ミズキの樹液が透明からオレンジ色に変化する現象は、微生物の活動と環境条件の相互作用によって起こります。主な要因を以下のように整理できます:
色変化のメカニズム
酵母菌の初期繁殖
ミズキの樹液は春先に糖分を多く含み、透明でサラサラした状態で分泌されます。これにファフィア酵母(Phaffia rhodozyma)が付着し、オレンジ色の色素(アスタキサンチン)を生成します。この段階で樹液は白濁し始めます57。カビの二次繁殖
酵母が樹液の糖分を消費すると、フザリウム属のカビ(Fusarium aquaeductuumなど)が優占種に変化。このカビは赤~オレンジ色の色素を産生し、樹液を濃いオレンジ色に変えます14。微生物の共生関係
酵母とカビは樹液内で「スライム・フラックス」と呼ばれるコロニーを形成。触るとプニプニしたゲル状になり、表面にヒダ状の構造が発達します23。色変化の条件
条件 影響 糖分濃度 ミズキの樹液は糖分が多く(特に春)、微生物の繁殖に最適 温度 15-25℃の温暖な気候で活発に繁殖(春先に多く観察)24 酸素量 樹液が滴り落ちる際に空気に触れ、好気性微生物が活性化 時間経過 分泌後2-3日で酵母が繁殖→1週間程度でカビが優占種に16 物理的損傷 剪定や虫食いによる傷口から樹液が持続的に分泌される必要あり38 色の持続性
オレンジ色は一時的な現象で、樹液の分泌が止まると干からびて黒っぽく変化します1。また、湿度が低い環境では色素生成が抑制され、色変化が起こりにくくなります4。
生物学的意義
この現象は、樹木の傷口を微生物で覆うことで病原菌の侵入を防ぐ「生物学的防御機構」と推測されています8。オレンジ色の樹液はケシキスイなどの昆虫を誘引し、彼らが樹液に集まることで微生物の拡散を助ける共生関係も存在します24。
2025/03/21
早春のミズキから滴るオレンジ色の樹液に集まり吸汁するケシキスイの仲間
2024年4月上旬・午後13:30頃・晴れ
細い用水路沿いにそびえ立つ落葉性高木の幹から鮮やかなオレンジ色の樹液が大量に滲み出していて、早春の二次林で非常に目立っていました。
幹の数カ所の傷口から樹液が垂れ落ちながらブクブクと泡立っています。
樹冠を見上げると、枝先の冬芽から少しだけ若葉が芽吹き始めていました。
樹種はおそらくミズキと思われます。
カメラを上から下にパンしながらゲル状になった橙色の樹液を動画に撮っていると、ケシキスイの仲間(ケシキスイムシ科)と思われる微小な甲虫が計3匹写っていました。
同定のために採集したかったのですけど、幹の高い位置だったので、手が届きませんでした。
図鑑『くらべてわかる甲虫1062種』に掲載された写真p80と見比べると、素人目にはホソコゲチャセマルケシキスイ(Amphicrossus hisamatsui)またはナガコゲチャケシキスイ(Amphicrossus lewisi)が似ていると思うのですが、どうでしょうか?
他には薄い翅を持つ黒っぽいハチ?ハエ?の仲間も動画にチラッと写っていたのですが、撮影中の私はまったく気づかずにスルーしてしまいました。
「オレンジ色の樹液」でネット検索すると、ミズキの樹液がヒットしました。
もともとミズキの樹液は無色透明でさらさらした液体なのですが、早春の時期にはよくオレンジ色になるそうです。
Perplexity AIに解説してもらいました。(細かい点で間違いがあるかもしれませんので、お気づきの方はご指摘ください。)
【アフィリエイト】
2023/08/13
クワガタが柳の樹液に夢中で「頭隠して尻隠さず」
2022年7月上旬・午後17:00頃・くもり
河畔林の柳(樹種不詳)灌木から樹液が滲み出して、様々な昆虫が集まる樹液酒場になっています。
この日は細い幹の穴(ミニ樹洞)に1匹のクワガタが頭を突っ込んでいました。
穴の奥から滲み出る樹液を舐めているのでしょう。
大顎の形が見えない上に、私の手が届かないので採集できず、クワガタの種類は分からずじまいです。
ここでの優占種はコクワガタ(Dorcus rectus rectus)なのですが、今回はどうでしょう?
クワガタに詳しい達人は、腹端の形状から性別が見分けられたりするのでしょうか。
2023/07/27
早朝から柳の樹液に集まるシロテンハナムグリ
2022年8月上旬・午前5:20頃・晴れ (日の出時刻は午前4:44)
河畔林の柳(種名不詳)から樹液が滲んでいて、様々な昆虫が吸汁しに集まる樹液酒場になっています。
伐採した枝の切り口と小さな樹洞から樹液が滲み出し、発酵しているのです。
早朝に通りかかると、シロテンハナムグリ(Protaetia orientalis submarumorea)が群がっていました。
朝日を浴びて鞘翅が銅色に輝いています。
夜の間から集まっていたのでしょうか?
いつもはクワガタが占領している樹洞の窪みの奥にもシロテンハナムグリが潜り込んでいました。
互いに頭を突き合わせて押し合いへし合いし、少しでも樹液の多いスポットを巡って争っています(占有行動)。
この日はなぜかクワガタなど他の昆虫をこの樹液酒場で見かけませんでした。
微小なアリ(種名不詳)も柳の枝を徘徊していました。
※ 後半は動画編集時に逆光補正を施しています。
朝日の射さない日陰は未だ薄暗く、シロテンハナムグリ鞘翅の金属光沢が失われて斑点模様もゴマダラカミキリのような印象でした。
2023/04/16
レッドロビンの生垣で樹液を吸いに来たコガタスズメバチ♀
2022年10月上旬・午後14:50頃・晴れ
市街地でベニカナメモチ(=レッドロビン)の生け垣をコガタスズメバチ(Vespa analis insularis)のワーカー♀が飛び回っていました。
ブーン♪という羽音がかすかに聞こえます。
赤く色づいた若葉の葉柄に止まったり、剪定した枝の切り口に止まっても、すぐに飛び立ってしまい残念でした。
樹液の分泌量が少ないのでしょう。
交通量の多い街なかなのに、思いがけずコガタスズメバチと出会えて嬉しかったです。
黒いデジカメを近づけてしつこく接写しても、コガタスズメバチ♀に襲われることはありませんでした。
過去の経験からもこの状況では怖くないと分かっていたので、リラックスして大胆に撮影できました。
現場でコガタスズメバチだと正しく見分けられたからこそ出来たことで、もしオオスズメバチならもう少し用心が必要です。 (念の為に離れて撮影しましょう。)
関連記事(6年前の撮影)▶ ベニカナメモチの樹液を舐めるコガタスズメバチ♀
簡略化した粗雑な繭でベニカナメモチの葉に吊り下げられています。
もしコガタスズメバチのワーカー♀がマイマイガの蛹を見つけたら狩りを行ったでしょうか?
幼虫のように動かないと獲物として認識できないのかな?
しかし私は以前、地中で蛹化した蛾を狩るチャイロスズメバチを観察したことがあります。
関連記事(13年前の撮影)▶ チャイロスズメバチの狩りと肉団子作り
固定された蛹は逃げ回ることはできませんが、もし捕食されそうになったら、蛾の蛹も狩蜂を撃退しようと必死で暴れたはずです。
関連記事(8年前の撮影)▶ マイマイガ(蛾)の蛹に触れると暴れる
マイマイガ幼虫は様々な植物を食い荒らすおそるべき害虫ですが、スズメバチやアシナガバチはこれを1匹ずつ丹念に見つけ出して駆除してくれる働きがあります。
関連記事(7年前の撮影)▶
・マイマイガ(蛾)の幼虫を狩るセグロアシナガバチ♀
したがって、なんとなく怖いからという理由でスズメバチやアシナガバチの巣を見つけ次第片っ端から駆除してしまうと、その周辺で害虫の大発生が抑えられなくなります。
激増した害虫を駆除しようと殺虫剤に頼れば、今度は益虫までとばっちりを食うことになり、生物多様性はさらに貧困になり生態系はますます不安定になります。
生態系の上位にスズメバチやアシナガバチなど強力な狩蜂がいることは、ヒトが登場する前の太古の昔から確立された当たり前のことです。
自然界の食物連鎖が正常に機能すれば害虫が毎年大発生することはありません。
身の回りにハチがいるなんて1匹たりとも許せない!というのは不寛容な現代人の傲慢な考えで、しっぺ返しを食う羽目になります。
スズメバチの存在も温かい目でなんとか見逃してくれるヒトが少しでも増えて欲しい、というのが私のささやかな願いです。
田舎の古い農家では蔵や家屋の軒下に巨大なスズメバチの巣があったりします。
「危険なスズメバチの巣があんなに大きくなるまで放置するなんてとんでもない!」というのが現代人(都会人)の認識でしょう。
しかし昔はスズメバチが巣を作るとその家は栄える(家内繁盛)という言い伝えがあり、大切に守られていたそうです。
実際にスズメバチ営巣地の周囲では害虫が減り、農作物の収穫が目に見えて増えたのでしょう。
スズメバチの巨大な古巣を丸ごと飾ってある標本を田舎の旅館のロビーなどで見かけますが、子孫繁栄のおめでたい象徴とされていました。
家屋の軒下にあるツバメの巣が大切に守られていたのも同じで、虫を食ってくれる捕食者(益鳥)の役割を昔の人は正しく認識していたことになります。
潔癖症の現代人は糞害を嫌ってツバメの巣を片っ端から叩き落としてしまいます。
ようやく最近ではツバメを守ろうとする優しいヒトが増えてきて、微笑ましいニュースとして毎年取り上げられます。
次はスズメバチやアシナガバチを守る番です。
ことさらヒトが保護しなくても普通に(当たり前のように)共存している世界が理想です。
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2023/04/12
柳の樹液酒場でスジクワガタ♀に誤認求愛するコクワガタ♂(繁殖干渉の配偶者ガード?)
2022年9月上旬・午後14:00頃・晴れ
平地を流れる川沿いに生えた柳(種名不詳)から樹液が滲み出していて、その樹液酒場に集まる昆虫を定点観察しています。
この日はコムラサキ(Apatura metis substituta)が♀♂1頭ずつ来ていました。
♀♂ペアが仲良く並んで柳の樹液を吸汁しているのに、求愛や交尾などの配偶行動が始まらないのは不思議です。(色気より食い気)
柳の枝の下面にえぐれたような樹洞があり、その上にコクワガタ♂(Dorcus rectus rectus)が覆い被さるように静止していました。
口吻を見ると樹液を舐めている訳ではなく、左半身だけ穴の中に差し込んだままじっとしています。
コクワガタ♂は直下の樹液酒場からコムラサキ♀♂を追い払おうとしませんでした(占有行動なし)。
撮影を中断して、コクワガタ♂を手掴みで採集しました。
コムラサキ♂は逃げてしまったものの、♀はずぶとく樹液酒場に居残って吸汁を続けています。
コクワガタ♂を取り除くまで気づかなかったのですが、柳樹洞の奥に大顎の短いクワガタムシの♀が潜んでいました。
安全な場所に陣取って樹液を舐めていたのでしょう。
コクワガタ♂は樹液酒場で配偶者ガードしていたのだと、ようやく腑に落ちました。
つまり、♀と交尾する機会を狙いつつ、ライバル♂が近づけないように♀を守っていたのです。(交尾前ガードではなく交尾後ガード?)
関連記事(同所で32日前の撮影)▶ 柳の樹洞に籠城するコクワガタ♀にしつこく求愛する♂
採集したクワガタ♀♂を1匹ずつ透明プラスチックの円筒容器(直径7.5cmの綿棒容器を再利用)に移し、背面と腹面をじっくり観察してみましょう。
ツルツルした容器壁面をクワガタはよじ登れませんし、仰向けに置くと脚をばたつかせて暴れるものの、足先が滑って自力では起き上がれません。
♀の方は驚いたことにスジクワガタ♀(Dorcus striatipennis striatipennis)でした。
鞘翅にうっすらと縦筋があります。
となると、問題はクワガタ♂の方です。
大顎の内歯が1歯なのでコクワガタだと思うのですが、鞘翅にうっすらと縦筋があるような気もしてきます。
コクワガタ♂だとすると、樹洞に籠城するスジクワガタ♀を同種の♀だと誤認求愛し、異種間で配偶者ガードしていたことになります。
コクワガタとスジクワガタはどのぐらい近縁なのでしょうか?
ネット検索してみると、この2種が交雑することは無いそうです。
日本産クワガタムシの分子系統樹がどうなっているのか知りたくて文献検索してみると、次の全文PDFが無料で入手できました。
ただし、これはタンパク質レベルで比較したアロザイム分析なので注意が必要です。
この結果だけを見れば、コクワガタとスジクワガタは最も近縁ですから、異種間で誤認求愛するのも不思議ではありません。
しかしクワガタ愛好家の知見によれば、コクワガタとオオクワガタはまれに交雑するのに対して、コクワガタとスジクワガタは決して交雑しないのだそうです。
つまり、交雑可能性や生殖隔離という点ではコクワガタに対してスジクワガタよりもオオクワガタの方が近縁種ということになり、上記のアロザイム分析の結果は生物学的種の概念に明らかに反しています。(生殖隔離を説明できない。)
最新のDNA分析ではクワガタの分子系統樹が変わるのか、当然知りたくなります。
続報として同じ筆者による博士論文がヒットしましたが、要旨(概要)しか閲覧できませんでした。
細谷忠嗣. クワガタ属 (甲虫目クワガタムシ科) とその近縁属の分子系統学的研究. 2004.
たとえ異種間で交尾できたとしても雑種の繁殖可能な子孫F1が残せないとなると、今回のスジクワガタ♀にとってコクワガタ♂のしつこい誤認求愛や配偶者ガードはただただ迷惑なセクハラでしかありません。
スジクワガタ♀の繁殖機会を奪っている訳ですから、コクワガタ♂の振る舞いは繁殖干渉です。
私の個人的な印象では、当地のスジクワガタは山地に偏ってほそぼそと分布しています。
スジクワガタが平地に分布を広げられないのは、どこにでも居る普通種のコクワガタが繁殖干渉(セクハラ)するせいかもしれません。
この仮説が正しければ、逆にスジクワガタ♂がコクワガタ♀に誤認求愛、配偶者ガードすることは無いはずですから、飼育下で検証可能です。
素人が背伸びして(先走って)勝手に考察してみましたが、そもそも私は恥ずかしながらクワガタの同定にいまいち自信がありません。
(特に今回の♂がコクワガタかスジクワガタかどうかについて)
もし同定が間違っていたら、ご指摘願います。
たとえば、ヤナギ樹洞の奥に隠れていた個体がスジクワガタ♀ではなくて小型のスジクワガタ♂やコクワガタ♀だとしたら、動画の解釈がまるで頓珍漢ということになり、目も当てられません…。
余談ですが、スジクワガタ♀を採集した後にもコムラサキ♀が樹液酒場に最後まで居座っていました。
ところがフラッシュを焚いて写真に撮ると、右半分の翅表だけに鮮やかな青紫色の光沢がありました(♂の性標)。
自然光下の動画ではてっきり地味な翅色の♀だと思っていたのですが、雌雄モザイクの変異個体なのでしょうか?
だとすれば、隣に居たコムラサキ♂個体と配偶行動が始まらなかった理由も説明できそうです。
それとも、翅を開いた角度の違いで青紫の構造色がストロボ光に反射したりしなかったりしただけかな?
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2023/02/09
ミズナラの樹液酒場にてスジクワガタ♂とモンキアシナガヤセバエそれぞれの占有行動
2022年9月上旬・午後14:30頃・くもり
初め私は、大型の♀に小型の♂が交尾しようとしているのかと思いました。
あるいは、小型の♂が大型の♀の傍らで配偶者ガードしているようにも見えます。
ところが、動画撮影後に採集してみると、2匹とも♂でした。
つまり、大型の♂が樹液酒場でベストな位置を占拠して、劣位の小型♂が樹液のあまり出ないポイントに甘んじていた(順番待ち?)のだと判明しました。
2匹のスジクワガタ♂が平和に並んでいるように見えましたが、樹液をめぐる争いの決着が既についた後だったようです。
他には見慣れない細長い体型のハエ2匹もミズナラの樹液酒場に来ていました。
スジクワガタ♂の横で遠慮がちに樹液を舐めています。
白い口吻を伸縮させる動きが蛆虫の蠕動のように見えました。
長い脚の腿節の途中にオレンジ色の部分が目立ちます。
『樹液に集まる昆虫ハンドブック』で調べると、翅に黒紋が無いので、ホシアシナガヤセバエではなくモンキアシナガヤセバエ(Nerius femoratus)と判明。
あまり研究対象にされることのない昆虫であり、くわしい資料がほとんどない。(p66より引用)とのこと。
2匹の体格が異なるのは性差とは限らず、幼虫時代の栄養状態が成虫のサイズを左右するのだそうです。
しばらくするとモンキアシナガヤセバエ2匹が樹液酒場から少し横に離れた位置で互いに向き合い、背伸びして何やら面白そうな誇示行動(ディスプレイ)を始めました。
せっかく興味深い行動なのに、このとき疲労困憊していた私は気づかずに撮影を打ち切ってしまいました。
やがて1匹は離れて行ったので、ライバル♂を樹液酒場から追い払ったようです。
つまり、♀♂間の求愛誇示ではなく、樹液をめぐる♂同士の闘争誇示だったようです。
英語版wikipediaでNeriidae(アシナガヤセバエ科)の項目を読むと、♂同士の闘争誇示など興味深い行動が解説されていました。
次に機会があれば、じっくり観察してみたいものです。
他には微小のハエ(種名不詳)も多数群がっていました。
ショウジョウバエにしては色が黒っぽいです。
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2023/02/04
ミズナラの樹液を吸いに来たサトキマダラヒカゲを追い払うスジクワガタ♂
2022年9月上旬・午後14:25頃・くもり
里山の急斜面をジグザグに登る細い山道の横にミズナラの大木がそびえ立っています。
その苔むした幹にサトキマダラヒカゲ(Neope goschkevitschii)が翅を閉じて止まっていました。
小刻みに素早く翅を開閉しながら、幹を歩いて下り始めました。
サトキマダラヒカゲが到達したのはミズナラの樹液酒場でした。
苔むした樹皮の内側から木屑(フラス)が排出されているのは、材の中に穿孔して潜むカミキリムシ幼虫の排糞孔です。
その傷口からミズナラの樹液が滲み出しているいるのです。
私の鼻では樹液の発酵臭を嗅ぎ取れませんでした。
樹液酒場には2匹のスジクワガタ♂(Dorcus striatipennis striatipennis)などが先客として群がって居ました。
サトキマダラヒカゲは翅を閉じたまま、長い口吻を伸ばして樹液を吸汁し始めました。
先客スジクワガタ♂の存在に気づいていないのか、足で踏んづけています。
蝶の種類を同定するために翅裏に正対して紋様をしっかり撮りたかったのですが、見つけたときには近過ぎて、私が下手に動くと逃げられそうです。
残念ながら蝶はすぐに飛び去ってしまいました。
私のせいではなく、隣席の先客スジクワガタ♂に追い出されたようです。
薄暗い現場では蝶をミドリヒョウモン♀と見間違え、樹皮に産卵するのかと予想したのですが、映像を見直すと全然違いました。
後翅裏の斑紋の配列(緩やかなくの字)から、ヤマキマダラヒカゲではなくサトキマダラヒカゲと判明。
カメラを上にパンして、ミズナラの樹高を示します。
年季の入ったミズナラの幹にはツタ?の蔓も巻き付いています。
周囲の雑木林ではミンミンゼミ♂が鳴いていました♪
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甲虫(鞘翅目),
樹液酒場
2022/12/20
木の根から滲み出る樹液を舐めるスジクワガタ♂
2022年8月中旬・午前9:40頃・くもり
里山をつづら折れで登る細い山道で、地面に半ば埋もれた木の根っこ(樹種不明)の下に開いた穴にスジクワガタ♂(Dorcus striatipennis striatipennis)が潜んでいました。
初めはただの落枝が埋もれかけているだけかと思いきや、木の根っこでした。
周囲は二次林(雑木林) ですが、どの木に繋がっている根っこなのか、分かりませんでした。
スジクワガタ♂にズームインしてみると、口吻を伸縮させて樹液を舐めていました。
大顎に細かい木屑が付着しているということは、木の根っこを傷つけて樹液の分泌を促しているのかもしれません。
動画とは別に写真でも記録したら、穴の左奥に別個体のお尻も写っていました。 (下に掲載した1枚目の写真)
スジクワガタの♀♂番 だったのかもしれません。
現場では2匹目の存在に全く気づきませんでした。
私はクワガタムシの生態について詳しくないのですが、スジクワガタは木の幹の樹液酒場よりも、なぜか木の根っこに好んで集まる習性があるようです。
関連記事(8年前の撮影)▶
・苔むしたコナラの根際で争うスジクワガタ♂
・コナラの根際でスジクワガタ♂が地面に穴掘りスジクワガタ♂の他に、クロクサアリ(Lasius fuji)のワーカー♀も木の根っこの樹液酒場に群がっていました。
周囲ではエゾゼミ♂、ミンミンゼミ♂、ウグイス♂などが鳴いています。
撮影後に同定するため採集してみるとスジクワガタ♂で、かなり小型の個体でした。
持ち帰って、2匹のコクワガタ♂と一緒に飼育することにしました。
【追記】
wikipediaではスジクワガタの食性について、以下のように説明しています。
山地ではヤナギ、ミズナラ、白樺などの樹液に集まるが、樹液を出す樹木が少ないため、ヒメオオクワガタのように枝先などで自ら樹皮を削る、もしくはヒメオオクワガタのおこぼれに与るように一緒か、その食痕の樹液を吸っていることもある。樹液目当てに樹皮を削る行動はミヤマクワガタやヒメオオクワガタなどにも見られるように、主にメスが行う。また、樹液だけではなく草の茎をかじって液を吸うことや落下した栗の実の中に潜み、それを食す例もあり樹液以外にも摂食対象としている。都市部の僅かな樹木の生える公園などでも生息できるコクワガタ同様、僅かな量の樹液でも生息するには十分な様で、小さな餌場に多数の個体が群がる光景も時折観察される。なお競合種の多い地域では、他の甲虫類が多く集まる様な大量の樹液が流れる場所ではなく、他の虫が寄り付かない様な少量の樹液の流れる樹木にひっそりと集まる姿も見られ、同所的な棲み分けとも言える行動を取る場合もある。
私の乏しい経験と照らし合わせて納得できたのは、最後の下線部の記述だけです。
スジクワガタは樹液酒場を巡る闘争で弱い(序列が低い)ことが予想されます。
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2022/12/06
柳の樹液に殺到して争うシロテンハナムグリの群れ
前回の記事:▶ 柳の枝を登り排尿するシロテンハナムグリ2022年8月上旬・午後18:00頃・晴れ
河畔林にある柳(種名不詳)の樹液酒場を定点観察しています。
この日は夕方に来てみると、シロテンハナムグリ(Protaetia orientalis submarumorea)の大群で大盛況でした。
特に柳の枝先をノコギリで切り落とした切り口から樹液が滲み出しているらしく、そこが大人気でした。
シロテンハナムグリの体色は構造色なので光の加減かもしれませんが、珍しく緑色に輝く個体が混じっていました。
冒頭シーンでは、樹液の芳香に誘引されて左から新たに飛来した個体が、枝の切り口に着陸した様子を1/5倍速のスローモーションでご覧ください。
ハナムグリの仲間なので、前翅を閉じたまま後翅のみを広げて飛んでいることが分かります。
直後に等倍速でリプレイ。
シロテンハナムグリには角や大顎など喧嘩に使える武器はありませんが、混み合った樹液酒場では激しい占有行動(小競り合い、闘争、喧嘩)が繰り広げられていました。
先客の腹の下に頭を潜りこんで押しのけ、強引に割り込もうとしています。
そうはさせまいと樹液を吸汁しながら後脚で蹴って牽制しようとするものの、相手の鞘翅がツルツル滑って有効な攻撃になりません。
互いに押し合いへし合いしています。
小競り合いで騒然としているのは、発酵した樹液で酔っ払っているからかな?
右隣りの枝の切り口にもシロテンハナムグリが集まっています。
枝の途中がえぐれた部分(ミニ樹洞)でも1匹のシロテンハナムグリが樹液を舐めていました。
ズームアウト中にたまたま柳の枝の背後に居た個体が排尿したようです。(@1:55)
透明な液体が飛び散りました。
こんなに多くの個体が集まっているのに、求愛・交尾などの配偶行動が全く見られないのは不思議です。
色気より食い気なのでしょうか?
シロテンハナムグリの性別を見分ける方法を知りたいものです。
これほど多数のシロテンハナムグリ集団を見るのは初めてかもしれません。
クロヤマアリのワーカー♀とハエ類(種名不詳)も樹液酒場に集まっていました。
この日はクワガタムシなど他の甲虫は1匹も居ませんでした。
2022/12/04
柳の樹洞に籠城するコクワガタ♀にしつこく求愛する♂
2022年8月上旬・午後15:15頃・晴れ
河畔林に自生する柳(種名不詳)灌木にある樹液酒場を定点観察しています。
柳の枝にはノブドウの蔓が巻き付くようになりました。
ヒトの手首の太さぐらいの枝に小さな穴(ミニ樹洞)が開いていて、傷口から樹液が滲んでいました。
その穴にコクワガタ♂(Dorcus rectus rectus)が潜り込もうとしつこく悪戦苦闘しています。
樹液酒場や昼間の隠れ家(塒)を巡る占有行動なのかと初めは思ったのですが、穴の中に同種の♀が潜んでいることが分かり、ようやく♂の目的が飲み込めました。
籠城する♀に対して♂は攻撃的に排除したい訳ではなく、ただ交尾したいだけのようです。
この♂個体の大顎は微妙に左右非対称でした(長さが左<右)。
泥であちこち白く汚れた鞘翅をよく見ると、小さな凹みがありました。
これはライバル♂との闘争で大顎に挟まれた跡なのかな?
しばらくすると穴の主(先客)がようやく入口に顔を出してくれて、大顎の短いコクワガタ♀と判明。
小さな大顎や胸背に柳の白い樹液がべっとりと付着しています。
♀はすぐに穴の中へ戻りました。
♀の隠れ家兼餌場に♂が潜り込んで交尾しようとしているのです。
柳の穴に頭だけ突っ込んでいたコクワガタ♂が一旦諦めました。
枝上で360°ぐるっと方向転換してから、再び♀宅に突撃。
もしこのシーンだけを見ていれば、周囲を油断なく警戒してライバル♂から♀を守ろうとする配偶者ガードと思うかもしれません。
♀は交尾拒否の意思表示として、♂を穴の入口から頑として締め出しています。
明るい昼間は交尾する気にならないのかな?
♀が♂の求愛を受け入れたら穴の外に出てきて♂との交尾が始まるのでしょうか?
♀の隠れ家兼餌場に力任せに押し入ろうとするだけでは余りにも芸がありません。
穴の入口が狭いのなら広げる工夫をすれば良いのに…と傍目にはもどかしく思うのですが、コクワガタ♂の大顎は木工道具としては使えないのでしょうか?
♂の執拗な求愛が成就したのか、最後にようやく♂が穴の中に体を入れることが出来ました。
長い攻防戦の末に♀が根負けして穴の奥に引っ込んだのか、交尾を受諾したようです。
しかし狭い穴の中で交尾は可能なのかな?
三脚を持参していればこの後も微速度撮影で監視したかったのですが、穴の中は暗くて見えませんし、手持ちカメラでの長撮りに私は疲れてしまいました。
関連記事(同所で1ヶ月後の撮影)▶ 柳の樹液酒場でスジクワガタ♀に誤認求愛するコクワガタ♂(繁殖干渉の配偶者ガード?)
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