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2025/07/14

池畔のマユミ枝先に集まって次々と泡巣を作り産卵するモリアオガエル♀♂【微速度撮影#3】ニホンザルが泡巣を捕食?

 



2024年6月上旬〜中旬 

繁殖池で、岸辺に自生するマユミの枝葉にモリアオガエル♀♂(Rhacophorus arboreus)が集まって白い泡巣を次々に作り、産卵する様子をタイムラプス動画で記録しています。 
夏至(6/21)が近づき日が長くなったので、タイムラプス専用カメラのタイマー設定を午前5:30〜午後18:00に前後30分ずつ延長しました。 
1分間隔のインターバル撮影で、ちょうど一週間分(7日間)の記録です(6/7〜6/14)。 
最近は雨不足のようで、池の水量が減り、岸辺は干上がりつつあります。 
当分は雨が降らないとの週間天気予報で、心配です。 

それでは早速、撮れたタイムラプス映像を見てみましょう。 
撮影を延長した薄明薄暮の時間帯も充分明るく撮れていました。 
モリアオガエルの産卵は主に夜行われるようですが、昼間でも新しい泡巣が作られていました。 
例えば6/13午前8:00〜午後13:00の映像が分かりやすく撮れています。 

この時期、面白い事件がいくつか起きていました。 

(1)ニホンザルによるモリアオガエル泡巣の捕食?
カメラが狙っていたマユミ樹上の比較的新しい泡巣のいくつかが、動画の冒頭で突然、しかもほぼ同時に溶け落ちました。 
泡巣の内部でモリアオガエルの幼生(オタマジャクシ)が孵化してある程度育つと、雨が降る日に自然と泡巣が溶け落ち、オタマジャクシは下の池に脱出します。 
しかし、今回の泡巣が自然に溶けたにしては時期が早すぎます。 
つまり、あまりにも不自然な溶解です。 
タイムラプス動画をコマ送りでじっくり見直すと、泡巣消失の謎が解けました。 
事件が起きたのは、6/7の午後15:44〜15:57です。 
何者かがマユミの灌木を激しく揺すったりしならせたりしたせいで、泡巣が何度も水中に没していました。 
そのせいで泡巣が早く溶けてしまったようです。 

このとき、池の対岸を遊動するニホンザルMacaca fuscata fuscata)が写っていました。
山林を遊動してきた群れが池を訪れ、一部の個体が狼藉を働いたようです。
猿が木から木へと伝い歩く際に、細いマユミ灌木上の泡巣が激しく揺すられて、泡巣が壊れたり溶け落ちたりしてしまったのでしょうか?
好奇心旺盛な子ザルがモリアオガエルの泡巣を果物と誤認して興味を持ち、調べに来たのかな? 

夏の暑い日にニホンザルは池に飛び込んで水遊びをすることが知られています。
関連記事(10年前の撮影)▶ 湖で泳ぐ野生ニホンザルの群れ
今回も池畔のマユミ灌木から無邪気に池へ飛び込もうとして、泡巣を意図せずに破壊・融解してしまったのでしょうか?
しかし、干上がりかけた浅い泥沼にニホンザルが入水するとは思えません。

実は、対岸(画面左端)に自生するミヤマガマズミの灌木にもモリアオガエルの白い泡巣が産み付けられています。 





下の連続写真で示すように、別個体のニホンザルがこのミヤマガマズミ群落を訪れて、しばらく座り込んでいました。
どうやらモリアオガエル泡巣に含まれる卵やオタマジャクシを捕食したようです。
ニホンザルにとって、貴重なタンパク源になるでしょう。

ちなみに、翌日6/8には、このミヤマガマズミの枝先にモリアオガエルの新しい泡巣が産み付けられていました。 
ニホンザルが来る前の泡巣の様子。まるで白い果実のように泡巣がたわわになっている。
対岸左のミヤマガマズミにニホンザル登場。右手前のマユミ枝葉が何者かによって大きくしなり、泡巣が写ってない。

ニホンザルが対岸左のミヤマガマズミでモリアオガエルの泡巣を捕食中?

別個体のニホンザルが対岸のスギ林縁を右から左へ遊動。右手前のマユミ枝葉が何者かによって大きくしなり、泡巣が写ってない。
対岸左のミヤマガマズミからニホンザルが去る。

右手前のマユミ枝葉を何者かが激しく揺する。
ニホンザルが居なくなると、マユミ樹上の泡巣は短時間ですっかり溶け落ちていた。

その後はマユミ灌木の真下だけでなく、水面のあちこちにモリアオガエルの溶けた泡巣が浮いていました。 
風に吹かれて水面を移動したのかと思ったのですが、ニホンザルが枝を激しく揺すって泡巣を水面に浸けたことで説明できそうです。 

1分間隔のインターバル撮影では、断片的な情報しか得られません。
もし今後もニホンザルがモリアオガエルの繁殖池に来て泡巣の採食を繰り返すようなら、池畔にトレイルカメラを追加して、動画による証拠映像を撮るしかありません。





【参考文献】
ニホンザルがモリアオガエルの泡巣を捕食するなんて、私にとっては全く予想外の事件で興奮しました。
GoogleScholarで文献検索してみると、残念ながら新発見ではなく、すでに論文になっていました。
井上光興; 辻大和. 野生ニホンザル Macaca fuscata によるモリアオガエル Rhacophorus arboreus 泡巣の採食事例. 霊長類研究, 2016, 32.1: 27-30.(全文PDFをダウンロード可)

ブログで報告している人もいます。
サルが食べていたのは・・・ @秋田・青森県


外来種のアライグマがモリアオガエルの泡巣と成体を捕食した事例も別に報告されていて、この論文は要旨だけ読めました。
ICHIOKA, Yukio; HIJII, Naoki. Raccoon Predation on Foam Nests and Adults of the Forest Green Tree Frog (Zhangixalus arboreus: Rhacophoridae) in Central Japan. Current herpetology, 2021, 40.2: 129-136.
外来種のアライグマが当地で生息しているという確かな証拠映像はまだ撮れていません。

野生動物による捕食圧が高まれば、モリアオガエルも対抗策を進化させる可能性があります。
今の泡巣は白っぽくて樹上でよく目立つので、緑の色素を混ぜ込んで迷彩を施せば、保護色になりそうです。

もしかすると逆に、モリアオガエルはニホンザルに泡巣を見つけてもらいたいのかもしれません。
樹上の果実に擬態してニホンザルの気を惹いているという大胆な仮説です。
泡巣が産み付けられた木にニホンザルがよじ登ろうとしても、細い灌木のことが多いので、猿の体重を支えきれずに大きくしなり、泡巣は水没してしまいます。
泡巣の一部はニホンザルに捕食(食卵)されてしまうかもしれませんが、泡巣が溶けてオタマジャクシが水中に脱出するのをニホンザルが助けているのかもしれません。



(2)6/9午後12:20に対岸の水際をホンドタヌキNyctereutes viverrinus)らしき野生動物がうろついていました。
(3)6/12午前7:49にコガラPoecile montanus)がマユミ樹上に来ていました。 
モリアオガエルの泡巣に集まる昆虫(ハエやシリアゲムシなど)を捕食しに来たのかな? 

他にも私が見落としている事件がまだまだありそうなので、皆さんもタイムラプス動画をスロー再生して見つけたら教えてください。


つづく→

2025/06/21

コガタスズメバチ創設女王が軒下で初期巣を作る様子【10倍速映像】

 



2024年5月下旬 

民家の軒下に単独で営巣を始めたコガタスズメバチVespa analis insularis)創設女王♀の活動を微速度撮影してみました。 
トレイルカメラとかタイムラプス専用のカメラもあるのですけど、今回の初期巣はかなり高所に架けられているため、巣の近くに監視カメラを設置することが出来ません。 
仕方がないので、軒下(初期巣の真下)に三脚を据えて、真上を向けて初期巣に望遠レンズでズームインし、10倍速で微速度撮影しました。 
毎回カメラのバッテリーを使い切るまで長撮りします。 
斜め下から初期巣を見上げるアングルを確保できれば、巣口が細長く下向きに形成される様子を記録できたのですが、残念ながら現場周辺の立地的な事情があって、どうしても真下からしか撮影できませんでした。 
おまけに3日間しか撮影できていません。 
色々と中途半端ですけど、創設女王の行動レパートリーを一通り記録することが出来ました。 

動画の撮影開始時刻を元にして、時刻を秒単位で画面内に表示するように編集で工夫しました。 
撮れた動画のほとんどの時間は何も起こらず退屈なので、編集でカットします。 


シーン1:5/26・午前11:19〜午後12:45(@0:00〜1:56) 
巣内で創設女王が何をしているのか、暗くてよく見えませんが、育房内を点検して回っているようです。 
幼虫が卵から孵化しているのかどうか、映像からは分かりませんでした。 
巣内に篭もった女王が巣盤の裏側(上側)に隠れてしまうことがあります。 
巣盤の天井部で巣柄を抱くように体をカールさせ、育房内の卵を自分の体温で温めることで、孵化を早めるのだそうです。(抱卵行動) 
別の場所で撮ったコガタスズメバチの抱卵行動を観察できたので、映像を公開する予定です。 

ときどき女王は巣から飛び去り、おそらく花蜜を吸うなどして食事をしてくるのでしょう。 
巣材として木の樹皮を噛みほぐしたパルプを集めてくることもあります。 
巣材の団子を持ち帰った創設女王は、作りかけの外皮の縁に巣材を薄く伸ばしながら追加していきます。 

コガタスズメバチの創設女王は1層の巣盤を作って育房内に産卵すると、巣盤を覆うように球状の外皮を上から作ります。 
次に、外皮の下側にある出入り口(巣口)を細長く下向きに伸ばしていきます。 
初期巣が逆さまの徳利みたいな形になるのが、コガタスズメバチの特徴です。 


シーン2:5/27・午前11:04〜午後12:35(@1:57〜3:50) 
前日よりも外皮底の開口部が小さくなっています。 
その結果、女王の巣内活動を観察できなくなりました。
創設女王は、帰巣→外皮増設→出巣のルーチンを何度も繰り返しています。 
煙突状の巣口を下向きに細長く伸ばしているようです。 


シーン3:5/29・午前11:05〜午後12:18(@3:51〜4:03) 
この日は帰巣→出巣を1回ずつしか録画できていませんでした。 
どうやら造巣行動をやらなくなったようです。 
この日で撮影を打ち切りました。 


巣作りが一段落した後、創設女王は幼虫にせっせと給餌して育てるはずです。 
やがてワーカー♀が無事に羽化すると、細長い煙突状の巣口を取り壊します。 
その様子も微速度撮影で記録したかったのですが、どうしても定点カメラを長期間設置する場所を確保できず、諦めました。 


2025/06/20

池畔のマユミ枝先に集まって次々と泡巣を作り産卵するモリアオガエル♀♂【微速度撮影#2】

 



2024年6月上旬 

モリアオガエル♀♂(Rhacophorus arboreus)の繁殖池で岸辺に自生するマユミの枝葉に集まって白い泡巣を次々に作り、産卵する様子をタイムラプス動画で記録しています。 
インターバル撮影の設定は前回と同じで、明るい昼間だけ(午前6:00〜午後17:30)1分間隔、4日間の記録です(6/4〜6/7)。 

カメラ全体を透明プラスチックの防水ケースにすっぽり格納してあるのですけど、今回はその上に雨よけの庇を取り付けました。 
持参した薄いプラスチック板をハサミで適当な大きさの長方形に切り、カメラの上部を覆うように屋根のように固定しました。 
これだけでも効果は絶大で、雨の多い季節でもレンズに水滴が付くことが減りました。 
設置した雨よけの庇が画面の上に写り込まないように、注意が必要です。 

泡巣が溶けてモリアオガエル幼生(オタマジャクシ)が下の池に脱出するまでの経過も、できれば微速度撮影で記録したいのです。 


肝心の泡巣作り(配偶行動)は主に夜間行われているようですが、残念ながらこのカメラには暗視モードがありません。
夕方から翌朝へと時間が飛ぶと、急に新しく泡巣が増えています。

撮れたタイムラプス動画をよく見ると、表面がまだ乾いていない新しい泡巣にシリアゲムシの仲間♀♂が何匹も群がっていました。 
泡巣に口吻を突き刺して吸汁(食卵?)しながら、翅紋を誇示しているようです。 
現場入りした際にその様子を実際に撮影したので、映像公開予定。 


タイムラプス動画をスロー再生してじっくり見直すと、ちょっと面白い瞬間もいくつか撮れていたので、皆さんも探してみたください。 

ニホンカモシカCapricornis crispus)が池の岸辺(泥濘)を歩いて左から右へと横切る姿が写っていました。(@0:12〜) 
池の水を飲みに来たのかもしれません。 
カモシカも水浴するらしいのですが、私は観察したことがありません。 

・モリアオガエルがレンズに跳びついた瞬間も撮れていました。(@2:24〜) 

・池の水面ではカルガモAnas zonorhyncha)の群れが泳ぎ回っています。 


2025/06/10

池畔のマユミ枝先に集まって次々と泡巣を作り産卵するモリアオガエル♀♂【微速度撮影#1】

 

2024年5月下旬〜6月上旬

モリアオガエル♀♂(Rhacophorus arboreus)が繁殖期に樹上で次々と産卵する様子を長期間の微速度撮影してみました。 
里山にある繁殖池に行ってみると、前年と全く同じ場所に白い泡巣が早くも作られていました。 
池畔に自生するマユミ灌木の葉に白い泡状の塊が付着しています。 

BrinnoタイムラプスカメラTLC200を専用の防水ケースに格納し、水際のマユミを狙って設置しました。 
この機種TLC200の最短撮影距離は約75cmで、接写にはあまり向いていません。 
しかし、モリアオガエルがマユミの枝葉のどこに次の泡巣を作るか予想できませんから、広角で狙う方が好都合です。 
明るい昼間だけ(午前6:00〜午後17:30)1分間隔でインターバル撮影するように設定しました。 
モリアオガエルの繁殖行動は夜通し行われるのですが、残念ながらこのカメラ機種には暗視機能がないため、明るい日中のみの撮影になります。 
トレイルカメラを使えば昼も夜も連続してインターバル撮影が可能になるのですが、手持ちのトレイルカメラは全て他のプロジェクトで使っているので仕方がないのです。 
天気予報通り、夕方から雨が降り出しました。 

さて、6日間(5/30〜6/4)インターバル撮影してみたタイムラプス動画を見てみましょう。 
マユミの樹上でモリアオガエルが作る泡巣の数が増えていました。
マユミの左隣のハルニレ?灌木にも産卵していました。 
その重みで枝葉が垂れ下がり、撮影後半にはカメラの視界を遮ってしまいました。 
被写体(泡巣)までの距離が近過ぎてピンぼけになるかと心配でしたが、大丈夫でした。 
モリアオガエル♀♂がマユミの木に登って集まり、抱接しながら白い粘液を泡立てて泡巣を作り、その中に産卵・受精します。 
しばらくすると泡巣の表面は乾いて固くなり、内部の受精卵を乾燥や捕食者から守ります。 
やがて卵から幼生が孵化すると泡巣の耐水性は次第に失われ、雨で溶けた泡巣からオタマジャクシが脱出して下の池に落ちます。 
晴れたに日は、溶けかけた古い泡巣にハエなどの虫が集まっていました。 

昼間の池には、カルガモAnas zonorhyncha)の♀♂つがいが水面を泳ぎ回っていました。 

曇ったり雨が降ったり夕方になったりすると、マユミの横枝が垂れ下がることが分かりました。 
晴れると光合成が活発になり、横枝もピンと持ち上がります。 
生きた植物はゆっくりながらも活発に動いていることが、タイムラプス動画にすると一目瞭然です。 
池を取り囲むスギ林の影が日時計のように刻々と移動します。 

モリアオガエルの繁殖期は、梅雨の初め(雨季)と重なっています。 
カメラの設置場所が水際なので、湿度が高くて気温が下がる朝晩にはレンズに結露したり霧が発生するかと心配でしたが、それは大丈夫でした。 
激しい雨が降るとレンズの表面に水滴が付着します。 
しかし晴れると水滴が自然に蒸発して、きれいに乾きました。 
Brinno専用の防水ケースの撥水性はかなり優秀でした。 
防水ハウジングの内部に雨が浸水することもなく、結露もしていませんでした。 
それでもレンズの水滴対策が必要だと分かったので、次回からは雨よけの庇を取り付け、防水ケースのレンズの部分には曇り止めの撥水スプレーを噴霧した方が良さそうです。 


つづく→#2


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2025/03/10

早春にトウホクサンショウウオの繁殖池をタイムラプス動画で監視してみると…#2

 



2024年3月下旬 

里山の湧き水が溜まった小さな泉が毎年早春にはトウホクサンショウウオHynobius lichenatus)やヤマアカガエルRana ornativentris)の繁殖池になっています。
両生類の産卵行動を観察するために、インターバル撮影専門のカメラで監視してみました。 
明るい昼間だけ1分間隔で撮影する設定にしました。

残念ながら、3/22〜27の6日間しか撮れていませんでした。 
その後は寒の戻りで大雪が降った日に、カメラの上に積もった雪の重みで固定したカメラの画角が下にずれてしまい、池を監視できなくなりました。 

スギの落枝(生葉および枯葉)を池の水中に沈めておいたのですが、後日に現場入りして調べても、トウホクサンショウウオの卵嚢は落枝に全く産み付けられていませんでした。 
対岸に少しだけトウホクサンショウウオの卵嚢が見つかりました。 
やはりスギの生葉から溶けだす未知の成分が両生類にとって忌避物質(弱毒)なのかもしれません。 

タイムラプス動画を見直すと、ときどき池の水中に両生類が出没していました。 
しかし、映像の早回しスピードが早すぎて、カエルかサンショウウオか、よく分かりません。 
落枝に産卵を始めればもっと長居するはずです。 

今季の作戦は失敗に終わりました。 
トウホクサンショウウオやヤマアカガエルはもしかすると夜の方が活発に産卵するかもしれないので、次回は赤外線で暗視できるトレイルカメラを使って終日のタイムラプス撮影をしてみるつもりです。



2025/02/13

早春にトウホクサンショウウオの繁殖池をタイムラプス動画で監視してみると…#1:ニホンザルの登場

 

2024年3月上旬〜下旬

山中の湧き水が溜まる浅い池で毎年早春にトウホクサンショウウオHynobius lichenatus)が繁殖していることが分かっています。

産卵行動を観察・撮影するのが今季の目標です。 
3月上旬に現場入りしてみると、暖冬のためか池は雪に埋もれていませんでした。 
この日は未だヤマアカガエルやトウホクサンショウウオの卵嚢は1つも見つかりませんでした。 
親の姿もまったく見当たりません。 
繁殖期はまだ始まっていないようです。 
(ちなみに、標高の低い山麓の池ではヤマアカガエルの産卵が始まっていました。) 
前年は水中に半分沈んだアカマツの落枝にトウホクサンショウウオの卵嚢が産み付けられていたので、今年は産卵基質として常緑の葉の付いたスギの落枝を池に投入してみました。 
(私のこの行為が、余計なお世話だったかもしれません。)

両生類は変温動物ですから、いくら活発に動き回っても通常のトレイルカメラでは検知できません。 
仕方がないので、次善の策としてタイムラプス専用カメラを設置して繁殖池を監視することにしました。 
明るい昼間のみ1分間隔でインターバル撮影した連続写真をタイムラプス動画に加工しました。 
(トウホクサンショウウオ♀は夜に産卵するのかもしれませんが、この機種では夜間の暗視撮影はできません。)
まる2週間のインターバル撮影で計4.7 GiBのAVIファイルが生成されました。
トレイルカメラの動画撮影と比べると、電池の消費は驚くほど少なくて済みました。

野生動物で唯一写っていたのは、 3/8の夕方(PM 17:10〜17:11)に登場した1頭のニホンザルMacaca fuscata fuscata)だけでした。 
他の季節にこの水場でニホンザルが飲水するシーンがときどきトレイルカメラで撮れていたので、今回も群れで遊動する途中に水を飲んだり水浴するために立ち寄ったのでしょうか? 
雪解け水の冷たい泉にわざわざ入ってジャブジャブ横断したということは、何か餌を探していたのかもしれません。 
早春は樹々が芽吹くまでニホンザルの餌がきわめて乏しい季節ですから、空腹の猿がカエルやサンショウウオの成体や卵嚢を探して捕食する可能性も十分あり得ます。 
しかし、ニホンザルが監視カメラに写ったのは、2週間でこの一度きりでした。 
もし捕食に成功していたら、味をしめて何度も同じ池に通っていたはずです。 
あるいは、カエルやサンショウウオの成体または卵嚢を味見したのに、ニホンザルの口に合わなかった(不味かった)のかもしれません。
ニホンザルの糞を分析して、両生類のDNAが検出できれば捕食した有力な証拠となるでしょう。 

タイムラプス動画を見ると、低山でもときどき寒の戻りで雪が降っていました。 
早春の積雪量は少なく、すぐに溶けてしまいます。 
カメラのレンズに雪が付着しても、晴れると溶け落ちてすぐに視界は良好に戻ります。 
晴れると池の周囲の雑木林の影がまるで日時計のように刻々と移動しています。 

画面の下端に写っている、池畔に自生するスギ幼木の枯れた横枝が邪魔なのですが、上下に日周運動していることが分かりました。 
昼間に晴れると枝が立ち上がり、曇りや雨雪など悪天候になると垂れ下がります。 
つまり死んだ枯れ枝ではなく、生きているようです。 

水中に浸ったスギの落枝はいつまで経っても葉が緑色のままで、茶色に枯れることはありませんでした。 
いくら目を凝らして動画を見直しても、水中のスギ落枝にサンショウウオやカエルが集まって産卵する様子は写っていませんでした。 
たまに岸辺近くの水中で両生類?がウロチョロしていたかもしれませんが、タイムラプスの早回し映像ではあまりにも早すぎてよく分かりません。 

後に現場入りすると、監視カメラの画角の外の、対岸の水面に浮いていたスギの落ち葉にトウホクサンショウウオの卵鞘が少しだけ産み付けられていました。
スギの生葉から水に溶け出したエキスをトウホクサンショウウオが嫌って寄り付かなくなってしまった可能性なども懸念してしまいます。
完全に枯れたスギ枝葉を池に投入すべきだったかもしれません。 

期待外れの結果で残念でしたが、もう少し続行します。




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2025/01/17

ホンドタヌキの溜め糞に群がる虫たちの活動【10倍速映像】

 



2023年5月下旬・午前11:30〜午後13:10頃・ 

平地のスギ防風林に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の大きな溜め糞場wbc1を定点観察しています。 
実際ここに複数個体のタヌキが代わる代わる通って排便していることをトレイルカメラで確認済みです。 

多種多様な食糞性の昆虫(および捕食者)が糞塊に群がっています。 
私が横に立っている間は警戒して隠れてしまう虫もいるので、三脚を立てて微速度撮影で長撮りしてみました。 
(その間、私は現場を離れていました。) 
鬱蒼としたスギ林の林床は、晴れた昼間でもかなり薄暗いので、予めカメラの設定でゲインを上げてから撮影します。 
「うんちレストラン」に集まる魑魅魍魎が正午前後(1時間40分間)に活動する様子を10倍速の早送り映像でご覧ください。 

最も目についたのは、クロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の成虫および幼虫です。 
多数の成虫が溜め糞上で活発に徘徊し、配偶行動(求愛および交尾)を繰り広げていました。 
その恋愛ドラマだけ注目しても、交尾(マウント)中の♀♂ペアにあぶれ♂がしつこく横恋慕したりして、なかなか面白いです。 
♂は♀の産卵まで交尾後ガード(配偶者ガード)しているのかもしれません。 
クロボシヒラタシデムシの幼虫は三葉虫のような形ですが、幼虫よりも成虫の方が動きが素早い(歩行速度が早い)です。 


途中から1匹のヨツボシモンシデムシNicrophorus quadripunctatus)が糞塊の中央部から表面に現れて徘徊を始めました。(@6:03〜) 
最後はタヌキの溜め糞場wbcから離れて行きました。 
もしかして産卵を済ませた♀なのかな? 


糞塊を時計盤と見立てたときに、3時の位置から青紫色の金属光沢があるセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)が1匹、溜め糞の表面に顔を出てました。(@1:51〜) 
幼虫の餌として自分の巣穴にタヌキの糞を搬入するかと思いきや、すぐに奥へ引っ込んでしまいました。 
その後もときどき巣口に出入りしているものの、頭隠して尻隠さずの状態です。 
どうやら巣穴を奥に掘り広げているようです。 
周囲を徘徊する他の虫たちも、隙あらばセンチコガネの巣穴に潜り込もうとしています。(穴があったら入りたい) 


ハネカクシ類の成虫も溜め糞上をうろついていますが、肉食性で動きが素早いために、早回し映像では分かりにくいです。 
アカバトガリオオズハネカクシ(旧名アカバハネカクシPlatydracus brevicornis)かな? 


食糞性のハエ類は、メタリックな青色や緑色に輝くキンバエ類が少数ながらも来ていました。 
地味なハエ(ニクバエの仲間?)は種類を見分けられませんでした。 
他には微小なハエが多数、溜め糞上で翅を開閉誇示しています。 
溜め糞に産み付けられたハエの卵から孵化した幼虫(蛆虫)が多数、蠢いているはずですが、この映像では小さくてよく見えません。 
ウジ虫は油断していると、ハネカクシの成虫に捕食されてしまいます。 

ときどき黄色のハエが溜め糞の上を低空で飛び回っていますが、糞塊に着陸することはありません。 
ベッコウバエかもしれませんが、おそらくキイロコウカアブPtecticus aurifer)でしょう。 


微小なアリ(種名不詳)も集まっていました。 


【アフィリエイト】

2024/09/12

11月の虹|儚く消えるまで【30倍速映像】

 

2023年11月中旬・午後14:20〜15:06・くもり(日の入り時刻は午後16:28) 

田園地帯の上空に30分以上も虹が出ていました。 
曇り空の隙間から西日の太陽がわずかに覗いています。 
個人的に、11月の虹は珍しいと思って動画で記録しました。 

後半はタイムラプス撮影にも挑戦しました。 
この日は三脚を持参しなかったので、地面にザックを置いてその上にカメラを載せただけです。 
畳んだタオルをカメラの下に敷いて、角度を微調節しました。 
流れる雲の動きと虹の対比が美しいかもと期待したのですが、暗い曇天(白い雲が少ない)なので、あまりフォトジェニックになりませんでした。 

太陽が山の端に沈むと、虹が消えました。
 吹き付ける風が冷たくて、11分間の微速度撮影中に横で待っている私は体が冷えてしまいました。 


関連記事(1ヶ月後の写真)▶ 12月の虹


【アフィリエイト】

2024/06/17

旧営巣地に戻ってきて古い巣穴を掘り直す秋のニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年9月下旬・午後20:08〜21:10・小雨 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が転出した後も旧営巣地(セット)にアナグマがときどき戻ってきて巣穴を点検したりしていたのですが、久々に新しい展開がありました。 


シーン0:9/7・午後14:18・気温33℃(@0:00〜) 
明るい時間帯にフルカラーで撮れた現場の様子です。 
アナグマの古い巣穴2つを新旧2台の自動センサーカメラで見張っています。 


シーン1:9/21・午後20:08〜20:35・気温22℃(@0:04〜) 
おそらく獣道を右から来たと思われるアナグマが巣口Lに頭を突っ込むと、前脚で土砂を後方に掻き出し始めました。 
巣坑の拡張工事を始めたということは、この個体はヘルパー♂なのかな? 
股間に睾丸の有無を確かめたいのですが、手前の落枝が邪魔だったりして、はっきり見えません。 
後退しながら土を掻き出すので、アクセストレンチの坂が左に形成されることになります。 
途中から、10倍速の早回し影像に加工しました。 

暗視動画を連続で撮ると電池の消耗が激しく、赤外線LEDの光量が次第に弱くなってきました。 
カメラ自体の発熱が激しいので、気温の表示は異常値になります。 

アナグマは次第に巣穴Lの奥深くに入るようになりました。 
排土の結果、アクセストレンチをかなり左まで延長しています。 

風が吹き、小雨がぱらついています。 
途中から霧が発生し、濃くなったようです。 
我々ヒトの感覚ではわざわざ雨天決行しなくても…と思うのですが、アナグマにとって雨で土が湿っている方が穴掘りしやすいのかな?

巣外でカメラ目線になった際に、左右の目の大きさが非対称でした。(@2:45〜) 
この特徴から、巣穴で出産・育児をした母親♀でした。 
重労働の穴掘りはヘルパー♂に任せっきりだと思っていたのに、♀が自力で穴を掘るとは意外でした。 
もしかすると、子育てが終わり幼獣が独立したこの時期には、前のヘルパー♂はお役御免で追い出し、母親♀は独り暮らしなのかもしれません。 

休み無くひたすら穴を掘り続ける体力と集中力に感心しました。 
最後はアクセストレンチを左に伸ばしてから、そのまま左に立ち去りました。 
喉の渇きや空腹を癒やすために出かけたのかな? 


シーン2:9/21・午後20:58(@2:53〜) 
しばらくすると(約20分後)、同一個体♀と思われるアナグマが隣の巣口Rでも穴掘りしていました。 
後ろ向きで土砂を掻き出しながら巣穴Rの外に出て来ました。 
2つの巣穴LRは内部でつながっていると思うのですが、私はまだ確かめていません。 


シーン3:9/21・午後21:09(@3:31〜) 
巣口Rから右に向かってアクセストレンチ(溝)を整備しています。 
アクセストレンチは1本だけでなく、別方向(左下)にも伸ばしました。 


【考察】 
アナグマが戻ってくると信じて、旧営巣地(セット)の監視を執念深く続けていた甲斐がありました。 
ここでアナグマが穴掘り作業をしたのは約1ヶ月ぶりです。 


当地は雪国(東北地方日本海側の多雪地帯)なので、ニホンアナグマ♀は長い冬ごもりに備えて、古い巣穴を本格的にリフォームし始めたと予想しています。 
少し気の早い話ですが、引っ越し(転入)する前に断熱材の寝床(巣材)を大量に搬入するはずです。 



2024/03/04

ニホンアナグマの家族群:6/15〜6/17の野外育児【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が巣外で過ごす様子を3日分(6/15〜6/17)まとめました。 
この時期はトレイルカメラカメラの電池が消耗していて、撮り漏らしが多いです。 


シーン1:6/15・午後19:02(@0:00〜)日の入り時刻は午後19:06。 
日の入り直前に巣口Rをうろついていた個体が右の巣穴Rに戻りました。 


シーン2:6/15・午後19:55(@0:13〜) 
すっかり暗くなった晩に♀が巣穴Rから外に出て来ました。
♀が巣口Rで幼獣の体を舐め始めました。(対他毛繕い) 
深夜に小雨が降り始めました。 
身震いしてから入巣R。(@0:23〜) 


シーン3:6/16・午前5:35(@0:26〜)日の出時刻は午前4:13。 
早朝に活動を再開したときには、雨は止んでいました。 
明るい昼間にはトレイルカメラの赤外線LEDを点灯する必要がないので電力消費が少なく、通常通り1分間録画してくれます。 

巣外で辺りを警戒していたヘルパー♂がぐるっと回り込んで巣口Rに行くと、中から顔を出した♀と相互毛繕いしました。 
朝の挨拶が済むと♀は巣穴Rへ、ヘルパー♂は巣穴Lにそれぞれ戻りました。 


シーン4:6/16・午後18:07(@0:47〜)日の入り時刻は午後19:07。 
夕方に活動を再開した♀が巣穴Rの奥から後ろ向きで1頭の幼獣を外に引きずり出しました。
しばらくすると、更に2頭の幼獣も巣口Rに出て来ました。 
♀が計3頭の幼獣の毛皮をそれぞれ舐めてやります。 
その合間に、♀自身も体の痒い部位を掻いたり、毛繕いしたりしています。 
親子の群れは林縁の広場に移動しました。 
巣穴Rに残っていた最後の幼獣個体(4頭目)が遅れて外に出てきました。(@1:29〜) 
自力でアクセストレンチを上り、家族に合流しました。 
♀が幼獣全員(計4頭)をまとめて育児するのを見るのは珍しいです。 
これまでは3+1頭の2組に分けて育児していました。 

♀は林縁で採食してるようですが、後ろ姿でよく見えません。 
林縁を歩き回り、幼獣にミミズなどの採食法を教えているのでしょうか。 

親子水入らずの時間が続きます。 
林内からセットに戻ってきた♀は、仰向けでのんびり毛繕いしながら、幼獣たちを自由に遊ばせています。 

幼獣2頭が自力で巣口Rの中に戻りました。 
残る幼獣2頭は巣口Lに戻りました…と思いきや、再び巣口Lの外に出てきてウロウロしています。 
右から来た♀が巣口Lの幼獣2頭に対他毛繕いすると、引率して獣道を左へ向かいました。 
食餌に出かけたようです。
しばらくするとセットに戻ってきた♀は、幼獣2頭を連れて巣口Rへ向かいました。 
午後18:40、ようやく計4頭の幼獣全員をまとめて巣穴Rに連れ戻したことになります。
日によって状況は変わりますが、この日6/16はヘルパー♂が巣穴Lに、残りの母子が巣穴Rにそれぞれ住み分けていました。 


シーン5:6/17・午前4:27(@3:04〜)日の出時刻は午前4:13。 
日の出直後の早朝に活動を始めた成獣が入巣R。 


シーン6:6/17・午後18:11(@3:11〜) 
♀が巣口Rから2頭の幼獣を外に連れ出し、汚れた毛皮を舐めてやります。 
♀は広場に移動して仰向けになり、自ら毛繕いを始めました。 




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2024/02/28

夕方に巣穴をせっせと掘り進めるニホンアナグマのヘルパー♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬
6/14・午後18:28〜18:51・(日の入り時刻は午後19:06) 

日没前の夕方に、ヘルパー♂と思われるニホンアナグマMeles anakuma)が右の巣口Rを拡張する工事を始めました。 
巣口Rは更に左右2つの穴に別れているのですが、そのうちの右側Rrを巣外から掘り広げています。 
尻尾に隠れて分かりにくいのですが、巣穴Rrに頭を突っ込んでいる間、股間に睾丸がちらっと見えたので、♀ではなくヘルパー♂と判明。 

穴掘り作業を途中から5倍速の早回し映像に加工しました。 
頭を巣穴Rrに突っ込んだままグルグル回るように穴を掘り広げています。 
土に埋まっている木の根っこや岩などの障害物を除けながら素手で巣坑を掘り進めるのは大変そうです。 
梅雨の時期を選んで穴掘り作業しているとしたら、しみ込んだ雨で土壌が少し軟化して作業が楽になっているのかもしれません。 
掘った土は巣外に掻き出します。 

ようやく穴掘りを中断したヘルパー♂が、外に出て来ました。(@1:23〜) 
上半身が黒い土で汚れています。 
アクセストレンチを後退しながら、掘った土砂を前脚で後方へ掻き出しています。 
やはり股間に睾丸がぶら下がっています。 
画面右へアクセストレンチを形成すると、巣口Rrの拡張工事に戻りました。 


その後は休みなく一心不乱に穴を掘り続けています。 
たまに後ろ向きで巣外に出て来ると、ヘルパー♂の毛皮はお尻以外は真っ黒に汚れていました。(@2:15〜) 
掘った土を巣穴Rrから掻き出しながら後退すると、アクセストレンチが右に形成されます。 
毛繕いだけできれいになるとは思えないのですけど、この後で水浴して汚れを落とすのでしょうか? 
作業の途中で身震いしました。(@2:30〜) 

午後18:44 (@3:48〜)
ようやく充分に暗くなり、赤外線の暗視映像に切り替わりました。 

ヘルパー♂が巣穴Rrに奥深く潜って掘り進めている間に、左の巣口Lから♀がひょっこり顔を出して周囲を警戒しました。(@3:57〜) 
その後の顛末が面白いのですが、次回にまとめました。
♀はすぐに巣内Lに引っ込んだようです。 
前日6/13とは逆で、♀と幼獣4頭が暮らす子供部屋は巣穴Lにあるようです。

やがてヘルパー♂は、今まで掘っていたRrの隣にある巣口Rlも掘り始めました。(@4:25〜) 
2本のトンネルは掘る方向が少し違うようですが、共通のアクセストレンチに掘った土を捨てています。 

午後18:51 
映像終了。 


アナグマの体格に性的二型がある(♀<♂)のは、穴掘りの肉体労働を♂に任せるからだと思ったのですが、若いヘルパー♂(1歳仔)の体格は♀と変わらず、筋骨隆々というほどでもありません。
繁殖期に♀との交尾権をめぐる♂同士の激しい闘争行動は見られなかったので、♂の体格が立派になる理由がよく分かりません。 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 




福田幸広、田中浩『アナグマはクマではありません』によると、
・頭胴長は♂63〜70cm、♀は56〜61cm。(裏表紙より引用)

・♀は生後1歳で成長が止まり、全長は74cmになり、♂は生後2歳まで成長するので♀よりも体が大きく、研究によると平均値は全長79cmになります。(p19より引用)


・アナグマは一妻多夫制の乱婚型で、♂は子育てには関わらず♀だけが行ないます。(p18より)

・お母さんは穴掘りには消極的。息子にまかせっきりです。掘削作業は♂がすることがほとんどです。 (p24より)





 

↑【おまけの動画】 
早回し加工する前の等倍速動画をご覧になりたい方のために、ブログ限定で公開しておきます。


【追記】
アクセストレンチの作り方について。

熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』(2011年)によれば、
アナグマは、前脚でトンネルを掘り進むと、中でUターンして土を外に押し出す。そのため、巣穴の入口に土を押し出した跡が溝状(トレンチ)に残る。これは「アクセストレンチ」と呼ばれ、アナグマの巣穴か判断するポイントになる。 (p69より引用)

下線部について、私の観察結果と明らかに異なります。

増補改訂版で書き換えられているかどうか、気になります。

熊谷さとし氏は他の著作でも繰り返し書いています。

例えば、熊谷さとし『動物の足跡学入門』(2008年)によると、

アナグマは中に入り込んで方向転換をし、両手で土を外に押し出すのだ。この時の両手の跡がミゾになる。

アナグマは、掘った土を前足で押し出すためにアクセストレンチ(溝)ができる。(p161より引用)

地域個体群によってアナグマの穴掘り行動が違うのかもしれないので、古い本をわざわざ持ち出して熊谷さとし氏を攻撃したり糾弾したりする意図はもちろん私にはありません。
アナグマ関連の書籍がほとんど無かった時代には、(たとえ不完全でも)観察の指針を示してくれる本は非常にありがたかったです。
若輩者があえて苦言を述べさせてもらうならば、穴掘り行動を直接観察してないのに痕跡から推理しただけなら、断定しないで、そのように明記して欲しいです。
アナグマが土を巣内から押し出している様子を示すイラストがもっともらしく添えられているのは、問題がある(誤解を招く)と私は思います。(想像図なら、そのように明記するべき)
ある著作物に刺激・影響を受けた次世代による調査研究によって古い情報が新しく修正されていくのは、自然科学のあるべき姿です。
私のブログもおそらく間違いがいくつも含まれているでしょうし、誰かに指摘されて修正・訂正されていくはずです。


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2024/01/27

昼間に巣外で相互毛繕いするニホンアナグマ♀とヘルパー♂【トレイルカメラ】

 



2023年6月上旬

ニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)で巣穴の主である♀とヘルパー♂が明るい日中に相互毛繕いするシーンをまとめました。 


シーン1:6/1・午前8:43・気温17℃・(@0:00〜) 
よく晴れた午前中に、互いに相手の毛皮を甘噛みするように舐めています。 
手前の巣口Rから上半身を乗り出した左の個体が、首筋に白斑があるので、♀だと思います。 
その後は自分の体で痒い部分を掻き始めました。 


シーン2:6/5・午前6:11・気温13℃・(@1:00〜)日の出時刻は午前4:14。 
4日後の早朝にも2頭(親子)が朝日を浴びながら、巣口R付近で念入りに相互毛繕いしていました。 


シーン3:6/5・午前6:14・気温14℃・(@2:00〜) 
そのまま巣口Rから林縁の広場に移動して相互毛繕いを続けていました。 
延々と続く毛繕いを見ていても退屈なので、5倍速の早回し映像でお届けします。 


シーン4:6/5・午前6:22・気温14℃・(@2:24〜) 
林縁で2頭が並んで仰向けになり、各自の体を掻いています。 
その後は相互毛繕いに戻りました。 


シーン5:6/5・午前8:43・気温23℃・(@2:49〜) 
ヘルパー♂が単独で右の林縁に座り込み、手前の巣口Rを見つめています。 
やがて巣口Rから♀が顔を出し、互いに見つめ合いました。 
互いに歩み寄ると、巣口Rで相互毛繕いが始まりました。 
相互毛繕いを始める瞬間を初めて観察することができました。 

巣口Rから右の広場に少し移動して、相互毛繕いを続けます。 


シーン6:6/5・午前10:14・気温23℃・(@3:13〜) 
ヘルパー♂が単独で右の林縁で仰向けに座って、毛繕いと体掻きを始めました 
股間に陰茎が見えるので、♀ではなく若い♂(1年仔)のヘルパーですね。 
 やがて巣穴Rから♀(首筋に白斑)が出て来ました。 
ヘルパー♂は広場で出迎えて、♀と相互毛繕いを始めました。 


シーン7:6/9・午後12:30・気温18℃・(@3:38〜) 
昼過ぎに2頭が広場に出てきました。 
身震いしてから、互いに向かい合って相互毛繕いを開始。 


いつもヘルパー♂が先に巣外に出ており、後から出巣してくる♀を待ち受けて、相互毛繕いが始まるようです。 


つづく→

スギ防風林でタヌキの溜め糞場に群がるクロボシヒラタシデムシの幼虫と成虫【10倍速映像】

 

2023年5月下旬・午前11:00頃・くもり 

平地でスギ防風林でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残したと思われる溜め糞場phを新たに見つけたので、ときどき定点観察に通っています。 
スギの根元と倒木に挟まれた地面に新鮮な糞が追加されていました。 

横に三脚を立てて、糞食性昆虫の活動を8分間微速度撮影してみました。 
スギ植林地の林床はかなり薄暗いので、カメラの設定で明るさを上げました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 
一番多いのはクロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の幼虫で、成虫も少し来ていました。 
他にはキンバエ類や微小なハエ(種名不詳)も集まっています。 

後にこの地点にもトレイルカメラを設置して、タヌキが排便に通っていることを確かめました。(映像公開予定



手前にスギ倒木。(右下隅にちらり)

2024/01/22

赤い首輪で標識されたコハクチョウが雪解け田んぼで採食【冬の野鳥:10倍速映像】

 



2023年3月下旬・午後15:45頃・くもり 

早春の雪解け田んぼに集結して落ち穂拾いしているコハクチョウCygnus columbianus bewickii)の大群を撮影した動画を見直すと、赤い首輪を装着した個体が混じっていました。
コハクチョウは、北極圏の繁殖地と日本の越冬地を毎年行き来する渡り鳥です。 
渡り行動を研究するために、一時捕獲した個体に首輪や足輪を付けて放鳥するプロジェクトが続けられています。 
標識された鳥を見つけたら、世界中のバードウォッチャーが報告することになっています。 
撮影中に気づいていれば、この標識個体を重点的に観察したのに、残念です。 
微速度撮影中の私は三脚を立てて画角を決め録画を始めた後はひたすら寒風に耐えるだけで、何が撮れているかチェックしてませんでした。
長撮りする際はカメラの電池を節約するために、液晶画面(バックモニター)の表示をオフにしていたのです。


動画を拡大してみると、プラスチックの赤い首輪に白い文字で「C48」または「C4B」と書いてあります。 
 「標識コハクチョウ名簿」サイトで調べると、「首輪-赤C46」および「首輪-赤C48」が登録されていました。 
目撃情報から、おそらく「首輪-赤C48」だろうと判明しました。 
この個体は2年前の2021年8月1日にロシアの北極海に面するチャウン湾で標識されていました。
標識時には若鳥だったのに、2年後にはすっかり成鳥になっています。 
渡りの途中でも日本各地で何度か目撃されています。 
どうやら新潟県で越冬しているらしく、ここ山形県や北海道を経由してロシアに渡去していました。 
近くの最上川を集団塒として山形県内で越冬する個体群が餌場に通っていた訳ではありませんでした。

地道な個体標識プロジェクトの強み・凄みをまざまざと実感しました。
白鳥の大群を漠然と眺めているよりも解像度が格段に上がり、特定の個体の暮らしぶり(生活史)が浮かび上がってきます。 
個人的には、どうしても白鳥にGPSやアクションカメラ(GoProなど)を装着して移動ルートの詳細なデータを取りたくなります(バイオロギング)。

2024/01/04

送電塔天辺の巣で4羽の雛を育てるハシブトガラスの親鳥【10倍速映像】給餌行動など

 



2023年5月中旬・午後14:15〜17:00・晴れ 

三脚を立ててカメラを固定し、ハシブトガラスCorvus macrorhynchos)の巣を微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 

送電塔の天辺にある巣の中には4羽の雛が順調に育っています。 
風が吹くと雛の羽毛がなびいて逆立ちます。 
好奇心旺盛な雛鳥は暇潰しで巣材の小枝を嘴でつついています。 
鉄骨のボルトを締めるナットが気になり、嘴で何度も悪戯している個体がいました。 
ボルトが外れると大惨事なので、外れないように電力会社は対策すべきでしょう。 

親鳥が帰巣したのが計5回。 
そのうち♀♂つがいがほぼ同時に帰巣したのが1回でした。 
横から飛来して直接入巣するのではなく、鉄塔の下段に一旦止まってから、鉄骨を梯子のようにピョンピョン登って入巣することが多いようです。 

親鳥が帰巣すると、雛たちは一斉に嘴を大きく開けて空腹をアピールします。(餌乞い) 
嘴を開いたときに口内が赤いのがカラスの幼鳥の特徴です。 
成長すると口の中が黒くなります。 
親鳥は喉袋に詰め込んできた餌を口移しで雛に与えます。 
複数の雛に口移しで次々と給餌しますが、 最も空腹そうな(強くアピールする)雛鳥から優先的に給餌しているようです。 
親鳥による給餌シーンは、等倍速でリプレイしました。 

食後に雛は排泄します。 
巣の縁から外に上手く排泄できれば良いのですけど、巣内に排泄してしまった場合は、親鳥が摘み上げて外に捨てに行きます。(排糞行動) 
雛の糞はゼラチン質の袋に包まれていて、汚さずとも簡単に持ち運びができるようになっています。 
給餌後の親鳥は雛が便意を催すまで、しばらく巣内で見張っています。 
雛の肛門(総排泄孔)を覗き込んで、白い糞が出て来るやいなや咥えて飛び去りました。 
排糞行動は4回撮れてました。 

巣から飛び去った親鳥は次の餌を探しに出かけますが、ときどき巣の横の高圧線に止まって、周囲を警戒したり鳴いたりすることがあります。 

 次の食事まで待っている間、雛は各々が羽繕いしています。 
巣立ちに備えて羽ばたきの練習をする個体がいたものの、すぐに止めてしまいました。 
後半(夕方)になると、巣内の雛は頭をこっくりこっくり下げて居眠りするようになりました。

※ 水を入れたペットボトルを重りとして三脚に吊るせば、風が吹いても振動が抑えられます。 
私の三脚は安物なので、剛性が足りないのです。(軽いのが取り柄です) 

2023/12/26

ニホンアナグマの単独毛繕いと相互毛繕い【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年5月上旬〜中旬 

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)とヘルパー♂が夜に巣穴の外で互いに毛繕いしたり、単独で毛繕いする様子をまとめました。 
長くなるので、5倍速の早回し映像に加工しました。 


今回は相互毛繕いの最中に軽い小競り合いにシーンは記録されていませんでした。 

シーン1:5/6・午前1:36・(@0:00〜) 
広場の林縁で2頭が相互毛繕いしています。 


シーン2:5/6・午前1:37〜・気温15℃(@0:10〜) 
別アングルのトレイルカメラ(新機種)でも撮れていたので、5倍速の早回し映像でお届けします。 


シーン3:5/6・午前1:38〜・(@0:34〜) 
旧機種のカメラの電池が消耗してきたので、細切れ映像を続けてお届けします。 


シーン4:5/6・午前1:45〜・(@1:48〜) 
別アングルの監視映像(5倍速)に戻ります。 


シーン5:5/6・午前1:46〜・(@2:12〜) 
旧機種の細切れ映像(等倍速)。 
後半から2頭が少し離れました。 


シーン6:5/6・午前1:47〜・(@2:29〜) 
別アングルの監視映像(5倍速)に戻ります。 
後半から2頭が少し離れました。 
♀が入巣Rし、ヘルパー♂は左へ移動。 


シーン7:5/6・午前1:48〜・(@2:51〜) 
旧機種の細切れ映像(等倍速)。 
♀が入巣Rした後も、ヘルパー♂は巣口Lの近くで寝そべっています。 
やがて立ち上がると、セット内をうろつき始めました。 


シーン8:5/6・午前2:04〜・(@3:33〜) 
別アングルの監視映像(5倍速)に戻ります。 
広場で仰向けになって毛繕いしていたヘルパー♂が腹這いになってから立ち上がり、左へゆっくり歩き始めました。 


シーン9:5/6・午前3:37〜・(@3:49〜) 
旧機種の細切れ映像(等倍速)。 
広場でヘルパー♂が独りで毛繕いしています。 
途中から♀が巣穴から外に出てきたようで、ヘルパー♂と合流しました。 
仲良く相互毛繕いしています。(@4:42〜)

♀の後頭部(首の後ろ)には白斑があります。 
どうやら一時的な毛並みの乱れではなく、個体識別に使える特徴のようです。 
円形脱毛症のように丸く白髪化したのでしょうか? 
♂と交尾した際に、♂に背後から首筋の毛皮を強く噛まれて脱毛・変色したのかな? 

金子弥生『里山に暮らすアナグマたち: フィールドワーカーと野生動物』p74によると、交尾中に♂が♀の背部を強く噛むことによってできる傷は交尾痕と呼ばれるらしい。

この♀は正面からカメラ目線をくれたときに左右の目の大きさが不均等(右目<左目)という特徴がありますが、後ろ姿でも見分けられるようになれば非常に助かります。


シーン10:5/6・午前3:47〜・(@5:06〜) 
別アングルの監視映像(5倍速)に戻ります。 
♀とヘルパー♂が仲睦まじく相互毛繕いしています。 
各自でやる毛繕いと相互毛繕いを交互に繰り返しています。


シーン11:5/6・午前3:47〜・(@5:30〜) 
旧機種の細切れ映像(等倍速)。 


シーン12:5/8・午後19:49・(@5:40〜) 
2日後の晩に撮れた旧機種の細切れ映像(等倍速)。 
広場で体の手入れをしていた♀が入巣Rしました。 


シーン13:5/8・午後20:30・(@5:49〜) 
ヘルパー♂と思われる個体が、奥の獣道を左から右へやって来ました。 


シーン14:5/9・午後20:34・気温14℃(@5:56〜) 
翌日の晩も2頭がいつもの場所で相互毛繕いしています。 


シーン15:5/9・午後20:35・気温14℃(@6:04〜) 
別アングルの監視映像(5倍速)に戻ります。 


シーン16:5/9・午後20:35・(@6:28〜) 
旧機種の細切れ映像(等倍速)。 
♀が入巣Rすると同時に、ヘルパー♂が獣道を通って手前に立ち去りました。 


シーン17:5/10・午前0:13・(@6:34〜) 
旧機種の細切れ映像(等倍速)。 
日付が変わって深夜に自動センサーカメラが起動しました。 
♀が広場に立って右をじっと見て警戒しています。 
そのまま広場に座り込み、毛繕いをしたり体を掻いたりしてのんびり過ごしています。 


シーン18:5/11・午後19:20・(@6:54〜) 
翌日の晩も♀が単独で広場に座り、独りで毛繕いしています。 


シーン19:5/11・午後20:24・気温15℃(@7:40〜) 
別アングルの監視映像(5倍速)に切り替えました。 
独りで毛繕いしていた♀が入巣R。 



※ 一部の動画には、編集時に自動色調補正を施しています。 


同じことの繰り返しで退屈でしたが、次回からいよいよ新展開が起こります。



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