2023/12/31

ニホンアナグマ♀が古い巣材を産室から次の引越し先に運び、ヘルパー♂が巣穴を掘り直す【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年5月中旬

シーン1:5/15・午後18:54・(@0:00〜)日の入り時刻は午後18:45。 
ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)が幼獣4匹を連れて巣穴Rから手前の巣穴Lへ引っ越したのが早朝で、これはその日の夕方の出来事です。 
日没直後の薄暗い営巣地(セット)で、奥の巣穴Rから出てきた♀個体が、なぜか巣口Rでぐるぐる回っています。 
一体何をしているのでしょうか? 
画面の手前の左からハリギリ(別名センノキ)の棘だらけの細い倒木が右に突き出しているせいで、奥の巣穴Rが見えにくくなっています。 
謎の行動を同時に逆アングルからも動画で記録したかったのですが、残念ながらこの時期はもう1台のトレイルカメラ(新機種)が不調でした。 

アナグマ♀は何か白っぽい物(古い巣材?)を巣穴Rの中から巣口Rに捨てたようです。 
身震いしてから右に立ち去りました。 


シーン2:5/15・午後18:56・(@0:54〜) 
次にカメラが起動したときには、赤外線の暗視モードに切り替わっていました。 
♀が巣口でグルグル回る謎の行動をまたやっています。 
次回の幼獣引っ越しに備えて、巣口Rに柔らかい巣材(クッション・緩衝材)を予め敷き詰めておくのでしょうか? 
再び右に立ち去りました。 


シーン3:5/15・午後18:59・(@1:40〜) 
後頭部(首筋)に白斑のある♀個体が後ろ向きで手前の巣穴Lに入るところでした。 
前脚で落ち葉などを掻き集めながら巣穴Lに搬入しています。 
途中で落枝に引っかかってしまった落ち葉を口で拾い直しました。 

空荷で出巣Lすると、身震いしてから奥に入巣R。 
次に出巣Rする際には、後ろ向きで古い巣材を外に掻き出しました。 
これほど大量の落ち葉を地下の巣穴に溜め込んでいたとは驚きました。 
私が以前試しに与えてみた藁束も含まれているでしょうか? 


アナグマ♀が何をしているのか、私にもようやく意図が飲み込めました。 
産室だった巣穴Rに何度も出入りしては古い巣材を外に排出し、引越し先の巣穴Lに運んでいたのです。

使い古した巣材(寝床)にはノミやダニなどの体外寄生虫がまぎれていそうなのに、大丈夫なのでしょうか?
アナグマは巣材をときどき天日干し(虫干し)するという話を聞いていたのに、この個体は横着して新居に古い巣材をそのまま運び入れました。

(アナグマは)巣材として草を根から引き抜いて使用していると推測される。巣材が大雨などで濡れると、昼に穴の外に出して乾燥させて夜に穴に戻す、という話もある。(wikipediaより引用) 


その後は奥の巣穴Rから土を外に何度も掘り出しています。 
トンネルの拡張工事を始めたのでしょうか。 


シーン4:5/15・午後19:13・(@4:25〜) 
少し時間が開きました(7分後)。 
2つの巣口LRの間に座っていたアナグマが立ち上がって身震いすると、奥の巣穴に入りました。 
すぐにまた後ろ向きで外に出てきました。 
黒い土を外に掻き出しています。 
巣穴Rから奥に向かってまっすぐ後退しながら土を掻き出すので、なだらかなスロープが形成されます。 
これはアクセストレンチと呼ばれ、アナグマの巣穴入口に隣接して必ず見られる構造です。
少し疲れたのか、アナグマは身震いすると右上に立ち去りました。 
採食に出かけたのかな? 



シーン5:5/15・午後20:25・(@5:45〜) 
70分後にアナグマが巣穴Rの拡張工事を再開しました。 
巣口Rから何度も後退しながら土を外に排出しています。 
トレイルカメラの電池が消耗してきて、細切れ映像しか撮れなくなってきました。 
巣口Rに頭を突っ込み、土を前足で後方に掻き出しています。 

作業中にたまたま左後脚を持ち上げてくれたので、股間に睾丸が見えました。(@6:30〜) 
やはり穴掘り作業を担当するのは母親♀ではなく、ヘルパー♂(1年仔の息子♂)だったようです。 
地下で穴掘りを続ける個体の毛皮は黒い土で汚れ、個体識別が困難になります。 
正面からのカメラ目線をくれないので、左右の目の大きさも分かりません。 
この間、母親♀は手前の巣穴Lで幼獣4頭の面倒を見ていて忙しいのでしょう。 


シーン6:5/15・午後20:28・(@6:53〜) 
巣口Rで何やら作業を続けていますが、尻尾しか見えなくなりました。 


シーン7:5/15・午後20:31・(@7:10〜) 
巣穴Rを掘りながら、画面の右側にも新たにアクセストレンチを伸ばしているようです。 
近くにある細い蔓がブラブラ揺れています。 
その後も午後20:40まで穴掘り作業を続けていました。 

巣口から四方にアクセストレンチが伸びています。
これから梅雨になりますが、雨水の浸水対策はどうなっているのでしょうか?
ニホンアナグマは地中でトンネル(坑道)が一度下がってから少し上がった地点に居住区を作っているのかな?(ビーバーの巣からの連想です)

※ 動画の一部は、編集時に自動色調補正を施しています。 
この動画を編集した5月には、アナグマが何をしているのか、いまいち分かっていませんでした。 
♀が巣穴Rの古い巣材(寝床)を外に排出して引越し先(巣穴L)に運んだ前半部と、ヘルパー♂が巣穴Rを掘って拡張工事している後半部を分割すべきでしたね。 
登場個体が♀からヘルパー♂にいつ入れ替わったか、しっかり見極められないのが問題です。


尾根道で日光浴してから飛ぶ越冬明けのヒオドシチョウ【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年4月中旬・午後12:50頃・晴れ 

里山の尾根道を歩くと、日陰のところどころに残雪が未だ少しありました。 
越冬明けのヒオドシチョウNymphalis xanthomelas japonica)を尾根道で何頭も見かけました。 

尾根道の路肩で落ち葉の上に止まって閉じた翅を小刻みに震わせている個体がいます。 
翅の外縁が激しく破損していて、越冬の厳しさを物語っています。 
翅をパッと全開にしてから飛び去りました。 
気温が未だ低いので、くもっていると飛び立つ前に準備運動が必要だったようです。 


次は日向で翅を全開にして日光浴している個体がいました。 
自発的に飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:58〜) 
尾根道に転がっている丸太の上で翅を開閉しながら日光浴していた個体は、翅がほぼ無傷でした。 
複数個体を撮影。 

関連記事(1、9年前の撮影)▶  

ヒオドシチョウの性別を私は外見から判別できませんが、蝶道を作って侵入者(他のチョウ)を追尾していたことから、おそらく♂が尾根道に縄張りを張っているようです。 
そのシーンは動きが激し過ぎて、動画に撮れませんでした。 

 越冬後は山頂や稜線でよく見られ、♂は見晴らしのよい場所で占有行動をとる。(フィールドガイド『日本のチョウ』p225より引用) 


関連記事(同じ尾根道で同日の撮影)▶ 日光浴してから飛ぶ越冬明けのエルタテハ 


冬の間になまった体に鞭打って尾根道まで登ってきたのは、ギフチョウ類の配偶行動を観察するためでした。
しかし残念ながら、 目当てのギフチョウ、ヒメギフチョウは1頭も見かけませんでした。 
どうやら時期を逃してしまったようです。
今季は春の雪解けが早かったので、もっと早く観察に来るべきでした。

2023/12/30

探餌徘徊する野ネズミがニホンアナグマの巣穴にも出入り【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年5月中旬 

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)の営巣地(セット)を監視している自動センサーカメラに写った野ネズミ(ノネズミ)の動画をまとめてみました。 

手前の巣穴Lと奥の巣穴Rの2つが二次林の林床に掘られて並んでいます。 
画面の手前の左からハリギリ(別名センノキ)の棘だらけの細い倒木が横に突き出しているせいで、奥の巣穴Rが見えにくくなっています。 


シーン1・5/12・午後20:11・(@0:00〜) 
晩に2つの巣穴の中間地点をうろついていた野ネズミが、手前の巣穴Lに入りました。 
そのまま出てこなかったので、一時的な不法侵入ではなくアナグマと野ネズミが同居しているのでしょうか?
同じ穴のむじな


シーン2・5/13・午前0:45・(@0:40〜) 
日付が変わった深夜にも野ネズミが餌を探し歩いていました。 
アナグマ♀が巣材を集めた結果、営巣地(セット)周辺の地面は落ち葉がきれいに取り除かれて裸地になっています。 
したがって、野ネズミにとって餌が少ない環境なのではないかと私は思うのですが、どうでしょうか? 


シーン3・5/13・午前1:40・(@1:40〜) 
画面の右端をうろついています。 


シーン4・5/13・午後20:34・(@1:55〜) 
同じ日の晩にも野ネズミが活動しています。 
画面の右端を右へ。 


シーン5・5/13・午後20:52・(@2:00〜) 
画面の右下エリアを徘徊していた野ネズミが、手前の巣穴Lに入りました。 
しばらくすると、同じ巣穴Lから外にピョンと飛び出してきました。 
巣の主であるアナグマに追い払われて慌てて出てきたようにも見えますが、定かではありません。 
そのまま左へ移動して行きました。 


シーン6・5/13・午後20:00・(@2:36〜) 
野ネズミがアクセストレンチのスロープを辿ってそのまま巣穴Lに入りました。 
しばらくすると、同じ巣穴Lから右へピョンと飛び出して、右へ立ち去りました。 


シーン7・5/14・午前1:35・(@3:14〜) 
日付が変わった深夜、雨が結構激しく降っています。 
野ネズミが広場を右へ駆け抜けました。 

余談ですが、その後にちょっと面白いシーンが撮れていました。 
黒い甲虫が画面の右下から登場したのです。 
なんとなくゴキブリやマイマイカブリのように見えます。 
雨が降ると、マイマイカブリの獲物となるカタツムリがよく取れるようになるのかもしれません。 
そのまま地面を歩いて入巣Lしました。 
雨宿りに来たのかな? 
もしも謎の甲虫と野ネズミがニアミスしていたら、暗闇でもその場で野ネズミが虫を捕食したでしょうか? 


シーン8・5/14・午後20:08・(@3:40〜) 
同じ日の晩、雨は止んでいました。 
野ネズミが左奥の広場をうろちょろ探餌徘徊してから、奥の巣穴Rに入りました。 


シーン9・5/14・午後21:26・(@4:30〜) 
巣穴Rにちょっと入って探索してから、奥の灌木林へ。 


シーン10・5/15・午前1:52・(@5:10〜) 
日付が変わった深夜未明、激しい雨が降っています。 
野ネズミが画面左下の茂みの陰から巣口Lを通って右へ。 


シーン11・5/15・午前2:50・(@5:30〜) 
1時間後もまだ雨が降り続いています。 
奥の広場を野ネズミが右から左へ。 


シーン12・5/15・午後19:25・(@5:44〜) 
同じ日の晩には雨が止んでいました。 
巣口Rの奥の広場をウロチョロしていた野ネズミが、林床を右上に走り去りました。 


シーン13・5/15・午後20:07・(@6:11〜) 
広場から右へ。 


巣口Lの近くにトレイルカメラを設置しなおせば、野ネズミがアナグマと同居しているかどうか分かると思ったのですが、依然としてはっきりしません。 
巣内のアナグマが怒って侵入者の野ネズミを外に追い払っている様子はありません。 
探餌徘徊中の野ネズミは、単に「穴があったら入りたい」という性質があるだけかもしれません(探索行動)。 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 

 

5/17の撮影分も追加して同じ1本の動画にまとめようとしても、なぜか連結できなかったので、ブログ限定で公開しておきます。 

シーン14・5/17・午後19:30・ 
画面の左端に居た野ネズミが、そのまま左に立ち去りました。 


庭で落葉したカエデ樹上に現れたコガタスズメバチの古巣:2018年

2018年12月上旬・午後・くもり

民家の庭木が落葉した後に、コガタスズメバチVespa analis insularis)の古巣を見つけました。 
初冬でコロニーが解散した後ですから、成虫の出入りはありません。 
コガタスズメバチはヒトへの攻撃性がそれほど高くなく、当地(東北地方の雪国)では巣があまり大きく育ちません。
夏に横を通りかかっても巣の存在に気付きませんでした。

このように「知らぬが仏」という事例が多いことから、少なくともコガタスズメバチに関しては、人家の近くに巣を作っても、ほぼ問題なく共存できると私は考えます。
コロニーが解散するまで干渉せずに放っておけば良いのです。
下手に駆除しようとするから、蜂に反撃されて刺傷事故が起きるのです。
むしろコガタスズメバチが庭木に営巣したおかげで、周囲の庭や家庭菜園で害虫の発生が抑えられたはずです。
ヒトの知らない間にスズメバチは重要な生態系サービスを担っています。
ミツバチなどのハナバチ類が植物の花を受粉してくれる生態系サービスについては一般人でも理解されているようですが、スズメバチやアシナガバチなど社会性カリバチについてはその危険性ばかりが過剰に喧伝されているのが残念です。

蜂好きが「べき論」を言ったところで反感を買うばかりですが、身近にスズメバチの巣を見つけたら、まずはその種類を正しく見分けることが大切です。
巣の形状や営巣環境などからスズメバチの種類をおおよそ推測することができます。
マスコミがオオスズメバチへの恐怖を毎年煽るので強烈な印象に残り、虫に詳しくない人は最悪を想定してしまいがちです。
しかし、必ずしもオオスズメバチの巣とは限りません。
オオスズメバチは地中に営巣する種類であって、樹上には決して巣を作りません。
そもそもオオスズメバチが営巣するのは、よほど自然豊かな環境(山林)になります。
知識がなくて不必要に怖がる結果、スズメバチに対して不寛容になっている(見つけ次第、皆殺しにすべきだ!)ケースが多いと私は感じます。


完全に落葉した後でも特徴的な翼果が枝に残っていたことから、営巣木の樹種はカエデの仲間[(おそらくイロハモミジ(=イロハカエデ)]と分かりました。


小川を歩いて遡上して丸木橋の下をくぐり抜けるアオサギ【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年5月中旬・午後18:23・気温16℃(日の入り時刻は午後18:44) 

日没前の夕方なのになぜか暗い日で、赤外線の暗視モードでトレイルカメラが起動しました。 
小川の中に1羽のアオサギArdea cinerea jouyi)が来ていました。 
ゆっくり歩いて右岸を上流に向かって遡っています。 
頭を少し下げて、丸木橋の下をくぐり抜けました。 
左岸の水際に注目して、獲物となる小魚を探しているようです。 

画面の左から右に向かって緩やかに流れている小川の上空で、小虫が飛び回っていますが、蚊柱というほど密集していません。 

2023/12/29

雨の朝に幼獣4頭を次々に運んで隣の巣穴へ引っ越すニホンアナグマ♀【トレイルカメラ】

 



2023年5月中旬

シーン1:5/15・午前4:57・(@0:00〜)日の出時刻は4:26。 
雨が降る早朝に、ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)が幼獣の首筋を咥えて運び、手前の巣穴Lへと入りました。 
次に手前の巣穴Lから空荷で出て来ると、まっしぐらに巣穴Rへ向かいました。 
正面から見ても自然光下では左右の目の大きさが黒い過眼線に隠れて見えませんが、後頭部(首筋)に白斑がある♀個体でした。 

アナグマ関連の本で予習していたので、母親♀が幼獣を連れていずれ引っ越しすることは知っていました。
しかし、雨天決行したことに驚きました。 
巣穴Rの巣材(寝床、敷き藁)が雨で濡れて住心地が悪くなったから、急遽、引っ越しするのでしょうか? 
悪天候の方が天敵に見つかりにくいのかな? 
引越し先がすぐ隣の巣穴だったことも意外でした。
前日に巣材を巣穴Rに搬入した行動と辻褄が合わない気がするのですけど、一体何だったのでしょうか?

これで分かったことは、 
  • アナグマ♀は巣穴R(産室)で出産していたこと。 
  • 巣穴RとLの居住区は中で繋がっておらず、独立しているらしいということです。 


シーン2:5/15・午前4:59・(@0:25〜) 
再び♀が次の幼獣(2匹目)を運んで巣穴RからLへと引っ越しました。 
母親に運ばれている間、首筋を咥えられた幼獣は身動きしないでおとなしくしています。 
(鳴き声も聞き取れません。)
空荷で出巣Lした♀が身震いして毛皮の水気を切ってから入巣R。 


シーン3:5/15・午前5:01・(@0:54〜) 
今回は、♀が3匹目の幼獣を咥えて巣口Rから出てくる様子がしっかり撮れていました! 
空荷で♀が巣穴Rへ戻ります。 


シーン4:5/15・午前5:03・(@1:22〜) 
4匹目の幼獣を同様に運びます。 
幼獣の首筋を咥えて運んでいる様子がはっきり撮れました。 
空荷で出巣Lした♀が巣穴Rへ戻る途中で身震いし、雨で濡れた毛皮の水気を切りました。 

次に巣穴Rから出てきた♀は空荷でした。 
巣穴Rの産室に幼獣が残っていないことを確認してきたようです。 
途中で身震いしてから入巣Lしました。 
これで家族の引っ越しは完了です! 
計4頭の幼獣を巣穴Rの産室から新しい巣穴Lに運びました。 
(幼獣運搬を撮り損ねた回があったかもしれません。)


アナグマの産仔数をGoogle Scholarで調べていて見つけた文献の全文PDFが無料公開されていたので、ありがたくダウンロードさせてもらいました。 
田中浩. (2002). ニホンアナグマの生態と社会システム. 山口大学博士論文.
まだ全部は読めていませんが、一腹産子数の平均は、2.3±0.8頭とのことでした。 
私が観察している♀は4頭(以上)産んだので、多産の部類に入るようです。
餌の豊富な生息環境なのでしょう。

アナグマ – おもしろ哺乳動物大百科 83 食肉目 イタチ科 というサイトによれば、
ニホンアナグマの交尾期は4月から8月で、受精卵は翌年の2月ころまで着床遅延し、出産期は2~5月です。産子数は1~3頭、オスの子どもは生後24ヶ月齢まで成長を続けますが、メスの成長は早く1歳で親と同じ大きさになります。性成熟はオスで約2歳、メスは1歳で性成熟し着床遅延をはさんで2歳から出産が始まります。ニホンアナグマのメスの子どもは母親と一緒に生後14ヶ月齢迄しかいませんが、オスは生後約26ヶ月齢まで一緒にいます。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


サルナシの果実を食べてみる

2022年10月上旬

河畔林のオニグルミ灌木に巻き付いた謎の蔓植物に果実がつきました。

図鑑で調べてみると、名前だけは聞いたことのあるサルナシ(マタタビ科)でした。

 



緑色で熟しているかどうか分からないのですけど、果実を1個採取し、ナイフで輪切りにしてみました。
切り口になぜか粘り気があります。


2022年10月中旬

19日後に現場を再訪すると、手の届く範囲のサルナシ果実は無くなっていました。
野生動物が食べ尽くしたのか、それとも通りすがりのヒトが誰か採取したのかな?

蔓を強引に引き寄せて、残った熟果をなんとか1房(5個)だけ採集しました。
果実が熟しても果皮は緑色のままで、表面がシワシワになるだけです。

採寸代わりに1円玉(直径2cm)を並べて写真に撮りました。
ナイフで輪切りと縦切りにしてみました。
断面の果汁に粘り気があります。


試食してみると、酸味が強いものの、確かにキウイフルーツと同じ味でした。
小さな種子のプチプチした歯応えも同じでした。
しかしサルナシは1個の果実が小さいので、食べごたえがありません。
食後に口内が少しピリピリするのは、アクチニジンと呼ばれるタンパク質分解酵素が含まれているからでしょうか。

多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』を紐解いてサルナシについて調べると、このタンパク質分解酵素の役割りについて興味深い話が書いてありました。
なるほどなぁ。

・キウイに似て美味だが、食べ進むと甘みを感じなくなり、苦痛になる。果肉中のタンパク質分解酵素で舌の味蕾がやられてしまうのだ。大食いの哺乳類が1回に食べる量を制限して、タネを少しずつ分散させるために酵素はある。

・種子の粒は小さく、サルやタヌキやクマの歯の間をすり抜ける。(p147より引用)

サルナシやキウイフルーツは熟しても果皮が色づかず地味なままなので、鳥類ではなく哺乳類に果実を食べてもらって種子を糞と一緒に散布してもらう戦略です。
サルナシの果実を食べる種子散布者としてはホンドテンやハクビシン、ニホンザル、ツキノワグマなどが予想されます。
(『身近な草木の実とタネハンドブック』にはタヌキも挙げられていましたが、木登りのできないタヌキは落果を食べるしかないでしょう。)

トレイルカメラを設置して、サルナシの実を食べに来る野生動物を観察してみたいところです。
しかし、この場所は川沿いの遊歩道のすぐ横なので人通りが多く、隠しカメラを設置したらトラブルになりそうです。
人里離れた山林に自生するサルナシを探しているのですが、なかなか見つかりません。
適当な場所にサルナシの種子をばらまいて育つのを待つ方が早いかもしれません。


同じ日の帰り道に、民家の庭の蔓棚でたわわに実ったキウイフルーツの熟果を2箇所で写真に撮りました。
東北地方の雪国でもキウイフルーツが育つとは最近まで知りませんでした。
品種改良すればサルナシの果実もこのぐらい大きく立派に育つのでしょうか。

民家aの蔓棚
民家bの大きな蔓棚

【追記】
2023年5月下旬
同じ場所に定点観察に通い、蕾の写真を撮りました。






その後は忙しくなってしまい、残念ながらサルナシの花を観察しそびれてしまいました。
訪花昆虫(サルナシの送粉者)に興味があるので、花を見るのは来季の宿題です。

同じ日に民家の蔓棚bで育つキウィフルーツの蕾も写真に撮っています。






次は6月中旬に定点で撮ったサルナシ未熟果の写真です。





カキドオシの花蜜を吸うルリシジミ♀

 

2023年4月中旬・午後14:40頃・晴れ 

河畔林の林床に咲いたカキドオシの群落でルリシジミ♀(Celastrina argiolus)が訪花していました。 
晴れているのに、初めは翅を閉じたまま吸蜜していました。 
閉じた後翅を互いに擦り合わせています。 
春風が強く吹くせいであまり飛ばず、隣の花に歩いて移動します。 

後半からは花弁に止まったまま吸蜜を止め、翅を半開きにして日光浴に専念しています。 
前翅の外縁に太い黒帯があることから♀と判明。 
粘って撮影しても飛んでくれませんでした。 

近くでウグイス♂のさえずる鳴き声♪が聞こえます。 
春の林床に咲くスプリング・エフェメラルは、カキドオシに交代したようです。

2023/12/28

雨夜に巣材集めを始めたニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 




2023年5月中旬


シーン1:5/14・午後19:18・(@0:00〜) 
小雨がぱらつく晩に、ニホンアナグマ♀(Meles anakuma) がせっせと巣材集めを始めました。 
落ち葉などを前脚で抱え込みながら、右奥にある巣穴Rに後ろ向きで入りました。 
雨で巣材が濡れている(湿っている)はずなのに、気にせず搬入しました。 
すぐに同じ巣穴Rから外に出ると、身震いしてから左の二次林へ向かいました。 
ちらっとカメラ目線をくれた際に、右目の小さな♀個体であることが確認できました。 


シーン2:5/15・午前3:43・(@0:38〜) 
日付が変わった深夜未明、雨は止んでいました。 
♀が左手前の巣穴Lから外に出て来ました。 
画面の左端で軽く立ち上がると、低木に前脚を掛けました。 
カメラの死角で何か作業しています。
灌木の茂みがガサガサ動いているので、枝についた葉を直接採取して寝床(敷き藁、巣材)として集めているようです。 
落ち葉だけでは量が足りないのでしょう。 
少しずつ後退しています。 
巣穴に辿り着く前に、尻切れトンボで録画が終わってしまったのが残念です。 


シーン3:5/16・午前3:12・(@2:08〜) 
翌日も未明に♀が巣材を巣穴Rへと運び込んでいました。 
カメラの電池が消耗していて、細切れの映像になってしまいました。 


※ 動画の一部は、編集時に自動色調補正を施しています。 
残念ながら、この時期は1台のカメラでしか撮れていません。 


アナグマ関連の本を読むと、使い古した巣材や濡れた巣材を外に出して干すのだそうです。(寄生虫対策?) 
今回のアナグマは逆に、濡れた落ち葉を巣材として運び込んだので、とても驚きました。 
濡れ落ち葉は寝床として冷たいですし、地中でカビが生えたりしないのか?と心配になります。 
何か緊急事態が勃発し、新しい巣材が急遽必要になったのでしょうか? 
出産が近いので新しい巣材を産室に持ち込んだのか?と想像したものの、私の予想は外れました。 
この翌日になんと…。 


送電塔の巣内で抱卵するチゴハヤブサ♀(野鳥)

 



2023年5月中旬・午後13:10頃・晴れ 

前回から4日後に送電塔#20の様子を見に来てみると、1羽のチゴハヤブサFalco subbuteo)が巣の縁に立って辺りをキョロキョロ見渡していました。 

私が移動して逆向きから撮影すると、警戒を解いたチゴハヤブサがようやく西を向いて巣内に座り込みました。 
抱卵を始めたということは、この親鳥は♀なのでしょう。 
頭部がたまに少しだけ見えます。 
巣の外に突き出ている尾羽根が細かく震えているのは何故でしょう? 
風は吹いてないはずなので、嘴で羽繕いしているのでしょう。 
♂は採餌に出かけているのか、姿が見えません。

交通量の多い交差点ではじっくり撮影できず、通りすがりに短時間の観察しかできませんでした。 
撮影行為そのものが親鳥にストレスを与えるかもしれないので、むしろ私の撮影に歯止めがかかって好都合かもしれません。 
良くないことに、交差点を掘り返す道路工事が始まり、騒音が酷いです。 
こんな喧騒がある街なかでも平気で営巣する猛禽がいることが驚きです。 

残念ながら、チゴハヤブサの姿を見たのはこの日が最後でした。 
結局ここでは繁殖を止めてしまいました。 
近くで騒々しい道路工事が始まったり、鉄塔の真下で草刈り作業をしたりと、人為的なストレスが多くて耐え難い環境だったのでしょう。 
チゴハヤブサが居なくなった後に送電塔#20でカラスが営巣することもなく、古巣はそのまま放置されました。

2023/12/27

雨の降る朝夕に巣穴へ出入りするニホンアナグマ【トレイルカメラ】

 



2023年5月中旬 

雨の降る朝夕にニホンアナグマMeles anakuma)が巣穴に出入りする様子をまとめました。 
薄明薄暮の時間帯です。
アナグマは雨が降っても活動するようです。


シーン1:5/14・午前4:37・(@0:00〜)日の出時刻は午前4:27。 
日の出直後にトレイルカメラが起動すると、小雨がぱらついていました。 
手前の巣穴Lから出てきたと思われるアナグマが、奥の巣口Rの手前で身震いしてから入りました。 

その少し後にキジ♂(Phasianus versicolor)が近くの農地(または休耕地)でケンケーン♪と勇ましく鳴いて縄張り宣言する声(母衣打ち)が聞こえました。 


シーン2:5/19・午後17:32・(@0:19〜)日の入り時刻は午後18:48。 
5日後の夕方も雨でした。 
近くの田畑でトラクターが土を耕しているようで、振動・騒音が持続的に響いています。

小雨が降る中、アナグマが巣穴Rから出て右へ立ち去りました。 
♀なのかヘルパー♂なのか、性別不明です。 


シーン3:5/19・午後17:34・(@0:31〜) 
出巣Rすると、右へ立ち去りました。 


シーン4:5/19・午後17:37・(@0:48〜) 
出巣Rすると、身震いしてから右へ。 


シーン5:5/19・午後17:40・(@1:01〜) 
出巣Rすると、身震いしてから獣道を歩いて手前へ(画面の右下隅へ)。 


シーン6:5/19・午後17:44・(@1:21〜) 
出巣Rしたアナグマが身震いしてから、広場を経由して獣道を左へ。 


入巣Rのシーンが撮れてないのに、巣穴Rから出てくるアナグマが連続で5回も撮れたのが、まるで手品を見せられているようです。 
私は未だアナグマの個体識別をしっかりできていないのですが、まさか5頭以上の♀が同じ巣穴に同居していて、次々に出巣Rしたのでしょうか? (そんな馬鹿な!) 
私の知らない別の巣穴からも出入りしているとしたら、登場個体が重複してるかもしれません。 
トレイルカメラのセンサー感度など技術的な問題で、入巣Rシーンを撮り損ねているだけという気もします。 
別アングルに設置したもう1台のトレイルカメラには撮れていませんでした。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 雨音が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


スズメバチの巣よけのダミー?

2023年11月中旬 

民家の庭木に奇妙な物体が紐で2つ吊り下げられていました。 
茶色のガムテープを丸めた物体です。 
その家の人が不在で質問できませんでしたが、おそらくコガタスズメバチVespa analis insularis)の丸い巣を模したダミーを自作したのではないかと想像しました。 
中に防虫薬剤が含まれているのかもしれません。 
果たしてスズメバチの創設女王に対して営巣忌避効果があったのでしょうか? 

最近ホームセンターや通販などで売られている類似商品には表面に鱗模様が印刷されていて、スズメバチの巣の外皮に擬態しています。 
しかしダミー(フェイク)の巣を吊るしても、個人的には「気休めやおまじない程度にしかならないのでは?」とその効果に懐疑的です。 
機会があれば検証実験してみたいものです。
宣伝通りの効果があるのであれば、もちろん朗報です。

どうせなら実際にスズメバチの古巣を採集しておいて、営巣して欲しくない場所にそれを吊るすのはどうでしょう?
スズメバチは古巣を再利用して住み着くことはありません。
古巣には寄生蛾などが同居しているはずですから、スズメバチの天敵が増えることが期待できますし、本物の古巣の近くにはわざわざ営巣しない気がします。

関連記事(14年前の撮影)▶ コガタスズメバチの巣に寄生する蛾の幼虫
 

ハルジオンの花で後食するアカムネハナカミキリ

 

2023年5月中旬・午後15:00頃・晴れ 

川沿いの土手に咲いたハルジオンの群落で見慣れないカミキリムシが訪花していました。 
花粉や花蜜を食べているようです。(後食行動) 
後半は細い舌状花の花弁に付着した花粉を舐め取りました。 
風揺れが酷いため、ハルジオン頭花の茎を左手で押さえながら動画に撮りました。 
太陽を背にして撮影を始めてしまったので、カメラの影が被写体にかぶらないように苦労しました。 

私が手を離したら、飛び去って見失いました。 
飛翔シーンを撮り損ねたのが残念です。 

家に帰ってから図鑑で調べてみると、おそらくアカムネハナカミキリMacropidonia ruficollis)だろうと判明。 
他に候補となったホタルカミキリは触角がもっと短いですし、外来種で近年問題になっているクビアカツヤカミキリは鞘翅がもっと黒光りしているはずです。 
ところが、アカムネハナカミキリはかなり珍しい種類なのだそうです。
山地に生息するが、生息地は極限られ、確実に見られるのは長野県の1ヶ所のみという珍しいカミキリムシ。(「とある虫屋のむし写し」サイトより引用)
撮影現場は平地の川沿いですし、食樹のクロツバラという植物を私は全く知りませんでした。 
近くの河畔林で最近になってニセアカシアを大量に伐採したので、それに誘引されたのかな?と想像してみたのですが、見当違いだったようです。 
他にはノイバラの藪が生えていますが、そもそもクロツバラはバラ科ではなくクロウメモドキ科に属するらしい。 
山形県にアカムネハナカミキリは生息しないのかと心配になってネット検索してみると、山形県立博物館に標本が収蔵されていることが分かりました。 
胸部のきれいな赤色が死後は退色してしまうようです。 
県のレッドデータブックには絶滅危惧種として登録されていません。
今思うと、採集すればよかったですね。

鈴木知之『新カミキリムシハンドブック』でアカムネハナカミキリについて調べると、
ヤマボウシやノリウツギの花上で得られた記録はあるが、通常、花には集まらない(飼育下ではクロツバラの花粉をよく食べた)。(p33より引用)
今回ハルジオンの花粉を食べたのは、珍しい後食行動だったのかもしれません。

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