接写すると、牛乳の雫を少しずつ嚥下していました。
消化液を口から出し入れしているようです(クモ特有の体外消化)。
果たして牛乳はお口に合いましたでしょうか?


しかしコカマキリ♀とは異なり、ジョロウグモ♀はその後も綿棒を嫌がって逃げる素振りが続きました(牛乳嫌い?)。
数日後は牛乳を吐き戻すようになり、残念ながら翌日死んでいました。
牛乳がジョロウグモの死期を早める結果になったのか否か、この一例だけでは分かりません。
コカマキリでは問題なかっただけに意外でした。
ジョロウグモにも乳糖不耐症があるのだろうか?

【追記】
『クモを利用する策士、クモヒメバチ: 身近で起こる本当のエイリアンとプレデターの闘い』p108によると、
だいたいの造網性クモは、飼育下で本来の造網行動ができないような状況を強いられると、本来の網型によらず共通してランダムに糸を引き渡し、糸さえあればぶら下がってとりあえず落ち着く。(中略)そのようなトリッキーな状況では、円網性種を筆頭に、餌を与えても捕虫しないことが多い。




クモに様々な薬物を経口投与して造網行動への影響を調べる※という古典的な実験があり、薬理学や動物行動学の本によく載っています。
いつか私も再現実験してみたいと思っているのですが、カフェインやアルコール以外の薬物(LSDやコカインなど)は当然一般人の手に入りません。
今回は造網性クモへ経口投与する実験の練習になったと前向きに考えることにします。

その後、オニグモ幼体(亜成体♀?)にも同様に牛乳を綿棒で給餌してみました。
ところがオニグモの腹面は毛深く、雫を弾いてしまい失敗。
生き物相手では一筋縄では行きません。
何事も実際にやってみないと分からないものだと実感しました。

【参考動画】



↑ハエトリグモに牛乳の雫を乗せた板を差し出すと、飲んでいます。(飲まない個体もいる)

「クモは肉食なのであるが、人間が人工飼育で飼う場合は、鶏卵や牛乳の水溶液・蜂蜜・各種ビタミンをスポイトなどで与えればこれを吸収して育つことができるようだ。」(出典はこちら。)

飼育の難しいクモ幼体も牛乳を人工飼料として育つのであれば、とても楽になるのですが…。


※ 造網性クモに薬物投与する研究の記録映像が残っていないか探してみたのですが、YouTubeに公開されていたのは↓これだけ。



一見もっともらしく始まるものの、後半でパロディ(フェイク?)と分かります。
逆に、パロディが作られるほど有名な実験ということです。

【追記】
私が正にやりたかった実験を行った素晴らしい記事がデイリーポータルZで公開されています。
クモを酔わせてどうするつもり」と題した記事で、野外で採集したコガタコガネグモにカフェインやアルコールを経口投与して造網への影響を調べています。
クモ好きの方は必見です!

2012/01/19

冬の川で漁をするダイサギ【野鳥】



2011年12月中旬

雪がちらつく中、一羽の白鷺が冷たい川に入り佇んでいます。
町中を流れる河川でコンクリート護岸されており、水質もあまり良好とは言えません。
手前で雪かきの男性がスノーダンプで川に雪を捨てていました。
逃げられるんじゃないかと冷や冷やしましたが、町中の鳥は人に慣れているのか無頓着。

白鷺の足は黒く、嘴は黄色でした。
同定に迷いましたが、「眼下にある口角の切れ込みが眼より後ろまで食い込む」ことを写真で確認できて、ダイサギArdea albaだろうと判明。

ダイサギは長い脚で川の中をゆっくり歩いています。
流れの中央部に歩み寄ったかと思いきや、長い首を振って見事に水中の魚を採りました。
結構大きな獲物です。
暴れる魚を一呑みすると、3回水を飲んで喉を潤しました。

欲が出てもっと接近して撮ろうとしたら、急に飛び立ちました(映像なし)。
空を旋回してからどこかへ飛び去りました。
長い首をS字に曲げて飛びます。








2012/01/18

飼育コカマキリ♀に牛乳を与える【冬の代用食】



2011年12月中旬

今季はコカマキリ♀(Statilia maculata)を4匹も飼育していました。
寿命で次々と死んでいく中、♀bの一匹だけが元気に生き残っています。
この個体は9月下旬に成虫を採集して以来、飼育下で5個も卵鞘を産んでくれました。
最も多産かつ長寿の個体ということで、どうしても情が湧いてきました。
しかし冬になると雪国では生き餌を安定して確保するのが極めて困難になります。
ハエ類すらも見当たらなくなりました。
インターネットで検索してみると、カマキリの代用食として牛乳を与えている人がいらっしゃいました。
確かに栄養豊富かつ手軽(入手が容易・安価)で、なかなか良さそうです。
早速私も試してみることに。

毎日給水していた方法と同じで綿棒に浸してからコカマキリ♀bの口元に近づけると、初回は少し嫌がる素振りを見せたものの、すぐに吸い付いて雫を飲み始めました。
(関連記事→「飼育ウスバカマキリ♀への給水
皆さんはスポイトやストロー、注射器、筆など、各自がやり易い方法で与えれば良いと思います。
冷蔵していた牛乳をそのまま与えると体温が下がるので、常温まで戻してから給餌するようにしています。
一日一回満腹するまで飲ませます。
(うちのコカマキリは満腹するともう嫌がって綿棒から顔を背けたり仰け反ったり鎌で押し退けたりします。)
牛乳は腐るので綿棒は使い捨てにします。

果たして寿命がどれだけ伸びるか実験です。
驚くべきことに、この記事を書いた現在(年を越して1/18)もコカマキリ♀bは毎日の牛乳だけで生き続けています。
外は根雪となりカマキリ成虫は当然死に絶えているはずです。
室温は15℃前後、朝の最低室温は約12℃。
ただし活動性は低く、終日止り木で静止しているだけです。
足腰もめっきり弱くなりました。


ご存知の通り、牛乳は栄養素のバランスに優れた完全食品と言われています。
孵化直後のカマキリ若齢幼虫も小さな生き餌の確保に苦労します(飼育経験の未熟な私はいつも失敗)。
もしカマキリ幼虫も牛乳だけである程度まで大きく育ってくれるのなら非常に助かります。


【追記】
最後は牛乳も飲まなくなり、このコカマキリ♀bは1/30遂に大往生を遂げました。
死ぬ一週間ぐらい前に一度だけ、ようやく採れた一匹のハエを飼育容器に投入してみたのですが捕食しませんでした。


餌を牛乳だけにしてから糞にも変化があり、粘り気の強い便を排泄するようになりました。


【参考動画】



↑この方は脱脂綿に牛乳を含ませて給餌しています。


『机の上で飼える小さな生き物』という飼育指南書 p104 によると、
「カマキリがミルクを飲むことは一部の専門家の間ではよく知られていることらしい。」

2012/01/17

ニホンリスが森を走る



2011年12月中旬

杉林の斜面をチョロチョロ動く小動物を発見。
急いでカメラを構えズームしてみるとニホンリスSciurus lisでした。
杉の木の根元に静止していたリスが幹を登り始めました。
…と思いきや、すぐに下りて斜面を駆け上がりました。
あっと言う間に藪へ姿を消しました。
現場では割りとじっくり見れたという体感でしたが、映像を見直すと一瞬の出会いですね。
嬉しくて時の流れが少し遅く感じたという奴です。

ここは2010年夏に樹上でニホンリスを目撃した地点から少し登った場所です。
いつか営巣行動を観察してみたいものです。



2012/01/16

ウスバフユシャクの一種♀を見つけた!(無翅の冬尺蛾)



2011年12月中旬・気温10℃

山中の建物で白壁に止まっている冬尺蛾♀を発見。
日当たりの良い西面で、地上150cmの位置でした。
完全な無翅型を見つけたのは初めて。
翅の痕跡すら残っていません。
腹端に毛束があり、夕刻になると♂を誘う性フェロモンを放出する(コーリング)そうです。

虫我像掲示板にて質問したところ、ウスバフユシャクの一種Inurois sp.)♀で産卵前の個体とご教示頂きました。
有翅♂と交尾中の現場を押さえないと、♀を同定するのは難しいようです。
「産卵前は縦長でもこもこしてますが産卵後はお腹がへこみ、全体が丸くなります」とのこと。

軽く触れたら壁を登り始めました。
壁面がツルツルしていていかにも登り難そう。
案の定、動画撮影中に滑落。
地面で姿を見失ってしまいました。

冬尺蛾の交尾を未だ見たことが無いのですけど、一般に暗くなってから行われるらしい。
近くで見つけた冬尺蛾♂(同種なのか不明)と一緒に捕獲して求愛交尾行動を観察できないかと思案していたので残念。
この♀だけでも採集できれば、飼育下で産卵行動を観察できたかもしれません。


いずれにせよ、この白壁に止まったままでは仮に♂と交尾出来ても食草と異なる無機質な壁面に産卵することになり、孵化した幼虫が困ることになります。


【参考文献】(掲示板で教えてもらった冬尺蛾の総説)
「冬に出現する尺蛾 : 新・フユシャク類の採集」
やどりが (152), 2-28, 1993-02-25
全文PDFが無料ダウンロードできます。)



2012/01/15

野生ニホンカモシカの反芻行動



2011年12月上旬・気温9℃
野生ニホンカモシカを追う:後編

映像冒頭でカモシカが立ち止まってこちらに尻を向け、立木に顔を擦り付けています。
縄張り宣言の眼下腺マーキングと思われます。
こちらに向き直り鼻孔を広げて風の匂いを嗅いでいます。
(このとき鼻水が垂れました。)
少し歩くと腰を下ろして地面に座り込みました(座位休息)。
横目で油断無くこちらの様子を窺っています。

座ったまま、先程食べた食事の反芻を始めました。
手前の潅木が邪魔で肝心の口元が初めはよく見えません。
下草を採食していた可能性もあります。

もぐもぐ顎を動かしつつ、ときどき耳を動かしたり首を振ったりして、顔に五月蝿くたかる虫を追い払っています。
近くの林道を下から車が徐行して登って来ました(@動画7:35)。
その間、カモシカは反芻を止め車の音に耳をそばだてました。
ここは林道から死角になっています。
静けさが戻るとカモシカはリラックスして眠そうに反芻を再開。

観察し易い撮影アングルを求めて少しだけ接近しました。
カモシカは座ったまま顔だけこちらに向けています。
やがて警戒が解けると横向きで反芻を続けます。
瞼が重くなり目がトロンとして眠そうです。
うたた寝しているのかもしれません。

約30分間の反芻行動の末に、カモシカがゆっくりと立ち上がりました。
首を曲げて右脇腹を舐めています(掻いている?)。
ゆっくり堂々と藪の奥に歩き去りました。


夢中で長々と動画を撮りましたが至福の時間でした。
野生動物がこれほど警戒を解いてくれたことに驚きです。
(野鳥観察よりずっと楽だと感じました。)
カモシカは好奇心が強い動物と言われています。
付かず離れず静かに追跡する私の姿がカモシカから常に丸見えだったことが逆に安心感を与えていたのかもしれません。

これ以上は深追いせず、観察を終了しました。
荷物を背負ったまま足場の悪い急斜面を追跡し、手持ちカメラで長時間(昼過ぎに発見してから丸一時間)息を殺して撮り続けたので、腕や腰の筋肉がヘトヘトです。
カメラの手ブレ補正もなぜか誤作動を始める始末。
私の集中力も限界でした。
せめて一脚を持参していれば少しは楽だったかも。
特別天然記念物の野生ニホンカモシカと濃密な時間を過ごせた幸運に感謝して、満ち足りた気分で下山しました。
今思うと、カモシカが座っていた場所まで行って糞や角研ぎ、マーキングなどの痕跡を探してみても面白かったかもしれません。


カモシカの反芻行動を実際に見たのは初めて。
『科学のアルバム:ニホンカモシカ』p45によると、
腹がいっぱいになったカモシカは、見晴らしの良い大きな岩や倒木の上に登って、食べたものを反芻します。カモシカは、ウシと同じように胃が四つの部分に別れており、食べたものを反芻するのです。反芻は、食べたものの量と質にもよりますが、二時間から、それ以上かけてします。
(下線部は今回の観察と異なる点。)


三部作シリーズ完。





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