ヒオドシチョウの飼育記録#9
▼前回の記事
ヒオドシチョウの蛹化【2アングルの微速度撮影】
2015年5月下旬
計4頭飼育していたヒオドシチョウ(Nymphalis xanthomelas japonica)の中で3番目に成長の早かった個体c無印の記録です。
個体識別のマーキングを施していないので、見苦しくありません。
終齢幼虫の様子を夜中にチェックすると、柳の葉裏の主脈にしがみつき静止していました。
棘状突起に触れても無反応。
朝になると前蛹が下垂していました。
腹端を固定する糸に前夜は気づきませんでした。
前蛹が脱皮して蛹化する過程をカメラ2台のマルチアングルで微速度撮影してみました。
初めにご覧頂くのは、背面から10秒インターバル撮影した連続写真(午後17:33〜20:50)から制作した早回し映像です。
次にお見せするのは、側面から狙った20倍速映像です。
午後19:48:46、遂に背中が割れて脱皮が始まりました。(このときの室温28℃、湿度45%)
抜け殻を振り落とそうと激しく暴れても、腹端に引っかかって離れません。
諦めたのか、垂蛹はおとなしくなりました。
※ 幼虫を飼育している間は餌植物(柳)を挿したPETボトルの口にアルミ箔を巻いたりスポンジを詰めたりして塞いでおきました。必ずこれをしないと幼虫が花瓶に落ちて水死する事故が頻発します。幼虫が徘徊を止め前蛹になったので、微速度撮影を始める前に目障りなアルミ箔を取り除きました。
つづく→#10:触られて暴れるヒオドシチョウ垂蛹
【おまけの動画1】
側面から狙い、初めから動画で微速度撮影した10倍速映像(オリジナル)をブログ限定公開します。
【おまけの動画2】
上の素材を早回しにした30倍速映像。
【おまけの動画3】
背面から狙い、昼過ぎからインターバル撮影(12:07:14〜20:50:36)で監視を続けた微速度撮影のノーカット映像です。
前蛹が脱皮するはるか前から断続的に蠕動を繰り返していることが分かります。
【おまけの動画4、5】
インターバル撮影の素材で早回し速度を変えた短縮バージョン2本。
2015年6月上旬
湿地帯に生えた柳の梢でオオヨシキリ♂(Acrocephalus arundinaceus)が元気に鳴いていました。
縄張り宣言の囀りですね。
リップシンクロを確認したので、この個体の鳴き声に間違いありません。(隣の♂と鳴き交わしているようです)
ヒオドシチョウの飼育記録#8
▼前回の記事
脱皮前の眠状態で蠕動するヒオドシチョウ前蛹【微速度撮影】
2015年5月下旬・室温29℃
計4頭飼育していたヒオドシチョウ(Nymphalis xanthomelas japonica)の中で一番成長の早かった個体a黄の記録です。
前蛹が脱皮して蛹化する過程をカメラ2台のマルチアングルで微速度撮影してみました。
竹の棒(板)に対して前蛹の腹端が少し斜めを向いて固定されているため、アングルの調整に苦労しました。
初めは側面から10秒インターバル撮影した連続写真(午後12:25〜16:40)から制作した早回し映像。
次いて、やや背面から狙った20倍速映像。
本当は2つのアングルの映像を同じ画面に並べてお見せすれば格好良いと思うのですが、素材の早回し速度を揃えるのが面倒で諦めました。
午後15:30、遂に前蛹の胸背が割れて脱皮が始まりました。
蛹化開始の時間は、特定の時間帯に始まるのではなく、前蛹になってからの経過時間で決まってしまうような気がしました。(要検討)
白っぽい(銀色?)垂蛹はしばらくピクピクと蠕動していましたが、やがて落ち着きました。
蛹の色は錆色というか地味なままで変わらず、黒化や色素沈着などはありませんでした。
微速度撮影は初めのセッティングをすればあとはカメラにお任せするだけなので、実はそれほど難しくはありません。
久しぶりに微速度撮影したので、我ながら絵作りが雑ですね…。
竹棒を支える台として使った容器内をマイマイガ幼虫が徘徊しています。
コミカルな映像になるかと思ったのですが、目障りかもしれません。
以下は抜け殻の写真。
【おまけの動画1】
前蛹のやや背側から狙い、初めから動画で微速度撮影した10倍速映像。
【おまけの動画2】
上の素材を早回しにした20倍速映像。
【おまけの動画3】
更に早回し速度を上げた30倍速映像。
【おまけの動画4】
前蛹の側面から狙い、10秒インターバル撮影した写真を元に制作した早回し映像。
【おまけの動画5】
インターバル撮影した同じ素材で、早回し速度を下げた映像。
つづく→#9:別個体の前蛹の脱皮・蛹化【2アングルの微速度撮影】
ノシメマダラメイガの飼育記録#8
2015年5月下旬
▼前回の記事
ノシメマダラメイガ(蛾)が室内で♂単独の求愛ダンス
夜行性と言われるノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)の夜の活動を、赤外線カメラの暗視動画でプラスチック容器越しに撮ってみました。
深夜2:15なのに、幼虫の餌の上を成虫は歩き回ったり飛び回ったりしています。
もっとじっくり観察すれば、暗闇での求愛交尾行動や♀の産卵行動が撮れたかもしれません。
つづく→#9:チョコレートを食害する初齢幼虫
ヒオドシチョウの飼育記録#7
▼前回の記事
ヒオドシチョウ前蛹が脱皮して垂蛹になるまで【微速度撮影】
2015年5月下旬
計4頭飼育していたヒオドシチョウ(Nymphalis xanthomelas japonica)終齢幼虫のうち、一番成長の早かった個体a黄の記録です。
蛹を作る場所を探して激しく徘徊を始めたので竹を割った棒を差し出したら気に入ってくれたようで、下面にしがみつき静止しました。
しかし油断していたら、足場糸を張り垂下する様子は撮りそこねてしまいました。
垂下する決定的瞬間は目撃しました(午前00:49、室温25℃)。
急に胸脚を竹棒から離し腹端でぶら下がったので驚きました。
ヒオドシチョウの変態スケジュールについて予習しようと思いインターネットで検索して、参考になるサイトを見つけました。
前蛹の準備の糸の台座を整えてから尾端で下垂するまで、蝶の種類によっては何日もかかるものもいますが、ヒオドシチョウはほんの数十分から1時間程度ですぐ下垂してしまいます。
翌日にはほとんどのものが蛹化してしまいました。
蛹化の瞬間を見届けようと、午前01:00〜11:18の間、10秒間隔でひたすら撮り続けた写真を元に早回し映像を制作しました。
腹端の鈎状突起で足場糸からぶら下がった前蛹は断続的に、目に見えて振動・蠕動している時があります。
脱皮に備えてひたすら眠っているように見える前蛹も、早回し映像にすると「微動だにしている」ことがよく分かります。
【おまけの動画】
同じ素材で再生速度を落とした早回し映像をブログ限定公開します。
つづく→#8:ヒオドシチョウの蛹化【2アングルの微速度撮影】
2015年6月上旬
花壇に咲いた宿根リナリアをキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が訪花していました。
この組み合わせは昨年も撮っているのですが、今年はクマバチの羽ばたきを240fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
▼関連記事
宿根リナリアの花蜜を吸うクマバチ♀
口吻の根本が白い花粉で少し汚れているものの、後脚の花粉籠は空荷でした。
ヒオドシチョウの飼育記録#6
2015年6月上旬
▼前回の記事ヒオドシチョウ終齢幼虫が足場糸を張り下垂して前蛹になるまで【微速度撮影】
ヒオドシチョウ(Nymphalis xanthomelas japonica)終齢幼虫(マーキング個体d白)が前蛹になった晩は断続的に蠕動を繰り返し、次第に体長が短くなりました。
夜通し(深夜00:00:06〜午前08:14:04)10秒間隔で撮り続けた連続写真(インターバル撮影)を元に、早回し映像を制作しました。
朝7:27:46、前蛹の背側が割れて脱皮を始めました。
前日の午後15:43:00に下垂してから(前蛹になってから)15時間44分後でした。
抜け殻を振り落とした後も垂蛹はしばらく蠕動しています。
夜通しLEDの照明を当て続けても、蛹化したのは朝でした。
枝の真下に落ちていた抜け殻(脱皮殻、蛹化殻)の写真です。
【おまけの動画】
同じ素材で再生速度を倍に上げた早回し映像をブログ限定公開します。
前日の夜22:03:28〜翌朝08:14:04までの10秒インターバル撮影。
つづく→#7:脱皮前の眠状態で蠕動するヒオドシチョウ前蛹【微速度撮影】
2015年6月上旬
物置小屋のベニヤ板壁にキアシナガバチ♀(Polistes rothneyi)が止まっていました。
未だ単独営巣期の創設女王と思われます。
撮りながら背後からゆっくり近づくと、大顎でベニヤ板を齧って巣材を集めていました。
横に回りこんで側面から口元を見るとよく分かります。
最後はパルプを丸めた団子を抱え、巣へ飛び去りました。
すぐに蜂を見失ってしまい、巣の位置は不明です。
ヒオドシチョウの飼育記録#5
2015年6月上旬
採集してきた4頭のヒオドシチョウ(Nymphalis xanthomelas japonica)幼虫は全て終齢(=5齢)だったようで、次々に蛹化しました。
蛹化する前兆として食欲が無くなり、しばらくじっとする眠の時期を過ごします。
眠から醒めた終齢幼虫が激しく徘徊して垂蛹を固定する場所を選んで足場糸をかがる過程を記録するのが一番難しく、いつも見逃してしまいました。
4頭目の個体d(白インクでマーキング)でようやく撮影に成功しました。
朝8:46:42〜午後17:00:10まで10秒間隔で撮り続けた連続写真(インターバル撮影)を元に、早回し映像を制作しました。
水差しに斜めに立てた柳の若い枝(樹種不明:ひこばえなので枝が木質ではない)に幼虫はしがみつきながら頭を回しこむように動かし始めました。
口から吐いた白い絹糸を枝の表面の一箇所に丹念に塗り付け始め、腹端を固定するためのクッションを作っています。(体は上向き)
ときどき中休みを挟むのは、空になった絹糸腺の合成能力が回復するのを待っているのですかね?
足場糸を張り終えると、枝でUターンして下向きになりました。
しかし、すぐに腹端を固定せずその少し上で休息するのは何故でしょうか?
このせいで、蛹化する場所を直前まで勘違いしていました。
単に体力を使い果たして休んでいただけですかね?
もしかすると糸で作ったクッションは接着剤のようなもので、密着する前にしばらく空気に晒す必要があるのだろうか?と想像を逞しくしてみました。
うろ覚えですけど、「垂蛹の腹端はフック状の細かい突起が幾つもあって、足場糸にひっかけているだけ」と読んだような気がします。(ヒオドシチョウかどうか覚えてませんが、走査型電子顕微鏡の写真を見た記憶が…?)※
14:18:02 pm、遂に幼虫は少し前進して腹端を足場糸に押し付けて固定しました。(下向き)
その後しばらくは枝にしがみついていますが、腹脚の後方から順に枝から離れました。
握力が失われるのか、それとも腹脚が縮んで枝に届かなくなるのかな?
15:43:00 pm、遂に耐え切れなくなり、だらんと下垂しました。
腹端で全体重を支えてぶら下がります。
下垂した前蛹は断続的に蠕動しています。
これから脱皮して垂蛹になります。
つづく→#6:蛹化の微速度撮影
※【追記】
『岩波生物学辞典第4版』によると、
垂蛹[pupa suspensa]()被蛹のうち,糸で樹枝などから垂下しているもの.多くは尾端にある鉤状突起(cremasterという)に糸をかける.チョウ類のタテハチョウ科・ジャノメチョウ科・マダラチョウ科などの蛹はこれである.
【おまけの動画】
同じ素材で再生速度を倍に上げた早回し映像をブログ限定公開します。
2015年6月上旬
溜池の畔に並ぶ桜(ソメイヨシノ)の樹上でスズメ(Passer montanus)が何かの幼虫を捕食していました。
撮り始めるのが少し遅れてしまったので、冒頭は1/4倍速のスローモーションにしました。
食後は嘴を枝に擦りつけて拭い、飛び去りました。
桜の葉は虫喰い穴だらけですが、野鳥が芋虫・毛虫を大量に食べてくれるおかげで生態系のバランスが保たれています。
2015年6月上旬
害虫として嫌われるマイマイガ(Lymantria dispar japonica)の幼虫が今年も大発生しそうで、戦々恐々としています。
糸を吐いて木からぶら下がっている様子から、別名ブランコケムシと呼ばれており、風に吹かれるなどしてこの状態でかなり広域を移動できる。(wikipediaより)
雑木林の木の枝から長い糸を伸ばして懸垂下降した毛虫が風で揺れています。
舗装路(車道)に軟着陸すると、新天地を目指して元気に前進します。
映像後半は同じ日に別の場所で撮影したものです。
カキノキの枝から長い糸を吐いてぶら下がっていました。
アルプスの少女ハイジが乗って遊んでいる長いブランコを連想しますが、そんなのどかで微笑ましいものではありません。振動や風で枝葉から落ちてしまったときの命綱の役割を果たしているのかもしれません。
分散のための行動だとしたら、クモ類のバルーニング(遊糸飛行)と似ていますね。
糸を吐いて懸垂下降する技はマイマイガ幼虫(ブランコケムシ)の専売特許という訳ではなく、様々な種類の鱗翅目幼虫も行います。
ヒオドシチョウの飼育記録#4
2015年5月下旬・室温27→26℃
ヒオドシチョウ(Nymphalis xanthomelas japonica)終齢幼虫の脱糞シーンをまとめてみました。
肛門付近がヒクヒクしたと思ったら柳の枝から腹端を持ち上げ、真っ黒な糞を排泄します。
初めは見逃してもポトリと糞が落ちる音がしたら時刻を記録していくと、約30分間隔で排便することが分かりました。
(今までの飼育経験で、どの種類の芋虫も30分間隔なのが不思議です。)
次の脱糞時刻を予測してカメラを構え待っていれば、決定的瞬間を撮るのは難しくありません。
今回は4頭も飼っているので、より楽に撮れるだろうと思ったのが間違いでした。
食樹植物のヤナギの枝葉を活発に徘徊するので、個体識別しないとどれがどれやら分からなくなってしまうのです。
1頭ずつ分けて飼育するのも手ですけど、食草が限られているので一緒に飼いました。
ヒオドシチョウ幼虫は特に若い時期は群れで過ごす習性があるので、単独飼育すると成長に何か問題が生じるかもしれません。
そこで油性ペン(オパックカラー)で背面中央の棘状突起にマーキングしました。
黄色、水色、白色、無色と色分けしました。
(脱走して一時行方不明になった時がありました。)
触れられると幼虫が嫌がる素振りをすることから、棘状突起は感覚毛であることが分かりました。
昆虫は外骨格の動物ですのでマーキングしても無害です。
ヒトで例えるなら、骨折した時につけるギブスの表面に油性ペンで落書きするようなものです。
これから脱皮・蛹化するので成虫への影響はありません。
インクが見苦しいのはご了承下さい。
例えば紫外線(ブラックライト)を当てた時だけ見える蛍光塗料でマーキングすれば、映像が見苦しくならないかもしれません。
興味深いことに、夜になると約30分間隔の排便リズムが次第に遅れるようになりました。
室温はさほど下がっていませんから(27→26℃)気温低下のせいではなく、寝る時間が近づくと食事や消化が不活発になるのだと思います。(日周リズム)
※ 照明不足で薄暗い条件で撮った映像を自動色調補正しています。
つづく→#5:終齢幼虫が蛹になる足場糸作り【微速度撮影】
【おまけの映像】
ヒト乳児が排便時にする特有の表情をスローモーションで撮り集めた、某おむつメーカーの秀逸なCM。
2014年11月上旬
▼関連記事
電線に集まり鳴き騒ぐ♪ハシボソガラスとハシブトガラスの混群(野鳥)
秋晴れのお昼どき(午後12:30頃)に住宅街でカラスの大群が集結して鳴き騒いでいました。
ヒッチコックの名作「鳥」を彷彿とさせるような、不安を掻き立てる只事ではない光景でした。
電線にカラスがほぼ等間隔でずらっと一列に並んでいます。
普段この辺りではハシボソガラスが優占種なのですが、今回はなぜかハシボソガラス(Corvus corone)およびハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)の混群でした。
カラスの大群(烏合の衆)が飛び交う様子を240fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
連鎖反応で一気に飛び立つ様が圧巻です。
隣の電線に止まった個体に飛びかかって喧嘩を仕掛けることがたまにありました。
後ろを向いていて不意打ちに合ったものの、反撃に飛び立ち軽い空中戦になりました。
2015年5月下旬
ヒオドシチョウの飼育記録#3
飼い始めたヒオドシチョウ(Nymphalis xanthomelas japonica)終齢幼虫を暗い部屋で赤外線の暗視動画に撮ってみると、夜が更けるにつれ活動を止めて休息することが分かりました。
夜22:06、ヤナギの葉で活動中。
22:11、幼虫の動きが止まりました。
22:12、4頭ともおとなしくなりました。(室温23℃、湿度43%)
葉の裏に止まったり、表に居たり、まちまちでした。
その後は飼育部屋の明暗条件(照明)を厳密にコントロールしていませんので、幼虫の体内リズムもヒトに合わせて次第に夜型にシフトしたかもしれません。
その辺りを詳しく検討できればよかったのですが、飼育初日に撮っただけです。
2日後、幼虫がヤナギの葉を食べ尽くしたので新たな食草を取りに、幼虫を採集した現場に戻りました。
伐採された柳の切株から逞しく生えてきたひこばえです。
草木も眠る丑三つ時(2:02 am)、野外でもヤナギの葉で寝ているヒオドシチョウ幼虫を一頭発見しました。
やはり夜は活動しないようです。
食べかけの葉裏の主脈に腹脚でしがみついていました。(胸脚は離している)
白色LEDを点灯しても起きません。
ちなみに、この採集現場は夜も近くの水銀灯が煌々と点いていて、真っ暗ではありませんでした。
「幼虫は一晩中食べて休んでのサイクルを繰り返していて、たまたま休息中のところを見ただけでは?」と反論されそうですが、赤外線で夜通し微速度撮影してみれば決着がつくでしょう。
つづく→#4:昼間の脱糞シーン